説明

ミラーマグネトロンプラズマ源

交流電源に接続され、かつ接地された基板の一部に近接して配置された、少なくとも1つの電極を備えた新規かつ有用なプラズマ源が提供される。電極は、該電極が交流電源によって負にバイアスされたときにマグネトロンプラズマを電極のところに発生させ、電極が交流電源によって正にバイアスされたときにミラープラズマを基板上に発生させる、センター磁石を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用途のための新規かつ有用なプラズマ源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願は、「ミラーマグネトロンプラズマ源」という名称の2006年3月17日に出願した米国仮出願第60/783680号に関連し、その優先権を主張するものであり、この仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【特許文献1】米国仮出願第60/783680号明細書
【特許文献2】米国特許第4673480号明細書
【特許文献3】米国特許第6911779号明細書
【特許文献4】米国特許第7023128号明細書
【特許文献5】米国特許出願第20060152162A1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
プラズマ源は、交流電源に接続されかつ接地された基板の一部に近接して配置された、少なくとも1つの電極を備える。電極は、該電極が交流電源によって負にバイアスされたときにマグネトロンプラズマを電極のところに発生させ、電極が交流電源によって正にバイアスされたときにミラープラズマを基板の上に発生させる、センター磁石を有する。
【0004】
好ましくは、接地された基板は、電極から100mm以内に配置され、さらにより好ましくは、電極から20〜50mm以内に配置される。
【0005】
基板上のミラープラズマは、基板についての高エネルギーで高密度のイオン衝撃を生成する。交番する電源の半サイクルにおけるマグネトロンプラズマは、基板に中性化電子(neutralizing electron)を供給する。基板上のミラープラズマは、急速なイオン洗浄および表面処理のために有用である。さらに、本発明をプラズマ促進化学蒸着およびスパッタ堆積プロセスに有益に適用することができる。
【0006】
本発明の原理の1つの特定の応用例において、電極およびセンター磁石は、電極が交流電源によって負にバイアスされたときにマグネトロンプラズマが電極の側面上に生成されるように配向される。さらに、電極は、該電極および電極に近接した基板の一部の周りのプラズマを維持するガスの容器を形成するように構成された容器構造体の中に配置される。さらに、プラズマ源は、真空チャンバの中に配置され、かつ、この真空チャンバ内に配置されミラープラズマに関連する電界を真空チャンバの環境から電気的に絶縁する容器構造体の中に配置される。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、以下の詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
最も基本的な態様において、本発明によるプラズマ源は、高周波電源に接続されかつ接地された基板の一部に近接して配置された、少なくとも1つの電極を備える。電極は、電極が交流電源によって負にバイアスされたときに電極のところにマグネトロンプラズマを発生させ、電極が交流電源によって正にバイアスされたときに基板上にミラープラズマを発生させる、センター磁石を有する。
【0009】
図1は、本発明の原理を使用した直線状のミラーマグネトロンプラズマ源の断面図である。図2にこの源の上面図を示す。源100は、図示しない真空チャンバの中に配置される。源100は、電源に接続されていない外箱の内側に支持される電極29で構成される。電源に接続されていない箱は、アルミニウムの側面7と、底部カバー12と、(図2に示された)端面33とで構成される。電極29は、水冷コア4と、磁石3と、シャント基台13と、シャント側面6と、ターゲット1と、ターゲット固定板14とを含む。コア4は、流路5と図示していない連結された水路とを介して水で冷却される。ターゲット1は、固定板14と固定具32(図2)とによってコア4に固定される。コア4はシャント基台13とシャント側面6の内側に固定される。コア4をシャント基台13に支え、シャント側面6をシャント基台13に支える固定具は図示していない。シャント基台13は、ブラケット8と絶縁ワッシャ9および10によって電源に接続されていない箱の内側に支持される。ネジ11がシャント基台13にネジこまれ、ワッシャ9および10によってブラケット8から電気的に絶縁されている。ブラケット8は図示しないネジにより側面7に固定されている。
