説明

マルチラテレーション装置及びこれを用いた空港面監視システム

【課題】 空港面監視システム内の目標検出装置であるMLAT装置は、複数の受信機2で受信しその時間差から目標(航空機)の位置を特定する。このため受信機数が多いと、受信機の組合せ数により多数の検出位置解が発生し、特に1つ以上の検出位置解がマルチパス等により大きく外れると検出位置がばらついてしまう。
【解決手段】航空機5が通過予定である経路のセンターライン位置情報を利用するためセンターラインDB14に蓄積する。複数の検出位置解から検出位置を特定する際に、基準となるセンターラインから各検出位置解までの距離に応じて重み付けを行ない位置座標を特定する。この結果検出位置のばらつきが押さえられ、検出位置精度が向上する。また、他の目標検出装置が検出した位置座標と統合する以前に早い段階で、MLAT装置1にて検出精度が向上するので、管制官の負担を軽減した空港面監視システムを構築できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチラテレーション装置などの目標検出装置を併用して空港面上の航空機などの目標を表示装置に表示し監視する空港面監視システムにおいて、多数の受信機を有するマルチラテレーション装置が当該目標の位置座標を精度良く検出する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標検出装置であるマルチラテレーション装置においては、航空機のトランスポンダから送信されるSSR(Secondary Surveillance Radar)応答信号やスキッタ信号等を3箇所以上に設置された多数の受信機で受信する。次に、各受信機間における受信時刻差を各受信機と航空機との距離の差に変換し、この距離差が一定であるという条件からなる双曲線同士の交点を求めることにより航空機の位置座標を算出し、その結果を管制官がモニタする空港面監視システムの表示装置に送る。 マルチラテレーション装置は、悪天候等による監視性能の低下やマルチパスによる監視対象の誤認を防止できる。このため、空港面におけるレーダ監視が及ばない領域の監視等に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−10367号広報(第8−11頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のマルチラテレーション装置においては、以上のように3箇所以上の受信機で受信しその時間差から航空機の位置を特定するので、受信機数が多数の場合、受信機の組合せの数により、多数の検出位置解が発生する。このため、1つ又は複数の解が、マルチパス等により大きく位置が外れた場合、複数解の位置から重心位置を算出する際に検出位置がばらついてしまう傾向がある。また、目標である航空機が誘導路、滑走路などの経路のセンターライン(中心線)を通過するのを前提に設計されているので、検出位置がばらつくと、表示装置の目標表示が経路のセンターラインから外れてしまうため、航空機を監視する管制官にとって違和感のある状態となり、多数の航空機を管制する場合の課題であった。
【0005】
これに類似した従来例として例えば特許文献1が有る。この例では、マルチラテレーション装置及び空港面探知装置(以降、「ASDE装置」と略す。)など複数の目標検出装置を併用する空港面監視システムにおいて、各目標検出装置の位置検出精度の変化に応じて正確に位置を特定できなかった。この対策として航跡統合装置において、目標検出装置ごとに追尾処理部により検出されたそれぞれの航跡(位置、移動速度、移動方向)情報が同一目標の情報であるか否かを判定する相関処理を実施し、同一目標であり統合対象であると識別された航跡情報を出力する。あらかじめ蓄積していた空港面の基準センターラインから前記航跡情報の位置座標までの垂直距離に基づく重み付けを行い、目標検出装置ごとに前記各航跡情報を統合した位置座標を決定する。この結果、空港面監視システムとして統合した検出位置精度を向上させている。
【0006】
