説明

メソ多孔性酸化亜鉛粉末及びこれを製造する方法

少なくとも50重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成する酸化亜鉛粉末が記載される。この粉末は、少なくとも0.8ミクロン、少なくとも1ミクロン、少なくとも2ミクロン又は少なくとも3ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する。この酸化亜鉛粉末の使用は経皮的な浸透のリスクを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に適用されたとき広域スペクトルの光防護を提供する可視光に透明な組成物に使用するための、メソ多孔性酸化亜鉛凝集体(aggregate)からなる粉末、及びこれを製造する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)が、290nmから約375nmまでの波長で紫外線(UV)光を遮蔽することは当業界で周知である。さらに、酸化亜鉛は、その抗菌性及び他の特性のために長く使用されてきた。これらの有益な特性にもかかわらず、酸化亜鉛含有製品が塗布された基材上の望ましくない白化作用という主な理由で、酸化亜鉛の使用は限定されてきた。酸化亜鉛が化粧及び日焼け止め配合物及び製品用の分散物に組み込まれる限り、配合者はZnOレベルを最小限に抑え、及び/又は、使用者は製品を控え目に又は表示されているより低いレベルで塗布し、白化を軽減又は最小限に抑えてきた。しかし、そうすることにおいて、製品の光防護の有効性は減少した。同様に、この種の白化は、光防護の透明コーティング及び透明プラスチックフィルムにおいても望ましくなかったし、現在も望ましくない。
【0003】
分散したZnO粉末を含有する光防護製品を塗布した後、基材(例えば皮膚)上で白化するのは、粒子からの、後方(すなわち、基材から遠ざかり見る人の方へ向かう)への光散乱に起因する。対照的に、前方(基材を通る)への散乱光は、光の透過率に寄与する。これは、当業界では「拡散」透過率として知られている。したがって、ZnOを含有する光防護製品を通る入射光の全透過率は、「正」透過率として当業界で知られている、散乱せずに透過する光だけでなく、拡散して透過する光も含む。
【0004】
粒子からの光の散乱及びその結果の白化に影響を与える主要因子は、粒径及び粒子が分散している媒体に対する粒子の屈折率を含む。一般に、粒子のサイズ又は粒子の相対屈折率を低下させると、製品の散乱及び白色度を減少させる。
【0005】
ZnO含有光防護製品によって引き起こされる表面白化の問題に取り組む先行技術は、概して、製品中の酸化亜鉛粒子の平均サイズを少なくとも0.2マイクロメートル未満に低減することに集中した。この粒径の低下は、粒子表面からの光の散乱を低減し、透明度を上げて、白色度を低減する。例えば、米国特許第5,587,148号明細書は、平均粒子径が約0.2マイクロメートル未満の酸化亜鉛の微粉化粒子の分散物を含む、実質的に可視光に透明な局所用の日焼け止め配合物を教示している。米国特許第5,032,390号明細書は、0.07ミクロンから0.3ミクロンの平均粒径を有する粒子状酸化亜鉛を1重量%から25重量%を含む日焼け止め組成物を教示する。ここに開示された組成物は、0.03ミクロンから0.07ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子状二酸化チタンを1%から25%含むことをさらに教示する。
【0006】
しかしながら、ZnO粒径のナノスケール(例えば特に約0.1ミクロン未満)への低下は影響なしではすまない。ナノサイズのZnO粒子は、遊離基の形成に関連した高レベル光触媒活性に関係し、その結果、化粧品、プラスチック及び塗料に通常含まれているポリマー成分の分解をもたらす。さらに、光防護パーソナルケア製品において、高い光触媒活性は、健康に有害な影響を引き起こすと報告されてきた遊離基を生成することがある。
【0007】
ナノサイズ粒子のより大きい有効表面積は、会合(flocculation)及び次に集合(agglomeration)の量を増加させる恐れがある。ナノサイズ粒子を含有する光防護製品は不安定で、エマルションの場合には相分離を起こす場合がある。この不安定性は、光防護のレベル低下のみならず、粒子サイズのみに基づいて予想されるより、高い光散乱及び白色度の増加をもたらすことがある。
【0008】
最近、ナノサイズ無機粒子の経皮的な浸透並びに有機日焼け止めフィルター及びこれらの分解生成物の全身への吸収という潜在的な負の健康影響に関する懸念が高まっている。これらの懸念が実証されるかどうか及びその程度に関係なく、有機日焼け止めフィルター及び/又はナノサイズの物理的日焼け止め遮光剤を最小限に抑える、又は、好ましくは、含んでいない局所用の光防護組成物に対するまだ満たされていない必要性があったし、今も存続している。製品安全性又は安定性に対する懸念を高めない十分に大きいサイズであり、透明なマトリックス中に分散したとき、実質的に可視光に透明で且つ白化がない又は最小限である酸化亜鉛粉末に対する必要性が依然存在する。
【0009】
