説明

ミスト発生機能付き浴室暖房装置および浴室システム

【課題】ミストノズルから噴出されるミストが浴室暖房装置の吸気口に吸い込まれて多くの水滴となる現象を簡易な構成により適切に防止または抑制することが可能な浴室システムを提供する。
【解決手段】浴室9の上部に設置され、かつ下向き開口状の吸気口10から浴室9の空気を吸入して加熱した後に温風吹き出し口11から浴室9に戻す浴室暖房装置Bと、この浴室暖房装置Bに設けられ、かつ斜め下方にミストを噴出するミストノズル5と、を備えている、浴室システムAであって、吸気口10は、ミストノズル5を通過する鉛直線VLを挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配されて、前記ミストの進行領域の上方を避けるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を霧状に噴出させる機能を備えたミスト発生機能付き浴室暖房装置および浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室暖房装置とミスト発生装置とが組み合わされた浴室システムとして、特許文献1に記載されたものがある。この浴室システムは、浴室の天井部に浴室暖房装置が設けられているとともに、この浴室暖房装置の下方またはその近傍部分にミストノズルが設けられており、このミストノズルから噴出されたミストは、浴室暖房装置の吸気口および温風吹き出し口の下方を通過して浴室内の所望領域に進行するように構成されている。
【0003】
前記した浴室システムによれば、浴室暖房装置を利用して浴室内の暖房(浴室での洗濯物の乾燥も含む)が実行可能であることに加え、ミスト噴出によるサウナ効果、暖房効果、あるいはシャワー効果なども得られる。また、ミストノズルから浴室内の洗い場に向けてミストを噴出させている際に、浴室暖房装置の温風吹き出し口から温風を下向きに吹き出させれば、前記ミストが高い位置に飛散することが抑制され、洗い場にいる入浴者の顔や頭にミストがかからないようにすることもできる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき点があった。
【0005】
すなわち、前記従来技術において、ミストノズルから噴出されるミストは、浴室暖房装置の吸気口の下方を通過するようになっている。このため、ミストが前記吸気口に吸い込まれて、その周辺部に多くの水滴が発生して付着する現象を生じ易くなっていた。このような現象を生じたのでは、その後に前記水滴が滴下することとなって、これが入浴者に当たり、入浴者に不快感を与える虞れがある。
【0006】
なお、従来においては、前記従来技術とは相違するものとして、特許文献2に記載されたミスト発生機能付き浴室暖房装置もある。この装置は、たとえば壁掛け型の浴室暖房装置の下方にミスト発生装置が設けられた構成を有しており、ミストノズルから噴出されたミストは、吸気口の下方を通過する前に温風吹き出し口の下方を通過するようになっている。このため、温風吹き出し口から吹き出される温風によって、ミストは下向きに進行することとなって、吸気口へのミストの進入が抑制される。しかしながら、このような構成においても、ミストは吸気口の下方領域を通過するために、このミストの一部が吸気口に吸い込まれてこの吸気口周辺部に水滴を生じさせる虞れがある。したがって、そのような虞れがより徹底して防止されることが望まれる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−336327号公報
【特許文献2】特開2005−282945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、ミストノズルから噴出されるミストが浴室暖房装置の吸気口に吸い込まれて多くの水滴となる現象を簡易な構成によって、適切に防止または抑制することが可能なミスト発生機能付き浴室暖房装置、および浴室システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供される浴室システムは、浴室の上部に設置され、かつ下向き開口状の吸気口から前記浴室の空気を吸入して加熱した後に温風吹き出し口から前記浴室に戻す浴室暖房装置と、この浴室暖房装置に設けられ、かつ斜め下方にミストを噴出するミストノズルと、を備えている、浴室システムであって、前記吸気口は、前記ミストノズルを通過する鉛直線を挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配されて、前記ミストの進行領域の上方を避けるように設けられていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、ミストノズルから斜め下方に噴出されたミストが浴室暖房装置の吸気口の下方を通過しないこととなり、前記ミストが吸気口に吸引されてその周辺部などに多くの水滴を生じることが無くなる。