【0010】
源100の中の磁石3は、ネオジウム・鉄・ボロンなどの希土類磁性材料で作られる。磁石3は、電子を、(磁力線18によって)マグネトロン捕捉領域16の中に、かつ(磁力線17によってはね返されたミラー領域である)磁気ミラー捕捉領域15の双方の中に閉じ込めるのに十分な強度の磁界を発生しなければならない。一般に、電子をこれらの捕捉領域に閉じ込めるために、これら領域内の磁力線は50ガウス超であるべきである。図1のミラーマグネトロンプラズマ源(MMPS)に尺度を与えると、磁石の寸法は高さ19mm、幅13mmである。図1は断面図である。後で説明するように、MMPSを、平面型マグネトロンのカソードに類似した3メートル超の長さまで延在させることができる。
【0011】
動作中、MMPSはマグネトロン電子捕捉とミラー電子捕捉の両方を持続する。マグネトロン捕捉領域16は、平面型マグネトロンとして当技術分野でよく知られている。また、回転可能マグネトロンおよびスパッタガンなどの他の構成も当技術分野でよく知られており、これらを使用して本発明を構築してもよい。マグネトロン捕捉領域16は、ターゲット表面1が十分に負にバイアスされているときに動作して、プラズマを始動し維持する。プラズマ中の電子は交差する磁力線18によって妨げられ、かつ、ターゲット表面1のところで負電荷によってはね返される。電子が電界に応答して移動するとき、これらの電子は磁界および電界に直角に、ホール電流方向に、向きを変更させられる。磁力線18がエンドレスな「走路」の状態に構成されている場合は、電子はターゲット1の近傍に効率的に閉じ込められて低電圧、低圧放電を持続する。
【0012】
また、磁気ミラー電子捕捉も当技術分野で知られている。Lamont Jr.は特許文献2の中でミラー捕捉をスパッタ源として実現した。Madocksは特許文献3および特許文献4および特許文献5の中で実現した。特に、特許文献4は本出願に関連性がある。本MMPS発明では、ミラー電子捕捉は基板2とターゲット1との間に生成される。磁石3はターゲット源1(領域19)の場所で強力な磁界を発生させ、この磁界は磁力線がターゲット1から発散するにつれて弱くなる。基板2の場所では、磁力線17はターゲット1の場所の磁力線よりも少なくとも2倍弱くなる。基板2が源100の上方、2センチメートル以上の距離に配置されるときには、勾配がつけられた磁界は容易に10対1(10:1)に達しうる。電子を磁気ミラー捕捉領域15に適切に閉じ込めるためには、磁力線17はその強度値が少なくとも50ガウスなくてはならない。この要件は、基板2とターゲット1との間の距離を制限する。また、磁力線17は、それらが反対磁極に戻るときに中心線25から外にふくらむ。基板2は、磁力線17が基板2の内部を通過するように源100に十分近接して配置されるべきである。これらの要件は、典型的には基板2がターゲット1から100mm以内に配置されるべきことを要求している。20〜50mmの距離が好適である。
【0013】
ターゲット1が十分な電圧で正にバイアスされているときには、磁気ミラー捕捉領域15内のミラー放電が始動され維持される。この状態では、接地された基板2は相対的に負になり、正に帯電されたターゲット「アノード」に対して「カソード」になる。先の従来技術の作用で説明したように、ミラー放電閉じ込めはマグネトロンよりも高い電圧で作動する。これは、磁気ミラーの電子閉じ込めが不完全であることと、アノードへのいくらかの高エネルギー電子の損失とによるものである。ターゲット1に到達しようとする放電内の電子は勾配のつけられた磁場によって妨げられる。
【0014】