粒子サイズを下げるかわりに、粒子界面で散乱する光の強度は、界面を横切る方向の屈折率の差を低減することにより低減することができる。例えば、ナノ多孔性のフィルム及びコーティングは、フィルム構造に関連する相対屈折率の低減による、改善された透明度及び低減した反射を示すと知られている。例えば、(ヒラー Hiller)ら(ネイチャー、材料編(Nature Materials),2002,1,pp 59〜63)は、増加した光透過率及び低減した反射を有するナノ多孔性ポリマーフィルムを記載している。米国特許第7,075,229号明細書は、透明なナノ多孔性アルミナフィルムを組み込んだ発光デバイスを教示する。米国特許出願公開第2006/0188432号明細書は、改善した透明度を有する多孔性酸化チタン粉末を製造する方法を教示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
透明性がナノサイズ粒子を基本的に含まない酸化亜鉛粉末の分散を用いて達成される必要性があったし、依然として存在している。この必要性は本発明の実施形態によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも50重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも40重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも30重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0014】
本発明の第4の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも20重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも88%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0015】
本発明の第5の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも10重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも93%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0016】
本発明の第6の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも50重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、30未満又は40未満又は50未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0017】
本発明の第7の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも30重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、25未満又は35未満又は45未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0018】
本発明の第8の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも20重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、25未満又は35未満又は45未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0019】
本発明の第9の態様によると、酸化亜鉛粉末であって、少なくとも10重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、10未満又は20未満又は30未満のCIE白色度を与え、凝集体が少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均凝集体サイズを有する上記粉末が提供される。
【0020】
本発明の第1から第9の態様のいずれか1つの酸化亜鉛粉末は、前記凝集体がメソ多孔性で、少なくとも0.25cm/g又は少なくとも0.35cm/g又は少なくとも0.5cm/gの全メソ細孔体積を有することを特徴とすることができる。
【0021】
前記凝集体は0.1から100ミクロンの範囲のサイズを有することができる。一形態において、前記数平均酸化亜鉛凝集体サイズは目標凝集体サイズと比較され、該数平均酸化亜鉛凝集体サイズが該目標凝集体サイズより大きい場合、粉砕を使用して低下させることができる。
【0022】
透明組成物を提供するために分散物において用いられるときのメソ多孔性酸化亜鉛粉末の一形態において、組成物に添加される酸化亜鉛の所与の重量パーセントにおいて、該組成物のSPFが、その数平均酸化亜鉛凝集体サイズと同等の粒子サイズを有する非多孔性酸化亜鉛粒子を含む同等の組成物について達成されるSPFより高くすることができる。
【0023】
一形態において、凝集体の開放メソ細孔を空気以外の物質で満たすことにより、粉末の屈折率を調整することができる。
【0024】
本発明の第10の態様によると、本発明の第1から第9の態様のいずれか1つの酸化亜鉛粉末を製造する方法が提供され、この方法は、メソ多孔性酸化亜鉛粉末を形成するために、メソ多孔性亜鉛前駆体材料が、該前駆体材料のメソ細孔率を保持し増加させるために十分に低い温度で熱処理されることを特徴とする。
【0025】
メソ多孔性亜鉛前駆体材料は、メソ多孔性酸化亜鉛粉末を形成するために、250〜575℃の範囲、300〜525℃の範囲、350〜475℃の範囲、又は400〜450℃の範囲のうち少なくとも1つの熱処理温度で熱処理することができる。
【0026】