その結果、吸気口から多くの水滴が滴下して入浴者に不快感を与えるといった不具合が適切に抑制される。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記浴室暖房装置は、前記浴室の浴槽の上方に設置されており、前記ミストノズルは、前記浴室の洗い場に向けてミストを噴出するように設定されているとともに、前記吸気口よりも前記洗い場寄りに位置している。
【0013】
このような構成によれば、吸気口にミストが吸入されることを回避しつつ、浴室の洗い場に向けてミストを適切に噴出し、洗い場におけるミストサウナ効果、シャワー効果、あるいは暖房効果を適切に得ることができる。また、浴室の浴槽近辺には湯水用の配管が施工されているため、この浴槽の上方に浴室暖房装置を設置すれば、ミストノズルに湯水を供給するための配管施工も容易となる。
【0014】
本発明の第2の側面により提供されるミスト発生機能付き浴室暖房装置は、吸気口および温風吹き出し口が形成され、かつ少なくとも前記吸気口が下向きに開口するようにして浴室の上部に取り付けられる通気用のパネル部材と、前記吸気口から吸入された空気を加熱する加熱手段と、この加熱手段により加熱された空気を前記温風吹き出し口から吹き出させる送風機と、前記パネル部材またはその周辺部に取り付けられ、かつミストを斜め下方に向けて噴出可能なミストノズルと、を備えている、ミスト発生機能付き浴室暖房装置であって、前記吸気口は、前記ミストノズルを通過する鉛直線を挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配されて、前記ミストの進行領域の上方を避けるように設けられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される浴室システムについて述べたのと同様に、ミストノズルから噴出されたミストが吸気口の下方を通過することがないために、前記ミストが吸気口に吸引されてその周辺部に多くの水滴を生じないようにする効果が得られる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記温風吹き出し口は、前記吸気口と水平方向に間隔を隔てて並んだ下向き開口状に設けられているとともに、この温風吹き出し口から浴室に吹き出される空気の向きを変更可能なルーバを備えており、前記ミストノズルは、前記温風吹き出し口と前記吸気口との間に設けられて、前記温風吹き出し口の下方をミストが通過するように構成されている。
【0017】
このような構成においては、ミストノズルからミストを噴出させている際に、温風吹き出し口から浴室に空気を吹き出すことにより、前記ミストの進行方向を制御することが可能となる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記加熱手段および前記送風機を内部に収容しており、かつ前記パネル部材の上方に位置するようにして浴室の天井部に取り付けられるケーシングと、前記ミストノズルに湯水を供給するための配管と、この配管に設けられ、かつ前記ミストノズルに対する湯水の供給のオン・オフを制御するためのミスト用制御弁と、を備えており、前記加熱手段は、前記吸気口の上方に位置して、前記パネル部材との間に第1の空間部を形成するとともに、前記ケーシングの側壁部との間には第2の空間部を形成しており、前記ミスト用制御弁は、前記第2の空間部に配されているとともに、前記配管のうち、前記ミストノズルと前記ミスト用制御弁とを接続する部分は、前記第1の空間部に配されている。
【0019】
このような構成によれば、ミスト用制御弁を利用してミストノズルからのミスト噴出のオン・オフ切替えを適切に行なうことができることは勿論のこと、このミスト用制御弁については、ケーシングの側壁部と加熱手段との間に形成された第2の空間部を利用して前記ケーシング内にスペース効率良く収容させることができる。ミスト用制御弁をミストノズルに接近させることもできるために、ミスト噴出のオン・オフの応答性もよい。また、前記配管のうち、ミスト用制御弁とミストノズルとを接続する部分についても、加熱手段の下方の第1の空間部を利用してスペース効率良く配されており、装置全体の大型化を抑制するのに好適となる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記加熱手段によって加熱された空気を前記送風機から前記温風吹き出し口に導く送風路を形成する送風路形成部材を備えており、この送風路形成部材は、前記パネル部材に下端部が当接し、かつ前記送風機と前記パネル部材との間隔に応じて昇降可能な可動部材を含んでおり、前記ミストノズルは、前記可動部材または前記可動部材に伴って昇降する部材に取り付けられている。
