説明

メソポーラス層を被覆した基材の生産方法およびその眼科用光学部品への利用

本発明はメソポーラス層で被覆された基材の生産方法およびその眼科用光学部品への利用に関する。発明による方法は次から成る手順から構成される:以下のものを含む前駆体ゾルの調合(i)化学式 M(X)4(I)を持つ化合物から選択される前駆体物質でここに、X は加水分解性の基で M はシリコンまたは4価金属およびこれらの混合物を表す、(ii)少なくとも1種類の有機溶媒、(iii)少なくとも1種類の細孔形成物質および(iv)水;前駆体ゾルのフィルムを基材の主表面上に成膜する;随意的に成膜したフィルムのメソポーラス構造を硬化する;細孔形成物質を除去する;およびメソポーラス層を塗膜した基材を回収する。当該方法には次の特徴がある:(i)細孔形成物質は150℃以下の温度で除去される;および(ii)当該方法が成膜工程(b)の前および/または該工程の後に、少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の反応性物質を導入する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、メソポーラス層を被覆した、とりわけプラスチック素材による基材の生産方法およびこの様にして得られた塗膜基材に関する。
【0002】
より具体的には、本発明はメソポーラス層を被覆した、好ましくは透明なプラスチックの光学またはめがねレンズもしくはレンズ素材の様な透明な基材の生産方法に関し、このメソポーラス層は通常は低屈折率層、つまり屈折率n≦1.5、好ましくは≦1.35(λ=633nm、T=常温(20〜25℃)である。
【背景技術】
【0003】
メソポーラス層の生成については現状技術で既に記載されている。
メソポーラス素材は慣例的に2および50nmの間に含まれる直径の細孔を含む素材と定義されている。
メソポーラス層を生成する今までの方法は、テトラアルコキシシラン、とりわけテトラエトキシシラン(TEOS)の様な前駆体からわずかに重合したシリカゾルを、通常は酸性媒体中で調合することから構成され、このゾルは水、一般的にはエタノールの様な極性の有機溶媒、および界面活性剤も含む。
この段階に於いて界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度よりかなり低い。
【0004】
次いで溶液は基材上に成膜される。成膜中に有機溶媒は蒸発し、このことによりフィルム中の水、界面活性剤および二酸化ケイ素の含有量が増加し結果として臨界ミセル濃度に到達する。溶媒媒体が非常に極性であるため界面活性剤の分子は互いに密集し、ミセルの極頭基を溶媒方向に向ける。
【0005】
これも非常に極性である二酸化ケイ素が、ミセルを取り囲むことによりフィルムの構造化が得られる。
蒸発が進むにしたがい、ミセルは形を変えることができフィルムが乾燥するまで自らを多少とも体系化した構造にまとめる。
多孔質素材は界面活性剤が除去された後に得られる。
この除去は焼成(少なくとも400℃台の温度による加熱)、またはより穏やかな方法(溶媒を用いた抽出、UV/オゾン、プラズマ)で行うことができる。
【0006】
二酸化ケイ素の代わりに、金属前駆体の様な他の前駆体酸化物、例えばチタン、ニオブまたはアルミニウムをベースとしたものを用いることも可能である。
現状技術で開示されているメソポーラス層は通常40%を超える高い水準の空隙率を示し、これらの孔は空気で満たされ次の特性、とりわけ、低屈折率および低誘電率を持っている。
これらフィルムの好ましい用途はエレクトロニクス分野にある。
これらフィルムの不利な点の一つは高湿度の大気中で安定性が低いことである。これらのフィルムは時間と共に水分を吸収する傾向がありこのことによりその初期特性が変わってしまう。
【0007】
メソポーラス層の光学特性の安定性の問題はこれらが光学用途、特に反射防止用積層体積に用いられる場合にはとりわけ重要になり、というのは半導体分野に於ける用途では所定限界内の誘電率の変動は半導体の動作に影響することがないと把握できるのとは反対に、光学分野では屈折率の僅かな変動でも直ちに顕著な、例えば反射防止膜の色および特性を変えてしまう様な、結果をもたらすからである。
【0008】
メソポーラス層フィルムの安定性、とりわけ誘電特性の改良を目的とした多くの技法を従来技術の中に見いだすことができる。
これらの技法には350〜400℃の温度でフィルムを焼成する工程が含まれる。
米国特許第5858457号ではTEOS、エタノール、水および塩酸を含むゾルから得られるメソポーラスフィルムを生成する方法を開示している。使用した界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウムCH3(CH2)15N(CH3)3Br (CTAB) である。
成膜した後、層は400℃で焼成される。
当該特許は他の技法(溶媒抽出による)を用いることが可能であることに言及している。
【0009】
当該特許はこの様なフィルムは光学用塗膜として使用できることおよび反射防止にも使用できることを示唆しているが、どの様にしてメソポーラス層がこの反射防止機能を達成できるかについてそれ以上の詳細は与えていない。
この特許による技術で得られたフィルムは時間と共に、とりわけジメジメした大気中で著しく変化することが明らかとなり実際には使用できない。
国際出願特許WO03024869では、モル比で3/1未満、好ましくは3/2未満のTEOSおよび(メチルトリメトキシシランの様な)アルキル基で置換したアルコキシシランの間の反応により得られるゾルからメソポーラス層を生成する方法を開示している。
【0010】
この方法は、その機械特性は比較的少ししか変更せずにその吸水能力を制限することで層の安定性を改良している。
得られた層は半導体の絶縁層としてまたはその光学特性のために透過フィルターとして用いられている。
米国特許出願公開2003−157311では、TEOSを第1前駆体物質とし、フルオロアルコキシシランまたはアルキルトリアルコキシシラン、例えばメチルトリエトキシシランの様な少なくとも1つの有機官能性アルコキシシランを第2前駆体物質として製造された前駆体ゾルから低誘電率メソポーラス層の製造を開示している。
【0011】
概して、米国特許出願公開2003−157311は、第1前駆体物質/第2前駆体物質 のモル比は0.05から1まで変化できる調合を開示している。
アルコキシシランの加水分解は連続的に行われるが酢酸の様な有機酸の存在下においてが好ましく、得られたゾルを熟成させることを必要とする(通常5日間)。
2つの前駆体物質を含むゾルを成膜した後、焼成工程に進むことが必要である(具体的には425℃)。
この文書ではまた、上記2つの前駆体物質の比率が低い場合(5%)には、焼成後に液状で準備したヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し次いで350℃まで加熱するフィルムの後処理についても記載している。
【0012】
この後処理のねらいは低誘電率を維持するために、メソポーラス素材の孔に吸収される水分量を制限することにある。
この様な方法は有機基材を扱う場合には焼成温度により劣化されるので用いられる様には思われない。
国際特許出願公開WO99−09383でもゲルの溶媒交換が行われた後のトリメチルクロロシランによるメソポーラスTEOSゲルの後処理について記載している。
後処理後、ゲルは超音波処理影響下の溶媒中に戻され、基材上に成膜されそして450℃で1時間焼成される。
得られた最終メソポーラス素材は熱絶縁物として用いられる。
【0013】
これらすべての方法は(400℃台の)高温の焼成処理を呈し、このことがこれらの方法で有機基材、とりわけ光学または眼科レンズのような透明有機基材上にメソポーラスフィルムを生成することを不適切にしている。
かくしてすべてのタイプの基材、とりわけ熱劣化しやすい有機物でできた透明基材に適する方法を得ることが望ましい。
また、経時安定性が向上した、とりわけ光学分野、さらに具体的には眼科光学系にメソポーラスフィルムを得ること、およびとりわけ経時的に屈折率が安定したメソポーラスフィルムを得ることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくて本発明の目的はメソポーラス層で被覆された基材の生産方法で、それがすべてのタイプの基材、とりわけ有機物でできた基材で特に熱に過敏なものに適用できる生産方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は上に言及した方法で、経時的に安定した屈折率を持つメソポーラスフィルムを得ることを可能とする方法である。
【0015】
本発明の別の目的は上に言及した方法で、メソポーラスフィルムが二重層反射防止塗膜または多層塗膜(ここにいう多層とは二重層を越える積み重ねを意味する)の低屈折率層を構成する方法である。
本発明のさらなる目的はメソポーラス層、とりわけ低屈折率を持つ層、さらには反射防止二重層塗膜または反射防止多層塗膜またはブラッグ鏡の低屈折率の層を構成する層で被覆された基材である。
最後に、本発明の目的は光学または眼科レンズを構成する上に言及したメソポーラス層で塗膜された基材である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的は本発明にしたがってメソポーラス層を被覆した基材を生産する方法により対処することができ、その構成は以下の通りである:
a)次の化学式の化合物から選択された前駆体物質:
M(X)4 (I)
ここに、X は加水分解性の基で、アルコキシが好ましいが、アルコキシ、エステル類およびハロゲン類の基から選択されることが好ましく、M はシリコンが好ましいが、シリコンまたは4価金属およびこれらの混合物を表す;少なくとも1種類の有機溶媒;少なくとも1種類の細孔形成物質;および水;および随意的にX基を加水分解するための触媒; を含むメソポーラス層の前駆体ゾルを調合する
b)前駆体ゾルのフィルムを基材の主表面に成膜し、成膜したフィルムのメソポーラス構造を形成する;
c)随意的に成膜したフィルムのメソポーラス構造を硬化する;
d)細孔形成物質を除去する;および
e)メソポーラス層を塗膜した基材を得る;
当該方法は以下のことを特徴とする:
(i)細孔形成物質の除去は≦150℃の温度、好ましくは≦130℃、より好ましくは ≦120℃、そしてさらにより好ましくは≦110℃で行われる;および
(ii)当該方法は前駆体ゾルのフィルムの成膜工程(b)の前、および/または工程(b)の後に少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の反応性物質を導入する工程を含む。
【0017】
工程(c)をおこなう場合に、少なくとも1つの疎水基を持つ前記反応性物質の導入は工程(c)の後に実施される。
少なくとも1つの疎水基を持つ前記反応性物質の導入は工程(d)の後に実施されることが好ましい。
本発明で用いる用語「疎水」基とは水分子と(とりわけ水素、ファンデルワールス、双極子結合により)結合する傾向がない原子の組合せを意味するものと解釈されている。
本発明による方法には150℃を超える温度で行われる工程を含まず、とりわけ成膜フィルムのメソポーラス構造(c)を硬化する工程は≦150℃、好ましくは ≦130℃、より好ましくは ≦120℃、そしてさらにより好ましくは ≦110℃までの加熱しか含まないことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以降の記述では添付した図1に示す異なる量のMTEOSで合成したMTEOS/TEOSフィルムの状態図について言及する。
メソポーラス層の前駆体ゾルは公知で通常は少なくとも1種類の化学式(I)の前駆体物質またはこの前駆体物質の加水分解物、少なくとも1種類の有機溶媒、細孔形成物質および水を含み、化学式(I)の前駆体物質が見いだされる媒体は通常は酸性媒体で媒体の酸性の性質は例えば無機の酸、一般的にはHClを加えて得られる。
【0019】
上に指摘したとおり、前駆体物質は次の化学式を持つ化合物および化合物の混合物から選択される:
M(X)4 (I)
ここに、X基は同一でも別でも、加水分解性の基で、アルコキシ基から選択されることが好ましく、とりわけC1〜C4 アルコキシ、エステル類
【0020】
【化1】

