説明

メタロプロテイナーゼ阻害剤としてのN−{(4−置換ピペラジン−1−スルホニルメチル)アルキル}−N−ヒドロキシホルムアミド化合物

本発明は、式(I):
【化1】


[式中、
環Bは、6個の環原子を有する単環式アリール環を表すか、または6個までの環原子を有し、かつ1個以上の環ヘテロ原子(ここで、該ヘテロ原子はそれぞれ窒素である)を含む単環式ヘテロアリール環を表し;
R2は、C1−6アルキルまたはアリールから選択される基を表し、該基は、1個以上のフッ素によって置換されており;
nは、1、2、または3であり;そして
R1は、C1−6アルキル、C5−7シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル−アリール、C1−6アルキル−ヘテロアリール、C1−6アルキル−シクロアルキル、またはC1−6アルキル−ヘテロシクロアルキルから選択される、所望により置換された基を表す]の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を提供する。その製造方法、それらを含む医薬組成物;および治療におけるその使用もまた記載されている。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、メタロプロテイナーゼの阻害に有用な特定のN−ヒドロキシホルムアミド誘導体、その製造方法、それらを含む医薬組成物、および治療におけるその使用に関する。
【0002】
本発明の化合物は、1個以上のメタロプロテイナーゼ酵素の阻害剤である。メタロプロテイナーゼは、近年急激にその数が増加しているプロテイナーゼ(酵素)のスーパーファミリーである。構造的および機能的な考察に基づいて、これらの酵素は、N. M Hooper (1994) FEBS Letters 354:1-6 で記載されたように、ファミリーとサブファミリーに分類される。メタロプロテイナーゼの例は、コラゲナーゼ(MMP1、MMP8、MMP13)、ゼラチナーゼ(MMP2、MMP9)、ストロメライシン(MMP3、MMP10、MMP11)、マトリリシン(MMP7)、メタロエラスターゼ(MMP12)、エナメリシン(MMP19)、MT−MMP(MMP14、MMP15、MMP16、MMP17)といったマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP);TNFコンバターゼ(ADAM10、TACE)といった、セクレターゼおよびシェダーゼを含むレプロリシン、アダマライシン、またはMDCファミリー;コラーゲン前駆体加工・処理プロテイナーゼ(PCP)のような酵素を含むアスタシン・ファミリー;およびアグリカナーゼのような他のメタロプロテイナーゼ、エンドセリンコンバターゼファミリー、およびアンジオテンシンコンバターゼファミリーを含む。
【0003】
メタロプロテイナーゼは、胎児の発育、骨形成、月経周期間の子宮の再構成といった、組織の再構成を含む、多血性の生理学的疾病過程に重要であると信じられている。これは、メタロプロテイナーゼが、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチンといった広範囲のマトリックス基質の開裂を行い得ることに基づく。メタロプロテイナーゼはまた、腫瘍壊死因子(TNF)といった生物学的に重要な細胞のメディエーターの加工・処理または分泌;および親和性の低いIgE受容体CD23といった、生物学的に重要な膜タンパク質(より完全なリストは N. M. Hooper et al., (1997) Biochem J. 321:265-279 を参照のこと)の翻訳後のタンパク質分解過程または切断において、重要であると信じられている。
【0004】
メタロプロテイナーゼは、多くの疾患もしくは状態と関連している。1もしくはそれ以上のメタロプロテイナーゼの活性の阻害は、これらの疾患もしくは状態、例えば:関節の炎症(特にリウマチ性関節炎、骨関節炎、痛風)、胃腸管の炎症(特に炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、胃炎)、皮膚の炎症(特に乾癬、湿疹、皮膚炎)のような様々な炎症性およびアレルギー性疾患;腫瘍の転移または浸潤;骨関節炎のような細胞外マトリックスの無制御の分解を伴う疾患;骨の再吸収性疾患(骨粗鬆症、ページェット病);異常血管新生と関連した疾患;糖尿病、歯周病(歯肉炎など)と関連した、コラーゲンの再構築の亢進;角膜の潰瘍、皮膚の潰瘍、手術後の状態(結腸の吻口など)、皮膚の創傷治癒;中枢および末梢神経系の髄鞘を破壊する疾患(多発性硬化症など);アルツハイマー病;再狭窄、アテローム性動脈硬化症などの心血管疾患において観察される細胞外マトリックスの再構成、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)(MMP12が関与している)において十分有益であり得る。
【0005】
幾つかのメタロプロテイナーゼ阻害剤が知られている。異なるクラスの化合物は、種々のメタロプロテイナーゼの阻害において、異なる強度の効力と選択性を有し得る。本発明者らは、メタロプロテイナーゼの阻害剤であって、コラゲナーゼ3(MMP−13としても知られている)の阻害に特に興味深い新規のクラスの化合物を見出した。本発明の化合物は、有益な効力および/または薬物動態学的性質を有する。
【0006】
コラゲナーゼ3(MMP13)は、胸部腫瘍から得たcDNAライブラリーから初めてクローン化された [J. M. P. Freije et al. (1994) Journal of Biological Chemistry 269(24):16766-16773]。広範囲の組織由来のRNAのPCR−RNA分析は、胸部繊維腺腫、正常もしくは休止乳腺、胎盤、肝臓、卵巣、子宮、前立腺、耳下腺または乳癌細胞株(T47−D、MCF−7、ZR75−1)では発見されなかったことから、コラゲナーゼ3(MMP13)の発現が胸部癌に限定されることを示した。観察の結果、コラゲナーゼ3(MMP13)は、形質転換した表皮のケラチン生成細胞 [N. Johansson et al., (1997) Cell Growth Differ. 8(2):243-250]、扁平上皮細胞癌 [N. Johansson et al., (1997) Am. J. Pathol. 151(2):499-508]、および表皮細胞の腫瘍 [K. Airola et al., (1997) J. Invest. Dermatol. 109(2):225-231]において検出された。これらの結果は、コラゲナーゼ3(MMP13)が形質転換した上皮細胞によって分泌され、特に浸潤性胸部癌病変や、皮膚の発癌における悪性上皮細胞成長において観測されるような、転移に関連している細胞外マトリックスの分解と、細胞−マトリックス相互作用に関与し得ることを示唆する。
【0007】
近年発表されたデータは、コラゲナーゼ3(MMP13)が、他の結合組織の入替え(turnover)に役割を果たすことを示唆している。例えば、II型コラーゲンの分解における、コラゲナーゼ3(MMP13)の基質特異性と優先性に矛盾することなく [P. G. Mitchell et al., (1996) J. Clin. Invest. 97(3):761-768; V. Knauper et al., (1996) The Biochemical Journal 271:1544-1550]、コラゲナーゼ3(MMP13)は、一次骨形成と骨格再構築に際して [M. Stahle-Backdahl et al., (1997) Lab. Invest. 76(5):717-728; N. Johansson et al., (1997) Dev. Dyn. 208(3):387-397];リウマチ性関節炎や骨関節炎といった破壊的関節疾患において [D. Wernicke et al., (1996) J. Rheumatol. 23:590-595; P. G. Mitchell et al., (1996) J. Clin. Invest. 97(3):761-768; O. Lindy et al., (1997) Arthritis Rheum 40(8):1391-1399];さらには人工股関節の無菌的緩みに際して [S. Imai et al., (1998) J. Bone Joint Surg. Br. 80(4):701-710]、ある役割を果たすとの仮説が提示されている。コラゲナーゼ3(MMP13)はまた、慢性的に炎症を起こしているヒトの歯肉組織の粘膜の上皮細胞に局在する [V. J. Uitto et al., (1998) Am. J. Pathol 152(6):1489-1499] ことから、成人の慢性歯周炎に、および慢性的な損傷を受けているコラーゲン・マトリックスの再構成 [M. Vaalamo et al., (1997) J. Invest. Dermatol. 109(1):96-101] に、関係している。
【0008】
メタロプロテイナーゼ、特にコラゲナーゼ3(MMP13)の作用を阻害する化合物は、WO 00/12478、WO 00/75108、および WO 01/62742 に記載されている。報告された阻害剤の中には、アリール/ヘテロアリール ピペラジンスルホニルメチル置換N−ヒドロキシホルムアミド化合物(ここで、アリール環は、とりわけアルコキシおよびアリールオキシを含む幾つかの置換基によって場合により置換されている)が含まれる。このような化合物において、アルコキシもしくはアリールオキシ置換基がさらに置換され得るものは、開示されていない。
【0009】
マトリックスメタロプロテイナーゼの阻害剤としての置換アルコキシもしくはアリールオキシ アリール/ヘテロアリール ピペラジンスルホニルメチル置換N−ヒドロキシホルムアミド化合物は、WO 99/38843 の一般的な開示の中に含まれる。多数の可能な置換基のうち、アルコキシについて挙げられたのはハロゲンである。しかしこのようなアルコキシ置換化合物は開示されておらず、実際、唯一の特に開示されているN−ヒドロキシホルムアミド化合物は、N−{1S−[4−(4−クロロフェニル)ピペラジン−1−スルホニルメチル]−2−メチルプロピル}−N−ヒドロキシホルムアミドである。
【0010】
本発明らは、置換アリールもしくはヘテロアリール ピペラジン スルホニルメチル置換N−ヒドロキシ ホルムアミド化合物(ここで、置換基は、アルコキシ(それ自身、1個以上のフッ素によって置換されている)は、特に有益なメタロプロテイナーゼ阻害剤であり、特にコラゲナーゼ3(MMP13)の阻害剤であり、望ましい活性プロフィールを有することを見出した。
【0011】
本発明は、第1の態様において、式(I):
【化1】

