説明

メソポーラスシリカ膜およびその製造方法

【課題】基板上に形成されたメソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列の均一性を向上させ、また曲面状の基板に対しても膜面内での配向の均一性の高いメソポーラスシリカ膜を提供する。
【解決手段】基板上の、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜上に形成されたメソポーラスシリカ膜であって、前記メソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列方向が基板全体にわたって、前記カーボン膜の構造異方性によって規定されている方向に対して、一定の方向に制御されているメソポーラスシリカ膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率膜や光学材料膜などに用いられるメソポーラスシリカ膜およびその製造方法に関する。より詳しくは、膜面内での細孔構造が制御されたメソポーラスシリカ膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料は、細孔径が2nm以下のマイクロポーラス、2nmから50nmのメソポーラス、50nm以上のマクロポーラスに分類され、吸着、分離など様々な分野で利用されている。ゼオライトに代表されるマイクロポーラス多孔体は、触媒等に広く応用されているが、その細孔径は最大で1.5nm程度である。そのために、ポリマーや生体材料のような材料との複合化による機能性ハイブリッド材料の合成には、さらに大きな均一な径の細孔を有する多孔体が求められていた。
【0003】
メソポーラス材料は、界面活性剤の分子集合体が鋳型となって形成される、均一なメソ細孔を有する多孔体で、多くの場合、細孔径が均一であるのみならず、細孔の配列も高い規則性を有している。チューブ状の細孔がハニカムパッキングされた構造の2次元ヘキサゴナル構造や、球状細孔が最密充填された構造の3次元ヘキサゴナル構造/キュービック構造のものが代表的であるが、その細孔構造は多様で、非常に多くの構造が知られている。
【0004】
この材料における細孔の配列の規則性は、結晶における原子配列の規則性に類似しており、それ故に、メソポーラス材料は、結晶同様、明瞭なX線回折パターンを示す。但し、構造周期が結晶よりも一桁大きいために、回折ピークは、結晶の場合よりも低角度領域に現れる。最も代表的なメソポーラス材料は、メソポーラスシリカであるが、近年、シリカ以外でも遷移金属酸化物等、多くのメソポーラス材料が報告されている。一般的には、細孔中に鋳型の界面活性剤の分子集合体が残存している状態のものをメソ構造体材料、細孔内から界面活性剤を焼成や抽出等の方法で除去したものをメソポーラス材料と呼ぶが、本発明では細孔内に界面活性剤を保持している状態のものも、メソポーラス材料と呼ぶことにする。
【0005】
上記の、規則的な細孔構造を有するメソポーラス材料を、機能性材料として工業的に使用する場合、これらの材料を基板上に均一に保持する技術が重要である。基板上に均一なメソポーラス膜を作製する方法としては、例えば非特許文献1や非特許文献2に記載されているような、ゾル−ゲル法に基づき、スピンコートやディップコートで成膜する方法がある。また、非特許文献3に記載されているような水熱合成法で固体表面に膜形成する方法がある。
【0006】
上記の成膜法で基板上に形成された膜の場合、局所的には規則的な細孔構造が形成されており、また、基板表面に対しての細孔の配向方向は決まっている。しかし、一般的に基板面内での配列方向はランダムであり、球状の細孔の場合には、面内で異なる方向に細孔が配列した複数のドメインが存在し、チューブ状細孔の場合には、チューブが面内で曲がりくねったような構造を有する。
【0007】
このような、面内での配列が制御されていない場合には、膜は、局所的には細孔の配列規則性に基づく面内異方性を有していたとしても、巨視的に見た場合には、等方的な性質を有する。例えば、チューブ状細孔のメソポーラス材料膜を考えた場合、1本のチューブは形状異方性の大きいナノスケールの空間を提供するものの、膜全体で見た場合には、1本のチューブ状細孔の異方性は配向のランダムさに隠されてしまう。
【0008】
従って、メソポーラス材料膜中の面内における細孔の配列方向を制御することができれば、面内で物性の異方性を示すような、複合材料膜を作製することが可能である。メソポーラスシリカ膜において、膜面内での細孔の配列方向を制御する技術はいくつか知られている。特許文献1には2回対称性を有する結晶面を用いて配向制御する技術が、特許文献2および3には配向性高分子膜を用いて配向制御する技術が開示されている。また、特許文献4には偏光照射した光反応性高分子膜を用いて配向制御する技術が開示されている。
【0009】
細孔の面内配向が制御されたメソポーラス膜の応用として、メソポーラスシリカ膜の配向性チューブ状細孔に発光性半導体高分子化合物を導入した有機−無機複合材料を、低閾値でレーザー発振する発光材料に用いた例などが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4077970号公報
【特許文献2】特許第3587373号公報
【特許文献3】特開2005−246369号公報
【特許文献4】特開2005−272532号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemical Communications、1996巻、1149頁
【非特許文献2】Nature、389巻、364頁
【非特許文献3】Nature、379巻、703頁
【非特許文献4】Nature Nanotechnology、2巻、647頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載された技術は、基板は単結晶の基板に限定されるものである。
特許文献2および3に記載された技術は、基板材質に大きな限定はないが、高分子膜に分子鎖の配向性を付与するために、基板上に形成した高分子膜の表面への機械的接触が必須である場合が多く、使用可能な基板の形状は平面状のものに限定される。また、配向制御性は優れているが、基板面内で配向制御性にムラができることがある。
【0013】
また、特許文献4に記載された技術は、高分子膜に非接触で配向性の付与が可能であるが、複雑な構造の光架橋性高分子化合物の合成が必要で、さらに高分子の塗布後、熱処理を挟んだ2度の紫外光照射が必要であるなど、プロセスが非常に煩雑である。さらに、配向方向の分布が広く、配向制御性が比較的低い。
【0014】
本発明は、上記問題点を鑑みなされたもので、基板上に形成されたメソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列の均一性を向上させ、また曲面状の基板に対しても膜面内での配向の均一性の高いメソポーラスシリカ膜を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、簡単なプロセスにより、膜面内での細孔配列の均一性を向上させたメソポーラスシリカ膜の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するメソポーラスシリカ膜は、基板上の、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜上に形成されメソポーラスシリカ膜であって、前記メソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列方向が基板全体にわたって、前記カーボン膜の構造異方性によって規定されている方向に対して、一定の方向に制御されていることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するメソポーラスシリカ膜の製造方法は、基板上に、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成する工程と、前記カーボン膜上に、細孔の膜面内での配列方向が一定の方向に制御されているシリカメソ構造体膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板上に形成されたメソポーラスシリカ膜の膜面内での細孔配列の均一性を向上させ、また曲面状の基板に対しても膜面内での配向の均一性の高いメソポーラスシリカ膜を提供することができる。