ここにRはアルキルラジカルで、好ましくはC1〜C6内で、メチルもしくはエチル、またはCl、BrおよびIのようなハロゲンが好ましく、Mはシリコンもしくは4価の金属である。
X基はアルコキシラジカルで、とりわけメトキシまたはエトキシであることが好ましく、好ましくはエトキシである。
Mで表される4価の金属からは、Ti、Zr、Snを挙げることができる。
Mはシリコンであることが好ましい。
化学式(I)の好ましい化合物はテトラエトキシシランSi(OC2H5)4(TEOS) である。
【0021】
ゾル中の前駆体物質の量は前駆体ゾルの全重量に対し通常は重量で10から30%である。
本発明による前駆体ゾルの調合に適した有機溶媒または有機溶媒混合物はすべて従来から使われている溶媒で、より具体的には極性溶媒のとりわけアルカノール類でエタノール、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、およびn−ブタノールならびにこれらの混合物などである。
通常、溶媒は前駆体ゾルの全重量に対し重量で40から90%の割合を占める。
好ましい溶媒はエタノールである。
前駆体ゾルの細孔形成物質は非−界面活性でもまたは界面活性の細孔形成物質であってもかまわない。
【0022】
使用できる非−界面活性の細孔形成物質は次のものを含む:
− エチレンポリオキシドで、モル質量が50000および300000の間に含まれるもの、
− ポリエチレングリコールで、モル質量が50000および300000の間に含まれるもの、
− ガンマ−シクロデキストリン、乳酸、
− 糖類、例えばD−グルコース、マルトース。
前駆体ゾルの界面活性細孔形成物質は単一の界面活性化合物から構成されていても、または界面活性化合物の混合物からでもよい。界面活性化合物は非−イオン性、陽イオン性、陰イオン性または両性であってもよい。
【0023】
好ましい界面活性化合物の中では、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのジブロック共重合体、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのトリブロック共重合体、ポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテル類、とりわけ、例えばポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテルの様なポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル類、およびエトキシレート化アセチレン型ジオール類が挙げられる。好ましい界面活性化合物は臭化セチルトリメチルアンモニウムである。
これら界面活性物質の殆どは市販されていて、例えばトリブロック共重合体のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンはBASFからPLURONICTMの名で市販され、またポリ(エチレンオキシ)アルキルエーテル類はICIからBRIJ 56TM (C16H33(OCH2CH2)10OH)、BRIJ 58TM (C16H33(OCH2CH2)20OH) およびBRIJ 76TM (C18H37(OCH2CH2)10OH)の名で市販されている。
【0024】
通常、細孔形成物質は前駆体ゾルの全重量に対して2から10%の割合を占める。
一般に化学式(I)の前駆体物質および随意的に前駆体物質に加えられる少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質に対する細孔形成物質の重量比は0.01から5まで変動するが、0.05から1が好ましい。
前駆体ゾル中に存在する水は通常前駆体ゾルの全重量に対し重量で10から20%の割合を占める。
基材の主表面に対する前駆体ゾルフィルムの成膜工程(b)は、前駆体ゾルが少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質で処理されていてもいなくても、従来のすべての方法、例えばディップコーティングによる成膜、スプレーによる成膜、またはスピンコーティングによる成膜によってでも実施できるが、スピンコーティングによることが好ましい。
【0025】
成膜工程(b)は湿度の割合(相対湿度RH)が40から80%で変動する雰囲気で実施されることが好ましい。
成膜した前駆体ゾルのメソポーラス構造の硬化工程(c)は随意的に有機溶媒または有機溶媒の混合物を前駆体ゾルのフィルムから除去し終え、続けてゾル中に存在するシラノール類を、通常は加熱により縮合することから成る。工程(c)は≦150℃の温度、好ましくは ≦130℃、より好ましくは≦120℃、そしてさらにより好ましくは≦110℃で実施される。
前に述べたとおり、細孔形成物質の除去工程(d)は≦150℃の温度、好ましくは ≦130℃、より好ましくは≦120℃、そしてさらにより好ましくは≦110℃で実施される。
【0026】
この工程は有機溶媒または有機溶媒の混合物、超臨界状態の流体(通常は超臨界CO2)を用いた抽出、UVおよび/またはオゾン照射を用いた分解、プラズマまたはコロナ放電処理により実施できる。細孔形成物質の除去は抽出により行われることが好ましい。抽出は溶剤を用いて、形成されたメソポーラスフィルムを浸漬して実施されることが好ましく、好ましくは≦150℃の温度に加熱した有機溶媒または溶媒の混合物中で硬化される。沸点が ≦150℃、好ましくは≦130℃、より好ましくは ≦120℃、そしてさらにより好ましくは ≦110℃である適切な溶媒ならどの様なものも用いることができる。好ましい溶媒はアルカノール類、とりわけエタノール(78℃で還流)、アルキルケトン類、とりわけアセトン(56℃で還流)およびジクロロメタンの様なクロロアルキル類である。
有機溶媒を用いて、好ましくは還流により細孔形成物質を抽出することにより、最終メソポーラス層内により多くの疎水基を維持することおよびメソポーラス層の最終厚みを良好に調整することが可能となる。
少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質もまた工程(d)の間に、とりわけこの工程(d)で抽出溶媒が用いられている時に導入することができる。
【0027】
本発明による第1の実施形態によると、少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質を導入する工程(ii)はフィルムの成膜工程(b)の前に、少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の第1試薬を導入することおよび工程(b)または(c)の後に第1試薬とは異なる少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の第2試薬を導入することから構成される。
【0028】
少なくとも1つの疎水基を持つ第1試薬は前駆体ゾル中に、通常は有機溶媒中の溶液の形で直接加えられることが好ましく、次の化学式を持つ化合物および化合物の混合物から選択されることが好ましい:
(R1)n1(R2)n2Si または (R3)n3(R4)n4Si-R’-Si(R5)n5(R6)n6
(II) (III)
ここに:
-R1、R3およびR5は飽和または不飽和炭化水素基で、C1〜C8内のものが好ましく、C1〜C4内のものがより好ましく、例えばメチルまたはエチルの様なアルキル基、ビニル基、アリール基、例えばフェニルで随意的に1つまたは幾つかのとりわけC1〜C4内のアルキル基;および炭化水素基のフッ化またはペルフルオロ化類似体で置換されたものを表す;
-R2,R4およびR6は加水分解性の基であり、好ましくはアルコキシ基、とりわけC1〜C4内のアルコキシ、エステル類
【0029】
【化2】