電極29は交流電源24に接続されている。図1において源100は、金属シートなどの平坦で導電性の基板2に適用される。基板2は、電流が基板から電源に流れることができるように接地される。基板2は、基板2が均一に処理されるために源100に対して移動する。
【0015】
源100の動作は、十分なガス圧が存在し電源24がオンになったときに開始される。プロセスガスは、アルゴンなどの不活性ガス、酸素などの反応性ガス、メタンまたはガスの組合せなどの分子性ガスとすることができる。MMPSのための動作圧力範囲は、概ね、1ミリトール〜60ミリトールである。電源24は、放電を始動させるための十分な電圧と、プロセス/用途の要件のための十分な電流とを供給可能な交流電源である。電源24の周波数は、約60Hz〜13.56MHzまで及んでよい。電源周波数の考慮事項に関するさらなる議論は以降で引き続き行う。
【0016】
電源24の最初の負側に進むサイクルの間は、電極29はグランドに対してカソードになる。十分な電圧により、マグネトロン捕捉領域16内のマグネトロングロー放電がターゲット1の近傍で始動する。ターゲット1の上方のアーチ形の磁力線18の電子捕捉によって生成された、マグネトロン捕捉領域16内のこのマグネトロングロー放電は、当技術分野でよく知られている。この場合に、マグネトロン捕捉領域16内のマグネトロングロー放電の重要な性質は、電子の生成である。
【0017】
AC電源24の正サイクル時には、領域16内のマグネトロンプラズマは消滅し、電極29は正にバイアスされた状態になる。電極29の正バイアスが十分な状態になると、磁気ミラー捕捉領域15内のミラー放電が、接地された基板2と電極29との間で始動し、磁力線17の間に閉じ込められる。磁気ミラープラズマの閉じ込めは、上記に参照したように従来技術で知られている。これらの先の参考文献で説明されているように、磁気ミラープラズマは、強い磁力線と弱い磁力線との比率が2対1より大きいときに維持され、展開された弱い磁力線は電子を閉じ込めている表面の内部を通過する。源100の場合には、展開されたより弱い磁力線17は基板2の内部を通過する。電極29が正にバイアスされているときには、基板2は相対的に負になり、電子は基板2の表面ではね返される。磁気ミラー捕捉領域15内のミラープラズマが確立されると、暗部が基板2の場所に発生する。領域15内のミラー放電の他の態様は、ホール電流電子ドリフトの閉じ込めである。電子が基板2近傍の静電閉じ込めと領域19に向かうミラー閉じ込めとの間で振動すると、それら電子は、直交する電界と勾配のつけられた磁界とによって横方向へのドリフトを受ける。源100を基板2に並行に配置することによって、磁力線17は、ターゲット1の上方、基板2の上にエンドレスな長円を形成し、磁力線17にはね返されたミラー閉じ込め領域は、閉じたドリフト電子の走路を形成する。源100および基板2の場合には、当然ながら、この走路の形成は、直線状の源100の中央部の下に置かれた1列の磁石3によって遂行される(図2)。ターゲット1から出た磁界17は基板2の中を通過して、完全に閉じたホール電流走路ミラー放電をミラー磁気捕捉領域15の中に形成する。基板2は十分な大きさを有して磁力線17を全体の走路の周りに遮らなければならない。そうでない場合には、ミラー放電インピーダンスが著しく大きくなり、源100の動作は有害な影響を受ける。図2は、源100の上方の基板のより良い図である。
【0018】
始動の後で、ミラー磁気捕捉領域15内の導電性ミラープラズマは持続される。外見上、このプラズマは、基板2に近接した暗部20と共に領域15内のグロー放電として観察される。領域15内のミラーグロー期間(交流波形の正側)が持続している間は、基板は、領域15内のプラズマから暗部20を横切って発するイオンによる高密度なイオン衝撃を受ける。
【0019】
電源24のその後に続く負のサイクル時に、電極29は再びカソードとなり、マグネトロン捕捉領域16内のマグネトロンプラズマが始動する。この交流の負−正のサイクルは、動作中、マグネトロン放電とミラープラズマ放電とが交番しながら繰り返す。本発明の方法の利点が顕在化するのは、交番する放電のこの繰り返しサイクルの中においてである。正サイクル中は、ミラー磁気捕捉領域15中のミラー磁気グローから発するイオンが基板2を衝撃する。負サイクルでは、電子がマグネトロン捕捉領域16中のマグネトロングローから放出される。その結果、接地された基板2が、強力で中性化された、イオンおよびプラズマの衝撃を受ける。