一形態において、本方法は、メソ多孔性炭酸亜鉛粉末の沈殿を引き起こすためにかき混ぜながら、塩化亜鉛の水溶液を炭酸ナトリウムの水溶液と反応させることにより、メソ多孔性酸化亜鉛前駆体粉末を合成するステップをさらに含む。一形態において、塩化亜鉛の水溶液及び炭酸ナトリウムの水溶液を反応させる際に存在する塩化亜鉛と炭酸ナトリウムのモル比は、少なくとも1:2又は少なくとも1:3の1つとすることができる。
【0027】
本発明の第11の態様によると、実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、凝集体の形態の酸化亜鉛粉末が提供される。一形態において、酸化亜鉛粉末はメソ多孔性である。
【0028】
本発明の第12の態様によると、透明組成物を提供するために分散物中で用いられる場合に凝集体の形態である、実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、酸化亜鉛粉末が提供される。一形態において、酸化亜鉛粉末はメソ多孔性である。
【0029】
本発明の第13の態様によると、実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、酸化亜鉛粉末を製造する方法が提供される。一形態において、酸化亜鉛粉末はメソ多孔性である。
【0030】
本発明の本質についてのより詳細な理解を容易にするために、下記の添付の図面を参照し、実施形態を、あくまで一例として、詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】凝集体のサイズを示す、低倍率の、例1からのメソ多孔性酸化亜鉛粉末の高解像度走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】凝集体の開放メソ細孔を示す、より高倍率の、例1からのメソ多孔性酸化亜鉛粉末の高解像度走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】酸化亜鉛の重量%の関数としてプロットした例4の分散物の比重の測定値、並びに開放細孔が安息香酸アルキルで充填されていると仮定して算定した理論曲線を示すグラフである。
【図4】音響減衰(Dispersion Technology DT1200)を用いて測定された、粉砕されたメソ多孔性酸化亜鉛のカプリル酸カプリン酸トリグリセリド中の分散物の、粒子サイズの数加重分布を示すグラフである。
【図5】開放細孔の分布に対する熱処理温度の効果を示すグラフである。
【図6】細孔体積と熱処理温度との関係を示すグラフである。
【図7】例4によって形成された分散物の白色度に対する全細孔体積の効果を示すグラフである。
【図8】例4によって形成された分散物の全可視光透過率に対する全細孔体積の効果を示すグラフである。
【図9】全可視光透過率に対するZnO濃度の効果を示すグラフである。
【図10】CIE白色度に対するZnO濃度の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の具体的な実施形態を次に記載する。ここで使用される用語は具体的な実施形態のみを記載するためにあり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。他に定義されない限り、ここで使用される技術及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。特に断らない限り、本出願において用いられる場合、百分率数値は組成物の全重量に対する特定の成分の重量パーセントを指す。
【0033】
用語「凝集体(aggregate(s))」は、共有する界面で一緒に結合する複数の一次酸化亜鉛微結晶を指す。一次微結晶間の強い界面の結合のために、凝集体サイズを低下させるには高エネルギービーズ粉砕などの機械的な粉砕方法を用いることが必要である。この点では、「集合体(agglomerate)」は、集まった微結晶間のより弱い結合が、高剪断混合又は同様のより低エネルギーの混合及び分散方法を使用して集合体が分離、分散することが可能になるので「凝集体」と異なる。
【0034】
本明細書において用いられる用語「凝集体サイズ」は、液体、半固体又は固体の媒体においてばらばらに分散する離散的な独立の凝集体の外形サイズを指す。「平均凝集体サイズ」は、以下の式によって数学的に定義される:
【数1】


[式中、<d>は平均凝集体サイズであり;
は凝集体直径であり;及び、
はdの直径値を有する凝集体の分率である。]
【0035】
平均凝集体サイズは、凝集体数加重基準又は体積基準で報告することができる。当業者なら、粒径の所与の分布を有する所与の粉末については、体積加重平均が数加重平均より常に大きくなることを理解するだろう。凝集体サイズは、当業者に知られている顕微鏡、光散乱、音響散乱、沈降又は他の分級技術を用いて測定される凝集体の分布によって表すことができる。以下の説明において、凝集体のサイズ分布は静的レーザー光散乱及び音響減衰の両方を用いて測定した。
【0036】
本明細書において用いられる、用語「メソ多孔性」は約2nmから約100nmのサイズの範囲の細孔を指す。細孔は、凝集体表面を介して連絡し、その上に開いた「開放細孔」、又は凝集体表面から流体の進入が封鎖されている「閉鎖細孔」に分類される。凝集体の細孔サイズの分布及び全細孔体積は、ガス吸着及び比重びん法又は当業者に知られている他の技術を用いて測定することができる。
【0037】
用語「全エンベロープ体積」は、そのサイズに基づいた凝集体の絶対体積として定義される。全エンベロープ体積は、凝集体中に実際に存在する酸化亜鉛の体積プラス全細孔体積(これは閉鎖細孔の体積と開放細孔の体積の合計である)に等しい。
