説明

ミルナシプランの改変放出組成物

1日1回の経口ミルナシプラン改良放出製剤が開発された。該製剤は、遅延放出被覆物で被覆された長時間放出投与単位(即時放出部分を任意に含有する)を含んで成る。該ミルナシプラン組成物は、経口投与した場合に、先ず、ミルナシプラン総用量の0〜10%未満を放出しながら胃を通過し、次に、腸に入り、そこで長時間にわたって薬剤をゆっくり放出する。該組成物は、Tmax4〜10時間、その後のほぼ線形の減少、およびCmax約3000ng/mL未満、好ましくは2000ng/mL未満、最も好ましくは1000ng/mL未満を特徴とする生体内薬剤血漿濃度を与える。該組成物は、必要とする患者に投与した場合に、約24時間にわたってミルナシプランを送達することを可能にし、それによって、一般的なミルナシプラン副作用の発生の減少または強度の減少を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、ミルナシプラン改変放出組成物に関する。
【0002】
本出願は、2002年10月25日に出願された米国特許出願第60/421640号;2002年12月5日に出願された米国特許出願第60/431626号;2002年12月5日に出願された米国特許出願第60/431627号;2002年12月9日に出願された米国特許出願第60/431906号;2002年12月9日に出願された米国特許出願第60/431861号;2003年1月29日に出願された米国特許出願第60/443618号;2003年3月28日に出願された米国特許出願第60/459061号;2003年3月28日に出願された米国特許出願第60/458994号;2003年3月28日に出願された米国特許出願第60/458995号についての優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
有効性および許容性は、精神的抑うつ症、および機能的身体障害(Functional Somatic Disorders)を含む他の精神的障害の治療薬を選択する際の重要な要素である。三環系抗うつ薬(TCA)から選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)への移行は、TCAの有害副作用に関与する直接受容体相互作用の減少だけでなく、ノルエピネフリンの再取込みを阻害する能力にも関係していた。1つの神経伝達物質セロトニンについての選択性は、特により重症のうつ病において、SSRIがTCAより低い有効性である傾向を有する理由を説明しうる(Lopez−Ibor J.ら、1996,Int.Clin.Psychopharm.,11:41−46)。より古いTCAは、重大な行動毒性、特に、精神運動障害および認知障害および鎮静を伴う。SSRIはこれらの作用をほとんど有さないが、吐き気および消化不良のような胃腸障害がこの薬剤に一般的である(Hindmarch I.,1997,Human Psychopharmacology,12:115−119)。例えば、広く処方されているSSRIセルトラリン(Zoloft(登録商標)、Pfizer)について、治療中止に結びつく3つの最も有害な事象は、吐き気、不眠およ下痢であった(Physician’s Desk Reference、第57版、2003,Thomson Medical)。
【0004】
抗うつ薬を改良する努力は、うつ病におけるモノアミン機能を強化する治療可能性を裏づける神経化学的および臨床的研究からの累積証拠によって導かれている。デュロキセチン、ヴェンラファキシンおよびミルナシプランを包含する多くの抗うつ薬、セロトニンおよびノルエピネフリン再取込み阻害剤(SNRI)は、セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE)受容体の両方との相互作用に基づいて開発されている。ミルナシプランは、ノルエピフェフリン(NE)/セロトニン(5−HT)の比率が2:1であるので、ノルエピネフリンおよびセロトニン再取込み阻害剤(NSRI)と称するのがより適切である(Moretら、1985,Neuropharmacology,24:1211−1219;Palmierら、1989,Eur.J.Clin.Pharmacol.,37:235−238)。現在の臨床証拠は、この新しい薬剤が、SSRIと比較して、向上した有効性および/またはより速い作用の開始を与えうることを示している(Tran P.V.ら、2003、J.Clin.Psychopharmacol.,23:78−86)。NSRIミルナシプランに関する最近の試験は、この化合物が、うつ病に関係した痛み、およびうつ病に関係しない痛みの両方を軽減するのに有効であることを示している(Briley M.,2003,Curr.Opin.Investig.Drugs,4:42−45;Cypress Bioscience Inc.,Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia,Media Release,March 21,2003,Available from:URL:http://www.cypressbio.com)。
【0005】
残念なことに、これらのSNRIおよびNSRI化合物は、ヒト臨床試験において多くの副作用が示されている。
【0006】
例えば、デュロキセチン(Cymbalta(登録商標)、Eli Lilly and Company)の安全性および許容性が、デュロキセチン(40〜120mg/日)で治療した患者1032人および偽薬で治療した患者732人を含む7つの二重盲式プール分析(pooled analysis)において評価された。デュロキセチンについて5%より高い比率で発生した有害事象は、吐き気、口乾燥、疲労、めまい感、便秘、眠け、食欲減退および発汗であった。治療を中止させた有害事象は、吐き気、めまい感、眠け、皮膚炎、不眠、頭痛および疲労であった。吐き気およびめまい感は、偽薬と比較して顕著に多くデュロキセチンで治療した患者の治療を中止させた(Mallinckrodt C.ら、American Psychiatric Association 2002 Annual Meeting,New Research Abstracts,119,May 18,2002;Detke M.J.ら、American Psychiatric Association 2002 Annual Meeting,New Research Abstracts,33−34,May 18,2002)。吐き気は、中止の理由として報告された唯1つの有害事象であった(Eli Lilly and Company,New Research Shows Cymbalta Reduces Anxiety Symptoms Associated With Depression,Media Release:September 18,2003)。
【0007】
SNRI系に包含されるヴェンラファキシン(Effexor(登録商標)、Wyeth−Ayerst)について、報告されている主な副作用は、胃腸系に影響を及ぼす副作用である。4〜8週間の偽薬対照臨床試験において、Effexor(登録商標)対偽薬(n=1,033対609)についての、治療によって発現した主要胃腸有害事象発生率は以下の通りであった:吐き気(37%対11%)、便秘(15%対7%)、食欲不振(11%対2%)、嘔吐(6%対2%)。同じ臨床試験において、治療によって発現した主要中枢神経系有害事象発生率は以下の通りであった:眠け(23%対9%)、乾燥口(22%対11%)、めまい感(19%対7%)、不眠(18%対10%)、神経質(13%対6%)、不安(6%対3%)、震え(5%対1%)。重要なことに、吐き気は、最も一般的に報告される副作用である(前記参照)ことに加えて、二相および三相層抑うつ試験におけるヴェンラファキシン患者が治療を中止した最大の理由である:治療を中止した患者のほぼ32%が、吐き気によって治療を中止した(Physician’s Desk Reference、 第57版、2003,Thomson Medical)。
【0008】
ミルナシプラン(Ixel(登録商標)、Pierre Fabre)は、ヒト臨床試験において多くの有害反応を示し、投与量の増加と共に許容性が減少する(Puech Aら、1997,Int.Clin.Psychopharm.,12:99−108)。二重盲式、無作為化、複数の医療機関にまたがった(multicenter)臨床試験において、100mg/日ミルナシプラン(1日2回)について最も頻繁な自己報告有害事象は以下の通りであった:腹痛(13%)、便秘(10%)および頭痛(9%)。興味深いことに、同じ試験において、ミルナシプランを200mg/日(1日2回)で与えた場合、痛みに関係した有害作用は減少した(頭痛は8%、腹痛は7%に減少)が、吐き気および嘔吐は、より顕著な副作用であり、7%の患者によって報告された(Guelfi J.D.,1998,Int.Clin.Psychopharm.,13:121−128)。219人の高齢うつ病患者に関する二重盲式比較試験において、ミルナシプラン被投与者について、TCAイミプラミン被投与者より頻繁に報告された1つの有害事象は、吐き気であった。ミルナシプランまたはイミプラミン75〜100mg/日(1日2回)を8週間、患者に投与した(Tignol J.ら、1998,Acta Psychiatrica Scandinavica,95:157−165)。ミルナシプランを10人の患者に静脈投与した場合、そのうちの5人が一過性の吐き気を報告したことも分かった。吐き気は、ミルナシプラン血漿濃度のピーク時に主に報告された(Caron J.ら、1993,Eur.Neuropsychopharmacol.,3:493−500)。この試験は、吐き気が、ミルナシプラン血漿濃度に直接的に関係していることを示す。さらに、この試験において薬剤を静脈投与したので、吐き気が中枢神経仲介副作用でありうることを強く示唆している。他の試験のデータは、ミルナシプランが、胃腸刺激によって局所的に仲介された吐き気も誘発しうることを示している(ピーク血漿濃度に達する前でも、吐き気の急速開始が観察された)。
【0009】
偽薬対照臨床試験における、自己報告ミルナシプラン有害事象の発生を表1に示す(有害作用は、ミルナシプラン100mg/日のグループにおいて頻度が2%より高い場合に記載した)。表1に示したデータから明らかなように、吐き気、嘔吐、発汗、顔面潮紅、動悸、震え、不安、排尿障害および不眠を含むいくつかの有害事象の発生は、用量と共に増加する。
【0010】
(表1 偽薬対照臨床試験における自己報告ミルナシプラン有害事象の発生)
【0011】
【表1】

