メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターの利用
【課題】メタボリックシンドロームの発症・予防に有効なリスクファクター及びその利用を提供する。
【解決手段】検査対象個体から取得した試料につき、クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する。さらに、以下の要素から選択される1種又は2種以上を指標とする検査方法。アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP。さらに、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ。
【解決手段】検査対象個体から取得した試料につき、クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する。さらに、以下の要素から選択される1種又は2種以上を指標とする検査方法。アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP。さらに、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(以下、Metsともいう。)とは、内臓脂肪型肥満に、高血糖、高血圧及び高脂血症のいずれか2種以上を合併した病態をいう。Metsは、高齢化社会に向けて、医療費抑制及び高齢者のQOL確保等の観点から、予防及び改善すべき病態である。Metsは、生活習慣の改善によってその発症を予防することが有効であると考えられている。
【0003】
Metsの診断指標として腹囲、中性脂肪、血糖値、血圧及びHDLコレステロールが挙げられている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0508-1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、診断基準については見直しがなされるなど、Mets発症のリスクファクターとしては、有効なものが提供されていないのが現状である。
【0006】
そこで、本明細書の開示は、Metsについてのリスクファクターの利用を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、あるヒト母集団について追跡的に、血液検査等を行い、既存の診断基準によるMetsと健常者とについて、Mets発症リスクファクター(要素)を見出した。また、母集団について、SNP及び検診項目につて、Mets群に有意な要素やその組み合わせを見出した。これらの知見に基づき、以下の手段が提供される。
【0008】
[1] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
[2] 前記ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含む、[1]に記載の検査方法。
[3] さらに、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とする、[1]又は[2]に記載の検査方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
[4] 前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、[3]に記載の検査方法。
[5] さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
[6] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
[7] 前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、[3]に記載の検査方法。
[8] さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項[6]又は[7]に記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)と喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)と喫煙との組み合わせ
[9] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
[10] [1]〜[5]のいずれかに記載の検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも前記要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含む、キット。
[11] [6]〜[8]のいずれかに記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPである、マーカー。
[12] [6]〜[8]のいずれかに記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
[13] [9]に記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカー。
[14] [9]に記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【0009】
なお、本明細書においては、一塩基多型(SNP)をrs番号で特定し、そのアレルの表記もrs番号で特定される表記に従うが、rs番号でアレルが特定された鎖の相補鎖でタイピングした場合には、当該相補鎖における塩基で表記される。例えば、アポリポプロテインAI遺伝子のrs番号:rs11216158で特定されるSNPの多型は、A/Gであるが、本明細書においては、C/Tと表記される。また、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるrs番号:rs2854117で特定されるSNPの多型は、A/Gであるが、本明細書においては、C/Tと表記される。なお、これらのSNPに関しては、リスク多型の表記も同様に実際にタイピングした際の表記で表される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】最近MetSを発症した76例及びcontrol76例の年齢、BMI、sBP、dBP、DM、TGの値、HDL-Cの検査結果を示す図である。
【図2】解析データ1〜3についてのクレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数の結果を示す図である。
【図3】解析データ3についてのクレアチニン及びヘモグロビンの結果を示す図である。
【図4】解析データ3についてのヘマトクリット及び白血球数の結果を示す図である。
【図5】FNNによる多変量解析に用いる入力変数の項目を示す図である。
【図6】FNNによる多変量解析による解析データ1の結果を示す図である。
【図7】FNNによる多変量解析による解析データ2の結果を示す図である。
【図8】FNNによる多変量解析による解析データ3の結果を示す図である。
【図9】解析データ1で有意になったSNPと検査項目とを示す図である。
【図10】解析データ2で有意になったSNPと検査項目とを示す図である。
【図11】解析データ3で有意になったSNPを示す図である。
【図12】解析データ2及び3に関し、Apolipoprotein A-I(rs11216158)の頻度分布を示す図である。
【図13】解析データ2及び3に関し、Apolipoprotein C-III(rs2854117)の頻度分布を示す図である。
【図14】解析データ2及び3に関し、Adiponectin receptor 1 (rs1539355)の頻度分布を示す図である。
【図15】解析データ1について有意になった組み合わせ(オッズ比)を示す図である。
【図16】解析データ1について有意になった組み合わせ(頻度)を示す図である。
【図17】解析データ2について有意になった組み合わせ(オッズ比)を示す図である。
【図18】解析データ2について有意になった組み合わせ(頻度)を示す図である。
【図19】解析データ1及び2について非常に有意な組み合わせのルール表を示す図である。
【図20】Estrogen receptor 2(rs1255998)と喫煙との組み合わせ解析結果を示すである。
【図21】Adiponectin receptor 1 (rs1539355)と喫煙との組み合わせ解析結果を示すである。
【図22】運動プロジェクトの内容を示す図である。
【図23】運動前後での各検査項目を示す図である。
【図24】運動前後での各検査項目を示す図である。
【図25】一日平均7000歩以上歩いた者の運動前後での各検査項目を示す図である。
【図26】一日平均7000歩未満歩いた者の運動前後での各検査項目を示す図である。
【図27】一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて、体重変化とアディポネクチン変化率について解析した結果を示す図である。
【図28】体重変化別に、アディポネクチン、高感度CRP及びHOMA-IRについての運動前後の結果を示す図である。
【図29】一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて腹囲について解析した結果を示す図である。
【図30】腹囲変化別に、アディポネクチン、高感度CRP及びHOMA-IRについての運動前後の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の開示は、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターの利用に関する。本発明者らは、メタボリックシンドローム(MetS)の発症や予防に関するリスクファクターを解析するため、NGK社員3600名の血液サンプルを同意の下で採取し、血液中のMetS関連サイトカインであるレジスチンとアディポネクチンの濃度測定や、当該社員の15年以上にわたる健診カルテデータと合わせて個人のデータベースの構築を終えた。また遺伝子解析の同意が得られた2061名について、SNP解析を目的とし、MetSに関連した対象SNP100個を選出し、タイピングに成功し、解析に着手した。以下の3つの解析対象群1〜3とした。
【0012】
(解析群1)
2006年検診時点でMetSの人(151例)とMetSコンポーネント(腹囲、血圧、血糖、血中脂肪)がいずれも健常者範囲の人(188例)
