説明

メタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物

【課題】メタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)、肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)等の予防、改善または治療用組成物、およびそれらを含有する飲食品、医薬品などを提供すること。
【解決手段】以下の(a)および(b)を含有し、(a)と(b)との質量比が1:0.001〜5であるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物。
(a)重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノール、ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、およびヘスペレチンからなる群より選択される少なくとも1種のポリフェノール
(b)キサンチン誘導体の少なくとも一種

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物に関するものであり、より詳細には、ポリフェノールおよびキサンチン誘導体を含有してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満は増加の一途を辿っており、WHO(世界保健機関)は肥満に関わる糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、脂肪肝などの生活習慣病のリスクの増大に対して世界各国に警告を発している。内臓脂肪の蓄積をベースに、糖代謝異常(耐糖能異常、糖尿病)、脂質代謝異常(高中性脂肪血症、高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧などの動脈硬化のリスクファクター(危険因子)が複数重なった状態をメタボリックシンドローム(代謝症候群)という。健康診断などで血糖値や血圧が「要注意」程度の軽度な異常でも、重複すると心血管病になりやすく、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症、または高コレステロール血症の危険因子を全く持たないヒトに比べて、2つ持つヒトはリスクが10倍に、3〜4つ持つヒトはリスクが31倍になると言われている。
【0003】
肥満、糖尿病、高血圧および高脂血症を全て発症すると心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率が高くなるので「死の四重奏」とも呼ばれている。最終的に心筋梗塞や脳梗塞など心血管病に至るのは、内臓脂肪の蓄積が根本的な原因と考えられており、内臓脂肪の蓄積を減少させることがメタボリックシンドロームの予防または改善、さらには心血管病の予防または改善のために重要である。肥満はエネルギーの出納バランスが崩れることによって起こるため、肥満の抑制には摂取エネルギーを減少させるだけではなく、基礎代謝や活動代謝の消費エネルギーを増加させることが重要である。摂取エネルギーを減少させるためには、脂肪や糖質をよりエネルギーの少ない代替品に代えるといった工夫がなされてはいるが、食品としての味や加工性の点で必ずしも十分な成果が得られていない。
【0004】
肥満予防の方策はいろいろ提唱されているが、近年、我々が日常的に摂取する様々な食品中に脂質代謝の改善、肥満の予防または改善作用をもつ成分が見出され、肥満予防に役立つのではないかと期待されている。本発明者らは、その様な作用をもつ食品成分の中で、異なる作用メカニズムを有することが知られているヘスペリジン、低分子プロアントシアニジン、カフェインに着目した。ヘスペリジンは脂肪酸合成酵素遺伝子の発現抑制作用、カルニチン・パルミトイルトランスフェラーゼ1型および2型遺伝子発現上昇作用などを有し、脂質代謝を促進すると考えられている(非特許文献1)。さらに、ヘスペリジンや糖転移ヘスペリジンに内臓脂肪低下作用やウェスト周囲径低下作用が報告されている(特許文献1)。一方、低分子プロアントシアニジン類はアディポサイトカイン産生調節異常を予防または改善する作用、脱共役タンパク質UCP1(uncoupling protein1)の遺伝子発現誘導による熱産生作用が知られている(非特許文献2)。さらに、体重、腹囲、内臓脂肪量などを低下させる作用を持つことが知られている(非特許文献3)。カフェインはアデノシンレセプターへのアンタゴニスト作用(非特許文献4)、血中カテコールアミンレベルの増加作用およびホスホジエステラーゼ活性の阻害作用を介して脂質代謝を促進し(非特許文献5)、肝臓の脂肪合成を抑制し、さらに、安静時代謝率やエネルギー消費量を増加することにより、体脂肪量や体重を減少させることが知られている(非特許文献6)。このように、各成分が単独で脂質代謝に作用があることは公知である。しかし、これらの成分を組み合わせた報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−156341号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第63回日本栄養食糧学会講演要旨集,2005年,p.205
【非特許文献2】Sakurai.et al,Bioscience.Biotechnology.and Biochemistry.,2008年,Vol.72,p.463−476
【非特許文献3】Nishihira.et al,J.Functional.Foods,Vol.1,2009年,p.341−348
【非特許文献4】Dodd.et al,Sports.Med.,1993年,Vol.15,p14−23
