説明

ミクロビーズ殺虫剤の製造方法と、このミクロビーズ殺虫剤の穀物保護での使用

【課題】少なくとも部分的に水に可溶な殺虫剤のミクロビーズの製造方法。有機試薬R1を農薬と一緒に極性液相(φp)中に置き、有機試薬R2は極性液相に非相溶な溶媒(S)と攪拌時に極性液相(φp)を油性液相(φh)中に分散させることができる少なくとも一種の界面活性剤とからなる油性液相(φh)中に置き、この二相系液体中で相補な有機試薬R1とR2を重縮合する。
【解決方法】重縮合が極性液相(φp)で起こるように有機試薬R1および有機試薬R2の組み合わせを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物保護の分野、特に、水に一部可溶な殺虫剤、例えばメトミル(methomyl)を含浸したミクロビーズの製造方法と、穀物保護でのこのミクロビーズの使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物保護に活性な水に不溶な物質をマイクロカプセル化する技術は古くから開発されている。
「マイクロカプセル化」という用語は液体の活性物質(または溶媒を加えることによって液体になる活性物質)を「貯蔵カプセル」とよばれる中空なマイクロカプセルの内部に封入すること(従って、マイクロカプセルは液体のコアとこの液体が充填された小球状の固体の中空体とから成る)と、中実なミクロビーズの内部に活性物質を封入すること(従って、ミクロビーズは完全に活性物質で含浸される)とを意味する。
【0003】
植物保護の分野でマイクロカプセル化されるのは、大抵の場合、殺虫性活性物質であるが生物学的に活性な他の物質がマイクロカプセル化されることもある。マイクロカプセル化することによって毒性の強い有害な活性物質を適切な調合物とし、毒性を減らして使用者への危険を無くすことができ、また、所定の残留効果によって農薬散布頻度を大幅に減らすことができる。
【0004】
最もよく知られたマイクロカプセル化方法は水中油のエマルジョンを用いた界面重合によるマイクロカプセル化であり(下記文献参照)、今日では植物保護農薬の製造メーカはこの原理で多くの商業的な製品を製造している:
【特許文献1】米国特許第3 577 515号明細書
【0005】
上記特許の変形方法や改良方法が多数提案されてきた。しかし、それらの方法は全て同じ限界に直面している。すなわち、この技術でうまくマイクロカプセル化できるのは水に不溶な活性物質だけである。
水に完全に可溶か、部分的に可溶な活性物質のマイクロカプセル化に関する特許も多数出されている。植物保護活性物質の分野に関する特許は少ないが、グリホセイトのマイクロカプセル化に関する下記特許文献を挙げることができる。
【特許文献2】欧州特許第EP 0 148 169号公報
【0006】
また、メトミルのマイクロカプセル化に関するとしては下記の特許文献を挙げることができる。
【特許文献3】英国特許第2 027 346号公報
【特許文献4】欧州特許第EP 4758号公報
【特許文献5】米国特許第4 235 872号明細書
【特許文献6】米国特許第4 282 209号明細書
【特許文献7】米国特許第4 722 838号明細書
【0007】
しかし、現在のところ、水に可溶または部分的に可溶な植物保護活性物質をマイクロカプセルまたはミクロビーズの懸濁液にした商業的な製品はない。
【0008】
部分的に水溶性の植物保護用活性物質の代表例はメトミルである。これはカルバミン酸エステル系殺虫剤で、デュポン社(E.I. du Pont de Nemours)からラネート(Lannate、登録商標)20Lの名称で水アルコール溶液として市販さている。このメトミルは現在のところコットン(綿植物)処理用殺虫剤組成物の中で最も重要な位置を占めている。メトミルは果樹、ブドウ、オリーブ、ホップ、装飾植物、クークルビタ(curcurbitacees)、亜麻、タバコ、大豆、その他の穀物の栽培分野で、多くの昆虫(特に、鱗翅類、半翅類、双翅類および鞘翅類の昆虫)および赤蜘蛛(またはダニ類)をコントロールできる。メトミルは家禽および飼育小屋の飛行性昆虫のコントロールにも使用できる。
【0009】
メトミルは極めて有毒な活性物質で、植物に層状に作用し、全体的に作用する。そのノックダウン効果は有名であるが、メトミルは太陽の紫外線に曝されると劣化するため、その効率、効果は経時的に失われる。メトミルの水への溶解度は小さい(20℃で58グラム/リットル)が、従来法(特許文献1(米国特許第3 577 515号明細書)に記載の「oil-in-water法」)ではメトミルをカプセルできない(してはならない)溶解度である。すなわち、この活性物質の水中での溶解度が最大値に達する前にメトミルの一部がカプセル外に拡散してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、互いに非相溶な第1と第2の液相中に置いた一対の互いに相補な有機試薬を重縮合させることによって、得られた重縮合物のミクロビーズ中に、メトミルを溶液状態で含む第1液体の液滴をカプセル化できるということ、従って、メトミル(またはその他の少なくとも部分的に水に可溶な殺虫剤)を含む、凝集や会合する傾向のないミクロビーズを得ることができるということを見い出した。この液相(その中にミクロビーズが得られる)はメトミル(またはその他の殺虫剤)の溶媒ではないので、活性物質はミクロビーズ中に必要な長時間にわたって確実に維持される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の対象は、有機試薬R1を農薬と一緒に極性液相(φp)中に置き、有機試薬R2は極性液相に非相溶な溶媒(S)と、攪拌時に極性液相(φp)を油性液相(φh)中に分散させることができる少なくとも一種の界面活性剤とからなる油性液相(φh)中に置き、この二相系液体中で相補な有機試薬R1とR2を重縮合することによって、少なくとも部分的に水に可溶な殺虫剤のミクロビーズを製造する方法において、重縮合が極性液相(φp)で起こるように上記有機試薬R1および有機試薬R2の組み合わせを選択することを特徴とする方法にある。