初期うつ病試験の1つにおいて、副作用を減少させるために使用した1週間のミルナシプラン用量の段階的増加後でさえ、有害作用による治療中止の最も一般的に報告された理由は、吐き気および嘔吐であったことを認識することが重要である(Leinonen E.,1997,Acta Psychiatr.Scand.,96:497−504)。ミルナシプラン副作用を減少させ、患者の耐性を増加させるために実施した長い用量段階的増加期間(4週間)での最近の線維筋痛症臨床試験において、患者によって報告された最も一般的な用量相関副作用は、吐き気であった(Cypress Bioscience Inc.,Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia,Media Release,March 21,2003)。
【0012】
表1に示したデータは、現在入手可能なミルナシプランの即時放出製剤が、低い患者許容度を生じる治療発現副作用の高発生の故に、1日1回または1日2回で投与される100mg/日またはそれ以上のミルナシプラン用量を必要とする健康状態の治療に理想的でないことを示している。より多い用量が、重度うつ病および他の関連疾患の治療に必要とされる。初期抗うつ薬臨床試験の1つにおいて示されるように、200mg/日のミルナシプラン用量が、それより少ない用量より優れていた(Von Frenckell Rら、1990,Int.Clin.Psychopharmacology 5:49−56)。1日に100〜250mgのミルナシプラン投与計画が、線維筋痛症の治療について最近報告された(米国特許第6602911号)。用量に関係した治療発現副作用、および必要用量に達するために長期間にわたる滴定が必要である故に、現在入手可能な製剤を使用して用量範囲の上限に達することは極めて困難であると考えられる。
【0013】
さらに、ミルナシプランの即時放出製剤は、ミルナシプランの相対的に短い(約8時間)の半減期の故に、うつ病治療の1日1回の投与計画に適さないと考えられる(Ansseau M.ら、1994,Psychopharmacology 114:131−137)。ミルナシプランの半減期は、線維筋痛症試験における即時放出製剤の1日2回(1日1回に対する)の投与が偽薬治療より統計的に優れた痛みの改善を生じたことにも関与していると考えられる(Cypress Bioscience Inc.,Cypress Bioscience Inc.Announces Final Results of Milnacipran Phase II Clinical Trial in Fibromyalgia,Media Release,March 21,2003)。
【0014】
持効性製剤を使用して薬剤を投与することができると述べるだけでは充分でない。例えば、Kranzlerらの米国特許第6602911号は、「経口投与のために、化合物を持効性製剤として配合しうる」と記載している。該特許は、配合法を記載しているが、Paillard B.らのWO 98/08495だけがミルナシプランの特定の持効性製剤を提供している。さらに、局所的および/または中枢神経的仲介副作用に関して、Paillardは何の言及もしていない。血漿濃度に対する治療用量の関係を注意深く理解することによってのみ、局所的仲介ならびに中枢神経的仲介副作用を軽減、減少または予防する改良投与形態を設計することができる。WO 98/08495は、2時間以内に総用量の10〜55%を放出するミルナシプラン用量60〜240mgの長時間放出製剤を開示し、該製剤は、活性薬剤で被覆され、次に、水に不溶性であるが生理学的流体に透過性の少なくとも1つのポリマーで被覆された、サッカロースおよび/またはデンプン微粒から成る。
【0015】
Perry K.の米国特許第6066643号は、ミルナシプランをモノキシジンと共に投与する場合のSSRIの治療作用を増強する方法を開示している。Perryは、「急速、持続または遅延放出」製剤において、中枢神経的に作用する抗高血圧薬と共にSSRIを共配合することによって、SSRIの副作用を緩和または減少させることを開示している。前記化合物の人への投与は、嗜眠状態、頭痛および乾燥口を伴う。Perryの方法は、患者によって経験される付加的副作用を生じうる。
【0016】
従って、本発明の目的は、特により多い用量について、副作用の発生および強度を低下させ、そして、投与頻度、およびこれらの疾患の治療に必要な治療用量レベルを得るために薬剤をゆっくり滴定する必要性を、低下または減少させるミルナシプラン製剤を提供することである。
【0017】
従って、本発明の目的は、必要とする患者に投与した場合に約24時間にわたって治療効果を発揮するミルナシプラン製剤を提供することであり、該製剤の放出速度および用量は、即時放出製剤について報告されている一般的なミルナシプラン副作用の発生の減少および強度の減少を伴って、下記から成る群から選択される少なくとも1つの疾患を軽減するのに有効である:うつ病、線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、痛み、注意欠陥/過活動性障害、および内臓痛症候群(VPS)、例えば過敏性腸症候群(IBS)、非心臓性胸痛(NCCP)、機能性消化不良、間質性膀胱炎、本能性外陰病変、尿道神経症、精巣痛、および情動障害[抑うつ障害(大うつ病性障害、気分変調、非定型うつ病)および不安障害(全身性不安障害、恐怖症、強迫性障害、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害)を包含する]、月経前不快気分障害、側頭下顎障害、非定型顔面痛、偏頭痛、および緊張性頭痛。
【0018】
本発明の他の目的は、好ましくない副作用、および所望治療用量に達するために用量をゆっくり増加(滴定)する現在の必要性を、除去するかまたは減少させる選択的薬物動態学放出プロフィールを与える製剤を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、朝または晩の投与に柔軟性を与える単位用量25〜500mgを与える製剤を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
1日1回の経口ミルナシプラン改変放出組成物を開発した。ミルナシプラン組成物は、経口投与した場合、先ず、ミルナシプラン総用量の0〜10%未満を放出しながら胃を通り、次に、腸に入り、そこで長時間にわたって薬剤をゆっくり放出する。放出プロフィールは、0.05〜4時間の遅滞時間を特徴とし、その間に、ミルナシプラン総用量の10%未満が胃に放出され、次に、所定時間にわたって残りの薬剤を腸で緩慢放出または長時間放出する。組成物は、4〜10時間におけるTmax、次に、任意にほぼ線形の減少、および3000ng/mL未満、好ましくは2000ng/mL未満、最も好ましくは1000ng/mL未満のCmaxを特徴とする生体内薬剤血漿濃度を与える。これらの濃度は、CNSにおけるコリン作用の刺激を回避するのを助ける。組成物は、約24時間にわたってミルナシプランを送達し、それによって、吐き気、嘔吐、睡眠障害、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、心的動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、眠け、消化不良、排尿障害、神経質、乾燥口、腹痛、癇癪(irritability)および不眠のような一般的なミルナシプラン副作用の発生の減少および強度の減少を生じる。
【0021】
(改良放出ミルナシプラン製剤の詳細な説明)
ミルナシプラン組成物は、2種類の改良放出投与形態、即ち遅延放出および長時間放出を含む。
【0022】
遅延放出部分は、胃腸(GI)管の上部分における薬剤放出を防止するように設計される。遅延放出は、腸溶性被覆物を使用して得られる。腸溶性製剤は、胃において、損なわれずに、または実質的に損なわれずに維持されるが、一旦、小腸に達すると、投与形態の含有物を溶解し放出する。腸溶性被覆物の目的は、胃におけるミルナシプランの放出を遅らせ、それによって、該被覆物がなければ生じうる吐き気、嘔吐、または胃粘膜の刺激による出血を防止することである。
【0023】
ミルナシプランの放出の遅延は、経口投与から最大4時間にわたって、血漿におけるミルナシプランの増加を遅らせ、それによって就寝時(PM)投与を可能にする。1日1回の製剤についてのミルナシプラン血漿濃度は、投与から24時間後において最も低い。中枢神経仲介副作用の強度は、薬剤血漿濃度によって調節されるので、副作用の強度も、先の用量を投与してから24時間で最も低くなると推測される。1日2回の即時放出製剤を摂取し、不眠に悩むミルナシプラン患者は、PM投与に切り替えることによってミルナシプラン治療に伴う副作用を有意に減少しうると考えられる。1日1回の製剤は、就寝時に摂取した場合、最大約4時間の間隙を与え、その間、薬剤が基本的に放出されず、患者は眠ることができ、おそらくは急速眼球運動(REM)睡眠に入る可能性が極めて高い。ミルナシプランは、SSRIおよび三環系抗うつ薬と比較して、極僅かなREM睡眠障害を誘発するにすぎないので(Gervasoni D.ら、2002,Pharmacol.Biochem.Behav.,73:557−563)、製剤を就寝時に投与した場合、最少限の睡眠障害が予測される。従って、1日1回の改良放出ミルナシプラン製剤は、AMまたはPM投与の融通性を与える。
【0024】
ミルナシプラン長時間放出部分は、睡眠障害を防止するために夜間に定常状態レベルに戻る前に、所定時間にわたって、腸における薬剤放出を延長し維持する。本明細書に使用される「約」とは、±約10%を意味する。
【0025】
これらの製剤の予測される治療的利点は、Cypress Bioscience,Inc.によって第41回 Annual Meeting of American College of Neuropsychopharmacology,San Juan,Puerto Rico(Gendreau R.M.ら、2002年12月9日、Poster presentation,Paster#85「Development of milnacipran,a dual reuptake inhibitor for treatment of chronic pain associated with fibromyalgia」)において示された線維筋痛症候群(FMS)と診断された患者においてミルナシプランを評価した12週間の無作為化二重盲式偽薬対照段階的用量増加単一療法試験の結果によってさらに裏付けられる。
【0026】
Cypress Bioscienceによって行なわれたFMS試験において、25mg/日から、50mg/日、100mg/日、そして最後に200mg/日、または用量限定毒性が明らかになるまで、4週間にわたって全ての患者に週に1度の段階的用量増加で投与した。この試験において、現在入手可能な即時放出(IR)ミルナシプラン製剤が唯1つのミルナシプラン投与形態として使用された。次に、200mg/日に到達できた患者を、さらに8週間にわたって、その用量で治療した。あらゆる所定用量レベルにおいて、ミルナシプラン1日1回(QD−IR)の患者は、朝に即時放出ミルナシプランの総用量を投与され、夜に偽薬を投与されたことを強調することが重要である。ミルナシプラン1日2回(BID−IR)の患者は、同じ総量を、朝と夜に投与される分割用量で投与された。
【0027】
Cypress Bioscienceによって使用された一次終点(primary endpoint)は、患者電子日記(electronic diary)に収集された疼痛評点に基づく、基準線から終点の疼痛評点の変化として定義された。終点は、単一数値(例えば、臨床測定値)または日記に基づく結果についての第11週および第12週における評点の平均値での評価のための第12週として定義された。ミルナシプランが線維筋痛症候群に関連した痛みを効果的に治療し、さらにFMSを有するうつ病患者の気分を改善したことが示された。200mg/日の用量に達した際に、試験参加者によって報告された疼痛評点の向上は、うつ病治療に一般に使用される用量よりかなり高いこの用量が、疼痛の軽減に必要であることを示す。分析時に終点に達した全ての患者についての全体的疼痛の1〜7の尺度(1はかなり高い改善、4は変化なし、7は極めて低い改善である)において、ミルナシプラン患者の平均値は2.3であったが、偽薬患者の平均値は4.3であった(ミルナシプラン群と偽薬との差は、p=0.0001の統計的有意である)。重要なことに、ミルナシプラン群において、1日2回投与は1日1回投与より疼痛減少おいて顕著に高い有効性であった。1日2回の投与計画は、より高い治療有効性であることに加えて、より少ない用量関連有害事象も示し、1日1回の投与計画より低い比率の用量不耐性を生じた(QD−IRグループの患者の19%が段階的用量増加に失敗したのに対して、BID−IRグループでは6%にすぎなかった)。偽薬群においては、段階的用量増加の失敗は記録されなかったことを認識すべきである。