(解析群2)
1999年時点でMetSでなく2006年の検診時にMetSと判断された人(78例)とMetSコンポーネントがいずれも健常者範囲の人(188例)
(解析群3)
1999年時点でMetSでなく2006年の検診時にMetSと判断された人(男性のみ、76例)とMetSコンポーネント(腹囲、血圧、血糖、血中脂肪)がいずれかがMetS基準内の人(76例)、という3つの解析対象群で実施した。
【0013】
解析の結果、健診項目のみの解析では、解析群3で、1999年時点で血液生化学検査項目であるクレアチニン濃度が少なく血清トリグリセリド濃度(TG値)が高い場合は7年後(2006年)にMetSになりやすいという全く新しいリスクが得られた。この知見は、MetS患者の約3割を説明し得ることもわかった。WBC(白血球)値が高くHaematocrit値が高いとMetsとなりやすいというリスクも得られた。これらは検査当時MetSでなく、7年後にMetSになるリスクであり、MetSの予防に活用できる可能性があることがわかった。
【0014】
また、SNPとMetS発症の関係を単回帰分析した結果、Apolipoprotein A-I(rs11216158)、Apolipoprotein C-III(rs2854117)、Adiponectin receptor 1(rs1539355) がMetSの関連因子であることが示唆された。
【0015】
さらに、喫煙、高脂血症、高尿酸血症などの環境因子とSNPの組み合わせ解析を行った。その結果、解析群2で、オッズ比が5を超え、環境因子のみ、SNPのみよりも高いオッズ比を示す組み合わせが20以上発見できた。これらもMetS予防に有用な組み合わせである。
【0016】
さらに、MetS患者を対象にして、運動習慣改善を指導した。インフォームドコンセントが得られた47名の方を対象に、歩数計を渡し、6ヶ月間、歩行を中心に運動していただき生活改善を促し、試験期間終了後の体重、および、血中サイトカイン等(アディポネクチン、高分子アディポネクチン、高感度CRP、レジスチン、HOMA-IR)の濃度を計測した。運動習慣改善指導の基準になる歩数が得られただけでなく、その運動介入で腹囲が減少した群では代謝関連項目であるアディポネクチンが増加し、HOMA-IRが減少するという有意な変化が認められた。
【0017】
本明細書において、「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態を、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)をいう。
【0018】
(内臓脂肪型肥満)
腹囲:男性で85cm以上、女性で90cm以上
(これらの腹囲は、男女ともに、腹部CT検査の内臓脂肪面積が100cm2以上に相当)
【0019】
(脂質異常)
中性脂肪:150mg/dL以上
HDLコレステロール:40mg/dL未満
のいずれか又は双方
【0020】
(高血圧)
最高(収縮期)血圧:130mmHg以上
最低(拡張期)血圧:85mmHg以上
のいずれか又は双方
【0021】
(高血糖)
空腹時血糖値:110mg/dL以上
【0022】
本明細書において、一塩基多型(SNP)とは、一般的には、遺伝子の塩基配列が一ヶ所だけ異なる状態及びその部位をいう。また、多型とは、一般的には、母集団中1%以上の頻度で存在する2以上の対立遺伝子(アレル)をいう。本発明において、「SNP」は、好ましくは、公共データベースに登録されたSNPであって、そのリファレンス番号から特定できるSNPである。前記公共データベースとしては、例えば、NCBI(NLM、NIH)のSNPデータベース等が挙げられる。本発明におけるSNPは、前記公共データベースのリファレンス番号であるrs番号(NCBI SNPデータベース)により特定できる。
【0023】
(検査方法)
本明細書に開示される、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法とすることができる。ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含むことが好ましい。これらの要素は、いずれも、採取した血液中の濃度による評価であることが好ましい。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
【0024】
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、上記の要素(1)と組み合わせて、あるいは上記要素(1)とは別個に、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とすることもできる。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【0025】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、型CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型であることが好ましい。これらのリスク多型の存在を検出することで、容易にMetsの予防状況や発症リスクを検査できる。
【0026】
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、上記の要素(1)及び/又は上記要素(2)と組み合わせて、あるいは上記要素(1)及び/又は上記要素(2)とは別個に以下の要素(3)から選択される1種又は2種を指標とすることができる。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)と喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)と喫煙との組み合わせ
【0027】
なお、検査対象個体は、ヒトであることが好ましく、より好ましくは、日本人である。また、検査対象個体から採取した試料は、要素(1)を指標とする場合には、血液であることが好ましいが、要素(2)及び要素(3)の場合には、ヒトの核酸若しくはゲノムDNAを含むもの又は核酸若しくはゲノムDNAであって、例えば、血液や体液等の生体試料や、そこから調製された核酸やゲノムDNA等が挙げられる。生体試料の採取方法、採取部位等は、特に制限されず、また、核酸やゲノムDNAの調製方法も従来公知の方法を適用でき、特に制限されない。
【0028】
なお、要素(1)に含まれる、クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数の検査方法は、当業者であれば周知の方法から適宜選択できる。臨床上一般的に使用される方法を採用できる。これらの項目は、1種以上であればよいが、好ましくは2種以上であり、さらに好ましくは3種以上であり、一層このましくは4種である。
【0029】
要素(2)及び要素(3)については、上記特定のSNPを検出する。本明細書において、SNPを検出には、いわゆるSNPタイピングを行う。「SNPのタイピング」とは、ゲノム上の位置が明らかとなっている前記SNPの多型部位がどの塩基であるかを同定することであって、例えば、AとGとから構成されるSNPを対立遺伝子で見た場合、検査対象個体から採取した試料中の検査対象個体の遺伝子型が、AA、AG、GGのいずれであるかを同定することをいう。SNPのタイピング方法は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。SNPタイピング方法としては、例えば、プライマー伸張法と蛍光法とを組み合わせた方法(TDIアッセイ、DOLアッセイ、基板上で行うプライマーアレイ単一塩基伸張法、Luminexアッセイなど)、リアルタイムPCRと蛍光法とを組み合わせた方法(例えば、TaqMan(商標)PCR法など)、PCRを用いない蛍光法(Invader(商標)アッセイなど)、プライマー伸張法とマススペクトルとを組み合わせた方法(PINPOINT法、PROBE法、VEST法、Survivorアッセイ、GOOD法など)、PCRとマススペクトルとを組み合わせた方法(hMC反応法など)が挙げられる。SNPタイピングは、当業者であれば、配列表の配列番号1〜4の塩基配列などを参照し、上記の公知の方法により適宜SNPタイピングできる。
【0030】
本検査方法において、検出するSNPsの数は、Metsの予防状況や発症リスクの予測性を高める観点から、要素(2)及び要素(3)からそれぞれ2種以上選択されることが好ましい。より好ましくは、要素(2)から選択される3種又は4種である。検出するSNPが多ければ、Metsの予防状況や発症リスクの検査確度が向上すると考えられる。
【0031】
本検査方法によれば、以上の各種指標を単独であるいは2種以上を組み合わせて、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査することができる。すなわち、Metsの予防程度に関する状況(効果的に予防されているかなど)やMets発症のリスクの程度を検査できる。
【0032】
要素(1)に関しては、クレアチニン濃度が低いほど、ヘモグロビン濃度が高いほど、ヘマトクリット値が高いほど及び白血球数が多いほど、Metsリスクが高くなる。
【0033】
また、要素(2)に関しては、アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)のリスク多型は、CT型及びTT型とすることが好ましい。また、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)のリスク多型は、CC型及びCT型とすることが好ましい。さらに、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)のリスク多型は、AA型とすることが好ましい。検出できたリスク多型が多ければ、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクが高いと判定できる。
【0034】
