説明

ムスカリンM3アンタゴニストのナパジシル酸塩

本発明は、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩、それを含む医薬組成物、および治療におけるその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスカリンアンタゴニストの塩、それを含む医薬組成物および治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ムスカリン受容体は、5種のファミリーメンバーM、M、M、MおよびMを有するG−タンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーである。5種のムスカリンサブタイプのうち、3種が(M、MおよびM)が、ヒト肺組織で生理学的効果を発揮することが知られている。副交感神経が、ヒト気道における反射的気管支収縮の主経路であり、ムスカリン受容体上にアセチルコリンを遊離することにより気道緊張を仲介する。気道緊張は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器障害の患者で増進しており、そのため、ムスカリン受容体アンタゴニストが気道疾患処理における使用のために開発されている。診療においてはしばしば抗コリン剤とも呼ばれるムスカリン受容体アンタゴニストは、COPDの個体の第一線治療として広範囲な承認を得ており、その使用は文献に詳細にレビューされている(例えばLee et al, Current Opinion in Pharmacology 2001,1, 223-229)。
【0003】
呼吸器障害の処置に使用されるとき、ムスカリン受容体アンタゴニストは典型的に吸入により投与される。しかしながら、吸入により投与されるとき、相当な割合のムスカリン受容体アンタゴニストがしばしば全身循環に吸収され、口渇のような報告されている副作用を引き起こす。加えて、ムスカリンアンタゴニストの大部分は相対的に作用が短時間であり、1日に数回投与することが必要である。このような1日複数回投与は患者にとって不便であるだけでなく、また頻繁に繰り返される投薬スケジュールに付随する患者のノンコンプライアンスのために不適切な処置の顕著な危険性も生じる。したがって、ムスカリン受容体を遮断できる新規化合物に対する必要性が存在し続けている。特に、強力で、吸入により投与したときの全身副作用が少ない新規ムスカリンアンタゴニストに対する必要性が存在する。さらに、吸入により投与したときに長時間作用を示し、1日1回または2回投与が可能である新規ムスカリンアンタゴニストに対する必要性が存在する。
【0004】
医薬製剤の製造において、活性化合物が、商業的に価値ある製造工程を得るために好都合に取り扱いでき、加工できる形であることが重要である。これに関連して、活性化合物の化学的安定性および物理的安定性は重要な因子である。活性化合物、およびそれを含む製剤は、活性化合物の物理化学的特徴(例えば化学組成、密度、吸湿性および溶解性)に何等顕著な変化なく、許容できる期間にわたり有効に貯蔵できなければならない。
【0005】
さらに、活性化合物が肺投与用製剤に含まれる場合には、活性化合物が良好な流動特性を有し、高い微細な結晶性粒子画分(すなわち活性化合物粒子が10μm(マイクロメーター)未満の空気動力学的中央粒子径を有する画分)を含む粉末を得るために容易に微粉化できるなら、それが望ましい。このような画分は、活性化合物の、より速く、増加した吸収をもたらす肺の深部へ運ばれることができる。
【0006】
国際特許出願WO2007/017669(PCT/GB2006/002956)は、M3受容体上に強力な作用を示す新規クラスのムスカリンアンタゴニストを記載している。PCT/GB2006/002956に記載されている一つのこのようなムスカリンアンタゴニストは、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムメタンスルホン酸塩である。PCT/GB2006/002956に記載されている[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシルーヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムメタンスルホン酸塩の製造方法は、結晶ではなく、それ故に微粉化および肺投与に適する非結晶固体をもたらす。本発明により、良好な物理化学的特性を有し、肺投与用乾燥粉末製剤における使用に適し得る別の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウム塩を製造することが可能であることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
それ故、本発明によって、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムのナパジシル酸(ナフタレン−1,5−ジスルホン酸)塩である塩が提供される。本明細書において、この塩は‘ナパジシル酸塩’と呼ぶ。
【0008】
本発明の塩は、ここでは、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩と呼ぶ。名称[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムは、MDL Information Systems Inc.から供給される、IsisDraw Version 2.5用のAutonom 2000プラグインを使用して作製し、図Aに記載する構造を意味する。立体化学は、Cahn-Ingold-Prelogシステムに従い割り当てた。
【化1】

【0009】
本発明のナパジシル酸塩のカチオン/アニオン比は変わってよく、そして例えば1:1または2:1であるかまたは1:1と2:1の間の値であり得る。
【0010】
本発明の一態様において、本ナパジシル酸塩は2:1のカチオン/アニオン比を有し、すなわちそれは図Bに記載する[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩である。本明細書においてこの塩を‘ヘミ−ナパジシル酸塩’と呼び得る。
【化2】