【0038】
用語「分散した」は、連続相に懸濁され、取り巻かれている凝集体又は粉末を指す。用語「分散物」は、別の物質、「分散媒(carrier)」内に懸濁される複数の凝集体を指す。分散媒内に分散したとき、凝集体は実質的に均一に分布する。
【0039】
用語「透明組成物」は化粧剤調製物、日焼け止め、コーティング、薬粧調製物又は医薬調製物としての又はプラスチック中での用途を有する組成物を含む。有利なことに、組成物は広域スペクトル紫外線防護を提供することができる。
【0040】
本発明のメソ多孔性の酸化亜鉛粉末は、0.1から100ミクロン、好ましくは0.2から10ミクロンの範囲のサイズを有する凝集体の形態をしている。重要なことには、本発明の凝集体は十分に大きいサイズであるので潜在的な安全問題は発生を免れることができる。1ミクロン又は1.5ミクロンより大きく且つ3ミクロンから10ミクロンの範囲の体積加重平均サイズの平均凝集体サイズを有するメソ多孔性の酸化亜鉛粉末の分散物を用いて高透明度は達成されるが、本発明における凝集体の数加重平均サイズは、0.8ミクロンより大きい。
【0041】
平均凝集体サイズは目標凝集体サイズと比較され、もし必要とされれば調節することができる。所与のサイズより小さい凝集体は複数の適切なサイズの開口部を通過するが、所与のサイズより大きい凝集体は保持される様な、例えば1種又は複数の篩、格子、メッシュ、スクリーンの使用などの任意の数の適切な方法を用いて、平均凝集体サイズが目標凝集体サイズを満たすように調節することができる。平均凝集体サイズは、遠心分離分級機、ろ過又はサイクロン分離などの他の分離方法を用いて、同等に調節することができる。そのうえ、平均凝集体サイズは流体分散媒中で摩滅ビーズ粉砕によって所与の値に低下させることもできる。
【0042】
本発明のメソ多孔性酸化亜鉛粉末は、凝集体が少なくとも0.25cm/gの全メソ細孔体積を有することを特徴とする。各凝集体は、5nmから約50nmの範囲の平均微結晶サイズ及び高いレベルの内部細孔率を有する複数の酸化亜鉛微結晶を含み、より詳しくは以下に記載する。
【0043】
凝集体の細孔サイズは2nmから100nmの範囲、好ましくは20から70nmの範囲にある。細孔は、凝集体を通じてつながり、凝集体の表面から流体進入を可能にする開放細孔、及び凝集体の表面からの流体進入を封鎖する閉鎖細孔の両方を含む。開放メソ細孔のサイズ分布及びメソ細孔の全体積は、当業界で知られているガス吸着技術を用いて測定される。例として、凝集体の平均開放細孔サイズは、0.35cm/gより大きい開放細孔の全体積に対して約30nmである。本発明の一形態において、凝集体は、35nmと等しい平均細孔サイズの、単峰性の細孔サイズ分布を有する。ガス脱着によって測定された比表面積は、20〜70m/gの範囲にある。
【0044】
一形態において、閉鎖細孔は、ヘリウムガス比重びん法を用いて測定して、凝集体の全エンベロープ(envelope)体積の2%から約15%を表す。
【0045】
全細孔体積が凝集体の全エンベロープ体積の少なくとも50%である場合、メソ多孔性酸化亜鉛粉末が分散媒中に分散するときに、高透明度の面から最もよい結果が達成される。この種の高い全細孔体積の存在の結果として、メソ多孔性酸化亜鉛粉末は、当業者に知られている標準技術を用いて測定して0.7g/cm未満のタップ密度(tapdensity)を有している。凝集体のエンベロープ密度は調節可能である。分散したとき、凝集体の開放メソ細孔はガス又は液体でもよい分散媒で充填できるようになるが、閉鎖メソ細孔は、CO又は空気などの気相で充填される。分散の間に酸化亜鉛より低密度の液相で開放細孔を充填すると、分散の間と後に重力により誘発される沈降に対して、高い安定性を提供できる。
【0046】
特定の理論によって縛られることは望まないが、メソ多孔性酸化亜鉛粉末が液体の分散媒中で分散される場合、凝集体細孔構造(<100nm)メソ領域であること、及びメソ細孔の大きさにより、凝集体の屈折率が空気充填閉鎖細孔、液体充填開放細孔及び酸化亜鉛微結晶の屈折率の体積加重平均と等しいことが理解される。したがって、開放メソ細孔の体積が増加するにつれて、分散物の分散媒相と凝集体との屈折率の差は低下する。凝集体の相対屈折率の低減は散乱を減少させ、凝集体を含む分散物の白色度の減少及び透明度の増加をもたらす。したがって、メソ多孔性酸化亜鉛粉末は分散物に用いることができ、化粧品において、日焼け止めとして、コーティングとして、プラスチックにおいて、医薬品において、化粧品において又はセラミック原料としての用途を有する透明光防護組成物を提供する。本発明のメソ多孔性酸化亜鉛粉末は適切な分散媒中で分散したとき、組成物を、可視光放射に対して高度に透明にすることが可能で、しかも、広域スペクトルにおける紫外線からの遮蔽を同時に提供する。
【0047】
組成物に添加された酸化亜鉛の所与の重量パーセントにおいては、同等サイズの非多孔性の酸化亜鉛粒子を含む組成物によって達成されるSPF値と比較して、本発明のメソ多孔性の酸化亜鉛粉末を用いればより高いSPF値が達成される。特定の理論によって縛られることは望まないが、凝集体のメソ多孔性の構造は、凝集体の紫外線吸収を同じ大きさの非多孔性酸化亜鉛粉末の紫外線吸収より大きくさせることが理解される。したがって、メソ多孔性の酸化亜鉛粉末は分散物に用いることができ、所望のSPF及び広域スペクトル防護を提供する光防護組成物を提供する一方、ナノ分子の長さからなる有機UVフィルターを添加する必要性又はナノサイズの物理的な紫外線遮蔽剤を添加する必要性を最小限にし、好ましくはなくす。