[式中、
環Bは、6個の環原子を有する単環式アリール環を表すか、または6個までの環原子を有し、かつ1個以上の環ヘテロ原子(ここで、該ヘテロ原子はそれぞれ窒素である)を含む単環式ヘテロアリール環を表し;
R2は、C1−6アルキルまたはアリールから選択される基を表し、該基は、1個以上のフッ素によって置換されており;
nは、1、2、または3であり;そして
R1は、C1−6アルキル、C5−7シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル−アリール、C1−6アルキル−ヘテロアリール、C1−6アルキル−シクロアルキル、またはC1−6アルキル−ヘテロシクロアルキルから選択される、所望により置換された基を表す]の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を提供する。
【0012】
ここで用いる際には、‘アリール’という用語は、10個までの環原子を有する1個もしくは2個の環を有する芳香族性炭素環を意味し、例えばフェニルまたはナフチルである。1個の環芳香族性炭素環の基を意図する場合、これは‘単環式アリール環’を表す。アリール環が6個の環原子を有することを意図する場合、これを特定する。
【0013】
‘ヘテロアリール’は、10個までの環原子を、特に6個までの環原子を有し、かつ1個以上の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、O、およびSから選択される)を含む芳香環系を言う。例は、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、およびピラジニルを含む。窒素ヘテロ原子は必要に応じて置換され、またN−オキシドの形態であってもよい。硫黄原子は、S、S(O)またはS(O)の形態であってもよい。1個の環ヘテロ芳香族性系を意図する場合、これは‘単環式 ヘテロアリール環’を表し、ヘテロアリール環は、10個未満の最大の数の環原子を有することを意図する場合、これを特定する。環ヘテロ原子は特にN、SまたはOのうちの一つであることを意図する場合、または該ヘテロアリール環が、1個より多い、特定の組み合わせの、例えばそれぞれが同一の環ヘテロ原子を含むことを意図する場合、これを表示する。
【0014】
“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み、特にフッ素である。
別記しない限り、‘C1−6アルキル’という用語は、単独でまたは組み合わせて用いられる場合、1個から6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル部分を言い、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。‘C1−4アルキル’は、これに従って、1から4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル部分を意味すると解される。
【0015】
‘シクロアルキル’という用語は、5個、6個もしくは7個の炭素原子を有する飽和脂環式部分を言い、例えばシクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。ヘテロシクロアルキル環は、1個以上の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含む、飽和5員、6員もしくは7員環を言い、例えばピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルを含む。
【0016】
‘所望により置換されている’は、ここで、何れかの適切な利用可能な位置で、特記された基(複数を含む)による、所望の置換を示すために用いられる。
【0017】
適切には、環Bは、6個の環原子を有する単環式アリール環(例えばフェニル)、または6個までの環原子を有し、かつ1から4個の環窒素原子を含む単環式ヘテロアリール環(例えばピリジニルもしくはピリミジニル、トリアジニルもしくはテトラジニル)である。
【0018】
環Bがヘテロアリール環である場合、これは、好ましくは1から4個の環窒素原子を含む6員環であり、いっそうより好ましくは1個もしくは2個の環窒素原子を含む6員環であり、例えばピリジニルまたはピリミジニルである。
1つの望ましい態様において、環Bはフェニル環である。
【0019】
別の望ましい態様において、環Bは、1個もしくは2個の環窒素原子を含む6員環のヘテロアリール環である。環Bについて1つの望ましいものは、ピリジニルであり、特に2−ピリジニルである。環Bについて特に望ましいものは、ピリミジニルであり、より特定的には2−ピリミジニルである。
【0020】
R2は、1個以上のフッ素によって置換されている10個までの環原子を有するアリール基、特に6個の環原子を有する単環式アリール(例えばフェニル)であり得る。しかし好ましくは1個以上のフッ素によって置換されているC1−6アルキルであり、特にC1−4アルキル(例えばメチル、特にエチル)である。
好ましくは、R2は、1から4個のフッ素によって、特に3個もしくは4個のフッ素によって置換されている。
【0021】
1つの望ましい態様において、R2は、3個もしくは4個のフッ素によって置換されているC1−6アルキル、特にC1−4アルキルである。
R2における1つの望ましいものは、CFCHFである。
別の特に望ましい態様において、R2はCHCFである。
【0022】
適切には、nは1または2であり、好ましくは1である。好ましくは、環Bの置換基R2O−は、環結合に対してパラ位である。
【0023】
R1は、適切には、C1−4アルキル(例えばメチルまたはエチル)、6個の環原子を有するアリール(例えばフェニル)、1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含む5員から6員のヘテロシクロアルキル環(例えばピペリジニルまたはテトラヒドロピラニル)、またはC1−4アルキル−ヘテロアリール(ここで、該ヘテロアリールは、6個までの環原子を有し、かつN、OおよびSから選択される1個もしくは2個の環ヘテロ原子を含む)(例えばアルキル ピリミジニル、またはアルキル ピリジニル)から選択される、所望により置換された基である。
【0024】
好ましくは、R1は、1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、O、およびSから選択される)を含む、所望により置換されている5員から6員のヘテロシクロアルキル環、または、6個までの環原子を有し、かつ1個以上のヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、O、およびSから選択される)を含み、所望によりヘテロアリール環上で置換されているC1−4アルキル−ヘテロアリールである。
【0025】
望ましい態様において、R1は置換されていない。
望ましい態様において、R1はテトラヒドロピラニル、特に4−テトラヒドロピラニルである。
【0026】
別の望ましい態様において、R1は、C2−3アルキル−ピリミジニルであり、所望によりピリミジニル環上で置換されている。
R1について望ましいものは、2−ピリミジニル−CHCH−である。R1について別の特に望ましいものは、2−ピリミジニル−CHCHCH−である。
【0027】
R1について適切な所望の置換基は、NO、CF、CN、ハロゲン、C1−4アルキル、カルボキシ(C1−4)アルキル、シクロアルキル、−OR4、−SR4、−OR4で置換されたC1−4アルキル、SR4(およびその酸化されたアナログ)、NR4、N−Y−R4、またはC1−4アルキル−Y−NR4(ここで、R4は、水素、C1−6アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはC1−6アルキル−アリールである){それぞれは、独立して、所望によりハロゲン、NO、CN、CF、C1−6アルキル、−S−C1−6アルキル、−SO−C1−6アルキル、−SO−C1−6アルキル、またはC1−6アルコキシによって置換されており;そしてYは−SO−および−CO−から選択される}から独立して選択される1個以上の基を含む。
【0028】
式(I)の化合物中のR1が置換されている場合、これは、好ましくは、1個もしくは2個の置換基(同一であっても異なっていてもよく、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、およびCNから選択される)によって置換されている。望ましい置換基は、ハロゲン、特にフッ素である。好ましくは、R1が置換されている場合、それはモノ置換されている。R1が置換されている場合の式(I)の化合物中のR1について1つの望ましいものは、5−F−2−ピリミジニル−CHCH−である。
【0029】
本発明の化合物中のR1および/またはR2によって形成される環上の置換基の数および性質は、立体的に望ましくない組み合わせを避けるよう選択される。
【0030】
本発明による化合物の望ましいグループにおいて、R2は、1から5個のフッ素によって置換されているC1−6アルキルであり;nは1であり;環Bはフェニル、ピリジニル、またはピリミジニルであり、そしてR1は、1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、O、およびSから選択される)を含む、所望により置換されている5員から6員のヘテロシクロアルキル環、または、6個までの環原子を有し、かつ1個以上のヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、O、およびSから選択される)を含み、所望によりヘテロアリール環上で置換されている、C1−4アルキル−ヘテロアリールである。
【0031】
この基について本発明による特に望ましい化合物は、R1が置換されていないか、またはハロゲン、特にフッ素によって置換されているものである。
【0032】
特定の化合物は、以下を含む。
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
本発明による化合物が1個以上の不斉に置換された炭素原子を含む場合、本発明は、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む全ての立体異性体、およびそのラセミ混合物を含む混合物を含む。互変異性体およびその混合物もまた含まれる。
【0038】
ラセミ体は、既知の手順を用いて個々のエナンチオマーに分割されてもよい(cf. Advanced Organic Chemistry: 3rd Edition: author J March, p104-107)。適切な手順は、ラセミ物質をキラルな補助剤との反応によるジアステレオマー誘導体の形成、次に例えばクロマトグラフィーによるジアステレオマーの分割、次に補助種の開裂を含む。
【0039】
当初の決定に拘りたくないが、本件の場合には、活性なエナンチオマーはS立体構造を有すると考えられる。これは、絶対配置が確認されている関連の化合物との比較に基づく。それゆえに、S−構造は、下記の実施例に示された式に示されている。しかし、本発明によるすべての化合物のラセミ体は、上記の方法によって個々のエナンチオマーに分割することができ、絶対配置が決定されなくとも、活性がより強いエナンチオマーを、適切なアッセイによって同定し得る。
【0040】
本発明による化合物は、薬学的に許容される塩として提供されてもよい。適切な薬学的に許容される塩は、塩基付加塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩)、有機アミン塩(例えばトリエチルアミン、モルホリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、もしくはアミノ酸(例えばリジン)の塩)を含む。別の態様において、本化合物が十分に塩基性であれば、適切な塩は、酸付加塩、例えばメタンスルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、およびリン酸と、また硫酸と形成される塩を含む。
【0041】
式(I)の化合物の適切なプロドラッグは、in vivo で加水分解して式(I)の化合物を形成する化合物である。これらは、慣用の方法によって製造され得る。
【0042】
本発明は、さらに、上記に定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の製造方法であって、式(IV):
【化7】

[式中、R2、n、環B、およびR1は、式(I)で定義した通りである]の適切なヒドロキシアミノ化合物を、適切な混合酸無水物でホルミル化することによって、式(I)の化合物に変換すること;
そして、その後、必要であれば、
・得られた化合物をさらなる本発明の化合物に変換すること;および/または
・本化合物の薬学的に許容される塩またはプロドラッグまたは溶媒和物を形成すること;
を含む方法を提供する。
【0043】
ホルミル化プロセスは、適切には、式(IV)の化合物を、蟻酸および無水酢酸の反応から製造される混合無水物と反応させることによって、行われ得る。反応は、便宜的には、有機酸、例えば蟻酸の存在下で行われる。反応は、好ましくは、適切な不活性溶媒または希釈剤中で、例えばジクロロメタン(DCM)またはテトラヒドロフラン中で、例えば0℃から50℃の範囲の温度で行われる。
【0044】
式(IV)の化合物は、式(III):
【化8】

(式中、R2、n、B、およびR1は、式(I)で定義した通りである)の対応するアルケンから製造され得る。ここで、これは、それ自身、式(II):
【化9】

(式中、R2、n、および環Bは、式(I)で定義した通りである)の対応する化合物から、適切な式:R1CHO(式中、R1は式(I)で定義した通りである)の化合物と反応させることによって、または適切なエステルと反応させることによって、ケトンを得て、次に対応するアルコールに還元し、脱水することによって製造され得る。式(III)の化合物は、E−もしくはZ−アイソマーの形態であっても、両方の混合物としての形態であってもよいと認識される。式(III)で示した通りの構造は、二重結合についての何れかの特定の幾何異性体に制限することを意図しない。
【0045】
式(III)および式(IV)の化合物は、既知の方法を用いて、上記の WO 00/12478、WO 00/75108、および WO 01/62742 に記載したものと類似の方法によって製造され得る。これらの化合物のある種のものの製造方法の例は、下記の実施例に示されている。
【0046】
式(II)、式(III)、および式(IV)の化合物は、新規であり、本発明のさらなる態様を形成する。式(II)の特定の化合物は、
【化10】

