説明

メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの新規な溶媒和物

本願発明はメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの新規な溶媒和物、特に式(Ia)のセミエタノール溶媒和物に、その調製方法に、該溶媒和物を含む医薬に、および疾患を制御するためのその使用に関する。


(Ia)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの新規な溶媒和物、特に式(Ia)のセミエタノール溶媒和物に、該溶媒和物の調製方法に、該溶媒和物を含む医薬に、および疾患を制御するためのその使用に関する。
【化1】

(Ia)
【背景技術】
【0002】
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートはWO03/095451に記載されており、式(I):
【化2】

(I)
の化合物に相当する。
【0003】
例えば、心血管疾患および性的機能不全を治療するための式(I)の化合物の調製および使用は、既にWO03/095451に記載されている。そこに記載されるように、式(I)の化合物は、以下、メソモルフィック形態(mesomorphic form)と称される、結晶変態の形態にて得られる。さらなる多形体、特に変態Iおよび非晶質形態が以下に特徴付けられる。メソモルフィック形態は特徴的な融点を有さず、変態Iは244℃で融解する。両方の形態は特徴的なX線回折、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトル、NIRスペクトルおよび13C固体NMRスペクトルを有する(表1−7、図1−14)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この度、変態Iは粉砕が困難であり、よって微細化工程にて操作上不利な点を有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
意外にも、9種のさらなる擬似多形体(pseudopolymorphic form)が見出された。WO03/095451および以下に特徴付けられるメソモルフィック形態または変態Iと比べて、擬似多形体は、各々、特徴的なX線回折図、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトル、NIRスペクトルおよび13C固体NMRスペクトルを有する(表1−7、図1−14)。
【0006】
意外にも、式(I)の化合物のセミエタノール溶媒和物、セミ水和物、モノ水和物、モノイソプロパノール溶媒和物、ジDMSO溶媒和物、セスキジオキサン溶媒和物、モノDMF溶媒和物、モノNMP溶媒和物およびTHF/水の形態が見出された。セミエタノール溶媒和物は、1分子の式(I)の化合物に付き、1/2分子のエタノールを、セミ水和物は1/2分子の水を、モノ水和物は1分子の水を、モノイソプロパノール溶媒和物は1分子のイソプロパノールを、ジDMSO溶媒和物は2分子のジメチルスルホキシドを、セスキジオキサン溶媒和物は1.5分子のジオキサンを、モノDMF溶媒和物は1分子のジメチルホルムアミドを、モノNMP溶媒和物は1分子のN−メチルピロリドンを含む。THF/水の形態は種々の量のテトラヒドロフランおよび水を非化学量論的な割合にて含む。WO03/095451にて、および以下にて特徴付けられる、式(I)の化合物の、メソモルフィック形態または変態Iと比べて、該擬似多形体は、各々、特徴的なX線回折図、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトル、NIRスペクトルおよび13C固体NMRスペクトルを有する(表1−7、図1−14)。セミエタノール溶媒和物、モノイソプロパノール溶媒和物、ジDMSO溶媒和物、セスキジオキサン溶媒和物およびモノDMF溶媒和物のX線構造が測定された(表18、図15−19)。
【0007】
本願発明は、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物として式(I)の化合物を提供する。
【化3】