【0011】
本発明は、本ナパジシル酸塩の溶媒和物(例えば水和物)を包含する。
【0012】
本発明の一態様において、本ナパジシル酸塩は結晶性特性を有し、好ましくは少なくとも50%結晶性、より好ましくは少なくとも60%結晶性、なおさらに好ましくは少なくとも70%結晶性および最も好ましくは少なくとも80%結晶性である。結晶化度は、慣用のX線回折法技術により概算できる。
【0013】
本発明の他の態様において、本ナパジシル酸塩は50%、60%、70%、80%または90%から95%、96%、97%、98%、99%または100%結晶性である。
【0014】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の結晶形態の例は、下記に示す結晶形態Aである。それ故、一態様において、本発明は[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは、少なくとも次の特徴的X線粉末回折ピークを示す(2θ度で示す):
(1) 5.3、10.5、15.8および16.5、または
(2) 5.3、10.5、15.8、16.5、18.6および19.4または
(3) 5.3、10.5、15.8、16.5、18.6、19.4、19.7および20.4または
(4) 5.3、10.5、15.8、16.5、17.8、18.6、19.4、19.7、20.4および21.7。
【0015】
本発明はまた、5.3、7.1、9.2、10.5、10.9、11.1、11.6、12.6、13.0、13.8、14.2、15.2、15.8、16.5、17.0、17.4、17.8、18.4、18.6、19.4、19.7、20.3、20.7、21.2、21.7、22.3、22.5、22.9、23.3、25.8、26.5および27.1に特異的ピークを含むX線粉末回折パターンを有する[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)も提供する。
【0016】
本明細書において、X線粉末回折ピーク(2θ度で示す)を、1.5418Åの波長の銅X線を使用して測定する。本明細書において、特記しない限りX線粉末回折ピーク(2θ度で示す)の誤差の範囲は、米国薬局方のX線回折に関する一般的な章(USP941)と一致する − the United States Pharmacopeia Convention. X-Ray Diffraction, General Test <941>. United States Pharmacopeia, 25th ed. Rockville, MD: United States Pharmacopeial Convention; 2002:2088-2089参照。本発明の一態様において、X線粉末回折ピーク(2θ度で示す)の誤差の範囲は(±0.1°)である。
【0017】
図1は[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態AのX線粉末回折パターンを示す。本発明はまた、図1に示すものと実質的に同一のX線粉末回折パターンを有する塩形態も提供する。
【0018】
一態様において、本発明は、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供し、それは、少なくとも次の特徴的d−空間値を示す:
(1)16.8、8.4、5.6および5.4、または
(2)16.8、8.4、5.6、5.4、4.8、および4.6または
(3)16.8、8.4、5.6、5.4、4.8、4.6、4.5および4.4または
(4)16.8、8.4、5.6、5.4、5.0、4.8、4.6、4.5、4.4および4.1。
【0019】
本発明はまた、次のd−空間値を含むX線粉末回折パターンを有する[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態(塩形態A)を提供する:16.8、12.5、9.6、8.4、8.1、8.0、7.7、7.0、6.8、6.4、6.2、5.8、5.6、5.4、5.2、5.1、5.0、4.8、4.8、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、4.0、3.9、3.8、3.5、3.4および3.3。
【0020】
本発明の一態様において、塩形態Aは無水和物(すなわち水を含まない結晶相)である。
【0021】
本発明の一態様において、塩形態Aは、80%相対湿度および25℃でGVSで測定した質量増加により測定して、1%未満の水取り込み値を有する。
【0022】
本発明の一態様は、実質的に他の物理的形態がない塩形態Aを提供する。実質的に他の物理的形態がないは、ナパジシル酸塩の少なくとも90重量%、例えば90、91、92、93、94、95、96、97、98または100%がその物理的形態であることを意味する。
【0023】
本発明のナパジシル酸塩は、次の通り製造し得る:[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムブロマイドとナフタレン−1,5−ジスルホン酸二ナトリウム塩の混合物を適当な溶媒(例えばジクロロメタン/水混合物)中で反応させ、適当な温度(例えば20〜25℃)で一定時間(例えば6〜24時間)撹拌する。固体生成物を、有機層を反応混合物から分離することにより単離し得て、溶媒を蒸発させ、粗[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩を非結晶固体として得る。あるいは、固体生成物を、N−ヘプタンの反応混合物への添加により単離し得る。この混合物を撹拌し、次いで静置して、さらなる量のジクロロメタンを添加し、混合物を再び固体生成物の沈殿が得られるまで撹拌する。次いで固体を回収し、乾燥させて、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩を得る。
【0024】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態Aを、粗4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩(例えば蒸気の方法により製造した)を得て、アセトニトリル中で塩のスラリーを形成させ、そのスラリーを、スラリーが塩形態Aを含むまで撹拌し、そして最後に固体を回収し、乾燥させる。一態様において、そのスラリーを環境温度(例えば20℃)に維持する。他の態様において、そのスラリーを適当な温度まで加熱し、次いで環境温度に冷却して戻す。あるいは、塩形態Aを、粗4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩をアセトニトリルに溶解し、溶液を適当な時間(すなわちサンプルが溶液になるまで、例えば0.5〜48時間)加熱し、次いで溶液を環境温度(例えば20℃)に冷却することにより得ることができる。
【0025】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩および塩形態Aのさらなる製造法は、下記の実験セクションに記載する。
【0026】
本発明のナパジシル酸塩は、医薬として、特にムスカリン受容体(M1、M2、およびM3)アンタゴニスト、特にM3アンタゴニストを含む抗コリン剤としての活性を有する。本塩で処置し得る疾患および状態は次のものを含む:
1. 呼吸器:次のものを含む気道の閉塞性疾患:気管支、アレルギー性、内因性、外因性、運動誘発性、薬剤誘発性(アスピリンおよびNSAID誘発を含む)および粉塵誘発性喘息を含む、間欠性および永続性両方のおよび全ての重症度の、および気道過敏反応性の他の理由を含む喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);感染性および好酸球性気管支炎を含む気管支炎;気腫;気管支拡張症;嚢胞性線維症;サルコイドーシス;農夫肺および関連疾患;過敏性肺炎;原因不明線維化肺胞炎、特発性間質性肺炎、抗新生物治療ならびに、結核およびアスペルギルス症および他の真菌感染を含む慢性感染に合併する線維症を含む、肺線維症;肺移植合併症;肺脈管構造の血管炎性および血栓性障害、および肺高血圧;気道の炎症性および分泌状態と関連する慢性咳、および医原性咳の処置を含む鎮咳活性;薬物性鼻炎、および血管運動性鼻炎を含む急性および慢性鼻炎;神経性鼻炎(枯草熱)を含む通年性および季節性アレルギー性鼻炎;鼻のポリープ症;一般的な風邪、および呼吸器多核体ウイルス、インフルエンザ、コロナウイルス(SARSを含む)およびアデノウイルスによる感染を含む急性ウイルス感染;
【0027】