【0012】
本発明の他の対象は、上記の本発明方法またはそれに追加の濃化(濃縮)操作を行った後に直接得られる、少なくとも部分的に水に可溶な農薬、特にメトミルが含浸されたミクロビーズの懸濁液にある。
【0013】
本発明のさらに他の対象は、上記の本発明ミクロビーズ懸濁液の農薬調合物、特に殺虫剤調合物の製造での使用にある。
【0014】
本発明方法はメトミルのミクロビーズのマクロカプセル化に特に適しているが、本発明方法は少なくとも部分的に水に可溶な農薬、すなわち、25℃での水への溶解度が1g/l以上である任意の農薬に適用することができる。そうした農薬の例としてはグリホサート(glyphosate)とアミノトリアゾール(aminotriazole)とを特に挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
活性物質そのものを使用する代わりに、活性物質を極性溶媒中または溶媒混合物中に溶かした溶液を使うこともできる。従って、例えばメトミルの場合にはラネート(Lannate、登録商標)20Lを極性液相として直接に使うことができる。
【0016】
本発明の重縮合物はポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンおよびポリ尿素から成る群の中から選択でき、好ましいのはポリウレタンまたはポリ尿素である。
【0017】
第1の液相(φp)(極性液相、phase polaireという)の溶媒は水または極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、ジメチルスルホキサイド、N-メチルピロリドン、二塩基酸のエステル(DEE)またはこれら化合物の混合物および/またはそれと水との混合物にすることができる。好ましいのはメタノールか、メタノールと水との混合物である。
【0018】
第の液相(φh)(油性液相、phase huileuseという)の溶媒(S)は植物油または鉱油物が好ましく、好ましいものは芳香属化合物を含まないか、ほとんど含まない脂肪族鉱油、特に非芳香族ホワイト油である。
【0019】
二つの液相は互いに非相溶で、油性液相中に一種以上の適当な界面活性剤を存在させ、撹拌手段で、油性液相(連続相すなわち分散相)中に極性液相が液滴(分散相)の形で分散したエマルションを形成することができるものである。有機試薬R1とR2のペアーは、極性液相(φp)中の有機試薬R2の溶解度が溶媒(S)中の有機試薬R1の溶解度より大きくなるように選択される。有機試薬R2は油性液相から分散した極性相から成る液滴中へ移行する。その移行速度は重縮合が液滴中で溶液で行われて、極性相とそれに含まれる農薬、例えばメトミルとが含浸された重縮合物のミクロビーズが形成されるような速度である。
【0020】
本発明方法の一つの好ましい実施例は下記の工程から成る:
(a) 水および/または極性溶媒中で農薬と有機試薬R1とを混合して極性液相(φp)を作り、
(b) 極性液相に非相溶な溶媒(S)に界面活性剤を溶かした油性溶液(φh1)中に、攪拌下に、上記で得られた極性液相(φp)を分散させ、
(c) 得られた分散液中に撹拌下に有機試薬R2の油性溶液(φh2)を導入して重縮合を行わせる。
【0021】
必要な場合、特に、有機試薬R1とR2との比率を化学量論比(反応性官能基のモル数で表す)の近くで導入する場合には、油性液相(φh)を構成するために、2つの油性溶液(φh1)と(φh2)とを使用する必要はなく、段階(a)の極性液相(φp)を、攪拌下に、極性液相に非相溶な溶媒(S)中で界面活性剤と有機試薬R2とを混合して得られる単一の油性液相中に分散させるだけで十分である。
【0022】
本発明の重縮合は、分散した極性相中および油性液相中にそれぞれ置いた有機試薬R1とR2とを正しく選択することによって行わせることができる。極性液相中の有機試薬R1の溶解度は高いものでなければならない。使用する有機試薬R2は油性液相中で良好な溶解度を有しなければならず、本発明では、極性液相中での溶解度は溶媒(S)中での有機試薬R1の溶解度より大きくなければならない。
【0023】
有機試薬R1とR2と間の反応速度は極性相中への有機試薬R2の移行速度より遅いので、有機試薬R2は極性相の液滴中に拡散し、そこで液滴中で溶液状で有機試薬R1と重縮合し、その結果、極性液相とそれに含まれる農薬、例えばメトミルが含浸された重縮合物のミクロビーズが形成される。従って、溶媒(S)中にミクロビーズが懸濁した懸濁液が得られる。
【0024】
本発明のミクロビーズの製造工程で使用可能な有機試薬R1とR2のペアーとしては特に以下のものを挙げることができる:
(1) 一つの相がジアミンおよび/またはポリアミンで、他方の相がジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートで、得られるミクロビーズがポリ尿素、
(2) 一つの相がジオールおよび/またはポリオールで、他方の相がジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートで、得られるミクロビーズがポリウレタン、
(3) 一つの相がジアミンおよび/またはポリアミンで、他方の相が酸の二塩化物および/またはポリ塩化物で、得られるミクロビーズがポリアミド、
(4) 一つの相がジオールおよび/またはポリオールで、他方の相が酸の二塩化物および/またはポリ塩化物で、得られるミクロビーズがポリエステル、
(5) 一つの相がジアミンおよび/またはポリアミンで、他方の相が酸のジスルホニルクロリドおよび/またはポリジスルホニルクロリドで、得られるミクロビーズがポリスルホンアミド、
【0025】
必須ではないが、有機試薬R1とR2のペアーの少なくとも一方が反応性官能基を2つ以上有するものを選択するのが好ましい。
異なるタイプの有機試薬R1の混合物および/または異なるタイプの有機試薬R2との混合物を使用しても本発明の範囲を逸脱するものではない。例えば、アミン/アルコール混合物をイソシアネートと一緒に使用してポリウレタン−ポリ尿素のミクロビーズにすることもできる。