を含む。
【0047】
これらの化合物における製造方法の例は、下記の実施例で示されている。
式(I)の化合物を、当業界で慣用の標準的な手順を用いて、さらなる式(I)の化合物に変換し得る。
【0048】
式(I)の化合物の製造は、種々の段階で1以上の保護基の付加および除去を含んでもよいと認識される。官能基の保護および脱保護は、‘Protective Groups in Organic Chemistry’, edited by J.W.F. McOmie, Plenum Press (1973)、および‘Protective Groups in Organic Synthesis’, 2nd edition, T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience (1991) に記載されている。
【0049】
本発明の化合物は、メタロプロテイナーゼ阻害剤であり、特に、それらは、コラゲナーゼ3(MMP13)の阻害剤であり、従って、上記の通り、関節炎(例えば骨関節炎)、アテローム性動脈硬化症、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含むメタロプロテイナーゼ酵素によって介在される疾患もしくは状態の処置に適応される。特に、本発明の化合物は、コラゲナーゼ3(MMP13)によって介在される疾患もしくは状態の処置に適応される。本発明によるコラゲナーゼ3阻害剤の特に有益な点は、他のメタロプロテイナーゼより優れた選択性を示すことである。
【0050】
さらなる態様によって、従って、本発明は、ヒトもしくは動物の体の治療に使用するための、上記で定義した通りの式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を提供する。
【0051】
本発明はまた、治療に使用するための医薬の製造における、上記で定義した通りの式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0052】
“治療”はまた、別記しない限り、“予防”も含むと認識される。“治療の”および“治療上”という用語もそれに従って理解される。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、メタロプロテイナーゼ介在疾患を処置する方法であって、温血動物に、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を、治療有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0054】
投与される用量は、用いられる化合物、投与方法、望まれる処置、および適応される疾患によって変化する。典型的には、0.5から75mg/kg体重(好ましくは0.5から30mg/kg体重)の1日用量を服用する。この1日用量は、必要であれば分割された用量で与えられ得る。投与される化合物の正確な量および投与方法は、当業界で既知の原理に従って、処置される患者の体重、年齢、および性別に、および処置される特定の疾病状態による。
【0055】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、および溶媒和物は、それ自身で用いられ得るが、一般的に、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、もしくは担体と組み合わせて、医薬組成物の形態で投与される。
【0056】
従って、本発明はまた、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、もしくは担体と組み合わせた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明の医薬組成物は、例えば経口、局所、非経腸、頬、鼻腔、膣、もしくは直腸投与によって、または吸入によって処置されることが望ましい疾病状態のための、標準的な方法で投与され得る。これらの目的のために、本発明の化合物は、当業者に既知の手段によって、例えば錠剤、カプセル剤、水性もしくは油性溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、ゲル、点鼻薬、坐剤、微細化粉末、もしくは吸入用エアゾール、および非経腸の使用(静脈内、筋肉内、もしくは点滴を含む)のための滅菌処理された水性もしくは油性の溶液もしくは懸濁液、または滅菌処理されたエマルジョンの形態で製剤化され得る。
【0058】
本発明の化合物に加えて、本発明の医薬組成物はまた、上記の1つ以上の疾病状態を処置するのに有益な1個以上の薬理学的成分を含み得るか、またはそれと共に投与され得る。典型的に、単位投与形は、約1mgから500mgの本発明による化合物を含む。
【0059】
本発明による化合物の活性および選択性は、WO 00/12478、WO 00/75108、および WO 01/62742 に記載された適切な酵素阻害試験を用いて決定され得る。コラゲナーゼ3(MMP13)阻害活性は、例えば下記に示した手順を用いて評価され得る。
【0060】
リコンビナントのヒトproMMP13は、Knauperら [V. Knauper et al., (1996) The Biochemical Journal 271:1544-1550 (1996)]の記載に従って発現され、精製され得る。精製された酵素は、下記の通りに活性の阻害剤をモニターするために用いられ得る:精製proMMP13を、1mM アミノフェニル水銀(II)酸 (APMA)を用いて、21℃で20時間活性化し;活性化MMP13(アッセイ当たり11.25ng)を、アッセイ緩衝液(0.1M NaCl、20mM CaCl、0.02mM ZnCl、および0.05%(w/v) Brij 35 を含む0.1M Tris−HCl(pH 7.5))中で、合成基質:7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル.Pro.Leu.Gly.Leu.N−3−(2,4−ジニトロフェニル)−L−2,3−ジアミノプロピオニル.Ala.Arg.NHを用いて、阻害剤の存在下もしくは非存在下で、35℃で4〜5時間インキュベートする。λex 328nm および λem 393nmでの蛍光を測定することによって活性を測定する。濃度の範囲で活性を測定することによって結合曲線を作成してIC50を決定し、ここでこの値は酵素活性が50%まで減少する阻害剤の濃度である。
【0061】
本発明の化合物の薬理学的性質は、その構造に従って変化すると認識されるが、一般的に、本発明の化合物は、上記アッセイによって測定されたときにIC50濃度が0.01から1000nMの範囲となるコラゲナーゼ3阻害活性を示す。下記の表は、上記アッセイで試験された場合の本発明による化合物の代表として選択されたもののIC50値を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
式Iの化合物は、メタロプロテイナーゼ、特にコラゲナーゼ3(MMP13)の阻害が有益である疾病状態の処置に用いられる他の薬物および治療と組み合わせて用いられ得る。例えば、式Iの化合物は、リウマチ性関節炎、喘息、炎症性腸疾患、多発性硬化症、AIDS、敗血症ショック、鬱血性心不全、虚血性心疾患、乾癬、および本明細書中ですでに記載された他の疾病状態の処置に用いられる薬物および治療と組み合わせて用いられ得る。
【0064】
例えば、それがメタロプロテイナーゼを阻害することができるために、式Iの化合物は、現在シクロオキシゲナーゼ阻害非ステロイド抗炎症剤(NSAID)(例えばインドメタシン、ケトロラック、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、スリンダク、トルメチン、およびピロキシカム)で処置されている、ある種の炎症および非炎症性疾患の処置に有益である。本発明の式Iの化合物をNSAIDと共に投与することで、治療効果を得るために必要とされる後者の薬剤を減量し得る。それによって、NSAIDの副作用、例えば胃腸への影響のおそれが減少する。従って、本発明のさらなる特徴により、シクロオキシゲナーゼ阻害非ステロイド抗炎症剤と共に、またはそれと混合した、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される希釈剤もしくは担体を含む医薬組成物が提供される。
【0065】
式Iの化合物はまた、抗炎症剤(例えば5−リポキシゲナーゼの阻害剤)と共に使用され得る。
式Iの化合物はまた、抗関節炎薬(例えば金、メトトレキセート、ステロイド、およびペニシリンアミン)と組み合わせて、リウマチ性関節炎といった状態の処置に、およびステロイドと組み合わせて、骨関節炎といった状態の処置に使用され得る。
【0066】
式Iの化合物はまた、軟骨保護剤、抗破壊剤、および/または修復剤と共に、例えばジアセレイン(Diacerhein)、ヒアルロン酸製剤(例えばHyalan)、Rumalon、Arteparon、およびグルコサミン塩(例えばAntril)と共に、破壊性疾患(degradative diseases)、例えば骨関節炎において投与され得る。
式Iの化合物は、抗喘息薬、例えばステロイド、気管支拡張剤、およびロイコトリエン アンタゴニストと組み合わせて、喘息の処置に用いられ得る。
【0067】
特に、炎症性疾患、リウマチ性関節炎、骨関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患、喘息、およびアレルギー性鼻炎の処置のために、本発明の化合物は、例えばTNF−α阻害剤、例えば抗TNFモノクローナル抗体 (例えば Remicade, CDP-870 および D.sub2.E.sub7.)、およびTNF受容体免疫グロブリン分子(例えば Enbrel.reg.)、非選択性COX−1/COX−2阻害剤(例えばピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン(flubiprofen)、フェノプロフェン、ケトプロフェン、およびイブプロフェン、フェナメート、例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン、ピラゾロン、例えばフェニルブタゾン、サリチレート、例えばアスピリン)、COX−2 阻害剤(例えばメロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ(valdecoxib)、およびエトリコキシブ(etoricoxib))、低用量メトトレキセート、レフノミド(lefunomide);シクレソニド(ciclesonide);ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)、d−ペニシラミン、オーラノフィン、または非経腸もしくは経口の金と組み合わせ得る。
【0068】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、ロイコトリエン生合成阻害剤、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤、または5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)アンタゴニスト、例えばジロートン(zileuton);ABT−761;フェンロイトン(fenleuton);テポキサリン(tepoxalin);Abbott-79175;Abbott-85761;N−(5−置換)−チオフェン−2−アルキルスルホンアミド;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール ヒドラゾン;メトキシテトラヒドロピラン、例えば Zeneca ZD-2138;化合物 SB-210661;ピリジニル置換 2−シアノナフタレン化合物、例えば L-739,010;2−シアノキノリン化合物、例えば L-746,530;インドールおよびキノリン化合物、例えば MK-591、MK-886、および BAY x 1005 との組み合わせに関する。
【0069】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、フェノチアジン−3−オン、例えば L-651,392 からなる群から選択される、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、LTB.sub4.、LTC.sub4.、LTD.sub4.、および LTE.sub4.;アミジノ化合物、例えば CGS-25019c;ベンゾキサラミン(benzoxalamine)、例えばオンタゾラスト(ontazolast);ベンゼンカルボキシミドアミド、例えば BIIL 284/260;および化合物、例えばザフィルルカスト(zafirlukast)、アブルカスト(ablukast)、モンテルカスト(montelukast)、プランルカスト、ベルルカスト(verlukast)(MK-679)、RG-12525、Ro-245913、イラルカスト(iralukast)(CGP 45715A)、および BAY x 7195 との組み合わせに関する。
【0070】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、PDE4Dのアイソフォームの阻害剤を含むPDE4阻害剤との組み合わせに関する。
【0071】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、抗ヒスタミン性 H.sub1. 受容体アンタゴニスト、例えばセチリジン(cetirizine)、ロラタジン(loratadine)、デスロラタジン(desloratadine)、フェキソフェナジン、アステミゾール、アゼラスチン、およびクロルフェニラミンとの組み合わせに関する。
【0072】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、胃保護 H.sub2. 受容体アンタゴニストとの組み合わせに関する。
本発明は、さらに、式Iの化合物と、α.sub1.−およびα.sub2.−アドレナリン受容体アゴニスト血管収縮交感神経模倣薬、例えばプロピルヘキセドリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、シュードエフェドリン、塩酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸キシロメタゾリン(xylometazoline)、および塩酸エチルノルエピネフリンとの組み合わせに関する。