【非特許文献5】Dullo.et al,Am.J.Clin.Nutr.,1989年,Vol.49,p.44−50
【非特許文献6】Hollands.et al,Am.J.Clin.Nutr.,1981年,Vol.34,p.2291−2294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肥満を予防または解消するため、摂取カロリーを制限する食餌療法、運動療法、食欲抑制剤による薬物療法などが行われている。しかし、食餌療法は過度な制限食であることが多く、煩雑なカロリー計算と強固な意志を必要とし、個人で長期間管理するには困難が伴う。また、運動療法は精神的にも肉体的にも苦痛を伴い、多忙な現代社会においては長期間継続するのは非常に困難である。運動エネルギー源として体脂肪をできるだけ多く消費することは有効であるが、肥満傾向にあるものは脂肪代謝が緩慢であり、運動によっても体脂肪を減少させることが難しい。したがって、肝臓中での脂肪合成を抑制し、脂肪細胞中に蓄積する脂肪の分解を促進し、また、脂肪を効果的に燃焼することにより、肥満の予防や改善に寄与し得る組成物およびそれを含む飲食品、医薬品の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的はメタボリックシンドローム、脂質代謝異常(例えば脂肪肝、高脂血症)、肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)等の予防、改善または治療用組成物、およびそれらを含有する飲食品、医薬品などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、体脂肪を効果的に減少させる組成物について鋭意研究を行ったところ、ヘスペリジンもしくはその誘導体とカフェインとを含有する組成物、または、低分子プロアントシアニジンとカフェインとを含有する組成物が、意外にもそれぞれ単独で使用した場合よりも強い抗肥満作用のあることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]以下の(a)および(b)を含有し、(a)と(b)との質量比が1:0.001〜1:5であるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物。
(a)重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノール、
ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、およびヘスペレチンからなる群より選択される少なくとも1種のポリフェノール
(b)キサンチン誘導体の少なくとも一種
[2](a)と(b)との質量比が1:0.01〜1:0.5である前記[1]に記載の組成物。
[3]キサンチン誘導体がカフェイン、テオフィリンまたはテオブロミンである前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物を含有してなる医薬品、飲食品または飼料。
[5]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物を含有してなり、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、および、メタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示からなる群から選択される少なくとも1種の表示が付された飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、体重の増加抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、皮下脂肪の蓄積抑制作用、血漿トリグリセリド値の上昇抑制作用を有しているので、ダイエット、肥満の予防または改善、更には内臓脂肪蓄積が原因とされる糖尿病、高中性脂肪血症、高コレステロール血症や動脈硬化症などのメタボリックシンドロームの予防、改善または治療を目的とした医薬品、飲食品、飼料などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】試験例1における試験期間前後の体重の増減量を示すグラフである。
【図2】試験例1における試験開始から10日間の摂餌量を示すグラフである。
【図3】試験例1における体重100g当たりの腸間膜周囲脂肪組織重量を示すグラフである。
【図4】試験例2における試験期間前後の体重の増減量を示すグラフである。
【図5】試験例2における試験開始から10日間の摂餌量を示すグラフである。
【図6】試験例2における体重100g当たりの皮下脂肪組織重量を示すグラフである。
【図7】試験例2における体重100g当たりの腸間膜周囲脂肪組織重量を示すグラフである。
【図8】試験例3における試験期間前後の体重の増減量を示すグラフである。
【図9】試験例3における試験開始から10日間の摂餌量を示すグラフである。
【図10】試験例3における体重100g当たりの脂肪組織(皮下、副睾丸、腸間膜)合計重量を示すグラフである。
【図11】試験期間前後の血漿トリグリセリド値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の(a)および(b)を含有し、(a)1質量部に対して(b)を0.001〜5質量部配合してなるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物を提供する。
(a)重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノール、
ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、およびヘスペレチンからなる群より選択される少なくとも1種のポリフェノール
(b)キサンチン誘導体の少なくとも一種
【0014】
ヘスペリジンは、ミカンなどの柑橘類の皮に多く含まれているポリフェノールの一種であり、ビタミンPとも称される。ヘスペリジンはヘスペレチン配糖体であり、ヘスペレチンはヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペリジン誘導体は、ヘスペリジンにメチル基、エチル基、糖類などを付加したものが挙げられる。糖類を付加したヘスペリジン誘導体としては、例えば、糖転位酵素によってヘスペリジンにグルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロースなどの糖類の1以上をヘスペリジンに対して等モル以上付加した糖転移ヘスペリジンが挙げられる。糖転移ヘスペリジンは、水溶性、食品等への加工特性、生体への吸収性等が優れている点で、本発明の組成物に好適に用いることができる。糖転移ヘスペリジンのなかでも、ヘスペリジンにD−グルコース残基が等モル以上α結合しているα−グリコシルヘスペリジンが好適である。
【0015】
プロアントシアニジンは、フラバン−3−オール(カテキンとも称される)、およびそれらに没食子酸がエステル結合したものを構成単位とする2量体、3量体、4量体さらに10量体以上の高分子のプロシアニジン、プロデルフィニジン、プロペラルゴニジン等、およびそれらの立体異性体の総称であり、酸処理によりアントシアニジンを生成するポリフェノール化合物群である。プロアントシアニジンは各種植物体に存在することが知られている。プロアントシアニジンを含有する植物としては、渋柿、バナナ、リンゴ、ナシ、ブドウ、イチゴ、アボカド、コケモモ、サンザシ、レンコン、ソバ、ライチ、ヨウバイヒ等の果菜類、ハーブ・スパイス類、木材、ケイヒ、マツ樹皮等が挙げられる。
【0016】
本発明の組成物において、成分(a)として使用する重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノールは、ポリフェノール中の重合度1〜3のプロアントシアニジンの含量が15質量%以上であればよいが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。重合度1〜3のプロアントシアニジンの含量が高いほど生体への吸収性が向上する点で好ましい。
【0017】
ポリフェノール中の重合度1〜3のプロアントシアニジンの含量は、例えば、HPLC等の公知の測定方法により確認することができる。また、ポリフェノール中の重合度1〜3のプロアントシアニジンの含量を高める方法としては、例えば、重合度1〜3のプロアントシアニジン以外のポリフェノール部分を廃棄する方法や、重合度4以上のプロアントシアニジンを低分子化する方法(例えば、国際公開第WO2006/090830号参照)を好適に用いることができる。
なお、重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノールを含有する組成物が市販されており(例えば、「オリゴノール(商品名)」、株式会社アミノアップ化学)このような市販品も、本発明の成分(a)として好適に使用することができる。
【0018】
成分(a)は、重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノール、ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、およびヘスペレチンのいずれか一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
キサンチン誘導体としては、例えば、キサンチン、アミノフィリン、テオフィリン、コリンテオフィリン、カフェイン、テオブロミン、1,7−ジメチルキサンチン、オクストリフィン、ジプロフィリン、プロキシフィリン等が挙げられる。中でもカフェイン、テオフィリン、テオブロミンが好ましい。
成分(b)は、上記例示したキサンチン誘導体のいずれか一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明の組成物における成分(a)と成分(b)との配合割合(質量比)は、本発明が目的とする効果を得られるものであれば特に限定されず、(a):(b)=約1:0.001〜約1:5が好ましく、より好ましくは約1:0.01〜約1:0.5であり、さらに好ましくは約1:0.02〜約1:0.3である。
【0021】
本発明の組成物は、体重の増加抑制作用、内臓脂肪の蓄積抑制作用、皮下脂肪の蓄積抑制作用、血漿トリグリセリド値の上昇抑制作用を有することが確認されていることから(試験例1−3参照)、メタボリックシンドロームを予防、改善または治療するために好適に用いることができる。また、本発明の組成物における成分(a)および成分(b)は、それぞれ単独で脂質代謝等の改善に有用であることが既に知られているが、これらを組み合わせることにより、それぞれ単独で使用した場合よりも強い作用を発現し、それぞれ単独では効果を奏しない低用量においても、両者を組み合わせることにより顕著な効果を奏することができる点で、非常に有用である(試験例1−3参照)。
【0022】
本発明の組成物は、医薬品、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等として用いることができる。なかでも、医薬品、飲食品または飼料に用いることが好ましい。
【0023】
