説明

マーキング装置およびマーキング方法

【課題】マーキング装置およびマーキング方法において、識別マークを形成できる領域が狭いワークの場合であってもワークに効率よく識別マークを形成することができるようにする。
【解決手段】把持可能領域Hを有するワークWに識別マークMを形成するマーキング装置1であって、把持可能領域HにおいてワークWを把持する把持アーム部6と、把持アーム部6に設けられ、ワークWを把持するとともに、把持した位置に識別マークMの少なくとも一部を形成するマーキング把持部6bと、を備えるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング装置およびマーキング方法に関する。例えば、加工されたり組み立てられたりするワークを識別するために、ワークに識別マークを形成するマーキング装置およびマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工される部品や組み立てられる部品などからなるワークを製造工程の中で識別するため、ワークに識別情報を付与することが行われている。
例えば、特許文献1には、生産された製品の表面にX,Y座標データに基づいて、文字、記号、あるいは図形等の印字データを刻印するレーザマーキング装置が記載されている。このレーザマーキング装置は、識別情報を表す識別マークを形成する装置となっている。
また、特許文献2には、識別情報として、例えば、メス、鉗子等の手術用具については、消毒がされているか、個数がそろっているか、使用が禁止されていないかを手術の前後において厳格に管理するためのデータをRFIDデータキャリアに記憶させ、このRFIDデータキャリアを、メス、鉗子等の手術用具である作業用具に装着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246559号公報
【特許文献2】特開2007−183840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のマーキング装置およびマーキング方法には、以下のような問題があった。
例えば、ワークがレンズなどの光学部品からなる場合、ワーク表面の多くは印字や刻印が困難な光学面である。このため、印字や刻印が可能な領域は、ワークを搬送したり位置決めしたりするために把持する領域(把持可能領域)、例えばレンズの側面(コバ)などと重なってしまう。
したがって、特許文献1に記載の技術のようにレーザマーキングによって刻印を行う場合、ワークをレーザマーキング装置に対して正確に位置決めして保持するために把持可能領域の一部を用いる必要があるため、刻印可能な領域が小さくなり、一度に刻印できる識別マークが小さなものとなってしまう。
また、より多くの情報を刻印するためには、ワークの把持位置を変えて保持し直し、再度位置決めしてから刻印を続ける必要がある。
これらの結果、微小領域に刻印しなければならなくなったり、マーキングに時間がかかったりするため、効率的なマーキングを行うことができなくなるという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術では、RFIDデータキャリアを用いるため、占有スペースの割に多量の識別情報を付与できるものの、RFIDデータキャリアはワークに埋め込んだり接着したりしてワークに装着しなければならない。光学部品などのワークでは、内部が光透過領域として使用され、把持可能領域であるレンズ側面は位置決め部などとしても使用されるため、RFIDデータキャリアの装着が困難になることが多いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、識別マークを形成できる領域が狭いワークの場合であってもワークに効率よく識別マークを形成することができるマーキング装置およびマーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、把持可能領域を有するワークに識別マークを形成するマーキング装置であって、前記把持可能領域において前記ワークを把持する把持機構と、該把持機構に設けられ、前記ワークを把持するとともに、把持した位置に前記識別マークの少なくとも一部を形成するマーキング部と、を備える構成とする。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のマーキング装置において、前記マーキング部が前記把持可能領域を把持する位置を、前記把持可能領域内で相対移動させる相対移動部を備える構成とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のマーキング装置において、前記識別マークを指定する外部入力信号に基づいて前記識別マークを前記マーキング部による1回の把持動作で形成される基本パターンに分解し、該基本パターンを形成すべきパターン形成位置を解析して、前記ワークが前記マーキング部によって前記パターン形成位置で把持されるように前記把持機構の把持動作および前記相対移動部の動作を制御するマーキング制御部を備える構成とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載のマーキング装置において、前記マーキング部は、ライン状のパターンを形成する構成とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載のマーキング装置において、前記マーキング部は、複数の相異なるパターンをそれぞれ形成する複数のマーク形成部材を備える構成とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載のマーキング装置において、前記マーキング部は、前記把持可能領域に印字可能なインクを保持するインク保持体を備え、該インク保持体を前記把持可能領域に当接させて前記識別マークの少なくとも一部を形成する構成とする。
【0012】
請求項7に記載の発明では、把持可能領域を有するワークに識別マークを形成するマーキング方法であって、前記ワークを前記把持可能領域において把持するとともに把持した位置に前記識別マークの少なくとも一部を形成するマーキング部を用いて、前記ワークを1回以上把持することによって、前記識別マークを形成する方法とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマーキング装置およびマーキング方法によれば、マーキング部によってワークを把持することにより識別マークを形成することができるため、識別マークを形成できる領域が狭いワークの場合であってもワークに効率よく識別マークを形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の概略構成を示す模式的な正面図、およびそのA−A断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置に用いるワークの例を示す模式的な正面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図、およびC視の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置によってワークに形成される識別マークの一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の正面視の動作説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の平面視の動作説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るマーキング装置の概略構成を示す模式的な正面図、およびそのD−D断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態のマーキング装置に係る第1変形例の主要部の構成を示す平面視の部分断面図である。
