説明

メタルコア集合体及びメタルコア基板の製造方法

【課題】積層材を満遍なく行き渡らせ且つ積層材が周りに零れてしまうことを防止する。
【解決手段】複数のメタルコア基板の製造に用いられ、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する積層材が積層されるメタルコア集合体1であって、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する複数のメタルコア2と、前記複数のメタルコア2を囲むように設けられて前記複数のメタルコア2を保持するフレーム3と、前記積層材が積層される前記フレーム3の積層面の縁部寄りに設けられた穴部4と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のメタルコア基板の製造に用いられ、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する積層材が積層されるメタルコア集合体、及び、該メタルコア集合体を用いたメタルコア基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタルコアプリント配線板、メタルコア型プリント基板、メタルコアプリント回路板、等のメタルコア基板は、その実装面上に実装された電気部品が発する熱を放熱するとともに均熱化するのに好適な電気回路基板であって、アルミニウム、銅、等の熱伝導性の良好な金属板をメタルコア(メタルベース)とし、該メタルコアに合成樹脂を主体とする絶縁層を介して導体層を設けたものである。メタルコアは、熱的な特性(均熱性、放熱性)を向上させるために、比較的厚いものが使用されている。
【0003】
メタルコア基板は、特許文献1に示す積層プレス装置によって加工されてきた。該積層プレス装置は、チャンバ内に可動盤及び上盤を有し、前記可動盤と上盤との間に被加工材を載置した複数のプレス板を配置し、前記可動盤を前記上盤上部の引き上げ装置によって引き上げて、前記可動盤と上盤との間で前記各プレス板間の各被加工材を圧締加工するように構成されている。
【0004】
また、特許文献2に示す積層装置は、積層材を積層成形して積層品とする積層成形装置を有している。該積層装置は、積層成形装置に搬入すべき積層材を配置して搬送するフィルムが、積層材を積層成形装置へ搬入する方向に積層材とともに移動するときに、積層材を所定位置に正確に位置決め可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−200630号公報
【特許文献2】特開2008−93928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した積層材は、製造工程の途中等で、メタルコアを有する金属板の積層面に流されて積層されるが、その際に金属板の周りに零れてしまい、積層材が無駄になってしまうという問題が発生していた。そして、図5に示すように、金属板100が複数(図5中では4枚)のメタルコア101を有している場合、その全てのメタルコア101に積層材を積層させるには、積層材を満遍なく行き渡らせる必要があった。
【0007】
また、メタルコア100に層間接続用の穴や大きな開口部を多数設けていると、これらに充填する絶縁樹脂を大量に使用することになる。そのため、必要なところに絶縁樹脂を充填する際に、積層材とメタルコア100との側面から余分な絶縁樹脂があふれ出てしまうという問題があった。このように積層材の量を増やすと金属板100から零れてしまうため、メタルコア100以外の余剰部分を大きく設定すると、金属板100を大型化してしまうため、金属板100の余剰が大量に発生してしまうという問題があった。このような問題は、特許文献2に示す積層装置についても同様に生じる問題である。
【0008】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、積層材を満遍なく行き渡らせ且つ積層材が周りに零れてしまうことを防止できるメタルコア集合体及びメタルコア基板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のメタルコア集合体は、複数のメタルコア基板の製造に用いられ、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する積層材が積層されるメタルコア集合体であって、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する複数のメタルコアと、前記複数のメタルコアを囲むように設けられて前記複数のメタルコアに連設されたフレームと、前記積層材が積層される前記フレームの積層面の外縁部寄りに設けられた穴部と