この発明は前記課題を解消するものであり、空港面監視システムにおける目標検出装置であるマルチラテレーション装置において、多数受信機の組合せ数だけ発生する検出位置候補が多数となり、検出位置がばらついてしまうことを軽減できる、新規のマルチラテレーション装置及びこれを用いた空港面監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わるマルチラテレーション装置は、目標である航空機が滑走路、誘導路などの経路の中心を通過するように設計されており航空機同士の追い抜き、すれ違いがないように設計されていることを利用するために、経路のセンターライン情報をセンターラインデータベース(以降「センターラインDB」という。)にあらかじめ蓄積する。目標処理器において、受信機の組合せ数だけ発生する多数の検出位置解からセンターラインまでの垂直距離を算出し、この垂直距離に応じて算出された各検出位置解に対する重み付けを用いて目標の位置座標を特定する。
【発明の効果】
【0008】
この発明のマルチラテレーション装置(以降、略して「MLAT装置」ともいう。)によれば、航空機が通過する経路のセンターラインの情報を用いて複数の検出位置解ごとに重み付けすることにより、検出位置のばらつきが軽減し、実際の目標位置に近い位置座標を表示することが可能になり位置座標の精度が向上する。また、他の目標検出装置が検出した位置座標と統合する以前に、早い段階であるMLAT装置において、検出精度を向上できる。この結果、航空管制業務を行う管制官の負担を減らし、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1による空港面監視システムを示すブロック構成図である。
【図2】空港面におけるマルチラテレーション装置の配置関係を説明する配置説明図である。
【図3】図1に示す目標処理器の処理を示すブロック図である。
【図4】空港面におけるセンターラインA、センターラインBから、検出位置解との距離を算出する概念図である。
【図5】空港面におけるセンターラインAを基準センターラインとして検出位置解の重み付け算出を説明するための統合概念図である。
【図6】この発明の実施の形態1を実施する場合の重心位置を説明する概念図である。
【図7】この発明の実施の形態1を実施しない場合の重心位置を説明する概念図である。
【図8】この発明の実施の形態2による目標処理器の処理を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3による空港面監視システムを示すブロック構成図である。
【図10】図9に示す目標処理器の処理を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態3による各ASDE航跡位置から、検出位置解との距離を算出する概念図である。
【図12】この発明の実施の形態4による空港面監視システムを示すブロック構成図である。
【図13】図12に示す目標処理器の処理を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態5による空港面監視システムを示すブロック構成図である。
【図15】図14に示す目標処理器の処理を示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態6による空港面監視システムを示すブロック構成図である。
【図17】図16に示す目標処理器の処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1について図1〜図7を用いて説明する。図1は実施の形態1による空港面監視システムを示すブロック構成図、図2は空港面におけるMLAT装置1の配置関係を説明する配置説明図、図3は図1に示す目標処理器7の処理を示すブロック図である。
図1において、1は複数の受信機で航空機からの信号を受信しその受信時刻差から航空機の位置を特定するMLAT装置、2は航空機が送信するトランスポンダの応答信号やスキッタ信号を受信しタイムスタンプを付与する受信機、3は航空機のトランスポンダへの質問機能を受信機2に付加した送受信機、4は各受信機2、送受信機3が同期するための時刻同期信号を放送する基準送信機、5は検出対象であるトランスポンダを搭載した航空機、6は各受信機2、各送受信機3からのタイムスタンプ情報を含むデータを受信し、受信した時刻差から位置を算出する位置検出器、7はこの位置検出器6が算出した複数の検出位置解から最適な位置を算出する目標処理器である。
【0011】