【0073】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、抗コリン作用薬、例えば 臭化イプラトロピウム、臭化チオトロピウム、臭化オキシトロピウム、ピレンゼピン、およびテレンゼピンとの組み合わせに関する。
【0074】
本発明は、さらに、本発明の化合物と、β.sub1.−からβ.sub4.−アドレナリン受容体アゴニスト、例えばメタプロテレノール、イソプロテレノール、イソプレナリン、アルブテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメテロール、テルブタリン、オルシプレナリン、ビトルテロール メシレート、およびピルブテロール;またはテオフィリンおよびアミノフィリンを含むメチルキサンタニン(methylxanthanines);クロモグリク酸ナトリウム;またはムスカリン受容体(M1、M2、およびM3)アンタゴニストとの組み合わせに関する。
【0075】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、I型インシュリン様成長因子(IGF−1)模倣薬との組み合わせに関する。
本発明は、さらに、式Iの化合物と、全身性の副作用の減少を伴う吸入グルココルチコイド、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロン アセトニド、ベクロメタゾン ジプロピオネート、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、およびフランカルボン酸モメタゾンとの組み合わせに関する。
【0076】
本発明は、さらに、式Iの化合物の、別のケモカイン受容体機能の、例えばCCR1、CCR2、CCR2A、CCR2B、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、およびCCR11(C−Cファミリーにおいて);CXCR1、CXCR3、CXCR4、およびCXCR5(C−X−Cファミリーにおいて)、およびCXCR1(C−X−Cファミリーにおいて)のモジュレーターとの組み合わせに関する。
【0077】
本発明は、さらに、式Iの化合物と、抗ウイルス薬、例えばヴィラセプト(Viracept)、AZT、アシクロビル(aciclovir)、およびファムシクロビル(famciclovir)との、および抗敗血症化合物、例えば Valant との組み合わせに関する。
【0078】
本発明はなおさらに、式Iの化合物と、心血管薬(例えばカルシウムチャネル遮断薬)の、脂質低下薬(例えばスタチン)、フィブラート、β−遮断薬、Ace阻害剤、アンギオテンシン−2受容体アンタゴニスト、および血小板凝集阻害剤との組合せに関する。
【0079】
本発明はなおさらに、式Iの化合物と、CNS剤(例えば抗鬱薬(例えばセルトラリン))、抗パーキンソン病薬(例えばデプレニル、L−ドーパ、Requip、Mirapex、MAOB阻害剤(例えばセレギン(selegine)およびラサジリン(rasgiline))、comP阻害剤(例えばTasmar)、A−2阻害剤、ドーパミン再取り込み阻害剤、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、および神経型一酸化窒素合成酵素阻害剤)、および抗アルツハイマー病薬(例えばドネペジル)、タクリン、COX−2阻害剤、プロペントフィリン、またはメトリフォネート(metryfonate)との組合せに関する。
【0080】
本発明はなおさらに、式Iの化合物と、(i)トリプターゼ阻害剤;(ii)血小板活性化因子(PAF)アンタゴニスト;(iii)インターロイキン変換酵素(ICE)阻害剤;(iv)IMPDH阻害剤;(v)VLA−4アンタゴニストを含む接着分子阻害剤;(vi)カテプシン;(vii)MAPキナーゼ阻害剤;(viii)グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤;(ix)キニン−B.sub1.およびB.sub2.−受容体アンタゴニスト;(x)抗痛風薬、例えば、コルヒチン;(xi)キサンチンオキシダーゼ阻害剤、例えば、アロプリノール;(xii)尿酸排泄薬、例えば、プロベネシド、スルフィンピラゾン、およびベンズブロマロン;(xiii)成長ホルモン分泌促進薬;(xiv)トランスフォーミング増殖因子(TGFβ);(xv)血小板由来増殖因子(PDGF);(xvi)繊維芽細胞増殖因子、例えば、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF);(xvii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);(xviii)カプサイシンクリーム;(xix)NKP−608C;SB−233412(タルネタント(talnetant));およびD−4418からなる群から選択されるタキキニンNK.sub1.およびNK.sub3.受容体アンタゴニスト;(xx)UT−77およびZD−0892からなる群から選択されるエラスターゼ阻害剤;(xxi)TNF?変換酵素阻害剤(TACE);(xxii)誘導型一酸化窒素合成酵素阻害剤(iNOS);または(xxiii)TH2細胞で発現される化学誘引物質受容体相同分子(chemoattractant receptor-homologous molecule)(CRTH2アンタゴニスト)との組合せに関する。
【0081】
式Iの化合物はまた、骨粗鬆症薬(例えばラロキシフェン(roloxifene)、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラソフォキシフェン(lasofoxifene)またはフォサマックス(fosomax))、および免疫抑制剤(例えばFK−506、ラパマイシン、シクロスポリン、アザチオプリン、およびメトトレキサート)と組み合わせて用い得る。
【0082】
式Iの化合物はまた、既存の骨関節炎処置用治療薬と組み合わせて用い得る。組み合わせて用いるのに適切な薬剤は、標準的な非ステロイド抗炎症薬(以下、NSAID)、例えば、ピロキシカム、ジクロフェナク、プロピオン酸(例えばナプロキセン、フルルビプロフェン(flubiprofen)、フェノプロフェン、ケトプロフェン、およびイブプロフェン)、フェナム酸塩(例えばメフェナム酸)、インドメタシン、スリンダック、アパゾン、ピラゾロン(例えばフェニルブタゾン)、サリチレート(例えばアスピリン)、COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ、バルデコキシブ(valdecoxib)、ロフェコキシブ、およびエトリコキシブ(etoricoxib))、鎮痛剤、および関節内治療薬(例えばコルチコステロイド、およびヒアルロン酸(例えば Hyalgan および Synvisc))、およびP2X7受容体アンタゴニスト)を含む。
【0083】
式Iの化合物はまた、既存の癌処置用治療薬と組み合わせて用い得る。組み合わせて用いるのに適切な薬剤は、以下を含む:
(i) 医学的腫瘍学に用いるものとしての抗増殖/抗腫瘍薬およびその組合せ、例えば、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、およびニトロソ尿素);抗代謝物質(例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフールのようなフルオロピリミジン類などの抗葉酸代謝薬、ラルチトレキセド(raltitrexed)、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビン、およびパクリタキセル(タキソール(登録商標)));抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシン、およびミトラマイシン(mithramycin)のようなアントラサイクリン類);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン(vinorelbine)のようなビンカアルカロイド類、ならびにタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類);およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシド(teniposide)、アムサクリン、トポテカン、およびカンプトテシンのようなエピポドフィロトキシン類);
【0084】
(ii) 細胞分裂停止剤(例えば、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えば fulvestrant)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド(nilutamide)、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニスト、またはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲストーゲン類(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール(letrozole)、ボラゾール(vorazole)、およびエキセメスタン)、および5α−レダクターゼ阻害剤(例えばフィナステリド);
【0085】
(iii) 癌細胞の浸潤を阻害する薬剤(例えば、マリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤);
(iv) 成長因子機能阻害剤、例えば成長因子抗体、成長因子受容体抗体 (例えば抗erbb2抗体 トラスツズマブ [Herceptin(商標)]、および抗erbb1抗体 セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、およびセリン/トレオニン・キナーゼ阻害剤、例えば上皮細胞成長因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリー・チロシンキナーゼ阻害剤、例えば −(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(gefitinib, AZD1839)、−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(erlotinib, OSI 774)、および6−アクリルアミド−−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI 1033))、例えば血小板誘導成長因子ファミリーの阻害剤、および例えば肝細胞成長因子ファミリーの阻害剤;
【0086】
(v) 抗血管新生剤(例えば血管内皮成長因子を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(bevacizumab)[Avastin(商標)])、例えば国際特許出願 WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856、および WO 98/13354 に開示された化合物)、および他の機構によって働く化合物(例えば、リノマイド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン);
(vi) 血管損傷剤(例えば Combretastatin A4)、および国際特許出願 WO 99/02166、WO00/40529、WO 00/41669、WO01/92224、WO02/04434、および WO02/08213 に開示されている化合物;
(vii) アンチセンス療法、例えば上記標的を指向するもの、例えば ISIS 2503、抗rasアンチセンス;
【0087】
(viii) 遺伝子療法アプローチ(例えば異常な遺伝子を置換するアプローチ(例えば異常なp53、または異常な BRCA1 もしくは BRCA2)を含む)、GDEPT(遺伝子指定酵素プロドラッグ療法)アプローチ(例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌のニトロ還元酵素を用いるもの)、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を高めるアプローチ(例えば多剤耐性遺伝子療法)を含む;ならびに
(ix) 免疫療法アプローチ(患者の腫瘍細胞の免疫原性を高める ex vivo および in vivo アプローチ(例えばサイトカイン類(例えばインターロイキン−2、インターロイキン−4、または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)でのトランスフェクション)を含む)、T細胞アネルギーを低下させるアプローチ、トランスフェクト免疫細胞を用いるアプローチ(例えばサイトカイン−トランスフェクト樹状細胞)、サイトカイン−トランスフェクト腫瘍細胞系を用いるアプローチ、および抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチ;
を含む。
【0088】
固定用量として製剤化された場合は、このような組み合わせ製品は、本明細書で記載された用量の範囲内の式Iの化合物、および承認される用量範囲内の他の薬学的に活性な薬剤を用いる。組み合わせ製剤が不適切である場合には、連続的な使用が考えられる。
【0089】
式Iの化合物は、温血動物において治療薬として使用するのに一義的に有益であるが、それはまた、メタロプロテイナーゼの効果を阻害することが必要とされるすべての場合にも有用である。従って、それは、新規の生物学的試験の開発に、および新規薬理学的薬剤の探索に使用するための薬理学的標準として有用である。
【0090】
本発明は、さらに、下記の非制限的実施例によって説明される。
関連の出発物質は、市販されているか、または文献に記載された何れかの慣用の方法、または技術者に既知の方法、または本明細書中の実施例に記載された方法によって、合成され得る。さらに、下記の表は、詳細な中間体およびその対応する Chemical Abstracts における登録番号を示している。
【0091】
【表2】