【0026】
本発明でポリ尿素、ポリアミドまたはポリスルホンアミドをそれぞれ形成可能なジイソシアネートまたはポリイソシアネート、酸の二塩化物またはポリ塩化物(di-, poly-chlorure d'acid)、ジスルホニルクロライドまたはポリスルホニルクロライドとそれぞれ重縮合可能な任意のジアミンまたはポリアミンを使用できる。本発明方法で使用するのに適したジアミンまたはポリアミンの例(これに限定されるものではない)としてはエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミントリアミン、(2-アミノエチル)アミン、2,4,6- トリアミノピリミジン、ピペラジン、テトラエチレンペンタミン、オキシアルキル化されたジアミンおよびポリアミン(例、Huntsman Corporation社からJeffamine(登録商標)の名称でまた、Nitroil社からPC Amine DAの名称で市販)、特に、ポリオキシプロピレンジアミンJeffamine(登録商標)D-230およびJeffamine(登録商標)D-400 またはその類似品PC Amine DA 250およびPC Amine DA 400、ポリエチレングリコールジアミン Jeffamine(登録商標)600およびJeffarnine(登録商標)900、トリエチレングリコールジアミン Jeffamine(登録商標)EDR148 およびポリオキシプロピレントリアミンJeffamine(登録商標)T-403を挙げることができる。
【0027】
ポリウレタンまたはポリエステルを形成するためのジイソシアネートまたはポリイソシアネート、酸二塩化物または酸ポリ塩化物とそれぞれ重縮合可能なジオールまたはポリオールの例(これに限定されるものではない)としてはブタンジオール、ペンタンジオール、2-エチルヘキサンジオール、ジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはトリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンおよびピロガロールを挙げることができる。
【0028】
本発明方法に適したジイソシアネートまたはポリイソシアネートの例(これに限定されるものではない)としてはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートをベースにした脂肪族ポリウレタン(例、バイエル社のDesmodur(登録商標)Z 4470 SN)およびヘキサメチレンジイソシアネートをベースにした脂肪族ポリウレタン(例、バイエル社のDesmodur(登録商標)Nl00、Desmodur(登録商標)N3200およびDesmodur(登録商標)N3300)を挙げることができる。
【0029】
酸ニ塩化物または酸ポリ塩化物の例(これに限定されるものではない)としてはセバコイル(sebacoyl)クロライド、テレフタロイル(terephthaloil)クロライド、アジポイル(adipoyl)クロライドおよびトリメソイル(trimesoyl)クロライドを挙げることができる。
【0030】
ジスルホニルクロライドまたはポリスルホニルクロライド例(これに限定されるものではない)としてはベンゼン-l,3-ジスルホニルクロライドおよびベンゼン-1,3,5-トリスルホニルクロライドを挙げることができる。
【0031】
本発明方法の利点の一つのは化学特性が極めて多様な試薬を使用でき、また、同じ化合物群の中で特定の化学構造のものを使用でき、そうした試薬を各液相に最適な状態で、最も簡単または最も経済的な方法で自由に使用する(入れる)ことができる点にある。
【0032】
各候補有機試薬の2相の各相での溶解度が有機試薬の選択および相の定義の重要な判定基準になる。例えば、ポリ尿素のミクロビーズを製造する場合には、一種または複数のジイソシアネートまたはポリウレタンを使用し、それを一種または複数のジアミンまたはポリアミンと反応させるが、そのために、ジアミンおよび/またはポリアミンを極性液相中に溶解し、また、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを油性液相中に溶解した系で操作をするか、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを極性液相(この場合には必然的に水を除去する)に溶解し、また、ジアミンおよび/またはポリアミンを油性液相に溶解した系で操作をすることができる。
【0033】
前者の場合(ジアミンおよび/またはポリアミンを極性液相に溶かした場合)には、ジアミンまたはポリアミンとして例えばポリオキシプロピレンジアミン(例、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、PC Ainine DA 250およびPC Amine DA 400)およびヘキサメチレンジアミン、さらには芳香族ジアミンまたはポリアミン、例えば2,4,6-トリアミノピリミジンを選択できる。また、油性液相に可溶または希釈可能な脂肪族ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを選択する。芳香族ジイソシアネートまたはポリイソシアネートはそれに全く不溶である。
後者の場合(ジアミンおよび/またはポリアミンを油性液相に溶かした場合)には、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートは脂肪族化合物の中から選択し、ジアミンおよび/またはポリアミンは例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミンまたはJeffamine(登録商標)のようなジアミンおよび/またはポリアミンにする。
【0034】