【0020】
図2は図1の源の上面図である。この図で、固定板14は、ターゲット1を電極29に固定する固定具32と共にターゲット1の周りに示される。電源に接続されていない箱の側面7および端面33は電極29を取り囲んでいる。側面7は固定具34によって端面33に固定される。基板2は源100がその下方に見えるように透明なものとして示される。分かりやすくするために、ターゲット1の下方の磁石が示されている。磁石組立体は中央磁石3と端部磁石30によって構成される。端部磁石30は、端部のところで発出する付加的な保磁力を形成するために中央磁石3よりも大きい。これは、方向転換のための追加の領域を考え合わせると、走路端部の磁界を強く保つのに役立つ。源100は動作中の状態で図2に示される。磁力線17は、それらがターゲット1の下方の磁石から基板2に向けて放射して出るように示されている。マグネトロン捕捉領域16内のマグネトロングローは、ターゲット1の上の陰影をつけた犬用の骨の形をした領域(dog boned region)として示される。磁気ミラー捕捉領域15内のミラーグローは、長円形の線で囲まれた斜線を引いた領域である。基板2は領域15内のミラーグローの輪郭よりも幅が広いことに留意されたい。これによって、電子が磁力線17に沿って移動したときに接地された基板2によって静電的に確実に閉じ込められるようになる。(磁力線17は、閉じ込められた磁気ミラー捕捉領域15の全体的な形状を示すために単に概略で示されている)。
【0021】
図2は、源100が動作中であるように見えるように示している。40〜450kHzの範囲の電源24の周波数で、マグネトロン放電10および領域15内の外部ミラー放電は、連続的なプラズマのグローとして見える。
【0022】
図2に示した源100は、3メートル超の長さまで直線状に延長することができる。これは平面型マグネトロンまたは回転可能マグネトロンのカソードに類似している。この結果、広い面積の基板を処理、スパッタリング、および/またはイオン衝撃するための均一で高エネルギーのプラズマおよびイオン源が得られる。
【0023】
図3に源の典型的な動作の電圧波形を示す。電圧波形は、図1に示すように源100に接続された電源24の出力端で測定した。電源24の周波数を100kHzとした。図3に示すように、交流サイクルの正の部分50は、領域15内のミラー放電の始動電圧に向けて上昇する。通常、この始動電圧は400Vと1000Vとの間である。本発明の試験時にはピーク電圧50は約525Vであった。交流サイクルの負の部分51の時は、源電圧はマグネトロン捕捉領域16のマグネトロン放電が始動するまで低下する。先に参照した従来技術の中ですでに説明したように、通常、領域15内のミラー放電電圧は領域16内のマグネトロン放電よりも高い。これは、いくらかの高エネルギー電子がミラーを通過する損失による。本発明の場合には、ミラー放電のこのより高い電圧は、それが基板2に衝突するより大きなイオンエネルギーを生成するので有利である。
【0024】
いくつかの要因がミラー放電の始動電圧および維持電圧に影響を与える。これらの要因には、基板2の材料、プロセスガス6、プロセスガス流量およびプロセスチャンバ圧力が含まれる。基板2の材料は、2次電子放出特性とスパッタ収率の両方が源の動作に影響するので重要な考慮事項である。
【0025】
図3から分かるように、また上記で述べたように、波形が負側の時の領域16内のマグネトロン放電は、正側のミラー放電よりも低い電圧を有する。より低いマグネトロン電圧は典型的であるが、これは本発明の方法にとって必須ではなく、いくつかの要因がマグネトロン放電電圧を高く、または、低くすることがある。例えば、ターゲット1材料の選択は、ガスの種類6、ガス流量および全体的圧力とならんで放電電圧に影響を与える。
【0026】