【図10】図9におけるE視、F視、およびG視の側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のマーキング装置に係る第1変形例におけるラインパターンの分割の様子を示す模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の第2変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の第3変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図、およびその動作説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の第4変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るマーキング装置の主要部の構成を示す図1におけるA−A断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係るマーキング装置に用いるワークの例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置について説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA−A断面図である。図2(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置に用いるワークの一例および他例を示す模式的な正面図である。図3(a)は、図1(b)におけるB−B断面図である。図3(b)は、図1(a)におけるC視の側面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の制御ユニットの機能構成を示す機能ブロック図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置によってワークに形成される識別マークの一例を示す模式図である。
【0017】
本実施形態のマーキング装置1は、図1(a)、(b)に示すように、把持可能領域Hを有するワークWの把持可能領域Hに識別マークMを形成するものである。
把持可能領域Hは、例えば、ワークWを搬送したり位置決めしたりするために把持することができる領域であって、後述するインクIによって表面に印字可能な領域であれば、特に限定されない。
また、マーキング装置1は、例えば、ワークWを加工したり組み立てたりする生産システムの一部や、ワークWを搬送する搬送システムなどの一部として、これらのシステムに組み込んで用いることができる。
以下では、マーキング装置1を組み込んだ生産システムの一例として、レンズ製造システム100の例で説明する。
【0018】
レンズ製造システム100は、例えば、図2(a)に示すように、凸レンズ面11a、11bと、これらレンズ面の光軸と同軸の円筒面であるレンズ側面11cとを有する両凸レンズである凸レンズ11を製造する生産システムである。
このため、図1(a)には図示していないが、レンズ加工装置、表面処理装置、および検査装置を備え、これらを用いて、ガラス母材の加工、研磨、表面処理等を行って、凸レンズ11を製造し、製造された凸レンズ11の検査を行うことができるようになっている。
また、レンズ製造システム100内では、凸レンズ11は各装置の間を搬送コンベア7によって搬送されるようになっている。例えば、図1(a)における搬送コンベア7の搬送方向は紙面垂直方向である。
【0019】
マーキング装置1は、レンズ製造システム100内の適宜の位置に配置して、種々の加工状態のワークWに識別マークMを形成することができるが、以下では、凸レンズ面11a、11bの加工、表面処理が終了して、搬送コンベア7によって搬送された凸レンズ11をワークWとして識別マークMを形成する場合の例で説明する。
凸レンズ11は、凸レンズ面11a、11bが汚れたり傷ついたりすると不良になるため、凸レンズ11を保持したり移動したりするために、把持できる把持可能領域Hは、レンズ側面11cのみである。
識別マークMは、以下では、凸レンズ11の製造履歴や製品仕様等に関する情報(以下、製品情報と称する)を表すマークとする。識別マークMが表す製品情報の例としては、例えば、製造日、製造ロット番号、レンズの曲率半径などのレンズ種別を判別する製品番号などを挙げることができる。識別マークMは、個別のワークWに固有の個体識別用のマークであってもよいし、複数のワークWに共通のワーク群を識別するためのマークであってもよい。
また、レンズ製造システム100では、マーキング装置1は、識別マークMが形成されたワークWを搬送コンベア7に隣接して配置されたパレット8のワーク収容部8aに移載する装置としても用いられる。
【0020】
なお、レンズ製造システム100は、凸レンズ11以外のレンズや、レンズ組立体を製造するものであってもよいし、これらを混合生産するものであってもよい。
レンズ組立体の例としては、例えば、図2(b)に示すように、円筒面からなるホルダ側面12dを外周に有する略円筒状のレンズホルダ12cの内部に、第1レンズ12a、第2レンズ12bを同軸に保持させ、接着などによって固定したレンズユニット12(ワーク)の例を挙げることができる。
レンズユニット12のホルダ側面12dは、マーキング装置1によって識別マークMを形成することができる把持可能領域Hになっている。
【0021】
マーキング装置1の概略構成は、図1(a)、(b)に示すように、支柱2、移動アーム3、回動機構4(相対移動部)、把持アーム部6、および制御ユニット10(マーキング制御部)を備える。
支柱2は、搬送コンベア7の側方においてパレット8の配置位置と反対側に立設された柱状部材である。
移動アーム3は、基端部が支柱2の上端部において搬送コンベア7の搬送方向に沿って移動可能に設置され、中間部が水平方向に伸縮可能に設けられたアクチュエータである。
移動アーム3の先端部は、基端部の移動によって、搬送コンベア7の搬送方向に沿うパレット8の上方の範囲を移動することができるようになっている。また、移動アーム3は、中間部の伸縮によって、搬送コンベア7の搬送方向に直交する方向に沿って搬送コンベア7の上方からパレット8の上方までの範囲を進退移動できるようになっている。
また、移動アーム3は、図4に示すように制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10から送出される制御信号に基づいて動作するようになっている。
【0022】
回動機構4は、移動アーム3の先端部において鉛直方向に沿って進退可能かつ鉛直軸回りには回動可能に設けられた回動軸4aと、回動軸4aの進退および回動を行うため、直動アクチュエータや回動モータを有する駆動部4bとからなる。
駆動部4bに用いる回動モータとしては、回動軸4aの回動角を精度よく制御できる適宜のモータを採用することができる。例えば、ステッピングモータなどを採用することが好ましい。
回動モータの回動角の分解能は、ワークWの把持可能領域Hが位置する円周上において、少なくとも後述するマーキング把持部6bの幅w単位の移動を行える程度に設定する。
回動機構4の回動軸4aの下端部には、把持アーム部6を上方側から支持する円板状の支持プレート5が連結されている。
また、回動機構4は、図4に示すように制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10から送出される制御信号に基づいて動作するようになっている。
【0023】
把持アーム部6は、搬送コンベア7によって搬送されたワークWの把持可能領域Hを水平方向から把持するとともに、把持位置においてワークWに、識別マークMの少なくとも一部をなすラインパターンmを印字するものである。
本実施形態では、ラインパターンmとして、短辺幅がw、長辺幅がhの細長いライン状のパターンを採用している。また、長辺幅hの長さは、凸レンズ11のレンズ側面11cの光軸に沿う方向の幅t(図2(a)参照)よりも短い寸法とされている。
【0024】
把持アーム部6の概略構成は、把持アーム駆動機構6c、1対のアーム6a、および各アーム6aに設けられたマーキング把持部6b(マーキング部、把持部)を備える。
【0025】
把持アーム駆動機構6cは、支持プレート5の下面において、1対のアーム6aを回動軸4aの中心軸を含む平面を対称面として面対称に配置し、この対称面を中心として1対のアーム6a間の水平方向の対向間隔を変化させる開閉動作を行うものである。
把持アーム駆動機構6cの構成としては、周知のロボットハンドやチャック機構に用いられる適宜のアクチュエータを採用することができる。例えば、エアシリンダや電動モータなどを用いた構成を採用することができる。
また、把持アーム駆動機構6cは、図4に示すように制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10から送出される制御信号に基づいて動作するようになっている。