【0019】
また、本発明は、簡単なプロセスにより、膜面内での細孔配列の均一性を向上させたメソポーラスシリカ膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のメソポーラスシリカ膜の構成を示す模式図である。
【図2】本発明のメソポーラスシリカ膜中での細孔の面内での配向を説明する模式図である。
【図3】本発明におけるカーボン膜の斜方成膜法を説明する模式図である。
【図4】本発明における傾斜カラムから構成されるカーボン膜の構造を説明する模式図である。
【図5】本発明におけるカーボン膜の成膜に用いられる、フィルタードアークデポジション成膜装置の構成を説明する模式図である。
【図6】焼成によってカーボン膜が焼失した際の、本発明のメソポーラスシリカ膜の構成を説明する模式図である。
【図7】本発明に用いられる、ディップコーティングに用いる装置の一例の構成を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例1で作製した、構造異方性を有する非単結晶性カーボン膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】本発明に用いられる、構造異方性を有する非単結晶性カーボン膜に、X線をgrazing incidenceで入射させ、反射モードでX線散乱強度を測定する配置と、得られるパターンを説明する模式図である。
【図10】本発明の実施例1で作製した、構造異方性を有する非単結晶性カーボン膜に、X線をgrazing incidenceで入射させ、反射モードでX線散乱強度を測定して得られたパターンと、そこから読み取れるカラムの傾斜角度を示す図である。
【図11】本発明の実施例1で、成膜角度を変化させて作製したカーボン膜上に、水熱合成法で作製したメソポーラスシリカ膜中の細孔の配向を、面内X線回折分析によって評価した結果の、面内ロッキングカーブである。
【図12】本発明の実施例2で、成膜角度75度で作製したカーボン膜上に、水熱合成法で作製したメソポーラスシリカ膜中の細孔の面内配列を、面内X線回折分析によって評価した結果の、面内ロッキングカーブである。
【図13】本発明の比較例に用いた、SiO斜法蒸着膜の断面の走査電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るメソポーラスシリカ膜は、基板上の、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜上に形成されメソポーラスシリカ膜であって、前記メソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列方向が基板全体にわたって、前記カーボン膜の構造異方性によって規定されている方向に対して、一定の方向に制御されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るシリカメソ構造体の製造方法は、基板上に、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成する工程と、前記カーボン膜上に、細孔の膜面内での配列方向が一定の方向に制御されているシリカメソ構造体膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明のメソポーラスシリカ膜の構成を示す模式図である。図1(A)は立体的に描いた模式図、図1(B)はその断面図である。図1において、11は基板、12は構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜、13はメソ細孔、14は細孔壁、15はメソポーラスシリカ膜である。18は膜面を示す。
【0024】
本発明のメソポーラスシリカ膜15は、基板上に形成されており、その細孔の配列方向が膜面内で、一定の方向に制御されている。
図2は、本発明のメソポーラスシリカ膜中での細孔の膜面内での配向を説明する模式図である。
【0025】
本発明において、メソポーラスシリカの細孔構造は、例えば、チューブ状のメソ細孔13がハニカムパッキングした、2次元ヘキサゴナル構造のものがある。例えば、図1及び図2Aに模式的に示した構造のものである。ヘキサゴナル構造は、完全に断面が正6角形のもの以外にも、例えば、膜厚方向に収縮して、メソ細孔の断面が楕円状になったものでも良い。図2Aでは、矢印の方向が細孔の配列方向である。
【0026】
また、本発明のメソポーラスシリカ膜の細孔構造は球状の細孔が六方最密充填した3次元ヘキサゴナル構造であっても良い。例えば、図2Bに示した構造のもので、球状細孔の配置が面内で同一方向に配置している。球状細孔の最密充填では、球状細孔は面内で正三角形を形成するために、面内で等価な3つの配列方向があることになる。球状細孔は、完全な球状でなく、例えば、膜厚の収縮に伴って形成される、縦方向につぶれたような球状の細孔でも、その配置が膜面内で制御されていればよい。図2Bにおいて、矢印は配列方向を示すが、このうち一つの方向を選択して配列方向とすることができる。
【0027】
本発明のメソポーラスシリカ膜の細孔構造は、この他のものでも良く、細孔の膜面内での配列方向が膜面全体にわたって制御されていれば良い。例えば、球状細孔が最密充填した構造で、3次元ヘキサゴナル構造とは積層の規則性が異なる、面心立方構造のものでも構わない。上記3次元ヘキサゴナルの場合と同様、球状細孔は完全な球状でなくても良い。この構造の場合にも、等価な3つの配向方向が存在するが、そのうち一つを選択して配向方向とすることができる。
【0028】
メソポーラスシリカ膜は細孔が中空であるものを一般的に指すが、本発明でいうメソポーラスシリカ膜とは、細孔中に物質が導入されているもの(シリカメソ構造体膜)も包含する。例えば、メソポーラスシリカ膜の製造方法に関する説明で後述するように、細孔内に、メソポーラスシリカ膜を作製するときに細孔を形成する鋳型として使用する界面活性剤の集合体が含まれているものも、本発明には包含される。
【0029】
本発明のメソポーラスシリカ膜は、上記の細孔の膜面内の配向方向が、基板11の上に形成された構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜12によって付与される。
基板11は、メソポーラスシリカ膜の作製プロセスに耐えられるものであれば、特に限定はなく、シリコンや石英ガラスなどが好適に使用される。本発明において適用可能な基板は、平坦なものであっても、ある曲率を有する曲面状のものであっても良い。
【0030】
