説明

ミシン

【課題】糸道を表示することができるとともに、糸掛けの作業効率を向上させる。
【解決手段】ミシン100は、ルーパー15,16及び針17,18までの糸道1〜5に沿って設けられ、糸を係止する糸掛け部15A,15B・・・と、糸掛け部に糸が係止されているか否かを検出する糸検出部と、発光部10A,10B・・・と、それぞれの糸掛け部が糸掛け可能な主軸の位相を検出する位相検出部と、糸掛け部と発光部とを、主軸の位相に関連づけて糸を掛ける順序に対応して記憶する記憶部と、糸掛けが可能か否かを判断する糸掛け可能判断部と、糸掛け可能な順番の糸掛けよりも前の順番の糸掛けが全て終了しているか否かを判断する糸掛け終了判断部と、発光部を用い、糸掛け終了判断部によってユーザへの報知とともに、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の糸道と糸掛け器具(複数の針、上ルーパー、下ルーパー、二重環ルーパーなど)を備えたミシンが知られている。ミシンは、糸道を表示するために糸道近傍に設けられた点灯装置を備えている。点灯装置は、糸掛け器具と糸道との対応を表示するために同じ色で点灯するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、糸掛け順序をユーザに知らせるために、糸掛け順序指示装置を備えたミシンが知られている。糸掛け順序指示装置は、ミシンの停止状態において複数の糸掛け検出器の各部材への糸掛け状態を検出し、その複数の糸掛け検出器中のいずれもが糸掛け状態を検出していない時に糸掛け部材中で最初に糸掛けが行われるべき先頭の部材に対応する発光ダイオードを点灯または点滅させる。また、複数の糸掛け検出器の各々が先頭の部材から各部材に順次糸掛けが行われたことを検出する度に、糸掛けが完了した部材に対応する発光ダイオードを消灯させるとともに糸掛けが次に行われるべき部材に対応する発光ダイオードを点灯または点滅させる。そして、複数の発光ダイオードが糸掛け順序と共に糸掛け状態をも作業者に知らせる(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−19353号公報
【特許文献2】特開昭62−34592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、糸道指示は、各糸道の近傍にLEDを1個ずつ配置させるのみで、上下ルーパー、二重環ルーパーに至るまでの糸道指示がなかった。また、主軸がどの位相のときに針穴、上下ルーパーへの糸掛けができる状態であるかを表示しないため、使い慣れていないと取扱説明書を見ながら糸掛け作業をしなくてはならず、作業効率がよくなかった。
【0004】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、糸供給源から針及びルーパーまでの糸道を表示することができるとともに、糸掛けの作業効率を向上させることができるミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、ミシンであって、糸供給源からルーパー及び針までの複数の糸道に沿って設けられ、糸を係止する糸掛け部と、前記糸掛け部に糸が係止されているか否かを検出する糸検出部と、ルーパーと針と各糸掛け部のそれぞれの近傍に配置され、通電により発光する発光部と、それぞれの糸掛け部が糸掛け可能な主軸の位相を検出する位相検出部と、縫いの種類ごとに糸を掛ける糸掛け部と発光させる発光部とを、前記主軸の位相に関連づけて糸を掛ける順序に対応して記憶する記憶部と、前記位相検出部によって検出された主軸の位相でどの糸道に糸掛けが可能か否かを判断する糸掛け可能判断部と、前記糸掛け可能判断部によって判断された糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番よりも前の順番の糸道への糸掛けが全て終了しているか否かを前記糸検出部の検出値により判断する糸掛け終了判断部と、前記発光部を用い、前記糸掛け終了判断部によってユーザへの報知とともに、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、位相検出部によってそれぞれの糸掛け部が糸掛け可能な主軸の位相を検出すると、糸掛け可能判断部は、位相検出部によって検出された主軸の位相でどの糸道に糸掛けが可能か否かを判断する。そして、糸掛け終了判断部は、糸掛け可能判断部によって判断された糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番よりも前の順番の糸道への糸掛けが終了しているか否かを糸検出部の検出値により判断する。糸掛け終了判断部によって糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番より前の順番の糸道への糸掛けが終了していると判断された場合、制御部は、ユーザへの報知とともに、記憶部に記憶された糸掛け部と発光部との対応関係を参照して、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる。