【0021】
このような構成によれば、浴室暖房装置が取り付けられる浴室の天井部の厚みが変更されるなどの理由により、送風機とパネル部材との間隔が変更される場合であっても、送風路形成部材の可動部材を昇降させてその下端部をパネル部材に対して隙間の生じないように当接させることが可能となり、送風機から温風吹き出し口に加熱空気を導くための送風路が適切に形成される。そして、ミストノズルは、このような可動部材を利用してその取り付けが図られているために、パネル部材に対するミストノズルの相対的な高さを一定にすることができる。また、たとえばパネル部材にミストノズル用のブラケットを設けるような必要もなくなるため、その見栄えなども良好にすることができる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1〜図4は、本発明が適用されたミスト発生機能付き浴室暖房装置および浴室システムの一例を示している。図1によく表われているように、本実施形態の浴室システムAは、浴室9内に浴槽90および洗い場91が設けられたたとえばユニットバスシステムであり、この浴室9の天井部92のうち、浴槽90の上方には、ミスト発生機能付き浴室暖房装置B(以下、「浴室暖房装置B」と略する)が取り付けられている。
【0025】
図2によく表われているように、浴室暖房装置Bは、通気用のパネル1、加熱手段の一例に相当する熱交換器2、送風機3、ケーシング4、および一対のミストノズル5を具備している。
【0026】
通気用のパネル1は、樹脂製であり、複数に区分された吸気口10を形成する吸気グリル部10A、および温風吹き出し口11を有している。吸気口10は、図3に表われているように、たとえば細長矩形状の複数の吸気口の集合部として形成されている。温風吹き出し口11は、吸気口10に対して間隔を隔てて並んだたとえば矩形状である。図2に示すように、この通気用のパネル1は、外周縁の上端が浴室9の天井部92の下面に当接するようにして取り付けられ、天井部92に形成された開口部92aを塞いでいる。
【0027】
ケーシング4は、たとえばパネル1と同様な材質の樹脂製であり、底部が開口したボックス状である。このケーシング4は、熱交換器2や送風機3などを内部に収容して支持するためのものであり、その底部開口部が天井部92の開口部92aと連通し、または一致するようにして天井部92に固定して取り付けられている。図面においては、ケーシング4の下端外周縁に形成されたフランジ40が天井部92上に載置されているが、ケーシング4の取り付け方式はこれに限らない。たとえば、ケーシング4を天井部92の開口部92に対して下方から進入させる後付け方式の場合には、フランジ40を天井部92の下面に当接させるようにして取り付けられる。
【0028】
ケーシング4の側壁部41aには、換気扇ユニット8を接続するための開口部42が形成されている。換気扇ユニット8は、浴室9に換気扇が別途設けられていない場合など、必要に応じてケーシング4に取り付けられる。この換気扇ユニット8は、モータMにより駆動される換気扇としての送風機80、この送風機80を収容して支持するケーシング81、および送風機80の排気側に接続された排気用ダクト82を有している。送風機80を駆動させると、浴室9内の空気が吸気口10からケーシング4,81内に進入し、排気用ダクト82から屋外に排気される。換気扇ユニット8をケーシング4に取り付けない場合は、開口部42を適当な蓋材により閉塞させておく。
【0029】
熱交換器2は、加熱された湯水が供給されて内部を流通するフィン付パイプを用いて構成されており、吸気口10の上方に位置している。この熱交換器2は、互いに配管接続された上下2つのブロック20a,20bに区分されていることにより、送風機3の比較的大きな開口面積の吸入口30の全域をスペース効率良くカバーするように設けられている。送風機3の吸入口30は、上下のカバー体31,32により形成されている。送風機3は、モータ駆動自在であり、この送風機3が駆動すると、浴室9内の空気が吸気口10の上方に吸引された後に熱交換器2の複数のフィン間およびパイプ間を通過して加熱され、その後送風路33を経由して温風吹き出し口11から浴室9に吹き出されるようになっている。
