説明

ミゾラスチンを含有する徐放性医薬製剤

【課題】バイオアベイラビリティーを減少させることなくより低い血漿中ピークをもたらすようなミゾラスチンの放出プロファイルを有する、経口投与用製剤の提供。
【解決手段】脂質マトリックスおよび有機酸と組み合わせてミゾラスチンを含有する徐放性錠剤から形成されたコアを含有し、錠剤がコーティングされていることを特徴とする、ミゾラスチンを含有する徐放性医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−[[1−[1−[(4−フルオロフェニル)メチル]−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]ピペリジン−4−イル]メチルアミノ]−ピリミジン−4−オールまたは2−[[1−[1−[(4−フルオロフェニル)メチル]−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]ピペリジン−4−イル]メチルアミノ−ピリミジン−4(1H)−オン、すなわちミゾラスチンを活性成分として含有する徐放性医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミゾラスチンは欧州特許第0,217,700(特許文献1)に記載されている。
【0003】
ミゾラスチンはH1ヒスタミンレセプターに結合し、マスト細胞の脱顆粒をイン・ビボおよびイン・ビトロで阻害する。したがって、呼吸の、皮膚の、または眼のアレルギーや様々なアレルギー性症状発現の処置に使用することができる。ミゾラスチンを含有する即放性(immediate-release)製剤の経口投与中に、高い血漿中ピークの存在と関連している望ましくない鎮静作用が観察されている。
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0,217,700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、バイオアベイラビリティーを減少させることなくより低い血漿中ピークをもたらすような活性成分の放出プロファイルを有する、経口投与用製剤を見出すことが必要である。
【0006】
出願人は、そのような製剤の研究の基礎をミゾラスチンの溶解動力学の研究においた。その理由は、ミゾラスチンが弱い塩基(pK 5.6)であり、水にはわずかしか溶けない(中性pHで13mg/L)が酸性pHではより多く溶け(pH3で11g/L)、最初のゼラチンカプセルは、pH2の溶解媒体中に30分間でミゾラスチンを100%放出したのに対し、pH6.8では40%しか溶解しなかったからである。
【0007】
さらに、本発明の徐放性医薬形態からのミゾラスチンの放出は、消化管でのpHの違いによって影響される必要がなかった。
【0008】
本発明の目的は、その溶解プロファイルが以下の通りである、ミゾラスチンを含有する製剤を提供することである:
・1時間でミゾラスチンを約30〜70%溶解
・3〜5時間でミゾラスチンを100%溶解
・pH非依存性のプロファイル。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人は、脂質マトリックスおよび有機酸と組み合わせてミゾラスチンを含有する徐放性錠剤から形成されたコアを含有し、光による製品の劣化を防ぐためにコーティングされている錠剤は、非常に適当であるということを証明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の錠剤は、1mg〜25mgのミゾラスチンを含有する。この用量は、ミゾラスチン0.5〜12重量%に相当するものである。
【0011】
脂質マトリックスは、水素添加したヒマシ油または水素添加したレシチン、または長鎖脂肪酸、例えばベヘン酸のようなC12−C28長鎖脂肪酸、または中程度の長さの脂肪酸、例えばC8−C18脂肪酸でエステル化されたトリグリセリドでできている。
【0012】
好ましく2以上のpKを有する有機酸は、ラセミ体または異性体の形態の、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、アジピン酸、およびコハク酸から選択される。本発明によれば、特に好ましい酸はL−酒石酸である。 ミゾラスチンと有機酸の重量比は0.3〜1の間である。L−酒石酸については等量〜0.5の間が好ましい。
【0013】
活性成分、脂質マトリックスを構成する試薬、有機酸および他の添加剤例えばラクトース、マンニトール、および糖または類似の糖アルコール、微晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウム、ポリビドン、および例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはメチルセルロースのような置換セルロースなどを用いて、造粒により錠剤を製造する。
【0014】
造粒は、湿った相中で、例えば水またはアルコールの存在下で行ってよいし、または融解(fusion)もしくは圧縮(compacting)によって行ってもよい。造粒工程を場合により省略してミゾラスチンと添加剤の混合物を直接錠剤成形(tableting)することにより錠剤を製造してもよい。
【0015】
得られた顆粒に無水コロイダルシリカとステアリン酸マグネシウムを加え、この混合物を錠剤に成形する。次いで、流動空気層を有する装置またはコーティングタービンで錠剤にコーティング溶液をスプレーすることにより、錠剤をコーティングフィルムで被覆する。