これにより、主軸がどの位相であっても、順番の早い糸道の糸掛けを先に行わせ、先に糸掛けすべき糸道の糸掛けを終わらせてから、次に糸掛けを行うべき糸掛け部の近傍の発光部を発光させるので、ユーザは、糸掛けをする順番を誤ることがない。また、糸掛けを行うべき箇所を視覚で認識することができるので、ミシンを使い慣れていないユーザであっても容易に糸掛けを行うことができ、糸掛けの作業効率を向上させることができる。
また、発光部は、ルーパーと針と各糸掛け部のそれぞれの近傍に配置されているので、糸供給源から針及びルーパーまでの糸道を表示することができる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、主軸がどの位相であっても、順番の早い糸道の糸掛けを先に行わせ、先に糸掛けすべき糸道の糸掛けを終わらせてから、次に糸掛けを行うべき糸掛け部の近傍の発光部を発光させるので、ユーザは、糸掛けをする順番を誤ることがない。また、糸掛けを行うべき箇所を視覚で認識することができるので、ミシンを使い慣れていないユーザであっても容易に糸掛けを行うことができ、糸掛けの作業効率を向上させることができる。
また、発光部は、ルーパーと針と各糸掛け部のそれぞれの近傍に配置されているので、糸供給源から針及びルーパーまでの糸道を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの最良の形態について詳細に説明する。
<ミシンの構成>
図1に示すように、ミシン100は、上ルーパー15、下ルーパー16、二重環ルーパー19(図4参照)が収容されるベッド部101と、ベッド部101に立設された胴部102と、主軸や針棒が収容され、胴部102に連続するように形成されたアーム部103と、を備えている。
ミシン100には、糸供給源(図示略)からアーム部103、胴部102を通ってベッド部101の上ルーパー15、下ルーパー16、二重環ルーパー19に至るまで糸を掛け渡す複数の糸道1,2,5と、糸供給源からアーム部103を通ってアーム部103の針17,18に至るまで糸を掛け渡す複数の糸道3,4とが設けられている。ベッド部101の側面には、はずみ車104が設けられ、このはずみ車104には、主軸105(図6参照)が連結されている。
なお、本実施形態においては、針を二本として説明する。従って、糸道は、糸供給源から上ルーパー15、糸供給源から下ルーパー16、糸供給源から二重環ルーパー19、糸供給源から一方の針17、糸供給源から他方の針18の合計5つ存在する。以下、ミシン100を用いてオーバーロック及び二重環縫いを行う例について説明する。
【0009】
(糸道)
図1、図3、図4に示すように、5つの糸道1,2,3,4,5への糸の掛け渡しは、互いの糸が絡まないように順序が決まっている。図2に示すように、縫いモードがオーバーロック及び二重環縫いを併用する場合は、上ルーパー15、下ルーパー16、二重環ルーパー19、左右の針17,18を使用するので、5つの糸道1,2,3,4,5に糸を掛ける必要があり、糸掛けは、最初から上ルーパー15への糸道1(第1糸掛け)、下ルーパー16への糸道2(第2糸掛け)、正面から見て右側の針17への糸道3(第3糸掛け)、二重環ルーパーへの糸道5(第4糸掛け)、正面から見て左側の針18への糸道4(第5糸掛け)の順番で行う。
【0010】
(糸掛け部)
図1に示すように、5つの糸道を形成するため、ミシン100には、糸供給源からルーパー15,16及び針17,18に至るまでそれぞれの糸道ごとに糸を係止する複数の糸掛け部が設けられている。
図1に示すように、ミシン100は、アーム部103の正面に設けられた糸掛け部15Aと、アーム部103と胴部102との境界付近に設けられた糸掛け部15Bと、ベッド部101の正面で糸掛け部15Bの左下方に設けられた糸掛け部15Cと、上ルーパー15の動作腕55の基端側に設けられた糸掛け部15Dと、上ルーパー15の動作腕55の先端側に設けられた糸掛け部15Eと、上ルーパー15の先端に設けられた糸通し孔15Fと、を備えており、各糸掛け部15A〜15E及び糸通し孔15Fに糸を通すことにより、折れ線状の糸道1が形成されている。
