説明

ミキサ

【課題】 撹拌羽根の回転抵抗が小さく、撹拌羽根への材料の付着・残留も少なくてメンテナンス性も優れ、かつ造粒も好適に行われるミキサを提供する。
【解決手段】 パン型状の撹拌槽4内を高速で自転しながら撹拌槽4内周壁に沿って公転する従動軸9の下端部に、水平アーム11を固着し、この水平アーム11にはその幅方向に所定間隔にて複数の撹拌用の棒鋼12を垂下させ、かつこれら各棒鋼12の下端部を撹拌槽4底壁と近接させて成る撹拌羽根13を備える。上記構成の撹拌羽根13であれば、材料を造粒処理する際の撹拌羽根13の回転抵抗も小さく、また撹拌羽根13への材料の付着・残留も抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン型状の撹拌槽内に供給される各種材料を撹拌羽根にて撹拌・混合しながら造粒処理するのに適したミキサに関し、特に撹拌羽根を自転させつつ撹拌槽内周壁に沿って公転させるように構成したミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料や土壌改良剤、飼料、肥料、農薬などの製造時や、焼却灰などの粉体状の廃棄物の処理時などにおいて、品質・性状の安定化やハンドリング性の向上などを目的として、上記各材料に対して所定量の水などの液体を添加した上で所定時間撹拌・混合して所望粒度に造粒処理する場合がある。
【0003】
上記造粒処理にあたっては適宜のミキサが採用され得るが、例えば、パン型状の撹拌槽内に備えた撹拌羽根を所定速度で自転させつつ、撹拌槽内周壁に沿って公転させるように構成し、撹拌槽内に供給した各種材料を効率よく撹拌・混合させて所望粒度に造粒処理可能とした、一般に遊星タービンミキサやプラネタリーミキサなどと呼ばれるミキサがある。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2002−79072号公報)には、パン型状の撹拌槽内に供給される焼却鶏ふんの粉体と所定量の水とを、撹拌槽内を自転しながら撹拌槽内周壁に沿って公転する撹拌羽根により、撹拌・混合させて造粒処理するようにした造粒方法が記載されており、また特許文献2(特開2004−305914号公報)には、特許文献1と同様のミキサを用いて、揮発性塩素化炭化水素系物質が含まれる土壌と無機化合物とを撹拌・混合させて造粒処理するようにした処理方法が記載されている。また、特許文献3(特許第3942598号公報)には、撹拌羽根駆動用の二基の駆動モータを何れも撹拌槽上部に設置し、撹拌槽中央部を貫通させる回転軸を無くして、パン型状の撹拌槽の容積をフルに活用可能としたミキサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−79072号公報
【特許文献2】特開2004−305914号公報
【特許文献3】特許第3942598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように各種材料に水等を添加して撹拌羽根にて撹拌・混合して造粒処理するパン型状の撹拌槽を有するミキサにおいては、造粒処理する材料に応じて撹拌羽根の形状等に種々の工夫が施されている。ところで、汎用の造粒に適したミキサとなると、造粒処理する材料に対して添加する水量を種々調整しながら撹拌を行い、好適な粒径の造粒物とするための最適の水量を見いだす必要があるが、このときに造粒処理する材料の性状、または添加する水量によって時として駆動モータに負荷が掛かりすぎることもある。したがって、汎用の造粒用ミキサでは、撹拌羽根の回転抵抗が小さくて駆動モータの負荷が少なく、また材料性状や水添加量の変化に対する負荷変動も極力少ないものが好ましく、更にメンテナンス面から撹拌羽根への材料の付着・残留も少なく、かつ造粒も速やかに行われるものが要求される。