2. 骨および関節:原発性、および、例えば、先天的股関節異形成症に二次的の両方を含む、骨関節症/骨関節症に関連する、またはそれらを含む関節炎(arthritides);頚部および腰部脊椎炎、および背下部および頚部痛;リウマチ性関節炎およびスチル病;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎および未分化脊椎関節症(spondarthropathy)を含む血清反応陰性脊椎関節症;敗血症性関節炎および他の感染−関連関節症(arthopathies)およびポット病およびポンセ病を含む結核のような骨障害;尿酸塩痛風、ピロリン酸カルシウム沈着疾患、およびカルシウムアパタイト関連腱、滑液包および滑膜炎症を含む急性および慢性結晶誘発滑膜炎;ベーチェット病;原発性および二次性シェーグレン症候群;全身性硬化症および限局型強皮症;全身性エリテマトーデス、混合型結合組織疾患、および未分化結合組織疾患;皮膚筋炎および多発性筋炎を含む炎症性ミオパシー;リウマチ性多発筋痛症;どんな関節分布であれ特発性炎症性関節炎(arthritides)を含む若年性関節炎および関連症候群、およびリウマチ熱およびその全身合併症;巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎、顕微鏡的多発動脈炎、およびウイルス感染、過敏症反応、クリオグロブリン、およびパラプロテインと関連する脈管炎を含む、脈管炎;背下部痛;家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群、および家族性アイルランド熱(Familial Hibernian Fever)、キクチ病;薬剤誘発性関節痛(arthalgias)、腱炎(tendonititides)、およびミオパシー;
【0028】
3. 傷害[例えば運動傷害]または疾患による疼痛および筋骨格障害の結合組織リモデリング:関節炎(arthritides)(例えばリウマチ性関節炎、骨関節症、痛風または結晶性関節症)、他の関節疾患(例えば椎間板変性または側頭下顎関節変性)、骨リモデリング疾患(例えば骨粗鬆症、ページェット病または骨壊死)、多発性軟骨炎、強皮症、混合型結合組織障害、脊椎関節症または歯周疾患(例えば歯周炎);
【0029】
4. 皮膚:乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎または他の湿疹性皮膚炎、および遅延型過敏症反応;植物および光皮膚炎;脂漏性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、扁平苔癬、硬化性萎縮性苔癬、壊疽性膿皮症、皮膚サルコイド、円板状エリテマトーデス、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、毒性紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症、男性型禿頭、スウィート症候群、ウェーバー・クリスチャン症候群、多形性紅斑;感染性および非感染性両方の蜂巣炎;脂肪織炎;皮膚リンパ腫、非黒色腫皮膚癌および他の形成異常病巣;固定薬疹を含む薬剤誘発性障害;
【0030】
5. 眼:眼瞼炎;通年性および春季アレルギー性結膜炎を含む、結膜炎;虹彩炎;前部および後部ブドウ膜炎;脈絡膜炎;自己免疫性;網膜に影響する変性または炎症性障害;交感神経性眼炎を含む眼炎;サルコイドーシス;ウイルス、真菌、および細菌を含む感染;
【0031】
6. 胃腸管:舌炎、歯肉炎、歯周炎;逆流性を含む食道炎;好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む大腸炎、直腸炎、肛門掻痒症;セリアック病、過敏性腸症候群、および腸から離れて作用し得る食物関連アレルギー(例えば偏頭痛、鼻炎または湿疹);
【0032】
7. 腹部:自己免疫性、アルコール性およびウイルス性を含む肝炎;肝臓の線維症および硬変;胆嚢炎;急性および慢性両方の膵炎;
【0033】
8. 尿生殖器:間質性および糸球体腎炎を含む腎炎;ネフローゼ症候群;急性および慢性(間質性)膀胱炎およびハンナー潰瘍を含む膀胱炎;急性および慢性尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎、卵巣炎および卵管炎;外陰部腟炎;ペイロニー病;勃起不全(男女両方);
【0034】
9. 同種移植片拒絶反応:例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚または角膜の移植後または輸血後の急性および慢性のもの;または慢性移植片対宿主病;
【0035】
10. CNS:アルツハイマー病およびCJDおよびnvCJDを含む他の認知症になる障害;アミロイド症;多発性硬化症および他の脱髄症候群;脳アテローム性動脈硬化症および脈管炎;側頭動脈炎;重症筋無力症;内臓痛、頭痛、偏頭痛、三叉神経痛、非定型顔面痛、関節および骨疼痛を含む急性および慢性疼痛(中枢起源であれ末梢起源であれ、急性、間欠性または永続性の)、癌および腫瘍侵襲に起因する疼痛、糖尿病性、ヘルペス後、およびHIV関連ニューロパシーを含む神経障害性疼痛症候群;神経サルコイドーシス;悪性、感染性または自己免疫性過程の中枢および末梢神経系合併症;
【0036】
11. 橋本甲状腺炎、グレーブス病、アジソン病、真性糖尿病、特発性血小板減少性紫斑病、好酸球性筋膜炎、高IgE症候群、抗リン脂質抗体症候群を含む他の自己免疫およびアレルギー性障害;
【0037】
12. 炎症性または免疫学的要素を含む他の障害;後天性免疫不全症候群(AIDS)、ハンセン病、セザリー症候群、および新生物随伴症候群を含む;
【0038】
13. 心血管:冠血管および末梢循環に影響するアテローム性動脈硬化症;心膜炎;心筋サルコイドを含む心筋炎、炎症性および自己免疫心筋症;虚血再灌流傷害;感染性(例えば梅毒性)を含む心内膜炎、弁膜炎、および大動脈炎;脈管炎;深部静脈血栓症および静脈瘤合併症を含む、静脈炎および血栓症を含む、近位および末梢静脈の障害;
【0039】
14. 腫瘍学:前立腺、乳房、肺、卵巣、膵臓、腸および結腸、胃、皮膚および脳腫瘍および骨髄(白血病を含む)およびリンパ増殖系の悪性腫瘍、例えばホジキンおよび非ホジキンリンパ腫を含む、一般的な癌の処置;転移疾患および腫瘍再発、および新生物随伴症候群の予防および処置を含む;および
【0040】
15. 胃腸管:セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、潰瘍性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、判定不能大腸炎、過敏性腸障害、過敏性腸症候群、非炎症性下痢、腸から離れた部位に発現する食物関連アレルギー、例えば、偏頭痛、鼻炎および湿疹。
【0041】
従って、本発明は、さらに、治療において使用するための、前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩を提供する。
【0042】
他の局面において、本発明は、治療において使用するための医薬の製造における、前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩の使用を提供する。
【0043】
本明細書の文脈において、用語“治療”はまた異なる具体的な指示がない限り“予防”も含む。用語“治療する”および“治療的”もこれに従い解釈すべきである。
【0044】
本発明のさらなる局面は、該疾患に罹患している、またはそのリスクがある哺乳動物における疾患状態を処置する方法であって、そのような処置を必要とする哺乳動物に治療的有効量の前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0045】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)の処置において使用するための[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩も提供する。
【0046】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)の処置において使用するための医薬の製造における、前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩の使用も提供する。
【0047】
本発明はまた、喘息の処置において使用するための医薬の製造における、前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩の使用も提供する。
【0048】
本発明は、さらに、ヒトのような温血動物における慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば不可逆性COPD)、の処置方法であって、そのような処置を必要とする哺乳動物に有効量の前記で定義の[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0049】
ヒトのような温血動物の治療的処置に本発明の化合物を使用するために、該成分は、通常、標準的薬務に従い医薬組成物に製剤される。
【0050】
上記の治療的使用について、投与される用量は、当然、投与の方式、望む処置および適応される障害により変わるが、一般に、0.001mg/kg〜30mg/kgの範囲であり得る。