また、要素(3)に関しては、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)のリスク多型は、GG型及びGC型とすることが好ましい。また、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)のリスク多型はAA型とすることが好ましい。リスク多型と検査対象個体の喫煙習慣とが検出できれば、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクが高いと判定できる。検査対象個体につき、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPのリスク多型とアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型とが検出でき、かつ、喫煙習慣も検出できれば、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクがより高いと判定できる。
【0035】
以上の要素(1)〜(3)のほかに、肥満(BMI≧25)、脂質異常、高血圧、高血糖、喫煙状況に関する履歴や現況を組み合わせて、判定してもよい。
【0036】
Metsの予防程度、発症リスクを段階的に判定してもよい。たとえば、要素(1)の検査項目のレベル、要素(2)や要素(3)で検出したリスク多型の数、喫煙状況(喫煙頻度や量など)を組み合わせて、3〜5段階程度に設定できる。
【0037】
(検査キット)
本明細書に開示される検査キットは、本明細書に開示される検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含むことができる。こうした試薬類は公知であり、当業者において容易に入手可能である。また、本明細書に開示される他の検査キットは、本明細書に開示される検査方法に用いる検査キットであって、要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含むことができる。さらに他の態様の検査キットは、要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含むことができる。
【0038】
SNPを検出するためのポリヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイとしては、上述した従来公知のSNPタイピング方法に適したものが挙げられる。当業者であれば、配列番号1〜4で表される塩基配列を参照し、上記の公知の方法により適宜必要なポリヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイの少なくとも1つを準備できる。なお、これらの検査キットは、要素(1)〜(3)のそれぞれに対応する検査キットの他に、要素(1)〜(3)の2種以上の対象を検出するためのキットとすることもできる。本明細書に開示される検査キットは、採用するSNPタイピング方法に応じて、適宜、試薬等を含むことが好ましい。
【0039】
本明細書に開示されるSNPマーカーは、本明細書に開示される検査方法に用いるSNPマーカーであって、SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPであってもよい。また、他の態様のSNPマーカーは、前記SNPは、要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカーであってもよい。
【0040】
なお、本発明は、その他の態様として、前記4つのSNPsの少なくとも1つからなる高血圧発症に関するSNPマーカーをタイピングするためのポリヌクレオチド、プライマー、プローブ、及びDNAマイクロアレイの少なくとも1つを含む高血圧発症リスク検査キットである。上述したとおり、前記4つのSNPsは、家庭血圧に基づくものであり、いずれか1つのSNPであっても従来よりも予測能が高い高血圧の発症の予測に使用できる。
【0041】
(予防・診断・治療方法)
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法検査方法は、Metsの予防程度の検査方法や診断方法のほか、Metsの発症リスクの検査方法や診断方法にも適用できる。さらに、Metsの予防又は治療方法に適用できる。本明細書に開示される検査方法における各種指標を用いることで、Metsに対するリスクを検査できるため、当該検査結果を利用して、Metsの発症予防、診断、治療を行うことができる。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、メタボリックシンドローム群(MetS) VS 健常者群に比較してMetsと関連ある検診項目について解析した。
(1)解析対象
(解析データ1)
解析群1:現在MetS 151例 VS 明らかに健康 188例
【0043】
(解析データ2)
解析群2:調査開始時〜現在までにMetS 78例 VS 明らかに健康 188例
【0044】
なお、最近MetSを発症 76例は、最近MetSを発症 78例から女性1例、糖尿病1例を除去した。また、control約76例はMetSの76例と比較して、年齢、BMI、sBP、dBP、DM、TGの値、HDL-Cの値に有意差のないものを選択した。これらの検査結果を図1に示す。
【0045】
(解析データ3)
解析群3:調査開始時〜現在までにMetS 76例 VS 調査開始時の検診項目が類似する健常者 76例
【0046】
(2)検診項目
解析データ1〜解析データ3について以下の検診項目をMetS群と健常者群で比較した。
<2値化データ>
性別、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、ウロビリノーゲン、蛋白定性、糖定性、潜血、酒
<連続値データ>
年齢、身長、体重、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、T.CHO、TG、HDL、随時血糖、BUN、クレアチニン、UA、G.GTP、ヘモグロビン、GOT、GPT、ヘマトクリット、RBC、白血球数
【0047】
なお、解析データ1は2006年、解析データ2・3は調査開始時のデータを使用した。また、2値化データ:Fisherの正確確率検定、連続値データ:t検定により検定した。
【0048】
(3)解析結果
解析データ1、2では、supercontrol群との比較のため、ほとんどの項目で有意な結果が得られた。また、本解析では、MetSとControl群の検診項目を類似させた解析データ3で4項目(クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数)について有意な結果が得られた。解析データ1〜3について、クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数の結果を、図2〜図4にそれぞれ示す。
【0049】
図2及び図3に示すように、クレアチニンに関しては、MetS群よりControl群のほうが高い値を示した(解析データ3)。解析データ1と3の結果が逆になり、どのような意味を成すのかは不明である。また、図2〜図4に示すように、ヘモグロビン、ヘマトクリット及び白血球数については、解析データ1〜解析データ3のすべてのデータにおいてMetS群が高い値を示した。
【0050】
(4)FNNによる多変量解析結果
次いで、FNNによる多変量解析を行った。すなわち、今回のデータは数値データとカテゴリデータが含まれているが、My FIS(FNN)を用いて、3inputsまでの変数増加法解析を5-fold CVによって実行した。入力変数の項目を図5に示す
【0051】
(i)解析データ1の結果
結果を図6に示す。図6に示すように、高脂血症で収縮期血圧が高いとMetsになりやすいことがわかった。なお、図6に示すFNNモデルの見方は以下の通りである。ルールとは、2変数の場合、4つのブロックに分かれる。(3変数は8つのブロック)この一つ一つのブロックのことをルールという。図6のルール表において、左上のルールはHL値が低くて、収縮期血圧が低いルールである。また、このルールにおいて、1/ 144は部屋の快適性が”Mets”のグループに属する人が1人、”control”のグループに属する人が144人であることを示している。さらに、()内の数値(-1.07)はWf 値というものを示しており、このWf 値が大きいほどMetsに近いルールであり、この値が大きいほどcontrolに近いルールであることを示している。
【0052】
(ii)解析データ2の結果
結果を図7に示す。図7に示すように、TG量が多く、WBC(白血球)多いとMetsとなりやすいことがわかった。
【0053】
(iii)解析データ3の結果
結果を図8に示す。図8に示すように、Cr(クレアチニン)量が少なく、TG量が多いとMetsとなりやすいことがわかった。また、Cr(クレアチニン)は値が大きいほどMetsの危険性が高くなるといわれているが、今回の結果はCr値が低いほどMets危険性が高くなるというものであった。そこでCr(クレアチニン)を除いた26指標につきもう一度FNN解析を行った(second rule)。その結果、WBC(白血球)値が高くHaematocrit値が高いとMetsとなりやすい
【0054】
<解析データ3で関連性が示唆された4項目の生物学的特徴>
なお、これら4項目の検診項目については、以下の通りの生物学的特徴が知られている。
(クレアチニン)
筋肉運動のエネルギー源となるアミノ酸の一種クレアチンが代謝されてできた物質である。尿酸や尿素窒素と同様に老廃物のひとつで、通常尿として体外に排泄されるが、腎不全など腎機能が障害をうけていると、正しく排泄されずに、血液中のクレアチニンが高くなる。クレアチニンの値がむしろ低い人のほうが代謝異常の影響を受けやすくMetsの危険性があると考えられる。
【0055】
(ヘモグロビン)
高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖が、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)と結合する。この結合したものをグリコヘモグロビンといい、中でもHbA1c(ヘモグロビン・エィワンシー)は、糖尿病やメタボにも、密接な関係を有するといわれている。ヘモグロビン濃度が高いと、高血糖状態になっており、メタボの危険性が高くなっていると考えられる。
【0056】
(ヘマトクリット)
ヘマトクリットは赤血球の成分であり、ヘマクリット値が減少すると赤血球・ヘモグロビン濃度が減り、ヘマクリット値が増大すると 赤血球・ヘモグロビン濃度が増える。ヘマトクリット値が高いと、ヘモグロビン濃度が増えており、上で述べた理由より、メタボの危険性が高くなっていると考えられる。
【0057】
(白血球数)
白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解したり、免疫の働きをしている。メタボになると体内の抵抗力が低下するため、ウイルス感染などにより、白血球の活性化が起こり、白血球数が増加すると考えられる。