次に、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜12について説明する。本発明で好ましく用いられるカーボン膜は、気相成膜法によって基板上に形成されるカーボンの膜である。カーボンの成膜法には、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)、パルスレーザー堆積法(Pulse Laser Deposition:PLD法)、イオンビームスパッタリング、カソードアーク気相堆積法等があるが、本発明においては、メソポーラスシリカ膜のメソ細孔の面内配向制御が可能であれば、どのような方法でカーボン膜を成膜しても良い。
【0031】
気相蒸着法では、通常、構造異方性を有する膜を成膜することはできない。構造異方性とは、膜中の原子スケールの規則性よりも大きい、数nmスケールでの異方性を指し、例えばグラファイトの単結晶のようなものは含まれない。
【0032】
構造異方性のあるカーボン膜を成膜する場合に最も一般的な方法の一つは、斜方成膜法である。図3は、本発明におけるカーボン膜の斜方成膜法を説明する模式図である。斜方成膜は、図3に示すように、成膜を行う際、堆積種16が飛来する方向に対して、基板法線方向17が平行でないように基板を保持して成膜を行う方法である。基板法線方向と飛来方向のなす角度を成膜角度αと定義する。成膜角度がある程度大きくなると、成膜初期に基板上に堆積した材料のセルフシャドーイング効果によって、膜堆積は不均一に起こるようになり、図4に示すように傾斜したカラムナー状の構造を有することになる。
【0033】
図4は、本発明における傾斜カラムから構成されるカーボン膜の構造を説明する模式図である。カラムナー構造膜のカラムのサイズ、傾斜角等は、主に成膜角度で決定される。一般的に、成膜角度が大きいほど、カーボンカラム41の傾斜角度は大きく、膜密度が疎になる傾向にある(図4(A)参照)。また、成膜角度が大きいほど、表面の凹凸が大きくなる傾向にある。成膜角度が小さくなるに従って、カーボンカラム41の傾斜は小さくなって膜密度は高くなり、膜の平坦性は高くなる(図4(B)参照)。ある角度以下の成膜角度では、カラムナー構造が形成されなくなり、緻密な膜が形成される。
【0034】
但し、カラムの傾斜角度は成膜角度には一致せず、また、成膜角度によって一義的に決定されるものでもない。成膜方法、特に堆積種のエネルギーによって、角度は大きく変化し、また、斜方成膜を行ってもカラムが形成されないこともある。
【0035】
構造異方性を有するカーボン膜を形成する、もう一つの方法は、等方的なカーボン膜を作製した後に、表面に異方性を与える処理を施す方法である。例えば、等方的なカーボン膜に、イオン銃を用いてある一定の方向から傾斜をつけたイオン照射を行うことで、主として表面に構造異方性を付与する。
【0036】
本発明においては、構造異方性を有するカーボン膜が、メソポーラスシリカ膜中のメソ細孔を配向制御できれば、上記のいずれの方法を用いても良い。特に好ましい方法は、前者の傾斜したカラムナー構造を有するカーボン膜を斜方成膜によって形成する方法である。カラムナー構造の存在は、膜断面の電子顕微鏡観察によって確認することができる。しかし、電子顕微鏡では、局所的なカラムナー構造の存在と局所的な傾斜角度は明確化し得るが、膜全体にわたって、構造異方性を有する構造が形成していることを明確にすることが困難である。膜全体の異方性の確認には、X線による評価を用いることができる。傾斜したカラムナー構造が膜全体に形成され、かつある方向に傾斜している場合には、カーボン膜の膜面に対して、かすめ入射角(grazing angle)でX線を入射させて、X線散乱強度のプロファイルを反射モードで記録した場合、散乱光強度が選択的に強くなる一つの方向が存在する。本発明においては、このような、X線で評価した際に異方性が観測されるようなカーボン膜を使用することが特に好ましい。
【0037】
本発明に用いられる、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜のカラム角度には、特に制限は無い。その上にメソ細孔の配列方向が面内で制御されたメソポーラスシリカ膜が作製できれば、いかなる角度の範囲でも構わない。ただ、前述したように、カラム角度は成膜角度を変化させて、全ての角度の範囲で自由に制御できるものではない。本発明者らが検討した結果では、成膜角度が大きい条件で成膜した方が、メソポーラスシリカ膜中のメソ細孔の面内配列規則性は高くなる傾向にある。
【0038】
構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜は、製法によって、構造や平坦性以外に、膜の化学的な性質も変化し得る。本発明に好適に使用し得る、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜は、spC−C結合のカーボンを含むダイヤモンドライクカーボン膜であることが好ましい。膜中のspC−C結合のカーボンの比率は、成膜方法によって異なり、特に堆積種のエネルギーに依存することが知られている。spC−C結合のカーボンの比率が高いほど、緻密な硬い膜が形成される。本発明において、適用可能なダイヤモンドライクカーボン中のspC−C結合のカーボンの比率には、特に制限は無いが、spC−C結合のカーボン量の比率は、成膜角度に依存し、成膜角度が大きくなるほど、spC−C結合のカーボン量の比率が小さくなる。膜中のspC−C結合のカーボンの比率は、例えば、Applied Surface Science誌、第136巻、105から110頁に記載されているような、X線光電子分光法を用い、C1sの内殻電子の光電子スペクトルを測定し、測定されたピークを、284.4eVと285.2eVの2つの中心値を有する成分にデコンボリュートすることによって求めることができる。
【0039】
本発明で、特に良好に用いられる、カーボンの成膜方法は、斜方フィルタードアークデポジション(Filtered Arc Deposition)である。この方法は、ダイヤモンドライクカーボンの形成法として知られており、spC−C結合のカーボンの比率が比較的高いカーボン膜を得ることができる成膜方法である。
【0040】
フィルタードアークデポジションは、アーク放電によってカソードからイオンを発生させ、発生したイオンを電場で加速し、さらに磁場で方向を曲げて指向性のよいイオンビームを形成し、これを基板に照射する真空アークイオン成膜法の一種である。この方法は、発生するイオンのエネルギーが大きく、成膜速度が速い特徴を有し、強度の高い緻密な膜を成膜するのに好適である。
【0041】
図5は、本発明におけるカーボン膜の成膜に用いられる、フィルタードアークデポジション成膜装置の構成を説明する模式図である。この装置を用いた成膜方法について説明する。
【0042】
カソード501ではアーク放電によりカソード材料がイオン化されプラズマ(以下、アークプラズマという)を発生する。カソード形成材料は、導電性材料で構成される。ここではグラファイトが用いられる。プラズマダクト506の角度は図5では90°であるが、均一な、構造異方性を有するカーボン膜が得られる範囲において、角度に制限はない。
【0043】
トリガ電極503は、アーク電源505から電圧の供給を受けてカソード501との間にアークを誘起する。トリガ電極503を一時的にカソード501の表面に瞬間的に接触させることで真空アークが発生する。通常はDCアークが用いられるが、パルスアークも良好に用いることができる。
【0044】
アノード502は、発生したアークプラズマのイオンをカソード表面から引き出し、加速するための円筒形の電極である。加速電源504によってアノード502とカソード501の間にDC電圧を印加し、プラズマイオンを加速する。