【0026】
なお、把持アーム駆動機構6cによる開閉動作は、レンズ製造システム100に用いるワークWの把持および把持解除できるようにアーム6aの対向間隔を変化させられればよい。このため、アーム6aの最小対向間隔は、ワークWの把持可能領域Hの最小径より小さい間隔であればよく、対向するアーム6a同士が当接し合うまで閉じない構成としてもよい。
【0027】
1対のアーム6aは、本実施形態では、上端部が把持アーム駆動機構6cによって水平方向に移動可能に支持され、下端部が鉛直軸に沿う方向に延ばされた棒状部材からなる。
各アーム6aの下端側には、ワークWの把持可能領域Hに当接して、ワークWの把持とラインパターンmの印字とを行うため、互いの対向方向に突出されたマーキング把持部6bがそれぞれ設けられている。
【0028】
マーキング把持部6bは、把持可能領域Hに当接させる先端面が、図3(b)に示すように、ラインパターンmの形状に合わせて水平方向の幅が幅w、鉛直方向の幅が幅hである細長い矩形状に形成された直方体状の突起部からなる。
本実施形態におけるマーキング把持部6bは、図3(a)に示すように、適宜の顔料や染料を含む液状のインクIを保持するため、多孔質材料で形成された印字部材13(インク保持体)で構成されている。
印字部材13は、マーキング把持部6bを構成するため、アーム6aの水平方向の側面に形成されたw×hの矩形状に印字部材取付穴6fを通して一部が外部側に突出され、残りの部分がアーム6aの内部に設けられた印字部材収容部6eに収容されている。
また、アーム6aにおいて、マーキング把持部6bが形成された側面と反対側の側面には、印字部材13にインクIを供給するため、印字部材収容部6eの上端に連通する貫通孔からなるインク供給口6dが設けられている。
【0029】
印字部材13の材質としては、例えば、フェルトや不織布など繊維状体からなる多孔質材料や、ゴム製あるいは合成樹脂製の連続気泡を有する発泡体などを採用することができる。
また、印字部材13は、マーキング把持部6bの部分と、印字部材収容部6eに収容される部分とで、材質や強度が異なる材質で構成してもよい。
例えば、ワークWを把持して移動する場合などに、印字の際に比べて大きな把持力をかける必要があるマーキング把持部6bには、形状がくずれにくい硬質のフェルトや硬質の合成樹脂製の発泡体を採用し、印字部材収容部6eに収容する部分は、インクIの保持量を高めるため、例えばガーゼなどの軟性の多孔質材料や、ゴム製の発泡体を採用してもよい。
【0030】
制御ユニット10は、移動アーム3、回動機構4、および把持アーム部6のそれぞれに電気的に接続され、これらと通信を行うことによりそれぞれの動作制御を行うものである。
制御ユニット10の機能構成は、図4に示すように、識別データ取得部21、識別コード生成部22、およびマーキング動作制御部23を備える。
また、制御ユニット10の装置構成は、本実施形態では、CPU、メモリ、入出力インターフェース、外部記憶装置などからなるコンピュータからなり、上記の機能構成を適宜の制御プログラムを実行することにより実現している。
【0031】
識別データ取得部21は、搬送コンベア7によって、マーキング装置1の把持位置に搬送されたワークWに対応する識別マークMを生成するため、外部入力信号として与えられるワークWの識別データを取得し、識別コード生成部22に送信するものである。
識別データ取得部21には、不図示の入力手段、例えばキーボート、マウス、バーコードリーダなどの入力手段が接続されており、識別データはこの入力手段を介して人手によって入力できるようになっている。
また、例えば、レンズ製造システム100の各装置が通信回線によって共通のシステム制御手段に接続されており、各装置の動作がこのシステム制御手段によって制御される構成をとる場合には、識別データ取得部21が通信回線に接続され、識別データはシステム制御手段から通信回線を通して識別データ取得部21に送信されるようにしてもよい。
【0032】
識別データ取得部21に入力される識別データは、マーキング装置1まで搬送されたワークWの製品情報であり、以降の工程や工場出荷後に、作業者が見て識別したり、適宜の読み取り装置で読み取ったりするための情報である。
識別データのフォーマットは、特に制限はなく、適宜の文字や記号の組合せからなるデータ列を採用することができる。
以下の説明では、一例として、識別データが凸レンズ11の表面処理工程のロット番号であって、大文字と小文字を区別した2桁の英数字からなる場合の例で説明する。具体的には、取得された識別データが「Aa」であるとして説明する。
【0033】
ここで、本実施形態における識別マークMの具体例について説明する。
識別マークMは、図5に示すように、ラインパターンmの有無で1ビッドを表現する2値データ列によって識別データを表す方式を採用している。すなわち、「1」は、把持可能領域H上に、幅wの1本のラインパターンmが印字された状態、「0」は、幅wの空白がある状態を示す。
識別マークMの構成は、左側から、開始コードM、識別コードM、終了コードMが順に並べられてなる。
識別コードMは、2桁の英数字をそれぞれ7ビットのアスキーコードで表したコードM、Mを並べる方式を採用している。例えば、識別データが「Aa」の場合、「A」を表すアスキーコードは「1000001」であり、「a」を表すアスキーコードは「1100001」であるから、生成される識別コードMは、14ビットのデータ列「10000011100001」となる。
開始コードM、終了コードMは、それぞれ識別コードMの開始および終了を示すためのコードであり、コードM、Mとして特定されない適宜のデータ列を採用する。
本実施形態では、開始コードM、終了コードMは、それぞれアスキーコードにおける制御コードSTX、ETXに対応させて、「0000010」、「0000011」を採用している。
ここで、開始コードMは、ラインパターンmの左側に幅wの6倍以上の空白部が形成され、右側に幅wの空白が形成された状態を意味する。
【0034】
識別コード生成部22は、識別データ取得部21から送信された識別データを識別マークMとして表すための識別コードMを生成するものである。例えば、識別データ「Aa」に対応して、それぞれ「1000001」、「1100001」であるコードM、Mを生成し、データ列Mを識別コードMとしてマーキング動作制御部23に送信する。
【0035】
マーキング動作制御部23は、ワークWの把持可能領域Hに識別マークMを形成するために、移動アーム3、回動機構4、および把持アーム部6の動作を制御するものである。
すなわち、マーキング動作制御部23は、識別コード生成部22から送信された識別コードMの左右にそれぞれ開始コードM、終了コードMを付加したデータ列Mを生成する。そして、このデータ列の「1」に対応して、ラインパターンmを形成する位置であるパターン形成位置を解析し、このパターン形成位置にマーキング把持部6bを位置づけて、マーキング把持部6bによってワークWを把持できるように、回動機構4および把持アーム部6の動作を制御する。また、データ列の「0」に対応させて、把持アーム部6を把持解除状態としてから、回動機構4の動作を制御して、把持可能領域Hの円周に沿って弧長wに対応する回動角θだけ把持アーム部6を回動させる制御を行う。
このため、ラインパターンmは、マーキング把持部6bによる1回の把持動作で形成される基本パターンを構成している。
また、マーキング動作制御部23は、識別マークMを形成した後、ワークWをパレット8に移載するために、移動アーム3、把持アーム部6の動作を制御するものでもある。
【0036】
本実施形態のマーキング装置1では、支持プレート5を介して連結された把持アーム部6および回動機構4は、把持可能領域HにおいてワークWを把持する把持機構を構成している。
また、回動機構4は、マーキング把持部6bが把持可能領域Hを把持する位置を、把持可能領域H内で相対移動させる相対移動部を構成している。
また、制御ユニット10は、識別マークを指定する外部入力信号に基づいて識別マークMを基本パターンに分解し、この基本パターンを形成すべきパターン形成位置を解析して、ワークWがマーキング把持部6bによってパターン形成位置で把持されるように把持機構の把持動作および相対移動部の動作を制御するマーキング制御部を構成している。
【0037】
次に、マーキング装置1の動作について、マーキング装置1を用いて行う本実施形態のマーキング方法とともに説明する。