【0048】
以下の実施例は、本発明のさらなる例証である。構成要素及び具体的な成分は典型的なものとして示され、本発明の範囲内で、前述の開示を考慮して、様々な修正を誘導することができる。本明細書におけるすべての百分率、比及び割合は別段の指定がない限り重量による。すべての温度は、別段の定めがない限り、摂氏温度である。
【0049】
(例1)
メソ多孔性炭酸亜鉛前駆体の調製
炭酸亜鉛前駆体粉末は、塩化亜鉛及び炭酸ナトリウムの水溶液を1ZnCl:3NaCOのモル比で室温で反応させることにより合成した。各々の溶液は4Lの脱イオン水に溶解した1230gの塩化亜鉛、及び10Lの脱イオン水に溶解した960gの炭酸ナトリウムからなるものであった。塩化亜鉛溶液を炭酸塩溶液に激しく撹拌しながら加え、白色の沈殿を得た。沈殿は、脱イオン水を用いて洗浄して100ppm未満にし、摂氏120度で乾燥した。
【0050】
結果として生じる粉末の結晶構造をX線回折で特性評価し、存在する唯一の相として亜鉛華相を示した。粉末の走査電子顕微鏡(SEM)試験は、一次微結晶のメソ多孔性の凝集体からなることを示した。ガス吸着(BET法、Micromeritics Tristar)を用いて測定した粉末の比表面積は、62.4m/gであった。
【0051】
開放細孔の分布はバレット・ジョイナー・ハレンダ(Barrett−Joyner−Helenda)法(工学者の技術(Techniques de l’Ingenieur)に記載され「多孔性の又は分割された固形分のテクスチャー(Texture des solides poreux ou divises)(p.3645−1から3645−13)」と題される)によるガス吸着法(Micromeritics Tristar)を用いて測定した。細孔サイズ測定は、27.3nmと等しい平均細孔サイズで2nmから100nm(メソ細孔)の間の細孔サイズの分布を示した。全開放メソ細孔体積は0.476cm/gであった。
【0052】
(例2)
メソ多孔性酸化亜鉛粉末の調製
酸化亜鉛粉末は、電気窯中で385℃の温度で熱処理することによって例1の亜鉛華粉末から調製した。試料は100℃/hrの炉傾斜速度で徐々に加熱し、7.5時間設定温度で保持し、続いて室温まで冷却した。得られた粉末はオフホワイト色であった。X線回折は、ZnO(ウルツ鉱相)がか焼の後に存在する唯一の結晶相であることを示した。
【0053】
熱処理粉末は、当業者に周知の方法を用いて特性評価し、より詳しくは以下に記載した。結果の要約を表1に示す。
【0054】
凝集体のサイズ分布はMalvern Mastersizer 2000レーザー散乱装置を用いて測定した。平均凝集体サイズは、体積加重基準で4.1ミクロン、数加重平均凝集体サイズについては、1.1ミクロンであった。
【0055】
X線回折を用いて測定された平均の一次微結晶サイズは14nmであった。比表面積は49.8m/gであった。細孔率測定はメソ多孔性の細孔構造を示した。メソ細孔は2つの形態を持ち、表面が閉ざされている細孔(閉鎖細孔率)及び表面が開いている微結晶間細孔であった。
【0056】
バレット・ジョイナー・ハレンダ(Barrett−Joyner−Helenda)法を用いる開放細孔サイズ測定は、約37nmと等しい平均開放細孔サイズで2nmから100nmの間のサイズの分布を示した。全開放メソ細孔体積は0.65cm/gであった。
【0057】
閉鎖細孔率の値はヘリウムガス比重びん法(Micromeritics AccuPyc 1330)を用いて、骨格密度の測定から得た。閉鎖細孔率は、次式に従って乾燥酸化亜鉛凝集体の骨格密度から算定した:
細孔率(%)=100×(1−凝集体試料の骨格密度/ZnOの密度)
[式中、ZnOの真密度(開放及び閉鎖細孔の体積を除いて)=5.606g/cm
比重びん測定は、閉鎖細孔率が2.6%であることを示した。
表1:ZnO粉末特性の要約
【表1】

【0058】
開放及び閉鎖細孔率の値は、空気中の凝集体の全エンベロープ体積及びエンベロープ密度を算定するために用いた。
【0059】
表2において、全エンベロープ体積、全細孔率及び空気中の凝集体のエンベロープ密度の値を、非多孔性酸化亜鉛粉末の対応する値と比較する。閉鎖及び開放細孔率を含めると、凝集体の全細孔率は全エンベロープ体積の79%に匹敵し、空気中のメソ多孔性酸化亜鉛凝集体のエンベロープ密度は、5.606g/cmのZnOの理論値から1.19g/cmに低下した。
表2:凝集体及び非多孔性のZnO粒子の体積と密度の値の比較
【表2】

【0060】
(例3)
メソ多孔性酸化亜鉛粉末の形態
425℃で熱処理することによって亜鉛華前駆体から製造したメソ多孔性酸化亜鉛粉末の高解像度走査型電子顕微鏡写真を、図1及び図2に2つの異なる倍率で示す。酸化亜鉛粉末は、約1から約10ミクロンのサイズの範囲でほぼ等軸の凝集体からなっていた。図2に示すように、凝集体は一緒に結合する複数の一次微結晶からなるメソ多孔性構造を示し、例2における結果と一致する凝集体を形成した。
【0061】
(例4)
メソ多孔性酸化亜鉛粉末分散物
イソステアリン酸及びポリヒドロキシステアリン酸を分散剤として用い、単純な手混合によって、例3のメソ多孔性酸化亜鉛粉末を安息香酸C12〜15アルキル中に分散した。
【0062】
図3は、ZnOの重量%の関数としてプロットした、結果として生じる分散物の比重の測定を示す。また、開放細孔が安息香酸アルキル又は分散剤(密度=0.925g/cm)で充填され、また、閉鎖細孔は空気(密度約0)で充填されていると仮定して算定した理論曲線を示す。実測及び計算曲線間の優れた一致により、安息香酸アルキルが凝集体の開放細孔を充填していることが確認された。