ここにRはアルキルラジカルで好ましくはC1〜C6内、とりわけメチルまたはエチル、およびCl, BrおよびIの様なハロゲン類を表す;
-R’は-CH2-、-CH2-CH2- の様なアルキレン基、フェニレンの様なアリーレンを表す:
- n1は1から3の整数:
- n2は1から3の整数:
- n1+ n2=4;
- n3、n4、n5、およびn6は0から3の整数であるが、n3+n5およびn4+n6の合計はゼロに等しくはないという条件付である;および
- n3+n4= n5+n6=3 である。
【0030】
R1、R3およびR5がメチルを表しR2、R4およびR6がアルコキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシを表すことが好ましい。
第1疎水性試薬として好ましいものは、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)の様なアルキルトリアルコキシシラン類、ビニルトリエトキシシランの様なビニルトリアルコキシシラン類、3,3,3トリフルオロプロピルトリメトキシシランの様なフルオロアルキルトリアルコキシシラン類である。
少なくとも1つの疎水基を持つ第1試薬でとりわけ好ましいのはメチルトリエトキシシラン(MTEOS)CH3(OC2H5)3Siである。
一般に、少なくとも1つの疎水基を持つ第1反応性物質の化学式(I)の前駆体物質に対するモル比は10/90から50/50まで変動するが、MTEOSが前駆体ゾル中の第1疎水性試薬として用いられる場合には20/30がとりわけ好ましい。
【0031】
結合方法でとりわけ推奨できるのは2段階法で、第1段階で酸性媒体中の加水分解および上で規定した化合物M(X)4の縮合をおこない、続く第2段階で疎水基を持つ第1反応性物質と混合することから構成される。
この2段階のタイプの加水分解の興味深い点は大量の第1疎水性反応性物質を導入し疎水基を持つ第1反応性物質の、化学式(I)の前駆体物質に対するモル比を50/50に達することを可能にし、同時にメソポーラス層の規則正しい構造を維持できることである。
加水分解は酸性媒体中で、pHを好ましくは1および2の間に保ちながら水を加えることにより実施される。
【0032】
第1の段階の間、化合物M(X)4 の加水分解は幾分過剰な水の存在下で、一般には化合物M(X)4 の加水分解性の基の化学量論的な加水分解に必要な水のモル量の1から1.5倍を超える水の量で実施されることが好ましい。
そうすれば反応は進むことができる(ゾルの熟成)。この操作の間、ゾルは50から70℃台、一般には60℃の温度に、30分から2時間維持されることが好ましい。
縮合はより低温でも実施可能であるが、より長時間の縮合時間を伴う。
再度好ましくは、第1疎水性試薬を導入してから速やかに前駆体ゾルを成膜し前駆体ゾルのフィルムを形成しなくてはならず、5分以内の時間が好ましく、2分以内の時間がより好ましい。
【0033】
この短い時間枠内で進めることにより、メソポーラス層の成膜および形成の前に第1試薬の縮合反応を最小限にすることが可能となる。
換言すれば、第1試薬から生じる縮合種の顕著な形成を誘発することなしに第1疎水性試薬の単なる部分的加水分解が誘発される。
第2の疎水性試薬または第2の疎水性試薬の混合物の導入は、第2の疎水性試薬または疎水性試薬の混合物が、気体状態が好ましいが液体または気体状態で、細孔形成物質を除去した後に得られたメソポーラス層と接触して実施されることが好ましい。
【0034】
代わりに、第2の疎水性試薬または疎水性試薬の混合物は工程(d)の間に導入することも可能で、とりわけ抽出溶媒が用いられる場合にそうであり、第2の疎水性試薬または疎水性試薬の混合物は抽出溶媒中に可溶化することもできる。
少なくとも1つの疎水基を持つ第2試薬でとりわけこの発明に適したものは、好ましくはシリコンの化合物で、メソポーラス層の残りのヒドロキシル基、とりわけSi-Cl、Si-NH-、Si-OR官能基と反応できるという単機能だけを持つものであり、ここにRはC1〜C4内のアルキル基であることが好ましい。
シリコン化合物の好ましい疎水性官能基はアルキル基で、好ましくはメチル、アルキル、アリール、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル基である。
【0035】
第2試薬として、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシランの様なクロロシラン、またはトリメチルメトキシシランの様なアルキルアルコキシシランが具合良く使用することができる。
好ましい実施形態において、疎水基を持つ第2試薬はトリアルキルシリル、好ましくはトリメチルシリル、シラザン、とりわけジシラザンさらに中でもヘキサメチルジシラザン(CH3)3Si-NH-Si(CH3)3 (HMDS)である。
トリメチルクロロシランもまた第2疎水性試薬として具合よく用いることができる。
第2実施形態によると、試薬または試薬の混合物は細孔形成物質を除去する工程(d)の後でのみ、上で記載したのと同じ様にして、同じ第2疎水性試薬が導入される。この第2実施形態において、前駆体ゾルに対する第1疎水性試薬の導入がないという事実を除いて、方法は上に記載したものと同じである。
【0036】
本発明によるメソポーラス層の構造は秩序ある構造にも、ないものにもできる。
メソポーラス層の構造は秩序ある構造であることが好ましい。
一般に、秩序ある構造はより優れた機械的特性を与え、この方法の再現性の増大を可能にする。
秩序ある構造は具体的には3d六方晶系、立方晶系または2d六方晶系の型となり得る。
3d六方晶系型の構造が好ましい。
ここに用いた秩序という用語は、厚みで少なくとも20nm、成膜層の面の区画寸法で少なくとも20nm、好ましくは300nmの範囲で周期的な構成を持つ構造を意味するものと解釈されている。
【0037】
重量比、