図6(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の正面視の動作説明図である。図7(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の第1の実施形態に係るマーキング装置の平面視の動作説明図である。
【0038】
マーキング装置1は、動作開始前は、移動アーム3を収縮させて回動軸4aが搬送コンベア7の中央部の上方に位置に待機している。
一方、表面処理などの加工工程を終えたワークWは、搬送コンベア7によってワークWの中心が回動軸4aの中心軸と一致する搬送位置まで搬送される。
ワークWが停止したら、マーキング装置1の操作者またはレンズ製造システム100のシステム制御手段によって、制御ユニット10に識別データが入力される。
制御ユニット10に入力された識別データは、識別データ取得部21によって取得され識別コード生成部22に送信される。識別コード生成部22では受信した識別データから識別コードMを生成して、マーキング動作制御部23に送信する。
【0039】
識別コードMを受信したマーキング動作制御部23は、識別コードMに開始コードM、終了コードMを付加したデータ列Mを生成し、データ列Mに基づいて、回動機構4、把持アーム部6の動作を制御し、識別マークMの形成を開始する。
すなわち、マーキング動作制御部23は、把持アーム部6、回動機構4に順次制御信号を送出して、以下のような動作を行わせる。
なお、以下では、回動機構4の回転方向は、鉛直上方から見た回転方向で表わすものとする。
【0040】
まず、マーキング動作制御部23は、把持アーム駆動機構6cを駆動して、マーキング把持部6bの対向間隔をワークWの外径よりも大きくなる位置まで開かせる。次に、駆動部4bを駆動して、各マーキング把持部6bが、ワークWの把持可能領域Hの高さ方向の略中央に位置するように、把持アーム部6を下降させる。
次に、図6(a)、図7(a)に示すように、把持アーム駆動機構6cを駆動して、各マーキング把持部6bによってワークWを挟持させる(以下、把持状態)。これにより、各マーキング把持部6bが把持可能領域Hに当接し、マーキング把持部6bに含まれるインクIが把持可能領域Hに転写される。
【0041】
次に、図7(b)に示すように、把持アーム駆動機構6cを駆動して、各マーキング把持部6bが把持可能領域Hから離れる位置まで把持アーム部6を開かせる(以下、把持解除状態)。このとき、把持可能領域H上には、転写されたインクIによって、周方向の幅がw、高さがhの1対のラインパターンmが形成される。このラインパターンmは、開始コードMの「1」に相当する。把持可能領域Hには、径方向の反対側にしかラインパターンmは形成されていないため、ラインパターンmの左側(時計回り側)には、6×w以上の幅の空白が設けられている。
【0042】
次に、マーキング動作制御部23は、回動機構4を駆動して、把持アーム部6を反時計回りに回動させ、識別コードMの最初の「1」に対応するパターン形成位置にマーキング把持部6bを移動させる。図5に示す例では、最初の「1」は、開始コードMの最下位ビットの「0」の次に現れるコードMの最上位ビットである。このため、回動角は、把持可能領域Hの円周上に沿って弧長2wとなる回動角2θとなる(図7(c)参照)。
次に、マーキング動作制御部23は、図7(d)に示すように、把持アーム部6を把持状態とし、2対目のラインパターンmを形成する。
以下同様にして、マーキング動作制御部23は、把持解除、「0」ビットに相当する空白を形成する回動、把持、の動作を繰り返す制御を行う。これにより識別コードMに対応する複数のラインパターンが形成される。
また、識別コードMの形成が終了したら、終了コードMを同様にして形成する。
このようにして、把持可能領域Hには、識別マークMが、径方向に対向する2箇所に同時に形成される。このように、径方向に対向する2箇所に識別マークMを形成することにより、識別マークMを読み取るときに、識別マークMを見つけやすくなる。このため、識別マークMを迅速に読み取ることができるようになる。
【0043】
このようにマーキング装置1は、ワークWを把持可能領域Hにおいて把持するとともに把持した位置に識別マークMの少なくとも一部を形成するマーキング把持部6bを用いて、ワークWを1回以上把持することによって、識別マークMを形成するマーキング方法を行う装置となっている。
【0044】
このように終了コードMの最下位ビットのラインパターンmを形成し終えたら、マーキング動作制御部23はワークWを移動させる制御を開始する。
すなわち、マーキング動作制御部23は、図6(b)に示すように、把持アーム部6の把持状態に保ちつつ、駆動部4bを駆動して回動軸4aを上昇させるとともに、移動アーム3を伸長させて、パレット8の空いたワーク収容部8aの上方に、ワークWを位置づける。このとき、例えば、識別マークMの位置を適宜方向に揃える必要があれば、回動軸4aを回動させてもよい。
次に、マーキング動作制御部23は、回動軸4aを下降させ、把持アーム部6を把持解除状態として、ワークWをパレット8上に移載する。また、移動アーム3、回動機構4を駆動して、把持アーム部6を初期の待機位置に復帰させ、次に搬送されてくるワークWのマーキングに備える。
【0045】
このようにして、マーキング装置1によれば、ワークWに識別マークMを形成した状態で、ただちにパレット8に移載することができる。
識別マークMは、ワークWの把持動作と同時に形成されていくから、把持可能領域H以外の位置に形成されることはない。このため、把持可能領域H以外の領域にインクIなどが付着しないため、レンズなどの光学部品であっても、レンズ面などを汚すことなく識別マークMを形成することができる。
また、把持動作と同時に識別マークMを形成していくため、把持位置と、識別マークMが形成される領域が重なっている。このため、識別マークMを形成できる領域が狭い場合でも、スペースを有効利用できる。この結果、ワークWを位置決め手段などで把持して一定位置に位置決めし、把持位置を除くスペースに識別マークMを形成する場合に比べて、より大きな識別マークMを形成することができる。
【0046】
また、マーキング装置1では、ワークWを移載するための把持部であるマーキング把持部6bがマーキング部も兼ねているため、ワークWを移載する移載機構とほとんど同じ装置構成によって、マーキングを行うことができる。このため、移載機構とは別に、レーザマーキング装置やインクジェット装置などを設けてマーキングを行う場合に比べて、コンパクトな装置構成とすることができる。
また、レーザマーキング装置やインクジェット装置などによって、識別コードのマーキングを行う場合には、それぞれの装置に対して精密に位置決めしてからマーキングを行う必要があるため、位置決め部に移載する工程や、位置決めを行う工程が必要になるが、本実施形態によれば、これらの工程を省略することができるため、ワークWに効率よく識別マークMを形成することができる。
【0047】
このようにマーキング装置1によれば、マーキング部によってワークを把持することにより識別マークを形成することができるため、識別マークを形成できる領域が狭いワークの場合であってもワークに効率よく識別マークを形成することができる。
【0048】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るマーキング装置について説明する。
図8(a)は、本発明の第2の実施形態に係るマーキング装置の概略構成を示す模式的な正面図である。図8(b)は、図8(a)におけるD−D断面図である。
【0049】
本実施形態のマーキング装置1Aは、図8(a)、(b)に示すように、上記第1の実施形態のマーキング装置1の把持アーム部6、制御ユニット10に代えて、把持アーム部6A、制御ユニット10A(マーキング制御部)を備える。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
把持アーム部6Aは、上記第1の実施形態の把持アーム部6に加えて、さらに1対のアーム9aと、アーム9aの上端部をアーム6aと同様に移動可能に支持する1対の把持アーム駆動機構6cを追加したものである。
アーム9aは、外形がアーム6aと同一の棒状部材からなり、アーム6aのマーキング把持部6bに対応して把持部9bを備える。
把持部9bは、1対のアーム9aを1対のアーム6aと同様の把持状態の位置まで閉じることにより、ワークWの把持可能領域Hを水平方向に把持する部材である。
