説明

ミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置

【課題】粘性の高い液体であってもミスト化可能なミスト吐出ヘッド並びにこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】液滴を吐出するノズル11と、ノズルが形成された導電性を有するノズルプレート10と、ノズルに連通する液室12と、超音波を発生しノズル近傍の液体に超音波を与える超音波発生素子18と、液室の壁面のうちノズルプレート以外の壁面に設けられ、ノズルプレートに対する電界を印加するための電極を有することを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものであり、特に、粘度の高い液体を用いたミスト吐出ヘッド及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、霧状の微液滴、すなわちミストを吐出する液体吐出装置が知られている(特許文献1、2、3、4)。
【0003】
ミストの吐出は、超音波を用いて液体を霧化することにより行う。具体的には、一般に、キャビテーション(空洞現象)によるキャビテーション霧化、あるいは、キャピラリ波(毛細表面波)によるキャピラリ霧化が用いられる。後者を用いた方が、粒径の揃ったミストを生成でき、かつエネルギー効率も良い。
【0004】
キャピラリ霧化では、自由液面に向って平面波を印加する際、超音波(平面波)の振動数とメニスカスの振幅(オンセット振幅)が、液体の物性に対してある条件を満たすと、メニスカスにおける表面張力波は時系列に発振し、その結果、ある時点でメニスカスにおける表面張力波の波頭から微小な液滴(ミスト)が分裂することになる。
【特許文献1】特開昭62−86948号公報
【特許文献2】特開昭62−111757号公報
【特許文献3】特開2002−59549号公報
【特許文献4】特開2002−166541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなミストを吐出する従来のミスト吐出ヘッドでは、液体の粘度と毛管効果の比である毛管数が示唆するように、原理的に粘度の高い液体を吐出することができず、10MHz以上の超音波発生素子を用いた場合では、ミスト化の限界粘度は高々2〜3cPである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、粘度の高い液体、具体的には、10〜30cP程度の液体であってもミストの吐出可能なミスト吐出ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、前記ノズルに連通する液室と、超音波を発生し前記ノズル近傍の液体に前記超音波を与える超音波発生素子と、前記液室の壁面のうちノズルプレート以外の壁面に設けられ、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための電極と、を有することを特徴とするミスト吐出ヘッドである。
【0008】
これにより、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力を上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、前記ノズルに連通する液室と、超音波を発生し前記ノズル近傍の液体に前記超音波を与える超音波発生素子を有し、前記液室の壁面のうち液体を介してノズルプレートとは反対側の壁面に設けられ、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための電極と、を有することを特徴とするミスト吐出ヘッドである。
【0010】
これにより、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力を上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、前記ノズルに連通する液室と、前記液室のノズルプレートと接する側壁に配置され、超音波を発生し前記液室内の液体に前記超音波を与える超音波発生素子と、前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有し、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための導電性を有するリフレクタと、を有することを特徴とするミスト吐出ヘッドである。
【0012】
これにより、液室内の液体に対し、その液室の側壁に配置された超音波発生素子から超音波が生じ、リフレクタの反射面によってノズルの近傍の焦点に超音波が収束されるので、焦点に達する超音波は概ね反射波となり、焦点に収束した反射波に対する直接波の影響は排除され、エネルギー効率が向上させることが可能になるとともに、このリフレクタを電極と兼用することにより、別途電極を設ける必要がないという効果がある。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とする請求項3に記載のミスト吐出ヘッドである。
【0014】
これにより、リフレクタの反射面の断面形状が共焦点を有する2本の放物線によって構成された形状であれば、共焦点に反射波が効率よく集束されるとともに、このリフレクタを電極と兼用することにより、別途電極を設ける必要がないという効果がある。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させることにより形成される凸形状の前記反射面を有するものであることを特徴とする請求項3または4に記載のミスト吐出ヘッドである。
【0016】