【0030】
送風路33は、送風機3の下側のカバー体32の筒状部32aと、この筒状部32aの下部に対してスライド昇降可能に嵌合された可動部材34とを用いて形成されている。たとえば天井部92の厚みtが変更された場合には、ケーシング4とパネル1との間隔も変更される。すると、送風機3から温風吹き出し口11までの送風路33の実質長さが変化する。可動部材34はそのようなことに対処するためのものであり、ケーシング4とパネル1との間隔が多少変更された場合であっても、この可動部材34を昇降させてその下端部をパネル1の上面に当接させることによって、それらの部分に送風漏れの原因となる隙間を生じないようにすることが可能である。ただし、浴室暖房装置Bの設置状態においては、好ましくはこの可動部材34が不用意にがたつきを生じないように、たとえばパネル1の下方側からボルトなどのネジ体(図示略)を挿通してパネル1との固定が図られている。
【0031】
可動部材34の内部には、温風吹き出し方向を変更可能とするルーバ36が設けられている。このルーバ36は、図示されていないモータの駆動により、軸36aを中心として回転し、その角度が変更自在である。図4によく表われているように、可動部材34の両側面部には、溝部340を有するガイド34aが設けられている。これに対し、カバー体32には、溝部340に嵌入してガイド34aの上端部に係合可能なフック状の係合部35aを有するガイド35が設けられている。このような構成によれば、係合部35aをガイド34aの上端部に係合させることによって、可動部材34がそれよりも低い高さに下降することが阻止される。したがって、この浴室暖房装置Bを設置する前の取り扱い時などにおいて、可動部材34がカバー体32から不用意に抜け外れることが適切に防止される。
【0032】
一対のミストノズル5は、供給される湯水を霧状に噴霧する機能を備えたものであり、可動部材34の下端部に形成されたフランジ34bに取り付けられている。各ミストノズル5の給湯口となる配管接続口59が設けられた上部は、フランジ34bの上面側に位置している。これに対し、各ミストノズル5の下端先端部は、図2に示すように、フランジ34bの下面よりも下方に突出し、かつパネル1に設けられた貫通孔12に進入していることにより、パネル1の下方へのミストの噴出が可能に設けられている。ただし、各ミストノズル5は、吸気口10と温風吹き出し口11との間に位置している。ミストの噴出方向は、ミストノズル5を通過する鉛直線VLよりも温風吹き出し口11寄りに偏った斜め下方となっている。図1に示すように、この浴室暖房装置Bは、浴室9の洗い場91に向けてミストを噴出するように設定されている。温風吹き出し口11は、各ミストノズル5よりも洗い場91寄りに位置している。吸気口10は、各ミストノズル5よりも洗い場91とは反対側に位置している。
【0033】
図2および図4に示すように、一対のミストノズル5には、配管51a、一対のミスト用制御弁50、および一対の配管51bを介して湯水が供給されるように構成されている。また、配管51aには、排水用(パージ用)の配管51cも接続されている。より具体的には、熱交換器2とケーシング4の側壁部41bとの間には、空間部49が形成されており、この空間部49にミスト用制御弁50、および配管51a,51cが設けられている。空間部49は、本発明でいう第2の空間部の一例に相当する。ミスト用制御弁50は、たとえば電磁式の開閉弁であり、配管51a〜51cは、たとえば銅管などの金属製管体である。図面には表われていないが、配管51a,51cは、上端部がケーシング4の上部に固定されて吊り下げられた状態にあり、各ミスト用制御弁50はこれらの配管51a,51cに接続されていることにより支持されている。配管51aの上部には、後述する熱交換器60から湯水が供給され、この湯水が各ミスト用制御弁50および配管51bを経て各ミストノズル5に到達し、噴霧されるようになっている。配管51cを利用した排水については後述する。
【0034】