を選ぶことにより、工程(a)において、最終フィルムの異なるタイプの秩序ある構造を得ることが可能である。
とりわけ、細孔形成物質が CTAB で MX4化合物が TEOS である場合で、工程(b)の前に少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質が加えられなければ、得られるものは:
− 重量比が次の場合には3d六方晶系構造(3dH)
0.140 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.175
− 重量比が次の場合には立方晶系構造(C)
0.210 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.245
− 重量比が次の場合には2d六方晶系構造(2DH)
0.280 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.350
【0038】
本発明の方法により得られるメソポーラス層は3d六方晶系構造を持つことが好ましい。
工程(b)の前に加えられた MTEOS 疎水性物質が存在し、MTEOS/TEOSモル比=1の場合、上で引用した重量比は顕著に変わる:
− 3d六方晶系構造:
0.210 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.280
− 立方晶系構造:
0.297 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.332
− 2d六方晶系構造:
0.350 ≦ ( CTAB/TEOS ) ≦ 0.385
MTEOS/TEOS モル比が1より大きい場合、もはやフィルムは構築されない。
【0039】
MTEOS/TEOS モル比が1より少ない場合、本発明によるメソポーラス層は3d六方晶系、立方晶系および2d六方晶系型の構造を持つ。MTEOS/TEOS モル比の値が大きいほど、相を制約するCTAB/TEOS のモル比が大きくなる。
本発明によるメソポーラス層は通常100から500nmの範囲の厚みを持つが、150から400nmが好ましい。一般的にこれは低屈折率、つまり屈折率層 ≦1.50(λ=633nm、T=20〜25℃)を持つが、1.20から1.35が好ましい。
【0040】
基材はどの様な透明または不透明の固体素材から構成することも可能で、無機ガラス、セラミック、ビトロセラミック、金属またはプラスチック、熱可塑性または熱硬化性素材(有機ガラス)の様なものがある。基材は透明な素材であることが好ましく、透明なプラスチック素材であることがより好ましい。
基材に適した熱可塑性素材としては、(メタ)アクリル系(共)重合体、とりわけポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート類(PC)、ポリウレタン類(PU)、ポリ(チオウレタン類)、ポリオールアリルカーボネート(共)重合体、熱可塑性ビニルエチレン/アセテート共重合体、ポリエステル類の例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)またはポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリエピスルフィド類、ポリエポキシド類、ポリカーボネート/ポリエステル共重合体、シクロ−オレフィン共重合体のエチレン/ノルボルネン共重合体またはエチレン/シクロペンタジエン共重合体およびこれらの組合せ、が挙げられる。
【0041】
本発明による好ましい基材はアルキルメタクリレート類の重合により得られる基材、とりわけメチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートの様なアルキルメタクリレートで C1 〜 C4 内のもの、直鎖状または枝分かれした脂肪族系または芳香族系ポリオールアリルカーボネート類の様なアリル誘導体、チオ(メタ)アクリレート類、(ポリチオウレタン類を得るための)ポリチオール/ポリイソシアネート前駆体混合物、エピスルフィド類、ポリエトキシレート化ビスフェノールジ(メタ)アクリレート類の様なポリエトキシレート化芳香族系(メタ)アクリレート類を含む。
他の適切な基材としてポリカーボネート(PC)が含まれる。
【0042】
推奨できる基材としては、ポリオールアリルカーボネート類の(共)重合により得られる基材が挙げられ、エチレングリコールビスアリルカーボネートの(共)重合体、ジエチレングリコールビス2−メチルカーボネート、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールビス(2−クロロアリルカーボネート)、トリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、1,3−プロパンジオールビス(アリルカーボネート)、プロピレングリコールビス(2−エチルアリルカーボネート)、1,3−ブテンジオールビス(アリルカーボネート)、1,4−ブテンジオールビス(2−ブロモアリルカーボネート)、ジプロピレングリコールビス(アリルカーボネート)、トリメチレングリコールビス(2−エチルアリルカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス(アリルカーボネート)、イソプロピレンビスフェノールAビス(アリルカーボネート)が含まれる。
【0043】
とりわけ推奨できる基材はジエチレングリコールビスアリルカーボネートの(共)重合により得られる基材で、例えばCR 39TMの商標名でPPG工業(ORMATM ESSILOR レンズ)により売られている。
その他のとりわけ推奨できる基材としては、フランス特許出願FR−A−2734827に記載されている様なチオ(メタ)アクリル系モノマー類の重合およびポリカーボネート類により得られる基材を挙げることができる。
当然、上記モノマー類の混合物を重合しても基材は得られるし、またはこれら重合体や(共)重合体の混合物を含むこともできる。
メソポーラス層はむき出しの、つまり被覆していない基材の、またはすでに1もしくは幾つかの機能性膜を被覆した表面に形成することができる。
【0044】
この様に眼科光学に於いては、例えば眼科レンズの様に透明な有機物でできた基材の主表面に1つまたは幾つかの機能膜を塗膜し最終レンズの光学的および/または機械的特性を向上させることはよく知られていることである。また、基材の主表面には予めプライマー塗膜を施しておき、耐衝撃性および/または後に続く最終製品の層、耐摩耗塗膜、反射防止塗膜、偏光塗膜、光変色性塗膜、着色塗膜またはこれらを2つ以上重ねた塗膜の接着性を向上させることもできる。
衝撃に対する抵抗を向上するプライマー塗膜はポリウレタンまたはアクリル系ラテックスが好ましい。
摩耗に抗するハードコートはポリ(メタ)アクリレートまたはシリコンベースの塗膜であることが好ましい。
【0045】
本発明内で推奨する塗膜の例にはシラン加水分解物をベースとした化合物、とりわけフランス特許第9302649号および米国特許第4211823号および第5015523号に開示されているエポキシシラン加水分解物をベースとしたものから得られる塗膜が含まれる。
好ましい耐摩耗性塗膜の処方にはエポキシシランおよびジアルキルジアルコキシシランの加水分解物、コロイド状シリコンおよび触媒的な量のアルミニウムアセチルアセトネートが含まれ、残りは本質的にこの様な処方に従来から用いられている溶媒で構成されている。
用いられる加水分解物はγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)の加水分解物およびジメチルジエトキシシラン(DMDES)のそれであることが好ましい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、メソポーラス層は予め基材上に成膜されている高屈折率層(HI、n>1.50)上に形成され、この様にして二重層反射防止膜の低屈折率層(LI)が形成される。HI層はアルコキシラン加水分解物、とりわけエポキシシラン、好ましくはエポキシトリアルコキシシランおよび高屈折率コロイドまたはこれらの前駆体を含む調合物を硬化して得ることが好ましい。
とりわけ、コロイド類はTiO2、ZrO2、Sb2O5、SnO2、WO3またはAl2O3コロイドであってもよい。
このHI層は1.50より高い屈折率、好ましくは1.7より高い、より好ましくは1.72から1.82、そしてさらにより好ましくは1.72から1.78を持っている。
【0047】
厚みは反射防止積み重ねにより変動するが、一般には10〜200nmで好ましくは80〜150nmである。
このHI層は幾つかの高屈折率および低屈折率層を交互に含む反射防止積層のHI層にすることも、とりわけ反射防止積層が多層の場合には可能である。
本発明によるメソポーラス層はそれが反射防止積層の外層を形成する場合にはそれ自体が10nm未満の疎水性および/または疎油性のトップコートで被膜されていることが好ましい。これら疎水性および/または疎油性のトップコートは当技術分野では周知のことで通常はフルオロシリコンまたはフルオロシラザン類、すなわちフッ素原子を含むシリコン類やシラザン類から製造される。疎水性および/または疎油性のトップコートの素材はKP801MTM という名称で SHIN ETSU から市販されている。この様な塗膜は一般的に従来からある熱蒸着技法により得られる。
【0048】
トップコートを形成するためのフルオロシラン類の別の好ましい部類は米国特許第6277485号に開示されているフルオロポリエーテル基を含むものである。
この様なフルオロシラン類は次の一般化学式で与えられる:
【0049】
【化3】