また、電源24の周波数も源100の動作に影響する。先に述べたように、放電電源24の周波数は60Hz〜13.56MHzまたはそれ以上の範囲とすることができる。交番するマグネトロン放電とミラー放電の基本的な動作原理は同一であるとしても、その周波数は重要である。例えば、可撓性の樹脂ウェブ材料などの絶縁性の基板の場合は、電源周波数は、帯電効果を最小化するのに十分なだけ高くしなければならない。帯状の金属などの接地された導電性基板が使用される場合は、周波数を低くすることができる。絶縁性の薄い基板材料に対しては、電源24の周波数は、基板帯電を許容レベル範囲に増強しておくために40kHz〜13.56MHzの範囲にすべきである。接地された基板に対しては、電源24の周波数は60Hzから13.56MHzの範囲を動いてよい。40kHz〜450kHzの範囲の出力周波数を備えた電源は、これらが大電力であっても容易に入手でき、電気ノイズ問題が最も少なく、単純な変圧器タイプの負荷整合回路を使用して電圧出力を変換できるので、良い選択である。電源周波数の他の態様はイオン運動に関連する。周波数が1MHzを超えて高くなると、サイクルが正から負に交代する前にイオンを源から加速できなくなる。この場合には、イオンエネルギーは複数の加速段階によってより低くなる可能性がある。
【0027】
図4に他の好適な実施形態の概略図を示す。この実施形態は、本発明の他の有用な構成を示すだけでなく、本発明の範囲に入る広範囲な構成を示すことを意図している。図4において、源100は基板102の上方に配置される。ドラム101がポリマーウェブ基板102を支持し、ドラム101は回転して、基板102を源100を通り越して連続的に移動させる。ウェブ102およびドラム101は図示しない真空チャンバ内に配置される。ドラム101は接地されている。源100は、図1および図2の源100に類似である。源100は、図示した基板101およびドラム102と共にミラー放電111を発生させる。源100はダイオード106を介して電源105に接続されている。また、電源105の同じ極が、ダイオード104を介して別個の平面型マグネトロン103にも接続されている。電源105の反対極はグランドに接続される。源100は、ウェブ基板102を均一に処理するために長い直線状の源である。平面型マグネトロン103は長くまたは短い形とすることができ、ミラー放電111への中性化電子を形成するためだけに使用される。
【0028】
動作中は、ガスが源100および平面型マグネトロン103に供給されて0.5〜50ミリトールの範囲の圧力が形成される。電源105が入れられる。この実施形態では、ダイオード106および104は2つの源の動作を制御する。電源105の負のサイクル期間では、平面型マグネトロン103が始動し動作して、イオン(ホール)を電源105にダイオード104を介して流す。電子が、平面型マグネトロン103からプロセスチャンバの中に発散する。負のサイクル期間中は、源100はダイオード106が電流の流れを遮断するのでアクティブではない。正のサイクルでは、平面型マグネトロンのカソード放電110が停止し、ダイオード104が電流の流れを遮断する。この正サイクルでは、ダイオード106によって源100への電流の流れが可能になる。本発明の方法によって、これによるミラー放電111の始動が可能になる。イオンがこの正サイクル中に源100から放出され、これらのイオンは基板2に衝突して基板を処理する。以上のように、イオン放出の機能と中性化電子放出の機能は2つの源に分けられている。このことが複雑さを増やす可能性はあるが、この構成は利点を有する。1つの利点は、マグネトロン103からのスパッタ束が基板102に到達するのを遮断することである。これは、スパッタマグネトロン103の前面にシールド109を配置することにより達成される。
【0029】
基板102はポリマーであり、接地されたドラム101により支持されている絶縁性の材料であることに留意されたい。したがって、上述したように、電源105の周波数は、ウェブ102を通りドラム101に達する容量結合電流のために十分に高くなければならない。また、図4の構成においては、源100のマグネトロングロー16は点灯(light)しないことにも留意されたい。これは、ダイオード106が負のACサイクル中の源100への電流の流れを妨げるためである。
【0030】