【0011】
図1に示すように、ミシン100は、アーム部103の正面に設けられた糸掛け部16Aと、アーム部103と胴部102との境界付近に設けられた糸掛け部16Bと、ベッド部101の正面で糸掛け部16Bの左下方に設けられた糸掛け部16Cと、上ルーパー15の動作腕55の基端側に設けられた糸掛け部16Dと、下ルーパー16の動作腕56の基端側に設けられた糸掛け部16Eと、下ルーパー16の動作腕56の先端側に設けられた糸掛け部16Fと、下ルーパー16の先端に形成された糸通し孔16Gと、を備えており、各糸掛け部16A〜16F及び糸通し孔16Gに糸を通すことにより、折れ線状の糸道2が形成されている。
【0012】
図1に示すように、ミシン100は、アーム部103の正面に設けられた糸掛け部17Aと、アーム部103の正面で、針17の上方に設けられた糸掛け部17Bと、針棒に設けられ、正面から見て右側の針に対応する糸掛け部15Iと、を備えており、各糸掛け部17A,17B,15I及び右側の針17に糸を通すことにより、折れ線状の糸道3が形成されている。
【0013】
図1に示すように、ミシン100は、アーム部103の正面に設けられた糸掛け部18Aと、アーム部103の正面で、針18の上方に設けられた糸掛け部18Bと、針棒に設けられ、正面から見て左側の針に対応する糸掛け部17Cと、を備えており、各糸掛け部18A,18B,17C及び左側の針18に糸を通すことにより、折れ線状の糸道4が形成されている。
【0014】
図3、図4に示すように、ミシン100は、ベッド部101の裏面側に設けられた糸掛け部19Aと、ベッド部101の裏面とベッド部101の前方側面との境界近傍に設けられた糸掛け部19Bと、ベッド部101の前方側面の後方に設けられた糸掛け部19Cと、糸掛け部19Cからミシン100の正面側に向けてベッド部101の裏面側から所定の間隔をあけて並ぶように形成された19D、19E、19Fと、ベッド部101の表面とベッド部101の前方側面との境界近傍に設けられた糸掛け部19Gと、ベッド部101の正面側に設けられた二重環ルーパー19の先端に形成された糸通し孔19Hと、を備えており、各糸掛け部19A〜19G及び糸通し孔19Hに糸を通すことにより、折れ線状の糸道5が形成されている。
【0015】
なお、糸掛け部15Dと糸掛け部16Dは、糸掛け部自体を共用しており、実際には一つの部材だけ設けられている。また、糸掛け部17Bと糸掛け部18Bは、糸掛け部自体を共用しており、実際には一つの部材だけ設けられている。
【0016】
(糸検出部)
各糸掛け部には、当該糸掛け部に糸が係止されているか否かを検出する糸検出部が設けられている。なお、各糸掛け部に設けられる糸検出部の構成は全て同じであるため、ここでは、糸掛け部15Aに設けられている糸検出部を例に挙げて説明する。
図5に示すように、糸検出部30は、糸掛け部15Aの裏面に設けられ、糸を狭持する二つの狭持板31,31と、二つの狭持板31,31に狭持される糸Tに交差する方向に延びるように配置され、狭持板31,31に糸Tを狭持させることで糸Tが上方から当接して下方に撓む弾性体としてのばね部材32と、ばね部材32の先端に設けられた遮蔽板33と、遮蔽板33の進入により検出が遮られ、遮蔽板33の退避により検出可能な光学センサ34と、を備えている。
【0017】
ばね部材32の先端に設けられた遮蔽板33は、糸Tに押さえつけられていない状態においては、その弾性力により光学センサ34の上方に位置しており、光学センサ34は、遮蔽板33がないことを検出することができる。一方、狭持板31,31に糸Tを入れて狭持させると、糸Tがその下方に配置されたばね部材32に当接し、糸Tがばね部材32を下方に押しつける。それによって、遮蔽板33は、光学センサ34の検出を阻害する位置まで下降するので、光学センサ34が検出できないときには糸Tが狭持板31,31に狭持されていることを知ることができる。
このように、光学センサ34の検出の有無によって、糸Tが糸掛け部15Aに係止されているか否かを検出することができる。
【0018】
(発光部)
図1、図3、図4に示すように、各糸掛け部の近傍には、発光部が設けられている。発光部は、例えば、発光ダイオードにより構成されている。