【0063】
安息香酸C12〜15アルキルに分散したメソ多孔性酸化亜鉛凝集体のエンベロープ密度及び屈折率を算定するために、全細孔率の値を用いた。この計算では、安息香酸C12〜15アルキルの屈折率の値を1.5に等しく、密度を0.96g/cmに等しいと仮定している。表3において、凝集体の全密度の値及び屈折率値を、非多孔性酸化亜鉛粒子の対応する値と比較する。安息香酸C12〜15アルキル中のメソ多孔性酸化亜鉛粉末のエンベロープ密度は、その理論値5.606g/cmから1.92g/cmに低下する。
表3:凝集体及び非多孔性ZnO粒子の体積と密度の値の比較
【表3】

【0064】
(例5)
凝集体サイズに対する粉砕の効果
例4によって形成された分散物を、実験用ビーズ粉砕機で粉砕した。ビーズ粉砕前後の平均凝集体サイズをレーザー散乱(Malvern Mastersizer 2000)を用いて測定した。表4は、安息香酸アルキル中に分散した50重量%のメソ多孔性酸化亜鉛粉末の平均凝集体サイズに対するビーズ粉砕時間の効果を示す。粉砕によって凝集体サイズの低下をもたらすことは当業者には理解されよう。
表4:凝集体サイズに対するビーズ粉砕の効果
【表4】

【0065】
カプリル酸カプリン酸トリグリセリド(CCT)を分散媒として用いたことを除き、例4に従って第2の分散物を形成した。この分散物はビーズ粉砕機で粉砕した。粒子サイズ測定は、レーザー散乱及び音響減衰(Dispersion Technology DT−1200)を用いて行った。図4は、音響減衰を用いて得られた、数加重粒子サイズ分布曲線を示す。レーザー散乱を用いて測定した1.17ミクロンの値と比較すると、音響減衰を用いて得られた数加重平均サイズ分布は1.55ミクロンであった。0.100ミクロン未満のサイズを有する凝集体は、この第2の分散物にどちらの技術をビーズ粉砕の前後どちらに用いても、検出されなかった。
【0066】
複数の酸化亜鉛微結晶が一緒に結合され緩い集合ではなく凝集体を形成していることを確認するために、安息香酸アルキル中の50重量%の酸化亜鉛凝集体の予備混合分散物を、下記条件下で高い剪断力での混合にかけた:
混合機:Silverson L4RT
混合速度:7000rpm
混合時間:20分
試料体積:60ml
【0067】
高度の混合の前後の平均凝集体サイズをMalvern Mastersizer 2000を用いて測定した。高い剪断力での混合の後でも、平均凝集体サイズの有意な変化は観察されなかった。集合体と凝集体の間の差異は、高い剪断力での混合が集合体をばらばらに壊すのに十分であるが、凝集体の平均サイズはほとんど違いを示さないということである。上記の表4に示す結果は、本発明の酸化亜鉛粉末が凝集体の形態であることを実証している。
【0068】
(例6)
光学的性質
例5の分散物の光学的性質を、紫外/可視スペクトル測定を用いて評価した。分散物の光学的性質、とりわけ、全透明度、全吸収率及びCIE白色度を下記の表5に挙げる。
【0069】
本明細書を通じて用いられる用語「全吸収率」は数学的に次式を用いて定義される:
A=−ln(T(%)/100)
[式中、Aは全吸収率であり
Tは、百分率で測定された波長550nmでの全透過率である。]
【0070】
各分散物を光路の長さが20ミクロンの石英セルに置いた。光透過率と反射率の測定は、積分球を装備したCarey 300 bio紫外可視分光光度計を用いて行った。全吸光係数を、上記の式を用いて全透過率値から算定した。配合物のCIE白色度値はオーストラリア規格ASTM−E313に従って反射率値から算定した。
【0071】
比較のために、表5は、また以下のタイプの40〜60重量%の酸化亜鉛単一微結晶粒子を含む先行技術の配合物のデータを含む:
a)米国特許第6,503,475号明細書に記載される方法を用いて調製した約30nmの平均粒子直径を有するシリコーンコートしたZnOナノ粒子;
b)米国特許第6,503,475号明細書に記載される方法を用いて調製した約30nmの平均粒径を有するステアリン酸コートしたZnOナノ粒子;
c)米国特許第5,587,148号明細書に記載される方法を用いて調製した82nmの平均粒径を有するシリカコートしたZnOナノ粒子。
【0072】
メソ多孔性の凝集体を含む本発明の配合物は、凝集体の著しく大きいサイズにもかかわらず、比較の先行技術配合物より著しく高い透明度及び低い白色度値を有する。このことによって、より低い吸光係数(0.05未満)及びより低い白色度(25未満)値をもたらす。ビーズ粉砕によって透明度と白色度の改善が結果として生じたが、粉砕は先行技術配合物を超える透明度及び白色度の値を達成するためには必要ではなかった。
表5:光学的性質
【表5】

【0073】
(例7)
反応化学の効果(例1と反対の例)
ZnCl:NaCOの1:2及び1:1モル比を用いる以外は例1の手順に従って、塩化亜鉛及び炭酸ナトリウムの水溶液を反応させることにより、炭酸亜鉛前駆体粉末を合成した。
【0074】
得られた粉末をX線回折で特性評価し、亜鉛華が1:2及び1:1のモル比試料の両方で存在する唯一の相であることを示した。
【0075】
次いで、粉末を380℃で7時間熱処理し、白色粉体を得た。X線回折を用いて、ZnO(ウルツ鉱)が唯一の微結晶相であることが同定された。
【0076】
粉末及び粉末から調製した分散物の特性を、表6に要約する。細孔体積の値は、ZnCl:NaCOモル比が低下するにつれて減少した。1:1及び1:2モル比に対するより小さい細孔体積は、エンベロープ密度及び屈折率のより大きい値に反映されている。