【0028】
これらのQD−IRとBID−IRとの臨床的差異は、これら2つの投与計画が裏付ける薬剤血漿濃度(特にCmax)の明確な違いによる可能性が極めて高い。BID−IR投与計画は、24時間にわたってQD−IRより低いCmaxおよび低い薬剤血漿濃度変動を特徴とする薬剤血漿濃度を裏付ける。日用量をQD−IRで投与した場合、Cmaxは、BID−IR投与計画より約2倍高い。より高いCmaxは、有害副作用の重症度を増加させ(これは、患者による客観的疼痛レベル自己評価も妨げうる)、より低い薬剤耐性および患者コンプライアンスを生じる。従って、薬剤をBID−IRで投与した場合に観察される優れたミルナシプラン性能は、24時間にわたるより「持続された」薬剤血漿濃度によるものと考えられる。
【0029】
Cypress Bioscienceによって得られ示された臨床試験データによると、ミルナシプランをBID−IRで投与した場合に、たとえ僅かにしても睡眠の質が向上する。これは、より「持続された」薬剤血漿濃度を24時間にわたって与える製剤が、標準即時放出製剤と比較して優れた性能を示し、そして、重要なことに、より少ない不眠を生じることをさらに示すものであると理解しうる。
【0030】
(定義)
遅延放出投与形態:遅延放出投与形態は、投与後すぐではなく、所定の時機に、薬剤を放出する投与形態である。
【0031】
長時間放出投与形態:長時間放出投与形態は、従来の投与形態(例えば、溶液、または即時に薬剤を放出する従来の固体投与形態)で提供される薬剤と比較して、投与頻度を少なくとも2倍減少しうる投与形態である。
【0032】
改良放出投与形態:改良放出投与形態は、液剤、軟膏剤または即時溶解投与形態のような従来の投与形態によって得られない治療的または便宜的な目的を達成しうるように、その投与形態の時間推移および/または位置の薬剤放出特性が選択される投与形態である。遅延放出投与形態および長時間放出投与形態ならびにそれらの組合せは、改良放出投与形態の種類に含まれる。
【0033】
(ミルナシプラン)
ミルナシプランおよびその合成方法は、米国特許第4478836号に開示されている。ミルナシプラン(ミダルシプラン、ミダシプラン、F 2207)は、ノルエピフェフリン(NE)およびセロトニン(5−HT)の取込みを、NE/5−HT比率2:1で阻害する(Noretら、1985,Neuropharmacology,24:1211−1219;Palmierら、1989,Eur.J.Clin.Pharmacol.,37:235−238)が、ドパミンの取込みには作用しない。ミルナシプランは、αまたはβアドレナリン作用性受容体、ムスカリン性受容体、ヒスタミン作用性受容体、およびドパミン作用性受容体に対する親和性を有さない。これは、ミルナシプランが抗コリン作用性作用、鎮静作用および興奮性作用を生じる可能性が低いことを示唆する。ミルナシプランは、慢性投与後に、ラット皮質における多くのβアドレナリン作用性受容体に影響を与えない(Briley Mら、Int.Clin.Psychopharmac.,1996,11:10−14)。ミルナシプランに関する他の情報は、Merck Index、第12版、エントリ6281に見出しうる。
【0034】
本明細書において使用される「ミルナシプラン」は、特に記載がなければ、ミルナシプランの個々のエナンチオマーの両方(右旋性および左旋性エナンチオマー)およびそれらの薬学的に受容可能な塩、ミルナシプランエナンチオマーおよびそれらの薬学的に受容可能な塩の混合物、およびミルナシプランの活性代謝産物およびそれらの薬学的に受容可能な塩を包含するミルナシプランの薬理学的に活性な誘導体も含む。ある場合には、エナンチマー、誘導体および代謝産物の投与量を、ミルナシプランのラセミ混合物の相対活性に基づいて調節する必要があるものと理解される。
【0035】
本明細書に使用される「薬学的に受容可能な塩」は、親化合物がその酸性塩または塩基性塩の生成によって修飾されている開示化合物の誘導体を意味する。薬学的に受容可能な塩の例は、アミンのような塩基性残基の無機または有機酸性塩:カルボン酸のような酸性残基のアルカリまたは有機塩であるがそれらに限定されない。薬学的に受容可能な塩は、例えば非毒性無機または有機酸から生成される、親化合物の一般的な非毒性塩または第四アンモニウム塩を包含する。例えば、そのような一般的な非毒性塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等から誘導される塩;および、有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸およびイセチオン酸から誘導される塩である。
【0036】
化合物の薬学的に受容可能な塩は、一般的な化学法によって、塩基性または酸性成分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、水または有機溶媒、またはその2つの混合(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒質が好ましい)中で、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、理論量の適切な塩基または酸と反応させることによって生成することができる。好適な塩の列記が、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000,p.704に見出される。
【0037】
本明細書に使用される「薬学的に受容可能な」という語句は、正当な医学的判断の範囲において、穏当なベネフィット/リスク比に釣り合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題または合併症を生じずに、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。
【0038】
本明細書に使用される「立体異性体」という用語は、同じ結合によって結合した同じ原子から構成されているが、互換性でない異なる空間構造を有する化合物を意味する。三次元構造は、立体配置と呼ばれる。本明細書において使用される「エナンチオマー」という用語は、それらの分子が相互に重ね合わすことができない鏡像である2つの立体異性体を意味する。本明細書において使用される「光学異性体」という用語は、「エナンチオマー」という用語と同意義である。「ラセミ化合物」、「ラセミ混合物」または「ラセミ修飾」という用語は、同量のエナンチオマーの混合物を意味する。「キラル中心」という用語は、4個の異なる基が結合している炭素原子を意味する。本明細書に使用される「エナンチオマー豊富」という用語は、1つのエナンチアマーのもう一方と比較した量の増加を意味する。エナンチオマー豊富は、標準的方法および手順、例えば、キラルカラムでのガスまたは高性能液体クロマトグラフィーを使用して当業者によって容易に決定される。J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons,Inc.,1981に記載のような当分野で周知の標準的方法を使用して、エナンチオマー対の分離を行なうのに必要な適切なキラルカラム、溶離剤および条件の選択は、充分に当業者の知識の範囲内である。分割の例は、ジアステレオマー塩/誘導体の再結晶または分取キラルクロマトグラフィーである。
【0039】
(他の活性化合物との組合せ)
ミルナシプランは、他の活性化合物、例えば、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠発作薬を補助的に使用して、投与することができる。
【0040】
ミルナシプランと共に補助的に投与することができる化合物の特定の例は、下記の化合物であるがそれらに限定されない:アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アドメキセチン、アルモトリプタン、アルプラゾラム、アマンタジン、アムシノニド、アミノシクロプロパン、アミトリプチリン、アモロジピン、アモキサピン、アンフェタミン、アリピプラゾール、アスピリン、アトモキセチン、アザセトロン、アザタジン、ベクロメタゾン、ベナクチジン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ベタメタゾン、ビシファジン、ブロモクリプチン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、ブトリプチリン、カフェイン、カルバマゼピン、カルビドパ、カリソプロドール、セレコキシブ、クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、サリチル酸コリン、シタロプラム、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロニタゼン、クロラゼペート、クロチアゼパム、クロキサゾラム、クロザピン、コデイン、コルチコステロン、コルチゾン、シクロベンザプリン、シクロヘプタジン、デメキシプチリン、デシプラミン、デソモルフィン、デキサメタゾン、デキサナビノール、硫酸デキストロアンフェタミン、デキストロモルアミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアゼパム、ジベンゼピン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロモルフィン、ジメタクリン、ジバルプロックス、ジザトリプタン、ドラセトロン、ドネペジル、ドチエピン、ドキセピン、ダロキセチン、エルゴタミン、エスシタロプラム、エスタゾラム、エトスクシミド、エトドラク、フェモキセチン、フェナメート、フェノプロフェン、フェンタニル、フルジアゼパム、フルオキセチン、フルフェナジン、フルラゼパム、フルルビプロフェン、フルタゾラム、フルボキサミン、フロバトリプタン、ガバペンチン、ガランタミン、ジェピロン、イチョウ、グラニセトロン、ハロペリドール、フペルジンA、ヒドロコドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロモルホン、ヒドロキシジン、イブプロフェン、イミプラミン、インジプロン、インドメタシン、インドプロフェン、イプリンドール、イプサピロン、ケタセリン、ケトプロフェン、ケトロラク、レソピトロン、レボドパ、リパーゼ、ロフェプラミン、ロラゼパム、ロクサピン、マプロチリン、マチンドール、メフェナム酸、メラトニン、メリトラセン、メマンチン、メペリジン、メプロバメート、メサラミン、メタプラミン、メタキサロン、メタドン、メタドン、メタンフェタミン、メトカルバモール、メチルドパ、メチルフェニデート、メチルサリチレート、メチセルジド、メトクロプラミド、ミアンセリン、ミフェプリストン、ミルナシプラン、ミナプリン、ミルタザピン、モクロベミド、モダフィニル(抗睡眠発作)、モリンドン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、ナブメトン、ナドロール、ナプロキセン、ナラトリプタン、ネファゾドン、ニューロンチン、ノミフェンシン、ノルトリプチリン、オランザピン、オルサラジン、オンダンセトロン、オピプラモール、オルフェナドリン、オキサフロザン、オキサプラジン、オキサゼパム、オキシトリプタン、オキシコドン、オキシモルフォン、パンクレリパーゼ、パレコキシブ、パロキセチン、ペモリン、ペンタゾシン、ペプシン、ペルフェナジン、フェナセチン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェニルブタゾン、フェニトイン、ホスファチジルセリン、ピモジド、ピルリンドール、ピロキシカム、ピゾチフェン、ピゾチリン、プラミペキソール、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレガバリン、プロパノロール、プロピゼピン、プロポキシフェン、プロトリプチリン、クアゼパム、キヌプラミン、レボキシチン、レセルピン、リスペリドン、リタンセリン、リバスチグミン、リザトリプタン、ロフェコキシブ、ロピニロ−ル、ロチゴチン、サルサレート、セルトラリン、シブトラミン、シルデナフィル、スルファサラジン、スリンダク、スマトリプタン、タクリン、テマゼパム、テトラベノジン、チアジド、チオリダジン、チオチキセン、チアプリド、チアシピロン、チザニジン、トフェナシン、トルメチン、トロキサトン、トピラメート、トラマドール、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トリメトベンズアミド、トリミプラミン、トロピセトロン、バルデコキシブ、パルプロ酸、ベンラファキシン、ビロキサジン、ビタミンE、ジメルジン、ジプラシドン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、およびそれらの異性体、塩および組合せ。
【0041】
補助投与とは、同じ投与形態における化合物の同時投与、分離投与形態における同時投与、および化合物の分離投与を意味する。
【0042】
(製剤)