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、撹拌羽根の回転抵抗が小さく、撹拌羽根への材料の付着・残留も少なくてメンテナンス性も優れ、かつ造粒も好適に行われるミキサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のミキサでは、パン型状の撹拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記撹拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心の固定ギヤを遊嵌させて撹拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には複数の従動軸を回転自在に軸支し、各従動軸の上端に固着した従動ギヤを前記固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ自転しながら駆動軸周囲を公転するようにする一方、各従動軸の下端部に水平アームを固着し、該水平アームには水平方向に所定間隔にて複数の撹拌用の棒鋼を垂下させ、かつ該棒鋼の下端部を撹拌槽底壁と近接させて成る撹拌羽根を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載のミキサでは、前記撹拌羽根の水平アームに垂下させた棒鋼のうち両端位置の棒鋼の側部には、水平に配した複数の掻き取り用の短棒鋼を垂直方向に所定間隔にて固着し、かつ該短棒鋼はその回転軌跡外縁が撹拌槽内周壁と近接する長さに形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載のミキサによれば、パン型状の撹拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記撹拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心の固定ギヤを遊嵌させて撹拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には複数の従動軸を回転自在に軸支し、各従動軸の上端に固着した従動ギヤを前記固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ自転しながら駆動軸周囲を公転するようにする一方、各従動軸の下端部に水平アームを固着し、該水平アームには水平方向に所定間隔にて複数の撹拌用の棒鋼を垂下させ、かつ該棒鋼の下端部を撹拌槽底壁と近接させて成る撹拌羽根を備えたので、撹拌羽根の回転抵抗も小さくて駆動モータの負荷も少なく、また撹拌羽根への材料の付着・残留も抑えてメンテナンス性も優れ、かつ造粒も好適に行うことができる。
【0011】
また、請求項2記載のミキサによれば、前記撹拌羽根の水平アームに垂下させた棒鋼のうち両端位置の棒鋼の側部には、水平に配した複数の掻き取り用の短棒鋼を垂直方向に所定間隔にて固着し、かつ該短棒鋼はその回転軌跡外縁が撹拌槽内周壁と近接する長さに形成したので、撹拌槽内周壁への材料の付着を抑えることができ、メンテナンス性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るミキサの一実施例を示す、一部切り欠き正面図である。
【図2】図1の一部切り欠き側面図である。
【図3】図1の一部切り欠き平面図である。
【図4】撹拌羽根の拡大正面図(a)、及び拡大側面図(b)である。
【図5】撹拌羽根の別の実施例を示す、図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るミキサにあっては、パン型状の撹拌槽上位に配設した駆動モータの駆動軸を下位の撹拌槽の中心部へ垂下させていると共に、該駆動軸には同心の固定ギヤを遊嵌させて撹拌槽に固着している。また、前記駆動軸の下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の対向位置の端縁部には一対の従動軸をそれぞれ回転自在に軸支していると共に、各従動軸の上端に固着した従動ギヤを前記固定ギヤと噛合させており、駆動軸の回転に伴って各従動軸がそれぞれ自転しながら駆動軸周囲を、撹拌槽内周壁に沿って公転するようにしている。また、各従動軸の下端部には水平アームを固着していると共に、該水平アームには水平方向に所定間隔にて複数の撹拌用の棒鋼を垂下させ、かつ該棒鋼の下端部を撹拌槽底壁と近接させて成る撹拌羽根を備えている。
【0014】