図1に示すように、糸掛け部15Aの下方には、発光部10Aが設けられ、糸掛け部15Bの近傍には、発光部10Bが設けられ、糸掛け部15Cの近傍には、発光部10Cが設けられている。糸掛け部15Dの近傍には、発光部10Dが設けられ、糸掛け部15Eの近傍には、発光部10Eが設けられ、糸通し孔15Fの近傍には、発光部10Fが設けられている。
【0019】
図1に示すように、糸掛け部16Aの下方には、発光部11Aが設けられ、糸掛け部16Bの近傍には、発光部11Bが設けられ、糸掛け部16Cの近傍には、発光部11Cが設けられている。糸掛け部16Dの近傍には、発光部11Dが設けられ、糸掛け部16Eの近傍には、発光部11Eが設けられ、糸掛け部16Fの近傍には、発光部11Fが設けられ、糸通し孔16Gの近傍には、発光部11Gが設けられている。
【0020】
図1に示すように、糸掛け部17Aの下方には、発光部12Aが設けられ、糸掛け部17Bの近傍には、発光部12Bが設けられ、糸掛け部15Iの上方には、発光部10Iが設けられている。
【0021】
図1に示すように、糸掛け部18Aの下方には、発光部13Aが設けられ、糸掛け部18Bの近傍には、発光部13Bが設けられ、糸掛け部17Cの上方には、発光部12Cが設けられている。
【0022】
図3、図4に示すように、糸掛け部19Aの近傍には、発光部14Aが設けられ、糸掛け部19Bの近傍には、発光部14Bが設けられ、糸掛け部19Cの近傍には、発光部14Cが設けられている。糸掛け部19Dの近傍には、発光部14Dが設けられ、糸掛け部19Eの近傍には、発光部14Eが設けられ、糸掛け部19Fの近傍には、発光部14Fが設けられている。糸掛け部19Gの近傍には、発光部14Gが設けられ、糸通し孔19Hの近傍には、発光部14Hが設けられている。
【0023】
なお、発光部12Bと発光部13Bは、発光部自体を共用しており、実際には一つの光源だけ設けられている。また、発光部10Dと発光部11Dは、発光部自体を共用している。
これらの発光部は、後述する制御部により、点灯、消灯、点滅の制御がなされる。
【0024】
(位相検出部)
図6に示すように、主軸105には、形状の異なる三つの遮蔽板20A,20B,20Cが軸方向に並んで固定されている。遮蔽板20Aは、90°間隔で外側に張り出すように形成されている。遮蔽板20Bは、180°間隔で外側に張り出すように形成されている。遮蔽板20Cは、半円形状に形成されている。遮蔽板20Aの近傍には、遮蔽板20Aの回転により遮蔽板20Aの存在の検出を行う光学センサ21Aが設けられている。遮蔽板20Bの近傍には、遮蔽板20Bの回転により遮蔽板20Bの存在の検出を行う光学センサ21Bが設けられている。遮蔽板20Cの近傍には、遮蔽板20Cの回転により遮蔽板20Cの存在の検出を行う光学センサ21Cが設けられている。これらの遮蔽板20A,20B,20Cと光学センサ21A,21B,21Cとを備えることにより、位相検出部40が構成されている。
三つの遮蔽板20A,20B,20Cは、主軸を45°回転させる毎に検出される光学センサ21A,21B,21Cの組み合わせが全て異なるように主軸105に固定されている。
【0025】
具体的には、図6に示すように、三つの遮蔽板20A,20B,20Cがパターン25aの状態にある場合、三つの光学センサ21A,21B,21Cにより検出される信号は、光学センサ21A,21B,21Cの検出を遮蔽板20A,20B,20Cが遮蔽している状態を「0」、光学センサ21A,21B,21Cの検出を遮蔽板20A,20B,20Cが遮蔽していない状態を「1」とすると、光学センサ21Aは「0」、光学センサ21Bは「0」、光学センサ21Cは「1」となる。位相検出部40は、この検出信号の組み合わせ「001」が主軸105を45°毎に回転させた際に異なる信号を検出できるように構成されている。他の例だと、三つの遮蔽板20A,20B,20Cがパターン25gの状態にある場合、光学センサ21Aは「0」、光学センサ21Bは「1」、光学センサ21Cは「1」となる。従って、検出信号の組み合わせは「011」である。
よって、この検出信号の組み合わせ(全部で8通り)を検出することができれば、この信号から主軸105の位相を知ることができる。
上述したように、位相検出部40は、主軸105が45°回転する毎に異なる信号を検出することができるように構成されているため、位相毎にパターンを25a〜25hまで振り分け、パターンと位相との対応関係が制御部8のメモリ82(後述する)に記憶されている。
【0026】