【0051】
本発明の塩はそれ自体で使用してよいが、一般に、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩(活性成分)が薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合されている医薬組成物の形で投与される。適当な医薬製剤の選択および製剤の慣用法は、例えば、“Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs”, M. E. Aulton, Churchill Livingstone, 1988に記載されている。
【0052】
投与方式によって、本医薬組成物は0.05〜99%w(重量パーセント)、より好ましくは0.05〜80%w、なおさらに好ましくは0.10〜70%w、さらに好ましくは0.10〜50%wの活性成分を含んでよく、全ての重量パーセントは全組成物に基づく。
【0053】
本発明はまた、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明は、さらに、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩と薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を混合することを含む、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。
【0055】
本医薬組成物は、局所的(例えば皮膚または肺および/または気道)に、例えば、クリーム、溶剤、懸濁剤、ヘプタフルオロアルカン(HFA)エアロゾル剤および乾燥粉末製剤、例えば、Turbuhaler(登録商標)として既知の吸入器中の製剤の形で;または全身的に、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、散剤または顆粒剤の形での経口投与で;または液剤または懸濁剤の形での非経腸投与で;または皮下投与により;または坐薬の形での直腸投与により;または経皮的に投与してよい。
【0056】
本発明の一態様において、活性成分は吸入により投与する。さらなる態様において、活性成分を乾燥粉末吸入器の手段により投与する。本吸入器は単回または多回吸入器であってよく、そして呼吸駆動型乾燥粉末吸入器であってよい。
【0057】
吸入を介して投与するとき、活性成分の投与量は、一般に0.1μg〜10000μg、0.1〜5000μg、0.1〜1000μg、0.1〜500μg、0.1〜200μg、0.1〜200μg、0.1〜100μg、0.1〜50μg、5μg〜5000μg、5〜1000μg、5〜500μg、5〜200μg、5〜100μg、5〜50μg、10〜5000μg、10〜1000μg、10〜500μg、10〜200μg、10〜100μg、10〜50μg、20〜5000μg、20〜1000μg、20〜500μg、20〜200μg、20〜100μg、20〜50μg、50〜5000μg、50〜1000μg、50〜500μg、50〜200μg、50〜100μg、100〜5000μg、100〜1000μgまたは100〜500μgの範囲であり得る。
【0058】
活性成分の乾燥粉末製剤および加圧HFAエアロゾル剤は、経口または経鼻吸入により投与し得る。吸入用に、本化合物は望ましくは微粉化される。微粉化化合物は、好ましくは10μm未満の質量中央直径を有し、C−C20脂肪酸またはその塩(例えば、オレイン酸)、胆汁酸塩、リン脂質、アルキルサッカライド、過フッ素化またはポリエトキシル化界面活性剤、または他の薬学的に許容される分散剤のような分散剤の助けを借りて、噴射剤混合物中に懸濁され得る。
【0059】
一つの可能性は、本発明の微粉化化合物と、担体物質、例えば、モノ−、ジ−またはポリサッカライド、糖アルコール、または他のポリオールとの混合である。適当な担体は糖類、例えば、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトールおよびデンプンである。あるいは微粉化化合物を他の物質でコートしてよい。粉末混合物を、各々所望量の活性化合物を含む硬ゼラチンカプセルに分配してもよい。
【0060】
他の可能性は、微粉化粉末の、吸入過程中に破壊する球体への加工である。この球体化粉末は、Turbuhaler(登録商標)(ここで、投与ユニットが所望量を定量し、次いでそれが患者により吸入される)として既知のもののような多回用量吸入器の薬剤貯蔵部に充填してよい。このシステムで、活性成分は、担体物質を伴い、または伴わず、患者に送達される。
【0061】
経口投与のために、本発明の化合物を、アジュバントまたは担体、例えば、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール;デンプン、例えば、ポテトデンプン、コーンデンプンまたはアミロペクチン;セルロース誘導体;結合剤、例えば、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン;および/または平滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、蝋、パラフィン等と混合し、次いで錠剤に圧縮してよい。被覆錠が必要であれば、上記の通りに製造したコアを、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、タルクおよび二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液で被覆してよい。あるいは、本錠剤を、易揮発性有機溶媒に溶解した適当なポリマーでコートしてよい。
【0062】
軟ゼラチンカプセル剤の製造のために、本発明の化合物を、例えば、植物油またはポリエチレングリコールと混合し得る。硬ゼラチンカプセル剤は、錠剤についての上記賦形剤のいずれかを使用した化合物の顆粒を含み得る。また本発明の化合物の液体または半固体製剤を硬ゼラチンカプセルに充填してもよい。
【0063】
経口投与用液体製剤は、シロップ剤または懸濁剤、例えば、本発明の化合物を含み、残りは糖およびエタノール、水、グリセロールおよびプロピレングリコールの混合物である液剤の形であってよい。所望により、このような液体製剤は、着色剤、香味剤、濃化剤としてサッカリンおよび/またはカルボキシメチルセルロース、または当業者に既知の他の賦形剤を含んでよい。
【0064】
本発明を、ここで、次の非限定的実施例により説明する。本実施例において、次の図が提示される:
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態AのX線粉末回折パターン。
【実施例】
【0066】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の合成
製法[1]
製法[1]の一般的実験詳記
全ての反応は、特記しない限り、窒素雰囲気下で行った。
NMRスペクトルは、400MHzで操作する5mm逆検出三重共鳴プローブと共にVarian Unity Inova 400分光計で、または400MHzで操作する5mm逆検出三重共鳴TXIプローブと共にBruker Avance DRX 400分光計で、または300MHzで操作する標準5mm二重周波数プローブと共にBruker Avance DPX 300分光計で記録した。シフトは、テトラメチルシランに対するppmで示す。
【0067】
生成物をカラムクロマトグラフィーで精製したとき、‘フラッシュシリカ’は、0.035〜0.070mm(220〜440メッシュ)のクロマトグラフィー用シリカゲル(例えばFluka silica gel 60)を意味し、10p.s.iまでの窒素圧の適用でカラム溶出を加速させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)が使用されているとき、それは、蛍光インディケーター(254nm)と共に、プレートを使用したシリカゲルTLC、典型的にアルミニウムホイルプレート上の3×6cmシリカゲル(例えばFluka 60778)を意味する。全溶媒および市販試薬は、受領したまま使用した。
【0068】
HPLCにより精製し、塩基性中心(複数もある)を含む全化合物は、特記しない限りTFA塩として得た。
【0069】
分取HPLC条件:
C18逆相カラム(100×22.5mm i.d.。7μm粒子サイズのGenesisカラム)。230nmでUV検出。
【0070】
LC/MSシステム
使用した液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)システム:
LC−MS方法1
C18逆相カラム(5μm粒子サイズの100×3.0mm Higgins Clipeus)でのWaters Platform LCT、A:水+0.1%ギ酸;B:アセトニトリル+0.1%ギ酸で溶出。勾配:
【表1】