これにより、液室を円筒形状とし、リフレクタを液室の軸線の中心に回転させて成る回転体形状とし、かつ、液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を液室の軸線を中心に回転させて成る反射面を有する凸形状としたことにより、直接波を確実に排除し、かつ、反射波の集束効率が極めて高い構造のミスト吐出ヘッドを容易に製造することができるとともに、このリフレクタを電極と兼用することにより、別途電極を設ける必要がないという効果がある。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記ノズルプレートと前記電極との間、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電界が交流電界であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドである。
【0018】
これにより、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力をより一層上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記交流電界の周波数が、前記超音波発生素子を駆動する周波数の1/2であることを特徴とする請求項6に記載のミスト吐出ヘッドである。
【0020】
これにより、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力をより一層上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凸形状となるとき、前記ノズルプレートと前記電極、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電荷が反対の極性を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドである。
【0022】
これにより、前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凸形状となったとき、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力を上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凹形状となるとき、前記ノズルプレートと前記電極、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電荷が同じ極性を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドである。
【0024】
これにより、前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凹形状となったとき、粘度の高い液体であっても見かけ上の表面張力を上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えた画像形成装置である。
【0026】
これにより、粘度の高い液体であっても液滴径のばらつきの少ない微細なミストを発生させることが可能な、高精細な画像形成装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、粘度の高い液体であっても液体に所定の電界を印加することにより、見かけ上の表面張力を上昇させることができ、液滴径のばらつきの少ないミストを発生させ吐出することができる。これにより、粘度の高い液体をインクとして用いた場合であっても、インクミストを用いた高精細で品質の高い画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔発明の原理〕
最初に本発明の原理について説明する。
【0029】
本発明は、超音波発生素子によりノズル近傍の液体のメニスカス面を振動させた際に、インクである液体に電界を印加することにより、ノズル近傍の液体のメニスカス面の曲率半径を大きくし、見かけ上の液体の表面張力を上昇させるものである。これにより、毛管数を下げることができ、粘度の高い液体であっても、均一なミストの発生が可能となる。
【0030】
具体的には、毛管数(Ca:Capillarity Number)は、以下の数式1で表される。
【0031】
(数式1)
Ca=μV/γ
ここで、μは液体の粘度、γは液体の表面張力係数、Vは表面張力波の伝播速度を示す。この毛管数Caが、一定の値よりも大きくなると10MHz以上の超音波発生素子を用いた場合でも、液体をミスト化することができなくなってしまう。従って、液体をミスト化するためには、毛管数Caを一定の値以下にしなければならない。
【0032】
粘度の高い液体はμの値が大きいため、これによりCaの値が大きくなり均一なミスト化を妨げている。本発明では、μの値が大きな場合であっても、γの値を大きくすることにより、相対的にCaの値が大きくならないようにするものである。このためγの値を大きくなるように液体に電界を印加して、見かけ上の表面張力を上昇させるものである。
【0033】
本発明のこの原理について図面に基づき説明する。
【0034】
図1は、液面が静止した状態における液体に電界を印加した場合の概念図である。
【0035】
液室23には水等の極性を持った液体が入れられており、ノズルプレート21にはノズル25が設けられ、液体の液面(メニスカス面)24が形成されている。液室23は、ノズルプレート21、背面板22、側面板(不図示)により囲まれている。
【0036】
図1(a)では、ノズルプレート21に正の電荷を背面板22には負の電荷が印加されるように電界が印加した場合を示す。ノズルプレート21に印加された正の電荷により、極性を持った液体分子は、ノズルプレート21方向に負極が向いている。このため、極性を持った液体分子の正極はノズル中心方向を向く。ノズル25中心部は、中心方向に正極が向いている液体分子が集まっているため、背面板22に負の電荷を印加することにより、ノズル25中心部の液体分子の正極は背面板22の負の電荷に引き寄せられる。これにより、ノズル25中心部の液体分子は、図面上、下向きの力が働く、即ち、ノズル25近傍の液体の液面(メニスカス面)24が凹状態になるように力が働く。