従って、本発明方法では明確に異なる所定の2種の化学群に属する各有機試薬が在住する滞在場所を逆にすることができる。これはポリ尿素タイプの重縮合物で操作する場合に特に適用できる。
【0035】
極性液相が水に混合される有機溶剤を含む場合には、極性液相に有機試薬R1を入れず、油性液相中に入れたジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを用いてポリ尿素のミクロビーズを形成することができる。すなわち、これらの化合物は極性液相の液滴中に入り込むと、イソシアネート官能基の一部が加水分解し、二酸化炭素が遊離され、その場(in situ)で有機試薬R1を構成するアミン官能基が形成され、それが系内に存在しているイソシアネート官能基と反応してポリ尿素ができる。
【0036】
この系内(in situ)での重縮合法を単独で使用するか、上記の重縮合法と一緒に使用し、極性液相中にジアミンおよび/またはポリアミンを存在させ且つ油性液相中にジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを存在させてポリ尿素を形成することができ、また、極性液相中にジオールおよび/またはポリオールを存在させ且つ油性液相中にジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを存在させてポリウレタンを形成することができる。各タイプの反応は各相中の有機試薬のそれぞれの比率によってコントロールされる。
【0037】
ジオールおよびポリオールはジアミンおよびポリアミンより反応的でないので、ポリウレタンのミクロビーズを製造する場合には、重縮合促進するために通常の公知触媒、例えば、ジアザビシクロ [2, 2, 2] オクタンを一つの相に導入する必要がある。
極性液相(φp)/油性液相(φh)の重量比は10/90〜70/30で変えることができる。
極性液相および油性液相のそれぞれに導入される有機試薬R1およびR2の官能基ののモル比は1/100〜10/1で変えることができ、好ましくは1/20〜3/1で変えることができる。
【0038】
重縮合物中でのミクロビーズの重量比率は一般に10%〜90%である。
本発明方法でエンキャプスレート(カプセル化)可能な農薬の重量比率は広範囲に変えることができる。メトミルの場合の重量比率は1%〜27%に変えることができる。
【0039】
特定条件下、特に、ミクロビーズ中のポリマーの比率が小さく、および/または、メトミルの含有比率が大きい調合物を製造したい場合には、極性液相に水に可溶な塩を導入することができる。水に可溶な塩の例としてはチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、酢酸ナトリウムまたは塩化ナトリウム、好ましくはチオシアン酸ナトリウムを挙げることができる。また、鉱酸、例えば塩化水素酸(HC1)、臭化水素酸(HBr)または沃化水素酸(HI)を、水に可溶な塩を含むまたは含まない極性液相に加えて、ミクロビーズ油性懸濁の最終水性エマルジョンの製造を容易にすることもできる。
【0040】
油性連続液相中に極性液相を分散させるためのアニオン性または非イオン性の界面活性剤を分散物の形成に適したHLB(このHLBは一般に1.8〜8)となるように単独または混合物で選択する。所望のHLBを得るのに使用可能な界面活性剤は特にソルビタンエステルとそのエトキシ化誘導体の中から選択できる。例としてはWITCO社からSorban(登録商標)またはSorbanox(登録商標)の名称で市販のもの、UNIQEMA社からSpan(登録商標)およびTween(登録商標)の名称で市販のもの、エトキシ化脂肪アルコール、例えばUNIQEMA社からSynperonic(登録商標)の名称で市販のもの、アルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)、例えばISP Investments社からAgrimer(登録商標)ALの名称で市販のものおよびブロック共重合体、例えばUNIQEMA社からHypermer(登録商標)とAtlox(登録商標)の名称で市販のものを挙げることができる。
【0041】
界面活性剤のまたは界面活性剤の混合物の量は、反応体系の全ての各種パラメータに応じて広範囲に変えることができる。この量は一般に調合物の1重量%〜15重量%で変えることができる。
【0042】
分散液滴の寸法はプロセスの全パラメータ、特に、各相の比率、界面活性剤の種類および量、温度、撹拌速度で決まる。光学顕微鏡で観察すると、ミクロビーズは球面で、個々に良く分離している。最終的なミクロビーズの直径もパラメータの組合せで決まり、50μmになることもあるが、0.5〜20μmの間であるのが好ましい。粒度計(granulornetrie)での分析から寸法分布はガウス(gaussian)分布タイプであることが示された。
【0043】
ミクロビーズ懸濁液の製造時の温度は一般に室温であるが、使用する界面活性剤の種類に応じてより高い温度(65℃まで)で分散物を製造することもできる。また、プロセスの途中で温度を変え、例えば分散物を室温で作ってから、重縮合反応を加速するためにより高い温度で重縮合を実施することもできる。
【0044】
製造された(または製造中の)ミクロビーズを劣化(破壊、摩耗、変形等)させないという条件下で、任意の機械的攪拌システムを用いてより良く分散させ、さらに重縮合させてミクロビーズ懸濁液を製造させることができる。しかし、分散操作(段階b)のみの場合には、他の撹拌システム、例えばIKA社のUltraturrax(登録商標)タイプのケージ式急速撹拌機(disperseur rapid a cage)を使用することができる。
極性相がメタノール単独か、メタノールと水との混合物から成る場合には、ミクロビーズ懸濁液の製造中に全てのメタノールが蒸発できる条件下で反応を実行しなければならない。この場合には混合物を適切な温度に加熱することによってプロセスを加速することができる。そうした系はメトミルの濃度が高い(20〜27重量%)分散物を製造する場合に特に適している。
【0045】