検出 − MS、ELS、UV(インラインUVディテクターで254nmでMSのために100μl分割)
MSイオン化法 − エレクトロスプレー(陽イオン)
【0071】
LC−MS方法2
C18逆相カラム(30×4.6mm Phenomenex Luna 3μm粒子サイズ)でのWaters Micromass ZQ、A:水+0.1%ギ酸;B:アセトニトリル+0.1%ギ酸で溶出。勾配:
【表2】

検出 − MS、ELS、UV (インラインUVディテクターで254nmでMSのために100μl分割)
MSイオン化法 − エレクトロスプレー(陽および陰イオン)
【0072】
製法[1]において使用される略語:
Aq = 水性
DCM = ジクロロメタン
DMF = ジメチルホルムアミド
EtOAc = 酢酸エチル
EtOH = エタノール
GVS = 重量測定的蒸気収着
MeOH = メタノール
RT = RT
Rt = 保持時間
THF= テトラヒドロフラン
Satd = 飽和
【0073】
次の中間体1−7を、1−[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の製法[1]において使用した。
【0074】
中間体1:2−オキソ−2−フェニル−N−プロプ−2−イニル−アセトアミド
【化3】

塩化オキサリル(6.1g、48mmol)を、乾燥DCM(50mL)中フェニルグリオキシル酸(6.0g、40mmol)および3滴のDMFの溶液に添加した。反応混合物をRTで3時間撹拌し、次いで溶媒を除去した。残渣を乾燥DCM(50mL)に取り込み、溶液を0℃に冷却した。プロパルギルアミン(2.2g、40mmol)およびトリエチルアミン(4.05g、40mmol)の混合物を、10分間にわたり注意深く添加し、次いで混合物をRTに温めた。撹拌を2.5時間続け、次いで水(10mL)を添加した。混合物を1M HCl、飽和炭酸水素ナトリウム(水性)、次いで塩水で洗浄した。次いで有機相を乾燥させ(NaSO)、溶媒を除去した。残渣をシクロヘキサンから結晶化させて、生成物を明褐色固体として得た。
収量:5.75g、76%。LC−MS方法2:Rt 2.47分、m/z 188 [MH]。
【0075】
中間体2:(5−メチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノン
【化4】

メタンスルホン酸(10g、104mmol)を、1,4−ジオキサン(20mL)中の2−オキソ−2−フェニル−N−プロプ−2−イニル−アセトアミド(中間体1)(2.4g、12.83mmol)の溶液に滴下した。得られた溶液を90℃で66時間加熱した。反応混合物を冷却し、溶媒を除去した。暗色残渣をDCMおよび水に分配した。DCMフラクションを1M HCl(2x)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(水性、2x)、次いで塩水で洗浄した。溶液を乾燥させ(NaSO)、溶媒を除去して、粗生成物を得た。精製を、シクロヘキサン/EtOAc(4:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより達成した。これにより、生成物をオフホワイト色固体として得た。
収量:1.0g、41%。LC−MS方法2:Rt 2.94分、m/z 188 [MH]。
【0076】
中間体3:シクロヘキシル−(5−メチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール
【化5】

32mL乾燥THF中の(5−メチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノン(中間体2)(3.0g、16mmol)の溶液を、0℃で、窒素下、10分間にわたりジエチルエーテル中シクロヘキシルマグネシウムクロライドの2M溶液(10mL、20mmol)で滴下処理した。得られた深黄色溶液を0℃で約30分間撹拌し、その間に沈殿が形成され、次いでRTで1.5時間撹拌した。反応混合物を0℃に再冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液(水性)で注意深く処理した。混合物をRTで10分間撹拌し、次いで水(10mL)で希釈した。相を分離し、有機相を塩水で洗浄した。合わせた水性相をDCMで抽出し、合わせた有機相を乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮して、粗生成物を得て、それをエーテルでトリチュレートし、濾取し、乾燥させた。
収量:3.65g、84%。LCMS方法2:Rt 3.78分、m/z 272 [MH]。
【0077】
中間体4:(5−ブロモメチル−オキサゾール−2−イル)−シクロヘキシル−フェニル−メタノール
【化6】

1,2−ジクロロエタン(22mL)中のシクロヘキシル−(5−メチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(中間体3)(3.0g、11.1mmol)の溶液をN−ブロモ−スクシンイミド(2.16g、12.2mmol)、続いて2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(0.18g、2.1mmol)で処理した。混合物を80℃で2.5時間加熱し、次いでRTに冷却した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(水性)を添加し、相を分離した。有機層を塩水で洗浄し、合わせた水性層をDCMで抽出した。合わせた有機相を乾燥させ(MgSO)、真空で濃縮して、粗生成物を褐色油状物として得た。精製は、33−100%DCM/シクロヘキサン、続いて25%EtOAc/DCMで溶出するカラムクロマトグラフィーにより達成した。
収量:1.85g、48%。LCMS方法2:Rt 4.27分、m/z 350、352 [MH]。
【0078】
中間体5:シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール
【化7】