電子放射体が近傍に存在しミラー放電サイクル中に活性である場合、MMPS動作は有害な影響を受けることに留意することが重要である。例えば、第2の平面型マグネトロンが源100の近傍で一定の直流モードで動作していると、この場合にはこのカソードがシステムに定常的に電子を供給し、源100が適切に動作しなくなる。ミラー放電111を始動させるために必要とされる正の電圧は相対的に高い。電子がプロセスチャンバ内の源100の近傍で利用される場合、これら電子は源100の正バイアスに引き寄せられ(正のACサイクル時に)、これら電子は、電源電圧を、ミラー放電111を始動させるのに十分な高さまで上昇させないようにする。この問題を防ぐには、正サイクル期間中に電子源がない状態で源100を動作させなければならない。これは、源107を他の電子源から分離することによって、または、源107を遮蔽することによって達成される。動作中に問題を起こす恐れのある電子源の他の例には、熱電子フィラメント、電子ビーム源およびホローカソードが含まれる。
【0031】
図5に他のMMPS実施形態の断面図を示す。この源200は、幅広の基板を処理するために長手に長く延長させることができる。源200は、磁石203を収納するための溝を中央部に備えたアルミニウムまたは非磁性材料のセンターバー電極204を有する。カバー235が、センターバー電極204および磁石203をミラープラズマ211から保護する。カバー235をバー204に取り付けている固定具は図示していない。センターバー電極204は、水冷のためのガンドリル孔233を有する。水冷配管は図示していないが、当技術分野ではよく知られている。バー204は、図示しない絶縁性固定具によりボックス231の内側に支持される。ボックス231は、固定具236によって取り付けられた底部支持板232を有する。ボックス231は、ローラー201とボックス密封端部230との間に約1mmの隙間を設けてローラー201に近接して固定される。ウェブ基板202はローラー201で支持される。ローラー201は接地される。ウェブ202は、相対的に薄く200ミクロン未満程度であるのでボックス端部230と干渉しない。電源205はセンターバー電極204に接続される。電源205は、100kHz〜13.56MHzの周波数の中間周波数電源である。プロセスガスは、図示しない器具を通じてボックスキャビティ234内に供給される。源200およびボックス230は、(概略的に240で示される)真空チャンバ内部に配置される。
【0032】
動作中は、ガスがキャビティ234内に供給され電源205が入れられる。十分な圧力と電圧と共に、本発明の方法によってセンターバー電極204の周りで点灯(light)する。1つのグローはマグネトロンプラズマ216である。これはAC電源205の負のサイクル期間に点灯する。ミラーグロー211は正の電源サイクル時に点灯する。図5の実施形態は、センターバー電極204からスパッタされた材料が基板202に堆積する量がより少ないという利点を有する。また、この構成はサイズが小さいので狭い空間にも装着することができる。
【0033】
端部230を備えたボックス231は、ローラー201の周囲を密封し2つの目的を果たす。すなわち、第1には、ボックス231は、局所的なガス閉じ込めキャビティの形成を助けて作用プラズマ216および211近傍の特定のガスを維持することである。例えば、酸素ガスをキャビティ234内に供給でき、キャビティの密封性が酸素ガス濃度を高く維持するのに役立つ。これは、同時に動作する異なるプロセスを有する大型真空チャンバにおいて重要である。第2には、ボックスは、センターバー電極204が正サイクル期間中に他のプラズマを点灯させないようにすることである。すでに上に説明したように、近傍のホローカソードがミラープラズマ211より前に放電することがあり、これはプラズマ211の放電を停止させるように働く。ボックス231は、電界をキャビティ234内部に保持する傾向にあり、ミラープラズマ211が適切に放電するのを保証するのに役立つ。
【0034】
本発明は、いくつかのプロセスおよび用途にとって重要な利点と特徴とを有する。すなわち、
−高密度プラズマが、接地された基板に対する高いプラズマ電位と共に基板の上方に維持される。これによって、基板に衝突する大規模で高エネルギーのイオン束がもたらされる。容易に入手できる中間周波数電力発生器を使用して、10または100アンペアさえものイオン電流を基板に向けて流すことができる。この高密度で高エネルギーのイオン束は、基板表面を急速に洗浄し改質することができる。例えば、プラスチックウェブのアルミニウムメタライジングにおいて、ライン速度は10m/秒を超すことができる。ウェブをアルミニウム堆積の前に効果的に処理するために、極めて高いイオンエネルギーとイオン密度とが必要とされる。