熱交換器2とパネル1との間には、空間部48が形成されており、配管51bは、この空間部48に配されて、ミスト用制御弁50とミストノズル5とを接続している。空間部48は、本発明でいう第1の空間部の一例に相当する。配管51bの両端部は、ミスト用制御弁50およびミストノズル5に対して回転継手52a,52bを介して連結されている。このことにより、回転継手52aを中心として配管51bを揺動させながら、ミストノズル5および可動部材34を昇降させることが可能である。可動部材34の昇降動作は直線的であるのに対し、ミストノズル5の昇降動作は基本的には回転継手52aを中心とする円弧動であり、本来的には両者の動作は一致しない。ただし、可動部材34を昇降させようとした場合、配管51bがミスト用制御弁50を水平方向に押圧し、または引っ張る力が発生して配管51a,51cに撓みを生じ、ミスト用制御弁50および回転継手52aの位置が変位する。この変位が配管51bの揺動動作の遊びとなり、可動部材34はミストノズル5とともに円滑に昇降する。
【0035】
ケーシング4の上部には、補助ケーシング47が設けられており、この部分には熱交換器2およびミストノズル5に対して湯水を供給するための配管ユニット部6が設けられている。この配管ユニット部6は、たとえばプレート式の熱交換器60、入水口61a、排水口61b、浴室外部に設けられた給湯器などの熱源機(図示略)に配管接続される湯水用の供給口62a、および排出口62bを備えている。前記熱源機から供給口62aに送られてきた湯水は、配管63aを介して熱交換器2に送られた後に配管63bを介して排出口62bに到達し、前記熱源機に戻される。また、供給口62aに送られてきた湯水は、熱交換器60にも送られ、この熱交換器60用の熱媒体としても利用されるようになっている。入水口61aにはたとえば非加熱の水道水が供給され、この水は配管63cを介して熱交換器60に送られて加熱されてから、配管63dを介して配管51aに供給されてミストノズル5に導かれる。排水口61bに繋った配管63eは、配管51cに接続されており、配管63eに設けられている開閉弁を開状態とすることにより、熱交換器60および配管63d,51a内の水を配管51c,63eを介して外部にパージ処理することが可能である。
【0036】
図4に示すように、可動部材34のフランジ34bには、回路基板7が一対のミストノズル5間に位置するようにして取り付けられる。回路基板7の下面部には、この浴室暖房装置Bの運転を制御するために別途準備されているワイヤレスリモコン(図示略)からの送出信号を受信するための受信部71や、この浴室暖房装置Bの運転状況を示すための複数の表示ランプ72が搭載されている。可動部材34のフランジ34bには、それら受信部71や複数の表示ランプ72の下面側が遮蔽されないように、それらを一括して下方に露出させるための貫通孔34cが形成されている。図3に示すように、パネル1には、受信部71および複数の表示ランプ72を個々に下向きに露出させるための複数の貫通孔13a,13bが設けられている。好ましくは、回路基板7には、前記した部品に加えて、ICチップやその他の電子部品が搭載され、これらによって制御部70が構成されている。この制御部70は、たとえば送風機3の回転数制御、ミスト用制御弁50やその他の弁の開閉制御など、前記ワイヤレスリモコンからの指令信号に基づいて浴室暖房装置Bの各部の動作制御や信号処理を実行するものである。ただし、このような制御部70を回路基板7とは別の基板を利用して構成し、可動部材34以外の箇所に取り付けた構成とすることもできる。
【0037】
次に、前記した浴室暖房装置Bおよび浴室システムAの作用について説明する。
【0038】
まず、一対のミスト用制御弁50を開状態にすると、一対のミストノズル5に湯水が供給され、これらから浴室9の洗い場91に向けて斜め下方にミストが噴出する。これにより、ミストサウナ効果などが得られる。吸気口10は、各ミストノズル5に対して洗い場91側とは反対側に位置しており、ミストはこの吸気口10の下方を進行しない。したがって、ミストが吸気口10に吸入される虞れは少ない。その結果、吸気グリル部10Aに多くの水滴が付着してこの水滴がその後浴槽90内の入浴者上に滴下する不具合は適切に抑制される。また、ミストは温風吹き出し口11の下方を通過するために、温風吹き出し口11から温風を吹き出させ、かつその向きをルーバ36を利用して調整すれば、前記ミストの進行方向を温風送風により調整し、たとえば入浴者の顔面や頭にミストが直接当たらないようにすることもできる。一対のミスト用制御弁50は、個別に開閉制御可能である。このため、ミストの噴出モードとして、一対のミストノズル5の双方からミストを噴出させる多量ミストモードと、いずれか一方のみからミストを噴出させる少量ミストモードとを切り替え設定することもできる。
【0039】