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記請求項1に記載した本発明のメタルコア集合体によれば、フレームの積層面の外縁部寄りには穴部が形成されていることから、加圧加熱によって積層面に積層した積層材がフレームの外縁部に向かうと、穴部に流れ込むことから、フレームの縁部からメタルコア集合体の外部に積層材が零れることを防止できる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のメタルコア集合体において、前記フレームは、前記複数のメタルコアを所望の並設方向に並設させており、前記穴部は、前記並設方向に沿って延びる溝状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記請求項2に記載した本発明のメタルコア集合体によれば、フレームの穴部を、複数のメタルコアの並設方向に沿って延びる溝状に形成するようにしたことから、より多くの積層材をメタルコア集合体の積層面に積層させることができるため、より一層確実に積層材を満遍なく行き渡らせることができる。
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載のメタルコア基板の製造方法は、請求項1又は2に記載のメタルコア集合体を用いて、複数のメタルコア基板を製造するメタルコア基板の製造方法であって、前記複数のメタルコアと前記フレームの積層面を覆うように、前記積層材を前記メタルコア集合体に積層する積層工程と、前記メタルコア集合体と前記積層材とを加圧加熱して積層体を成形する加圧工程と、前記積層体から前記複数のメタルコア基板を成形する成形工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記請求項3に記載した本発明のメタルコア基板の製造方法によれば、複数のメタルコアとフレームの積層面を覆うように、積層材がメタルコア集合体に積層されると、メタルコア集合体の縁部寄りに位置付けられた積層材は加圧加熱によってフレームの穴部に流れ込むことから、フレームの縁部からメタルコア集合体の外部に積層材が零れることを防止できる。そして、メタルコア集合体と積層材とが加圧加熱されて積層体が成形されると、該積層体から複数のメタルコア基板が成形される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、メタルコア集合体に積層した積層材が外部に零れることを防止できることから、積層材を満遍なく行き渡らせるために、積層材を無駄に用いる必要がなくなり且つメタルコア以外のフレーム部分を小型化することができる。また、積層材が外部に零れることを防止できるため、何重にも積層されて加圧、加熱しても上層から下に垂れることがなくなり、メタルコア基板の不良発生を防止できる。従って、積層する積層材の量を減らすことができるので、メタルコア集合体の小型化が可能になると共に、メタルコア集合体の余剰部分を削減できるため、材料の有効利用を図ることができる。また、積層材が零れることを防止できることから、製造ライン等による流れ作業で用いても、清掃等のロスの発生を低減させることができるため、生産性の向上及び環境保護に貢献することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、より多くの積層材をメタルコア集合体の積層面に流して満遍なく行き渡らせることができるため、メタルコア集合体のより一層の小型化及び軽量化に貢献することができる。また、メタルコア集合体を小型化できれば、より一層多くのメタルコアをメタルコア集合体に設けることができるため、生産性の向上に貢献することができる。
【0017】
以上説明したように請求項3に記載した本発明によれば、メタルコア集合体のフレームから外部に積層材が加圧加熱によって零れることを防止できるため、何重に積層して加圧、加熱する積層装置等で製造しても、メタルコア基板の不良品の発生をなくすことができるため、製品性の向上に貢献することができる。また、製造ライン等による流れ作業で用いても、清掃等のロスの発生を低減させることができるため、生産性の向上に貢献することができる。さらに、メタルコア集合体の小型化により、その余剰部分が削減されるため、材料の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るメタルコア集合体を示す平面図である。
【図2】図1中の直線A−Aを通る矢印方向の断面図である。
【図3】図1のメタルコア集合体を加圧加熱する前の状態を説明するための図である。
【図4】図1のメタルコア集合体を加圧加熱した後の状態を説明するための図である。
【図5】従来のメタルコアを有する金属板の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るメタルコア集合体及び該メタルコア集合体を用いたメタルコア基板の製造方法の実施の形態を、図1乃至図4の図面を参照して説明する。