【0037】
一方、図1(b)に示すように、ノズルプレート21に正の電荷を印加し、背面板22にも正の電荷を印加すると、ノズル25中心部の液体分子の正極と背面板22の正の電荷とが反発し、ノズル25中心部の液体分子は、図面上、上向きに力が働く、即ち、ノズル近傍の液体の液面(メニスカス面)24が凸状態になるように力が働く。
【0038】
尚、説明の関係上ノズルプレート21に正の電荷を印加した場合について説明したが、ノズルプレート21に負の電荷を印加した場合も同様である。具体的には、ノズルプレート21に負の電荷を背面板22に正の電荷を印加することにより、液面24は図面上、下向きに力が働き、ノズルプレート21に負の電荷を背面板にも負の電荷を印加することにより、液面24は図面上、上向きに力を働かせることができる。このとき、液体分子の極性の向きは図1に示した向きとは逆向きとなる。
【0039】
次に、超音波発生素子によりノズル近傍の液体が振動しているときの力の関係について図2に基づき説明する。
【0040】
図2(a)は、超音波発生素子により、ノズル近傍の液体の液面(メニスカス面)31が凸になった場合の力の関係を示す。このときに働く力は、液体に電界を印加しない場合には、PG:大気圧、PL:静水圧、PC:液体表面張力圧であり、図2(a)に示すように、PG、PCは液体内側方向(図面上、下向き)、PLは液体外側方向(図面上、上向き)に働いている。本発明では、粘度の高い液体であっても表面張力を上昇させることにより、毛管数を低下させ、均一なミスト化が可能とするものである。よって、液体表面張力圧であるPCと同じ方向に力が働くように液体に電界を印加する。
【0041】
具体的には、図1(a)に示すように、ノズルプレート21に正の電荷、背面板22に負の電荷を印加することにより、ノズル25近傍の液体に、図面上、下向きの力を働かせることができる。よって、同様の電界の印加を行うことにより液体表面張力圧の働く方向と一致させることができる。
【0042】
このように電界を印加することによって、図2(a)に示すように、液体内側方向(図面上、下向き)には、PG、PC,PEの力が働き、PEがないときよりも、液面の曲率半径が大きくなり(液面が平坦に近くなり)、液体の見かけ上の表面張力を上昇させることができる。
【0043】
図2(b)は、超音波発生素子により、ノズル近傍の液体の液面(メニスカス面)32が凹になった場合の力の関係を示す。このときに働く力は、図2(a)と同様に、液体に電界を印加しない場合、PG:大気圧、PL:静水圧、PC:液体表面張力圧であり、図2(b)に示すように、PGは液体内側方向(図面上、下向き)、PL、PCは液体外側方向(図面上、上向き)に働いている。これに液体表面張力圧であるPCと同じ方向に力が働くように液体に電界を印加する。
【0044】
具体的には、図1(b)に示すように、ノズルプレート21に正の電荷、背面板22にも正の電荷を印加することにより、ノズル25近傍の液体に、液面が液体外側方向(図面上、上向き)に向くような力を働かせることができ、液体表面張力圧の働く方向と一致させることができる。
【0045】
このように電界を印加することによって、図2(b)に示すように、液体外側方向(図面上、上向き)には、PL、PC,PEの力が働き、PEがないときよりも、液面の曲率半径が大きくなり(液面が平坦に近くなり)、液体の見かけ上の表面張力を上昇させることができる。
【0046】
以上のように、超音波発生素子によりノズルの液体のメニスカス面は、液面が凹凸になるような振動をするが、これにあわせて液体に電界を印加することにより、即ち、液面の凹凸の振動にあわせて、図1に示す背面板22の電荷を正負と切り替えることにより、見かけ上の液体の表面張力を上昇させることができ、液体の粘性が高い場合であっても、超音波発生素子により発生させた10MHz程度の超音波によりミスト化が可能となる。
【0047】
具体的には、超音波発生素子により、ノズルにおける液面が凸状態になった場合には、背面板に負の電荷を印加し、ノズルにおける液面が凹状態になった場合には、背面板に正の電荷を印加することにより、連続的に見かけ上の液体の表面張力を上昇させることができるため、粘度の高い液体であっても、均一性の高いミストを発生させることができる。
【0048】
〔ミスト吐出ヘッド〕
以上の原理に基づく本発明に係る第1の実施の形態のミスト吐出ヘッドについて、図3に基づき説明する。
【0049】
ミスト吐出ヘッドは、図3に示すように液体を吐出する開口部としてのノズル11(吐出口)が形成されたノズルプレート10と、ノズル11に連通する液室12と、液室12に液体が供給される開口部としての液体供給口13と、液室12の底面に配置された振動板15と、振動板15の液室12の反対面に設けられた背面電極層16、分離層17、超音波を発生して液室12内の液体に超音波を与え得るアクチュエータとしての超音波発生素子18で構成されている。
【0050】
超音波発生素子18は、圧電体層18a、及び、ミスト吐出ヘッドの外部(具体的には後に説明する図8のヘッドドライバ184)から駆動信号が与えられる上部電極18b、下部電極18cによって構成されている。
【0051】
また、ミスト吐出ヘッドの液室12は、天面板としてのノズルプレート10と、底面板としての振動板15と、側面板としての隔壁14とによって構成されている。
【0052】
超音波発生素子18の圧電体層18aはPZT、超音波発生素子18の上部電極18b、下部電極18cはNi、振動板15はポリイミドによって、それぞれ形成されている。
【0053】