【0045】
アークプラズマ中のイオンは、加速エネルギーを得てイオンビームとなってプラズマダクト506に導かれる。プラズマダクト506には磁場を発生させるトロイダルコイル507が設けられており、ダクトの延長方向に沿った磁場が形成される。電荷を帯びたイオンはこの磁場中で軌道を曲げられて、成膜室内の基板508へと導かれる。プラズマの軌道を曲げるのは、アーク放電で発生する比較的サイズの大きなドロプレットと呼ばれる粒子を選択的に取り除くためである。
【0046】
フィルタードアークデポジションは、この原理からもわかるように、指向性の高いプラズマが基板へと入射して成膜が行なわれる。本発明では、フィルタードアークデポジションを用いて、斜方成膜を行う。この場合、基板508は、基板面法線方向がイオンの流れ方向に対して斜めになるように置かれている。
【0047】
本発明者らの実験によると、イオンビームを基板に対してラスタースキャンすることが膜厚の均一化に有効である。成膜室509の入口に2対の電磁石510を置き、垂直方向と水平方向の磁場を作ってそれを時間的に動かすことによりビームをその進行方向に垂直にシフトさせ、基板上でイオンビームを走査させる。このビーム走査は必ずしも必須ではないが、基板が曲面である場合には、試料保持の幾何学的配置を考慮した上で、このビーム走査を行うことが有効である。511はバルブを表す。
【0048】
このフィルタードアークデポジションで作製した膜は、成膜角度が50°以上の場合にカラムナー構造を有することが、断面の走査電子顕微鏡観察及び前述した、かすめ入射角(grazing angle)でX線を入射させて測定したX線散乱強度のプロファイルから確認できる。カラムの傾斜角度は成膜角度よりも小さく、この平均角度はX線散乱強度のプロファイルより求めることができる。
【0049】
本発明において、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜の膜厚は、1nm以上1μm以下、好ましくは5nm以上500nm以下が望ましい。
次に、上記の構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜の上に、メソポーラスシリカ膜の前駆体である、シリカメソ構造体膜を形成する。基板上へのメソ構造体膜の作製方法は2つの方法に大別される。第一は水熱合成法に基づく方法で、第二はゾル−ゲル法に基づく方法である。前者に関しては、例えばChemistry of Materials誌、第14巻、766から772頁に記載がなされており、後者に関しては、例えばNature誌、第389巻、364から368頁に記載されている。
【0050】
まず、水熱合成法について説明する。この方法は、界面活性剤の水溶液に、例えばシリコンアルコキシドのようなシリカ源となる物質と、酸を添加した前駆体溶液中に、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成した基板を保持し、80℃程度の温度で5日間程度保持することにより、シリカメソ構造体の膜を基板上に形成させる方法である。この方法では、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜表面に、鋳型となる界面活性剤の集合体が、シリカマトリクス中に規則的に配列した、メソポーラスシリカ膜が形成される。
【0051】
使用する界面活性剤は、4級アルキルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドを親水基として含む非イオン性界面活性剤等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。使用する界面活性剤分子の長さは、目的のメソ構造の細孔径に応じて決められる。また、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチレンのような添加物を加えても良い。また酸は、塩酸、硝酸のような一般的なものを使用することが可能である。
【0052】
この様にして基板上に形成されたメソポーラス材料膜は、純水で洗浄した後に空気中で自然乾燥させ、最終的な薄膜が得られる。この状態では、メソポーラスシリカ膜は、メソ細孔内に界面活性剤の分子集合体を含んだ状態である。
【0053】
以上のように作製されたメソポーラス材料膜からテンプレートの界面活性剤ミセルを除去することで中空の細孔を有するメソポーラス材料膜を作製することができる。界面活性剤の除去には、一般的な方法を用いることができ、焼成、溶剤による抽出、オゾンによる酸化・分解等の中から選択される。
【0054】
例えば、空気中、350℃で4時間焼成することによって、メソ構造をほとんど破壊することなく、完全に界面活性剤を除去することができる。この場合には、基板上に形成したダイヤモンドライクカーボンは、基板上に残存し、界面活性剤のみが除去される。焼成温度を上げ、例えば600℃で10時間焼成すると、界面活性剤のみならず、界面のカーボン膜も焼失する。しかし、カーボン膜の膜厚が十分に薄いため、例えばシリコンや石英ガラスのように、メソポーラスシリカ膜のシリカが結合を形成し得るような基板を使用した場合には、メソポーラスシリカ膜を基板から剥離させること無く、カーボン膜を除去することが可能である。この場合の最終的なメソポーラスシリカ膜の構造は、図6に模式的に示したように、基板上に直接メソポーラスシリカ膜が形成されているものである。また、この程度の温度では、メソポーラスシリカ膜の細孔構造が崩壊することは無い。溶剤による抽出のような方法で界面活性剤の除去を行う場合には、言うまでもなく、カーボン膜は基板上に残存したままである。
【0055】
次に、ゾルーゲル法に基づくメソポーラスシリカ膜の作製方法について説明する。この方法は、臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、シリカ前駆体とを含む有機溶媒/水混合溶液を、スピンコート、ディップコート等によって基板上に塗布する方法で、コーティング中の溶媒の乾燥による界面活性剤濃度の上昇に従って規則的メソ構造が形成される。有機溶媒としてはアルコール等が用いられる。この方法は、比較的反応条件が穏やかなために基板材質の制約が小さく、また短時間で膜作製が可能である等の利点を有している。
【0056】
スピンコートやディップコートを行うための装置は、一般的なものを用いることができ、特に制約は無いが、場合によっては溶液の温度を制御するための手段、及びコーティングを行う雰囲気の温度、湿度を制御するための手段を設ける場合もある。
【0057】
例としてディップコーティングを用いたメソポーラス材料薄膜の作製方法について説明する。図7は、本発明に用いられる、ディップコーティングに用いる装置の一例の構成を示す模式図である。図7において、71は容器、72は構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成した基板、73は前駆体溶液である。前駆体溶液73は臨界ミセル濃度以下の界面活性剤と、シリカ前駆物質を含む有機溶媒と水の混合溶液で、加水分解重縮合触媒として作用する酸が添加される。
【0058】
使用される有機溶媒としては、アルコールが一般的で、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが好ましく用いられる。酸としては、塩酸、硝酸等の一般的な酸を使用することができる。
【0059】