【0092】
実施例において、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、別記しない限り、室温で、BRUKER DPX spectrometer で、400MHzのフィールド強度で作動させて測定した。このスペクトルは内部重水素ロックを参照した。質量分析(MS)スペクトルを、Micromass MZD (エレクトロスプレー) spectrometer で測定した。
【0093】
下記の略号を用いる。
【表3】

【実施例】
【0094】
実施例1
ヒドロキシ{(1S)−4−ピリミジン−2−イル−1−[({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)メチル]ブチル}ホルムアミド
【化11】

蟻酸(114ml, 3.03mol)に、0℃で、酢酸無水物(28.6ml, 0.303mol)を加え、混合物を室温で10分間撹拌した。次に反応物を0℃まで再度冷却し、THF(600ml)中の2−(4−{[2−(ヒドロキシアミノ)−5−ピリミジン−2−イルペンチル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン(30.6g, 60.5mmol)、および蟻酸(114ml, 3.03mol)の溶液に加えた。反応物を室温に至らしめ、1時間撹拌した。次に揮発性物質を真空で除去し、残渣をトルエン(2×300ml)と共に共沸した。次に残渣をメタノール(300ml)に溶解し、40℃で1時間加熱した。次に溶液を室温まで冷却し、真空で濃縮した。次に残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, EtOAc中10%MeOH)によって精製し、ラセミ化合物を薄橙色の泡沫として得た(22.94g, 43mmol, 71%)。
【0095】
ラセミ混合物を、キラルHPLCによって、以下に示した条件を用いて分割した:
カラム:20μm Chiralpak AD, Merck 100mm
溶出液:MeCN/MeOH 90/10(7分, アイソクラチック);MeCN/MeOH 90/10(段階的);MeCN/MeOH 85/15(10分, アイソクラチック);MeCN/MeOH 85/15(濃度勾配, 1分);MeCN/EtOH 85/15(アイソクラチック, 37分)
流速:120ml/分.
【0096】
下記の手順を用いて、単一のエナンチオマーが結晶形で得られた。
40gの表題化合物を、エタノール(50ml)と共に、室温で30分間撹拌した。溶媒を真空で除去した。得られた固体を、アセトン(20ml)中で、室温で24時間撹拌した。溶媒をアルゴン気流により、次いで真空で除去した。
1H NMR (DMSO-d6, 373K): 9.39 (br s, 1 H), 8.67 (d, 2H), 8.32 (s, 2 H), 8.15 (br s, 1 H), 7.28 (t, 1 H), 4.70 (q, 2 H), 4.39 (br s, 1 H), 3.79 (m, 4 H), 3.47 (dd, 1 H), 3.29 (m, 4 H), 3.17 (dd, 1 H), 2.91 (m, 2 H), 1.75 (m, 4 H);
MS (ESI): 534.01 (MH+);
Mpt 129-133℃.
【0097】
出発物質を下記の通りに製造した。
5−ヨード−2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリミジン(25.0g, 67.9mmol)、ベンジルアルコール(125ml)、1,10−フェナントロリン(2.45g, 20mol%)、および炭酸セシウムの懸濁液に、撹拌しながら、ヨウ化銅(I)(12.9g, 67.9mmol)を加え、反応物を110℃で90分間加熱し、次に室温まで冷却した。次にDCM(250ml)を加え、不溶物をセライトのパッドで濾過して除いた。このケーキをDCM(250ml)で洗浄し、DCM濾液を水で洗浄した。次に水相をさらなるDCM(500ml)で逆抽出し、合わせたDCM抽出物を塩水(500ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、暗褐色のスラッジとした。次にこれをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, 50%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、5−(ベンジルオキシ)−2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリミジンを灰白色の固体として得た(14.2g, 40.7mmol, 60%)。
1H NMR (CDCl3) : 8.20 (s, 2 H), 7.49 (m, 5 H), 5.05 (s, 2 H), 3.88 (m, 4 H), 3.30 (m, 4 H), 2.79 (s, 3 H);
MS (ESI): 349.08 (MH+).
【0098】
5−(ベンジルオキシ)−2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリミジン(57.9g, 0.17mol)を、TFA(600ml)に溶解し、反応物を7時間撹拌しながら還流し、次に室温まで冷却した。TFAを真空で除き、残渣をトルエン(2×300ml)と共に共沸した。得られた固体をDCMでトリチュレートし、濾過して取り、エーテルで洗浄し、乾燥し、2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリミジン−5−オールを、薄黄色の固体として得た(54.4g, 0.15mol, 88%, TFA塩)。
1H NMR (DMSO-d6) : 8.02 (s, 2 H), 3.68 (m, 4 H), 3.12 (m, 4 H), 2.86 (s, 3 H).
【0099】
アセトン(1L)中の2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリミジン−5−オール(53.5g, 0.145mol)、KCO(100.1g, 0.725mol)の懸濁液に、撹拌しながら、2,2,2−トリフルオロエチル ノナフルオロブタンスルホネート(78g, 0.203mol)を加え、反応物を60℃で6時間加熱し、次に室温まで冷却した。次に反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固した。残渣をDCM(500ml)と水(500ml)の層間に分配し、DCM(500ml)で抽出し、合わせた有機物を塩水(500ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジンを、灰白色の固体として得た(45.3g, 0.133mol, 92%)。
1H NMR (CDCl3): 8.15 (s, 2 H), 4.32 (m, 2 H), 3.90 (m, 4 H), 3.30 (m, 4 H), 2.78 (s, 3 H);
MS (ESI): 341.08 (MH+).
【0100】
方法1
THF(175ml)中の2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン(8.05g, 23.6mmol)の懸濁液に、撹拌しながら、−78℃で、LHMDS(47.2ml, 47.2mmol)を滴下し、反応物を15分間撹拌した。次にTHF(50ml)中の4−ピリミジン−2−イル酪酸エチル(5.5g, 28.3mmol)の溶液を−78℃で加え、−20℃まで温め、2時間撹拌した。次に反応物を飽和NHCl溶液(250ml)の添加によってクエンチし、EtOAc(2×250ml)で2回抽出し、合わせた有機物を塩水(250ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、黄色の固体を得た。次にこれをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, 50%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、5−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタン−2−オンを、灰白色の固体として得た(9.47g, 19.4mmol, 82%)。
1H NMR (CDCl3): 8.66 (d, 2 H), 8.16 (s, 2 H), 7.12 (t, 1 H), 4.30 (m, 2 H), 4.00 (s, 2 H), 3.82 (m, 4 H), 3.34 (m, 4 H), 2.98 (t, 2 H), 2.85 (t, 2 H), 2.16 (m, 2 H);
MS (ESI): 489.02 (MH+).
【0101】
DCM/MeOH(100ml/100ml)中の5−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタン−2−オン(9.47g, 19.4mmol)の溶液に、撹拌しながら、NaBH(807mg, 21.3mmol)を少しずつ加え、反応物を室温で撹拌した。次に反応物を飽和NHCl溶液(250ml)の添加によってクエンチし、有機物を真空で除去した。次に水性残渣をEtOAc(2×250ml)で抽出し、合わせた有機物を塩水(250ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、5−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタン−2−オールを、白色の固体として得た(9.10g, 18.6mmol, 96%)。
MS (ESI): 491.13 (MH+).
【0102】
DCM(200ml)中の5−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタン−2−オール(9.10g, 18.6mmol)、トリエチルアミン(13ml, 93.0mmol)の溶液に、撹拌しながら、0℃で、塩化メタンスルホニル(2.16ml, 27.9mmol)を加えた。反応物を0℃で15分間撹拌し、室温まで温め、16時間撹拌した。次に反応混合物を水(200ml)で洗浄し、水相をDCM(200ml)で逆抽出した。合わせたDCM抽出物を塩水(250ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、2−(4−{[(1E)−5−ピリミジン−2−イルペンタ−1−エン−1−イル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジンを橙色の固体として得た(8.79g, 18.6mmol, 100%)。
MS (ESI): 472.49 (MH+).
【0103】
THF(90ml)中の2−(4−{[(1E)−5−ピリミジン−2−イルペンタ−1−エン−1−イル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン(8.79g, 18.6mmol)の溶液に、撹拌しながら、50%ヒドロキシルアミン水溶液(18ml)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。次に飽和NHCl溶液(200ml)を加え、次にこれをEtOAc(2×250ml)で2回抽出し、合わせた有機物を塩水(250ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、2−(4−{[2−(ヒドロキシアミノ)−5−ピリミジン−2−イルペンチル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジンを薄黄色の固体として得た(8.96g, 17.7mmol, 95%)。
MS (ESI): 506.05 (MH+).
【0104】
方法2
THF(25ml)中の2−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン(850mg, 2.50mmol)の懸濁液に、撹拌しながら、−78℃で、LHMDS(5.5ml, 5.5mmol)を滴下し、反応物を15分間撹拌した。次にジエチル クロロホスフェート(0.4ml, 2.75mmol)を加え、15分間撹拌した。次に溶液にTHF(5ml)中の4−ピリミジン−2−イルブタナール(413mg, 2.75mmol)の溶液を滴下し、−20℃まで温め、1時間撹拌した。次に反応物を飽和NHCl溶液(100ml)の添加によってクエンチし、EtOAc(2×100ml)で2回抽出し、合わせた有機物を塩水(100ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、黄色の油状物を得た。次にこれをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル, 50%EtOAc/ヘキサン)によって精製し、2−(4−{[(1E)−5−ピリミジン−2−イルペンタ−1−エン−1−イル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジンを、黄色の固体として得た(1.13g, 2.39mmol, 96%)。
MS (ESI): 472.49 (MH+).
【0105】
次にこれを2−(4−{[2−(ヒドロキシアミノ)−5−ピリミジン−2−イルペンチル]スルホニル}ピペラジン−1−イル)−5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジンを、次にヒドロキシ{(1S)−4−ピリミジン−2−イル−1−[({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)メチル]ブチル}ホルムアミドを経て、方法1と同様の手順を介して合成した。
【0106】
実施例2
下記の化合物も製造した。
【化12】

【0107】
【表4】

【0108】
実施例3
ヒドロキシ{(1S)−3−ピリミジン−2−イル−1−[({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)メチル]プロピル}ホルムアミド
【化13】