また、図2に示すように、各糸道1〜5に糸掛けをする際には、糸道1〜5毎に決まった位相パターンになっていないと糸掛けができないようになっており、糸道1〜5と位相パターン25a〜25hとが対応づけられて制御部8のメモリ82に記憶されている。
具体的には、図2に示すように、糸道1に糸掛けをする際には、位相パターンが図6に示す25aの状態でなければならない。また、糸道2に糸掛けをする際には、位相パターンが25bの状態、糸道3に糸掛けをする際には、位相パターンが25cの状態、糸道4に糸掛けをする際には、位相パターンが25dの状態、糸道5に糸掛けをする際には、位相パターンが25eの状態でなければならない。
【0027】
(縫いモード選択スイッチ)
図1に示すように、ミシン100のベッド部101の正面側下方には、縫いモードを選択する縫いモード選択スイッチ7が設けられている。縫いモード選択スイッチ7からの入力により、縫いモードをオーバーロック、カバーステッチ、オーバーロック及び二重環縫いのいずれかに切り替えることができる。
縫いモード選択スイッチ7の近傍には、カバーステッチ、又は、オーバーロック及び二重環縫いのいずれかが選択された際に発光する発光部7Aが設けられている。
【0028】
(制御部)
図7に示すように、ミシン100は、各部の動作を制御する制御部8を備えている。
制御部8は、各部の動作制御を行うための演算処理を司るCPU81と、プログラムや縫製に関するデータ等が記憶されたメモリ82と、を備えている。
メモリ82には、縫いの種類ごとに糸掛け部15A,15B,・・・と発光部10A,10B,・・・と主軸105の位相とを糸を掛ける順序に沿って対応づけたデータが記憶されている。すなわち、メモリ82は、記憶部として機能する。
メモリ82には、位相検出部40によって検出された主軸105の位相で何番目の糸道の糸掛けが可能か否かを判断する糸掛け可能判断プログラムが記憶されている。すなわち、CPU81が糸掛け可能判断プログラムを実行することにより、制御部8は、糸掛け可能判断部として機能する。
【0029】
メモリ82には、糸掛け可能判断プログラムの実行によって判断された糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番よりも前の順番の糸道の糸掛けが全て終了しているか否かを糸検出部30の検出値により判断する糸掛け終了判断プログラムが記憶されている。すなわち、CPU81が糸掛け終了判断プログラムを実行することにより、制御部8は、糸掛け終了判断部として機能する。
メモリ82には、発光部の発光によるユーザへの報知とともに、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる発光制御プログラムが記憶されている。すなわち、CPU81が発光制御プログラムを実行することにより、制御部8は、発光制御部として機能する。
【0030】
制御部8には、縫いモード選択スイッチ7と、糸検出部30の光学センサ34と、位相検出部40の光学センサ21A,21B,21Cとが接続されており、各部からの入力信号又は検出信号が制御部8に向けて送信される。また、制御部8には、各発光部10A,10B,・・・が接続されており、制御部8から各発光部10A,10B,・・・に向けて発光制御に関する制御信号が送信される。
【0031】
(報知部)
ミシン100は、制御部8のCPU81が糸掛け終了判断プログラムを実行することにより、糸掛け可能な順番の糸掛けより前の順番の糸掛けが全て終了していると判断された場合に、ユーザにその旨を報知する報知部を備えている。報知部は、制御部8による発光部の制御の下、発光部の点滅を点灯に切り替えることで構成される。
【0032】
<糸掛けの際の制御部の処理>
図8に示すように、縫いモード選択スイッチ7を介して縫いモードの選択が行われると(ステップS1)、CPU81は、主軸105を回転させるミシンモータが停止しているか否かを判断する(ステップS2)。CPU81は、ミシンモータが停止していると判断した場合(ステップS2:YES)、CPU81は、糸道1〜5の全てに糸掛けが完了しているか否かを糸検出部30の検出値により判断する(ステップS3)。一方、CPU81は、ミシンモータが停止していないと判断した場合(ステップS2:NO)、CPU81は、ステップS2の判断を繰り返す。
【0033】
ステップS3において、CPU81が、糸道1〜5の全てに糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS3:NO)、CPU81は、糸掛けが行われていない糸掛け部、針及びルーパーが糸掛け可能な状態となっているかの判断を行う(ステップS4)。