【0058】
以上の結果から、Metsの予防・発症に関連するリスクファクターとしての検診項目は、クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット及び白血球数であることがわかった。
【実施例2】
【0059】
本実施例では、SNPと検診項目について単解析を行った。
(1)解析対象
解析データ1〜3は、実施例1と同じ解析対象群1〜3から取得した。なお、SNPは、解析データ1、2については、66SNPsを選択した。また、解析データ3については、58SNPsを選択した。検診項目については、解析データ1については、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、飲酒、アディポネクチン濃度(2006年)とし、解析データ2、3については、アディポ除く(1999年)解析データ1の項目とした。
【0060】
解析手法は、ロジスティック回帰分析(Wald検定により有意な因子を抽出)を用い、SNP遺伝子型2種類を比較した。リスクモデルは、dominant model( AA vs Aa+aa )及びrecessive model( AA+Aa vs aa )とし、additive ( AA vs Aa vs aa ) は評価しないこととした。
【0061】
(2)解析結果
結果を図9〜図11に示す。
解析データ1では、5SNP、6検診項目、解析データ2では、7SNP、4検診項目、解析データ3では、5SNPでそれぞれ有意な結果が得られた。なかでも、解析データ2、3で有意な差がみられた Apolipoprotein A-I(rs11216158)、Apolipoprotein C-III(rs2854117)、解析データ2でP_value<0.01であったAdiponectin receptor 1 (rs1539355)に注目し、これらの多型につき、解析データ2,3に関し頻度分布を解析した。結果を図12〜図14に示す。
【0062】
図12〜図14に示すように、Apolipoprotein A-I、Apolipoprotein C- III及びAdiponectin receptor 1がMetSの関連因子であることが示唆された。
【実施例3】
【0063】
(1)解析対象
実施例2と同様とした。ただし、解析手法は、1SNPと1検診項目の組み合わせにより解析した。また、ロジスティック回帰分析( Wald検定により、SNPと検診項目両方とも有意な組み合わせを重要な因子として抽出 )することにおり解析した。なお、SNPは単回帰分析と同様にdominant, recessive modelを評価した。
【0064】
(2)解析結果
解析データ1についての解析結果を図15及び図16に示す。図15及び図16に示すように、19の有意な組み合わせが選択された。すなわち、以下の組み合わせであった。
SNP+高脂血症(HL)・・・3組み合わせ
SNP+高尿酸血症(HU)・・・5組み合わせ
SNP+喫煙(SM)・・・6組み合わせ
SNP+アディポネクチン(Adipo)・・・3組み合わせ
【0065】
解析データ2についての解析結果を図17及び図18に示す。図17及び図18に示すように、25の有意な組み合わせが選択された。すなわち、以下の組み合わせであった。
SNP+高血圧(HT)・・・7組み合わせ
SNP+高脂血症(HL)・・・4組み合わせ
SNP+高尿酸血症(HU)・・・6組み合わせ
SNP+喫煙(SM)・・・8組み合わせ
【0066】
解析データ3について有意な組み合わせは見つからなかった
【0067】
解析データ1〜2で選ばれた組み合わせのうち、図19に示すように、非常に有意であった以下の組み合わせの検討を行った。
解析データ1についてEstrogen receptor 2(rs1255998)と喫煙の組み合わせ
解析データ2について、Adiponectin receptor 1 (rs1539355)と喫煙の組み合わせ
【0068】
Estrogen receptor 2 SNPと喫煙の組み合わせについて、両方ともRISK、SNPのみRISK、喫煙のみRISK、NO RISKに分け、解析データ2で1999年と2006年のBMIを調査した。結果を図20に示す。また、Adiponection receptor 1 SNP、喫煙の組み合わせについて、両方ともRISK、SNPのみRISK、喫煙のみRISK、NO RISKに分け、解析データ2で1999年と2006年のBMIを調査した。結果を図21に示す。
【0069】
図20及び図21に示すように、1999年と2006年のBMIの比較より、Estrogen receptor 2と喫煙、Adiponectin receptor 1と喫煙組み合わせリスクの重要性が示唆された。
【実施例4】
【0070】
本実施例では、運動プロジェクトを行い、被験者につき、図22に示すような検査項目等について検診を行った。すなわち、MetS 186名の中から同意の得られた47名が登録された。6ヶ月間、歩行を中心に運動してもらい、生活改善を促した。その後、再度 特殊採血を実施した。
【0071】
47名全体での一日の平均歩数は7941±2663.3歩であった。各データに関し、運動前後での比較を図23及び図24に示す。図23に示すように、全体で体重は有意に減少しており、またアディポネクチン濃度にも有意な変化が見られた。また、CRP以外の項目で有意差が認められた。高感度CRP以外のマーカーは運動前後で有意な変化が見られた。
【0072】
次に、一日平均7000歩以上歩いた者33名のみで解析した。一日の平均歩数は 9001±1817.3歩であった。各データの運動前後での比較を図25に示す。図25に示すように、全体での体重変化は平均1.5kg減少と有意であった。また、7000歩以上歩いた群ではCRP以外の項目で有意差が認められた。
【0073】
また、一日平均7000歩未満であった14名のみで解析した。一日の平均歩数は 4056±1236歩であった。各データの運動前後での比較を図26に示す。図26に示すように、全体での体重変化は平均0.4kg増加したものの有意ではなかった。また、7000歩未満であった群ではレジスチンで有意差があるものの、その他では有意差は認められなかった。
【0074】
一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて、体重変化とアディポネクチン変化率について解析した。結果を図27に示す。図27に示すように、一日平均7000歩以上の群と7000歩未満の群では、体重の変化では有意な差が見られたものの、アディポネクチンの変化では有意な差は見られなかった。
【0075】
さらに、体重変化別結果を図28に示す。図28に示すように、体重減少群ではアディポネクチン及びHOMA-IRで有意な変化が認められた。一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて腹囲について解析した結果を図29に示す。図29に示すように、腹囲に有意な差は見られなかったものの、一日平均7000歩以上の群では減少する傾向が、7000歩未満の群では増加する傾向が見られた。また開始前の腹囲に有意差はないものの、7000歩未満の群で腹囲や体重が大きい傾向があり、もともと肥満者では運動量が低いことが示唆される。さらに、腹囲変化群別結果を図30に示す。腹囲減少群ではアディポネクチン及びHOMA-IRで有意な変化が認められた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(以下、Metsともいう。)とは、内臓脂肪型肥満に、高血糖、高血圧及び高脂血症のいずれか2種以上を合併した病態をいう。Metsは、高齢化社会に向けて、医療費抑制及び高齢者のQOL確保等の観点から、予防及び改善すべき病態である。Metsは、生活習慣の改善によってその発症を予防することが有効であると考えられている。
【0003】
Metsの診断指標として腹囲、中性脂肪、血糖値、血圧及びHDLコレステロールが挙げられている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0508-1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、診断基準については見直しがなされるなど、Mets発症のリスクファクターとしては、有効なものが提供されていないのが現状である。
【0006】
そこで、本明細書の開示は、Metsについてのリスクファクターの利用を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、あるヒト母集団について追跡的に、血液検査等を行い、既存の診断基準によるMetsと健常者とについて、Mets発症リスクファクター(要素)を見出した。また、母集団について、SNP及び検診項目につて、Mets群に有意な要素やその組み合わせを見出した。これらの知見に基づき、以下の手段が提供される。
【0008】
[1] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
[2] 前記ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含む、[1]に記載の検査方法。
[3] さらに、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とする、[1]又は[2]に記載の検査方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
[4] 前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、[3]に記載の検査方法。
[5] さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
[6] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
[7] 前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、[3]に記載の検査方法。
[8] さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項[6]又は[7]に記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)と喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)と喫煙との組み合わせ