把持部9bの形状や材質は、ワークWを把持しやすい適宜の形状、材質を採用することができる。例えば、ゴムやエラストマーなどの軟性材料で形成された直方体ブロック状の部材などを採用することができる。
把持部9bの水平方向の幅や鉛直方向の長さは、把持可能領域Hにおいて識別マークMを除く領域に当接できる形状であれば特に限定されない。
また、1対のアーム9aの配置位置は、1対のアーム6aと異なる位置において、回動軸4aの中心軸を挟んで対向していれば、特に限定されないが、本実施形態では、1対のアーム6aの対向方向と直交する方向に対向して配置されている。
【0051】
制御ユニット10Aは、図4に示すように、上記第1の実施形態の制御ユニット10のマーキング動作制御部23に代えて、マーキング動作制御部23の制御動作を把持アーム部6Aの構成に合わせて変更したマーキング動作制御部23Aを備える。
マーキング動作制御部23Aでは、1対のアーム6aと、1対のアーム9aとの把持動作をそれぞれ独立に制御することができるようになっており、識別マークMの形成終了後、パレット8に移載する際の把持動作を1対のアーム9aを用いて行う点が上記第1の実施形態と異なる。
【0052】
本実施形態のマーキング装置1Aによれば、制御ユニット10Aの制御に基づいて1対のアーム6aを駆動することによって、上記第1の実施形態のマーキング装置1と同様にして、識別マークMを形成することができる。
さらに、マーキング装置1Aでは、1対のアーム9aを備えているため、識別マークMの形成が終了したら1対のアーム6aを把持解除状態とし、1対のアーム9aによって、識別マークMが形成されていない把持可能領域Hを把持させる。そして、1対のアーム9aの把持状態を維持した状態で、上記第1の実施形態と同様にワークWをパレット8に移載することができる。
このように、本実施形態では、アーム6aのマーキング把持部6bは、識別マークMを形成するマーキング部としてのみ用いており、把持状態でワークWを持ち上げることはしない。このため、マーキング把持部6bのかかる押圧力は、ワークWの自重を支持するアーム9aの把持状態においてかかる押圧力よりも小さくてよい。
このため、耐久性が同一の材質であれば、本変形例におけるマーキング把持部6bの幅は、上記第1の実施形態のマーキング把持部6bの幅wよりも狭めることが可能である。このため、上記第1の実施形態に比べてより狭い領域に識別マークMを形成することができる。
【0053】
なお、アーム6aを把持状態とした位置において、把持部9bがすでに形成されたラインパターンmに重ならない位置関係にある場合、または、重なってもすでに形成されたラインパターンmが乾燥するなどして、ラインパターンmを損なうおそれがない場合には、アーム9aの把持動作をアーム6aの把持動作と同期させてもよい。
この場合、マーキング把持部6bによる把持状態の際に、ワークWが把持部9bによっても把持されるから、ワークWの位置をより安定させることができる。このため、ラインパターンmの印字精度を向上することができる。
【0054】
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態のマーキング装置に係る第1変形例の主要部の構成を示す平面視の部分断面図である。図10(a)、(b)、(c)は、図9におけるE視、F視、およびG視の側面図である。図11は、本発明の第2の実施形態のマーキング装置に係る第1変形例におけるラインパターンの分割の様子を示す模式図である。
【0055】
本変形例のマーキング装置1Bは、図4、9に示すように、上記第2の実施形態のマーキング装置1Aの把持アーム部6A、制御ユニット10Aに代えて、把持アーム部16、制御ユニット10B(マーキング制御部)を備える。以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0056】
把持アーム部16は、上記第2の実施形態の把持アーム部6Aの1対のアーム6aと1対のマーキング把持部6bとを削除し、1対のアーム9aと異なる3方向においてそれぞれ対向して設けられた3対のアーム6aを備える。本変形例では、これらアーム9aおよびアーム6aの対向方向は円周を8等分する4方向に設定されている。
これら3対のアーム6aには、マーキング把持部6bに代えて、それぞれ第1マーキング部16a(マーク形成部材)、第2マーキング部16b(マーク形成部材)、第3マーキング部16c(マーク形成部材)が設けられている。
第1マーキング部16aは、図10(a)に示すように、把持可能領域Hに当接させる先端面が水平方向の幅が幅2w、鉛直方向の幅が幅hである細長い矩形状に形成された直方体状の突起部であり、短手方向の中心をアーム6aの幅方向の中心に合わせて配置されている。
第2マーキング部16bは、図10(b)に示すように、把持可能領域Hに当接させる先端面が水平方向の幅が幅w、鉛直方向の幅が幅hである細長い矩形状の突起部であり、短手方向の中心をアーム6aの中心軸に対してw/2だけ反時計回り側(図10(b)の図示左側)にずらして配置されている。
第3マーキング部16cは、図10(c)に示すように、第2マーキング部16bと同形状の突起部であり、短手方向の中心をアーム6aの中心軸に対してにw/2だけ時計回り側(図10(c)の図示右側)にずらして配置されている。
【0057】
第1マーキング部16a、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cは、いずれもマーキング把持部6bと同様に印字部材13によって構成することができる。この場合、特に図示しないが、各アーム6aは、それぞれ上記第1の実施形態と同様の印字部材収容部6e、インク供給口6dを有し、印字部材取付穴6fの形状、位置が第1マーキング部16a、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cの形状や配置に合わせた構成を採用することができる。
【0058】
制御ユニット10Bは、図4に示すように、上記第2の実施形態の制御ユニット10Aのマーキング動作制御部23Aに代えて、マーキング動作制御部23Aの制御動作を把持アーム部16の構成に合わせて変更したマーキング動作制御部23Bを備える。
マーキング動作制御部23Bでは、3対のアーム6aと、1対のアーム9aとの把持動作をそれぞれ独立に制御することができるようになっている。
【0059】
本変形例のマーキング装置1Bによれば、第1マーキング部16aによってワークWを把持すると、2w×hの細長い矩形状のラインパターンであるラインパターンm11の形状を印字することができる。また、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cによってワークWを把持すると、それぞれw×hの細長い矩形状であって、印字位置がアーム6aの幅方向の中心軸に対してw/2ずつずれているラインパターンm01、m10の形状が印字することができる。
このため、第1マーキング部16a、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cは、それぞれ1回の把持によって、2ビットに対応する「11」、「01」、「10」の基本パターンをパターン形成位置に形成することができる。
【0060】
そこで、マーキング動作制御部23Bでは、識別コード生成部22から送信された識別コードMの左右にそれぞれ開始コードM、終了コードMを付加したデータ列を生成し、このデータ列の「11」に対応させて第1マーキング部16aを、データ列の「01」に対応させて第2マーキング部16bを、データ列の「10」に対応させて第3マーキング部16cをそれぞれ把持可能領域Hに当接させる制御を行えるようになっている。
また、マーキング動作制御部23Bでは、データ列の「00」に対応して、把持可能領域Hの円周に沿って弧長4wに対応する角度4θだけ印字位置をずらす制御を行えるようになっている。
【0061】
例えば、印字を行わないデータ列「00」をラインパターンm00と表すと、図5と同様の識別マークMは、図11に示すように、ラインパターンが、左側から、m10、m10、m00、m00、m11、m10、m00、m01、m00、m00、m01、m10のように印字されたのと等価になる。そこで、把持アーム部6を回動させて、それぞれのラインパターンを形成すべき印字位置に、適宜、第1マーキング部16a、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cを位置づけて把持動作を行うことによって、識別マークMを形成することができる。