【0034】
(糸掛けが可能か否かの判断)
ここで、ステップS4の処理について説明する。
図9に示すように、制御部8のCPU81は、糸道1〜5の内、糸掛けが完了していない先頭の発光部10A,11A,12A,13A,14Aを点滅させる(ステップS11)。そして、はずみ車104が回転されると(ステップS12)、CPU81は、図6に示すような位相パターン25a〜25hのいずれかを検出したか否かを判断する(ステップS13)。
ここで、CPU81が、位相パターン25a〜25hのいずれかを検出したと判断した場合(ステップS13:YES)、CPU81は、第一番目に糸掛けをする糸道1に糸掛けすることができる位相になっているか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、図2に示すように、オーバーロック及び二重環縫いの糸掛け順序においては、第一番目に上ルーパー15に至る糸道1に糸掛けを行う必要があるため、糸道1への糸掛けの際の位相パターンが25aであるか否かを判断する。
【0035】
ステップS14において、CPU81が、糸道1への糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS14:YES)、CPU81は、糸道1の先頭の発光部10Aのみを点滅から点灯に切り替える(ステップS24)。一方、CPU81が、糸道1への糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS14:NO)、CPU81は、第二番目に糸掛けをする糸道2に糸掛けすることができる位相になっているか否かを判断する(ステップS16)。具体的には、図2に示すように、オーバーロック及び二重環縫いの糸掛け順序においては、第二番目に下ルーパー16に至る糸道2に糸掛けを行う必要があるため、糸道2への糸掛けの際の位相パターンが25bであるか否かを判断する。
【0036】
ステップS16において、CPU81が、糸道2への糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS16:YES)、CPU81は、糸道2よりも前に糸掛けをする糸道、すなわち、糸道1の糸掛けが完了しているか否かを判断する(ステップS17)。ステップS17において、CPU81が、糸道1の糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS17:YES)、CPU81は、糸道2の先頭の発光部11Aのみを点滅から点灯に切り替える(ステップS25)。一方、CPU81が、糸道1の糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS17:NO)、CPU81は、ステップS11の処理に戻る。
【0037】
ステップS16において、CPU81が、糸道2への糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS16:NO)、CPU81は、第三番目に糸掛けをする糸道3に糸掛けすることができる位相になっているか否かを判断する(ステップS18)。具体的には、図2に示すように、オーバーロック及び二重環縫いの糸掛け順序においては、第三番目に右側の針17に至る糸道3に糸掛けを行う必要があるため、糸道3への糸掛けの際の位相パターンが25cであるか否かを判断する。
【0038】
ステップS18において、CPU81が、糸道3への糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS18:YES)、CPU81は、糸道3よりも前に糸掛けをする糸道、すなわち、糸道1,2の糸掛けが完了しているか否かを判断する(ステップS19)。ステップS19において、CPU81が、糸道1,2の糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS19:YES)、CPU81は、糸道3の先頭の発光部12Aのみを点滅から点灯に切り替える(ステップS26)。一方、CPU81が、糸道1,2の糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS19:NO)、CPU81は、ステップS11の処理に戻る。
【0039】