【実施例1】
【0016】
以下の実施例によって、本発明を限定することなく本発明が説明される。
錠 剤
%(重量)
ミゾラスチン 4.8
水素添加ヒマシ油 12.0
ラクトース 60.0
微晶性セルロース 9.6
L−酒石酸 9.6
ポリビドン 2.9
無水コロイダルシリカ 0.2
ステアリン酸マグネシウム 0.9
精製水 適量
合計 100.0
コーティング
メチルヒドロキシプロピルセルロース 74.0
二酸化チタン(E171) 18.5
プロピレングリコール 7.5
精製水 適量
合計 100.0
【0017】
本発明の製剤によって得られる溶解プロファイルを図1に示す。このプロファイルでは、1時間に約50%の製品が溶解し、3〜5時間で100%の製品が溶解し、pHには依存しない。
【0018】
本発明の製剤と同じであるがL−酒石酸を含有しない製剤によって得られる溶解プロファイルを図2に示す。
【0019】
10mgのミゾラスチンを含有する本発明の医薬形態の血漿動力学を、単独経口投与を行った健康なボランティアについて、ミゾラスチン10mgを含有する標準的な即放性ゼラチンカプセルとの比較において試験した。表1に各製剤によってそれぞれ得られた動力学パラメーターを示す。
【表1】

図3は各製剤によってそれぞれ得られた血漿動力学の曲線である。本発明の医薬形態によって得られる血漿動力学は、バイオアベイラビリティーを損なうことなしに血漿中ピークを防止することを可能にするものである。
【0020】
さらに、本発明の医薬形態の血漿動力学を、L−酒石酸を含有しない同じ製剤との比較において調べた。
この試験は、ミゾラスチン10mgを含有する本発明の錠剤またはL−酒石酸を含有しない同じ錠剤を単独経口投与した12人の健康なボランティアについて行った。
表2は、L−酒石酸を含有しない製剤のバイオアベイラビリティーが、L−酒石酸を含有する本発明の製剤について観察されたバイオアベイラビリティーの43%しかないことを示している。
【表2】

Cmaxの値およびAUC値(0→∞)は、L−酒石酸を含有する製剤はL−酒石酸を含有しない製剤に比べ、それぞれ1.5倍および2倍高い。
さらに、L−酒石酸を含有する製剤については最小−最大の変化の指数がずっと低く、放出の均一性が非常に高いことが示唆される。
【0021】
結果は、全体として、本発明の製剤は
・pH非依存性の溶解プロファイルを有し、
・血漿中のピークを防止するイン・ビボ放出をもたらし、
・即放性製剤と比べて低下しないバイオアベイラビリティーを有し、
・血漿動力学結果の変動が少ない
ということを示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製剤によって得られる溶解プロファイルを示す。
【図2】L−酒石酸を含有しない製剤によって得られる溶解プロファイルを示す。
【図3】カプセル製剤と本発明の製剤によってそれぞれ得られた血漿動力学の曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質マトリックスおよび有機酸と組み合わせてミゾラスチンを含有する徐放性錠剤から形成されたコアを含有し、錠剤がコーティングされていることを特徴とする、ミゾラスチンを含有する徐放性医薬製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−182451(P2007−182451A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54262(P2007−54262)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【分割の表示】特願平9−531506の分割
【原出願日】平成9年2月28日(1997.2.28)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】