説明

メガネフレームの樹脂製装飾部品及びその製造方法

【課題】 ポリフェニルサルホンやポリアリルサルホンなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として射出成形されるメガネ部品であって、大きく曲げても捩っても剥離することのないカラフルなメガネフレーム部品の提供。
【解決手段】 スーパーエンプラ樹脂の1kgのペレット2に対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料3,4を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入すると共に350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメガネフレームの樹脂製部品であるが、超弾性で耐熱性の高い特殊材料を用いて成形される部品を対象とし、装飾を施した部品及び該部品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガネは視力が低下した人がこれを矯正の為に着用するものであるが、掛ける場所が顔であることから、色々な装飾が施されている。近年の金属製メガネフレームはチタン材など非常に軽くてバネ製に優れた材質が好まれ、長時間にわたってメガネを掛けていても疲れが少ないように工夫されている。しかし、このような材質が好まれる背景には、メガネフレームとしての単なる機能性だけでなくスリムなメガネフレームとして構成出来るといった外観的な満足度が得られる点も大きい。
【0003】
このようにメガネフレーム自体をスリム化することでファッション性を備えて構成されることは勿論であるが、さらにカラーメッキや塗装したり、印刷を施したり、宝石等の装飾部品を取付ける等の工夫が凝らされている。しかし、樹脂製のメガネフレームの場合には金属製フレームに比較して太くなり、その装飾方法は限られている。すなわち、樹脂製のメガネフレーム自体がスリム化することに限界がある。
【0004】
そこで、「ポリフェニルサルホン」や「ポリアリルサルホン」と称される樹脂を材質として外観が金属製フレームのように細くてスリムなメガネフレームが知られている。この材料は、超弾性、耐衝撃性、及び耐熱性が高く、又変形しても破壊しにくい性質を有し、その用途は航空機や医療機器などの特殊分野に用いられている。
【0005】
特開平5−31748号に係る「メガネフレーム及びその部品並びに成形方法」は、金属フレームの相当するスリムな成形フレームであって、曲げても捩っても破壊しにくく、又耐熱性や耐薬品性の高いメガネフレームである。そこで、メガネフレームの材料として、ポリフェニルサルホン、又はポリアリルサルホンを用い、成形温度は350℃〜420℃、射出圧力2000kg/cm〜3000kg/cmの高温・高圧下にて成形される。
【0006】
ところで、このメガネフレームの材質であるポリフェニルサルホンやポリアリルサルホンなどのスーパーエンプラ樹脂は無色透明ではなく、黄色や琥珀色をしている。ところで、この材質を使用したメガネフレームを装飾する場合には、2次加工としての表面処理に限られる。例えば、表面に模様や図形を印刷したり、塗装を施すことでファッション性を向上している。しかし、超弾性を備えたメガネフレームの表面を印刷したり、塗装する場合、大きな曲げ変形に伴ってカラーコートが剥がれ落ちてしまう。
【0007】
従来の一般的な樹脂製フレームであれば、ペレットに顔料を混練し、これを射出成形するならばカラー色彩を有すメガネフレームとなる。しかし、本発明のメガネフレームを構成する上記ポリフェニルサルホンやポリアリルサルホンなどのスーパーエンプラ樹脂の成形温度は350℃〜420℃、射出圧力2000kg/cm〜3000kg/cmの高温・高圧下の条件にて成形される。その為に、混入した顔料は熱分解にて変質してしまい、真っ黒になってしまう。
【特許文献1】特開平5−31748号に係る「メガネフレーム及びその部品並びに成形方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、上記ポリフェニルサルホン又はポリアリルサルホンなどのスーパーエンプラ樹脂を用いて射出成形されたメガネフレームの装飾手段には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、超弾性を備えるスーパーエンプラ樹脂を材質としたカラフルなメガネフレームを提供する。一方、このメガネフレーム部品の成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のメガネフレームを構成する材質としてはポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、又はポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂が使用され、これに青や赤などの耐熱性の高い特殊顔料を極僅か(ペレット1kgに対して0.01g〜1g)ブレンドし、これを射出成形する。射出成形機のシリンダー内の温度は350℃〜420℃の高温と成るために、この温度に耐えて変質・変色しない特殊な顔料であることが必要である。
【0010】
顔料はペレットに混入されて均一に混合され、該ペレットはホッパーに投入されると共に、高温・高圧下にてシリンダーから金型に射出され、所定形状のメガネ部品に成形される。従って、ライトピンク、ライトブルー、ライトグレー、ブラウン、グリーンなど、混入される顔料の種類及び複数顔料の組み合わせにて多種多様な色彩を有す部品が成形される。ここで、耐熱性の高い特殊顔料とは従来一般に使用される有機顔料ではなく無機顔料である。無機顔料は鮮明な色彩を出すことが容易でないために従来避けられていたが、本発明では極少量の無機顔料を計量・混合してペレットに混入することで、色々な色彩を形成する。
【0011】