[9] 検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
[10] [1]〜[5]のいずれかに記載の検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも前記要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含む、キット。
[11] [6]〜[8]のいずれかに記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPである、マーカー。
[12] [6]〜[8]のいずれかに記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
[13] [9]に記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカー。
[14] [9]に記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【0009】
なお、本明細書においては、一塩基多型(SNP)をrs番号で特定し、そのアレルの表記もrs番号で特定される表記に従うが、rs番号でアレルが特定された鎖の相補鎖でタイピングした場合には、当該相補鎖における塩基で表記される。例えば、アポリポプロテインAI遺伝子のrs番号:rs11216158で特定されるSNPの多型は、A/Gであるが、本明細書においては、C/Tと表記される。また、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるrs番号:rs2854117で特定されるSNPの多型は、A/Gであるが、本明細書においては、C/Tと表記される。なお、これらのSNPに関しては、リスク多型の表記も同様に実際にタイピングした際の表記で表される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】最近MetSを発症した76例及びcontrol76例の年齢、BMI、sBP、dBP、DM、TGの値、HDL-Cの検査結果を示す図である。
【図2】解析データ1〜3についてのクレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数の結果を示す図である。
【図3】解析データ3についてのクレアチニン及びヘモグロビンの結果を示す図である。
【図4】解析データ3についてのヘマトクリット及び白血球数の結果を示す図である。
【図5】FNNによる多変量解析に用いる入力変数の項目を示す図である。
【図6】FNNによる多変量解析による解析データ1の結果を示す図である。
【図7】FNNによる多変量解析による解析データ2の結果を示す図である。
【図8】FNNによる多変量解析による解析データ3の結果を示す図である。
【図9】解析データ1で有意になったSNPと検査項目とを示す図である。
【図10】解析データ2で有意になったSNPと検査項目とを示す図である。
【図11】解析データ3で有意になったSNPを示す図である。
【図12】解析データ2及び3に関し、Apolipoprotein A-I(rs11216158)の頻度分布を示す図である。
【図13】解析データ2及び3に関し、Apolipoprotein C-III(rs2854117)の頻度分布を示す図である。
【図14】解析データ2及び3に関し、Adiponectin receptor 1 (rs1539355)の頻度分布を示す図である。
【図15】解析データ1について有意になった組み合わせ(オッズ比)を示す図である。
【図16】解析データ1について有意になった組み合わせ(頻度)を示す図である。
【図17】解析データ2について有意になった組み合わせ(オッズ比)を示す図である。
【図18】解析データ2について有意になった組み合わせ(頻度)を示す図である。
【図19】解析データ1及び2について非常に有意な組み合わせのルール表を示す図である。
【図20】Estrogen receptor 2(rs1255998)と喫煙との組み合わせ解析結果を示すである。
【図21】Adiponectin receptor 1 (rs1539355)と喫煙との組み合わせ解析結果を示すである。
【図22】運動プロジェクトの内容を示す図である。
【図23】運動前後での各検査項目を示す図である。
【図24】運動前後での各検査項目を示す図である。
【図25】一日平均7000歩以上歩いた者の運動前後での各検査項目を示す図である。
【図26】一日平均7000歩未満歩いた者の運動前後での各検査項目を示す図である。
【図27】一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて、体重変化とアディポネクチン変化率について解析した結果を示す図である。
【図28】体重変化別に、アディポネクチン、高感度CRP及びHOMA-IRについての運動前後の結果を示す図である。
【図29】一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて腹囲について解析した結果を示す図である。
【図30】腹囲変化別に、アディポネクチン、高感度CRP及びHOMA-IRについての運動前後の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の開示は、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターの利用に関する。本発明者らは、メタボリックシンドローム(MetS)の発症や予防に関するリスクファクターを解析するため、NGK社員3600名の血液サンプルを同意の下で採取し、血液中のMetS関連サイトカインであるレジスチンとアディポネクチンの濃度測定や、当該社員の15年以上にわたる健診カルテデータと合わせて個人のデータベースの構築を終えた。また遺伝子解析の同意が得られた2061名について、SNP解析を目的とし、MetSに関連した対象SNP100個を選出し、タイピングに成功し、解析に着手した。以下の3つの解析対象群1〜3とした。
【0012】
(解析群1)
2006年検診時点でMetSの人(151例)とMetSコンポーネント(腹囲、血圧、血糖、血中脂肪)がいずれも健常者範囲の人(188例)
(解析群2)
1999年時点でMetSでなく2006年の検診時にMetSと判断された人(78例)とMetSコンポーネントがいずれも健常者範囲の人(188例)
(解析群3)
1999年時点でMetSでなく2006年の検診時にMetSと判断された人(男性のみ、76例)とMetSコンポーネント(腹囲、血圧、血糖、血中脂肪)がいずれかがMetS基準内の人(76例)、という3つの解析対象群で実施した。
【0013】
解析の結果、健診項目のみの解析では、解析群3で、1999年時点で血液生化学検査項目であるクレアチニン濃度が少なく血清トリグリセリド濃度(TG値)が高い場合は7年後(2006年)にMetSになりやすいという全く新しいリスクが得られた。この知見は、MetS患者の約3割を説明し得ることもわかった。WBC(白血球)値が高くHaematocrit値が高いとMetsとなりやすいというリスクも得られた。これらは検査当時MetSでなく、7年後にMetSになるリスクであり、MetSの予防に活用できる可能性があることがわかった。
【0014】
また、SNPとMetS発症の関係を単回帰分析した結果、Apolipoprotein A-I(rs11216158)、Apolipoprotein C-III(rs2854117)、Adiponectin receptor 1(rs1539355) がMetSの関連因子であることが示唆された。
【0015】
さらに、喫煙、高脂血症、高尿酸血症などの環境因子とSNPの組み合わせ解析を行った。その結果、解析群2で、オッズ比が5を超え、環境因子のみ、SNPのみよりも高いオッズ比を示す組み合わせが20以上発見できた。これらもMetS予防に有用な組み合わせである。
【0016】
さらに、MetS患者を対象にして、運動習慣改善を指導した。インフォームドコンセントが得られた47名の方を対象に、歩数計を渡し、6ヶ月間、歩行を中心に運動していただき生活改善を促し、試験期間終了後の体重、および、血中サイトカイン等(アディポネクチン、高分子アディポネクチン、高感度CRP、レジスチン、HOMA-IR)の濃度を計測した。運動習慣改善指導の基準になる歩数が得られただけでなく、その運動介入で腹囲が減少した群では代謝関連項目であるアディポネクチンが増加し、HOMA-IRが減少するという有意な変化が認められた。
【0017】
本明細書において、「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態を、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)をいう。
【0018】
(内臓脂肪型肥満)
腹囲:男性で85cm以上、女性で90cm以上
(これらの腹囲は、男女ともに、腹部CT検査の内臓脂肪面積が100cm2以上に相当)
【0019】
(脂質異常)
中性脂肪:150mg/dL以上
HDLコレステロール:40mg/dL未満
のいずれか又は双方
【0020】
(高血圧)
最高(収縮期)血圧:130mmHg以上
最低(拡張期)血圧:85mmHg以上
のいずれか又は双方
【0021】
(高血糖)
空腹時血糖値:110mg/dL以上
【0022】
本明細書において、一塩基多型(SNP)とは、一般的には、遺伝子の塩基配列が一ヶ所だけ異なる状態及びその部位をいう。また、多型とは、一般的には、母集団中1%以上の頻度で存在する2以上の対立遺伝子(アレル)をいう。本発明において、「SNP」は、好ましくは、公共データベースに登録されたSNPであって、そのリファレンス番号から特定できるSNPである。前記公共データベースとしては、例えば、NCBI(NLM、NIH)のSNPデータベース等が挙げられる。本発明におけるSNPは、前記公共データベースのリファレンス番号であるrs番号(NCBI SNPデータベース)により特定できる。
【0023】
(検査方法)
本明細書に開示される、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法とすることができる。ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含むことが好ましい。これらの要素は、いずれも、採取した血液中の濃度による評価であることが好ましい。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