ここに Rf は1価または2価のペルフルオロポリエーテル基、R’1は2価のアルキレン、アリーレンまたはこれら2つの組合せで、随意的に1つか数個のヘテロ原子または官能基を含み随意的にハロゲン類で置換され、2から16の炭素原子を含むことが好ましい;R’2は低位アルキル基(つまり、C1〜C4 内のアルキル基);Y はハロゲン原子、低位アルコキシ基(つまり、C1〜C4 内のアルコシキ基でメトキシまたはエトキシが好ましい)、または低アシロキシ基(つまり、-OC(O)R’3でここにR’3はC1〜C4内のアルキル基);xは0か1;およびyは1(Rfは1価)または2(Rfは2価)である。
【0050】
適切な化合物は通常少なくとも1000の数平均分子量を持つ。Y はアルコキシ基でRf はペルフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
他の推奨できるフルオロシラン類は次の化学式のものである:
【0051】
【化4】

ここにn=5、7、9または11でRはアルキル基で好ましくは-CH3,-C2H5および-C3H7の様なC1〜C6内のもの;
CF3CH2CH2SiCl3
【0052】
【化5】

CF3CH2F2CH2CH2-SiR’’Cl2
ここにn=7または9でR’’は上に規定したとおりである。
【0053】
同等に推奨できるフルオロシラン類は米国特許第6183872号に開示されている有機フルオロポリエーテル基である。
フルオロポリマー類でSi基を持つ有機基は分子量が5×10から1×10で次の一般化学式で表される:
【0054】
【化6】

【0055】
ここに Rf はペルフルオロアルキル基を表し;Z はフルオロまたはトリフルオロメチル基を表し;a、b、cおよびeはそれぞれ、互いに独立に、0または1以上の整数を表すが、a+b+c+d+eの合計が1未満ではなくかつ、カッコの間にa、b、c、dおよびeと添字して表された繰り返しユニットの順番は表示したものに限定されないという条件付で;YはHまたは炭素原子を1から4含むアルキル基を表し;X’は水素、臭素または沃素原子を表し;R’’1はヒドロキシル基または加水分解性の基を表し;R’’2は水素の原子または1価の炭化水素基を表し;l は0、1または2をあらわし;mは1、2または3を表し;そしてnは少なくとも1に等しい、好ましくは少なくとも2に等しい整数を表す。
【0056】
本発明によるメソポーラス層は非常に様々な分野において用途がある:光学レンズ、特に眼科用レンズ、とりわけめがね類レンズ、誘導光学機器、回折回路、マイクロエレクトロニクス用ブラッグ鏡絶縁体、クロマトグラフィーのろ過膜および固定相。
【0057】
続く実施例で本発明を説明する。すべてのパーセントは別途示さない限り重量表示である。
<実施例1> TEOSをベースとし合成後にグラフト化して改質したメソポーラス層。
【0058】
1−a 前駆体ゾルの詳細
*試薬類
TEOS:Si(OC2H5)4
無水エタノール
希塩酸(pH=1.25)
CTAB (界面活性剤):C16H33N+(CH3)3, Br-
*無機ゾルの調合
TEOS を冷却器付フラスコ内でエタノール/希塩酸媒体中で60℃で1時間加熱して加水分解し次いで部分的に縮合する。モル比は次の通りである:
【0059】
【表1】

【0060】
(1) 水のpH1.25(塩酸により酸性化)
*エタノール中で界面活性剤溶液を調合し無機ゾルと混合する
超音波を数秒間これに通してCTAB をエタノール中に溶解する。冷却したら無機ゾルを加える。この工程は最終混合物のモル比CTAB/Siが0.10となる様に実施する。CTAB を溶解するのに用いたエタノールの容積は加えたゾルの容積に等しい。
【0061】
1−b 前駆体ゾルの成膜
使用した基材:シリコンプレート2.5cmx2.5cm
混合物の数滴を基材上に置き、次いでこれを3000rpmで2分間回転する(加速度は約33回転/秒)。成膜はチャンバー内で行われその湿度測定は水タンク中を通過する気泡の窒素流で調節される。この作業は十分に湿潤な雰囲気(RH>60%で持続的な窒素流)で実施されなくてはならず、さもないと CTAB ミセルを広範囲に首尾一貫した周期的な構造に正しく編成できなくなってしまう。
得られた基材は2つのバッチに分ける。
【0062】
1−c メソポーラス構造の硬化
前駆体ゾルのフィルムの第1バッチで被覆された基材を110℃で12時間加熱して3d六方晶系のメソポーラス構造を硬化する。
【0063】
1−d 界面活性剤の除去
界面活性剤は焼成(比較例)または有機溶媒による抽出(発明)により除去する。
<焼成>
第2バッチの基材に焼成を実施し、1−cの工程は対象とならない。
界面活性剤は450℃の空気中の焼成で分解される:1時間40分で200℃まで昇温、3時間20分で300℃まで昇温、1時間の停滞域、2時間30分で450℃まで昇温、1時間の停滞域。
<溶媒抽出>
この抽出は第1バッチの基材について、工程c) の後に実施する。
これは CTBA を溶解することを伴い、フィルムを5時間還流エタノール中に(78℃)、または2時間還流アセトン中に(56℃)浸漬するかのいずれかによる。これらの工程はいずれも先だって110℃で12時間の熱硬化が行われる。
3d六方晶系構造は CTBA の除去後も維持される。
これら2つの界面活性除去方法により、周期的構造はある程度の変形を伴うが維持される。得られたフィルムは著しく多孔性(空間約55%)である。これはよく調整された4nmのメソポア(ミセル空洞)および数オングストロームと判定されるマイクロポアの双方を含み、シリカ壁の内側に位置し原則として単分散はしていない。
【0064】
1−e 界面活性剤を除去した後の最終屈折率
屈折率は1.5および5eVの間で固定入射角(70°に近い)の分光楕円偏光法で測定する。測定はJobin-Yvon の楕円偏光計で行ない、設定値IIおよびIII(モジュレーター0°で分析器45°、次いでモジュレーター45°で分析器45°)で測定する。シリカ基材上に成膜したメソポーラス層はBruggemann の有効媒質近似式の2成分(シリカ+空隙)でモデル化した。以下にT=20〜25℃ において λ=633nmの屈折率の値を与える。
【0065】
【表2】

【0066】
1−f メソポーラス層を疎水性物質で処理する
*HMDS グラフト化手順
使用したシラン:ヘキサメチルジシラザン(HMDS)(CH3)3-Si-NH-Si-(CH3)3
メソポーラスフィルムを200μLのHMDSと共にシュレンクフラスコ内に入れる。系全体を固定1次真空(水銀で1から5mm)状態とし、次いで5分間70℃まで加熱する。
上の方法により加熱炉から出して直ちに(焼成)または抽出後直ちに(有機溶媒抽出)HMDS のグラフトが行われる。
フィルムはその3d六方晶系構造を維持する。
【0067】
1−g 屈折率および安定性
塗膜した基材は常温に放置されるがメソポーラス層のどの様な屈折率(λ=633nm、T=20〜25℃)の変化もスペクトロスコピー楕円偏光法により、焼成した非グラフト化TEOSフィルムと比較することで辿ることができる。
【0068】
【表3】