8は目標処理器7が算出した位置情報を管制モニタなどに表示する空港面監視システムの表示装置、9は表示装置8を使用して航空機5や車両等の目標を管制する管制官、10は航空機5などのトランスポンダを搭載する目標に対しての質問信号、11は基準送信機4が送信し各受信機2、送受信機3が同期するための放送信号、12はトランスポンダの応答信号である。
図2は空港面におけるMLAT装置1の配置関係を説明する配置説明図であり、図において、20は滑走路、21は誘導路、22は空港ターミナルである。
【0012】
図2において、13は過去の航跡情報に基づいて、同一目標の予測航跡情報から算出された予測位置付近の相関ゲート内に検出位置情報があるか否かを判定する相関ゲート判定処理部、14は滑走路、誘導路など航空機5が通過する経路のセンターライン情報を蓄積したセンターラインDBである。
ここで、センターラインは、空港面の地図情報であるマップデータなどにおいて航空機が通過すべき経路のセンター座標であり、誤認防止のためペンキを塗るなどして空港面上に実際表示されている中心ラインの座標データである。
【0013】
15はセンターライン位置情報を用いて前記相関ゲート内にある検出位置解との垂直距離を算出する垂直距離算出処理部、16は複数の検出位置解と同一センターラインまでの距離の和が最小になる組合せを算出し基準センターラインを決定するセンターライン距離判定処理部、17は決定したセンターラインに対する垂直距離に応じて各MLAT検出位置解に重み付けする重み付け決定処理部、18は決定した重み付けに基づき重心位置を決定する重心位置算出処理部、19は算出された重心位置と予測位置から平滑された位置を算出する平滑位置算出処理部である。
25は受信機(A、B、C)から得られた検出位置解A、26は受信機(B、C、D)から得られた検出位置解B、27は受信機(A、B、D)から得られた検出位置解C、28は受信機(A、C、D)から得られた検出位置解Dである。
【0014】
次に動作について説明する。図1において、MLAT装置1は、2次監視レーダ又は別に設けた送信機3から各航空機5に対して質問信号を送信し、航空機5の応答装置から送信された応答信号12を空港面に設置した3局以上の複数の受信機2により受信する。 位置検出器6において、これら複数の受信機2応答信号の受信時刻差を当該各受信機2と航空機の距離差に変換し、距離差が一定である条件からなる双曲線同士の交点を求め、航空機5の位置を検出する。2次監視レーダ又は別に設けた送信機3は、無指向性の空中線を用いて所定周期又はランダムに質問信号を送信しており、各航空機5からの応答信号12を受信する毎に当該応答信号12に対応する航空機5の位置情報、識別情報等が検出される。
【0015】
位置検出器6において、受信機2の組合せ数により検出位置解が多数発生する。例えば、仮に5台の受信機2で航空機5の位置を検出した場合には、検出位置解の数は、10通りとなる。図3には目標処理器7での処理内容を示す。 図4を用いて相関ゲート判定処理部13の処理を説明する。相関ゲート判定処理部13では、位置検出器6から例えば検出位置解A25、検出位置解B26、検出位置解C27、検出位置解D28を受取り、目標処理器7で管理している航跡の予測位置からの相関ゲート29内にあり同一目標とみなせるか否かを判定する。 複数の検出位置解が相関ゲート29内と判定された場合、従来の方法では、その検出位置解を均等に判定し重心位置を算出していたが、この発明による重心位置算出処理は、空港内の滑走路10、誘導路21等のセンターライン情報を利用するので、相関ゲート29内と判定された検出位置解は垂直距離算出処理部15に入力される。
【0016】
垂直距離算出処理部15では、センターラインDB14から受け取った各センターライン位置から各検出位置解までの垂直距離を算出する。垂直距離の算出方法について、図4を用いて説明する。図は、滑走路20及び誘導路21のセンターラインが各1本ある場合であり、どちらを基準センタータインとするのか判定する必要がある。
23はセンターラインDB14から得られる滑走路20のセンターラインAの位置情報、24はセンターラインDB14から得られる誘導路21のセンターラインBの位置情報である。 検出位置解A25からセンターラインA23までの距離がd1、センターラインB24までの距離がd2である。同様に、検出位置解BからセンターラインA23までの距離はd3、センターラインB24までの距離はd4と算出され、検出位置解C27からはセンターラインA23までの距離がd5、センターラインBまでの距離がd6である。