−本発明は、広い面積の基板を均一に処理できる長い直線状の源に作成することができる。均一な処理は大面積の薄膜プロセスを成功させるために不可欠である。
−いくつかの他のイオン源とは異なり、電子を中性化する別個の源は不要である。エンドホール(End hall)源のような典型的な高密度イオン源は、フィラメントまたはホローカソード加熱源のような別個の電子の中性化装置を必要とする。本MMPSは、均一な、電子を中性化する源を生成するために、負サイクル時のマグネトロン放電の作用を使用する。この作用は、アーク発生またはスパーク発生が真空チャンバ内に認められない動作の中に見ることができる。当技術分野で知られているように、電荷の不均衡に遭遇したときには、スパークの発生を基板またはチャンバ壁の上に見ることができる。本発明の自己中性化能力は長い直線状の源に対して特に重要である。この場合には、内部のマグネトロン電子放出体が、源の長手上方に長く均一な電子源を形成する。
−単一の電源だけが源の動作に必要とされる。これは、低廉な初期費および運転費ならびに単純化された運転のための重要な利点である。1台のAC電源が、イオン発生のためのミラー放電と電子を中性化するためのマグネトロン放電とを駆動する。
本発明はいくつかの薄膜プロセスに応用可能である。すなわち、
−マグネトロン放電100のスパッタの態様をさらに促進することによって、MMPSを用いてスパッタリングを実現することもできる。本MMPSの有利な点は、ミラー放電が、基板上のスパッタされたコーティグ密度を高めることに役立ち、ターゲット帯電問題すなわち「消失(disappearing)」アノード問題を伴わずに、絶縁性の反応性コーティングを堆積できることである。スパッタされたコーティングは、マグネトロン放電と交番するミラー放電が衝突イオンを成長する膜に供給するので高密度になる。酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素などの反応性コーティングを、二重マグネトロン構成に類似した安定性で堆積させることができる。本MMPSでは、交流動作がターゲット帯電の強化を回避し、接地された基板は安定なグランドとして作用する。基板が接地されたドラムまたはロール上のポリマーウェブである場合には、基板は、グランドの性質を保持しているドラムがコーティングされるのを保護する。基板が金属表面である場合には、一定に置き換えられた基板表面は、電源への定インピーダンス戻り回路を維持するように作用する。ミラー放電中の基板への高いイオン束は、再スパッタ速度を高めることに留意されたい。しかし、MMPSによって作製された、得られたスパッタ膜は、極めて高密度である。
−基板への高いイオン衝撃を、プラズマ促進化学蒸着プロセス用に効果的に使用することができる。例えば、ダイヤモンドライクなコーティング(DLC)プロセスは、高いイオン衝撃を必要とする。大部分の従来技術においては、これは基板をバイアスすることによって行われる。MMPSでは、基板はグランド電位にありながら、必要とされる高いイオン衝撃が生成される。また、従来技術のイオン源DLCプロセスとは異なり、大面積の基板を効果的にコーティングすることもできる。
【0035】
本発明の2つの実施形態を本明細書で示してきたが、いくつかの変更を本発明の精神の範囲の中で行うことができる。実行可能な変更は以下を含む。すなわち、
−電力を備えた電極を回転式マグネトロンとして構成することができる。
−センター磁石に加えて、外部磁石を組み込むことができる。センター磁石は、基板上にセンターミラー閉じ込めを形成するためにより強くなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の原理によるミラーマグネトロンプラズマ源(MMPS)の断面図である。
【図2】図1に示したMMPSの上面図である。
【図3】代表的な源の動作を例示する電圧対時間のグラフである。
【図4】さらに本発明の原理によるところの、中性化のための別個の平面型マグネトロンを備えたミラーマグネトロンプラズマ源の概略図である。
【図5】本発明の原理によるMMPSの他の実施形態の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ターゲット