また、識別マークMの形成終了後に、アーム9aによる把持に切り換えて、ワークWをパレット8に移載することは、上記第2の実施形態と同様である。
【0062】
このように、本変形例にでは、2ビットの基本パターンに対応して、第1マーキング部16a、第2マーキング部16b、第3マーキング部16cをそれぞれ備える3対のアーム6aを備えるため、把持動作の回数を半減することができる。したがって、識別マークMを効率的に形成することができる。
【0063】
なお、2ビットの基本パターンに分解した後、それぞれの基本パターンを印字する順番は特に限定されない。例えば、2ビットの基本パターンの配列に応じて、印字順序を変えたときの把持アーム部16の回動角の総和をマーキング動作制御部23Bによってシミュレーションし、回動角の総和が最小になる順序を選択してもよい。
【0064】
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態の第2変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0065】
本変形例のマーキング装置1Cは、図4、12に示すように、上記第2の実施形態のマーキング装置1Aの把持アーム部6A、制御ユニット10Aに代えて、把持アーム部17、制御ユニット10C(マーキング制御部)を備える。以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
把持アーム部17は、上記第2の実施形態の把持アーム部6Aの1対のアーム9aを削除し、1対のアーム6aのマーキング把持部6bが突出された側面を、マーキング把持部6bの下側に延長して把持部17bを構成したものである。
【0067】
制御ユニット10Cは、図4に示すように、上記第2の実施形態の制御ユニット10Aのマーキング動作制御部23Aに代えて、マーキング動作制御部23Aの制御動作を把持アーム部17の構成に合わせて変更したマーキング動作制御部23Cを備える。
マーキング動作制御部23Cでは、上記第2の実施形態と同様にして、マーキング把持部6bをマーキング部として用いて識別マークMを形成する制御を行う。
さらに、制御ユニット10Cでは、識別マークMの形成が終了した後、1対のアーム6aを把持解除状態としてから、回動軸4aを上昇させて、マーキング把持部6bを上方に配させるとともに、回動機構4を駆動して識別マークMが形成されていない把持可能領域Hに面するまで把持アーム部17を回動させ、1対の把持部17bが把持可能領域Hに対向する状態で把持動作を行う制御を行えるようになっている。
【0068】
本変形例のマーキング装置1Cによれば、1対のアーム6aの下端部に設けられた把持部17bによって、識別マークMが形成されていない把持可能領域Hを把持することができる。そして、1対の把持部17bによる把持状態を維持した状態で、上記第1の実施形態と同様にワークWをパレット8に移載することができる。
このため、簡素な構成によりマーキング部と把持部とを分離することができる。
【0069】
[第3変形例]
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図13(a)は、本発明の第2の実施形態の第3変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。図13(b)は、本発明の第2の実施形態の第3変形例に係るマーキング装置の動作説明図である。
【0070】
本変形例のマーキング装置1Dは、図4、図13(a)に示すように、上記第2変形例のマーキング装置1Cの把持アーム部17、制御ユニット10Cに代えて、把持アーム部18、制御ユニット10D(マーキング制御部)(図4参照)を備える。以下、上記第2変形例と異なる点を中心に説明する。
【0071】
把持アーム部18は、上記第2変形例の把持アーム部17の把持部17bを削除して、マーキング把持部6bが突出されたのと反対側のアーム6aの側面に上記第2の実施形態と同様の把持部9bを設け、上記第2変形例の把持アーム駆動機構6cに代えて把持アーム駆動機構18cを備えるものである。
把持アーム駆動機構18cは、把持アーム駆動機構6cの開閉動作を行う機構に加えてアーム6aを鉛直軸回りに180度回動させる回動アクチュエータを備える。回動アクチュエータとしては、例えば、回動可能に軸支されたアーム6aの回動方向の位置をソレノイドや空気圧などを用いて切り換える機構などを採用することができる。
【0072】
制御ユニット10Dは、図4に示すように、上記第2変形例の制御ユニット10Cのマーキング動作制御部23Cに代えて、マーキング動作制御部23Cの制御動作を把持アーム部18の構成に合わせて変更したマーキング動作制御部23Dを備える。
マーキング動作制御部23Dでは、図13(a)に示すように、各把持アーム駆動機構18cの回動アクチュエータによって、アーム6aの回動位置を各マーキング把持部6bが対向する位置に設定する制御を行い、この状態で上記第2変形例と同様にして、マーキング把持部6bをマーキング部として用いて識別マークMを形成する制御を行う。
さらに、制御ユニット10Dでは、識別マークMの形成が終了したら1対のアーム6aを把持解除状態として、ワークWから離間させ、図13(b)に示すように、各把持アーム駆動機構18cの回動アクチュエータを駆動して、各アーム6aの回動位置を各把持部9bが対向する位置に設定する制御を行い、回動機構4を駆動して識別マークMが形成されていない把持可能領域Hに面するまで把持アーム部18を回動させ、1対の把持部9bが把持可能領域Hに対向する状態で把持動作を行う制御を行えるようになっている。
【0073】
本変形例のマーキング装置1Dによれば、各アーム6aを回動させることによって、1対のマーキング把持部6bによるマーキング動作と、1対の把持部9bによる把持動作とを切り換えることができる。そして、1対の把持部9bによる把持状態を維持した状態で、上記第1の実施形態と同様にワークWをパレット8に移載することができる。
このため、簡素な構成により、マーキング部と把持部とを分離することができる。
【0074】
[第4変形例]
次に、本実施形態の第4変形例について説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態の第4変形例に係るマーキング装置の主要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0075】
本変形例のマーキング装置1Eは、図4、14に示すように、上記第3変形例のマーキング装置1Dの把持アーム部18、制御ユニット10Dに代えて、把持アーム部19、制御ユニット10E(マーキング制御部)(図4参照)を備える。以下、上記第3変形例と異なる点を中心に説明する。
【0076】
把持アーム部19は、図14に示すように、上記第3変形例の把持アーム部18のアーム6aと、印字部材13とに代えて、外形が正八角柱であり7つの側面に軸方向に延びるスリット状の開口が形成され内部に印字部材収容部19eを有する八角アーム19aと、印字部材収容部19eに収容され一部が八角アーム19aの側面の開口から径方向外方に突出された印字部材20とを備える。また特に図示しないが、八角アーム19aの上端を水平方向に開閉動作可能、かつ鉛直軸回りに回動動作可能に支持する把持アーム駆動機構を備える。この把持アーム駆動機構は、鉛直軸回りの回動角を45度単位とした以外は上記第3変形例の把持アーム駆動機構18cと同様の構成を有する。
【0077】
八角アーム19aの1つの側面には、上記第3変形例と同様に把持部9bが設けられている。
この把持部9bの形成された側面を除く側面の開口からは、ワークWを把持することにより3ビットの情報を印字するため、図14における時計回りの順に、印字部材20の一部が突出され、複数のマーク形成部材である、第1マーキング部20a、第2マーキング部20b、第3マーキング部20c、第4マーキング部20d、第5マーキング部20e、第6マーキング部20f、および第7マーキング部20gが設けられている。
【0078】
第1マーキング部20aは、上記第3変形例のマーキング把持部6bと同様の形状に突出されている。すなわち、八角アーム19aの側面の中心に幅w、鉛直軸方向の高さhの矩形断面が径方向外側に突出されたものであり、把持可能領域Hに「010」で表される基本パターンを印字するものである。なお、鉛直軸方向の高さは、他のすべてのマーキング部に共通である。