安全かつ有効であると考えられ、望ましくない生物学的副作用または好ましくない相互作用を生じずに個体に投与しうる物質から成る薬学的に受容可能な「担体」を使用して、製剤を調製する。「担体」は、医薬製剤中に存在する活性成分以外の全ての成分である。「担体」という用語は、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤および被覆組成物を包含するがそれらに限定されない。
【0043】
「担体」は、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤およびグリダント(glidants)を含有しうる被覆組成物の全ての成分も包含する。遅延放出投与製剤は、下記のような文献に記載のように調製しうる:「Pharmaceutical dosage form tablets」、Libermanら編(New York,Marcel Dekker,Inc.,1989)、「Remington − The science and practice of pharmacy」、第20版、Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000、および「Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems」、第6版、Anselら(Media,PA:Williams & Wilkins,1995)(これは、錠剤およびカプセル剤、および錠剤およびカプセル剤の遅延放出投与形態、および顆粒剤の製造用の、担体、物質、装置および方法に関する情報を提供している)。
【0044】
好適な被覆材料の例は、セルロースポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート;酢酸フタル酸ポリビニル、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、およびメタクリル樹脂(商品名Eudragit(登録商標)(Roth Pharma,Westerstadt,Germany)として商業的に入手可能)、ゼイン、シェラックおよび多糖類であるがそれらに限定されない。
【0045】
さらに、被覆材料は、一般的な担体、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、グリダント、安定剤、気孔形成剤(pore formers)および界面活性剤も含有しうる。
【0046】
薬剤を含有する錠剤、ビーズ、顆粒または粒子に存在する任意の薬学的に受容可能な賦形剤は、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、安定剤および界面活性剤を包含するがそれらに限定されない。「充填剤」とも称される希釈剤は、錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成のために実用的大きさを与えるために、固体投与形態の嵩を増すのに一般に必要である。好適な希釈剤は、ジカルシウムホスフェートジハイドレート、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、予備ゼラチン化デンプン、二酸化珪素、酸化チタン、珪酸アルミニウムマグネシウムおよび粉糖を包含するがそれらに限定されない。
【0047】
結合剤は、固体投与製剤に粘着性を付与するのに使用され、それによって、投与形態の形成後に、錠剤またはビーズまたは顆粒が損なわれずに維持されることを確実にする。好適な結合剤物質は、デンプン、予備ゼラチン化デンプン、ゼラチン、糖類(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを包含する)、ポリエチレングリコール、蝋、天然および合成ゴム、例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、セルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを包含する)、およびビーガム、および合成ポリマー、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸およびポリビニルピロリドンを包含するがそれらに限定されない。
【0048】
潤滑剤は、錠剤製造を容易にするために使用される。好適な潤滑剤は、リン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルクおよび鉱油を包含するがそれらに限定されない
崩壊剤は、投与後に、投与形態の崩壊または「分解」を助長するために使用され、デンプン、ナトリウムデンプングリコレート、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、予備ゼラチン化デンプン、クレー、セルロース、アルギニン、ゴムまたは架橋ポリマー、例えば架橋PVP(GAF Chemical Corp.からのPolyplasdone XL)を一般に包含するがそれらに限定されない。
【0049】
安定剤は、例えば酸化反応を包含する薬剤分解反応を、阻害するかまたは遅延させるために使用される。
【0050】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、ノニオン界面活性剤を使用してよい。好適なアニオン界面活性剤は、カルボン酸、スルホン酸および硫酸イオンを含有する界面活性剤を包含するがそれらに限定されない。アニオン界面活性剤の例は、長鎖アルキルスルホン酸およびアルキルアリールスルホン酸ナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルナトリウムスルホスクシネート、例えばナトリウムビス−(2−エチルチオキシ)−スルホスクシネート;および硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムであるがそれらに限定されない。カチオン界面活性剤は、第四アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンおよびココナツアミンを包含するがそれらに限定されない。ノニオン界面活性剤の例は、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル−4−オレエート、ソルビタンアクリレート、スクロースアクリレート、PEG−150ラウレート、PEG−400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、Poloxamer(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水素添加タローアミドである。両性界面活性剤の例は、ナトリウムN−ドデシル−β−アラニン、ナトリウムN−ラウリル−β−イミノジプロピオネート、ミリストアンホアセテート、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインである。
【0051】
必要であれば、錠剤、ビーズ、顆粒または粒子は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤または乳化剤、染料、pH緩衝剤および防腐剤も含有してよい。
【0052】
各用量において放出される活性剤の量は、治療に有効な量である。ミルナシプランの場合、投与形態における総量は約25〜500mgである。
【0053】
(長時間放出投与形態)
長時間放出製剤は、例えば「Remington − The science and practice of pharmacy」(第20版、Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000)に記載されているように、拡散または浸透圧系として一般に調製される。拡散系は、一般に、2種類のデバイス(device)、レザバーおよびマトリックスから成り、当分野において周知であり、記載されている。マトリックスデバイスは、ゆっくり溶解するポリマー担体と共に薬剤を圧縮して錠剤形態にすることによって一般に製造される。マトリックスデバイスの製造に使用される3つの主要なタイプの材料は、不溶性プラスチック、親水性ポリマーおよび脂肪化合物である。プラスチックマトリックスは、メチルアクリレート−メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンを包含するがそれらに限定されない。親水性ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、およびカルボポール934、ポリエチレンオキシドを包含するがそれらに限定されない。脂肪化合物は、種々の蝋、例えばカルナウバ蝋、およびグリセリルトリステアレートを包含するがそれらに限定されない。
【0054】
または、長時間放出製剤は、浸透圧系を使用するか、または半透過性被覆物を投与形態に適用することによっても製造できる。後者の場合、所望の薬剤放出プロフィールは、低透過性および高透過性被覆材料を好適な比率で組み合わせることによって得られる。
【0055】
前記の異なる薬剤放出メカニズムを有するデバイスを、1つのまたは多くの単位から成る最終投与形態において組み合わしうる。多くの単位の例は、多層錠剤、錠剤、ビーズ、顆粒等を含有するカプセルである。
【0056】
被覆または圧縮法を使用して即時放出層を長時間放出コアの上に適用することによるか、または長時間および即時放出ビーズを含有するカプセルのような多単位系において、即時放出部分を長時間放出系に添加することができる。
【0057】
親水性ポリマーを含有する長時間放出錠剤は、当分野で一般に知られている方法、例えば、直接圧縮法、湿式粒状化法または乾式粒状化法によって製造することができる。それらの製剤は、ポリマー、希釈剤、結合剤および潤滑剤ならびに活性医薬成分を一般に組み込んでいる。通常の希釈剤は、不活性粉末物質、例えば、多種類のあらゆるデンプン、粉末セルロース、特に結晶性および微結晶性セルロース、糖、例えば、フルクトース、マンニトールおよびスクロース、穀粉および類似した食用粉末を包含する。典型的な希釈剤は、例えば、種々のタイプのデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸または硫酸カルシウム、無機塩、例えば塩化ナトリウム、および粉糖である。粉末セルロース誘導体も有用である。一般的な錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチンおよび糖、例えば、ラクロース、フルクトースおよびグルコースのような物質を包含する。アラビアゴムを包含する天然および合成ゴム、アルギン酸塩、メチルセルロースおよびポリビニルピロリジンも使用することができる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよび蝋も、結合剤として作用しうる。ダイにおいて錠剤およびパンチがくっつかないようにするために、潤滑剤が錠剤製剤に必要である。潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、ステアリン酸および水素添加植物油のような滑り性固体から選択される。
【0058】
蝋物質を含有する長時間放出錠剤は、当分野で既知の方法、例えば、直接ブレンド法、凝固法、および水性分散法を使用して一般に製造される。凝固法において、薬剤を蝋物質と混合し、吹付凝固するかまたは凝固し、篩にかけ、加工処理する。
【0059】
(遅延放出投与形態)
遅延放出製剤は、胃の酸性環境で不溶性であり、小腸の中性環境で可溶性であるポリマーフィルムで、固体投与形態を被覆することによって形成される。
【0060】