超音波発生素子18によって発生された超音波は、振動板15を介して液室12内の液体に伝達され、ノズルプレート10の方向に向かって平行に平面波として進む。このような平面波により、ノズル11のメニスカスに表面張力波が発生する。このような表面張力波は、液体の表面張力に依存する。
【0054】
図3(a)は、超音波発生素子18によりノズル11のメニスカス面が凸になったときの場合を示す。この際、ノズルプレート10には正の電荷が、背面電極層16には負の電荷が印加されるよう電界が印加されており、図1、図2での説明のとおりノズル11の液体の液面(メニスカス面)を平坦にする(曲率半径を大きくする)方向に力が働く。
【0055】
図3(b)は、超音波発生素子18によりノズル11のメニスカス面が凹になったときの場合を示す。この際、ノズルプレート10には正の電荷が、背面電極層16にも正の電荷が印加されるよう電界が印加されており、図1、図2での説明のとおりノズル11近傍の液体には、液面(メニスカス面)を平坦にする(曲率半径を大きくする)方向に力が働く。
【0056】
このように、ノズル11の液体のメニスカス面は超音波発生素子18により凹凸振動するが、粘度の高い液体の場合、特にこの凹凸の振動の振幅が大きい。本発明では、ノズル11の液体のメニスカス面の凹凸状態に合わせて、背面電極層16に与える電界の極性を変えることにより、ノズル11の液体のメニスカス面の凹凸の振動振幅を低下させることができ、表面張力を増加させることができる。一般に、表面張力波の周波数は、超音波発生素子18に印加される周波数の1/2であることから、背面電極層16に印加される交流電界の周波数は、超音波発生素子18に印加される周波数の1/2である。
【0057】
次に、ミスト吐出ヘッドの具体例の全体構造について説明する。
【0058】
図4はミスト吐出ヘッド150の一例の平面透視図である。本例のミスト吐出ヘッド150は、図4に示すように、インクの吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応するインク室152、個別供給路154からなる複数のインク室ユニット(ミスト吐出素子)153を2次元マトリクス状に配置させた構造を有し、これにより、ミスト吐出ヘッド150の長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。なお、図4では、便宜上、一部のインク室ユニット153は省略して描いてある。
【0059】
各インク室152は個別供給路154を介して共通流路155に連通している。共通流路155は、接続口155A,155Bを介してインク供給源たるインクタンク(図4中不図示、後に説明する図8のインク貯蔵/装填部114と等価なもの)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは、図4の共通流路155を介して各チャンネルのインク室152に分配供給される。なお、図4中の符号155Cは共通流路155の本流、155Dは本流155Cから分岐された支流である。
【0060】
図4に示したミスと吐出ヘッド150の構成と、図3で説明したミスト吐出ヘッドの構成との対応関係を簡単に説明すると、図5におけるノズル151、インク室152及び個別供給路154が、図3で説明したノズル11、液室12及び液体供給口13にそれぞれ相当している。
【0061】
図5は、図4に示したミスト吐出ヘッド150の一部を拡大して示す拡大図である。図5に示されるように、多数のインク室ユニット153は、主走査方向と主走査方向に対して所定の角度θをなす斜め方向との2方向に沿って格子状に配列されている。すなわち多数のノズル151は2次元マトリクス状に配列されている。このような2次元マトリクス状の配列により、ノズル密度の実質的な高密度化が実現されている。
【0062】
具体的には、主走査方向に対して一定の角度θをなす斜め方向に沿ってインク室ユニット153が一定のピッチdで複数配列されていることにより、各ノズル151が主走査方向に沿った一直線上にピッチP(=d×cosθ)で配列されたものと等価的に取り扱うことができる。これにより、主走査方向に沿って1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル配列と実質的に同等の構成を実現することが可能になる。
【0063】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図4及び図5に示した例に限定されない。記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録媒体の全幅に対応する長さにわたるノズル列を備えるフルライン型ヘッドの形態として、図5に例示した構成に代えて、例えば、図6に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドブロック150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0064】
〔画像形成装置の全体構成〕
図7は、画像形成装置110のシステム構成例を示すブロック図である。図7に示すように、画像形成装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184、電界印加ドライバ192等を備えている。
【0065】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信する画像入力手段である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、無線ネットワークなどの有線又は無線のインターフェースを適用することができる。
【0066】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介して画像形成装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。