【0024】
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、上記の要素(1)と組み合わせて、あるいは上記要素(1)とは別個に、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とすることもできる。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【0025】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、型CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型であることが好ましい。これらのリスク多型の存在を検出することで、容易にMetsの予防状況や発症リスクを検査できる。
【0026】
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法は、上記の要素(1)及び/又は上記要素(2)と組み合わせて、あるいは上記要素(1)及び/又は上記要素(2)とは別個に以下の要素(3)から選択される1種又は2種を指標とすることができる。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)と喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)と喫煙との組み合わせ
【0027】
なお、検査対象個体は、ヒトであることが好ましく、より好ましくは、日本人である。また、検査対象個体から採取した試料は、要素(1)を指標とする場合には、血液であることが好ましいが、要素(2)及び要素(3)の場合には、ヒトの核酸若しくはゲノムDNAを含むもの又は核酸若しくはゲノムDNAであって、例えば、血液や体液等の生体試料や、そこから調製された核酸やゲノムDNA等が挙げられる。生体試料の採取方法、採取部位等は、特に制限されず、また、核酸やゲノムDNAの調製方法も従来公知の方法を適用でき、特に制限されない。
【0028】
なお、要素(1)に含まれる、クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数の検査方法は、当業者であれば周知の方法から適宜選択できる。臨床上一般的に使用される方法を採用できる。これらの項目は、1種以上であればよいが、好ましくは2種以上であり、さらに好ましくは3種以上であり、一層このましくは4種である。
【0029】
要素(2)及び要素(3)については、上記特定のSNPを検出する。本明細書において、SNPを検出には、いわゆるSNPタイピングを行う。「SNPのタイピング」とは、ゲノム上の位置が明らかとなっている前記SNPの多型部位がどの塩基であるかを同定することであって、例えば、AとGとから構成されるSNPを対立遺伝子で見た場合、検査対象個体から採取した試料中の検査対象個体の遺伝子型が、AA、AG、GGのいずれであるかを同定することをいう。SNPのタイピング方法は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。SNPタイピング方法としては、例えば、プライマー伸張法と蛍光法とを組み合わせた方法(TDIアッセイ、DOLアッセイ、基板上で行うプライマーアレイ単一塩基伸張法、Luminexアッセイなど)、リアルタイムPCRと蛍光法とを組み合わせた方法(例えば、TaqMan(商標)PCR法など)、PCRを用いない蛍光法(Invader(商標)アッセイなど)、プライマー伸張法とマススペクトルとを組み合わせた方法(PINPOINT法、PROBE法、VEST法、Survivorアッセイ、GOOD法など)、PCRとマススペクトルとを組み合わせた方法(hMC反応法など)が挙げられる。SNPタイピングは、当業者であれば、配列表の配列番号1〜4の塩基配列などを参照し、上記の公知の方法により適宜SNPタイピングできる。
【0030】
本検査方法において、検出するSNPsの数は、Metsの予防状況や発症リスクの予測性を高める観点から、要素(2)及び要素(3)からそれぞれ2種以上選択されることが好ましい。より好ましくは、要素(2)から選択される3種又は4種である。検出するSNPが多ければ、Metsの予防状況や発症リスクの検査確度が向上すると考えられる。
【0031】
本検査方法によれば、以上の各種指標を単独であるいは2種以上を組み合わせて、Metsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査することができる。すなわち、Metsの予防程度に関する状況(効果的に予防されているかなど)やMets発症のリスクの程度を検査できる。
【0032】
要素(1)に関しては、クレアチニン濃度が低いほど、ヘモグロビン濃度が高いほど、ヘマトクリット値が高いほど及び白血球数が多いほど、Metsリスクが高くなる。
【0033】
また、要素(2)に関しては、アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)のリスク多型は、CT型及びTT型とすることが好ましい。また、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)のリスク多型は、CC型及びCT型とすることが好ましい。さらに、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)のリスク多型は、AA型とすることが好ましい。検出できたリスク多型が多ければ、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクが高いと判定できる。
【0034】
また、要素(3)に関しては、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNP(rs番号:rs1255998)のリスク多型は、GG型及びGC型とすることが好ましい。また、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)のリスク多型はAA型とすることが好ましい。リスク多型と検査対象個体の喫煙習慣とが検出できれば、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクが高いと判定できる。検査対象個体につき、エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPのリスク多型とアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型とが検出でき、かつ、喫煙習慣も検出できれば、Metsの予防程度が低くあるいはMetsの発症リスクがより高いと判定できる。
【0035】
以上の要素(1)〜(3)のほかに、肥満(BMI≧25)、脂質異常、高血圧、高血糖、喫煙状況に関する履歴や現況を組み合わせて、判定してもよい。
【0036】
Metsの予防程度、発症リスクを段階的に判定してもよい。たとえば、要素(1)の検査項目のレベル、要素(2)や要素(3)で検出したリスク多型の数、喫煙状況(喫煙頻度や量など)を組み合わせて、3〜5段階程度に設定できる。
【0037】
(検査キット)
本明細書に開示される検査キットは、本明細書に開示される検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含むことができる。こうした試薬類は公知であり、当業者において容易に入手可能である。また、本明細書に開示される他の検査キットは、本明細書に開示される検査方法に用いる検査キットであって、要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含むことができる。さらに他の態様の検査キットは、要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含むことができる。
【0038】
SNPを検出するためのポリヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイとしては、上述した従来公知のSNPタイピング方法に適したものが挙げられる。当業者であれば、配列番号1〜4で表される塩基配列を参照し、上記の公知の方法により適宜必要なポリヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイの少なくとも1つを準備できる。なお、これらの検査キットは、要素(1)〜(3)のそれぞれに対応する検査キットの他に、要素(1)〜(3)の2種以上の対象を検出するためのキットとすることもできる。本明細書に開示される検査キットは、採用するSNPタイピング方法に応じて、適宜、試薬等を含むことが好ましい。
【0039】
本明細書に開示されるSNPマーカーは、本明細書に開示される検査方法に用いるSNPマーカーであって、SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPであってもよい。また、他の態様のSNPマーカーは、前記SNPは、要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカーであってもよい。
【0040】
なお、本発明は、その他の態様として、前記4つのSNPsの少なくとも1つからなる高血圧発症に関するSNPマーカーをタイピングするためのポリヌクレオチド、プライマー、プローブ、及びDNAマイクロアレイの少なくとも1つを含む高血圧発症リスク検査キットである。上述したとおり、前記4つのSNPsは、家庭血圧に基づくものであり、いずれか1つのSNPであっても従来よりも予測能が高い高血圧の発症の予測に使用できる。
【0041】
(予防・診断・治療方法)
本明細書に開示されるMetsの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法検査方法は、Metsの予防程度の検査方法や診断方法のほか、Metsの発症リスクの検査方法や診断方法にも適用できる。さらに、Metsの予防又は治療方法に適用できる。本明細書に開示される検査方法における各種指標を用いることで、Metsに対するリスクを検査できるため、当該検査結果を利用して、Metsの発症予防、診断、治療を行うことができる。
【実施例1】
【0042】