【0077】
1:3及び1:2モル比での試料の平均凝集体サイズと比較して、1:1モル比のZnCl:NaCOで合成した試料も、0.204ミクロンの著しく低下した平均凝集体サイズを示した。
【0078】
1:1モル比のZnCl:NaCOで調製した試料の白色度及び吸光係数は、全細孔体積及び屈折率の低下により著しく低下した。小さい粒径に関連する低減した散乱にもかかわらず、1:1比試料の白色度は37.0で、それに対して、1:3比では20.1、1:2比では17.1であった。同様に、1:1比試料は、1:3モル比と比較して、吸光係数が約50%増加を示した。
【0079】
本発明の大きい凝集体サイズ、大きいメソ多孔性の全細孔体積、低い白色度及び高い透明度の組合せを達成するためにメソ多孔性酸化亜鉛凝集体を合成する場合、1:2以上のZnCl:NaCOモル比の反応化学量論が必要とされることを、これらの結果は実証している。
表6:凝集体特性に対するモル比の効果の要約
【表6】

【0080】
(例8)
透明度と白色度に対する細孔体積の効果
熱処理温度が385℃から625℃の間で変わる以外は例2に従って、様々な細孔体積を有する酸化亜鉛凝集体の試料を調製した。
【0081】
図5は、開放細孔の分布に対する熱処理温度の効果を示す。細孔サイズ分布は単峰性である。平均細孔サイズは、温度で著しく変化しなかった。しかし、図6に示すように、微結晶の焼結により温度の上昇と共にメソ細孔性細孔(mesopores pores)の体積は著しく減少した。細孔体積に対する熱処理温度の効果を図5に示す。
【0082】
図7及び図8は、例4に従って形成された分散物の、白色度及び全可視光透過率に対する全細孔体積の効果をそれぞれ示す。低い白色度値及び高い透過率値は、十分に大きい全細孔体積を必要とすることが分かる。例7及び例8の結果は、ミクロンサイズのメソ多孔性凝集体で低い白色度及び高い透明度を達成するには、細孔体積が決定的に重要であることを示す。
【0083】
反応化学量論及び熱処理条件に加えて、大きいメソ細孔体積を達成する他の方法が、低い白色度及び高い透明度の配合物の粉末を提供するものと期待される。
【0084】
(例9)
光学的性質に対する酸化亜鉛濃度の効果
カプリル酸カプリン酸トリグリセリド中に2.5%から50重量%のメソ多孔性ZnOを含有する分散物を、実験用ビーズ粉砕機を用いて調製した。光透過率測定は、積分球を装備したCarey 300 bio紫外可視分光光度計を用いて行った。試料は、0.02mmの光路の長さを有する石英セルに置いた。
【0085】
図9は、全可視光透過率に対する酸化亜鉛濃度の効果を示す。透過率測定は550nm(可視スペクトルの中央)の波長で取り、経路長(セル厚み)は20ミクロンであった。透過率は最初減少し、次いで、25重量%を超える酸化亜鉛濃度に対して水平になることをこの結果は示している。図10に示すように、CIE白色度の測定でも同様な水平化が観察された。
【0086】
基本的な発明概念から外れることなく、多数の変形及び修正を行うことができることは、関連技術分野の当業者には明白であろう。例えば、凝集体の開放細孔を流体形態の薬物で充填し、続いて腸溶コーティングで凝集体をコートし、使用時に遅延放出するためのメソ多孔性酸化亜鉛粉末内の薬物を包むことができる。この種の修正及び変形はすべて、本発明の範囲内であると考えられ、その本質は前述の説明及び添付された特許請求の範囲から決定されるべきことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも50重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体(aggregate)サイズを有する上記粉末。
【請求項2】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも40重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項3】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも30重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも85%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項4】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも20重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%又は少なくとも88%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項5】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも10重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも93%のうち少なくとも1つの、550nmで20ミクロンの経路長を通る場合の全可視光透過率を有する透明組成物を生成し、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項6】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも50重量%の酸化亜鉛濃度で分散物中で用いられたとき、30未満又は40未満又は50未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