【0067】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置110の全体を制御する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188を制御する制御信号を生成する。搬送系のモータ188とは、例えば、後述する図9における搬送用ローラ対131、133の駆動ローラに動力を与えるモータである。
【0068】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0069】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。
【0070】
プリント制御部180は、入力画像に基づいて各色インクのドットデータを生成する信号処理手段として機能する。すなわち、プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データからインク吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行い、生成したデータ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。
【0071】
吐出検出部124は、ミスト吐出ヘッド150の吐出結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりや着弾位置ずれなどの吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0072】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0073】
画像入力から画像形成までの処理の流れを概説すると、形成すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0074】
画像形成装置110では、インク(色材)による微細なドットの密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、プリント制御部180においてディザ法や誤差拡散法などを用いたハーフトーン化処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
【0075】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
【0076】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるドットデータ(すなわち、画像バッファメモリ182に記憶されたドットデータ)に基づき、ミスト吐出ヘッド150の各ノズル151に対応する図3に示す超音波発生素子18を駆動するための駆動信号を出力する。なお、ヘッドドライバ184にはミスト吐出ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0077】
ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がミスト吐出ヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151から液体が吐出される。記録媒体の搬送速度に同期してミスト吐出ヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録媒体上に画像が形成される。
【0078】
電界印加ドライバ192は、図3に示すノズルプレート10と背面電極層16との間、或いは、後述する図13に示すノズルプレート510とリフレクタ80との間に電界を印加するための制御がなされる。
【0079】
図8は、画像形成装置110の機構的な構成例の概略を示す全体構成図である。図8に示す画像形成装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のミスト吐出ヘッド112K,112C,112M,112Yを有するミスト吐出部112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体である記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、ミスト吐出部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する搬送部122と、ミスト吐出部112による吐出結果を読み取る吐出検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0080】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。
【0081】
図8では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0082】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。
【0083】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図8のように、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0084】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、搬送用ローラ対131によってニップ搬送され、プラテン132上へと送られる。プラテン132の後段(ミスト吐出部112の下流側)にも搬送用ローラ対133が配置されており、前段の搬送用ローラ対131と後段の搬送用ローラ対133とが連動して記録紙116を所定の速度で搬送する。
【0085】