本実施例では、メタボリックシンドローム群(MetS) VS 健常者群に比較してMetsと関連ある検診項目について解析した。
(1)解析対象
(解析データ1)
解析群1:現在MetS 151例 VS 明らかに健康 188例
【0043】
(解析データ2)
解析群2:調査開始時〜現在までにMetS 78例 VS 明らかに健康 188例
【0044】
なお、最近MetSを発症 76例は、最近MetSを発症 78例から女性1例、糖尿病1例を除去した。また、control約76例はMetSの76例と比較して、年齢、BMI、sBP、dBP、DM、TGの値、HDL-Cの値に有意差のないものを選択した。これらの検査結果を図1に示す。
【0045】
(解析データ3)
解析群3:調査開始時〜現在までにMetS 76例 VS 調査開始時の検診項目が類似する健常者 76例
【0046】
(2)検診項目
解析データ1〜解析データ3について以下の検診項目をMetS群と健常者群で比較した。
<2値化データ>
性別、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、ウロビリノーゲン、蛋白定性、糖定性、潜血、酒
<連続値データ>
年齢、身長、体重、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、T.CHO、TG、HDL、随時血糖、BUN、クレアチニン、UA、G.GTP、ヘモグロビン、GOT、GPT、ヘマトクリット、RBC、白血球数
【0047】
なお、解析データ1は2006年、解析データ2・3は調査開始時のデータを使用した。また、2値化データ:Fisherの正確確率検定、連続値データ:t検定により検定した。
【0048】
(3)解析結果
解析データ1、2では、supercontrol群との比較のため、ほとんどの項目で有意な結果が得られた。また、本解析では、MetSとControl群の検診項目を類似させた解析データ3で4項目(クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数)について有意な結果が得られた。解析データ1〜3について、クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数の結果を、図2〜図4にそれぞれ示す。
【0049】
図2及び図3に示すように、クレアチニンに関しては、MetS群よりControl群のほうが高い値を示した(解析データ3)。解析データ1と3の結果が逆になり、どのような意味を成すのかは不明である。また、図2〜図4に示すように、ヘモグロビン、ヘマトクリット及び白血球数については、解析データ1〜解析データ3のすべてのデータにおいてMetS群が高い値を示した。
【0050】
(4)FNNによる多変量解析結果
次いで、FNNによる多変量解析を行った。すなわち、今回のデータは数値データとカテゴリデータが含まれているが、My FIS(FNN)を用いて、3inputsまでの変数増加法解析を5-fold CVによって実行した。入力変数の項目を図5に示す
【0051】
(i)解析データ1の結果
結果を図6に示す。図6に示すように、高脂血症で収縮期血圧が高いとMetsになりやすいことがわかった。なお、図6に示すFNNモデルの見方は以下の通りである。ルールとは、2変数の場合、4つのブロックに分かれる。(3変数は8つのブロック)この一つ一つのブロックのことをルールという。図6のルール表において、左上のルールはHL値が低くて、収縮期血圧が低いルールである。また、このルールにおいて、1/ 144は部屋の快適性が”Mets”のグループに属する人が1人、”control”のグループに属する人が144人であることを示している。さらに、()内の数値(-1.07)はWf 値というものを示しており、このWf 値が大きいほどMetsに近いルールであり、この値が大きいほどcontrolに近いルールであることを示している。
【0052】
(ii)解析データ2の結果
結果を図7に示す。図7に示すように、TG量が多く、WBC(白血球)多いとMetsとなりやすいことがわかった。
【0053】
(iii)解析データ3の結果
結果を図8に示す。図8に示すように、Cr(クレアチニン)量が少なく、TG量が多いとMetsとなりやすいことがわかった。また、Cr(クレアチニン)は値が大きいほどMetsの危険性が高くなるといわれているが、今回の結果はCr値が低いほどMets危険性が高くなるというものであった。そこでCr(クレアチニン)を除いた26指標につきもう一度FNN解析を行った(second rule)。その結果、WBC(白血球)値が高くHaematocrit値が高いとMetsとなりやすい
【0054】
<解析データ3で関連性が示唆された4項目の生物学的特徴>
なお、これら4項目の検診項目については、以下の通りの生物学的特徴が知られている。
(クレアチニン)
筋肉運動のエネルギー源となるアミノ酸の一種クレアチンが代謝されてできた物質である。尿酸や尿素窒素と同様に老廃物のひとつで、通常尿として体外に排泄されるが、腎不全など腎機能が障害をうけていると、正しく排泄されずに、血液中のクレアチニンが高くなる。クレアチニンの値がむしろ低い人のほうが代謝異常の影響を受けやすくMetsの危険性があると考えられる。
【0055】
(ヘモグロビン)
高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖が、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)と結合する。この結合したものをグリコヘモグロビンといい、中でもHbA1c(ヘモグロビン・エィワンシー)は、糖尿病やメタボにも、密接な関係を有するといわれている。ヘモグロビン濃度が高いと、高血糖状態になっており、メタボの危険性が高くなっていると考えられる。
【0056】
(ヘマトクリット)
ヘマトクリットは赤血球の成分であり、ヘマクリット値が減少すると赤血球・ヘモグロビン濃度が減り、ヘマクリット値が増大すると 赤血球・ヘモグロビン濃度が増える。ヘマトクリット値が高いと、ヘモグロビン濃度が増えており、上で述べた理由より、メタボの危険性が高くなっていると考えられる。
【0057】
(白血球数)
白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解したり、免疫の働きをしている。メタボになると体内の抵抗力が低下するため、ウイルス感染などにより、白血球の活性化が起こり、白血球数が増加すると考えられる。
【0058】
以上の結果から、Metsの予防・発症に関連するリスクファクターとしての検診項目は、クレアチニン、ヘモグロビン、ヘマトクリット及び白血球数であることがわかった。
【実施例2】
【0059】
本実施例では、SNPと検診項目について単解析を行った。
(1)解析対象
解析データ1〜3は、実施例1と同じ解析対象群1〜3から取得した。なお、SNPは、解析データ1、2については、66SNPsを選択した。また、解析データ3については、58SNPsを選択した。検診項目については、解析データ1については、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、飲酒、アディポネクチン濃度(2006年)とし、解析データ2、3については、アディポ除く(1999年)解析データ1の項目とした。
【0060】
解析手法は、ロジスティック回帰分析(Wald検定により有意な因子を抽出)を用い、SNP遺伝子型2種類を比較した。リスクモデルは、dominant model( AA vs Aa+aa )及びrecessive model( AA+Aa vs aa )とし、additive ( AA vs Aa vs aa ) は評価しないこととした。
【0061】
(2)解析結果
結果を図9〜図11に示す。
解析データ1では、5SNP、6検診項目、解析データ2では、7SNP、4検診項目、解析データ3では、5SNPでそれぞれ有意な結果が得られた。なかでも、解析データ2、3で有意な差がみられた Apolipoprotein A-I(rs11216158)、Apolipoprotein C-III(rs2854117)、解析データ2でP_value<0.01であったAdiponectin receptor 1 (rs1539355)に注目し、これらの多型につき、解析データ2,3に関し頻度分布を解析した。結果を図12〜図14に示す。
【0062】
図12〜図14に示すように、Apolipoprotein A-I、Apolipoprotein C- III及びAdiponectin receptor 1がMetSの関連因子であることが示唆された。
【実施例3】
【0063】
(1)解析対象
実施例2と同様とした。ただし、解析手法は、1SNPと1検診項目の組み合わせにより解析した。また、ロジスティック回帰分析( Wald検定により、SNPと検診項目両方とも有意な組み合わせを重要な因子として抽出 )することにおり解析した。なお、SNPは単回帰分析と同様にdominant, recessive modelを評価した。
【0064】
(2)解析結果
解析データ1についての解析結果を図15及び図16に示す。図15及び図16に示すように、19の有意な組み合わせが選択された。すなわち、以下の組み合わせであった。
SNP+高脂血症(HL)・・・3組み合わせ
SNP+高尿酸血症(HU)・・・5組み合わせ
SNP+喫煙(SM)・・・6組み合わせ
SNP+アディポネクチン(Adipo)・・・3組み合わせ
【0065】
解析データ2についての解析結果を図17及び図18に示す。図17及び図18に示すように、25の有意な組み合わせが選択された。すなわち、以下の組み合わせであった。
SNP+高血圧(HT)・・・7組み合わせ
SNP+高脂血症(HL)・・・4組み合わせ
SNP+高尿酸血症(HU)・・・6組み合わせ
SNP+喫煙(SM)・・・8組み合わせ
【0066】
解析データ3について有意な組み合わせは見つからなかった
【0067】
解析データ1〜2で選ばれた組み合わせのうち、図19に示すように、非常に有意であった以下の組み合わせの検討を行った。
解析データ1についてEstrogen receptor 2(rs1255998)と喫煙の組み合わせ
解析データ2について、Adiponectin receptor 1 (rs1539355)と喫煙の組み合わせ
【0068】