検出位置解Dは相関ゲート29の外側であるため、垂直距離算出処理部15には入力されない。算出されたセンターラインまでの距離情報は位置情報と合わせて、センターライン距離判定部16に出力される。
【0017】
センターライン距離判定処理部16では、受け取った各センターラインまでの距離情報を用いて、基準センターラインを判定する。すなわち、検出位置候補である、検出位置解A25、検出位置解B26、検出位置解C27から、候補であるセンターラインのセンターラインA23、センターラインB24までそれぞれの距離の和を算出する。この場合、センターラインA23からの、各検出位置候補への距離の和はd1+d3+d5、センターラインB24からの、各検出位置候補への距離の和はd2+d4+d6であり、図4の場合、d1+d3+d5の和の方が小さいので、この場合はセンターラインA23が基準センターラインと判定され、重み付け決定処理部17へ出力される。
【0018】
重み付け決定処理部17では、各検出位置解と基準センターラインA23からの距離に応じて、重み付けを図5に示すように決定する。d1<d3<d5であるので、重み付けは検出位置解A25>検出位置解B26>検出位置解C27となる。 例えば、距離に比例して重み付けを決定する場合には、
検出位置解A25の重み付けは、
【0019】
【数1】

【0020】
【数2】

【0021】
【数3】

【0022】
となる。比例せずにより基準センターラインに近い方に強く重み付けする場合には、
検出位置解A25の重み付けは、
【0023】
【数4】

【0024】
【数5】

【0025】
【数6】

【0026】
重心位置算出処理部18では、重み付け決定処理部17で決定された重み付けにより、重心位置を算出する。図6は本発明を実施しない場合であり、重心位置30は、検出位置解A25と検出位置解B26と検出位置解C27の重心位置を算出することになる。
図7は本発明を実施した場合であり、基準センターラインA23に近い検出位置解A25に重み付けがされており、本発明を実施しない場合と比較して、基準センターラインに近い位置に重心位置30が算出される。 平滑位置算出処理部19では、重心位置算出処理部18で算出された重心位置30と予測位置から平滑された位置を算出し、目標処理器7から、目標の位置座標として出力される。出力された位置座標は、管制モニタなど空港面監視システムの表示装置に表示され、管制官は表示を見ながら、航空機や車両等の目標を管制する。
【0027】
MLAT装置1は、3箇所以上の受信機2で受信しその時間差から航空機5の位置を特定するため、多数の検出位置解が発生し、1つの検出位置解がマルチパス等により大きく外れた場合、検出位置がばらついてしまう。本実施の形態では、目標である航空機5が滑走路20又は誘導路21など経路のセンターラインを通過するように設計されていることを利用して、各検出位置解のばらつきを、センターラインを基準として重み付けすることにより押さえることができ、位置座標の精度が向上する。 また、各目標検出装置が検出した位置座標を統合する以前に、早い段階であるMLAT装置において検出精度が向上するので、航空管制業務を行う管制官の負担を減らし、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【0028】
実施の形態2. 本形態は、実施の形態1と同じ構成である。
但し、図8に示すように、実施の形態1のセンターラインDB14において、目標処理装置7の平滑位置算出処理部19から、例えば昨日一日間に出力し終えた位置座標データを受取り記憶しておく。この過去一定期間の位置座標は、航空機5が通過した経路座標であるので、この位置座標を近似したラインをセンターライン情報として蓄積する。
【0029】
本実施の形態のセンターライン情報を基準として重み付けしても、実施の形態1と同様に検出位置のばらつきを抑える効果を奏する。
実施の形態1の場合は、センターライン情報を管制官などの関係者から入手することが必要である。しかし、本実施の形態であれば、MLAT装置内部の目標処理装置の出力である位置座標データを記憶しておくことにより、簡単にセンターライン情報を取り出せ使用できる効果がある。