プラテン132は記録紙116の平面性を保ちつつ記録紙116を保持(支持)する部材(記録媒体の保持手段)として機能するとともに、背面電極として機能する部材である。図8におけるプラテン132は記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有し、少なくともミスト吐出部112のノズル面及び吐出検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0086】
記録紙116の搬送経路において、ミスト吐出部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、インクが吐出される前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。インク吐出直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0087】
ミスト吐出部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該画像形成装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図9参照)。
【0088】
ミスト吐出ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのミスト吐出ヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0089】
搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ミスト吐出ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0090】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116とミスト吐出部112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、ミスト吐出ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
【0091】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するミスト吐出ヘッドを追加する構成も可能である。また、各色のミスト吐出ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0092】
各色のミスト吐出ヘッド112K,112C,112M,112Yにより形成されたテストパターン又は実画像が吐出検出部124により読み取られ、吐出結果が検査される。
【0093】
吐出検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、形成された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
【0094】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0095】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト画像とは分けて排出することが好ましい。この画像形成装置110では、本画像のプリント物と、テスト画像のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト画像とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト画像の部分を切り離す。また、図8には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0096】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0097】
本発明の第2の実施の形態は、液室側面に超音波発生素子を設けた構造のミスト吐出ヘッドである。
【0098】
まず第2の実施の形態に係るミスト吐出ヘッドの基本構造について説明する。
【0099】
図10は、本発明に係る一実施形態のミスト吐出ヘッドの基本構成を示す断面図である。本実施の形態のミスト吐出ヘッド50は、霧状のインクを吐出する開口部としてのノズル51と、ノズル51に連通する液室52と、液室52にインクが供給される開口部としてのインク供給口53と、インク供給口53を介して液室52に供給されるインクが流動する共通流路55と、液室52の側壁に配置され、超音波発生素子58により発生した超音波を液室52内のインクに伝達する振動板56と、この超音波発生素子58からの超音波を反射して、液室52内のノズル51の近傍に位置する焦点Fに集束させるリフレクタ80を含んで構成されている。
【0100】
超音波発生素子58は、ピエゾなどの圧電体58aと、駆動信号が与えられる上部電極58b、下部電極58cとによって構成されている。
【0101】
また、ミスト吐出ヘッド50は、リフレクタ80が形成されているリフレクタプレート530と、液室52側面に超音波発生素子58が形成されている液室プレート520と、ノズル51が形成されているノズルプレート510とが積層された、積層構造になっている。
【0102】
液室52の側壁に配置された超音波発生素子58によって発生された超音波は、液室52の側壁に設けられた振動板56により、液室52内の液体に伝達され、液室52の中央方向に向かって平行に進む。すなわち、焦点Fを通る液室52の軸線に向っていくように、この液室52の軸線に対して直交する方向で面状に進んでいく。
【0103】
このようにして液室52の軸線に向って進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pによって反射される。放物面80pの焦点Fは、液室52内のノズル51の近傍に位置しているので、リフレクタ80の放物面80pによって反射された超音波(反射波)は、液室52内を焦点Fに向かって進み、焦点Fに集束される。