Estrogen receptor 2 SNPと喫煙の組み合わせについて、両方ともRISK、SNPのみRISK、喫煙のみRISK、NO RISKに分け、解析データ2で1999年と2006年のBMIを調査した。結果を図20に示す。また、Adiponection receptor 1 SNP、喫煙の組み合わせについて、両方ともRISK、SNPのみRISK、喫煙のみRISK、NO RISKに分け、解析データ2で1999年と2006年のBMIを調査した。結果を図21に示す。
【0069】
図20及び図21に示すように、1999年と2006年のBMIの比較より、Estrogen receptor 2と喫煙、Adiponectin receptor 1と喫煙組み合わせリスクの重要性が示唆された。
【実施例4】
【0070】
本実施例では、運動プロジェクトを行い、被験者につき、図22に示すような検査項目等について検診を行った。すなわち、MetS 186名の中から同意の得られた47名が登録された。6ヶ月間、歩行を中心に運動してもらい、生活改善を促した。その後、再度 特殊採血を実施した。
【0071】
47名全体での一日の平均歩数は7941±2663.3歩であった。各データに関し、運動前後での比較を図23及び図24に示す。図23に示すように、全体で体重は有意に減少しており、またアディポネクチン濃度にも有意な変化が見られた。また、CRP以外の項目で有意差が認められた。高感度CRP以外のマーカーは運動前後で有意な変化が見られた。
【0072】
次に、一日平均7000歩以上歩いた者33名のみで解析した。一日の平均歩数は 9001±1817.3歩であった。各データの運動前後での比較を図25に示す。図25に示すように、全体での体重変化は平均1.5kg減少と有意であった。また、7000歩以上歩いた群ではCRP以外の項目で有意差が認められた。
【0073】
また、一日平均7000歩未満であった14名のみで解析した。一日の平均歩数は 4056±1236歩であった。各データの運動前後での比較を図26に示す。図26に示すように、全体での体重変化は平均0.4kg増加したものの有意ではなかった。また、7000歩未満であった群ではレジスチンで有意差があるものの、その他では有意差は認められなかった。
【0074】
一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて、体重変化とアディポネクチン変化率について解析した。結果を図27に示す。図27に示すように、一日平均7000歩以上の群と7000歩未満の群では、体重の変化では有意な差が見られたものの、アディポネクチンの変化では有意な差は見られなかった。
【0075】
さらに、体重変化別結果を図28に示す。図28に示すように、体重減少群ではアディポネクチン及びHOMA-IRで有意な変化が認められた。一日平均7000歩以上歩いた者と7000歩未満の者とについて腹囲について解析した結果を図29に示す。図29に示すように、腹囲に有意な差は見られなかったものの、一日平均7000歩以上の群では減少する傾向が、7000歩未満の群では増加する傾向が見られた。また開始前の腹囲に有意差はないものの、7000歩未満の群で腹囲や体重が大きい傾向があり、もともと肥満者では運動量が低いことが示唆される。さらに、腹囲変化群別結果を図30に示す。腹囲減少群ではアディポネクチン及びHOMA-IRで有意な変化が認められた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
【請求項2】
前記ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含む、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
さらに、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1又は2に記載の検査方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【請求項4】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項6】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【請求項7】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、請求項3に記載の検査方法。
【請求項8】
さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項6又は7に記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項9】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも前記要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含む、キット。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPである、マーカー。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかに記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【請求項13】
請求項9に記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカー。
【請求項14】
請求項9に記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【請求項1】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(1)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの予防・発症に関係するリスクファクターを検査する方法。
(1)クレアチニン濃度、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値及び白血球数
【請求項2】
前記ヘモグロビン濃度は、ヘモグロビンA1c濃度を含む、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
さらに、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1又は2に記載の検査方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【請求項4】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項1〜4のいずれかに記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項6】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(2)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法。
(2)アポリポプロテインAI遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs11216158)、アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNP(rs番号:rs2854117)及びアディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNP(rs番号:rs1539355)
【請求項7】
前記アポリポプロテインA1遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CT型及びTT型であり、前記アポリポプロテインCIII遺伝子におけるC/T多型SNPのリスク多型は、CC型及びCT型であり、前記アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPのリスク多型は、AA型である、請求項3に記載の検査方法。
【請求項8】
さらに、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標とする、請求項6又は7に記載の検査方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項9】
検査対象個体から取得した試料につき、以下の要素(3)から選択される1種又は2種以上を指標として、メタボリックシンドロームの発症リスクを検査する方法。
(3)エストロゲンレセプター2遺伝子におけるC/G多型SNPと喫煙との組み合わせ、アディポネクチンレセプター1遺伝子におけるA/G多型SNPと喫煙との組み合わせ
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の検査方法に用いる検出キットであって、少なくとも前記要素(1)から選択される1種又は2種以上を検出するための試薬を含む、キット。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPである、マーカー。
【請求項12】
請求項6〜8のいずれかに記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(2)から選択される1種又は2種以上のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【請求項13】
請求項9に記載の検査方法に用いるSNPマーカーであって、
前記SNPは、前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPである、マーカー。
【請求項14】
請求項9に記載の検査方法に用いる検査キットであって、
前記要素(3)から選択される1種又は2種のSNPを検出するためのオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ及びDNAマイクロアレイから選択される1種又は2種以上を含む、検査キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−22146(P2011−22146A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162334(P2010−162334)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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