ステップS18において、CPU81が、糸道3への糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS18:NO)、CPU81は、第四番目に糸掛けをする糸道5に糸掛けすることができる位相になっているか否かを判断する(ステップS20)。具体的には、図2に示すように、オーバーロック及び二重環縫いの糸掛け順序においては、第四番目に二重環ルーパー19に至る糸道5に糸掛けを行う必要があるため、糸道5への糸掛けの際の位相パターンが25eであるか否かを判断する。
【0040】
ステップS20において、CPU81が、糸道5への糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS20:YES)、CPU81は、糸道5よりも前に糸掛けをする糸道、すなわち、糸道1,2,3の糸掛けが完了しているか否かを判断する(ステップS21)。ステップS21において、CPU81が、糸道1,2,3の糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS21:YES)、CPU81は、糸道5の先頭の発光部14Aのみを点滅から点灯に切り替える(ステップS27)。一方、CPU81が、糸道1,2,3の糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS21:NO)、CPU81は、ステップS11の処理に戻る。
【0041】
ステップS20において、CPU81が、糸道5への糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS20:NO)、CPU81は、第五番目に糸掛けをする糸道4に糸掛けすることができる位相になっているか否かを判断する(ステップS22)。具体的には、図2に示すように、オーバーロック及び二重環縫いの糸掛け順序においては、第五番目に左側の針18に至る糸道4に糸掛けを行う必要があるため、糸道4への糸掛けの際の位相パターンが25dであるか否かを判断する。
【0042】
ステップS22において、CPU81が、糸道4への糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS22:YES)、CPU81は、糸道4よりも前に糸掛けをする糸道、すなわち、糸道1,2,3,5の糸掛けが完了しているか否かを判断する(ステップS23)。ステップS23において、CPU81が、糸道1,2,3,5の糸掛けが完了していると判断した場合(ステップS23:YES)、CPU81は、糸道4の先頭の発光部13Aのみを点滅から点灯に切り替える(ステップS28)。一方、CPU81が、糸道1,2,3,5の糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS23:NO)、CPU81は、ステップS11の処理に戻る。
【0043】
図9において、糸掛け可能と判断された糸道の先頭の発光部10A,11A,12A,13A,14Aを点滅から点灯に切り替えた後、CPU81は、図8に示すように、次に糸を掛けるべき糸掛け部の近傍の発光部を点灯させる(ステップS5)。
次いで、CPU81は、糸掛けすべき糸道の糸掛けが完了したか否かを判断する(ステップS6)。ここで、CPU81は、糸掛けすべき糸道の糸掛けが完了したと判断した場合(ステップS6:YES)、CPU81は、糸掛けが完了した糸道の発光部を消灯させ(ステップS7)、ステップS3の判断に戻る。一方、糸掛けすべき糸道の糸掛けが完了していないと判断した場合(ステップS6:NO)には、CPU81は、発光部を消灯させることなく、ステップS3の判断に戻る。
【0044】
<作用効果>
このように、ミシン100によれば、位相検出部40によって主軸105の位相を検出すると、制御部8のCPU81は、糸掛け可能判断プログラムを実行することにより、位相検出部40によって検出された主軸105の位相で何番目の糸掛けが可能か否かを判断する。そして、制御部8のCPU81は、糸掛け終了判断プログラムを実行することにより、判断された糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番よりも前の順番の糸掛けが全て終了しているか否かを糸検出部30の検出値により判断する。糸掛け可能な糸道より前の順番の糸掛けが全て終了していると判断された場合、糸掛け可能な糸道の先頭の発光部が点滅から点灯に切り替わることにより、ユーザに糸掛けが可能なことを報知する。また、発光部によるユーザへの報知とともに、制御部8は、メモリ82に記憶された糸掛け部と発光部との対応関係を参照して、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる。