遅延放出投与単位は、例えば、薬剤または薬剤含有組成物を、選択された被覆材料で被覆することによって製造できる。薬剤含有組成物は、例えば、カプセルに組み込まれる錠剤、「被覆コア」投与形態における内部コアとして使用される錠剤、または錠剤またはカプセルに組み込まれる多数の薬剤含有ビーズ、粒子または顆粒であってよい。好ましい被覆材料は、生体侵食性、漸次加水分解性、漸次水溶性、および/または酵素分解性ポリマーを包含し、一般的な「腸溶性」ポリマーであってもよい。腸溶性ポリマーは、当業者に理解されるように、下部胃腸管のより高いpH環境において可溶性になるか、または投与形態が胃腸管を通ると共にゆっくり侵食され、一方、酵素分解性ポリマーは、下部胃腸管、特に結腸に存在する細菌酵素によって分解される。遅延放出を達成するのに好適な被覆材料は、下記の物質を包含するがそれらに限定されない:セルロースポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;アクリル酸ポリマーおよびコポリマー(好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから生成される)、および下記のものを包含する商品名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt,Germany)で商業的に入手可能な他のメタクリル樹脂:Eudragit(登録商標)L30D−55およびL100−55(pH5.5およびそれ以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)L−100(pH6.0およびそれ以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)S(より高いエステル化度の結果として、7.0およびそれ以上で可溶性)、およびEudragit(登録商標)NE、RLおよびRS(種々の程度の透過性および膨張性(expandability)を有する水不溶性ポリマー);ビニルポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸フタル酸ビニル、酢酸ビニルクロトン酸コポリマー、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー;酵素分解性ポリマー、例えば、アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアールガム;ゼインおよびシェラック。種々の被覆材料の組合せも使用しうる。種々のポリマーを使用した多層被覆物も適用しうる。
【0061】
特定被覆材料の好ましい被覆重量は、種々の量の種々の被覆材料で製造した錠剤、ビーズおよび顆粒の各放出プロフィールを評価することによって、当業者によって容易に決定しうる。臨床試験だけによって決定できる所望放出特性を生じるのは、材料、方法および適用形態の組合せである。
【0062】
被覆組成物は、一般的な添加剤、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、グリダント等を含有しうる。可塑剤は、被覆物の脆性を減少させるために一般に存在し、ポリマーの乾量に対して一般に約10wt%〜50wt%で存在する。一般的な可塑剤の例は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、トリエチルアセチルシトレート、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドである。安定剤は、好ましくは、分散液中の粒子を安定化させるのに使用される。一般的な安定剤は、ノニオン乳化剤、例えば、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンである。グリダントは、皮膜形成および乾燥の際の粘着作用を減少させるのに推奨され、被覆溶液中のポリマー重量の約25wt%〜100wt%で一般に存在する。1つの有効なグリダントはタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびグリセロールモノステアレートのような他のグリダントも使用しうる。二酸化チタンのような顔料も使用しうる。少量の消泡剤、例えばシリコーン(例えばシメチコン)も被覆組成物に添加しうる。
【0063】
(遅延放出/長時間放出製剤を含有するキット)
より少ない用量で用量滴定を好都合に開始する(例えば、25mgで開始して、3日〜16週間で50mg、75mg、100mg、200mg、400mg、500mgに徐々に増加する)方法を提供するために、1日1回の改良放出投与形態を含有したキットを提供する。キットにおいて、包装材料は、箱、ビン、ブリスターパッケージ、トレーまたはカードであってよい。キットは、特定の時機に特定用量を摂取するように患者に指示する(例えば、維持量に達するまで、1日目に第一用量、2日目に、より多い第二用量、3日目に、より多い第三用量等)パッケージインサートを含有する。
【0064】
(製造法)
当業者に認識され、関連する図書および文献に記載されているように、種々の薬剤放出プロフィールを与える薬剤含有錠剤、ビーズ、顆粒および粒子を製造する多くの方法を使用しうる。そのような方法は、下記の方法を包含するがそれに限定されない:薬剤または薬剤含有組成物を適切な被覆材料で被覆し、必ずではないが一般にポリマー物質を組み込み、薬剤の粒度を増加させ、薬剤をマトリックス内に入れ、そして、薬剤と好適な錯生成剤との錯体を生成する。
【0065】
遅延放出投与単位は、従来法、例えば、従来のコーティングパン、無気吹付法、流動床被覆装置(Wursterインサートを使用または不使用)等を使用して、遅延放出ポリマー被覆物で被覆しうる。錠剤および遅延放出投与形態を製造するための材料、装置および方法に関する詳しい情報についは、Pharmaceutical Dosage Forms:Tables,Liebermanら編(New York:Marcel Dekker,Inc.,1989)、およびAnselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第6版、(Media,PA:Williams & Wilkins,1995)を参照。
【0066】
長時間放出錠剤の好ましい製造法は、薬剤含有ブレンド、例えば、直接ブレンド法、湿式粒状化法または乾式粒状化法を使用して製造された顆粒ブレンドを圧縮することによって行なわれる。長時間放出錠剤は、好適な水溶性潤滑剤を含有する湿った物質で開始して、圧縮ではなく、成形してもよい。しかし、錠剤を、成形ではなく圧縮によって製造するのが好ましい。長時間放出薬剤含有ブレンドを形成する好ましい方法は、薬剤粒子を、1つまたはそれ以上の賦形剤、例えば、希釈剤(または充填剤)、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、グリダントおよび着色剤と直接的に混合する方法である。直接ブレンドに代わる方法として、薬剤含有ブレンドを、湿式粒状化法または乾式粒状化法によって製造しうる。活性剤を含有するビーズも、多くの従来法のいずれか1つによって、分散液から一般に開始して製造しうる。例えば、薬剤含有ビーズを製造する一般的な方法は、医薬賦形剤、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、タルク、金属ステアリン酸塩、二酸化珪素、可塑剤等を含有する被覆懸濁液または溶液に、活性剤を分散させるかまたは溶解させることを含む。混合によって、約60〜20メッシュの大きさの糖球(いわゆる「非−パレイル」(non−pareil))のようなビーズコアを被覆する。
【0067】
薬剤ビーズを製造する代替法は、薬剤を1つまたはそれ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、セルロース、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、崩壊剤等とブレンドし、ブレンドを押出し、押出物を球状化し、乾燥し、任意に被覆して、即時放出ビーズを形成する方法である。
【0068】
引用した全ての発行物は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0069】
(ミルナシプラン製剤の投与)
製剤は、それを必要とするどのような患者にも投与できる。好ましい患者はヒトであるが、イヌ、ネコおよびウマのような家畜を包含するあらゆる哺乳動物も治療しうる。
【0070】
投与される有効成分の量は、症状を緩和するかまたは疾患を治療するような処置を必要とする患者に所望用量を与える量に基づいて、選択される。
【0071】
ミルナシプランは、約400,000人の患者において抗うつ薬として使用されており、ヒトにおいて非毒性であることが知られている。薬物動態学研究は、経口用量のミルナシプランがすばやく吸収され、1〜2時間以内に体内に広範囲に分散されることが示された。最大血漿濃度にすぐに達し、ヒトにおける半減期は約8時間である。肝臓における代謝は、化学的に同定されている10の代謝産物の形成を生じるが、これらの代謝産物は、親薬剤の濃度の約10%にすぎない。ヒトにおいて、親薬剤の90%は、変化せずに腎臓を経て排泄される。この薬物動態プロフィールは、ミルナシプランに、いくつかの薬物動態利益、例えば、少ない血漿濃度個体間変化、低い薬剤相互作用可能性、および肝臓シトクロムP−450系への限定された影響を与える。これらの薬物動態特性は、ミルナシプランを他の大部分抗うつ薬から区別し、ミルナシプランの優れた安全性プロフィールに寄与している(Puozzo Cら、1996,Int.Clin.Psychopharmacol.,11:15−27;Caccia S.,1998,Clin.Pharmacokinet.,34:281−302;Puozzo C.ら、1998,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,23:280−286)。
【0072】
ミルナシプランは、下記の治療のために投与することができる:うつ病、線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、痛み、注意欠陥/過活動性障害、および内臓痛症候群(VPS)、例えば過敏性腸症候群(IBS)、非心臓性胸痛(NCCP)、機能性消化不良、間質性膀胱炎、本能性外陰病変、尿道神経症、精巣痛、および情動障害[抑うつ障害(大うつ病性障害、気分変調、非定型うつ病)および不安障害(全身性不安障害、恐怖症、強迫性障害、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害)を包含する]、月経前不快気分障害、側頭下顎障害、非定型顔面痛、偏頭痛、および緊張性頭痛。
【0073】
ミルナシプランの経口投与に対する有害反応は、一般に、下記の少なくとも1つを含む:吐き気、嘔吐、頭痛、消化不良、腹痛、不眠、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、心的動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、眠け、排尿障害、神経質、乾燥口および癇癪。
【0074】
嘔吐反応は、腸管の収縮および拡張の両方ならびに理学的損傷によって活性化される上部GI管における化学受容器およびGI管壁における機械的受容器の刺激によって誘発される。中枢神経系における協調中枢が、催吐反応を制御している。その中枢は、脳の外側延髄領域における小細胞毛様体に存在する。嘔吐中枢への求心性神経は、腹部内臓神経および迷走神経、前庭−迷路受容器、大脳皮質および化学受容器引き金点(CTZ)から生じる。CTZは、最後野に近接して存在し、血液および脳脊髄液の両方をサンプリングする(sample)化学受容器を含有している。催吐中枢とCTZの間に直接結合が存在する。CTZは、内因性起源の催吐性刺激、および薬剤のような外因性起源の刺激に暴露される。脳神経V、VIIおよびIXの遠心性枝ならびに迷走神経および交感神経幹は、筋肉収縮、心臓血管反応、および嘔吐の特徴である逆ぜん動の複合協調セット(set)を生じる。最後野は、ドパミン受容体ならびに5−ヒドロキシトリプタミン(5HT)受容体が豊富である。
【0075】
経口投与した場合、長時間放出製剤は、先ず、ミルナシプラン総用量の0〜10%を放出しながら胃を通り、次に、腸に入り、そこで薬剤をゆっくり放出する。放出プロフィールは、0.05〜4時間の遅滞時間を一般に特徴とし、その間に、ミルナシプラン総用量の約0〜10%が放出され、次に、緩慢放出または長時間放出する。ミルナシプランの医薬組成物は、4〜10時間、好ましくは5〜8時間におけるTmax、および、それからしばらくした後にほぼ線形の減少、および3000ng/mL未満、好ましくは2000ng/mL未満、最も好ましくは1000ng/mL未満のCmaxを特徴とする生体内薬剤血漿濃度を与える。この投与形態は、即時放出送達系と比較した場合に、下記のような多くの利点を有する:ピーク−谷−変動(peak−trough−fluctuations)の最少限化、好ましくない副作用の防止および/またはそれらの強度/重症度の減少、投与頻度の減少、および患者コンプライアンスの向上。
【0076】
この製剤は、それを必要とする患者に1日1回投与するように設計され、それによって、吐き気、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、背部痛、便秘、めまい、発汗増加、心的動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、眠け、消化不良、排尿障害、神経質、乾燥口、腹痛、癇癪および不眠のような一般的なミルナシプラン副作用の1つまたはそれ以上の発生の減少および強度の減少を伴って、ミルナシプランをほぼ24時間にわたって送達する。
【実施例】
【0077】
(例示)
下記の非限定的実施例によって、本発明がさらに深く理解される。
【0078】
(実施例1:水性粒状化を使用する遅延放出/長時間放出ミルナシプラン錠剤の製造)
遅延放出/長時間放出ミルナシプラン医薬組成物の長時間放出部分についての、成分、製造法および生体外溶解データ(ロット番号1、小規模マニュアルバッチ)
【0079】
【表2】