また、本発明方法で作られるミクロビーズの会合(コアレッセンス)および凝集を防止するために分散剤を任意の段階にでも加えることは必須ではないが、そうした分散剤を加えることは可能である。加える場合には例えば下記文献に記載の微粉末の固形化合物を使うことができる。
【特許文献8】米国特許第3 575 882号明細書
【0046】
本発明方法によって得られるミクロビーズ懸濁液は穀物の保護にそのままの形で用いることができるが、穀物保護に有用な各種調合物を製造するために追加の変更をすることもできる。必要な場合には、不純物およびミクロビーズにカプセル化されなかった殺虫剤を除去するために、ミクロビーズ懸濁液を洗浄することができる。また、懸濁液を濾過することもできる。この操作は洗浄操作の前または後に行うことができる。
【0047】
さらに、ハンドリングを容易にし、経時安定性を良くした粘度を強くした液体調合物を得るために、一種以上の濃化剤(シクナー)、例えばクレーまたはシリカをミクロビーズ懸濁液に加えることもできる。さらに、沈降防止剤および/または凝集防止剤および/または抗菌物質を懸濁液に加えることもできる。
【0048】
本発明のミクロビーズ懸濁液は所望の散布型式に応じて下記の状態で使用できる:
(1)そのまま(予め希釈しないで)使用する。
(2)鉱油または小容量、極小容量、熱ネブライザー(thermonebulization)またはエアーゾルタイプの処理で使用するためのその他の支持体で希釈して使用する。
(3)水中に再エマルジョン化する。この再エマルジョン化は一種または複数の界面活性剤を懸濁液の前に水に加えるか、再エマルジョン化用水と混合する前に懸濁液に導入して行うことができる。
【0049】
また、再エマルジョン化をする、しないにかかわらず、直ちに使用可能な調合物を生産するために、ドラム充填前に界面活性剤をミクロビーズ懸濁液に入れることもできる。そうした調合物は水に可溶な包装材料に包装できる点で有利である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例では商業的に入手可能な下記化合物を使用した:
(1) Agrimer(登録商標)AL 22
=ヘキサデセンでアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)(VP/C16H32重量比=20/80)、モル質量=3130±40、CAS番号63232-81-0、ISP Investmente社から市販
(2) Desmodur(登録商標)Z 4470 SN
=イソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースにした脂肪族ポリウレタン、バイエル社から市販、モル質量=約667、NCO含有量=11.9±0.4%(DIN EN ISO 11909)
(3) Hypermer(登録商標)E 476
=UNIQEMA社から市販の非イオン性重合体の界面活性剤
(4) Jeffamine(登録商標)400
=下記構造のポリオキシプロピレンジアミン:
H2N-CH(CH3)-CH2-[O-CH2-CH(CH3)]x-NH2 (x=5.6)
CAS番号 904G-10-0、Huntsman Corporation社から市販
(5) Marcol(登録商標)52
=ESSO社から市販の医薬用ホワイト油(20℃での体積質量:825-845kg/m3、40℃での動粘度:7-8 mnm2/s、FDAクラス:a)
(6) Huil 90 Neutral
=MOBIL OIL社から市販の流動パラフィン油(15℃での体積質量:820−835 kg/m3、(100℃での動粘度:3.8-4.2 mnm2/s)
【0051】
実施例1
各相の調整
極性液相
50mlのビーカ中で、10.2 gのメタノールと、4gの0.72%塩化水素酸と、l.6 gのJeffamine(登録商標)400と、0.46gの2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)と、3.80gメトミルとを混合し、磁気攪拌して相を均質化した。
油性液相1
400mlのビーカ中で、45.28 gのHuil 90 Neutral鉱油と、3.80gのアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)Agrimer(登録商標)AL 22とを混合し、相を均質化した。
油性液相2
100mlビーカ中で、7.24 gのHuil 90 Neutral鉱油と、3.4gのアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)Agrimer(登録商標)AL 22と、27.44gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、5.88gのポリイソシアネート Desmodur(登録商標)R Z 4470 SNとを導入し、相を均質化した。
【0052】
溶解度
極性液相中でのR2(IPDIとDesmodur(登録商標)Z 4470 SNとの混合物)の溶解度は1〜5重量%である。
溶媒(S)中のR1(Jeffamine(登録商標)400とTAPとの混合物)の溶解度は0重量%である。
【0053】
分散およびカプセル化
約1000回転/分の速度で機械的攪拌をしながら、極性液相を油性液相1中に注いだ。急速に分散物ができる。8〜10分間撹拌した後、撹拌を維持したまま油性液相2を分散物中へ注ぐ。重合が終わり、全てのメタノールが蒸発するまで反応を続け、10重量%のミクロビーズの懸濁液が得られた段階で、10%ベントン(bentone)の油性溶液を加え、激しく撹拌する。
経時的に安定なメトミルのミクロビーズの油性懸濁液が得られる。凍結装置を備えた走査型電子顕微鏡を用いた観察で、粒子は中実で、内部が均一であることが確認できた。壁に差異は全く認められなかった。また、メトミルはミクロビーズの全体に分布していた。この懸濁液(以下、懸濁液No.1という)は下記の特性を有する:
(1) メトミル含有量: 3.3%重量
(2) ミクロビーズ中のポリマー含有量: 82.0%重量
(3) ミクロビーズの平均径: 5〜9μm
【0054】
実施例2
各相の調整
極性液相
50mlのビーカ中で20.2gのメタノールと、4gの水と、1.6g のJeffamine(登録商標)400と、0.46gの2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)と、4gのチオシアン酸ナトリウムと、18gのメトミルとを混合し、相を磁気攪拌して均質化した。
【0055】
油性液相1
400m1ビーカ中で3l.28gのHuil 90 Neutral鉱油と、3.60gのアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)Agrimner(登録商標)AL 22とを混合し、相を均質化した。
油性液相2
100mlのビーカ中に5.49gイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、1.18gのポリイソシアネートDesmodur(登録商標)Z 4470 SNとを入れ、相を均質化した。
【0056】
溶解度
極性液相中でのR2(IPDIとDesmodur(登録商標)Z 4470 SNとの混合物)の溶解度は1〜5重量%である。
溶媒(S)中のR1(Jeffamine(登録商標)400とTAPとの混合物)の溶解度は0重量%である。
【0057】
分散およびカプセル化
約800回転/分のスピードで機械的攪拌しながら、極性液相を油性液相1中に注いだ。急速に分散物ができる。5分間撹拌した後、撹拌を維持したまま油性液相2を分散物中へ注ぐ。重合が終わり、全てのメタノールが蒸発するまで反応を続ける。ミクロビーズが得られた段階で、10%ベントン(bentone)の油性溶液を加え、激しく撹拌する。
時間の経過とともに、安定なメトミルのミクロビーズの油性懸濁液が得られる。この懸濁液(以下、懸濁液No.2という)は下記の特性を有する:
(1) メトミル含有量: 23.3%重量
(2) ミクロビーズ中のポリマー含有量: 25.1%重量
(3) ミクロビーズの平均径: 1〜2μm
【0058】
油性液相1および2を順次導入する代わりに、油性液相1および2を最初に一緒に混合し、得られた相に極性液相を加えても、反応は優れた条件で実行できる。経時的に安定なメトミルのミクロビーズ油性懸濁液が同様に得られる。
【0059】
実施例3
各相の調整
極性液相
50mlビーカ中でl4.2.gのメタノールと、1.6gのJefffamine(登録商標)400と、0.46gの2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)と、3gのチオシアン酸ナトリウムと、12gのメトミルとを混合し、磁気攪拌して相を均質化した。
油性液相1
400mlビーカで、30gのMarcol(登録商標)52の鉱油と、3.6gのアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)Agrimer(登録商標)AL 22とを混合し、相を均質化した。
油性液相2
100mlビーカに2.74gのイソホロン・ジイソシアネート(IPDI)と、0.59gのポリイソシアネートDesmodur(登録商標)Z4470 SNとを入れ、相を均質化した。
溶解度
2(IPDIとDesmodur(登録商標)Z 4470 SNとの混合物)の極性相への溶解度は1〜5重量%である。
1(Jeffamine(登録商標)400とTAPとの混合物)の溶媒(S)への溶解度は0重量%である。
【0060】
分散およびカプセル化
約700回転数/分の速度の機械的攪拌をしながら極性液相を油性液相1へ注いだ。分散物が急速にできる。3〜5分間撹拌した後に攪拌を維持しなしがら油性液相2を上記分散物中へ注いだ。重合が終わり、全てのメタノールが蒸発するまで反応を続ける。ミクロビーズが得られた段階で、10%ベントン(bentone)の油性溶液を加え、激しく撹拌する。
油性液相1および2を最初に混合し、得られた相に極性相を加えても優れた条件で反応が行なわれる。
いずれの場合でも、経時間的に安定な下記の特性を有するメトミルのミクロビーズの油性懸濁液が得られる:
(1) メトミル含有量: 20.0%重量
(2) ミクロビーズ中のポリマー含有量: 26.4%重量
(3) ミクロビーズの平均径: 0.5〜1μm
【0061】
実施例4
各相の調整
極性液相
50mlビーカ中で、14.2 gのジメチルスルホキシドと、1.6 gのJeffamine(登録商標)400と、0 46 gの2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)と、1gのチオシアン酸ナトリウムと、12gのメトミルとを混合し、磁気攪拌で相を均質化した。
油性の相1
400mlビーカ中で、32gのMarcol(登録商標)52鉱油と、2.5gのHypermer(登録商標)E 476とを混合し、相を均質化した。
油性の相2
100mlビーカに10 98 gのイソホロン・ジイソシアネート(IPDI)と、2.36gのポリイソシアネートDesmodur(登録商標)Z 4470 SNとを入れ、相を均質化した。
溶解度
2(IPDIとDesmnodur(登録商標)Z 4470 SNとの混合物)の極性液相中での溶解度は100重量%である。
R1(Jeffamine(登録商標)400とTAPとの混合物)の溶媒(S)中での溶解度は0重量%である。
【0062】
分散およびカプセル化
約850回転数/分の速度の機械的攪拌をしながら極性液相を油性液相1中へ注いだ。分散物が急速にできる。10分間撹拌した後に攪拌を維持しながら油性液相2を上記分散物中へ注いだ。重合が終わり、全てのメタノールが蒸発するまで反応を続ける。ミクロビーズが得られた段階で、10%ベントン(bentone)の油性溶液を加え、激しく撹拌する。
油性液相1および2を最初に混合し、得られた相に極性相を加えても優れた条件で反応が行なわれる。