THF(40mL)中の(5−ブロモメチル−オキサゾール−2−イル)−シクロヘキシル−フェニル−メタノール(中間体4)(3.2g、9.2mmol)の溶液を、THF中ジメチルアミンの2M溶液(40mL、80mmol)で処理した。懸濁液が数分間撹拌後に形成された。反応混合物を、RTに一夜静置し、次いで固体を濾取し、廃棄した。濾液を減圧下濃縮し、残渣をDCMおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液(水性)に分配した。有機層を乾燥させ(NaSO)、蒸発させて、表題化合物を固体として得た。
収量:2.74g、95%。
LC−MS (方法1):Rt 6.57分、m/z 315 [MH]。
1H NMR (DMSO-d6):δ 0.92-1.29 (m, 6H), 1.42-1.74 (m, 4H), 2.10 (s, 6H), 2.22 (m, 1H), 3.45 (s, 2H), 5.90 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 7.18-7.22 (m, 1H), 7.27-7.34 (m, 2H), 7.40-7.46 (m, 2H) ppm。
【0079】
シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(中間体5)(2.74g)の2種のエナンチオマーを、5μm シリカゲル上に固定されたアミラーゼトリス(3,5−ジメチルフェニル−カルバメート)を充填した、250x20mm Chiralpak(登録商標) IAカラムを使用した分取キラルHPLCにより分離した。カラムを、15mL/分で、0.1%ジエチルアミンで緩衝化されたヘプタン中の5%EtOHで溶出した。最初に溶出するエナンチオマー(Rt 8.5分)により、(S)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(中間体5a)を白色固体として得た。
【0080】
中間体5a:(S)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール
【化8】

収量:0.73g、27%。
LC−MS (方法1):Rt 6.50分、m/z 315 [MH]。
1H NMR (CDCl3):δ 1.12-1.39 (m, 7H), 1.62-1.76 (m, 3H), 2.25 (s, 6H), 2.29-2.32 (m, 1H), 3.54 (ddAB, 2H), 3.70 (br.s, 1H), 6.84 (s, 1H), 7.24 (t, 1H), 7.33 (t, 2H), 7.64 (d, 2H) ppm。
【0081】
二番目に溶出するエナンチオマー(Rt 10.3分)により、(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(中間体5b)を白色固体として得た。
【0082】
中間体5b:(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール
【化9】

収量:1.04g、38%。
LC−MS (方法1):Rt 6.48分、m/z 315 [MH]。
1H NMR (CDCl3):δ 1.10-1.39 (m, 7H), 1.62-1.76 (m, 3H), 2.25 (s, 6H), 2.29-2.35 (m, 1H), 3.54 (ddAB, 2H), 3.70 (br.s, 1H), 6.84 (s, 1H), 7.24 (t, 1H), 7.33 (t, 2H), 7.64 (d, 2H) ppm。
【0083】
中間体6:メタンスルホン酸2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチルエステル
【化10】

乾燥DCM(10mL)中のメタンスルホニルクロライド(980μL、12.6mmol)溶液を、冷却した(0℃)乾燥DCM(10mL)中の2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エタノール(2.14g、11.46mmol)およびジイソプロピル(propy)エチルアミン(2.0mL、23mmol)の溶液にゆっくり添加した。反応混合物を一夜RTに温めた。水を添加し、有機層を乾燥させ(MgSO)、濃縮した。残渣を0−20%ジエチルエーテル/シクロヘキサンの勾配を使用するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、純粋生成物を得た。
収量:1.87g、67%。
1H NMR (CDCl3):δ 3.03 (s, 3H), 3.74 (m, 2H), 4.39 (m, 2H), 4.54 (s, 2H), 7.27 (d, 2H), 7.33 (d, 2H) ppm。
【0084】
中間体7:1−(2−ブロモ−エトキシメチル)−4−クロロ−ベンゼン
【化11】

アセトン(15mL)中、メタンスルホン酸2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチルエステル(中間体6)(1.37g、5.18mmol)およびリチウムブロマイド(1.80g、20.7mmol)の混合物を、一夜加熱還流した。反応混合物を濃縮乾固し、残渣をDCMおよび水に分配した。有機層を乾燥させ(MgSO)、濃縮し、溶離剤としてDCM/シクロヘキサン(1:3)を使用するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物を無色油状物として得た。
収量:0.67g、78%。
1H NMR (CDCl3):δ 3.49 (t, 2H), 3.79 (t, 2H), 4.55 (s, 2H), 7.30 (d, 2H), 7.32 (d, 2H) ppm。
【0085】
中間体8:[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムブロマイド
クロロホルム(4mL)およびアセトニトリル(4mL)中の(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(中間体5b)(0.40g、1.27mmol)および1−(2−ブロモ−エトキシメチル)−4−クロロ−ベンゼン(中間体7)(0.67g、2.68mmol)の溶液を、50℃で3日間加熱した。反応混合物を濃縮乾固して、黄色油状物を得て、それを2.5−25%MeOH/DCMで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物を白色泡状物として得た。収量、0.68g、92%
【化12】

LC−MS (方法1):Rt 8.72分、m/z 483 [M]。
1H NMR (CDCl3):δ 1.08-1.40 (m, 7H), 1.61-1.76 (m, 3H), 2.31 (m, 1H), 3.32 (s, 6H), 3.88 (m, 2H), 3.94 (m, 2H), 4.03 (br. s, 1H), 4.54 (s, 2H), 5.17 (ddAB, 2H), 7.21-7.26 (m, 3H), 7.28-7.34 (m, 4H), 7.46 (s, 1H), 7.56 (d, 2H) ppm。
【0086】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩
製法[1]
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムブロマイド(0.20g、0.36mmol)、(中間体8)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸二ナトリウム塩(0.059g、0.18mmol)、DCM(2.8mL)、および水(2.8mL)の混合物を、RTで一夜激しく撹拌した。N−ヘプタン(1.0mL)を添加し、混合物を激しく撹拌した。静置により、透明な2層および黄色油状物が得られた。DCM(1.0mL)を添加し(油状物を溶解させる)、混合物をRTで一夜撹拌し、白色固体の沈殿をもたらした。固体を濾過により回収し、DCM/水混合物で洗浄し、真空下、50℃で乾燥させた。
H NMRはヘミ−塩(2:1比のカチオン/アニオン)に対応するスペクトルを示した。
収量:0.17g、77%。
【化13】