一対のミストノズル5を吸気口10と温風吹き出し口11との間に配置させるための手段として、それら一対のミストノズル5は可動部材34のフランジ34bに取り付けられている。したがって、たとえば通気用のパネル1の下面部にミストノズル5用のブラケット部を設けるといった手間は不要となる。また、ミストノズル5に加えて、回路基板7も可動部材34のフランジ34bに取り付けているため、回路基板7用のブラケット部を別途設ける必要もなく、構成の簡素化が促進される。さらに、回路基板7は、一対のミストノズル5どうしの間に配置されているために、一対のミストノズル5の間隔を適度に大きくしつつ、それらの間の領域が回路基板7の取り付けに有効に利用されており、これらの部分の大型化を抑制することができる。
【0040】
通気用のパネル1には、複数の貫通孔12,13,13aが設けられていることによって、ミストノズル5、受信部71、および複数の表示ランプ72のそれぞれが露出しているが、このような構成によれば、パネル1の構造が簡素となって製作が容易となり、見栄えも良好となる。さらに、そのような構成のパネル1は、ミスト発生機能を具備しないタイプの浴室暖房装置用のパネルとしても利用し得ることとなる。すなわち、たとえばパネル1の下面部に貫通孔12(必要に応じて貫通孔13a,13bも)を覆い隠すラベルやその他の目隠し部材を貼付すれば、そのような貫通孔を有しない通気用のパネル部として好適に利用することが可能であり、1種類のパネルをミスト発生機能付きのものとそうでないものとの双方に兼用できる利点も得られる。
【0041】
ミスト用制御弁50および配管51a〜51cは、空間部48,49を利用してスペース効率良く設けられている。このため、ケーシング4、ひいては浴室暖房装置Bの全体の大型化を抑制するのに好適となる。また、配管51bの両端部には、既述したとおり、回転継手52a,52bが設けられ、回転継手52aを中心として配管51bが上下方向に揺動することによって可動部材34の昇降が許容される構成とされているために、配管51bを銅管などの金属製管体とすることが可能であり、耐圧強度に優れたものとすることができる。可動部材34の昇降動作を許容するための他の手段としては、たとえば配管51bをフレキシブルチューブとすることが考えられる。ただし、このような手段によれば、耐圧性を高める上で苦慮することとなる。これに対し、本実施形態によれば、そのような不具合を無くすことができる。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係るミスト発生機能付き浴室暖房装置、および浴室システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0043】
たとえば、加熱手段としては、湯水を利用した熱交換器に代えて、電気式の発熱ヒータなどの他の手段を用いることができる。送風機の具体的な種類も問わない。通気用のパネルの温風吹き出し口は、必ずしも吸気口と同様に下向き開口状でなくてもよく、たとえば通気用のパネルを上下方向の厚みが比較的大きな箱型状として、その側面部に温風吹き出し口が略水平方向を向くように形成された構成としてもかまわない。本発明に係るミスト発生機能付き浴室暖房装置は、天井設置型として構成するのに好適であるが、これとは別のたとえば壁掛け型のものとして構成することもできる。
【0044】
ミストノズルは、少なくとも1つあればよく、その具体的な数も問わない。また、ミストノズルは、固定式でなくてもよく、たとえばミストの噴出方向を変更できるように向きの調整が可能な方式、あるいはモータなどを駆動源として所定の角度範囲で首振り揺動する方式にすることもできる。このような方式が採用される場合であっても、吸気口がミストノズルを通過する鉛直軸を挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配置されて、ミストが吸気口の直下を進行しない構成とされていれば、本発明の技術的範囲に包摂される。
【0045】
本発明に係る浴室システムは、ユニットバスシステムに限らない。また、浴室暖房装置は、あえて浴槽の上方から外れた位置に取り付けることも可能であり、同様に、ミストが噴射される領域を洗い場以外の箇所に設定した構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用された浴室システムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明が適用されたミスト発生機能付き浴室暖房装置の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示すミスト発生機能付き浴室暖房装置を下方から見た分解斜視図である。