そして、上記構成のミキサにて、撹拌槽内に供給した材料を撹拌・混合して造粒処理するときには、駆動モータにて駆動軸を所定速度にて回転させ、それに伴って回転する支持部材と共に撹拌羽根を撹拌槽内周壁に沿って公転させると共に、撹拌羽根の公転に伴って固定ギヤと噛合させている従動軸上端の従動ギヤが回転し、固定ギヤと従動ギヤのギヤ比に応じて撹拌羽根を所定の速度で自転させる。そして、撹拌槽内に供給した材料は、前記のように所定速度で自転しながら撹拌槽内周壁に沿って公転する撹拌羽根によって撹拌槽内全域で効果的に繰り返し撹拌・混合され、やがて所望粒度に造粒処理されていく。
【0015】
このように、本ミキサでは複数の棒鋼を垂下させたごくシンプルな構成の撹拌羽根を採用したので、撹拌羽根の回転抵抗は小さくて駆動モータの負荷も少なく、また材料の付着・残留を抑えることができてメンテナンス性も優れており、汎用の造粒用ミキサとして好適である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図中の1は、例えば、建築材料や土壌改良剤、飼料、肥料、農薬、焼却灰などの各種材料に所定量の水などの液体を添加して所定時間撹拌・混合して所望粒度に造粒処理するミキサであって、移動・搬送用のキャスター2にて支持される架台3上にパン型状の撹拌槽4を搭載し、該撹拌槽4の上部開放部に臨ませるように架台3より腕部3aを延設していると共に、該腕部3a上には駆動モータ5を載置している。また、前記駆動モータ5の駆動軸6を下位の撹拌槽4の中心部へ垂下させていると共に、該駆動軸6には駆動軸と同心の固定ギヤ7を遊嵌させ、撹拌槽4に固着している。
【0018】
前記駆動軸6の下端部には水平に配した板状の支持部材8を固着し、該支持部材8の対向位置の端縁部には一対の従動軸9をそれぞれ回転自在に軸支していると共に、各従動軸9の上端には所定径、例えば前記固定ギヤ7よりもやや小径の従動ギヤ10を固着し、該従動ギヤ10を固定ギヤ7と噛合させて連動させるようにしており、駆動軸6の回転に伴って支持部材8に軸支した各従動軸9がそれぞれ所定速度にて自転しながら駆動軸6周囲を、撹拌槽4内周壁に沿って公転するようにしている。
【0019】
なお、本実施例では、従動ギヤ10の径を固定ギヤ7よりも小径とすることにより、従動軸9の自転速度を公転速度よりも高速となるように図っているが、前記従動ギヤ10と固定ギヤ7のギヤ比は造粒処理する材料の種類や性状、また造粒物の所望粒度などに応じて適宜調整するとよい。また、各従動軸9上端部の従動ギヤ10と、駆動軸6下端部の固定ギヤ7とを連動させる手段として、本実施例では各ギヤ同士を直接噛合させているが、例えば、チェーンやベルトなどの伝達手段を介して連動させるようにしてもよい。
【0020】
各従動軸9の下端部には撹拌槽4の半径程度の幅を有する略ハンガー形状の水平アーム11を固着していると共に、該水平アーム11には水平方向(幅方向)に所定間隔にて複数の丸鋼などの棒鋼12を垂下させ、かつ各棒鋼12の下端部を、図に示すように、撹拌槽4底壁と近接させるようにして成る撹拌羽根13を備えており、従動軸9の回転に伴って水平アーム11に垂下した複数の棒鋼12が回転し、撹拌槽4内の材料を掻きほぐすようにして効果的に撹拌・混合しながら造粒処理可能としている。
【0021】
なお、前記撹拌羽根13の各棒鋼12の本数や、間隔、或いは棒鋼12の径などは、材料の種類や性状、また造粒物の所望粒度などに応じて最適な造粒処理が可能なように適宜決定すると良い。また、水平アーム11は、撹拌槽4の半径と略同等の水平長さとし、一対の水平アーム11に垂下した棒鋼12によって撹拌槽4内の全域を掻き混ぜられるようにしておくと良い。
【0022】
また、14は撹拌槽4の内周壁に付着・残留する材料を掻き取るスクレーパであって、支持部材8に固着したアーム15の下端部に垂直に配した摺動部材16を固着していると共に、該摺動部材16の外周端縁を撹拌槽4の内周壁に当接させており、駆動軸6の回転に伴って前記摺動部材16が撹拌槽4の内周壁に沿って摺動し、撹拌槽4の内周壁に付着・残留する材料を掻き取って撹拌槽4の中心側に掻き寄せるように図っている。また、17は造粒物排出用に開閉自在に備えた排出ゲートである。
【0023】