【0030】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3について図9〜図10を用いて説明する。図9は実施の形態3による空港面監視システムを示すブロック構成図、図10は図9に示す目標処理器7の処理を示すフローチャートである。 実施の形態3によるMLAT装置1は、実施の形態1のようにはセンターライン情報を受け取らない場合である。しかし、目標検出装置として併用されており精度の高いASDE装置31の航跡(位置)情報を入手し基準とする。多数の検出位置解から基準とするASDE航跡の位置座標までの垂直距離を算出し、算出した垂直距離に応じて各検出位置解に重み付けを行うことにより位置座標を決定する目標処理器7を備えたことを特徴とするものである。決定された前記位置座標は、空港面監視システムの表示装置8に送られ表示される。
【0031】
31は、代表的な目標検出装置であるASDE(Airport Surveillance Detection Equipment)装置であり、管制塔などの高所に設置され送信電波を発射し、航空機等の目標物に当たって反射してきた電波を受信し信号処理して目標の航跡(位置、速度、移動方向)情報を出力する。目標検出装置としての精度は一般的にMLAT装置1より高いとされている。32は空中に電波を発射するためのASDEアンテナ、33は送信電波を送信し航空機等の目標物に当たって反射してきた電波を受信するASDE送受信機、34は受信電波をA/D変換して目標情報を抽出するASDE検出器、35は相関処理し目標の位置、速度、移動方向の情報をASDE航跡として管理するASDE処理器、36はASDE航跡情報である。
【0032】
図10において、37はASDE航跡情報36を受取りデータ管理するASDE航跡サーバーであり、38は各検出位置解からASDE航跡位置までの距離を算出するASDE航跡距離算出処理部、39は各検出位置解からASDE航跡位置までの距離から基準となるASDE航跡を判定するASDE航跡距離判定処理部である。
【0033】
動作について図10および図11を用いて説明する。ASDE航跡情報36のうちASDE位置情報を、ASDE航跡サーバー37からASDE航跡距離算出処理部38に出力する。ASDE航跡距離算出処理部38では、図11に示す相関ゲート29に入ったなかに2つのASDE航跡、つまりASDE航跡位置A40およびASDE航跡位置B41がある場合に、各検出位置解からASDE航跡までの距離を算出する。 図11の場合は、ASDE航跡位置A40から検出位置解Aまでの距離はd7、ASDE航跡位置A40から検出位置解Bまでの距離はd8となる。ASDE航跡位置B41から検出位置解Aまでの距離はd9、ASDE航跡位置B41から検出位置解Bまでの距離はd10となる。算出された距離情報をASDE航跡距離判定処理部39に出力する。
【0034】
ASDE航跡距離判定部39では、2つのASDE航跡から基準となるASDE航跡を算出するため、検出位置解からASDE航跡位置A40までの距離の和(d7+d8)と、ASDE航跡位置B41(d9+d10)までの距離を比較する。図11の場合、(d7+d8)<(d9+d10)であるので基準ASDE航跡はASDE航跡位置A40と算出され、重み付け決定処理部17に出力される。 重み付け決定処理部17では、基準ASDE航跡との距離に応じて重み付けを算出する。ASDE航跡の信頼度が高い場合は、距離を比例配分せず、より重点的にASDE航跡に重み付けることにより、基準ASDE航跡に近い検出位置解の重みを多くすることで、より信頼の高い重心位置を算出することができる。
【0035】
MLAT装置のように、複数個所に設置された多数の受信機で受信しその時間差から航空機の位置を特定する場合、受信機の組合せの数により多数の検出位置解が発生するため、1つ以上の解がマルチパス等により大きく位置が外れた場合、検出位置座標がばらついてしまう。 本発明によると、MLAT装置において、発生する多数の各検出位置解を高精度であるASDE航跡を基準とし重み付けすることにより押さえることができ、検出位置精度及び信頼性が更に向上する。また、各目標検出装置が検出した位置座標を統合する以前に、早い段階であるMLAT装置において検出精度が向上するので、航空管制業務を行う管制官の負担を軽減し、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【0036】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4について図12〜図13を用いて説明する。