【0104】
ノズル51から霧状の液体が吐出される方向(図10中に矢印で示す)は、概ね焦点Fを通る液室52の軸線方向である。
【0105】
リフレクタ80の反射面としての放物面80pの断面形状、具体的には焦点Fを通り吐出方向に平行な面で切断したときの一断面形状は、ひとつの焦点Fを共焦点とする2本の放物線からなる。
【0106】
このような構造により、焦点Fに反射波を効率よく集束させることができる。すなわち、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁の振動板56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくようにして面状に進んだ超音波は、リフレクタ80の放物面80pに鈍角で反射することにより、エネルギー損失が少なく反射されて、しかも、焦点Fに効率よく集束することになる。
【0107】
また、リフレクタ80の頂点80t(すなわち放物面80pの最上端部)は、液室52の側壁56に配置されている超音波発生素子58の最上端部と同じ(又はそれ以上)の高さとしてある。
【0108】
このような構造により、超音波発生素子58によって発生されて、液室52の側壁の振動板56を介して液室52内の液体に導入され、液室52の軸線に対して向っていくように面状に進んだ超音波は、直接波となることはなく、焦点Fに到達する超音波は概ね反射波となるので、減衰や干渉などの悪影響が低減され、エネルギー効率が向上する。
【0109】
なお、好ましい構造について、すなわちエネルギー効率が最大になる構造について、理解を容易にするために、図10に示す基本構成のミスト吐出ヘッド50の平面透視図を図11に示し、要部を模式的に示す斜視透視図を図12に示す。なお、図11中の10A−10B線に沿った断面は図10に示されている通りである。
【0110】
図11及び図12において、液室52は、焦点Fを通る軸線を有する円筒形状である。また、リフレクタ80は、凸形状である。このような凸形状のリフレクタ80の放物面80pは、液室52の焦点Fを通る軸線と焦点Fにて直交する中心軸を有する放物線を、液室52の軸線を中心に回転させて成る。
【0111】
ノズル51が形成されているノズルプレート510と液室52が形成されている液室プレート520とは、水平断面を示す図2において、液室52の外側で支柱851を介して接合されており、液室52の内側には接合部がない。このような構造であるから、ノズルプレート510とリフレクタとの接合部の角に気泡がたまり易かった従来のミスト吐出ヘッドと比較して、ノズル51の周囲に気泡がたまり難く、気泡排除性が良いことになり、吐出の安定性が良い。
【0112】
なお、図10〜図12では、1つのノズル51に対応した1つの液室ユニット(1単位のミスト吐出素子)が示されているが、紙等の記録媒体に対して相対的に移動して記録媒体上に画像を形成させるためのミスト吐出ヘッドの場合、複数の液室ユニットが1次元(列状)又は2次元(面状)に配列された構造となる。このようなミスト吐出ヘッドにおいて、実際には、ノズルプレート510には複数のノズル51が形成されており、液室プレート520には複数の液室52が形成されており、これらの液室52に対応して超音波発生素子58及びリフレクタ80が設けられる。
【0113】
以上の基本構造を有する第2の実施の形態のミスト吐出ヘッドにおいて、液体に電界を印加した場合についてさらに具体的に説明する。
【0114】
本実施の形態のミスト吐出ヘッドは、図13に示すように液体のミストを吐出する開口部としてのノズル51(吐出口)が形成されたノズルプレート510と、ノズル51に連通する液室52と、液室52に液体が供給される開口部としての液体供給口53と、液室52の側面に配置された振動板56と、振動板56の液室52の反対面に設けられた超音波を発生して液室52内の液体に超音波を与え得るアクチュエータとしての超音波発生素子58、リフレクタ80により構成されている。
【0115】
超音波発生素子58は、圧電体層58a、及び、ミスト吐出ヘッドの外部(具体的には後に説明する図8のヘッドドライバ184)から駆動信号が与えられる上部電極58b、下部電極58cによって構成されている。
【0116】
また、ミスト吐出ヘッドの液室52は、天面板としてのノズルプレート510と、側面板として超音波発生素子58が形成されている液室プレート520、底面板としてリフレクタが形成されたリフレクタプレート530とによって構成されている。
【0117】
超音波発生素子58の圧電体層58aはPZT、超音波発生素子58の電極層58b、58cはNi、振動板56はポリイミドによって、それぞれ形成されている。
【0118】
超音波発生素子58によって発生された超音波は、振動板56を介して液室52内の液体に伝達され、ノズルプレート510の方向に向かって平行に平面波として進む。このような平面波により、ノズル51のメニスカスに表面張力波が発生する。このような表面張力波は、液体の表面張力に依存する。
【0119】
図13(a)は、超音波発生素子58によりノズル51のメニスカスが凸になったときの場合を示す。この際、ノズルプレート510には正の電荷が、リフレクタ80には負の電荷が印加されるよう電界が印加する、これによりノズル51近傍の液体の液面(メニスカス面)を平坦にする(曲率半径を大きくする)方向に力が働く。
【0120】
図13(b)は、超音波発生素子58によりノズル51のメニスカスが凹になったときの場合を示す。この際、ノズルプレート510には正の電荷が、リフレクタ80にも正の電荷が印加されるよう電界が印加する、これによりノズル51近傍の液体の液面(メニスカス面)を平坦にする(曲率半径を大きくする)方向に力が働く。
【0121】