ドライブレンディング、湿式粒状化、乾燥、粉砕(size reduction)、および潤滑剤との最終ブレンド工程から成る湿式粒状化法を、卓上規模で使用した。シングルステーションベンチトップモデル錠剤成形機を使用して、錠剤を圧縮した。
【0080】
【表3】

リン酸塩緩衝液pH6.8を装填したUSP溶解装置I(100rpmでの回転バスケット)を、溶解試験に使用した。37℃で試験を実施した。UV法を使用して、溶解試料の分析を行なった。
【0081】
(実施例2:アルコール粒状化を使用する選択的遅延放出/長時間放出ミルナシプラン錠剤の製造)
遅延放出/長時間放出ミルナシプラン医薬組成物の長時間放出部分についての、成分、製造法および生体外溶解データ(ロット番号2、小規模マニュアルバッチ)
【0082】
【表4】

ドライブレンディング、湿式粒状化、乾燥、粉砕、および潤滑剤との最終ブレンド工程から成る湿式粒状化法を、卓上規模で使用した。シングルステーションベンチトップモデル錠剤成形機を使用して、錠剤を圧縮した。
【0083】
【表5】

DI水を装填したUSP溶解装置I(100rpmでの回転バスケット)を、溶解試験に使用した。37℃で試験を実施した。UV法を使用して、溶解試料の分析を行なった。
【0084】
(実施例3:水性粒状化を使用する遅延放出/長時間放出ミルナシプラン錠剤の製造)
遅延放出/長時間放出ミルナシプラン医薬組成物の長時間放出部分についての、成分、製造法および生体外溶解データ(bench=小規模マニュアルバッチ、lab−equip=実験装置規模グラニュレーターまたはブレンダーをバッチ製造に使用)。
【0085】
【表6】