図12は実施の形態4による空港面監視システムを示すブロック構成図、図13は図12に示す目標処理器7の処理を示すブロック図である。 図12において、42は複数の可視光カメラや赤外線カメラを用いて空港面を監視するカメラ監視装置である。43は複数の光カメラや赤外線カメラなど空港を撮影するカメラ、44はカメラ43で撮影した画像情報から位置を算出する画像検出器、45は相関処理した航跡情報(位置、速度、移動方向)、ターゲット情報を画像航跡として管理する画像処理器、46はカメラ航跡情報である。 図13において、47はカメラ航跡情報46を受けてデータ管理するカメラ航跡サーバー、48は各検出位置解からカメラ航跡位置までの距離を算出するカメラ航跡距離算出処理部、49は各検出位置解から各カメラ航跡位置までの距離から基準となるカメラ航跡を判定するカメラ航跡距離判定処理部である。
【0037】
動作については、実施の形態3において目標検出装置である「ASDE」装置を「カメラ」監視装置にほぼ置き換えたものであり、図12を用いて説明する。 カメラ航跡サーバー47は、カメラ航跡情報46のうちカメラ位置情報をカメラ航跡距離算出処理部48に出力する。カメラ航跡距離算出処理部48では、相関ゲート29に入ったなかにカメラ航跡位置が2つ以上ある場合、各検出位置解から各カメラ航跡位置までの距離を算出する。
カメラ航跡距離判定処理部49では、各検出位置解から各カメラ航跡位置までの距離が最も近いものを基準カメラ航跡と判定する。 重み付け決定処理部17では、各検出位置解から基準カメラ航跡までの距離に応じて重み付けを算出する。カメラ航跡位置の信頼度が高い場合は、距離を比例配分せず、より重点的に重みを置くことにより、基準カメラ航跡位置に近い検出位置解の重みを多くすることで、より信頼の高い重心位置にすることが可能となる。
【0038】
本実施の形態もセンターライン情報を入手しない場合である。しかし、他の目標検出装置であるカメラ監視装置42から受けたカメラ航跡情報46を、実施の形態3と同じようにMLAT装置において各検出位置解の重み付けに使用することで、MLAT装置の検出位置のばらつきを押さえることができ、検出位置の精度が向上する。また、各目標検出装置が検出した位置座標を統合する以前に、早い段階であるMLAT装置において検出精度が向上するので、この結果、航空管制業務を行う管制官の負担を軽減し、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【0039】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5について図14、図15を用いて説明する。図14は本実施の形態による空港面監視システムを示すブロック構成図、図15は図14に示す目標処理器7の処理を示すブロック図である。 50は空港面を監視しているASDE装置やカメラ監視装置以外の、例えばGPSと無線LANでデータリンクを利用し、目標である航空機5の航跡情報、ターゲット情報などセンサ航跡情報51を管理する目標検出装置である。
図15において、52はセンサ航跡情報51を受取りデータ管理するセンサ航跡サーバー、53は各検出位置解と各センサ航跡位置との距離を算出するセンサ航跡距離算出処理部、54は各検出位置解と各センサ航跡位置までの距離から基準となるセンサ航跡を判定するセンサ航跡距離判定処理部である。
動作については、実施の形態2における「ASDE」を「センサ」に置き換えたものと同様である。
【0040】
本実施の形態もセンターライン情報を入手しない場合である。しかし、信頼できる他の目標検出装置がある場合、センサ航跡情報51をMLAT装置において各検出解候補の重み付けに使用することにより、検出位置のばらつきを押さえることができる。また、各目標検出装置が検出した位置座標を統合する以前に、早い段階であるMLAT装置において検出精度が向上するので、航空管制業務を行う管制官の負担を軽減し、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【0041】
この発明の実施の形態6について図16、図17を用いて説明する。本実施の形態では、目標検出装置としてMLAT装置1とASDE装置31を併用しており、これらを統合処理装置55により統合している。