【0069】
表は本発明による方法で得られたメソポーラス層が屈折率の顕著な安定性を示すことを表している。
<実施例2> 合成途中および合成後のグラフトにより改質されたTEOS をベースとしたメソポーラス層。
【0070】
基本的な基材は実施例1に同じ
2−a 前駆体ゾルの詳細
実施例1で生産したシリカゾルは部分的に縮合した二酸化ケイ素で大容量のシラノール官能基を含む小さなポリマークラスターで構成されている。後者は混合物に MTEOS が導入される時に消滅してしまう。このため我々はセット(二酸化ケイ素ポリマークラスター+METOS)が十分に疎水性であり続けることによりシステムの親水性−疎水性バランス(重合したMETOSは加水分解した非縮合METOSとは異なり疎水性であるため)を乱すことがない様にこの合成系を設計した。
以下に開示する合成系は、CTAB/TEOS および MTEOS/TEOSのモル比はそれぞれ0.16および2/3である。
*シリカゾルの調合
TEOS は実施例1に記載したとおりの方法で加水分解および縮合する。得られたゾルを氷浴で0℃まで冷却する。
*界面活性剤溶液の調合およびMTEOS の添加
前もってエタノール中に CTAB 48.7g/Lの原溶液を調合しておく。溶液6.7mLを取り出し、これに純MTEOS 0.75mLを加える。
*シリカ/MTEOS/界面活性混合物
シリカゾル3mLを氷浴に突っ込んだガラス瓶に入れ、酸性化した水(HCl pH=1.25)67μLを加える。次いでこの溶液をCTAB/エタノール/MTEOS 混合物にかき混ぜながら加える。
【0071】
2−b 前駆体ゾルの成膜
1分30秒後、混合物数滴を基材上に置き、次いでこれを2分間3000rpmで回転する(加速度は約33回転/秒)。成膜は強力な窒素流のあるチャンバー内で行われ、その雰囲気の相対湿度はT=20〜25℃の51%と同等である。
2−c メソポーラス構造の硬化
前駆体ゾルのフィルムで被覆した基材を110℃で12時間加熱しメソポーラス構造を硬化する(シラノール間の縮合)
【0072】
*得られた構造
得られたフィルムは約260nmの厚みで、3d六方晶系構造を持つ。
2−d 界面活性剤の除去
界面活性剤は有機溶媒による抽出により除去される。
フィルムを乾留状態のアセトン中に2時間置く。
【0073】
2−e メソポーラス層を疎水性物質で処理する
アセトンで表面活性を取り除いた後、メソポーラス層は上に記載した方法により直ちにHMDS でグラフトする。
フィルムはその3d六方晶系構造を維持する。
塗膜した基材を常温に維持し、メソポーラス層の屈折率変化を測定する。
【0074】
【表4】

【0075】
この様にして眼科用めがねに用いられる基材および塗膜に匹敵する穏やかな処理を用いて(ある期間を通じて)安定した低屈折率層が得られる。
我々はまた実施例2を異なる量のMTEOS および異なる量のCTAB で繰り返し、対応するフィルムを形成した。
この様にしてMTEOS−TEOS−CTAB三成分系の状態図をプロットすることができる。
これを図1に示してある。
この図はCTAB/TEOSおよびMT(MTEOS/TEOS比)モル比による3相の存在を明らかにしている。
MT 比が1より上では、もはや構築は観察されていない。
<実施例3> 細孔形成物質の除去(成膜工程 b の後に)と同時に疎水基を持つ反応性物質の導入:トリメチルメトキシシラン(CH3)3SiOCH3(TMMOS)をメチルエチルケトン CH3-CO-CH2CH3(MEK)にグラフト;同時にCTABの除去。
【0076】
この実施例は工程(d)の時に導入される疎水性物質のグラフト法について記載している。
工程a)、b)およびc)は実施例1から全く同様に再現している。
工程a)およびb)の後でCTBAで構築された3d六方晶系構造を持つメソポーラス二酸化ケイ素でできたフィルム(約4cm、初期の厚み340nm)をメチルエチルケトン(MEK)125mL中に放り込む。この溶媒はアセトンより好まれるがその理由は沸点がより高く(56℃に対し80℃)、このためグラフト反応を速めることが可能となるからである。TMMOS 1mL(シラノール類がグラフトする量に比べて大幅に過剰に)を加え、全体を加熱して還流させる。CTAB の除去およびTMMOS のグラフトは前もって混合物から取り出しアセトン中で数分すすいだフィルムについて実施するIRTF 分光法で監視する。屈折率および厚みはUV可視偏光解析法により測定する。グラフトしたメチル基の量はフィルムの厚みに依存して2965cm−1にあるSi-CH3バンドの面積から測定する。
【0077】
18時間の還流の後、1mLの新たなTMMOS を加える。次いで約1時間30分後にトリエチルアミン(CH3CH2)3N (TEA) 50μLを反応に触媒作用を与えるために加える。反応が終了すると、633nmで測定するフィルムの屈折率は安定し1.30である。HMDS で(気相中で、cf.実施例1)グラフトした3d六方晶系二酸化ケイ素のメソポーラスフィルムとの比較では液相および気相でグラフトしたメチルの量が似通っていることを示している。
<実施例4> ジクロロエタン(CH2Cl2)中のグラフト;CTABの同時除去。
【0078】
実施例3の方法をHMDS の代わりに3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシランCF3-CH2-CH2-Si(CH3)2Clを用い、125mLのMEK の代わりに125mLのジクロロメタンを用いて再現する。
18時間の還流の後にトリエチルアミン(TEA、160μL)を加えることにより反応を触媒することが可能となる。
フィルムの633nmで測定した最終屈折率は、1.338である。
<実施例5から8>
【0079】
実施例2においては、本特許はフィルムを成膜する工程(b)の前に導入される第1疎水性物質のMTEOS を用いることにより機能化する体系化したメソポーラスフィルムの合成について開示している。実施例5から8においては、フィルムを機能化するために異なるシラン類で同様の方法を用いている。下の表が得られた結果を示している。
【0080】
【表5】