一方、メガネ部品を積層構造にて構成することが出来る。すなわち、上記方法で一方の積層部を成形し、これを金型にセットして他方の積層部を成形することで所定の部品を作り上げる。各積層部の色彩を違わせるように混入する顔料が違っている。勿論、3層構造とすることも出来るが、接合面の接合強度を高めるために互いに噛み合う凹凸面とすることもある。
【0012】
さらに、上記積層構造とした部品の接合面に耐熱性に優れた印刷シートや転写シートを介在することもある。すなわち、3重構造の部品となるが、一方の積層部を上記方法にて成形すると共に、これにシートを貼着し、そして金型にセットして他方の積層部を成形して3重積層となる。ここで、シートの材質は射出成形温度に耐え得るものでなくてはならない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るメガネフレームはポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、又はポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として射出成形したものであり、超弾性を備えるために大きく曲げたり捩ったりしても破壊することはない。そして、金属製フレームに相当する細くてスリムなメガネフレームとなり、従来の樹脂製フレームでは得ることが出来ないファッション性に優れたフレームが形成される。
【0014】
そして、該メガネフレームを構成する部品は耐熱性に優れた極僅かな顔料を混入することで、ライトピンクやライトブルーなどの色彩を備えたフレームが出来上がる。又、2層ないし3層からなる積層構造のメガネ部品とすることで、装飾効果をより向上させることが出来る。さらに、積層する接合面にシートを介在させることで、色彩と調和した部品となる。本発明では2次加工にて表面を塗装したり、印刷する方法ではないために、すなわち、ペレットに顔料を混入して成形される為に、メガネフレームを曲げても捩っても表面層の剥離現象は発生しない。
【実施例1】
【0015】
本発明に係るメガネフレームの構成部品はポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、又はポリエーテルイミドを材質とし、これに特殊顔料を混入したペレットを射出成形して作られる。上記ポリフェニルサルホンは、曲げ強度が930kg/cm(一般樹脂950kg/cm)、曲げ弾性率24500kg/cm(一般樹脂19300kg/cm)、アイゾット衝撃70kg・cm/cm(一般樹脂10kg・cm/cm)、熱変形温度207℃(一般樹脂80〜100℃)である。
【0016】
ところで、上記ポリフェニルサルホンのペレットに僅かな顔料を混入して十分に混合する。図1はペレット2を入れた容器1に顔料を混入する場合を示している。例えば、1kgのペレット2に対して青色顔料3と赤色顔料4が混入される。この場合、混入する顔料は極僅かであって、青色顔料3を0.01gと赤色顔料4を0.01g混入することが出来る。非常に僅かな量であるために、天秤量りが用いられ、小さなスプーン5に移して容器1に入れる。
【0017】
そして、上記青色顔料3と赤色顔料4がペレット2に均等に混合するように十分に攪拌され、このペレットを射出成形機のホッパーに投入する。均等に混合する方法は限定しないが、容器1を左右及び上下方向に100回程度振り動かすことで混合される。不均一な混合状態でホッパーに投入して射出成形するならば、多量の顔料を混入した場合と同じように成って、黒ずんだカラーとなってしまう。
【0018】
該ペレット2は約350℃〜420℃に加熱され、流動化されて金型に射出されるが、射出成形用の金型はその表面温度が約150℃〜230℃になるように保温される。これら成形温度及び金型保温温度は一般的な樹脂の成形に比較して約2倍となっている。特に成形温度を非常に高くすることでポリフェニルサルホンの流動性を向上させている。
【0019】
しかし、成形温度を350℃〜420℃のように高くしても、射出圧力は2000kg/cm〜3000kg/cmとし、この圧力も一般的な樹脂の射出圧力に比較して1000kg/cm高くなっている。このように、高温・高圧下で射出成形されたメガネ部品は含有した赤と青の顔料で、淡い紫色を形成することが出来る。この顔料は上記成形温度(350℃〜420℃)でも熱分解して変質、変色することのない性質を備えている。そして、混入する量が極僅かであるために淡い紫色となる。
【0020】
ここで、メガネ部品としてはフロント部、ツル、又は金属製フレームのツル先端部に挿着されるモダンが主なものであり、これら各部品は所定のカラー(例えば、ライトピンク、ライトグレー、ライトブルー、ライトレッドなど)をもって成形することが出来る。混入する顔料の量が僅かであるために、淡いカラー色となる。
【実施例2】
【0021】
一方、本発明に係るメガネ部品は単なるカラー部品ではなく、積層構造として構成する場合もある。図2はこの積層構造のメガネ部品6の成形工程を表している。図2はメガネ部品6を角棒でもって抽象的に表しているが、実際の形状はフロント部であり、ツルであり、モダンとして形成される。
【0022】
図2(a)は片側の積層部7であるが、この積層部7は上記実施例1で説明した方法によって成形される。すなわち、ポリフェニルサルホンを材質としたペレット2に僅かな顔料を混入して十分に攪拌し、これを高温・高圧下で射出成形される。本発明では独立して成形した積層部7,8を互いに接合・固定するのではなく、成形した片方の積層部7を金型にセットして反対側の積層部8を射出成形することで積層される。この場合、各積層部7,8のカラー色を違わせることで装飾性に優れたメガネ部品となる。
【0023】
勿論、図2に示すような2層に限らず、金型に再度セットして成形することで3層を有す積層構造とすることも出来る。そして、図2のメガネ部品6では同じ形状の積層部7,8が積層しているが、厚さが違い、断面が異なる積層部7,8とする場合も可能である。さらには、図3(a)に示すように積層部9に中央溝10を設け、該中央溝10には(b)のように積層部11を嵌合状態で積層することもある。
【実施例3】
【0024】