ドライブレンディング、湿式粒状化、乾燥、粉砕、および潤滑剤との最終ブレンド工程から成る湿式粒状化法を、卓上規模で使用した。シングルステーションベンチトップモデル錠剤成形機を使用して、錠剤を圧縮した。
【0086】
【表7】

リン酸塩緩衝液pH6.8を装填したUSP溶解装置I(100rpmでの回転バスケット)を、溶解試験に使用した。37℃で試験を実施した。UV法を使用して、溶解試料の分析を行なった。
【0087】
(実施例4:水性粒状化を使用する選択的遅延放出/長時間放出ミルナシプラン錠剤の製造)
遅延放出/長時間放出ミルナシプラン医薬組成物の長時間放出部分についての、成分、製造法および生体外溶解データ(小規模マニュアルバッチ、ロット番号7、およびパイロットバッチ、ロット番号8;両方とも水性粒状化)
【0088】
【表8】

ドライブレンディング、湿式粒状化、乾燥、粉砕、および潤滑剤との最終ブレンド工程から成る湿式粒状化法を、卓上規模で使用した。シングルステーションベンチトップモデル錠剤成形機を使用して、錠剤を圧縮した。パイロットバッチは、水性湿式粒状化法用のZanchetta RotoP10(高剪断グラニュレーター)を使用して製造した。乾燥は、Glatt GPCG−5流動床グラニュレーターで行い、最終ブレンディングは「V」ブレンダーを使用して行なった。得られたブレンドを、回転錠剤成形機で圧縮した。
【0089】
【表9】

リン酸塩緩衝液pH6.8を装填したUSP溶解装置I(100rpmでの回転バスケット)を、溶解試験に使用した。37℃で試験を実施した。UV法を使用して、溶解試料の分析を行なった。
【0090】
(実施例5:水性粒状化を使用する選択的遅延放出/長時間放出ミルナシプランの製造)
遅延放出/長時間放出ミルナシプラン医薬組成物についての、成分、製造法および生体外溶解データ。
【0091】
EUDRAGIT L 100−55(商品名ACRYL−EZE)を使用して、長時間放出コアのまわりの遅延放出被覆物を形成した。ロット番号8の長時間放出核錠(実施例4参照)を、24”Accelacota Panにおいて被覆し、種々の遅延放出被覆物含有量(重量増加、w/w)を有する試料を収集した。経口投与した場合に錠剤が暴露される生体内条件(酸性pHの胃において約2時間、次に、中性pHの腸において約16〜18時間)を模倣した生体外溶解試験に、試料を付した。(Multiparticulate Oral Drug Delivery,1994,Chebre−Sellassie I.編、Marcel Dekker,Inc.;Wilding I.R.,2001,Adv.Drug Deliv.Rev.,46:103−124)。
【0092】
遅延放出/長時間放出錠剤の生体外溶解データ。USP溶解装置I(100rpmでの回転バスケット)を使用した。溶解媒質は、最初の2時間は0.1N HCl、次に、リン酸塩緩衝液pH6.8であった。全ての溶解試験を37℃で行なった。UV法を試料分析に使用した。総薬剤放出(%)を、インキュベーション時間の関数として示す。
【0093】
【表10】

(実施例6:選択的長時間放出核錠)
長時間放出核錠を前記のように製造した。好ましい数値および範囲を示す。
【0094】
【表11】

(実施例6:選択的遅延放出被覆錠剤)
ロット番号14の長時間放出核錠を使用して、腸溶性被覆錠剤のパイロットバッチを製造した。遅延放出/長時間放出錠剤、ロット番号15(生物学的利用能試験用の2,000錠のパイロットパッチ)を前記のように製造したが、但し、遅延放出被覆物の適用の前に、付加的Opadryシールコート(seal coat)を長時間放出コアに適用した。好ましい数値および範囲を下記に示す。
【0095】
遅延放出被覆物ロット番号15(生物学的利用能試験用の2,000錠パイロットバッチ)
【0096】
【表12】

(実施例7:遅延放出/長時間放出製剤の薬物動態)
遅延放出/長時間放出錠剤、ロット番号15を、生物学的利用能試験に使用した(配合成分および製造法については実施例5および6参照)。
【0097】
ロット番号15の遅延放出/長時間放出錠剤についての生体外溶解データを下記に示す。USP溶解装置I(100rpmにおける回転バスケット)を使用した。溶解媒質は、最初の2時間は0.1N HCl、次に、リン酸塩緩衝液pH6.8であった。全ての溶解試験を37℃で行なった。下記のHPLC法を試料分析に使用した:カラムInertsil ODS−3V、4.6x250mm;検出波長230nm、注入容量20μL、移動相:緩衝剤/メタノール(40:60)混合物。TEA 1mLを50mMオルトリン酸二水素ナトリウム溶液400mLに添加することによって、緩衝剤を調製した。オルトリン酸を使用して、pHを3に調節した。
【0098】
【表13】