LC−MS (方法1):Rt 8.62分、m/z 483 [M]。
1H NMR (CD3OD):δ 1.04-1.37 (m, 12H), 1.53 (m, 2H), 1.64-1.76 (m, 6H), 2.38 (m, 2H), 3.03 (s, 12H), 3.46 (m, 4H), 3.85 (m, 4H), 4.52 (s, 4H), 4.70 (s, 4H), 7.24 (m, 2H), 7.34 (m, 12H), 7.43 (s, 2H), 7.52 (m, 6H), 8.20 (d, 2H), 9.02 (d, 2H) ppm。
【0087】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の‘塩形態A’
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩(上記の通り製造)(107mg、0.17mmol)を、最小量のMeCNにRTで溶解させた。溶液を加熱し、次いで再びRTに冷却した。得られた結晶性固体を濾取し、真空下乾燥させた。収量:83mg、78%。この経路で製造した生成物の分析はXRPDにより、本生成物を‘塩形態A’として同定した。
【0088】
製法[2]
製法[2]の一般的実験条件
全反応は、特記しない限り、不活性ガス雰囲気下で行った。
NMRスペクトルをBruker AVANCE400分光計:周波数:400MHz;2チャンネル;z勾配。温度範囲:0−120℃で得た。
【0089】
HPLC条件:
Phenomenex Luna C18(2)カラム(50×4.6mm)、3μm粒子サイズ。210nmでUV検出。A:水+0.05%トリフルオロ酢酸;B:アセトニトリル+0.05%トリフルオロ酢酸で溶出。勾配:
【表3】