本発明に係るメガネ部品16は積層部12,13の間に耐熱性の材質からなるシール14,15を挟み込む構造とすることもある。すなわち、片方の積層部12を前記方法にて成形し、この積層部12の接合面17にシール14,15を貼り付け、これを金型にセットして反対側を再度成形して積層部13を形成する。従って、シール14,15が内部に埋着したメガネ部品16となる。
【0025】
本発明に係るメガネフレームは超弾性に優れて大きく曲げ変形でき、又捩れ変形することが出来る。従って、積層構造としたメガネ部品の場合には接合面に小さな凹凸を複数個形成し、互いに噛み合うように積層することで、接合面での滑りは防止される。すなわち、強力な積層構造となり、大きな曲げ変形及び捩れ変形に対しても剥がれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】容器に入れたペレットに僅かな顔料を混入する場合。
【図2】積層構造のメガネ部品の製造工程。
【図3】中央溝を設けた積層構造のメガネ部品の製造工程。
【図4】間にシールを挟んだ積層構造のメガネ部品の製造工程。
【符号の説明】
【0027】
1 容器
2 ペレット
3 青色顔料
4 赤色顔料
5 スプーン
6 メガネ部品
7 積層部
8 積層部
9 積層部
10 中央溝
11 積層部
12 積層部
13 積層部
14 シール
15 シール
16 メガネ部品
17 接合面



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として射出成形されるメガネ部品において、上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入すると共に350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形したことを特徴とするメガネフレームの樹脂製装飾部品。
【請求項2】
ポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として射出成形されるメガネ部品において、該メガネ部品は複数の積層部を積層して構成し、上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入すると共に350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形した積層部を金型にセットし、異なる色彩の顔料を混入したペレットを上記温度と圧力にて射出成形することで別の積層部を形成したことを特徴とするメガネフレームの樹脂製装飾部品。
【請求項3】
上記積層部の間に耐熱性のシールを挟み込んだ請求項2記載のメガネフレームの樹脂製装飾部品。
【請求項4】
ポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質としてメガネ部品を射出成形する方法において、上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入して350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形したことを特徴とするメガネフレームの樹脂製装飾部品の製造方法。
【請求項5】
ポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として積層構造のメガネ部品を射出成形する方法において、上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入して350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形して一方の積層部を形成し、そして該積層部を金型にセットして上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れると共に上記顔料とは異なる色彩を持つ別顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入して350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形して他方の積層部を形成することを特徴とするメガネフレームの樹脂製装飾部品の製造方法。
【請求項6】
上記一方の積層部に中央溝を成形し、この中央溝に他方の積層部を嵌合状態で積層する請求項5記載のメガネフレームの樹脂製装飾部品の製造方法。
【請求項7】
ポリフェニルサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルイミドなどのスーパーエンプラ樹脂を材質として積層構造のメガネ部品を射出成形する方法において、上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れた顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入して350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形して一方の積層部を形成し、そして該積層部の接合面に耐熱性のシールを貼り付け、さらに該積層部を金型にセットして上記スーパーエンプラ樹脂のペレット1kgに対して420℃の高熱下でも熱分解しない耐熱性に優れると共に上記顔料とは異なる色彩を持つ別顔料を0.01g〜1g混入して均一に混ぜ合わせ、これをホッパーに投入して350℃〜420℃の高温で、1000kg/cm〜3000kg/cmの高圧で射出成形して他方の積層部を形成することを特徴とするメガネフレームの樹脂製装飾部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−293027(P2007−293027A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120726(P2006−120726)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(599030046)有限会社ミラクル (3)
【Fターム(参考)】