いずれの場合でも、経時間的に安定な下記の特性を有するメトミルのミクロビーズの油性懸濁液が得られる:
(1) メトミル含有量: 14.0%重量
(2) ミクロビーズ中のポリマー含有量: 36.2%重量
(3) ミクロビーズの平均径: 3〜5μm
実施例1〜4のJeffamine(登録商標)400の代わりにArnaud Promecome社から市販のPC Amine DA 400を用いた場合にも、全く同様なミクロビーズ懸濁液が得られる。
【0063】
実施例5
各相の調整
極性液相:
100mlビーカ中で18.5gのDMSOと、l3.5 gのブチルグリコールと、2gの水と、2.4gのチオシアン酸ナトリウムと、13.5gのメトミルと、0.05gのジアザビシクロ[2.2.2]オクタンとを混合し、磁気攪拌で相を均質化した。
油性の相1
400mlビーカで50gのMarcol(登録商標)52鉱油と、3gのアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)Agrimer(登録商標)AL 22とを混合し、相を均質化した。
油性の相2
10mlビーカ中に6.8gのヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を入れた。
溶解度:
2(HMDI)の極性相中での溶解度は100重量%である。
1(ブチルグリコール)の溶媒(S)中の溶解度は60重量%である。
【0064】
分散およびカプセル化
約700回転数/分の速度の機械的攪拌をしながら極性液相を油性液相1中へ注いだ。分散物が急速にできる。2〜3分間撹拌した後に攪拌を維持しながら油性液相2を上記分散物中へ注いだ。重合が終わるまで反応を続ける。ミクロビーズが得られた段階で、10%ベントン(bentone)の油性溶液を加え、激しく撹拌する。
経時間的に安定な下記の特性を有するメトミルのミクロビーズの油性懸濁液が得られる:
(1) メトミル含有量: 11.1%重量
(2) ミクロビーズ中のポリマー含有量: 12.0%重量
(3) ミクロビーズの平均径: 8〜10μm
【0065】
実施例6
メトミルのミクロビーズ懸濁液の使用
本発明によるメトミルのミクロビーズ懸濁液をベースにした調合物の価値および生物学的有効性とを評価した。
選択したターゲット昆虫はキャベツ蛾(Mamestra brassicae)である。キャベツをメトミルのミクロビーズ調合物から製造したスラリーで処理した。乾燥後にキャベツ蛾の毛虫をキャベツ葉上に付けた。キャベツ葉は採種し、ボックス中に置いておいた。感染後の24時間および48時間後に生存した毛虫の数を調べた。追加の感染を必要に応じて採集したキャベツ葉で毎日実行した。各調合物の活性時間および有効性を未処置の対照群および基準(この実施例ではLannate(登録商標)20L)と比較して評価した。
テストは下記実験法に従って複数のフェーズで行った:
(1) キャベツの受理および処置、
(2) 毛虫の受理および飼育最後
(3) 毎日の感染
(4) アセスメント
(5) 解析
【0066】
1. キャベツの処理
キャベツを受理し、11×11cmの寸法のポット(repotted)に入れた。テスト開始時に約10枚の葉を有するようにした。キャベツ-ホワイトの害を受けた場合にはテスト始点より少なくとも15日前に短殺虫持続時間の処理を実行してもよい。
10回の感染に対して6つのモートを6回繰り返すのに360枚の葉が必要であり、一つのキャベツ当り3枚の葉をカウントする場合には120個のキャベツが必要である。
キャベツにはスラリーを800リットル/haの投与量で散布塔で処理した。これで1ヘクタール当り60〜200gのメトミルが塗布される。
このスラリーは以下のようにして製造した。すなわち、必要な水量の1/4と、ミクロビーズ懸濁液を乳化するのに必要な量の界面活性剤系とをメスシリンダに入れ、得られた混合物を撹拌し、十分な量のミクロビーズ懸濁液を加え、激しく撹拌する。必要な量の水を混合物に加え、2〜3滴の消泡剤を加える。正確な容積になるようにレベルを合わせ、スラリーを撹拌すると直ちにスプレー可能な調整物ができる。
Lannate(登録商標)20Lスラリーは次の方法で調整した。すなわち、所望量のLannate(登録商標)20Lをウェッティング剤と一緒に所望量の水の3/4中に入れる。水を加えて所望容積にする。
【0067】
2. 毛虫の受理
毛虫は紙シート上に置かれた卵子の形で来る。受理時に、ハッチング期間に応じてシートを15℃または25℃の状態にする。毛虫に対してL1段階でテストを実行した(すなわち毛虫が孵化する日に感染を実行した)。
【0068】
3. 感染
「感染(infestation)」という用語は処理済みのキャベツに毛虫を接触させることを意味する。この感染は寸法が17.5×11.5×6.5cmの蓋を有する密閉した透明なボックス中で実行した。各ボックスが単位プロットである。一つのボックスに一枚のキャベツ葉を入れ、ブラシを用いてこの葉に8匹の毛虫を付けた。全てのボックスは空調室内に四方をラテンで囲んで置いた。ボックスには一日当り16時間光を照射し、内部温度は20℃に維持した。
感染は毎日行なった。一番目の感染はキャベツの実際に処理した日(感染D0)かその次の日(感染Dl)に行ない、その後、処理日から2日または6日後に行なった(感染D2および感染D6)。
【0069】
4. アセスメント
感染後、48時間観測を続けた。各ボックス中で生き延びた毛虫の数を数えた。このアセスメント後、葉と毛虫は捨て、ボックスは洗浄した。
【0070】
5. 結果
下記の[表1]および[表2]は温室で実行した2つの生物実験の結果をまとめたものである。データはlog(x+1)に変換した後、分散解析を行った。この解析はニューマン-クルス(Newmann-Keuls)テストに従って行った。このテストでは各種モードの統計的分類ができる。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