濃度−時間血漿プロフィールを決定する生物学的利用能試験を、平均年齢24才(範囲:20〜35才)の健康な男性被験者に関して行なった。試験を、単一用量試験として行なった。
【0099】
実施例6(ロット番号15)の製剤に対応するミルナシプラン120mg遅延放出/長時間放出錠剤を、12人の健康な被験者に投与した。錠剤を投与する前に、被験者に標準的朝食を与えた。
【0100】
投与前(0時間)、および投与後0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、12.0、14.0、16.0、18.0、20.0および24.0時間において、血液試料を採取した。認可高性能液体クロマトグラフィー法(LC/MS)を使用して、血漿試料をミルナシプランに関して分析した。
【0101】
ミルナシプラン120mg遅延放出/長時間放出錠剤についての、平均血漿濃度−時間プロフィールを図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、遅延放出/長時間放出ミルナシプラン製剤(120mgミルナシプラン/錠)を健康な男性ヒト患者に投与した後の、時間(時)経過における平均ミルナシプラン血漿濃度(PPB)のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルナシプラン処方物であって、該処方物を必要とする患者に投与した場合に、約24時間にわたって治療効果を生じるために、ミルナシプランの遅延放出または長時間放出を提供し、一つ以上の即時放出ミルナシプラン副作用に関連する発生率の減少および強度の低減を伴なって提供する、処方物。
【請求項2】
前記副作用が吐き気である、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項3】
前記副作用が、嘔吐、頭痛、震え、不安、パニック発作、動悸、尿閉、起立性低血圧、発汗、胸痛、発疹、体重増加、腰痛、便秘、めまい、発汗増加、心的動揺、顔面潮紅、振せん、疲労、傾眠、消化不良、排尿障害、神経質、口内乾燥、腹痛、癇癪および不眠からなる群より選択される、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項4】
請求項1に記載のミルナシプラン処方物であって、該処方物は、4時間までの時間にわたって総用量の約10%未満の放出、その後の緩慢または長時間の薬物放出によって特徴付けられるミルナシプラン放出プロフィールを有する、ミルナシプラン処方物。
【請求項5】
前記規定した時間が約4時間と約24時間の間である、請求項4に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項6】
請求項1に記載のミルナシプラン処方物であって、4〜10時間におけるTmax、および約3000ng/mL未満のCmaxによって特徴付けられるミルナシプラン血漿レベルを提供する、ミルナシプラン処方物。
【請求項7】
請求項6に記載のミルナシプラン処方物であって、約2000ng/ml未満のCmaxによって特徴付けられるミルナシプラン血漿レベルを提供する、ミルナシプラン処方物。
【請求項8】
請求項6に記載のミルナシプラン処方物であって、約1000ng/ml未満のCmaxによって特徴付けられるるミルナシプラン血漿レベルを提供する、ミルナシプラン処方物。
【請求項9】
請求項1に記載のミルナシプラン処方物であって、鎮痛薬、抗炎症薬、解熱薬、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、喘息治療薬、心臓血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作用薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経作用薬、興奮薬、食欲抑制薬および抗睡眠薬からなる群より選択される少なくとも一つの他の活性化合物をさらに含有する、ミルナシプラン処方物。
【請求項10】
請求項9に記載のミルナシプラン処方物であって、該処方物は、アセクロフェナク、アセトアミノフェン、アドメキセチン、アルモトリプタン、アルプラゾラム、アマンタジン、アムシノニド、アミノシクロプロパン、アミトリプチリン、アモロジピン、アモキサピン、アンフェタミン、アリピプラゾール、アスピリン、アトモキセチン、アザセトロン、アザタジン、ベクロメタゾン、ベナクチジン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ベタメタゾン、ビシファジン、ブロモクリプチン、ブデソニド、ブプレノルフィン、ブプロピオン、ブスピロン、ブトルファノール、ブトリプチリン、カフェイン、カルバマゼピン、カルビドパ、カリソプロドール、セレコキシブ、クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、サリチル酸コリン、シタロプラム、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、クロニタゼン、クロラゼペート、クロチアゼパム、クロキサゾラム、クロザピン、コデイン、コルチコステロン、コルチゾン、シクロベンザプリン、シプロヘプタジン、デメキシプチリン、デシプラミン、デソモルヒネ、デキサメタゾン、デキサナビノール、硫酸デキストロアンフェタミン、デキストロモルアミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアゼパム、ジベンゼピン、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロモルヒネ、ジメタクリン、ジバルプロックス、ジザトリプタン、ドラセトロン、ドネペジル、ドチエピン、ドキセピン、デュロキセチン、エルゴタミン、エスシタロプラム、エスタゾラム、エトスクシミド、エトドラク、フェモキセチン、フェナメート、フェノプロフェン、フェンタニール、フルジアゼパム、フルオキセチン、フルフェナジン、フルラゼパム、フルルビプロフェン、フルタゾラム、フルボキサミン、フロバトリプタン、ガバペンチン、ガランタミン、ジェピロン、イチョウ、グラニセトロン、ハロペリドール、ヒューペルジンA、ヒドロコドン、ヒドロコルチゾン、ヒドロモルホン、ヒドロキシジン、イブプロフェン、イミプラミン、インジプロン、インドメタシン、インドプロフェン、イプリンドール、イプサピロン、ケタセリン、ケトプロフェン、ケトロラク、レソピトロン、レボドパ、リパーゼ、ロフェプラミン、ロラゼパム、ロクサピン、マプロチリン、マチンドール、メフェナム酸、メラトニン、メリトラセン、メマンチン、メペリジン、メプロバメート、メサラミン、メタプラミン、メタキサロン、メタドン、メタドン、メタンフェタミン、メトカルバモール、メチルドパ、メチルフェニデート、メチルサリチレート、メチセルジド、メトクロプラミド、ミアンセリン、ミフェプリストン、ミルナシプラン、ミナプリン、ミルタザピン、モクロベマイド、モダフィニル、モリンドン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、ナブメトン、ナドロール、ナプロキセン、ナラトリプタン、ネファゾドン、ニューロンチン、ノミフェンシン、ノルトリプチリン、オランザピン、オルサラジン、オンダンセトロン、オピプラモール、オルフェナドリン、オキサフロザン、オキサプラジン、オキサゼパム、オキシトリプタン、オキシコドン、オキシモルホン、パンクレリパーゼ、パレコキシブ、パロキセチン、ペモリン、ペンタゾシン、ペプシン、パーフェナジン、フェナセチン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェニルブタゾン、フェニトイン、ホスファチジルセリン、ピモジド、ピルリンドール、ピロキシカム、ピゾチフェン、ピゾチリン、プラミペキソール、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレガバリン、プロパノロール、プロピゼピン、プロポキシフェン、プロトリプチリン、クアゼパム、キヌプラミン、レボキシチン、レセルピン、リスペリドン、リタンセリン、リバスチグミン、リザトリプタン、ロフェコキシブ、ロピニロ−ル、ロチゴチン、サルサラート、セルトラリン、シブトラミン、シルデナフィル、スルファサラジン、スリンダク、スマトリプタン、タクリン、テマゼパム、テトラベノジン、サイアザイド、チオリダジン、チオチキセン、チアプリド、チアシピロン、チザニジン、トフェナシン、トルメチン、トロキサトン、トピラメート、トラマドール、トラゾドン、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トリメトベンズアミド、トリミプラミン、トロピセトロン、バルデコキシブ、パルプロ酸、ベンラファキシン、ヴィロキサジン、ビタミンE、ジメルジン、ジプラシドン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、およびそれらの異性体、塩およびそれらの組合せからなる群より選択される化合物を含有する、ミルナシプラン処方物。
【請求項11】
前記ミルナシプランが、該ミルナシプランの右旋性または左旋性エナンチオマーまたはそれらの薬学的に受容可能な塩の治療相当用量の形態である、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項12】
前記ミルナシプランが、ミルナシプランエナンチオマーまたはそれらの薬学的に受容可能な塩の混合物の治療相当用量の形態である、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項13】
前記ミルナシプランが、ミルナシプランの活性代謝産物またはそれらの薬学的に受容可能な塩の治療相当用量の形態である、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項14】
前記ミルナシプランが、パラヒドロキシ−ミルナシプラン(F2782)またはそれらの薬学的に受容可能な塩の治療相当用量の形態である、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項15】
腸溶性被覆物を含有する、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項16】
投与可能なミルナシプラン単位用量が25〜500mgである、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項17】
投与可能なミナシプラン単位用量が200〜500mgである、請求項1に記載のミルナシプラン処方物。
【請求項18】
25〜500mgのミルナシプランおよび100〜600mgのモダフィニルを含有する、請求項9に記載の処方物。
【請求項19】
ミルナシプラン処方物であって、該処方物を必要とする患者に投与した場合に、約24時間にわたってミルナシプランの治療的に有効量の長時間放出を可能にするミルナシプラン処方物であって、該処方物は、以下
腸溶性被覆物で被覆された長時間放出ミルナシプラン処方物であって、該腸溶性被覆処方物は、胃の中においてインタクトなままであるかまたは実質的にインタクトであるが、該処方物が一旦小腸に到達すると、投薬形態の内容物を一定の期間にわたって溶解かつ放出し、夜間に定常状態レベルに戻る前に、長時間治療的ミルナシプラン血漿レベルを生じて睡眠障害を防止する、処方物、
を含有する、ミルナシプラン処方物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のミルナシプラン処方物を含有する、キット。
【請求項21】
投薬量の段階的増加を可能にするために種々の投与量単位のミルナシプランを備える、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
1日1回、就寝前に前記処方物を摂取することについての説明書を備える、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の処方物を提供する工程を包含する、ミルナシプラン処方物の製造法。
【請求項24】
ミルナシプランの治療用量を、ミルナシプランを必要とする患者に送達するための方法であって、一般的ミルナシプラン副作用の発生率の減少または強度の低減を伴ない、請求項1〜19のいずれか1項に記載のミルナシプラン処方物、または請求項20〜22に記載のキットを、該ミルナシプラン処方物を必要とする患者に与える工程を包含する、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−503918(P2006−503918A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501653(P2005−501653)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033492
【国際公開番号】WO2004/037190
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505080909)コルジウム ファーマシューティカル, インコーポレイテッド (2)
【出願人】(504045075)サイプレス バイオサイエンス, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】