本発明の組成物を含有してなる医薬品は、経口または非経口のいずれかの経路で哺乳動物に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)などが挙げられる。これらの製剤は、当該分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を担体として使用できる。
【0024】
経口用の固形剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等)は、有効成分を賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化することができる。必要に応じて、コーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0025】
経口用の液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等)は、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化して製剤化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0026】
注射剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化して製剤化される。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0027】
本発明の組成物を含有してなる飲食品は、一般的に飲食品に用いられる食品添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。なお、飲食品には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品が含まれる。
【0028】
本発明に好適な飲食品は特に限定されない。具体的には、例えば、いわゆる栄養補助食品(サプリメント)としての錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等を挙げることができる。これ以外には、例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子およびパン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の冷菓などを挙げることができる。
【0029】
本発明の組成物を飲食品の形態に調製した場合、当該飲食品には、本発明の組成物の作用に鑑みて、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、および/またはメタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示をすることができる。
【0030】
本発明の組成物を含有してなる飼料としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ等の家禽用飼料、イヌ、ネコ等のペット用飼料などが挙げられる。本発明の飼料は、飼料中に本発明の組成物を添加する以外、一般的な飼料の製造方法を用いて加工製造することができる。
【0031】
本発明の医薬品および飲食品の投与量または摂取量は、患者または摂取者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、成人1人1日当たり、成分(a)を0.05〜3.0g、好ましくは0.2〜1.0g、成分(b)を0.01〜0.5g、好ましくは0.05〜0.3gとなるように投与または摂取するのが好ましい。投与または摂取回数は、1日1回または複数回に分けて行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例および試験例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
〔散剤〕
糖転移ヘスペリジン0.2g、カフェイン0.02g、ビタミンC0.28g、合成ケイ酸アルミニウム10g、リン酸水素カリウム5g、乳糖84.5g、これら粉末状の成分を均一に混合して、散剤とした。
【0034】
[実施例2]
〔顆粒剤〕
糖転移ヘスペリジン0.2g、カフェイン0.02g、ビタミンC0.28g、結晶セルロース40.0g、乳糖35.0g、澱粉19.5g、ポリビニルアルコール5.0g、水30.0g、これら粉末状の成分を均一に混練し、破砕造粒した後、乾燥して顆粒剤とした。
【0035】
[実施例3]
〔錠剤〕
実施例2で得られた顆粒剤99gにステアリン酸カルシウム1gを混合し、打錠機で圧縮成形して直径6.0mmの錠剤とした。
【0036】
[実施例4]
〔配合茶〕
緑茶、ハト麦、大麦、玄米、ウーロン茶、ドクダミおよび杜仲茶の7種類を原料とする乾燥茶葉1gを100mlの水で抽出し、この抽出液に糖転移ヘスペリジン100mg、カフェイン10mg(原料由来のカフェインが2mgを含む)、およびビタミンC15mgを配合し、配合茶を得た。
【0037】
[実施例5]
〔粉末茶〕
玄米茶エキス1800mg、乳糖500mg、クエン酸500mg、糖転移ヘスペリジン550mgおよびカフェイン55mg(原料由来のカフェインが20mgを含む)を配合し、粉末茶を得た。
【0038】
[実施例6]
〔キャンディー〕
糖転移ヘスペリジン200mg、カフェイン20mg、クエン酸100mg、ビタミンC15mg、水飴65g、蔗糖10g、マレイン酸300mg、コハク酸200mg、リンゴ酸150mg、香料0.3gおよび水少量を混合し、常法により加熱冷却し、キャンディーを製造した。
【0039】
[試験例1]