そして、上記構成のミキサ1にて、撹拌槽4内に供給した材料を撹拌・混合して造粒処理するときには、駆動モータ5にて駆動軸6を所定速度にて回転させ、それに伴って回転する支持部材8と共に撹拌羽根13を撹拌槽4内周壁に沿って公転させる(図3中の矢印A方向)と共に、この撹拌羽根13の公転に伴って固定ギヤ7と噛合させている従動軸9上端の従動ギヤ10が回転し、固定ギヤ7と従動ギヤ10のギヤ比に基づいて撹拌羽根13を所定速度、例えば公転速度に対して1.5〜2倍程度の速度にて自転させる(図3中の矢印B方向)。こうして、撹拌槽4内に供給した材料は、高速で自転しながら撹拌槽4内周壁に沿って公転する撹拌羽根13によって効果的に繰り返し撹拌・混合され、やがて所望粒度に造粒処理されていく。
【0024】
このとき、上記撹拌羽根13は、表面の平滑な丸鋼などの棒鋼12を所定間隔にて垂下させたシンプルな構成としているため、水などの液体を添加した各種材料を撹拌・混合しながら造粒処理するときにおいても、撹拌羽根の回転抵抗は比較的小さく、棒鋼12表面への材料の付着・残留は生じにくく、例え付着が生じてもごく簡単な作業で容易に除去することができる。
【0025】
このように、本ミキサでは上記のごとき棒鋼を垂下して成る撹拌羽根を採用したので、撹拌羽根の回転抵抗も小さくて駆動モータの負荷を少なくでき、多少の高粘性材料を造粒処理する場合であっても駆動モータに負荷が掛かりすぎて回転が停止するようなことは極力避けることができ、汎用の造粒用ミキサとして好適である。また、撹拌羽根への材料の付着・残留も少なくてメンテナンス性に優れている。
【0026】
また、図5は撹拌羽根13の別の実施例を示すものであり、撹拌羽根13の水平アーム11に垂下させる棒鋼12のうち、アーム両端位置の各棒鋼12の側部に、水平に配した複数の掻き取り用の短棒鋼18を垂直方向に所定間隔にて固着し、かつこれら各短棒鋼18はその回転軌跡外縁が撹拌槽4内周壁と近接する程度の長さに形成しており、このような構成とすることによって、撹拌羽根13の回転動作に伴って撹拌槽4内周壁に付着・残留する材料を効果的に掻き取って除去することができ、メンテナンス性を一層向上させることが可能となって好適である。なお、この場合には前記スクレーパ14を省略することができる。
【0027】
本発明者らは上記構成のミキサ1を用いて、消石灰に対して30%程度の水を添加したものを撹拌槽4(容量:70リットル)に供給し、駆動モータ(220V、1.5kw、4P)にて自転72回転/分、公転43回転/分にて約10分程度撹拌・混合したところ、粒径5mm程度にほぼ均一に造粒処理することができた。その際、駆動モータ5の負荷が急増するようなこともなく終始安定した運転が行え、また撹拌羽根13の棒鋼12表面や各棒鋼12間には材料である消石灰の付着・残留もほとんど生じず、僅かに生じた付着物も簡単なハツリ作業によって容易に除去することができた。
【符号の説明】
【0028】
1…ミキサ 3…架台
4…撹拌槽 5…駆動モータ
6…駆動軸 7…固定ギヤ
8…支持部材 9…従動軸
10…従動ギヤ 11…水平アーム
12…棒鋼 13…撹拌羽根
18…短棒鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン型状の撹拌槽の上位に駆動モータを配設し、該駆動モータの駆動軸を前記撹拌槽の中心部へ垂下させ、該駆動軸には同心の固定ギヤを遊嵌させて撹拌槽に固着すると共に、駆動軸下端部には水平に配した支持部材を固着し、該支持部材の端縁部には複数の従動軸を回転自在に軸支し、各従動軸の上端に固着した従動ギヤを前記固定ギヤと連動させ、駆動軸の回転に伴って支持部材に軸支した各従動軸がそれぞれ自転しながら駆動軸周囲を公転するようにする一方、各従動軸の下端部に水平アームを固着し、該水平アームには水平方向に所定間隔にて複数の撹拌用の棒鋼を垂下させ、かつ該棒鋼の下端部を撹拌槽底壁と近接させて成る撹拌羽根を備えたことを特徴とするミキサ。
【請求項2】
前記撹拌羽根の水平アームに垂下させた棒鋼のうち両端位置の棒鋼の側部には、水平に配した複数の掻き取り用の短棒鋼を垂直方向に所定間隔にて固着し、かつ該短棒鋼はその回転軌跡外縁が撹拌槽内周壁と近接する長さに形成したことを特徴とする請求項1記載のミキサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−88034(P2011−88034A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241354(P2009−241354)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】