【0020】
図1乃至図4において、メタルコア集合体1は、複数のメタルコア基板10の製造に用いられて、メタルコア基板10を構成するプリプレグ(積層材)11が積層される。メタルコア集合体1は、例えば銅、アルミニウム、等の熱伝導性の良好な矩形の金属板となっている。そして、メタルコア基板10は、その実装面上に実装された電子部品が発する熱を放熱するとともに均熱化する電気回路基板である。
【0021】
なお、本実施形態のメタルコア集合体10は、図1に示す4枚のメタルコア2から4枚のメタルコア基板10を一括製造する一例を説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば5枚以上のメタルコア基板10を一括製造する、図1に示す4枚のメタルコア2から順次製造する、等の種々異なる実施形態とすることができる。
【0022】
メタルコア集合体1は、図1に示すように、複数のメタルコア2と、フレーム3と、複数の穴部4と、を有して構成している。そして、メタルコア集合体1は、複数のメタルコア2とフレーム3とを一体とした平板状に形成されている。
【0023】
各メタルコア2は、メタルコア基板10を構成する1つの部材となっている。各メタルコア2は、メタルコア基板10に対応した矩形に形成されている。各メタルコア2は、スルーホール等の層間接続用の貫通孔2aを複数有している。各メタルコア2の両表面は、図3に示すように、プリプレグ11が積層される積層面2b,cとなっている。
【0024】
フレーム3は、図1に示すように、矩形のメタルコア集合体1の外形をなし、例えば640μmの厚さで形成されている。フレーム3は、4枚のメタルコア2の各々を囲むように設けられ、境界ライン3aを介して複数のメタルコア2に連設している。そして、該境界ライン3aに囲まれた部分が、メタルコア2として必要な領域となっており、該境界ライン3aに沿って切断されることで、複数のメタルコア2が成形される。また、フレーム3は必ずしも連設させる必要はなく、メタルコア2の周りに空隙等を介在させても良い。そして、フレーム3は、図1中の第1並設方向X及び第2並設方向Yに沿って複数(図1中では2枚)のメタルコア2を並べて配置している。
【0025】
穴部4は、図1及び図2に示すように、プリプレグ11が積層されるフレーム3の積層面3b,cの外縁部3d寄りに設けられている。穴部4は、図1中の第1並設方向X又は第2並設方向に沿って延びる溝状に形成されている。そして、本実施形態の穴部4は、各メタルコア2の第1並設方向X及び第2並設方向の各々に沿った2つの溝をを設けた場合について説明する。これに変えて、例えば、第1並設方向X又は第2並設方向Yに沿った2つの穴部4を連続した1つの溝とする、又は、第1並設方向X又は第2並設方向Yの何れか一方にのみ沿った溝とする、等の種々異なる実施形態とすることができる。
【0026】
また、本実施形態の穴部4は、フレーム3の板厚方向にフレーム3を貫通させた場合について説明するが、必ずしもフレーム3を貫通させる必要はなく、有底の穴とすることもできる。また、穴部4は、溝状に限定するものではなく、例えば、開口が略円状の穴を複数並設させる等の種々異なる実施形態とすることができる。また、穴部4の数を増やしたり、穴部4を大きく形成することで、メタルコア集合体1の軽量化を図ることができると共に、余剰材料を減らすことができる。
【0027】
このように構成したメタルコア集合体1の製造方法の一例を説明する。メタルコア集合体1は、金型を押して金属板に穴部4及び間隙5を打ち抜いて形成されたり、穴部4及び間隙5を貫通させる型通りに成型されたりする。
【0028】
以上説明したメタルコア集合体1によれば、メタルコア集合体1に積層したプリプレグ11がメタルコア集合体1の外部に零れることを防止できることから、プリプレグ11を満遍なく行き渡らせるために、プリプレグ11を無駄に用いる必要がなくなり且つメタルコア2以外のフレーム3部分を小型化することができる。また、プリプレグ11がフレーム3の外部に零れることを防止できるため、何重にも積層されて加圧、加熱しても上層から下に垂れることがなくなり、メタルコア基板の不良発生を防止できる。従って、積層するプリプレグ11の量を減らすことができるので、図1中に示す従来の金属板100(図5参照)よりもメタルコア集合体1の小型化が可能になると共に、メタルコア集合体1の余剰部分を削減できるため、材料の有効利用を図ることができる。また、プリプレグ11が零れることを防止できることから、製造ライン等による流れ作業で用いても、清掃等のロスの発生を低減させることができるため、生産性の向上に貢献することができる。
【0029】