MTEOS:メチルトリエトキシシランCH3-Si(OCH2CH3)3
VTEOS:ビニルトリエトキシシランCH2=CH-Si(OCH2CH3)3
DMDEOS:ジメチルジエトキシシラン(CH3)2-Si(OCH2CH3)2
C3fTMOS:3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシ
シラン CF3-CH2-CH2-Si(OCH3)3
<実施例9> メソポーラス層を反射防止積層内に成膜
【0081】
メソ構造の層は次の方法で成膜される:
使用した基材はESSILOR 製のジエチレングリコールビスアリルカーボネート共重合体(PPG 工業のCR 39TM )でできた平坦 ORMATM レンズ(−2ジオプターの矯正および直径65mm)である。
レンズの凸面は下に示す様に調合し形成した耐摩耗塗膜が被覆されている:
135.7部のγ−グリシドキシプロピルトリメチルオキシシラン(GLYMO)および49部のジメチルジエトキシシラン DMDES を含む溶液内に42.9部の0.1N塩酸を滴下により導入する。
加水分解した溶液を常温で24時間かき混ぜ、次いで8.8部のアルミニウムアセチルアセトネート、26.5部のエチルセロソルブおよび400部のメタノール中の30%コロイド状シリカおよび157部のメタノールを加える。
少量の界面活性剤を加える。
【0082】
調合物をレンズの表面に塗り60℃で15分間の予熱をする。次いでこれを100℃の加熱炉に3時間入れる。
− 表面処理:耐摩耗塗膜を苛性ソーダの5%水溶液に50℃で3分間アルカリ腐食する;これを常温の軟化水中ですすぐ;次いで常温の脱イオン水中ですすぐ;次いで常温のイソプロパノール中に放置する。
− 高屈折率層(HI 層)の成膜:次いで高屈折率層(HI)(厚み135〜140nm、屈折率1.75、赤外線による約10秒間の熱処理)を耐摩耗塗膜上にスピンコートして成膜する。
【0083】
Glymo/TiO2 のルチルコロイドタイプの高屈折(HI)の調合物を次の様にして得る:
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Sivento)90.45gをビーカーに計量し連続的にかき混ぜる。0.1N酸性水20.66gを溶液に滴下で加える。加水分解中の温度を調節し決して45℃に到達させない。
酸性水をすべて加えてしまってから15分間加水分解物をかき混ぜ続ける。Catalyst and Chemical社(CCIC)のコロイド状TiO2 OptolakeTM.1120Z(11RU-7.A8)コロイド(乾燥分重量で20%)を計量し、160gのメタノールをコロイド溶液に加え常温で15分間かき混ぜる。
【0084】
コロイド−メタノール溶液800gを取り分け加水分解したグリシドキシプロピルトリメトキシシランに加える。
溶液を常温で24時間かき混ぜながら放置する。
99%のアルミニウムアセチルアセトネート([CH3COCH=C(O-)CH3]3Al, Sigma Aldrich社)9.14gを計量し溶液に加える。メタノール79.5gを混合物に加える。
溶液をかき混ぜながらさらに1時間常温で放置し、それから乾燥抽出分を測定する。
値は20%に等しくなる。
希釈溶媒はイソプロパノール(Carlo-Erba社)である。計量し溶液に加える溶媒の量は乾燥抽出物の6%希釈に該当しなくてはならない。この新しい6%溶液をかき混ぜながら5時間放置してから3μmでろ過し−18℃でフリーザー内に保管する。
【0085】
成膜の際、この溶液の1mLをスピンコートによりめがね上に成膜する。
− 低屈折率メソポーラス層(LI層)の成膜:次いで以下の様にしてHI層の上に低屈折率層を形成する:
− シリカゾルの調合は実施例1に記載した方法による。加水分解および縮合の後でゾルが一旦常温に戻ったら、0.45μmでろ過し氷浴内で冷却する。
− その間に、エタノール中にCTAB が48.7g/L の原溶液を調合する。溶液を0.45μmでろ過する。
− 3mLのシリカゾルを取り出し氷浴に突っ込んだガラス瓶に入れる。pH=1.25の希塩酸67μLを加える。
− 別にCTAB/エタノール溶液6.7mLを別のガラス瓶に入れ、MTEOS 0.75mL を加える。フラスコをかき混ぜる。
− 酸性化したシリカゾルの入ったガラス瓶の内容物をCTAB/エタノール/MTEOS 混合物の入ったガラス瓶にかき混ぜながら注ぎ込む。
− 1分30秒後、無水アルコール8mLを加え、数秒の間放置する。
− 混合物2.5mLを基板上に置き、次いでこれを2分間5500rpmで回転する(加速度約33回転/秒)。成膜を行うチャンバーはT=20〜25℃、強い窒素流で、相対湿度が51%になる様に前もって調節しておく。
− 成膜後、サンプルを常温で数時間乾燥し次いで熱硬化を110℃で12時間行う。
− 次いでサンプルを還流するアセトン中に2時間放置し、次いで直ちに多区画反応装置に移す。1つの区画には病理学キャビネットで取り込んだHMDS0.5mLが入っている。この区画は栓で閉めてある。
− 処理するレンズが入っている主区画を1次真空下(1から5mmHg)に数分置き、その後栓を開いてHMDS 蒸気を通過させる。
− 数秒後、動的な減圧を遮断しチャンバー内にHMDS 蒸気圧を生じさせる。HMDS をメソポーラスと接触させたまま1時間放置し、その後反応器を開く前にチャンバーを数回窒素でパージする。
【0086】
この様にして得られた低屈折率メソポーラス層の厚みは約120nm(成膜直後は130nm)である。
比較のため、同一の基材を用意し、同じ耐摩耗基材を被覆したが従来からある真空下の蒸着技法により単層の反射防止塗膜を、基材から始まって次の順で被覆した:

得られた反射防止は多層反射防止である。
【0087】
上に記載したスピンコート法で耐摩耗層および屈折率1.75のHI 層を被覆した基材も準備し、その上に以下の様にしてLI メソポーラス層を成膜する:
無機ゾルを実施例1に記載した方法により調合する。次いでCTAB 0.343gを無水エタノール20mLに溶解し、次いでこれが一旦常温に戻ってからゾル5mLを加える。混合物数滴を基材上に置き、次いでこれを2分間4000rpmで回転にかける(約66回転/秒の加速度)。成膜は相対湿度が60%であるチャンバー内で行われる。
サンプルを次いで110℃の加熱炉に12時間入れ、次いで還流するエタノール中に5時間浸漬する。
TEOS のみ(疎水性物質なし)に基づくメソポーラス層の厚みは約116nmで屈折率は1.29である。
*反射率結果
【0088】
処理面の反射スペクトルを分光高度計を用いて380および780nmの間で測定する。(RMS 測定:反射率測定システム)。
【0089】
結果を以下の表に示す。
【0090】
【表6】

異なるシステムの測色および反射率特性を検討した。h(色調)を度で、C*(彩度)、Rmean(残余反射率、可視スペクトルの平均)、およびRvis(視覚感度曲線により重み付けした反射率)。(hとC*)および(RmeanとRvis)の対は相互依存し;ここではとりわけ反射率(Rmean およびRvis)を考慮する。
【0091】
TEOS をベースとした疎水性物質を含まない二重層は急速に劣化することが判る。
【0092】
反射率結果
本発明によるメソポーラス層で処理した面の反射率をRMS により抽出数時間後、次いで数日後に測定した。レンズは常温に保った。結果を下の表に示す:
【0093】
【表7】

【0094】
本発明によるメソポーラス低屈折率素材からできた二重層は極めて効果的であることが注目される。さらに、時間経過(少なくとも2週間の時間尺度では)に対してかなり安定している。この安定性は未処理のTEOS フィルムからできた二重層のそれよりずっと良好である。
*耐摩耗性試験
【0095】
* 実施した試験のタイプ
<N10 ブロー試験>
反射防止層それ自体同士の間またはワニス上の反射防止層との密着試験である。反射防止処理の剥離強度評価で、イソプロパノールを吸収したSelvyt 布で覆った消しゴムでこする(Nx シリーズの10ソリシテーション)。結果:テストした各面の 傷跡/12の不良から良へ(3/12;6/12;9/12;12/12;>12/12)。テストは国際特許出願WO99/49097に詳細に記載されている。
【0096】
テスト結果:
【0097】
【表8】

# テストは12まで行うが、レンズはこれを超えてテストしたがさらなる劣化を示さなかった。12R とは「スクラッチ」や細かい線を意味し、これらはこの種の積層では特有のものである。
* 接触角
【0098】
測定はGBX 製のDigidrop角度計により実施する。自動的に4μLの水を調査するサンプルの表面に置き、次いで接触角を測定する。次のフィルムを比較した:
アセトンで抽出し次いでHMDSでグラフトしたメソポーラスTEOS をベースとしたフィルム;
アセトンで抽出したメソポーラスMTEOS/TEOSフィルム;
アセトンで抽出し次いでHMDSでグラフトしたメソポーラスMTEOS/TEOSフィルム;
【0099】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、異なる量のMTEOSで合成したMTEOS/TEOSフィルムの状態図で、MTEOS−TEOS−CTAB三成分系の状態図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラス層で被覆された基材の生産方法で:
a)次の化学式の化合物から選択される前駆体物質:
M(X)4 (I)
ここに、Xは加水分解性の基で、アルコキシが好ましいが、アルコキシ、エステル類およびハロゲン類の基の中から選択されることが好ましく、Mはシリコンが好ましいが、シリコンまたは4価金属およびこれらの混合物を表す;少なくとも1種類の有機溶媒;少なくとも1種類の細孔形成物質;および水;および随意的に物質Xの加水分解のための触媒、を含むメソポーラス層の前駆体ゾルを調合する;
b)前駆体ゾルのフィルムを基材の主表面に成膜し、成膜したフィルムのメソポーラス構造の形成;
c)随意的に成膜したフィルムのメソポーラス構造を硬化する;
d)細孔形成物質を除去する;および
e)メソポーラス層を塗膜した基材を得る;
ことを含み、当該方法は:
(i)細孔形成物質の除去は ≦150℃の温度、好ましくは ≦130℃、より好ましくは ≦120℃、そしてさらにより好ましくは ≦110℃ で行われる;および
(ii)当該方法は前駆体ゾルのフィルムの成膜工程(b)の前、および/または工程(b)の後に少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の反応性物質を導入する工程を含む;ことを特徴とする。
【請求項2】
150℃を超える温度で実施される工程を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成膜したフィルムのメソポーラス構造を硬化する工程c)が ≦150℃ の温度、好ましくは≦130℃、より好ましくは ≦120℃、そしてさらにより好ましくは ≦110℃ まで加熱することを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
化学式(I)の前駆体物質の加水分解性の基が、
メトキシまたはエトキシが好ましいがC1〜C4内のアルコキシ基;
エステル基
【化1】