食餌性肥満マウスのカロリー摂取を制限し、体脂肪の分解・利用を必要とする状態にすると、体脂肪の分解・利用の促進が肥満を改善する。このような条件下で、糖転移ヘスペリジンおよびカフェインを含有する本発明の組成物の作用を調べた。糖転移ヘスペリジンには「林原ヘスペリジンS(商品名)」(販売元:林原商事)、カフェインには「茶の素(商品名)」(カフェイン純度98.5%、白鳥製薬社製)を使用した。
【0040】
5週齢の雄性KKマウスを、水と飼育用粉末飼料(CE−2(商品名)、日本クレア株式会社製)で1週間飼育した後、下記表1に記載の高カロリー飼料(4.70kcal/g)で3週間飼育して肥満を誘導した。4群(対照群、カフェイン投与群、糖転移ヘスペリジン投与群、本発明品投与群(カフェイン+糖転移ヘスペリジン)、1群5〜8匹)に分け、下記表1に記載の低カロリー飼料(3.16kcal/g)、あるいは低カロリー飼料に試験サンプルを加えた飼料で2週間飼育して体脂肪を利用させた。各試験群の飼料は次のとおりである。
(1)対照群;カロリー飼料
(2)カフェイン投与群;低カロリー飼料+カフェイン0.025質量%
(3)糖転移ヘスペリジン投与群;低カロリー飼料+糖転移ヘスペリジン0.25質量%
(4)本発明品投与群(糖転移ヘスペリジン:カフェイン(10:1)の混合物);低カロリー飼料+(糖転移ヘスペリジン0.25質量%+カフェイン0.025質量%)。
【0041】
【表1】

【0042】
試験期間中(低カロリー飼料の給餌開始から2週間)は体重測定と摂餌量測定を定期的に実施した。試験終了後にマウスを安楽死させて腸間膜周囲(内臓)脂肪組織を摘出し、重量を測定した。
【0043】
試験期間前後の体重の増減量を図1に、試験開始から10日間の摂餌量を図2に、体重100g当たりの腸間膜周囲脂肪組織重量を図3にそれぞれ示した。結果は各群の平均値±標準偏差で示した。また、図中**は危険率1%未満、*は危険率5%未満で対照群と有意な差があることを示す。
【0044】
これらの結果から次のことがわかる。すなわち、腸間膜周囲(内臓)脂肪組織重量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群と糖転移ヘスペリジン投与群は有意な差がないが、本発明品は有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。また、体重の増減量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群は有意に低値、糖転移ヘスペリジン投与群は同等の値であった。一方、本発明品は有意に低値を示し、かつカフェイン投与群より低値であり明確な相乗作用がみられた。これらの結果から、糖転移ヘスペリジンおよびカフェインを含有する本発明の組成物は、明確な相乗作用を奏し、体重および内臓脂肪を低減させるので、メタボリックシンドロームの予防または改善に有用であることが示された。
【0045】
[試験例2]
試験例1と同様の条件下で、糖転移ヘスペリジンおよびカフェインを含有する本発明の組成物の作用を調べた。糖転移ヘスペリジンおよびカフェインは、試験例1と同じものを使用した。
【0046】
5週齢の雄性KKマウスを、水と飼育用粉末飼料(CE−2(商品名)、日本クレア株式会社製)で1週間飼育した後、表1に記載の高カロリー飼料(4.70kcal/g)で3週間飼育して肥満を誘導した。6群(対照群、カフェイン投与群、糖転移ヘスペリジン投与群、カフェインおよび糖転移ヘスペリジンの混合投与群(本発明品)、1群6〜7匹)に分け、表1に記載の低カロリー飼料(3.16kcal/g)、あるいは低カロリー飼料に試験サンプルを加えた飼料で2週間飼育して体脂肪を利用させた。各試験群の飼料は次のとおりである。
(1)対照群;低カロリー飼料
(2)カフェイン投与群;低カロリー飼料+カフェイン0.0125質量%
(3)糖転移ヘスペリジン投与群;低カロリー飼料+糖転移ヘスペリジン0.25質量%
(4)糖転移ヘスペリジン:カフェイン(10:1)の混合投与群;低カロリー飼料+(糖転移ヘスペリジン0.25質量%+カフェイン0.025質量%)
(5)糖転移ヘスペリジン:カフェイン(20:1)の混合投与群;低カロリー飼料+(糖転移ヘスペリジン0.25質量%+カフェイン0.0125質量%)
(6)糖転移ヘスペリジン:カフェイン(40:1)の混合投与群;低カロリー飼料+(糖転移ヘスペリジン0.25質量%+カフェイン0.00625質量%)
【0047】
試験期間中(低カロリー飼料の給餌開始から2週間)は体重測定と摂餌量測定を定期的に実施した。試験終了後にマウスを安楽死させて皮下脂肪組織および腸間膜周囲(内臓)脂肪組織を摘出し、それぞれ重量を測定した。
【0048】
試験期間前後の体重の増減量を図4に、試験開始から10日間の摂餌量を図5に、体重100g当たりの皮下脂肪組織重量を図6に、体重100g当たりの腸間膜周囲脂肪組織重量を図7にそれぞれ示した。結果は各群の平均値±標準偏差で示した。また、図中$は危険率10%未満、**は危険率1%未満、*は危険率5%未満で対照群と有意な差があることを示す。
【0049】
これらの結果から次のことがわかる。すなわち、腸間膜周囲(内臓)脂肪組織重量および皮下脂肪組織重量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群と糖転移ヘスペリジン投与群は有意な差がないが、本発明品(糖転移ヘスペリジンとカフェインの混合投与群)は有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。また、体重の増減量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群と糖転移ヘスペリジン投与群は同等の値であった。一方、本発明品(糖転移ヘスペリジンとカフェインの混合投与群)は低値を示し、明確な相乗作用がみられた。これらの結果から、本発明の糖転移ヘスペリジンおよびカフェインを含有する本発明の組成物は、明確な相乗作用を奏し、体重、内臓脂肪蓄積および皮下脂肪蓄積を低減させるので、メタボリックシンドロームの予防または改善に有用であることが示された。