また、メタルコア集合体1によれば、より多くのプリプレグ11をメタルコア集合体1の積層面に積層して満遍なく行き渡らせることができるため、メタルコア集合体1のより一層の小型化及び軽量化に貢献することができる。また、メタルコア集合体1を小型化できれば、より一層多くのメタルコア2をメタルコア集合体1に設けることができるため、生産性の向上に貢献することができる。
【0030】
次に、上述したメタルコア集合体1を用いて複数のメタルコア基板10を製造する一例を、図3及び図4の図面を参照して以下に説明する。
【0031】
図3及び4において、積層装置30は、上盤31と、該上盤31に対向して配設される下盤32と、上盤31と下盤32をそれぞれ上下駆動させ且つ上盤31と下盤32とを協働して加圧させる駆動手段(図示せず)と、を有している。そして、図3に示すように、メタルコア集合体1、プリプレグ11、銅箔12は、メタルコア集合体1における複数のメタルコア2の積層面2b,2cとフレーム3の積層面3b,cを覆うように、プリプレグ11がメタルコア集合体1に積層され、該プリプレグ11上に銅箔12が積層された状態で、上盤31と下盤32との間にセットされる。
【0032】
積層装置30は、前記駆動手段によって上盤31と下盤32とを近づけるように移動させて、上盤31と下盤32との間で、メタルコア集合体1、プリプレグ11、銅箔12を加圧し、図示しない加熱手段によって上盤31と下盤32を加熱しつつ積層体15を積層成形する。なお、本実施形態の積層装置30は、大気中で積層成形する場合について説明するが、上記特許文献2等に示すように真空中で積層成形を行っても良い。そして、成形された積層体15は、図示しない切断装置等によって境界ライン3aに沿って切断される、又は、打ち抜かれることで、4枚のメタルコア基板10が成形される。
【0033】
以上説明したメタルコア集合体1を用いたメタルコア基板10の製造方法によれば、メタルコア集合体1のフレーム3から外部にプリプレグ11が加圧加熱によって零れることを防止できるため、何重に積層して加圧、加熱する積層装置等で製造しても、メタルコア基板10の不良品の発生をなくすことができるため、製品性の向上に貢献することができる。また、製造ライン等による流れ作業で用いても、清掃等のロスの発生を低減させることができるため、生産性の向上及び環境保護に貢献することができる。さらに、メタルコア集合体1の小型化により、その余剰部分が削減されるため、材料の有効利用を図ることができる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、メタルコア集合体1に1つのプリプレグ11を積層する場合について説明したが、メタルコア集合体1に2枚以上の積層材を積層する場合についても、上述したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 メタルコア集合体
2 メタルコア
3 フレーム
4 穴部
11 プリプレグ(積層材)
12 銅箔
15 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメタルコア基板の製造に用いられ、前記複数のメタルコア基板の各々を構成する積層材が積層されるメタルコア集合体であって、
前記複数のメタルコア基板の各々を構成する複数のメタルコアと、
前記複数のメタルコアを囲むように設けられて前記複数のメタルコアに連設されたフレームと、
前記積層材が積層される前記フレームの積層面の外縁部寄りに設けられた穴部と、
を有することを特徴とするメタルコア集合体。
【請求項2】
前記フレームは、前記複数のメタルコアを所望の並設方向に並設させており、
前記穴部は、前記並設方向に沿って延びる溝状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメタルコア集合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメタルコア集合体を用いて、複数のメタルコア基板を製造するメタルコア基板の製造方法であって、
前記複数のメタルコアと前記フレームの積層面を覆うように、前記積層材を前記メタルコア集合体に積層する積層工程と、
前記メタルコア集合体と前記積層材とを加圧加熱して積層体を成形する加圧工程と、
前記積層体から前記複数のメタルコア基板を成形する成形工程と、
を有することを特徴とするメタルコア基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−14573(P2011−14573A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154718(P2009−154718)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】