蟻酸(54ml, 1.4mol)に、8℃で、無水酢酸(11ml, 100mmol)を加え、混合物を室温で10分間撹拌した。混合無水物を8℃に再度冷却し、前もって0℃に冷却したDCM(170ml)および蟻酸(65ml, 1.7mol)中の2−[3−(ヒドロキシアミノ)−4−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブチル]ピリミジン(16.32g, 33.3mmol)の溶液に加えた。反応物を室温に至らしめ、1時間撹拌した。次に揮発性物質を真空で除去し、残渣をトルエン(2×50ml)と共に共沸した。次に残渣をMeOH/DCM(1:1, 250ml)に溶解し、室温で終夜撹拌した。次に溶液を真空で濃縮し、DCM(250ml)と飽和NaHCO溶液(250ml)の層間に分配した。次にDCM層をシリカゲル(20g)で濾過し、5% MeOH/DCMで洗浄し、揮発性物質を真空で除去し、ラセミの表題化合物を薄黄色の泡沫として得た(15.68g, 302mmol, 91%)。
【0109】
ラセミ混合物(86.5g)を、キラルHPLCによって、下記の条件を用いて、エナンチオマーに分割した。
カラム:20μm Chiralpak AD, Merck 100mm
溶出液:MeCN/MeOH 90/10(17分, アイソクラチック);MeCN/MeOH 90/10(段階的);MeCN/EtOH 90/10(8分, アイソクラチック);MeCN/EtOH 90/10(濃度勾配, 1分);MeCN/EtOH 85/15(アイソクラチック, 39分)
流速:120ml/分.
【0110】
真空で濃縮し、泡沫とした。熱エタノール(430ml)から結晶化し、濾過し、エタノールで、そしてエーテルで洗浄した。乾燥し、表題化合物を白色の結晶性固体として得た(28g, 54mmol)。
1H NMR (DMSO, 373K): 9.41 (s, 1 H), 8.66 (d, 2 H), 8.07 (s, 1 H), 7.99 (d, 1H), 7.38 (dd, 1 H), 7.26 (t, 1 H), 6.83 (d, 1 H), 4.61 (q, 2 H), 4.45 (B, 1 H), 3.51 (t, 4 H), 3.47 (d, 1 H), 3.27 (t, 4 H), 3.24 (d, 1 H), 2.91 (t, 2 H), 2.17 (m, 2 H);
MS (ESI): 519 (MH+);
Mpt 149-151℃.
【0111】
出発物質を下記のように製造した。
ベンジルアルコール(960ml)中の、1−(5−ブロモピリジン−2−イル)ピペラジン(CAS number 73406-97-0, 116g, 479mmol)、1,10−フェナントロリン(17.3g, 96mmol)、炭酸セシウム(312g, 960mmol)、およびヨウ化銅(I)(91g, 480mmol)の懸濁液を、勢いよく撹拌しながら、120℃で、不活性雰囲気下で24時間撹拌し、ヨウ化銅(I)のさらなるアリコート(5×91g)を毎時間加えた。40℃まで冷却し、DCM(1L)で希釈し、室温で30分間撹拌した。セライトで濾過し、DCM(500ml)でよく洗浄した。そのフラクションをNaOH(2M, 300ml)で洗浄し、合わせ、HCl(2M, 5×1L)で抽出した。合わせた酸性の抽出物をDCM(500ml)で洗浄し、0℃まで冷却し、DCM(1L)に抽出し、NaOH(〜46wt%)で、ゆっくりとpH10まで塩基性にした。さらに水層をDCM(2×500ml)で抽出し、揮発性物質を真空で除去し、1−[5−(ベンジルオキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジンを黒色の液体として得た(104g, 278mmol, 72wt%, 58%)。
1H NMR (CDCl3) : 8.0 (d, 1 H), 7.2 (dd, 1 H), 6.3 (d, 1 H), 5.0 (s, 2 H), 3.50 (s, 8H), 1.48 (s, 9 H), 3.4 (B, 5 H), 3.0 (B, 4 H);
MS (ESI): 270 (MH+).
【0112】
CHCl(1.1L)中の1−[5−(ベンジルオキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン(104g, 278mmol)の溶液を、撹拌しながら、0℃で、トリエチルアミン(94ml, 672mmol)および塩化メタンスルホニル(31ml, 400mmol)で連続して処理した。反応物を室温に至らしめ、3時間撹拌した。次に反応物をDCM(3L)で希釈し、水(1L)、HCl(0.5M, 2×800ml)、そして飽和NaHCO溶液(800ml)で洗浄し、DCM(500ml)で逆抽出した。次に合わせた有機抽出物を乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、1−[5−(ベンジルオキシ)ピリジン−2−イル]−4−(メチルスルホニル)ピペラジンを暗色の液体として得た(120g, 278mmol, 81wt%, 100%)。
1H NMR (CDCl3) : 8.0 (d, 1 H), 7.35 (m, 5 H), 7.2 (dd, 1 H), 6.65 (d, 1 H), 5.05 (s, 2 H), 3.55 (t, 4 H), 3.3 (t, 4 H), 2.8 (s, 3 H);
MS (ESI): 348 (MH+).
【0113】
1−[5−(ベンジルオキシ)ピリジン−2−イル]−4−(メチルスルホニル)ピペラジン(120g, 278mmol)を、TFA(1.3L)に溶解し、反応物を3時間撹拌しながら還流し、次に室温まで冷却した。次にTFAを真空で除去し、残渣をトルエン(2×300ml)と共に共沸した。得られた液体をDCM(100ml)で希釈し、飽和NaHCO溶液(700ml)でpH8までゆっくりと中和した。懸濁液を濾過し、水、最少量のDCM、そしてエーテルで洗浄し、乾燥し、6−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリジン−3−オールをベージュ色の固体として得た(69g, 270mol, 97%)。
1H NMR (DMSO-d6): 7.7 (d, 1 H), 7.1 (dd, 1 H), 6.75 (d, 1 H), 3.45 (t, 4 H), 3.2 (t, 4 H), 2.85 (s, 3 H);
MS (ESI): 257 (MH+).
【0114】
アセトン(1.8L)中の、6−[4−(メチルスルホニル)ピペラジン−1−イル]ピリジン−3−オール(69g, 270mmol)、KCO(112g, 810mmol)の懸濁液に、撹拌しながら、2,2,2−トリフルオロエチル ノナフルオロブタンスルホン酸エステルおよび/または2,2,2−トリフルオロエチル トリフルオロメタンスルホン酸エステル(全量324mmol)を加え、反応物を室温で18時間撹拌した。次に反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固した。残渣をDCM(2.5L, 500ml)および水(1.5L, 300ml)の層間に抽出し、DCM(500ml)で抽出し、乾燥し(MgSO)、濾過した。真空で濃縮し、少量のEtOHで希釈し、濾過し、乾燥し、1−(メチルスルホニル)−4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジンを灰白色の固体として得た(62g, 183mmol, 68%)。
1H NMR (CDCl3): 8.0 (d, 1 H), 7.25 (dd, 1 H), 6.65 (d, 1 H), 4.3 (q, 2 H), 3.6 (t, 4 H), 3.35 (t, 4 H), 2.8 (s, 3 H);
MS (ESI): 340 (MH+).
【0115】
THF(200ml)中の1−(メチルスルホニル)−4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン(13.3g, 39.2mmol)の懸濁液に、撹拌しながら、−70℃で、LHMDS(75ml, 75mmol)を滴下し、反応物を20分間撹拌した。THF(55ml)中の3−ピリミジン−2−イルプロパン酸エチル(9.2g, 51mmol)の溶液を−70℃で加え、−20℃まで温め、2時間撹拌した。次に反応物をNHClの飽和溶液(250ml)の添加によってクエンチし、EtOAc(3×250ml)で2回抽出し、合わせた有機物を塩水(250ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、黄色の固体を得た。固体を20%イソヘキサン/エーテル(100ml)中で20分間撹拌し、濾過し、イソヘキサンで洗浄し、乾燥し、4−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタン−2−オンを、灰白色の固体として得た(15.2g, 32.2mmol, 82%)。
1H NMR (CDCl3): 8.6 (d, 2 H), 7.95 (d, 1 H), 7.2 (dd, 1 H), 7.1 (t, 1 H), 6.6 (d, 1 H), 4.30 (q, 2 H), 4.15 (s, 2 H), 3.55 (t, 4 H), 3.4 (t, 4 H), 3.35 (t, 2 H), 3.3 (t, 2 H);
MS (ESI): 472 (MH+).
【0116】
10%MeOH/DCM(300ml)中の4−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタン−2−オン(15g, 31.6mmol)の溶液に、撹拌しながら、NaBH(0.52g, 15.8mmol)を少しずつ加え、反応物を室温で45分間撹拌した。次に反応物をNHClの飽和溶液(100ml)の添加によってクエンチし、水(150ml)で希釈し、DCM(3×200ml)で抽出し、合わせた有機物を乾燥し(塩水, MgSO)、濾過し、真空で濃縮した。エーテルでトリチュレートし、濾過し、乾燥し、4−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリミジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタン−2−オールをクリーム状固体として得た(13.8g, 29.0mmol, 92%)。
MS (ESI): 476 (MH+).
【0117】
DCM(250ml)中の4−ピリミジン−2−イル−1−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタン−2−オール(13.7g, 28.8mmol)の溶液に、撹拌しながら、0℃で、塩化メタンスルホニル(2.68ml, 34.6mmol)を加えた。反応物を0℃で20分間撹拌した後、トリエチルアミン(18.1ml, 129mmol)を滴下した。室温まで温め、16時間撹拌した。次に反応混合物をDCM(1L)で希釈し、水(150ml)で洗浄し、乾燥し(塩水, MgSO)、濾過し、真空で濃縮した。次に残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ, DCM中0〜5%MeOH)によって精製し、2−[(3E)−4−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタ−3−エン−1−イル]ピリミジンを黄色の固体として得た(11.9g, 18.6mmol, 90%)。
MS (ESI): 458 (MH+).
【0118】
THF(200ml)中の2−[(3E)−4−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブタ−3−エン−1−イル]ピリミジン(10.9g, 23.7mmol)の溶液に、撹拌しながら、ヒドロキシルアミンの50%水溶液(11ml)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。次に水(100ml)を加え、次にこれをEtOAc(3×100ml)で抽出し、乾燥し(塩水, MgSO)、濾過し、真空で濃縮し、2−[3−(ヒドロキシアミノ)−4−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブチル]ピリミジンを薄黄色の固体として得た(11.1g, 22.6mmol, 96%)。
MS (ESI): 491 (MH+).
【0119】
あるいは、出発物質を下記の通り製造した。
THF(450ml)中の1−(メチルスルホニル)−4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン(23g, 67.8mmol, 上記の通り製造)の懸濁液に、撹拌しながら、−65℃で、THF中のLiHMDSの溶液(149ml, 1.0M溶液, 149mmol)を滴下した。30分間撹拌した。ジエチル クロロホスフェート(11.3ml, 78mmol)を加え、1時間撹拌した。この溶液に、THF(290ml)中の3−(2−ピリジニル)プロパンアルデヒド(12g, 88.1mmol)の溶液を滴下し、次に3時間に亘って0℃まで温めた後、ヒドロキシルアミン溶液(41ml, 50%水溶液, 680mmol)でクエンチした。反応物を室温で16時間撹拌した。反応物を飽和NHCl溶液(250ml)で洗浄し、酢酸エチル(250ml)で逆抽出した。次に合わせた有機抽出物を乾燥し(塩水およびMgSO)、濾過し、真空で濃縮した。次に残渣をエーテルで1時間トリチュレートし、濾過し、乾燥し、2−[3−(ヒドロキシアミノ)−4−({4−[5−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ピリジン−2−イル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ブチル]ピリミジンを得た(31.5g, 64.3mmol, 95%)。
1H NMR (CDCl3): 8.65 (d, 2 H), 8.0 (d, 1 H), 7.25 (dd, 1 H), 7.15 (t, 1 H), 6.65 (d, 1 H), 4.3 (q, 2 H), 3.55 (m, 6 H), 3.4 (t, 4 H), 3.2 (t, 2 H), 2.9 (d, 1 H), 2.25 (m, 1 H), 2.1 (m, 1 H);
MS (ESI): 491 (MH+).
【0120】
実施例4
ヒドロキシ[(1S)−2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]ホルムアミド
【化14】