【0050】
[試験例3]
試験例1と同様の条件下で、重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノールおよびカフェインを含有する本発明の組成物の作用を調べた。重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノールには「オリゴノール(商品名)」(販売元:アミノアップ化学)、カフェインには「茶の素(商品名)」(カフェイン純度98.5%、白鳥製薬社製)を使用した。
【0051】
5週齢の雄性KKマウスを、水と飼育用粉末飼料(CE−2(商品名)、日本クレア株式会社製)で1週間飼育した後、表1に記載の高カロリー飼料(4.70kcal/g)で3週間飼育して肥満を誘導した。6群(対照群、カフェイン群、オリゴノール群、本発明品投与群(オリゴノール+カフェイン)、1群5〜8匹)に分け、表1に記載の低カロリー飼料(3.16kcal/g)、あるいは低カロリー飼料に試験サンプルを加えた飼料で2週間飼育して体脂肪を利用させた。各試験群の飼料は次のとおりである。
(1)対照群;低カロリー飼料
(2)カフェイン投与群;低カロリー飼料+カフェイン0.025質量%
(3)オリゴノール投与群;低カロリー飼料+オリゴノール0.1質量%
(4)本発明品投与群(オリゴノール:カフェイン(4:1)の混合物);低カロリー飼料+(オリゴノール0.1質量%+カフェイン0.025質量%)。
【0052】
試験期間中(低カロリー飼料の給餌開始から2週間)は体重測定と摂餌量測定を定期的に実施した。試験終了後にマウスを安楽死させて皮下脂肪組織、副睾丸脂肪組織および腸間膜周囲(内臓)脂肪組織を摘出し、それぞれ重量を測定した。また、試験開始時(低カロリー飼料の給餌開始時)と試験終了時に血漿トリグリセリド値を測定した。
【0053】
試験期間前後の体重の増減量を図8に、試験開始から10日間の摂餌量を図9に、体重100g当たりの脂肪組織(皮下、副睾丸、腸間膜)合計重量を図10に、試験期間前後の血漿トリグリセリド値の変化を図11にそれぞれ示した。結果は各群の平均値±標準偏差で示した。また、図中**は危険率1%未満、*は危険率5%未満で対照群と有意な差があることを示す。
【0054】
これらの結果から次のことがわかる。すなわち、脂肪組織合計重量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群とオリゴノール投与群は有意な差がないが、本発明品は有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。また、体重の増減量に関して、対照群と比較してカフェイン投与群とオリゴノール投与群は低値を示し、本発明品はさらに低値を示し、明確な相乗作用がみられた。さらに、血漿トリグリセリド値の14日目の測定値に関して、対照群と比較してカフェイン投与群とオリゴノール投与群は有意な差はないが、本発明品は有意に低値を示し、明確な相乗作用がみられた。これらの結果から、オリゴノールおよびカフェインを含有する本発明の組成物は、明確な相乗作用を奏し、体重、内臓脂肪蓄積および皮下脂肪蓄積を低減させ、血漿トリグリセリド値の上昇を抑制するので、メタボリックシンドロームの予防、改善または治療に有用であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)および(b)を含有し、(a)と(b)との質量比が1:0.001〜1:5であるメタボリックシンドロームの予防、改善または治療用組成物。
(a)重合度1〜3のプロアントシアニジンを15質量%以上含有するポリフェノール、
ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、およびヘスペレチンからなる群より選択される少なくとも1種のポリフェノール
(b)キサンチン誘導体の少なくとも一種
【請求項2】
(a)と(b)との質量比が1:0.01〜1:0.5である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
キサンチン誘導体がカフェイン、テオフィリンまたはテオブロミンである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含有してなる医薬品、飲食品または飼料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物を含有してなり、脂質代謝を改善する旨の表示、基礎代謝を促進する旨の表示、体重を減少させる旨の表示、内臓脂肪または皮下脂肪を減少させる旨の表示、ダイエット効果を有する旨の表示、肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示、および、メタボリックシンドロームの予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨の表示からなる群から選択される少なくとも1種の表示が付された飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−246355(P2011−246355A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118051(P2010−118051)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(306019030)ハウスウェルネスフーズ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】