このように、リフレクタ80に印加する電界をノズル51の液体のメニスカス面が超音波発生素子により凹凸の振動が発生し、粘度の高い液体の場合、特にこの凹凸の振動の振幅が大きくなるが、本発明のように、ノズル51の液体のメニスカス面の凹凸状態に合わせて、リフレクタ80に印加する電界の極性を変えることにより、ノズル51の液体のメニスカス面の凹凸の振幅を下げることができ、表面張力を増加させることができる。
【0122】
これにより粘度の高い液体であっても10MHz程度の超音波発生素子によりミスト化が可能となる。
【0123】
以上、本発明のミスト吐出ヘッド並びに画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係るミスト吐出ヘッドの原理の説明図
【図2】ノズル近傍の液面に働く力関係を示す図
【図3】本発明に係る第1の実施の形態のミスト吐出ヘッドの断面図
【図4】ミスト吐出ヘッドの具体例の全体構造を示す平面透視図
【図5】図4の一部を拡大して示す拡大図
【図6】ミスト吐出ヘッドの他の具体例の全体構造を示す平面透視図
【図7】本発明に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す要部ブロック図
【図8】本発明に係る画像形成装置の機構的な構成を示す全体構成図
【図9】図8に示した画像形成装置の印字部周辺の要部平面図
【図10】本発明に係る第2の実施の形態に係るミスト吐出ヘッドの基本構成の断面図
【図11】図10のミスト吐出ヘッドの要部を示す平面透視図
【図12】図11のミスト吐出ヘッドの要部を示す斜視透視図
【図13】本発明に係る第2の実施の形態に係るミスト吐出ヘッドの断面図
【符号の説明】
【0125】
10…ノズルプレート、11…ノズル(吐出口)、12…液室、13…液体供給口、14…側面板、15…振動板、16…背面電極層、17…分離層、18…超音波発生素子、18a…圧電体、18b…超音波発生素子の上部電極、18c…超音波発生素子の下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、
前記ノズルに連通する液室と、
超音波を発生し前記ノズル近傍の液体に前記超音波を与える超音波発生素子と、
前記液室の壁面のうちノズルプレート以外の壁面に設けられ、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための電極と、
を有することを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項2】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、
前記ノズルに連通する液室と、
超音波を発生し前記ノズル近傍の液体に前記超音波を与える超音波発生素子を有し、
前記液室の壁面のうち液体を介してノズルプレートとは反対側の壁面に設けられ、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための電極と、
を有することを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項3】
液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成された導電性を有するノズルプレートと、
前記ノズルに連通する液室と、
前記液室のノズルプレートと接する側壁に配置され、超音波を発生し前記液室内の液体に前記超音波を与える超音波発生素子と、
前記液室の中央方向に向かう前記超音波発生素子からの超音波を反射して前記ノズルの近傍に位置する焦点に集束させる反射面を有し、前記ノズルプレートに対する電界を印加するための導電性を有するリフレクタと、
を有することを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項4】
前記リフレクタの前記反射面の断面形状は、前記焦点を共焦点とする2本の放物線からなることを特徴とする請求項3に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項5】
前記液室は、前記焦点を通る軸線を有する円筒形状であり、
前記リフレクタは、前記液室の軸線と直交する中心軸を有する放物線を前記液室の軸線を中心に回転させることにより形成される凸形状の前記反射面を有するものであることを特徴とする請求項3または4に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズルプレートと前記電極との間、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電界が交流電界であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項7】
前記交流電界の周波数が、前記超音波発生素子を駆動する周波数の1/2であることを特徴とする請求項6に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凸形状となるとき、
前記ノズルプレートと前記電極、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電荷が反対の極性を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ノズルにおける液体のメニスカス面が、前記ノズルプレートの液体吐出方向の面よりも凹形状となるとき、
前記ノズルプレートと前記電極、或いは、前記ノズルプレートと前記リフレクタとの間に印加される電荷が同じ極性を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−245512(P2007−245512A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71551(P2006−71551)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】