これにより、主軸105がどの位相であっても、順番の早い糸掛けを先に行わせ、先に糸掛けすべき糸掛けを終わらせてから、次に糸掛けを行うべき糸掛け部の近傍の発光部を発光させるので、ユーザは、糸掛けをする順番を誤ることがない。また、糸掛けを行うべき箇所を視覚で認識することができるので、ミシンを使い慣れていないユーザであっても容易に糸掛けを行うことができ、糸掛けの作業効率を向上させることができる。
また、発光部は、ルーパーと針と各糸掛け部の近傍に配置されているので、糸供給源から針及びルーパーまでの糸道を表示することができる。
【0045】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、縫いの種類は、オーバーロック及び二重環縫いに限られるものではなく、オーバーロック、カバーステッチの場合にも適用可能である。なお、図2に示すように、オーバーロックの場合には、糸道は4つ必要であり、上ルーパー、下ルーパー、左側の針、右側の針の順番で糸を掛けていくとよい。カバーステッチの場合には、針を3本使用し、糸道は4つ必要であり、二重環ルーパー、右側の針、中央の針、左側の針の順番で糸を掛けていくとよい。
また、発光部として発光ダイオードを用いたが、糸道に沿って配置された線上の発光体を用いてもよいし、液晶パネル等で情報を表示するようにしてもよい。
また、糸検出部に代えて、糸の接触により検出可能なスイッチ、カメラによる撮像画像を用いて糸を検出するようにしてもよい。
また、発光部の点滅、点灯によるユーザへの報知すべき情報の種類を複数の発光部を設けることにより、どの発光部が点灯しているかでユーザが情報を把握できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ミシンの正面図。
【図2】各縫いモードにおける糸掛けの順番と糸道と位相パターンとの関係を示す図。
【図3】ミシンの裏面側の糸道を示す図。
【図4】ミシンの側面から二重環ルーパーに至るまでの糸道を示す図。
【図5】糸検出部の構成を示す斜視図。
【図6】位相検出部の構成を示す図。
【図7】制御部の構成を示すブロック図。
【図8】糸掛けの際の制御部の処理を示すフローチャート。
【図9】制御部による糸掛けが可能か否かの判断処理についてのフローチャート。
【符号の説明】
【0047】
1〜5 糸道
8 制御部(糸掛け可能判断部、糸掛け終了判断部)
10A,11A,12A,13A,14A 発光部(報知部)
10A〜10F 発光部
11A〜11G 発光部
12A,12B,10I 発光部
13A,13B,12C 発光部
14A〜14H 発光部
15 上ルーパー
16 下ルーパー
17 針
18 針
30 糸検出部
40 位相検出部
82 メモリ(記憶部)
100 ミシン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸供給源からルーパー及び針までの複数の糸道に沿って設けられ、糸を係止する糸掛け部と、
前記糸掛け部に糸が係止されているか否かを検出する糸検出部と、
ルーパーと針と各糸掛け部のそれぞれの近傍に配置され、通電により発光する発光部と、
それぞれの糸掛け部が糸掛け可能な主軸の位相を検出する位相検出部と、
縫いの種類ごとに糸を掛ける糸掛け部と発光させる発光部とを、前記主軸の位相に関連づけて糸を掛ける順序に対応して記憶する記憶部と、
前記位相検出部によって検出された主軸の位相でどの糸道に糸掛けが可能か否かを判断する糸掛け可能判断部と、
前記糸掛け可能判断部によって判断された糸掛け可能な糸道の糸掛けの順番よりも前の順番の糸道への糸掛けが全て終了しているか否かを前記糸検出部の検出値により判断する糸掛け終了判断部と、
前記発光部を用い、前記糸掛け終了判断部によってユーザへの報知とともに、次に糸を係止させるべき糸掛けの近傍の発光部を発光させる制御部と、
を備えることを特徴とするミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−200314(P2008−200314A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40463(P2007−40463)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】