LC−MS方法:上記のLC方法。MS:HP-1100 MSD。検出 − API−ES、陽モード。
【0090】
製法[2]
2−プロパノール(5体積)中の(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(1当量)および1−(2−ブロモ−エトキシメチル)−4−クロロ−ベンゼン(2当量)の混合物を、52℃で164時間加熱した。HPLCは98%の変換を示した。反応混合物を蒸発乾固して、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムブロマイドを得た。[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムブロマイドの粗サンプルをジクロロメタン(4.98体積)に溶解し、水(10体積)中1,5−ナフタレンジスルホン酸ジ−ナトリウム塩(1当量)の溶液を、室温で10分間にわたり添加した。混合物をジクロロメタン(4.98体積)で希釈し、1時間、室温で撹拌した。スターラーをオフにし、エマルジョンを落ち着かせて、その後分離した。有機層に、tert−ブチルメチルエーテル(tBME)(10体積)および2−プロパノール(1.6体積)の混合物を、室温で72分間にわたり添加した。得られた懸濁液を濾過し、ケーキをtBME(2.15体積)で濯いだ。乾燥(40−50℃の浴温度で5−10mbarのロータリーエバポレーター)により、[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩を得た。130gの(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールを使用してこの製法により得られた収量は216g、83%であった。H NMRは、ヘミ−塩(2:1比のカチオン/アニオン)に対応するスペクトルを示した。
【0091】
‘塩形態A’への変換は、上記の通りに製造した[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩のアセトニトリル(13.8体積)中の粗バッチの懸濁により達成した。懸濁液を加熱還流し、還流で1時間撹拌した。次いで懸濁液を70℃に冷却し、この温度で一夜撹拌した。懸濁液を室温に冷却し、固体を濾過し、アセトニトリル(1.4体積)で洗浄し、乾燥(40−50℃の浴温度で5−10mbarのロータリーエバポレーター)させて、‘塩形態A’を得た。216gの粗[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩を出発物質として使用してこの製法により得られた収量は203.5g、94%であった。
(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(metahnol)は、製法[1]において上記の中間体5bである。(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールの製造の別法は次の通りである。
【0092】
(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール
(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾ−2−イル)−フェニル−メタノンをTHF(8.4L/kg)に溶解し、0±5℃の温度まで冷却し、それにシクロヘキシルマグネシウムクロライド(1.3当量、トルエン/THF中20w/w%溶液として)を、少なくとも1時間(h)にわたり添加した。反応混合物を20℃で40分間にわたり加熱し、20℃で少なくとも1時間撹拌し、その時点で、HPLCによると生成物への変換は>96%であった。反応混合物を、23.1w/w%NHCl(3.97L/kg)および水(3.97L/kg)の混合物に添加した。相を分離し、水性層を酢酸エチル(7L/kg)で抽出した。合わせた有機層を水(5.25L/kg)で洗浄し、体積の70%を蒸留により除いた(p≧130mbar、50℃)。蒸留残渣に、アセトニトリル(7.82L/kg)を添加し、懸濁液を完全に溶解するまで加熱した(70℃)。次いで反応物を0℃に7時間にわたり冷却し、0℃で少なくとも1時間撹拌した。次いで反応生成物(±)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールを濾過により回収し、冷アセトニトリル(1.65L/kg)で3回洗浄した。この方法により達成される収率は60−70%の範囲であり、達成される純度は>97%ピーク面積(HPLC)および>97%w/w(NMR)であった。(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールを、溶離剤としてアセトニトリル:イソプロパノール:ジエチルメチルアミン(90:10:0.1)を使用する、Chiralpak ADカラムでのキラルSMBクロマトグラフィーによりこのラセミ混合物から分離した。
(5−ジメチルアミノメチル−オキサゾ−2−イル)−フェニル−メタノンの製造はWO2007/017669(中間体4)に記載されている。
【0093】
製法[3]
製法[3]の一般的実験条件は製法[2]のものと同じである
2−プロパノール(5体積)中の(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノール(1当量)および1−(2−ブロモ−エトキシメチル)−4−クロロ−ベンゼン(2当量)の混合物を次の温度プログラムに付した:
1時間にわたる70℃(内部温度)までの加熱、70℃で26時間の撹拌、次いで30分間にわたる20℃までの冷却。変換はHPLCで確認する。
反応混合物を蒸発乾固し(40−50℃の浴温度で5−10mbarのロータリーエバポレーター)、残渣をジクロロメタン(8.9体積)に溶解した。溶液に、水(17.7体積)中1,5−ナフタレンジスルホン酸ジ−ナトリウム塩(1当量)の溶液を少なくとも10分間にわたり添加した。得られた混合物をジクロロメタン(8.9体積)で希釈し、撹拌を室温で1時間続けた。スターラーをオフにし、エマルジョンを落ち着かせて、その後分離した。有機層に、少なくとも60分間にわたり、室温で、tBME(17.7体積)および2−プロパノール(2.86体積)の混合物を添加した。形成した懸濁液を室温で10〜60分間撹拌し、次いで濾過した。フィルターケーキをtBME(2×3.46体積)で洗浄し、乾燥減量(LOD)≦2w/w%が得られるまで乾燥させる(40−50℃の浴温度で5−10mbarのロータリーエバポレーター)。この物質を(22.9体積)のアセトニトリルに懸濁し、懸濁液を次の温度プログラムに付した:
少なくとも30分間にわたる加熱還流。還流で60〜70分間の撹拌、次いで70℃(内部温度)への冷却、70℃で16〜24時間の撹拌、そして最後に1時間にわたる20℃までの冷却。懸濁液を濾過し、フィルターケーキをアセトニトリル(4.61体積)で線上した。この物質を、LOD≦1w/w%が得られるまで乾燥させた(40−50℃の浴温度で5−10mbarのロータリーエバポレーター)。
【0094】
25.0gの(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールを使用して、この製法で得られた収量は38.7g、78%であった。
129.9gの(R)−シクロヘキシル−(5−ジメチルアミノメチルオキサゾール−2−イル)−フェニル−メタノールを使用して、この製法で得られた収量は203.6g、79%であった。
HPLCおよびNMRは、ヘミ−塩(2:1比のカチオン/アニオン)に対応するスペクトルを示した。
【0095】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩の塩形態Aの固体状態分析
製法[2]に従い製造した‘塩形態A’を次の通り試験した。
【0096】
装置詳細
○ XRPD − PANalytical CubiX PROマシンで、0.02°インクリメントあたり100秒暴露での、走査範囲2°〜40° 2φにわたるφ−φ配置。X線を45kVおよび40mAで操作する銅の長−高精度焦点管で発生させた。銅X線の波長は1.5418Åであった。データを〜2mgの本化合物を載せたゼロ背景ホルダー上に回収した。ホルダーはシリコンの単結晶製であり、それは、非回折平面に沿って切断され、次いで光学的平面仕上げに磨いた。Xこの表面へのX線投射は、Bragg消光により打ち消された。
○ DSCサーモグラムを、アルミニウム・パンおよび穿孔した蓋と共に、TA Q1000示差走査熱量計を使用して測定した。サンプル重量は0.5〜5mg。の間で変化した。本工程は、窒素ガス流(50ml/分)下で、10℃/分で一定速度で温度を上昇させて、25〜300℃の試験温度で行った。
○ TGAサーモグラムは、白金パンを用い、TA Q500熱重量分析器を使用して測定した。サンプル重量は1〜5mgの間で変化した。本工程は、窒素ガス流(60ml/分)下で、10℃/分で一定速度で温度を上昇させて、25〜200℃の試験温度で行った。
○ GVSプロファイルを、Dynamic Vapour Sorption DVS-1装置を使用して測定した。固体サンプル約1−5mgをガラス容器に入れ、サンプル重量を、25℃でデュアル・サイクル・ステップ方法の間記録した(10%RHの段階で40から90から0から90から0%相対湿度(RH))。
【0097】
DSCで測定した形態Aの融点は、233℃(開始)(±3℃)であることが判明した。融解前にTGAで観察された重量損失は非常に少なかった(0.0%−0.5%)。GVS測定は、80%RH(±0.3%)で0.5%(%w/w)未満の重量増加となった。
‘塩形態A’のXRPDスペクトルは図1に示す。
【0098】
‘塩形態A'を50mmジェットミルで、排出圧5barおよび製粉圧1.5−2barで微粉化し、(90%収量)を得た。乾燥粉末フィーダーを備えたMalvernLaser回折により測定した微粉化物質の粒径はd(0,1) 0,77μm:d(0,5)、1,45μ:d(0,9):2,65μmであった。微粉化‘塩形態A'の脱凝集特性の治験的評価は、相対湿度(0−75%RH)の範囲にわたり、優れた微粒子フラクション(FPF>60%)を示した。
【0099】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムの生物学的活性
本ナパジシル酸塩化合物の阻害効果を、受容体放射性リガンド結合アッセイにより測定した放射性リガンド結合試験は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)形式で、[H]−N−メチルスコポラミン([H]−NMS)およびSPAビーズ上にコートされたヒトムスカリン受容体(M2またはM3)を発現する細胞膜を使用して行った。被覆SPAビーズを、96ウェルプレート中、HEPES緩衝液中で[H]−NMSおよび種々の濃度のM3アンタゴニストと16時間インキュベートした。次いで放射性リガンド結合をWallac Microbetaシンチレーション・カウンターを使用して計測した。[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムは、9.8のM3結合pIC50を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムナパジシル酸塩。
【請求項2】
[2−(4−クロロ−ベンジルオキシ)−エチル]−[2−((R)−シクロヘキシル−ヒドロキシ−フェニル−メチル)−オキサゾール−5−イルメチル]−ジメチル−アンモニウムヘミ−ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
少なくとも次の特徴的X線粉末回折ピーク(2θ度で示す)を示す、請求項2に記載の塩:
5.3、10.5、15.8および16.5、または
5.3、10.5、15.8、16.5、18.6および19.4または
5.3、10.5、15.8、16.5、18.6、19.4、19.7および20.3または
5.3、10.5、15.8、16.5、17.8、18.6、19.4、19.7、20.4および21.7。
【請求項4】
図1と実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、請求項3に記載の塩。
【請求項5】
無水和物である、請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塩を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項7】
治療において使用するための、請求項1〜5のいずれかに記載の塩。
【請求項8】
慢性閉塞性肺疾患の処置用医薬の製造における、請求項1〜5のいずれかに記載の塩の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−518061(P2010−518061A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548738(P2009−548738)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000434
【国際公開番号】WO2008/096149
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507259730)アージェンタ ディスカバリー リミテッド (23)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】