THF/蟻酸(1L/20ml)の混合溶媒系中の1−{[(2S)−2−(ヒドロキシアミノ)−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]スルホニル}−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(52.9g, 0.1mol)の氷冷した溶液に、蟻酸(19ml)および無水酢酸(65ml)の前もって形成した混合物を加えた。混合物を室温で終夜撹拌した。次に溶媒を少量になるまで蒸発させ、残渣をジクロロメタン(500ml)と飽和炭酸水素ナトリウム溶液の層間に分配した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮して油状物とした。これをメタノール(500ml)中で終夜撹拌し、次に濃縮し、モノホルミル化生成物を白色の固体として得た。固体は幾らかの不純物を含み、従って、それをジエチルエーテル中で4時間撹拌した後、濾過し、乾燥し、ヒドロキシ[(1S)−2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]ホルムアミドを得た(51.41g, 92%)。
【0121】
ヒドロキシ[(1S)−2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]ホルムアミド(51.4g)を、熱メタノール(80ml)に溶解し、次に室温まで終夜ゆっくりと冷却した。白色の結晶性固体を濾過し、乾燥した。次に固体をイソプロパノール(190ml)中で24時間撹拌した後、濾過し、50℃で終夜乾燥した。結晶性物質をジエチルエーテルで洗浄し、2日間再度乾燥した。
1H NMR (DMSO-d6): 9.95 and 9.60 (1 H, s), 8.30 and 8.00 (1 H, s), 7.15 (2 H, d), 7.05 (2 H, d), 6.75 (1 H, tt), 4.45 and 3.85 (1 H, t), 3.85 (2 H, m), 3.40 (2 H, m), 3.25 (10 H, m), 1.75 (2 H, m), 1.50 (1 H, m), 1.25 (2 H, m);
MS (ES) 514 (MH+);
Mpt 175-176℃.
【0122】
出発物質を下記の通り製造した。
1−ブロモ−4−テトラフルオロエトキシベンゼン(CAS Number 68835-05-9, 12g, 0.044M)を、トルエン(250ml)に、アルゴン雰囲気下で溶解した。N−Boc−ピペラジン(CAS Number 57260-71-6, 9.79g, 0.053M)、ナトリウム t−ブトキシド(5.93g, 0.062M)、BINAP(96mg)、およびジパラジウム−トリ−ジベンジリデン アセトン(96mg)を加えた。80℃で4時間撹拌し、冷却し、不溶性物質を濾過して除いた(トルエンで洗浄)。濾液を蒸発乾固し、粗製のt−ブチル 4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−カルボン酸エステルを得た。収量15.36g(92%)。
1H NMR (CDCL3): δ 7.10 (d, 2H), 6.90 (d, 2H), 5.90 (tt, 1H), 3.60 (m, 4H), 3.15 (m, 4H), 1.50 (s, 9H);
MS (ES): 323.0 (MH-t-ブチル).
【0123】
粗製のt−ブチル 4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−カルボン酸エステル(15.30g, 0.04M)をDCM(150ml)に溶解し、TFA(30ml)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、蒸発乾固し、トルエンと共に共沸した。残渣を酢酸エチルおよび飽和重炭酸ナトリウム溶液の層間に分配し、有機相を集め、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、1−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを固体として得た(10.97g, 98%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.15 (d, 2H), 6.90 (d, 2H), 5.90 (t, 1H), 3.35 (m, 8H);
MS (ES): 279.0.
【0124】
1−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(10.95g, 0.04)を、DCM(500ml)に溶解し、トリエチルアミン(18.5ml, 0.13mol)を加えた。混合物を0℃まで冷却し、塩化メタンスルホニル(7.4ml, 0.048mol)を加えた。環境温度に至らしめ、終夜撹拌した。反応混合物を水で洗浄し、有機相を集め、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。残渣固体をエタノールから結晶化し、1−(メチルスルホニル)−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを白色の固体として得た。収量12.3g(78.5%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.15 (d, 2H), 6.95 (d, 2H), 5.9 (tt,1H), 3.35 (m,4H), 3.3 (m,4H), 2.8 (s, 3H);
MS (ES): 357.26 (MH+).
【0125】
1−(メチルスルホニル)−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(2.85g, 0.008mol)を、無水THF(200ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で−10℃まで冷却した。THF中のリチウム ビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(17.6ml, 0.0176mol)を、−30℃まで冷却しながら加え、この混合物にTHF(2ml)中のメチル−テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボン酸エステル(CAS Number 110238-91-0)の溶液を加えた。これを室温に至らしめ、2時間撹拌した。反応物を飽和NHCl溶液でクエンチし、HOおよび酢酸エチルで希釈した。有機相を集め、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、粗製の2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エタノンを得た(3.64g, 97%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.15 (d, 2H), 6.95 (d, 2H), 5.90 (tt, 1H), 4.05 (s, 2H), 4.00 (m, 2H) 3.50 (m, 6H), 3.25 (m, 4H), 2.95 (m, 1H), 1.85 (m, 2H), 1.70 (m, 2H);
MS (ES): 469.08 (MH+).
【0126】
粗製の2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エタノン(3.60g, 0.008M)を、DCM(120ml)およびメタノール(40ml)に、環境温度で溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(334mg, 0.0088mol)を加えた。2時間撹拌し、HO(250ml)を加え、DCMで抽出した。有機相を集め、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エタノールを得た(3.6g, 95%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.15 (d, 2H), 6.90 (d, 2H), 5.90 (tt, 1H), 4.00 (m, 2H), 4.00 (m, 1H), 3.45 (m, 4H), 3.40 (m, 2H), 3.25 (m, 4H), 3.10 (m, 2H), 3.05 (m, 1H), 1.75 (m, 2H), 1.50 (m, 3H);
MS (ES): 471.08 (MH+).
【0127】
2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エタノール(3.6g,0.008M)を、DCM(100ml)に溶解し、トリエチルアミン(5.58ml, 0.04mol)を加えた。混合物を0℃まで冷却し、塩化メタンスルホニル(0.94ml, 0.012M)を加え、室温で終夜撹拌した。水を加え、有機相を分離し、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、1−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]−4−{[(E)−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ビニル]スルホニル}ピペラジンを得た。収量(3.15g, 86.6%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.1 (d,2H), 6.9 (d,2H), 6.75 (dd, 1H), 6.1 (d,1H), 5.85 (tt,1H), 4.0 (m, 2H), 3.4 (m,2H), 3.25 (m,8H), 2.5 (m,1H), 1.7 (m, 2H), 1.55 (m,2H);
MS (ES): 452.88 (MH+).
【0128】
1−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]−4−{[(E)−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ビニル]スルホニル}ピペラジン(3.13g, 0.007mol)を、THF(50ml)に溶解し、HO中50%ヒドロキシルアミン(12ml)を加えた。環境温度で終夜撹拌し、飽和NHCl溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、ラセミ体の1−{[2−(ヒドロキシアミノ)−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]スルホニル}−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを得た。これを、AD Chiralpak キラル分取HPLCカラムを用いて、そのエナンチオマーに分割し、20%メタノール/アセトニトリルで溶出した。カラムからの第2化合物で、必要なエナンチオマー、すなわち1−{[(2S)−2−(ヒドロキシアミノ)−2−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル]スルホニル}−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを得た。
1H NMR (CDCl3): δ 7.2 (d, 2H), 6.9 (d, 2H), 5.9 (tt, 1H), 3.85 (m, 2H), 3.5-3.1 (m, 11H), 3.05 (m, 2H), 1.95-1.8 (dd, 2H), 1.6 (d, 2H), 1.35 (m, 2H);
MS (ES): 485.92 (MH+).
【0129】
実施例5
ヒドロキシ[1−フェニル−2−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)エチル]ホルムアミド
【化15】

この化合物を実施例4に示した方法を用いて製造した。
1H NMR (CDCl3): 8.45 and 8.2 (d, 1H), 7.4 (m, 5H), 7.15 (d, 2H), 6.85 (d, 2H), 5.9 (tt, 1H), 5.5 (d, 1H), 3.4 (br s, 4H), 3.3 (s, 2H), 3.15 (br, 4H).
【0130】
この中間体1−[(2−フェニルビニル)スルホニル]−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを下記に示した通りに製造した。
1−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(1.39g, 0.005mol)を、DCM(250ml)に溶解し、トリエチルアミン(2.1ml, 0.015mol)を加えた。これを0℃まで冷却し、塩化スチレンスルホニル(CAS Number 52147-97-4, 1.11g, 0.0055mol)を加えた。環境温度に至らしめ、終夜撹拌した。HOで洗浄し、有機相を分離した。MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固して油状物とし、これをフラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(Merck 9385 silica)によって精製し、80% イソヘキサン/酢酸エチルで溶出し、1−[(2−フェニルビニル)スルホニル]−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを黄色の固体として得た。収量650mg(25%)。
1H NMR (CDCl3): δ 7.5 (m,3H), 7.4 (m,3H), 7.15 (d,2H), 6.9 (d,2H), 6.7 (d,1H), 5.85 (tt,1H), 3.4 (m,4H), 3.25 (m,4H);
MS (ES): 445.27 (MH+).
【0131】
実施例6
ヒドロキシ{4−ピリミジン−2−イル−1−[({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)メチル]ブチル}ホルムアミド
【化16】