図16は実施の形態6による空港面監視システムを示すブロック構成図、図17は図16に示す目標処理器7の処理を示すブロック図である。 図16において、55はMLAT装置1から受けたMLAT航跡56とASDE装置31から受けたASDE航跡36とが同一目標のものか否か相関処理し同一目標を統合する統合処理装置、56はMLAT装置から出力され目標の航跡情報(位置、速度、方向情報)、ターゲット情報が含まれるMLAT航跡、57は統合処理装置55から出力される統合航跡である。 図17において、58は統合航跡56を受取りデータ管理する統合航跡サーバー、59は各検出位置解から各統合航跡位置までの距離を算出する統合航跡距離算出処理部、60は各検出解位置から各統合航跡位置までの距離から基準統合航跡位置を判定する統合航跡距離判定処理部である。
動作は、実施の形態3における「ASDE」を「統合」に置き換えたものと同様である。
【0042】
本実施の形態はセンターライン情報を入手しない場合である。しかし、空港面の目標検出装置を統合する統合処理装置55がある場合には、統合航跡情報57をMLAT装置1へフィードバックし、各検出位置解の重み付けの基準とすることで、MLAT装置の検出位置のばらつきを押さえるこができ、検出精度が向上する。この結果、航空管制業務を行う管制官の負担を軽減し、より安全な空港面監視システムを構築できる効果を奏する。
【符号の説明】
【0043】
1 マルチラテレーション装置(MLAT装置)、2 受信機、3 送受信機、
4 基準送信機、5 航空機、6 位置検出器、7 目標処理器、8 表示装置、
9 管制官、
10 質問信号、11 放送信号、12 応答信号、13 相関ゲート判定処理部、
14 センターラインデータベース、15 垂直距離算出処理部、
16 センターライン距離判定処理部、17 重み付け決定処理部、
18 重心位置算出処理部、19 平滑位置算出処理部、20 滑走路、21 誘導路、
22 空港ターミナル 23 センターラインA、24 センターラインB、
25 検出位置解A、26 検出位置解B、27 検出位置解C、28 検出位置解D、
29 相関ゲート、30 重心位置、31 ASDE装置(空港面探知装置)、
32 ASDEアンテナ、33 ASDE送受信機、34 ASDE検出器、
35 ASDE処理器、36 ASDE航跡情報、37 ASDE航跡サーバー、
38 ASDE航跡距離算出処理部、39 ASDE航跡距離判定処理部、
40 ASDE航跡位置A、41 ASDE航跡位置B、
42 カメラ監視装置、43 カメラ、44 画像検出器、45 画像処理器、
46 カメラ航跡情報、47 カメラ航跡サーバー、48 カメラ航跡距離算出処理部、
49 カメラ航跡距離判定処理部、
50 ASDE装置、カメラ監視装置以外の目標検出装置 、51 センサ航跡情報、
52 センサ航跡サーバー、53 センサ航跡距離算出処理部、
54 センサ航跡距離判定処理部、55 統合処理装置、56 MLAT航跡情報、
57 統合航跡情報、58 統合航跡サーバー、59 統合航跡距離算出処理部、
60 統合航跡距離判定処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標から送信される信号を受信する複数の受信機と、これら受信機からの受信信号の異なる組合せから発生する複数の検出位置解を算出し出力する位置検出器と、前記複数の検出位置解から目標位置を特定する目標処理器とで構成される
マルチラテレーション装置において、前記目標処理器が、
前記目標が通過する予定経路の複数のセンターラインを蓄積したセンターラインデータベースと、前記検出位置解が過去の航跡情報に基づいて算出された予測位置に作成された相関ゲート内に有るか否かを判定する相関ゲート判定処理部と、
前記センターラインデータベースから選択された基準センターラインから前記相関ゲート内に有る前記検出位置解までの垂直距離に応じてそれぞれ重み付けする手段と
を備えていることを特徴とするマルチラテレーション装置。
【請求項2】
前記目標処理器が、複数の前記センターライン位置から前記検出位置解までの垂直距離をそれぞれ算出する垂直距離算出処理部と、
前記センターライン位置から前記検出位置解までの垂直距離の和が最小になる組合せを求めて基準センターラインを決定するセンターライン距離判定処理部と
を有することを特徴とする請求項1記載のマルチラテレーション装置。
【請求項3】
前記センターラインデータベースにおいて、