第2マーキング部20bは、第1マーキング部20aを反時計回りにw/2ずらして設けられた幅wの突出部であり、把持可能領域Hに「100」で表される基本パターンを印字するものである。
第3マーキング部20cは、第1マーキング部20aと第2マーキング部20bとを重ね合わせたのと同等な幅2wの突出部であり、把持可能領域Hに「110」で表される基本パターンを印字するものである。
第4マーキング部20dは、八角アーム19aの側面の中心に設けられた幅3wの突出部であり、把持可能領域Hに「111」で表される基本パターンを印字するものである。
第5マーキング部20eは、第4マーキング部20dから第2マーキング部20bに相当する幅wのパターンを除去した幅2wの突出部であり、把持可能領域Hに「011」で表される基本パターンを印字するものである。
第6マーキング部20fは、第4マーキング部20dから第3マーキング部20cに相当する幅2wのパターンを除去した幅wの突出部であり、把持可能領域Hに「001」で表される基本パターンを印字するものである。
第7マーキング部20gは、第4マーキング部20dから第1マーキング部20aに相当する幅wのパターンを除去した幅wからなる1対の突出部であり、把持可能領域Hに「101」で表される基本パターンを印字するものである。
なお、各マーキング部の径方向の突出高さはそれぞれマーキング把持部6bと同様であってもよいが、本変形例では、ワークWの把持可能領域Hの円筒面の曲率に略沿うような凹状に形成されている。凹状の形状は、円弧状であってもよいし、折れ線状の凹状であってもよい。
【0079】
制御ユニット10Eは、図4に示すように、上記第3変形例の制御ユニット10Dのマーキング動作制御部23Dに代えて、マーキング動作制御部23Dの制御動作を把持アーム部18の構成に合わせて変更したマーキング動作制御部23Eを備える。
マーキング動作制御部23Eでは、上記第1変形例のマーキング動作制御部23Bと同様にして、データ列Mを、3ビットの基本パターンに分割して、この基本パターンに合わせて、八角アーム19aを回動させ、第1マーキング部20a〜第7マーキング部20gのいずれかを対向させた後に、把持動作を行って、ワークWの把持可能領域Hに印字を行えるようになっている。
さらに、制御ユニット10Eでは、識別マークMの形成が終了したら1対のアーム6aを把持解除状態として、ワークWから離間させ、各八角アーム19aの回動位置を各把持部9bが対向する位置に設定する制御を行い、回動機構4を駆動して識別マークMが形成されていない把持可能領域Hに面するまで把持アーム部18を回動させ、1対の把持部9bが把持可能領域Hに対向する状態で把持動作を行う制御を行えるようになっている。
【0080】
本変形例のマーキング装置1Eによれば、各八角アーム19aを回動させることによって、第1マーキング部20a〜第7マーキング部20gのうちの1つのマーキング部を選択して、3ビット分の印字を行うことができるため、迅速に識別マークMを形成することができる。
【0081】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態のマーキング装置について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態に係るマーキング装置の主要部の構成を示す図1におけるA−A断面図である。図16は、本発明の第3の実施形態に係るマーキング装置に用いるワークの例を示す模式的な斜視図である。
【0082】
本実施形態のマーキング装置1Fは、図1(a)、図15に示すように、上記第1の実施形態のマーキング装置1の回動機構4、把持アーム部6、制御ユニット10に代えて、昇降機構24、把持アーム部26、制御ユニット10F(マーキング制御部)を備える。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0083】
マーキング装置1Fは、図16に示すような外形が直方体に形成された直方体状部品30をワークWとして、直方体状部品30の側面からなる把持可能領域Hに、識別マークMを形成するものである。
【0084】
昇降機構24は、移動アーム3の先端部において鉛直方向に沿って進退可能に保持された昇降軸24aと、昇降軸24aの進退を行うため、直動アクチュエータを有する駆動部24bとからなる。
昇降機構24の昇降軸24aの下端部には、把持アーム部26を上方側から支持する円板状の支持プレート5が連結されている。
また、昇降機構24は、制御ユニット10Fと電気的に接続され、制御ユニット10Fから送出される制御信号に基づいて動作するようになっている。
【0085】
把持アーム部26は、上記第1の実施形態の把持アーム部6の把持アーム駆動機構6cに代えて、把持アーム駆動機構26cを備える。
把持アーム駆動機構26cは、把持アーム駆動機構6cと同様に1対のアーム6aの開閉動作を行うとともに、1対のアーム6aを対向させた状態で、搬送コンベア7の搬送方向に沿う方向に移動させる水平方向移動動作を行うものである。
把持アーム駆動機構26cの水平方向移動動作を行う構成としては、適宜の直動アクチュエータを採用することができる。例えば、リニアモータやねじ送り機構などを用いた構成を採用することができる。把持アーム駆動機構26cの移動精度は、マーキング把持部6bの幅w単位の移動を行える程度に設定する。
また、把持アーム駆動機構26cは、制御ユニット10Fと電気的に接続され、制御ユニット10Fから送出される制御信号に基づいて動作するようになっている。
なお、把持アーム駆動機構26cによる開閉動作は、直方体状部品30の互いに対向する少なくとも1対の側面を把持および把持解除できるようにアーム6aの対向間隔を変化させられればよい。
【0086】
制御ユニット10Fは、特に図示しないが、上記第1の実施形態の制御ユニット10と同様の構成を備え、マーキング動作制御部23からの制御信号が、把持アーム駆動機構26cの移動位置を変更する制御信号として、把持アーム駆動機構26cに送出される点が異なる。
【0087】
本実施形態では、把持アーム部26は、把持可能領域HにおいてワークWを把持する把持機構を構成している。
また、把持アーム部26の把持アーム駆動機構26cは、マーキング把持部6bが把持可能領域Hを把持する位置を、把持可能領域H内で相対移動させる相対移動部を構成している。
【0088】
本変形例のマーキング装置1Fによって、直方体状部品30に識別マークMを形成するには、搬送コンベア7は、直方体状部品30において識別マークMを形成する側面が搬送コンベア7の搬送方向に沿う姿勢で、直方体状部品30をマーキング装置1Fまで搬送する。
マーキング装置1Fでは、制御ユニット10Fからの制御信号に基づいて、把持アーム部26を移動させつつ、直方体状部品30の把持動作を行って、識別マークMの一部を形成するラインパターンmを印字していくことによって、直方体状部品30の把持可能領域Hに識別マークMを形成する。
このように、マーキング装置1Fによれば、ワークWが直方体状部品30の場合に、ワークWに対して把持動作を行うことによって識別マークMを形成することができる。
【0089】
なお、上記の説明では、マーキング装置が相対移動部を備え、相対移動部により把持する位置を変えて識別マークを形成する場合の例で説明したが、把持機構が相対移動部を有しない構成としてもよい。
例えば、マーキング部がワークの把持可能領域に面して複数配置され、これらの複数のマーキング部を相対移動することなくこれら複数のマーキング部の組合せのみによって必要な識別マークが形成できる場合には相対移動部を有していなくてもよい。
【0090】
また、上記の説明では、マーキング部を回動させる相対移動部として、マーキング部が設けられた把持アーム部6を移動させるため、支持プレート5を支持プレート5の上側から回動させる回動機構4を設けた場合の例で説明した。また、回動機構4は支持プレート5を昇降させる機構も兼ねている。
ただし、マーキング部を回動させる相対移動部の構成はこれに限定されるものではない。すなわち、支持プレート5の下側に設けてもよいし、支持プレート5を昇降させる機構とは別機構で実現してもよい。