項7】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも30重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、25未満又は35未満又は45未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項8】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも20重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、25未満又は35未満又は45未満のCIE白色度を与え、少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均酸化亜鉛凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項9】
酸化亜鉛粉末であって、少なくとも10重量%の濃度で分散物中で用いられたとき、10未満又は20未満又は30未満のCIE白色度を与え、凝集体が少なくとも0.8ミクロン又は少なくとも1ミクロンの数平均凝集体サイズを有する上記粉末。
【請求項10】
前記凝集体がメソ多孔性で、少なくとも0.25cm/g又は少なくとも0.35cm/g又は少なくとも0.5cm/gの全メソ細孔体積を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末。
【請求項11】
前記凝集体が0.1から100ミクロンの範囲のサイズを有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末。
【請求項12】
前記数平均酸化亜鉛凝集体サイズが目標凝集体サイズと比較され、該数平均酸化亜鉛凝集体サイズが該目標凝集体サイズより大きい場合、粉砕を使用して低下させる、請求項1から11までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末。
【請求項13】
透明組成物を提供するために分散物において用いられるときに該組成物に添加される酸化亜鉛の所与の重量パーセントにおいて、該組成物のSPFが、前記数平均酸化亜鉛凝集体サイズと同等の粒子サイズを有する非多孔性酸化亜鉛粒子を含む同等の組成物について達成されるSPFより高い、請求項1から12までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末。
【請求項14】
前記凝集体の開放メソ細孔を空気以外の物質で満たすことにより、前記粉末の屈折率が調整可能である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末。
【請求項15】
前記メソ多孔性酸化亜鉛粉末を形成するために、メソ多孔性亜鉛前駆体材料が、該前駆体材料のメソ細孔率を保持し増加させるために十分に低い温度で熱処理されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末を製造する方法。
【請求項16】
前記メソ多孔性酸化亜鉛粉末を形成するために、前記メソ多孔性亜鉛前駆体材料が、250〜575℃の範囲、300〜525℃の範囲、350〜475℃の範囲、又は400〜450℃の範囲のうち少なくとも1つの熱処理温度で熱処理されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の酸化亜鉛粉末を製造する方法。
【請求項17】
メソ多孔性炭酸亜鉛粉末の沈殿を引き起こすためにかき混ぜながら塩化亜鉛の水溶液を炭酸ナトリウムの水溶液と反応させることにより、前記メソ多孔性酸化亜鉛前駆体粉末を合成するステップをさらに含む、請求項15又は16に記載の酸化亜鉛粉末を製造する方法。
【請求項18】
前記塩化亜鉛の水溶液及び前記炭酸ナトリウムの水溶液を反応させる際に存在する塩化亜鉛と炭酸ナトリウムのモル比が、少なくとも1:2又は少なくとも1:3の1つである、請求項17に記載の酸化亜鉛粉末を製造する方法。
【請求項19】
実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、凝集体の形態のメソ多孔性酸化亜鉛粉末。
【請求項20】
透明組成物を提供するために分散物中で用いられる場合に凝集体の形態である、実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、メソ多孔性酸化亜鉛粉末。
【請求項21】
実施例及び添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載される、メソ多孔性酸化亜鉛粉末を製造する方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公表番号】特表2011−509906(P2011−509906A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542402(P2010−542402)
【出願日】平成21年1月12日(2009.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/030732
【国際公開番号】WO2009/089527
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(504324718)アンタリア リミテッド (3)
【Fターム(参考)】