前記センターラインが空港面の地図情報であるマップデータにおいて目標が通過すべき経路のセンター位置情報を近似するラインであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のマルチラテレーション装置。
【請求項4】
前記センターラインデータベースにおいて、前記目標処理器の出力である検出位置情報を前記センターラインデータベースに蓄積しておき、前記検出位置を近似したラインをセンターラインとすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のマルチラテレーション装置。
【請求項5】
目標から送信される信号を受信する複数の受信機と、これら受信機からの受信信号の異なる組合せから発生する複数の検出位置解を算出し出力する位置検出器と、前記複数の検出位置解から目標位置を特定する目標処理器とで構成される
マルチラテレーション装置において、前記目標処理器が、
併用している他の目標検出装置から受け取ったセンサ航跡情報を管理するセンサ航跡サーバーと、前記複数の検出位置解が過去の航跡情報に基づいて算出された予測位置に作成された相関ゲート内に有るか否かを判定する相関ゲート判定処理部と、
前記相関ゲート内に有る検出位置解から基準とする基準センサ航跡位置までの距離に応じてそれぞれ重み付けする手段とを有すること
を特徴とするマルチラテレーション装置。
【請求項6】
前記目標処理器が、前記相関ゲート内にある検出位置解から複数の前記センサ航跡位置までの距離をそれぞれ算出するセンサ航跡距離算出処理部と、
前記センサ航跡位置から前記検出位置解までの距離の和が最小となるセンサ航跡を求め基準センサ航跡を決定するセンサ航跡距離判定処理部を
有することを特徴とする請求項5記載のマルチラテレーション装置。
【請求項7】
前記目標検出装置としてASDE装置を用い、前記センサ航跡位置に代えてASDE装置から出力したASDE航跡位置を、
前記センサ航跡サーバーに代えてASDE航跡サーバーを用いることを
特徴とする請求項5又は請求項6記載のマルチラテレーション装置。
【請求項8】
前記目標検出装置としてカメラ監視装置を用い、前記センサ航跡位置に代えてカメラ監視装置から出力したカメラ航跡位置を、前記センサ航跡サーバーに代えてカメラ航跡サーバーを用いることを特徴とする請求項5又は請求項6記載のマルチラテレーション装置。
【請求項9】
目標から送信される信号を受信する複数の受信機、これら受信機からの受信信号の異なる組合せから発生する複数の検出位置解を算出し出力する位置検出器、及び前記複数の検出位置解から目標位置を特定しMLAT航跡情報を出力する目標処理器より構成されるマルチラテレーション装置と、
照射した電波が目標に当たって反射してきた電波信号を信号処理し目標のASDE航跡情報を出力するASDE装置とを備えている空港面監視システムにおいて、
前記MLAT航跡情報と前記ASDE航跡情報とが同一目標のものか否か相関処理し同一目標を統合した統合航跡情報を出力する統合処理装置を設け、
前記マルチラテレーション装置内部の目標処理器が、前記統合処理装置から受けた
統合航跡情報を管理する統合航跡サーバー、前記複数の検出位置解が過去の航跡情報に基づいて算出された予測位置に作成された相関ゲート内に有るか否か判定する相関ゲート判定処理部及び、前記相関ゲート内にある検出位置解から基準となる基準統合航跡位置までの距離に応じてそれぞれ重み付けする手段を有するマルチラテレーション装置を備えていることを特徴とする空港面監視システム。
【請求項10】
前記マルチラテレーション装置内部の前記目標処理器が、
前記相関ゲート内にある検出位置解から複数の前記統合航跡位置までの距離をそれぞれ算出する統合航跡距離算出処理部と、前記検出位置解から前記統合航跡位置までの距離の和が最小となる統合航跡を求め基準統合航跡を決定する統合航跡距離判定処理部とを有するマルチラテレーション装置を備えたことを特徴とする請求項9記載の空港面監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−21978(P2011−21978A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166745(P2009−166745)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】