例えば、支持プレート5と、把持アーム部6の把持アーム駆動機構6cとの間に、鉛直軸回りに回動する相対移動部である回動ステージを設け、この回動ステージによって把持アーム部6を回動させる構成としてもよい。この場合、把持アーム部6と回動ステージとは把持機構を構成している。
【0091】
また、上記の説明では、相対移動部がワークにマーキングするための把持機構に設けられ、ワークに対して把持機構のマーキング部の位置を移動させる場合の例で説明したが、相対移動部は、把持機構に対してワークの位置を移動させるものであってもよい。
すなわち、相対移動部として、ワークを載置し把持機構に対するワークの位置を移動させる載置台を備える構成としてもよい。載置台としては、例えば、ワークを回動させる回転台や、ワークを直線運動させるXYステージなどを採用することができる。
このような載置台は、搬送コンベア7の側方において把持アーム部6の下方側に把持アーム部6と対をなして設けることができる。この場合、搬送コンベア7によって搬送されたワークWを、パレット8に移載するのと同様にして載置台に移載し、マーキング動作を行うことができる。
また、載置台は、搬送コンベア7上に複数設けておき、ワークWとともに搬送されていく構成としてもよい。
【0092】
また、上記の説明では、マーキング部が識別マークの一部をなす基本パターンを形成するため、マーキング制御部によって、識別マークを1以上の基本パターンに分解して、基本パターンの組合せによって識別マークを形成した。ただし、複数のマーキング部を有し、これらのマーキング部のそれぞれが相異なる識別マークを形成できる場合には、識別データに応じた識別マークを形成するマーキング部を選択してワークを把持するだけでよい。
【0093】
また、上記の説明では、マーキング部によって形成される基本パターンがライン状のパターンからなる場合の例で説明したが、マーキング部が形成するパターンはライン状に限定されるものではなく、例えば、円、楕円、矩形、多角形などの適宜の形状の図形およびそれらの組合せを採用することができる。
【0094】
また、上記の説明では、ライン状のパターンとして、線幅が異なり長さが同一の頼成パターンで構成する場合の例で説明したが、長さのみ、あるいは線幅と長さの両方を変えたライン状のパターンを採用してもよい。
【0095】
また、上記の説明では、識別マークをアスキーコードでコード化されたライン状のパターンを採用した例で説明したが、アスキーコードに限らず、周知の他のコードを用いてコード化してもよい。また標準規格などとは異なる専用のコードを用いてもよい。
【0096】
また、上記の説明では、識別マークをインクを用いて印字して形成する場合の例で説明したが、マーキング部を把持可能領域に当接させることで形成できるマークであれば、インクによる印字には限定されない。例えば、把持可能領域が柔らかい材質からなる場合や、柔らかい材質からなるラベルなどが貼り付けられている場合には、マーキング部による把持の際に刻印してもよい。また、把持可能領域が熱変成可能な材質からなる場合や、把持可能領域に感熱ラベルが貼り付けられている場合には、加熱されたマーキング部によってワークを把持して識別マークを形成してもよい。
【0097】
また、上記の説明では、マーキング部が多孔質材料からなる印字部材からなる場合の例で説明したが、毛細管現象によってインクを供給するスリットを備えるマーキング部などを採用してもよい。
【0098】
また、上記の説明では、1対のマーキング部によってワークを把持する場合の例で説明したが、識別マークを1対ずつ形成しなくてもよい場合には、1つのマーキング部と識別マークを形成しない把持部とを対向させて把持するようにしてもよい。
また、ワークの外周を3以上のマーキング部によって同時に把持し、3以上の識別マークを同時に形成する構成としてもよい。
【0099】
また、上記の説明では、把持機構は、棒状部材を開閉して把持動作を行う場合の例で説明したが、把持機構は多関節アームによってワークを把持するようにしてもよい。
【0100】
また、上記の各実施形態、変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F マーキング装置
4 回動機構(相対移動部、把持機構)
5 支持プレート
6、6A、16、17、18、19、26 把持アーム部(把持機構)
6a、9a アーム
6b マーキング把持部(マーキング部、把持部)
6c、18c 把持アーム駆動機構
9b、17b 把持部
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 制御ユニット(マークキング制御部)
11 凸レンズ(ワーク)
11c レンズ側面(把持可能領域)
12 レンズユニット(ワーク)
12d ホルダ側面(把持可能領域)
13、20 印字部材
16a、20a 第1マーキング部(マーク形成部材)
16b、20b 第2マーキング部(マーク形成部材)
16c、20c 第3マーキング部(マーク形成部材)
18c 把持アーム駆動機構
19a 八角アーム
20d 第4マーキング部(マーク形成部材)
20e 第5マーキング部(マーク形成部材)
20f 第6マーキング部(マーク形成部材)
20g 第7マーキング部(マーク形成部材)
21 識別データ取得部
22 識別コード生成部
23、23A、23B、23C、23D、23E マーキング動作制御部
24 昇降機構
26c 把持アーム駆動機構(相対移動部)
30 直方体状部品(ワーク)
100 レンズ製造システム
H 把持可能領域
I インク
M 識別マーク
終了コード
開始コード
識別コード
、m00、m01、m11 ラインパターン(ライン状のパターン、基本パターン)
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持可能領域を有するワークに識別マークを形成するマーキング装置であって、
前記把持可能領域において前記ワークを把持する把持機構と、
該把持機構に設けられ、前記ワークを把持するとともに、把持した位置に前記識別マークの少なくとも一部を形成するマーキング部と、
を備えることを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
前記マーキング部が前記把持可能領域を把持する位置を、前記把持可能領域内で相対移動させる相対移動部を備えることを特徴とする請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記識別マークを指定する外部入力信号に基づいて前記識別マークを前記マーキング部による1回の把持動作で形成される基本パターンに分解し、該基本パターンを形成すべきパターン形成位置を解析して、前記ワークが前記マーキング部によって前記パターン形成位置で把持されるように前記把持機構の把持動作および前記相対移動部の動作を制御するマーキング制御部を備えることを特徴とする請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項4】
前記マーキング部は、
ライン状のパターンを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマーキング装置。
【請求項5】
前記マーキング部は、
複数の相異なるパターンをそれぞれ形成する複数のマーク形成部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマーキング装置。
【請求項6】
前記マーキング部は、
前記把持可能領域に印字可能なインクを保持するインク保持体を備え、該インク保持体を前記把持可能領域に当接させて前記識別マークの少なくとも一部を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマーキング装置。
【請求項7】
把持可能領域を有するワークに識別マークを形成するマーキング方法であって、
前記ワークを前記把持可能領域において把持するとともに把持した位置に前記識別マークの少なくとも一部を形成するマーキング部を用いて、前記ワークを1回以上把持することによって、前記識別マークを形成することを特徴とするマーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−167806(P2011−167806A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33749(P2010−33749)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】