使用する界面活性剤は、水熱合成法による膜作製の場合と同様に、4級アルキルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤、ポリエチレンオキシドを親水基として含む非イオン性界面活性剤等が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。使用する界面活性剤の分子の長さは、目的のメソ構造やその細孔径に応じて決められる。また、界面活性剤ミセルの径を大きくするために、メシチレンのような添加物を加えても良い。界面活性剤の濃度は、使用する界面活性剤の使用する溶媒への溶解度や、溶液中の臨界ミセル濃度等を考慮して、最適な値に調整する。
【0060】
メソポーラス材料薄膜を作製する基板72は、基板ホルダー74を用いてロッド75に固定され、zステージ76によって上下させる。反応溶液を塗布した基板は、温度や湿度の制御が可能な装置の中で乾燥させることが好ましい。乾燥工程の後に、高湿度雰囲気中でエージングを行うこともある。この状態では、メソポーラスシリカ膜は、メソ細孔内に界面活性剤集合体を含んだ状態である。
【0061】
以上のように作製されたメソポーラス材料薄膜からテンプレートの界面活性剤ミセルを除去することで、中空の細孔を有するメソポーラス材料薄膜を作製することができる。界面活性剤の除去には、水熱合成法と同様で、一般的な方法を用いることができるが、例えば焼成、溶剤による抽出、オゾンによる酸化・分解等の中から選択される。
【0062】
本発明のメソポーラスシリカ膜中の細孔構造は、透過電子顕微鏡及びX線回折分析で評価することが可能である。透過電子顕微鏡による観察で最も有用な方法は、薄い切片を作製し、膜断面の構造を直接観察する方法である。この場合、メソ細孔の配列方向を考慮して、複数の方向の切片試料を作製して観察を行い、総合的に構造を決定する。
【0063】
本発明のメソポーラスシリカ膜の場合には、メソ細孔は、基板面内で配列方向が制御されているために、面内での配向評価のために、面内X線回折分析を用いることが必要である。本発明のメソポーラスシリカ膜を面内X線回折によって評価した場合、チューブ状メソ細孔が面内で一方向に配列している2次元ヘキサゴナル構造の膜の場合には、面内のロッキングカーブには、180°おきに回折ピークが観測される。一方、球状メソ細孔の面内での配列が規定されている、3次元ヘキサゴナル構造や面心立方構造のメソポーラスシリカ膜の場合には、面内のロッキングカーブには、60°おきに回折ピークが観測される。
【0064】
本発明で作製したメソポーラスシリカ膜は、界面活性剤の分子集合体を鋳型にして形成される。界面活性剤分子集合体中の分子の会合数は、与えられた濃度や温度等の条件に対して一義的に決定されるので、これを鋳型にして形成されたメソポーラスシリカ膜のメソ細孔は均一な径を有することになる。メソ細孔のサイズと細孔径分布は、窒素ガスの等温吸着線測定結果等から求めることができる。本発明のメソポーラスシリカ膜は、窒素ガス吸着等温線の測定の結果から、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法によって求められた細孔径分布が、2nm以上50nm以下の範囲に単一のピークを有する。また、求められた細孔径分布において、60%以上の細孔が、中心値から幅10nmの細孔径範囲に含まれる、高い細孔径の均一性を有する。
【0065】
本発明において、メソポーラスシリカ膜の膜厚は、5nm以上100μm以下、好ましくは10nm以上50μm以下が望ましい。
本発明の、配向性メソポーラスシリカ膜は、工業的に応用が可能である。例えば、2次元ヘキサゴナル構造の配向性チューブ状メソ細孔内に半導体高分子を導入して、共役高分子鎖が細孔内で配向制御された有機−無機ハイブリッド薄膜を作製し、これを、偏光発光を示す発光素子や、主鎖伝導を利用した有機半導体素子に応用することが可能である。このような、有機半導体と組み合わせた本発明のメソポーラスシリカ膜の応用を考えた場合、曲面にも配向性メソポーラスシリカ膜を作製できる、本発明は、非平面状基板へのこれらデバイスの作製を可能にする方法として、特に有用である。さらに、本発明によれば、パターンを形成したマスクを介してカーボン膜を成膜することによって、局所的にメソポーラスシリカの面内配列方向が異なる複数の領域を簡単に作製でき、これにより、場所によって発光の偏光方向が異なる素子などを作製することができる。
【0066】
また、このメソ細孔を、物質やイオンを輸送するチャネルに応用する場合、曲面にメソチャネルを形成できる本発明の技術を用いて、曲面に沿って物質移動を可能にする膜を作製できる。
【実施例1】
【0067】
以下、実施例を用いて、さらに詳しく本発明を説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるのもではない。
本実施例は、厚さ1.1mmの石英、及び厚さ0.5mmのシリコン基板上に、フィルタードアークデポジションによる斜方成膜で、構造異方性を有する非単結晶性カーボンを形成し、その上に一軸配向性の2次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜を、水熱合成法で形成した例である。
【0068】
成膜に使用した装置は、図5に示した構成のもので、プラズマダクトの角度は90°である。カソード501には、グラファイト(純度99.999%)を用いた。プラズマを安定させるために、成膜室には、バルブ511からアルゴンガスを導入し、1.0×10−1Paの分圧になるように調整した。
【0069】
35mm角の石英ガラス基板、及びシリコン基板を、純水中で超音波洗浄した後に、表面を紫外光オゾン発生装置中でクリーニングした。これらの基板を、フィルタードアークデポジションの成膜装置内にセットし、カーボンの成膜を行った。
【0070】
基板は、カソードからのプラズマ(カーボンイオン)の方向に対して、基板法線方向が、60°、70°、80°、85°になるようにセットした。アークプラズマは、電圧30V、電流80Aの条件でオペレートし、200mAのイオン電流が得られた。成膜時には、成膜室入口の2組の電磁石のコイルに50Hzの電流を通電して作られた磁場を用いて、カーボンイオンビームの二次元的なスキャンを行った。成膜速度は、成膜角度に依存するので、あらかじめ各角度での成膜速度を求めておき、それぞれの角度で膜厚が150nmになるように成膜時間を設定した。
【0071】
成膜角度80°で堆積を行ったカーボン膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を図8に示す。膜断面には、斜めにはしる平行な筋が観察される。このことから、このカーボン膜は、カラムナー構造を有していることが確認された。この膜は、SEM像から判断する限り、カラム間に隙間のない、緻密な膜であった。また、この膜は断面、及び表面のSEM像から判断する限り、平坦性の高い膜であった。他の成膜角度(60°、70°、85°)で成膜したカーボン膜の断面も、基本的に図8のSEM写真と同様で、カラムナー構造を有していることが確認された。
【0072】
本実施例において、80°で成膜したカーボン膜における、構造異方性、すなわち一方向に傾斜したカラムナー構造は、X線を用いても評価することが可能である。図9は、本発明に用いられる、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜に、X線をかすめ入射角で入射させ(grazing incidence)、反射モードでX線散乱強度を測定する配置と、得られるパターンを説明する模式図である。図9に示すように、この構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜91に対して、成膜方向と直行する方向から、基板面に平行に近い大きな入射角(grazing angle)でX線92を入射させ、試料表面で散乱したX線のプロファイルを、反射モードで、イメージングプレート93を用いて記録した。