この化合物を実施例4に示した方法を用いて製造した。
MS (ES): 550.03 (MH+).
【0132】
この中間体2−[5−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタ−4−エン−1−イル]ピリミジンを下記に示した通りに製造した。
1−(メチルスルホニル)−4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(356mg, 0.001mol)を無水THF(100ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下で−10℃まで冷却した。THF中のリチウム ビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液(2.2ml, 0.0022mol)を加え、−10℃で30分間撹拌し、次にジエチルクロロホスフェート(0.15ml, 0.001mol)を加え、−10℃でさらに30分間撹拌した。無水THF(5ml)中の2−ピリミジニル−4−ブチルアルデヒドの溶液を加え、混合物を−10℃で60分間撹拌し、まだ冷却しながら、反応物を飽和NHCl溶液でクエンチした。次にHOおよび酢酸エチルで希釈し、有機相を集め、MgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固し、油状物を得た。フラッシュ・カラム・クロマトグラフィー(Merck9385 silica)によって精製し、酢酸エチルで溶出し、2−[5−({4−[4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−イル}スルホニル)ペンタ−4−エン−1−イル]ピリミジンを得た。収量230mg(47%)。
1H NMR (CDCl3): 8.8 (d,2H), 7.2 (s,1H), 7.1 (d,2H), 6.85 (d,2H), 6.2 (d,2H), 5.8 (tt,1H), 4.05 (br,1H), 3.25 (br,8H), 3.05 (m,2H), 2.3 (m,1H), 2.05 (m,2H), 1.4 (m, 2H);
MS (ESI): 489 (MH+).
【0133】
実施例7
下記の化合物もまた合成した。
【化17】

【表5】

I:エナンチオマーを OJ chiral 分取HPLCカラムによって分割しメタノールで溶出
II:エナンチオマーを AD chiralpak 分取HPLCカラムによって分割し20%メタノール/アセトニトリルで溶出
【0134】
実施例8
下記の化合物を前述の実施例で記載した通りに製造した。
【化18】

【表6】

I:Chiralpak AD カラムで分割し、10% MeOH, MeCNで溶出
II:Chiralpak AD カラムで分割し、15% MeOH, MeCNで溶出
III:ヒドロキシルアミン段階で Chiralpak AD カラムで分割し、20% MeOH, MeCNで溶出
【0135】
これらの合成における出発物質は、下記の通りに製造した。
1−(メチルスルホニル)−4−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン
【化19】

炭酸カリウム(22.89g, 166mmol)、および2,2,2−トリフルオロエチル トリフルオロメタンスルホン酸エステル(16.0g, 69mmol)を、アセトン(200ml)中の4−ブロモフェノール(9.57g, 55mmol)の溶液に加えた。反応物を室温で終夜撹拌し、次に濾過し、300mbarで、30℃で濃縮し、アセトンを除いた。1−ブロモ−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼンをロウ状固体として得た(幾らかのアセトンがまだ存在しているので収率>100%)。
1H NMR (DMSO-d6) δ: 7.50 (2 H, d), 7.05 (2 H, d), 4.75 (2 H, q).
【0136】
1−ブロモ−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)ベンゼン(14.5g, 57mmol)を、トルエン(250ml)に、アルゴン雰囲気下で溶解した。tert−ブチル ピペラジン−1−カルボン酸エステル(12.7g, 68mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド(7.6g, 79.5mmol)、rac−2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル(200mg, 0.32mmol)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(200mg, 0.2mmol)を加え、反応物を80℃で4時間加熱した。次に混合物を冷却し、セライトで濾過し、粗製のtert−ブチル 4−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−カルボン酸エステルを得た(32.47g)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.90 (4 H, s), 4.30 (2 H, q), 3.60 (4 H, m), 3.05 (4 H, m), 1.45 (9 H, s);
m/z (ES) 305 (MH+-tBu).
【0137】
粗製のtert−ブチル 4−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン−1−カルボン酸エステル(32.47g, 約57mmol)をDCM(300ml)に溶解し、TFA(69ml)を加えた。反応物を室温で終夜撹拌し、次に蒸発乾固し、トルエンと共に共沸した。残渣をDCMと飽和重炭酸ナトリウム溶液の層間に分配した。有機相を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮し、1−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを固体として得た(13.48g, 91%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.90 (4 H, s), 4.30 (2 H, q), 3.30 (8 H, m);
MS (ES) 261 MH+.
【0138】
1−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジン(13.48g, 50mmol)を、DCM(500ml)に溶解し、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(29ml, 0.2mol)を加えた後、塩化メタンスルホニル(4.2ml, 55mmol)を滴下した。次に反応物を室温に至らしめ、終夜撹拌した後、水の添加によってクエンチした。層を分離し、有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮した。残渣を熱エタノールから再結晶し、純粋な1−(メチルスルホニル)−4−[4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェニル]ピペラジンを得た(3.3g, 18%)。
1H NMR (CDCl3): δ 6.90 (4 H, s), 4.30 (2 H, q), 3.40 (4 H, m), 3.20 (4 H, m), 2.85 (3 H, s);
m/z (ES) 339 MH+.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
環Bは、6個の環原子を有する単環式アリール環を表すか、または6個までの環原子を有し、かつ1個以上の環ヘテロ原子(ここで、該ヘテロ原子はそれぞれ窒素である)を含む単環式ヘテロアリール環を表し;
R2は、C1−6アルキルまたはアリールから選択される基を表し、該基は、1個以上のフッ素によって置換されており;
nは、1、2、または3であり;そして
R1は、C1−6アルキル、C5−7シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1−6アルキル−アリール、C1−6アルキル−ヘテロアリール、C1−6アルキル−シクロアルキル、またはC1−6アルキル−ヘテロシクロアルキルから選択され、所望により置換されている基を表す]の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物。
【請求項2】
Bが、6個の環原子を有する単環式アリール環であるか、または6個までの環原子を有し、かつ1から4個の環窒素原子を含む単環式ヘテロアリール環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Bが、フェニル、ピリジニル、またはピリミジニルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が、1から5個のフッ素によって置換されているC1−6アルキルである、請求項1から3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R2が、3個もしくは4個のフッ素によって置換されている、請求項1から4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R2が−CFCHCFである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R2が−CHCFである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
nが1である、請求項1から7の何れか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、C1−4アルキル、6個の環原子を有するアリール、1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含む5員から6員環のヘテロシクロアルキル環、またはC1−4アルキル−ヘテロアリール(ここで、該ヘテロアリールは、6個までの環原子を有し、かつN、OおよびSから選択される1個もしくは2個の環ヘテロ原子を含む)から選択され、所望により置換されている基である、請求項1から8の何れか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R1が、所望により置換されている、5員から6員環のヘテロシクロアルキル環{1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含む}、またはC1−4アルキル−ヘテロアリール{6個までの環原子を有し、かつ1個以上のヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含み、所望によりヘテロアリール環上で置換されている}である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R1が非置換である、請求項9または10に記載の化合物。
【請求項12】
R1が、1個もしくは2個の置換基(同一であっても異なっていてもよく、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、およびCNから選択される)によって置換されている、請求項9または10に記載の化合物。
【請求項13】
R1がフッ素によって置換されている、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
R1が、テトラヒドロピラニル、2−ピリミジニル−CHCH−、2−ピリミジニル−CHCHCH−、または5−F−2−ピリミジニル−CHCH−である、請求項11または13に記載の化合物。
【請求項15】
R2が1から5個のフッ素によって置換されているC1−6アルキルであり;
nが1であり;
環Bが、フェニル、ピリジニルまたはピリミジニルであり;そして
R1が、所望により置換されている、5員から6員環のヘテロシクロアルキル環{1個もしくは2個の環ヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含む}、またはC1−4アルキル−ヘテロアリール{6個までの環原子を有し、かつ1個以上のヘテロ原子(同一であっても異なっていてもよく、N、OおよびSから選択される)を含み、所望によりヘテロアリール環上で置換されている}である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、もしくは担体と組み合わせた、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から15の何れか1項に定義した通りの式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、もしくは担体と混合することを含む、請求項16に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項18】
治療に使用するための、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物。
【請求項19】
1個以上のメタロプロテイナーゼが介在する疾病状態の処置に使用する医薬の製造における、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項20】
コラゲナーゼ 3が介在する疾病状態の処置に使用する医薬の製造における、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項21】
閉塞性気道疾患の処置に使用する医薬の製造における、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項22】
閉塞性気道疾患が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
骨関節炎の処置に使用する医薬の製造における、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項24】
アテローム性動脈硬化症の処置に使用する医薬の製造における、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の使用。
【請求項25】
メタロプロテイナーゼ介在疾病状態を処置する方法であって、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を、治療有効量で、患者に投与することを含む方法。
【請求項26】
リウマチ性関節炎または骨関節炎を処置する方法であって、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を、治療有効量で、患者に投与することを含む方法。
【請求項27】
閉塞性気道疾患を処置する方法であって、請求項1から15の何れか1項に記載の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物を、治療有効量で患者に投与することを含む方法。
【請求項28】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物の製造方法であって、式(IV):
【化2】

[式中、R2、n、環B、およびR1は、式(I)で定義した通りである]の適切なヒドロキシアミノ化合物を、適切な混合酸無水物でホルミル化することによって、式(I)の化合物に変換すること;
そして、その後、所望により、
・得られた化合物をさらなる本発明の化合物に変換すること;および/または
・本化合物の薬学的に許容される塩またはプロドラッグまたは溶媒和物を形成すること;
を1つ以上行うことを含む方法。
【請求項29】
式(II):
【化3】

[式中、R2、n、および環Bが、請求項1に記載の式(I)で定義した通りである]の化合物。
【請求項30】
式(III):
【化4】

[式中、R2、n、環B、およびR1が、請求項1に記載の式(I)で定義した通りである]の化合物。
【請求項31】
式(IV):
【化5】

[式中、R2、n、環B、およびR1が、請求項1に記載の式(I)で定義した通りである]の化合物。

【公表番号】特表2007−516164(P2007−516164A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516467(P2006−516467)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002702
【国際公開番号】WO2005/000822
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】