2 基板
3 磁石
4 コア
5 流路
6 シャント側面
7 側面
8 ブラケット
9 絶縁ワッシャ
10 絶縁ワッシャ
11 ネジ
12 底部カバー
13 シャント基台
14 ターゲット固定板
15 磁気ミラー捕捉領域
16 マグネトロン捕捉領域
17 磁力線
18 磁力線
19 領域
20 暗部
24 電源
25 中心線
29 電極
30 端部磁石
32 固定具
33 端面
34 固定具
50 交流サイクルの正の部分
51 交流サイクルの負の部分
100 プラズマ源
101 ドラム
102 基板
103 平面型マグネトロン
104 ダイオード
105 電源
106 ダイオード
109 シールド
110 カソード放電
111 ミラー放電
200 源
201 ローラー
202 ウェブ基板
203 磁石
204 センターバー電極
205 電源
211 ミラープラズマ
216 マグネトロンプラズマ
230 ボックス密封端部
231 ボックス
232 底部支持板
233 ガンドリル孔
234 ボックスキャビティ
235 カバー
236 固定具
240 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続され、接地された基板の一部に近接して配置された、少なくとも1つの電極を備えたプラズマ源であって、前記電極はセンター磁石を有し、前記センター磁石は、前記交流電源によって前記電極が負にバイアスされたときにマグネトロンプラズマを前記電極のところに発生させ、前記交流電源によって前記電極が正にバイアスされたときにミラープラズマを前記基板の上に発生させる、プラズマ源。
【請求項2】
前記基板は、前記電極から100mm以内に配置された請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記基板は、前記電極から20〜50mmの距離の範囲内に配置された請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記交流電源に電気的に接続された別個のマグネトロン電極をさらに含み、前記交流電源と前記電極と前記マグネトロン電極との間の電気接続によって、(i)前記交流電源の前記負のサイクル中は、前記交流電源から前記マグネトロン電極への電流の流れを可能にし、(ii)前記交流電源の前記正のサイクル中は、前記接地された基板の一部に近接して配置された前記電極への前記交流電源からの電流の流れを可能にする請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記電極および前記センター磁石は、前記電極が前記交流電源によって負にバイアスされたときにマグネトロンの閉じ込めが前記電極の側面上に生成されるように配向された請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項6】
前記電極は、前記電極および前記電極に近接した前記基板の一部の周りにプラズマを維持するガスの容器を形成するように構成された容器構造体の中に配置された請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項7】
前記プラズマ源は真空チャンバ内に配置され、前記電極は、前記真空チャンバ内に配置されかつ前記ミラー閉じ込めに関連する電界を前記真空チャンバの環境から電気的に絶縁する容器構造体、の中に配置された請求項1に記載のプラズマ源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−530775(P2009−530775A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500522(P2009−500522)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/006743
【国際公開番号】WO2007/109198
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508371024)ジェネラル・プラズマ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】