【0073】
その結果、図10に示したようなプロファイルが得られた。図10は、実施例1で作製した、構造異方性を有する非単結晶性カーボン膜に、X線をgrazing incidenceで入射させ、反射モードでX線散乱強度を測定して得られたパターンと、そこから読み取れるカラムの傾斜角度を示す図である。
【0074】
図10において、散乱光強度が選択的に強くなる一つの方向101が存在していた。これは、一様な傾斜角度を持って平行に形成されたカラムナー構造が存在するために起こる現象であり、この方向に直行する方向102がカラムの傾斜角となる。図8のSEM写真から見積もったカラム傾斜角と非常に良い一致を示す。本実施例の、他の成膜角度(60°、70°、85°)で成膜したカーボン膜も、基本的に図10と同様のパターンを示し、どの膜も一様な傾斜角を有するカラムナー構造であることが確認された。本実施例の膜をX線回折分析で評価したが、グラファイトまたはダイヤモンドの結晶に起因する回折線は認められず、このことから、膜を構成している炭素は、非晶質であることが確認された。
【0075】
次に、これらのカーボン膜をX線光電子分光法で評価し、カーボンの結合状態を評価した。光電子スペクトルはカーボン1s軌道の電子について測定を行った。測定されたスペクトルは、すべて非対称な形状をしており、288.4eVを中心とするsp成分と、285.2eVを中心とするsp成分の2つにデコンボリュートすることができた。これにより、本実施例で作製したカーボン膜は、全て、spC−C結合のカーボンを含む、ダイヤモンドライクカーボン膜であることが示された。spC−C結合の割合は、全ピーク面積に対する、デコンボリュートした285.2eVを中心とするsp成分の面積の割合として算出することが可能である。成膜角度80°で成膜したカーボン膜中のspC−C結合の割合は約30%である。この割合は、成膜角度が小さくなるほど増大する傾向にあり、成膜角度60°で成膜した膜中のspC−C結合の割合は約40%であった。
【0076】
以上述べたように、斜方フィルタードアークデポジション法で、一様に傾斜したカラムナー構造の、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜が形成されることが確認された。
【0077】
このように作製したカーボン膜の表面を、原子間力顕微鏡で観察した。
測定は、SII Nano Technology社製、NanoNavi 走査プローブ顕微鏡を用い、SII社製SI−DF−20カンチレバーを使用して、周波数変調モードで行った。スキャン領域は、300nm×300nmとした。その結果、蒸着方向に垂直な方向に伸びる表面の凹凸が観察された。表面粗さは、RMS(root−mean−square)で、表1のように求められた。
【0078】
【表1】

【0079】
この結果から、本実施例の斜方フィルタードアークデポジション法で作製したカーボン膜は、非常に表面が平坦であるものの、形状の異方性があり、表面粗さは、成膜角度が大きくなるに従って大きくなっていることが明である。但し、成膜角度85°で成膜した膜の表面粗さは、80°で成膜した膜の表面粗さよりも小さくなっていた。
【0080】
次に、このカーボン膜を形成した基板上に、メソポーラスシリカ膜を作製した。
本実施例で用いた界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン−10−セチルエーテル(C16EO10と略記、商品名Brij56、Aldrich社)である。この界面活性剤を純水に溶解した後、塩酸とテトラエトキシシラン(TEOS)を添加し、最終的な溶液中の各成分のモル比が、TEOS:HO:HCl:C16EO10=0.10:100:3.0:0.11となるようにした。
【0081】
この溶液中に、上記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成した基板を、基板面を下向きにして保持し、80℃で3日間反応させ、メソポーラスシリカ薄膜を作製した。反応溶液から取り出した基板は純水で十分に洗浄した後に風乾させた。基板上には、透明な膜厚約400nmの膜が形成されており、均一な干渉色が確認された。
【0082】
この膜を回折分析(X線銅Kα線)で測定した結果、2θ=2.11°に強い回折ピークが観測され、膜厚方向に4.2nmの周期構造を有することが確認された。この膜の断面透過電子顕微鏡観察結果より、この膜は、チューブ状細孔がハニカムパッキングした2次元ヘキサゴナル構造を有することが明らかとなった。規則的な細孔は、全膜厚にわたって形成されていることが確認された。
【0083】
この膜中での細孔の面内配向性を調べるために、面内X線回折分析を行った。各成膜角度で作製したカーボン膜上に作製したメソポーラスシリカ膜は、いずれも、X線の入射方向と成膜方向が垂直になるように膜を固定して測定を行った場合には回折ピークが観測されたが、X線の入射方向と成膜方向が平行になるように膜を固定して測定を行った場合には回折ピークが観測されなかった。この結果から、これら、斜方フィルタードアークデポジションを用いて作製したカーボン膜上に形成した二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜中では、メソ細孔が高い異方性を持って配向していることが示唆された。
【0084】
配向を定量的に評価するために、X線の入射方向とカーボン膜の成膜方向が垂直になるように膜を固定して測定を行った場合に観測された回折ピーク位置に検出器を固定し、試料を面内スキャンさせて、面内ロッキングカーブを記録した。その結果、図11に示すように、全てのメソポーラスシリカ膜において、メソ細孔が、成膜方向に垂直な方向に一軸配向している事が確認された。以上の結果と、断面透過電子顕微鏡の観察結果と合わせて、作製したメソポーラスシリカ膜全体にわたって、メソ細孔の配向方向が制御されていることが確かめられた。図11からわかるように、配向制御性は、カーボン膜成膜時の基板の傾斜角度依存性を有しており、85°≒80°>70°>>60°の順で制御性が高い傾向にあった。
【0085】
この配向制御性は、表1に示した、膜表面の粗さと同じ傾向にあることがわかる。本発明のカーボン膜上でのメソ細孔の配向メカニズムは完全には明らかではないが、本発明者らは、カーボン膜表面の異方性とその構造の粗さ、すなわち凹凸の高さが、メソ細孔の配向を決定づける一つの要因だと考えられる。
【0086】
本実施例で示された、成膜角度が85°から70°の範囲では配向制御性に大差がないという結果は、本発明が、曲面状の基板にも適用可能であることを示している。
以上のように作製した膜を空気中350℃で4時間、及び600℃で10時間の、2つの条件で焼成し、細孔中の界面活性剤を除去した。焼成によってメソポーラスシリカ膜の外観には大きな変化は無かった。焼成後のX線回折分析によって、この2つの条件で焼成を行った試料は共に、膜厚方向の構造周期は10%から13%程度減少するものの、メソポーラスシリカの規則的細孔構造は保持されていることが確認された。また、面内X線回折分析によって、メソ細孔の面内配向分布は完全に保持されていることが確かめられた。面内方向については、構造周期は、焼成によって変化していなかった。断面透過電子顕微鏡の観察の結果、350℃で4時間焼成した場合には、基板上のカーボン膜は保持されている。一方、600℃で10時間焼成した場合には、カーボン膜は基板上から失われ、基板上に直接メソポーラスシリカ膜が積層されている構造が得られた。