これらのテスト結果は懸濁液 No.1およびそれと懸濁液No.2とを組み合わせたものの値を示している。両方とも1ヘクタール当りメトミルの投与量は200gである。これらの調合物は優れた殺虫効果を迅速に得ることができ、しかも、優れた活性持続性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機試薬R1を農薬と一緒に極性液相(φp)中に置き、有機試薬R2は極性液相に非相溶な溶媒(S)と攪拌時に極性液相(φp)を油性液相(φh)中に分散させることができる少なくとも一種の界面活性剤とからなる油性液相(φh)中に置き、この二相系液体中で互いに相補な有機試薬R1とR2とを重縮合することによって、少なくとも部分的に水に可溶な殺虫剤のミクロビーズを製造する方法において、
上記重縮合が極性液相(φp)で起こるように上記有機試薬R1および有機試薬R2の組み合わせを選択することを特徴とする方法。
【請求項2】
(a) 極性液相(φp)中での有機試薬R2の溶解度が溶媒(S)中での有機試薬R1の溶解度よりも大きくし、
(b) 重縮合が極性液相(φp)で起こるように有機試薬R2の移行速度を決定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a) 水および/または極性溶媒中で農薬と有機試薬R1とを混合して極性液相(φp)を作り、
(b) 上記で得られた極性液相(φp)を、極性液相には非相溶な溶媒(S)に界面活性剤を溶かした油性溶液(φh1)中に攪拌下に分散させ、
(c) 得られた分散液中に撹拌下に有機試薬R2の油性溶液(φh2)を導入して重縮合を行わせる、
工程から成る請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記溶媒(S)が植物油または鉱油、好ましくは脂肪族鉱油、さらに好ましくは非芳香族ホワイト油である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
極性溶媒がメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、二塩基酸エステル(DEE)またはこれら化合物の混合物および/またはこれら化合物と水との混合物、好ましくはメタノールまたはメタノールと水との混合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
界面活性剤がアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)、好ましくはヘキサデセンでアルキル化されたポリ(ビニルピロリドン)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機試薬R1とR2とがポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンおよびポリ尿素、好ましくはポリウレタンまたはポリ尿素から成る群の中から選択される重縮合物を形成する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
重縮合物が、極性液相中の有機試薬R1であるジアミンおよび/またはトリアミンの混合物と有機試薬R2である油性液相中の脂肪族ジイソシアネートおよび/またはトリイソシアネートの混合物とから形成されるポリ尿素であり、好ましくは有機試薬R1およびR2の混合物の少なくとも一方が三官能性化合物を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
極性液相/油性液相の重量比が10/90〜70/30である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
有機試薬R1とR2の官能基のモル比が10/1〜1/100、好ましくは3/1〜1/20である請求項1〜9の方法。
【請求項11】
調整物中の界面活性剤の重量比率が1〜10%、好ましくは2〜8%である請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
極性液相が水可溶性塩、好ましくはチオシアン酸ナトリウムをさらに含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一回の濃縮段階をさらに含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
濃化剤(epaississant)および/または沈降防止剤および/または凝集防止剤および/または抗菌物質を加える段階をさらに含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
農薬(pesticide)が殺虫剤 (insecticide)、好ましくはメトミル(methomyl)である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法を用いて得られる、少なくとも部分的に水に可溶な農薬のミクロビーズの懸濁液。
【請求項17】
農薬の含有量が1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である請求項16に記載の懸濁液。
【請求項18】
ミクロビーズの重縮合物の含有量が10〜90重量%である請求項16または17に記載の懸濁液。
【請求項19】
請求項16または17に記載の懸濁液の、農薬調合物、特に殺虫性調合物の製造での使用。

【公表番号】特表2006−523200(P2006−523200A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505667(P2006−505667)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000239
【国際公開番号】WO2004/078340
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505292856)
【Fターム(参考)】