ここにRはメチルまたはエチルが好ましいがC1〜C6内のアルキルラジカル;
Cl、Br、Iおよびこれらの基の混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
4価の金属がTi、Zr、Sn、好ましくはSiの中から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前駆体物質がテトラエトキシシラン(TEOS)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
溶媒がアルカノール類が好ましいが極性溶媒から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
細孔形成物質が非イオン系、陽イオン系、陰イオン系および両性界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
細孔形成物質が、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのジブロック共重合体、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのトリブロック共重合体、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、とりわけ、例えばポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテルの様なポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル類、およびエトキシレート化アセチレンジオール類およびこれらの混合物から選択されること特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細孔形成物質が臭化セチルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前駆体物質および随意的に前駆体物質に加えられる反応性物質に対する細孔形成物質の重量比は0.05から1までが好ましいが0.01から5まで変動することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
細孔形成物質の除去工程が有機溶媒または有機溶媒の混合物、超臨界状態の流体を用いる抽出、UVおよび/またはオゾン照射を用いる分解、プラズマまたはコロナ放電処理により処理されることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
細孔形成物質の除去工程が有機溶媒または有機溶媒の混合物を用いて、好ましくは還流状態で実施されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶媒がアルカノール類、とりわけエタノール、アルキルケトン類、とりわけアセトン、アルキルクロライド類、とりわけジクロロメタンの中から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程 d)の間に疎水基を持つ少なくとも1種類の試薬が加えられることを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの疎水基を持つ反応性物質を導入する工程(ii)は
前駆体ゾルのフィルムの成膜工程(b)の前に、前駆体ゾルに少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の第1試薬を加えることおよび
工程(b)または(c)の後に少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の、第1試薬とは異なる第2試薬をメソポーラス層へ導入することから構成されることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの疎水基を持つ第1試薬は次の化学式を持つ化合物および化合物の混合物から選択される:
(R1)n1(R2)n2Si または (R3)n3(R4)n4 Si-R’-Si(R5)n5(R6)n6
(II) (III)
ここに:
R1、R3および R5は飽和または不飽和炭化水素基で、C1〜 C4内のものが好ましく、例えばメチルまたはエチルの様なアルキル基、ビニル基、アリール基、例えばフェニルで、随意的に1つまたは幾つかのとりわけC1〜 C4内のアルキル基、およびフッ化またはペルフルオロ化類似体で置換されたものを表し;
R2, R4および R6は疎水基で、好ましくはアルコキシ基、とりわけ C1〜 C4内のアルコキシ、エステル類
【化2】

ここに R はC1〜 C6内のアルキルラジカルで好ましくはメチルまたはエチル、および Cl, Brおよび Iの様なハロゲン類から選ばれる;
R’はアルキレンまたはアリーレン基;
n1 は1から3の整数;
n2 は1から3の整数;および n1+ n2=4;
n3、n4、n5、およびn6は0から3の整数であるが、n3+n5およびn4+n6の合計はゼロに等しくはないという条件付である;および
n3+ n4=n5+n6=3;
ことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1試薬がメチルトリエトキシシラン(MTEOS)であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1試薬の前駆体物質に対するモル比は20/30が好ましいが10/90から50/50まで変動することを特徴とする、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前駆体物質は、少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の試薬を導入する前に加水分解および縮合されていることを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前駆体ゾルのフィルムを成膜する工程(b)が第1試薬を前駆体ゾルに加えてから5分以内に実施されることを特徴とする、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの疎水基を持つ第2試薬はシリコン化合物で、メソポーラス層のヒドロキシル基と反応できるという単機能を持ち、好ましくは少なくとも1つのトリアルキルシリル基、好ましくはトリメチルシリルを含むことを特徴とする、請求項16から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
第2試薬がクロロシラン、アルコキシシラン、好ましくは トリメチルメトキシシラン、フルオロシラン、好ましくは3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシラン、ジシラザンで好ましくは ヘキサメチルジシラザン (HMDS) であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の反応性物質を導入する工程(ii)は細孔形成物質除去工程(d)の後または最中にメソポーラス層内に少なくとも1つの疎水基を持つ少なくとも1種類の試薬を導入することのみを有することを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
試薬がメソポーラス層のヒドロキシル基と反応できる単機能のシリコン化合物から選択され、好ましくは少なくとも1つのトリアルキルシリル基、好ましくはトリメチルシリルを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
試薬がジシラザンで好ましくはヘキサメチルジシラザン(HMDS)であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
メソポーラス層が規則正しい構造を持つことを特徴とする、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
構造が3d六方晶系、立方晶系または2d六方晶系で、好ましくは3d六方晶系であることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
基材が無機レンズおよび有機レンズの中から選択されることを特徴とする、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
有機レンズが、メタクリル系(共)重合体、ポリカーボネート類、ポリ(チオ)ウレタン類、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(共)重合体、ポリエピスルフィド類、ポリエピオキシド類、ポリエステル類、ポリカーボネート/ポリエステル共重合体およびシクロオレフィン共重合体の中から選択されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
メソポーラス層がむき出しの基材上に形成されることを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
メソポーラス層が既に1または幾つかの塗膜を被覆された基材上に形成されることを特徴とする、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
塗膜が耐衝撃プライマー膜、耐摩耗塗膜および反射防止塗膜の中から選択されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
メソポーラス層が事前に基材上に成膜されている高屈折率層(n>1.50)の上に形成され、メソポーラス層は低屈折率(n≦1.50)であるため、高屈折率層およびメソポーラス層の組合せが2重層または多層の反射防止膜を形成することを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
メソポーラス層が疎水性および/または疎油性のフィルムで被覆されることを特徴とする、請求項1から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
基材が眼科用レンズであることを特徴とする、請求項1から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
請求項1から30のいずれかによる方法で得られるメソポーラス層で主表面を被覆された透明な基材で構成される、眼科用レンズ
【請求項38】
メソポーラス層が3d六方晶系構造を持つことを特徴とする、請求項37に記載の眼科用レンズ。
【請求項39】
メソポーラス層が低屈折率(n≦1.50)であること、およびこれが基材の主表面上に形成された高屈折率層(n>1.50)上に成膜され、高屈折率層と共に二重層または多層の反射防止膜を形成することを特徴とする、請求項37または38に記載の眼科用レンズ。
【請求項40】
高屈折率層それ自体が基材の主表面上に形成された耐摩耗塗膜上に形成されることを特徴とする、請求項39に記載の眼科用レンズ。
【請求項41】
メソポーラス層それ自体が疎水性および/または疎油性の層で被覆されることを特徴とする、請求項37から40のいずれかに記載の眼科用レンズ。
【請求項42】
基材が有機物であることを特徴とする、請求項37から41のいずれかに記載の眼科用レンズ。

【図1】
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【公表番号】特表2008−509800(P2008−509800A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524376(P2007−524376)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050300
【国際公開番号】WO2006/021698
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】