【0087】
以上、本実施例によって、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を用いて、チューブ状メソ細孔の、メソポーラスシリカ膜面内での配列方向が、基板全体にわたって、カーボンの構造異方性によって規定される方向に対して、一定の方向に制御されたメソポーラスシリカ膜が作製できることが示された。
【実施例2】
【0088】
本実施例は、実施例1と同じ方法で、厚さ1.1mmの石英、及び厚さ0.5mmのシリコン基板上に、フィルタードアークデポジションによる斜方成膜で、構造異方性を有する非単結晶性カーボンを形成し、その上に、面内での球状メソ細孔の配列が制御された、3次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜を、水熱合成法で形成した例である。
【0089】
実施例1で使用したものと同じフィルタードアークデポジション装置を使用して、成膜角度75°で、ダイヤモンドライクカーボン膜を、前記基板上に成膜した。この膜が傾斜したカラムナー構造を有し、構造に異方性があること、spC−C結合のカーボンを含有していることは、実施例1と同様である。
【0090】
このカーボン膜上に、メソポーラスシリカ膜を作製した。
本実施例で用いた界面活性剤は、実施例1で使用したのと同じ、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン−10−セチルエーテル(C16EO10)である。この界面活性剤を純水に溶解した後、塩酸とテトラエトキシシラン(TEOS)を添加し、最終的な溶液中の各成分のモル比が、TEOS:HO:HCl:C16EO10=0.10:100:3.0:0.002となるようにした。界面活性剤の濃度は実施例1で2次元ヘキサゴナル構造の膜を作製した場合の1/50である。
【0091】
この溶液中に、上記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成した基板を、基板面を下向きにして保持し、80℃で3日間反応させ、メソポーラスシリカ薄膜を作製した。反応溶液から取り出した基板は純水で十分に洗浄した後に風乾させた。基板上には、膜厚約300nmの透明な膜が形成されており、均一な干渉色が確認された。
【0092】
このメソポーラスシリカ膜をX線回折分析(CuKα線)で測定した結果、2θ=2.04°に強い回折ピークが観測され、膜厚方向に4.3nmの周期構造を有することが確認された。この膜の断面透過電子顕微鏡観察結果より、この膜は、球状細孔が六方最密充填した3次元ヘキサゴナル構造を有することが明らかとなった。規則的な細孔は、全膜厚にわたって形成されていることが確認された。
【0093】
このメソポーラスシリカ膜中での細孔の面内配向性を調べるために、面内X線回折分析を行った。本実施例で作製したカーボン膜上に作製した、メソポーラスシリカ膜で観測された面内回折ピーク位置に検出器を固定して試料を面内スキャンさせて、面内ロッキングカーブを記録した。その結果、図12に示すように、60°間隔で6本の回折ピークが観測され、本実施例で作製した膜中では、球状細孔の面内配列が膜全体にわたって制御されていることが示された。
【0094】
この膜を、空気中で、400℃で5時間焼成し、界面活性剤の除去を行った。焼成後に大きな膜の外観の変化は無かった。焼成後の膜のX線回折分析の結果、構造周期は12%程度減少するものの、構造は完全に保持されていることが確認された。また、面内X線回折分析の結果、面内方向での構造周期は変化しておらず、6回対称性の面内規則性も保持されていることが確認された。
【0095】
以上、本実施例によって、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を用いて、球状メソ細孔の、メソポーラスシリカ膜面内での配列方向が、基板全体にわたって、カーボンの構造異方性によって規定される方向に対して、一定の方向に制御されたメソポーラスシリカ膜が作製できることが示された。
【実施例3】
【0096】
本実施例は、実施例1と同じ方法で、厚さ1.1mmの石英、及び厚さ0.5mmのシリコン基板上に、フィルタードアークデポジションによる斜方成膜で、構造異方性を有する非単結晶性カーボンを形成し、その上に、一軸配向性の2次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜を、ゾル−ゲル法で形成した例である。
【0097】
実施例1で使用したものと同じフィルタードアークデポジション装置を使用し、成膜角度80°でカーボン膜を、前記基板上に成膜した。この膜は、実施例1で示したように、傾斜したカラムナー構造を有し、spC−C結合のカーボンを含有している。
【0098】
このカーボン膜上に、メソポーラスシリカ膜を作製した。
本実施例で用いた界面活性剤は、実施例1で使用したのと同じ、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレン−10−セチルエーテル(C16EO10)である。この界面活性剤をエタノールに溶解した後、塩酸とテトラエトキシシラン(TEOS)を添加し、最終的な溶液中の各成分のモル比が、TEOS:エタノール:HO:HCl:C16EO10=1.0:22:5.0:0.004:0.08となるようにした。ゾル−ゲル法の場合は、アルコールを種とした溶媒を用い、酸の濃度が水熱合成法よりも著しく低い。
【0099】
次に、上記のカーボンを成膜した基板に、上記溶液をディップコート法により塗布し、メソポーラスシリカ薄膜を形成した。ディップコートの装置は、図7に示したものと同じ構成のものを用いて、引上げ速度は1mm/sに設定した。溶液を塗布した基板は、20℃、相対湿度40%の雰囲気中で12時間保持し、界面活性剤を細孔中に含んだ膜厚約250nmのメソポーラスシリカ膜を得た。
【0100】
このメソポーラスシリカ膜を、X線回折分析によって評価した結果、2θ=1.94°に強い回折ピークが観測され、膜厚方向に、4.7nmの構造周期を持った規則的メソ構造が形成されていることが確認された。断面の透過電子顕微鏡観察によって、規則構造を持ったメソポーラスシリカ膜は、全膜厚に渡って形成されていることがわかった。
【0101】
このメソポーラスシリカ膜中での細孔の面内配向性を調べるために、面内X線回折分析を行った。本実施例で作製した、カーボン膜上のメソポーラスシリカ膜は、X線の入射方向とカーボン膜の成膜方向が垂直になるように膜を固定して測定を行った場合には、回折ピークが観測されたが、X線の入射方向とカーボン膜の成膜方向が平行になるように膜を固定して測定を行った場合には、回折ピークが観測されなかった。この傾向は、実施例1で、水熱合成法で作製したメソポーラス膜の場合と同じであった。この結果から、本実施例で作製した、カーボン膜上にゾル−ゲル法で形成した二次元ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ膜中では、メソ細孔が高い異方性を持って配向していることが示唆された。
【0102】
次に、実施例1と同様に、面内ロッキングカーブを測定した。X線の入射方向とカーボン膜の成膜方向が垂直になるように膜を固定して測定を行った場合に観測された回折ピーク位置に検出器を固定し、試料を面内スキャンさせて、面内ロッキングカーブを記録した。その結果、メソ細孔が、成膜方向に垂直な方向に、狭い配向分布をもって一軸配向している事が確認された。