【図4】図2に示すミスト発生機能付き浴室暖房装置の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
A 浴室システム
B ミスト発生機能付き浴室暖房装置
VL 鉛直線
1 通気用のパネル(パネル部材)
2 熱交換器(加熱手段)
3 送風機
4 ケーシング
5 ミストノズル
9 浴室
10 吸気口
11 温風吹き出し口
36 ルーバ
48,49 空間部
50 ミスト用制御弁
51a〜51c 配管
90 浴槽
91 洗い場
92 天井部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の上部に設置され、かつ下向き開口状の吸気口から前記浴室の空気を吸入して加熱した後に温風吹き出し口から前記浴室に戻す浴室暖房装置と、
この浴室暖房装置に設けられ、かつ斜め下方にミストを噴出するミストノズルと、
を備えている、浴室システムであって、
前記吸気口は、前記ミストノズルを通過する鉛直線を挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配されて、前記ミストの進行領域の上方を避けるように設けられていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項2】
前記浴室暖房装置は、前記浴室の浴槽の上方に設置されており、
前記ミストノズルは、前記浴室の洗い場に向けてミストを噴出するように設定されているとともに、前記吸気口よりも前記洗い場寄りに位置している、請求項1に記載の浴室システム。
【請求項3】
吸気口および温風吹き出し口が形成され、かつ少なくとも前記吸気口が下向きに開口するようにして浴室の上部に取り付けられる通気用のパネル部材と、
前記吸気口から吸入された空気を加熱する加熱手段と、
この加熱手段により加熱された空気を前記温風吹き出し口から吹き出させる送風機と、
前記パネル部材またはその周辺部に取り付けられ、かつミストを斜め下方に向けて噴出可能なミストノズルと、
を備えている、ミスト発生機能付き浴室暖房装置であって、
前記吸気口は、前記ミストノズルを通過する鉛直線を挟んでミスト噴出方向とは反対側の領域に配されて、前記ミストの進行領域の上方を避けるように設けられていることを特徴とする、ミスト発生機能付き浴室暖房装置。
【請求項4】
前記温風吹き出し口は、前記吸気口と水平方向に間隔を隔てて並んだ下向き開口状に設けられているとともに、この温風吹き出し口から浴室に吹き出される空気の向きを変更可能なルーバを備えており、
前記ミストノズルは、前記温風吹き出し口と前記吸気口との間に設けられて、前記温風吹き出し口の下方をミストが通過するように構成されている、請求項3に記載のミスト発生機能付き浴室暖房装置。
【請求項5】
前記加熱手段および前記送風機を内部に収容しており、かつ前記パネル部材の上方に位置するようにして浴室の天井部に取り付けられるケーシングと、
前記ミストノズルに湯水を供給するための配管と、
この配管に設けられ、かつ前記ミストノズルに対する湯水の供給のオン・オフを制御するためのミスト用制御弁と、を備えており、
前記加熱手段は、前記吸気口の上方に位置して、前記パネル部材との間に第1の空間部を形成するとともに、前記ケーシングの側壁部との間には第2の空間部を形成しており、
前記ミスト用制御弁は、前記第2の空間部に配されているとともに、前記配管のうち、前記ミストノズルと前記ミスト用制御弁とを接続する部分は、前記第1の空間部に配されている、請求項4に記載のミスト発生機能付き浴室暖房装置。
【請求項6】
前記加熱手段によって加熱された空気を前記送風機から前記温風吹き出し口に導く送風路を形成する送風路形成部材を備えており、
この送風路形成部材は、前記パネル部材に下端部が当接し、かつ前記送風機と前記パネル部材との間隔に応じて昇降可能な可動部材を含んでおり、
前記ミストノズルは、前記可動部材または前記可動部材に伴って昇降する部材に取り付けられている、請求項3ないし5のいずれかに記載のミスト発生機能付き浴室暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192425(P2007−192425A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8531(P2006−8531)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】