【0103】
この膜を、空気中において、400℃で5時間焼成し、界面活性剤を細孔中から除去した。焼成後の膜をX線回折分析で評価した結果、d=2.7nmに相当する角度において回折ピークが観測され、焼成によって、膜厚方向に大きく構造周期の減少が起こるものの、規則的な細孔構造は保持されていることが確かめられた。また、焼成後のメソポーラスシリカ膜を、面内X線回折分析で評価した結果、チューブ状の細孔の配向は、熱処理による影響をほとんど受けていなかった。膜厚方向には、構造周期の減少が大きかったが、面内方向の構造周期は、熱処理前後で変化が無かった。
【0104】
以上、本実施例によって、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を用いて、チューブ状メソ細孔の、メソポーラスシリカ膜面内での配列方向が、基板全体にわたって、カーボンの構造異方性によって規定される方向に対して、一定の方向に制御されたメソポーラスシリカ膜が作製できることが示された。
【0105】
(比較例1)
本比較例は、実施例1と同じ方法で、厚さ1.1mmの石英、及び厚さ0.5mmのシリコン基板上に、電子ビーム斜方蒸着で、構造異方性を有するSiO膜を形成し、その上にメソポーラスシリカ膜を、水熱合成法で形成する実験を行った例である。
【0106】
SiOの斜方蒸着膜は、一般的な電子ビーム蒸着を用いて行った。蒸着は、基板法線方向と蒸着方向が70°になるように基板をセットして行った。基板と蒸着源の距離は80cmで、膜厚100nmのSiOを基板上に堆積した。
【0107】
得られた斜方蒸着膜の断面の走査電子顕微鏡観察像を、図13に示す。この図からわかるように、このSiO斜方蒸着膜は、カラムナー構造を有しており、そのカラムの傾斜角度は、実施例1において80°の成膜角度でフィルタードアークデポジションによって作製したカーボン膜のカラムの傾斜角度とほぼ等しい角度であった。このSiOは非晶質である。蒸着は、アークデポジションよりも堆積種のエネルギーが低いために、カラムの間にはボイドが形成されている。
【0108】
この斜方蒸着SiO膜上に、メソポーラスシリカ膜の形成を試みた。実施例1と同じ条件の、シリカ源と界面活性剤を含む塩酸酸性水溶液中に、上記SiO斜方蒸着膜を、80℃で3日間保持した。
【0109】
この後、溶液から基板を取り出し、水洗、乾燥後、観察したところ、基板は不透明になっており、表面には白色の材料が形成されていたが、表面には光沢がなく、連続した薄膜は形成されていないと判断された。これを、光学顕微鏡で観察した結果、基板の表面は、ミクロンオーダーの粒子で埋め尽くされていることがわかり、メソポーラスシリカ膜の形成は達成できなかった。
【0110】
本比較例によって、基板表面に、カラムナー構造の構造異方性を有する膜を形成した場合でも、材料によっては配向性メソポーラス膜が形成できないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の配向性メソポーラスシリカ膜は、種々の工業的応用が可能である。
例えば、2次元ヘキサゴナル構造の配向性チューブ状メソ細孔内に半導体高分子を導入して、共役高分子鎖が細孔内で配向制御された有機−無機ハイブリッド薄膜を作製し、これを偏光発光を示す発光素子や、主鎖伝導を利用した有機半導体素子に応用することが可能である。このような、有機半導体と組み合わせた本発明のメソポーラスシリカ膜の応用を考えた場合、曲面にも配向性メソポーラスシリカ膜を作製できるので、本発明は非平面状基板へのこれらデバイスの作製を可能にする方法として、特に有用である。
【0112】
さらに、本発明は、パターンを形成したマスクを介してカーボン膜を成膜することによって、局所的にメソポーラスシリカの面内配列方向が異なる複数の領域を作製することもできる。これにより、場所によって発光の偏光方向が異なる素子などを作製することができる。
【符号の説明】
【0113】
11 基板
12 構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜
13 メソ細孔
14 細孔壁
15 メソポーラスシリカ膜
16 堆積種
17 基板法線方向
18 膜面
41 カーボンカラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜上に形成されメソポーラスシリカ膜であって、前記メソポーラスシリカ膜の細孔の膜面内での配列方向が基板全体にわたって、前記カーボン膜の構造異方性によって規定されている方向に対して、一定の方向に制御されていることを特徴とするメソポーラスシリカ膜。
【請求項2】
前記細孔内に界面活性剤の集合体を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のメソポーラスシリカ膜。
【請求項3】
前記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜がカラムナー構造を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のメソポーラスシリカ膜。
【請求項4】
前記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜が、膜面に対してかすめ入射角(grazing angle)でX線を入射させて、X線散乱強度のプロファイルを反射モードで記録した場合、散乱光強度が選択的に強くなる一つの方向が存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のメソポーラスシリカ膜。
【請求項5】
前記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜が、spC−C結合のカーボンを含むダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載のメソポーラスシリカ膜。
【請求項6】
基板上に、構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を形成する工程と、前記カーボン膜上に、細孔の膜面内での配列方向が一定の方向に制御されているシリカメソ構造体膜を形成する工程とを有することを特徴とするメソポーラスシリカ膜の製造方法。
【請求項7】
前記構造異方性を有する非単結晶性のカーボン膜を斜方フィルタードアークデポジション(Filtered Arc Deposition)により形成することを特徴とする請求項6に記載のメソポーラスシリカ膜の製造方法。
【請求項8】
前記シリカメソ構造体膜を形成する工程が水熱合成法であることを特徴とする請求項6または7に記載のメソポーラスシリカ膜の製造方法。
【請求項9】
前記シリカメソ構造体膜を形成する工程がゾル−ゲル法であることを特徴とする請求項6または7に記載の、メソポーラスシリカ膜の製造方法。
【請求項10】
さらに前記シリカメソ構造体膜の細孔内に含まれている界面活性剤の集合体を除去する工程を有することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかの項に記載のメソポーラスシリカ膜の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−155776(P2010−155776A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276876(P2009−276876)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】