(Ia)
【0008】
本願発明は、X線回折図にてピーク最大値が18.8の2θ°を有することを特徴とする、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を提供する。
【0009】
本願発明は、好ましくは、X線回折図にてピーク最大値が14.0、18.8および24.5の2θ°を有することを特徴とする、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を提供する。
【0010】
NIRスペクトルが6851cm−1、6017cm−1および4163cm−1にてピーク最大値を有することを特徴とする、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を提供する。
【0011】
本願発明は、例えば、メソモルフィック形態の式(Ia)の化合物をエタノール配合の溶媒に懸濁させ、セミエタノール溶媒和物への定量的変換が得られるまで、10℃ないし溶媒の還流温度の温度で攪拌または振盪させることを含む、式(Ia)の化合物の調製方法を提供する。
【0012】
本願発明に関連する一般的態様は、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物の薬理特性、加工性、製造方法、副作用、安定性および薬理活性である。
【0013】
意外にも、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物は、式(I)の化合物の変態Iと比べて、優れた流動性および篩特性(sievability)を有する。加えて、ミクロニセート(micronisate)にて粗粒材料がより細かくおよび短い尾部にて得られる。
【0014】
本願発明の式(I)の化合物は、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物として製剤処方にて高純度で利用される。安定性の理由から、製剤処方は式(I)の化合物を主に式(Ia)のセミエタノール溶媒和物として含み、別の形態の式(I)の化合物の他のフラクションを含まない。好ましくは、医薬は、存在する式(I)の化合物の総量に基づいて、90重量%より多くの、特に好ましくは95重量%より多くの、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を含む。
【0015】
本願発明はさらには、疾患を処置するための、特に心血管疾患を処置するための医薬の製造における、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物の使用を提供する。
【0016】
式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物は、血管を弛緩させ、血小板凝集を阻害し、血圧を下げ、さらに冠血流量を増加させる。これらの作用は可溶性グアニレートシクラーゼの直接刺激およびcGMPの細胞内増加を介して媒介される。
【0017】
したがって、該化合物は、例えば高血圧および心不全、安定および不安定狭心症、末梢および心血管障害、不整脈などの心血管障害を治療するための、心筋梗塞、発作、一過性および虚血性発作、末梢循環障害などの血栓塞栓性障害および虚血を治療するための、血栓溶解療法、経皮経管血管形成術(PTA)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、バイパス術後などの再狭窄を予防するための、およびまたアテローム性動脈硬化症、肝線維症または肺線維症などの線維性障害、喘息障害および、例えば、前立腺肥大、勃起不全、女性性的機能不全および失禁などの泌尿生殖器系の障害を治療するための、およびまた緑内障を治療するための医薬に用いられ得る。
【0018】
該化合物はまた、NO/cGMPシステムの障害により特徴付けられる中枢神経系の疾患を制御するのに使用され得る。特に、認知障害の排除、学習および記憶力の向上およびアルツハイマー病の治療に適している。また、不安、緊張および抑鬱などの中枢神経系の障害、睡眠障害および中枢神経系により惹起される性的機能不全の治療にも、並びに病理学的な摂食障害または刺激剤および薬物の使用に付随する障害の制御にも適している。
【0019】
さらには、脳循環の調節にも適しており、かくして片頭痛を制御するための効果的な薬剤でもある。
【0020】
卒中、脳虚血および頭蓋骨−脳損傷などの脳梗塞(脳卒中)の後遺症の予防および制御にも適している。さらに、痛みの状態の制御に用いられ得る。
【0021】
加えて、抗炎症作用を有し、したがって抗炎症剤として使用され得る。
【0022】
その上、肺動脈高血圧、微小循環損傷、気道感染、再灌流損傷、呼吸器障害、肺障害およびレイノー症候群の治療に適している。
【0023】
本願発明はさらには、障害、特に上記した障害の治療方法であって、有効量の式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を用いる方法を提供する。
【0024】
式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物は、適当な方法にて、例えば、経口、非経口、肺、鼻、舌下、舌、頬、直腸、皮膚、経皮、結膜、耳または膣経路による適当な方法にて、あるいは移植片またはステントとして投与され得る。
【0025】
本願発明の化合物はこれらの投与経路に適する投与形態にて投与され得る。
【0026】
経口投与に適する投与形態は、従来通りに作用し、本願発明の式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を、速やかにおよび/または修飾された方法にて放出する形態、例えば錠剤(被覆されていないか、あるいは、例えば本願発明の化合物の放出を制御する、胃液耐性のまたは溶解を遅らせるか、もしくは不溶性のコーティング剤で被覆した錠剤)、口腔内で速やかに崩壊する錠剤またはフィルム/ウェハー、フィルム/凍結乾燥体またはカプセル(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠、顆粒、ペレット、散剤、懸濁液またはエアロゾルである。
【0027】
非経口投与は吸収工程を回避しうるか(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内または腰内投与)、あるいは吸収工程を含みうる(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内投与)。非経口投与に適する投与形態は、懸濁液、凍結乾燥剤または滅菌散剤の形態の注射および注入用製剤を包含する。
【0028】
他の投与経路に適する投与形態は、例えば、吸入用医薬形態(散剤吸入器、ネフライザーを含む)、舌、舌下または頬投与用錠剤、フィルム/ウェハーまたはカプセル、坐剤、耳または眼用製剤、膣用カプセル、水性懸濁液(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、経皮用治療システム(例えば、パッチ)、ペースト、散布剤、インプラントまたはステントである。
【0029】
本願発明の化合物は上記した投与形態に変換され得る。これは、自体公知の方法にて、不活性な非毒性の医薬的に適する賦形剤と混合することでなされ得る。これらの賦形剤は、担体(例えば、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば、液体ポリエチレングリコール)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えば、アルブミン)、安定化剤(例えば、酸化防止剤、例、アスコルビン酸)、染料(例えば、顔料、例、酸化鉄)および矯味矯臭剤を包含する。
【0030】
本願発明はさらには、例えば、結合剤、充填剤等などの1または複数の不活性な非毒性の医薬的に適する補助剤と一緒に、少なくとも、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物を含む、上記した目的に使用するための医薬を提供する。
【0031】
一般に、合計約0.5ないし約500、好ましくは5ないし100mg/kg(体重)/日の量にて本願発明の化合物を、必要に応じて、複数の単一用量の形態にて投与し、所望の結果を得ることが有利であるとされている。個々の用量は、約1ないし約80mg/kg(体重)、好ましくは3ないし30mg/kg(体重)の量の活性化合物を含有する。
【0032】
本願発明はさらには、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物としての式(I)の化合物の製造方法であって、式(I)の化合物を結晶形または非晶質形にてエタノールに懸濁させ、10℃から溶媒の還流温度までの温度で、好ましくは15℃から35℃までの温度で、特に好ましくは20から30℃までの温度で、所望の変換割合が達成されるまで、特に好ましくは定量的な変換が達成されるまで、攪拌または振盪することを含む、方法を提供する。得られたセミエタノール溶媒和物の結晶を取り出し、存在する溶媒は室温または高温で質量が一定になるまで乾燥させることで除去される。
【0033】
適当な溶媒がエタノールまたはエタノール/水の混合液である。好ましくはエタノールである。
該調製方法は、一般に、外界圧の下でなされる。しかしながら、高圧または減圧下で、例えば、0.5ないし5バールで操作することも可能である。
【0034】
以下に示す試験および実施例における%は、特記しない限り、重量%であり;部は重量部である。液体/液体溶液についての溶媒割合、希釈割合および濃度データは、各々において、容量に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのDSCおよびTGAサーモグラムを示す。
【図2】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのDSCおよびTGAサーモグラムを示す。
【図3】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのX線回折図を示す。
【図4】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのX線回折図を示す。
【図5】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのIRスペクトルを示す。
【図6】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのIRスペクトルを示す。
【図7】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのラマンスペクトルを示す。
【図8】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのラマンスペクトルを示す。
【図9】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのFIRスペクトルを示す。
【図10】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのFIRスペクトルを示す。
【図11】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのNIRスペクトルを示す。
【図12】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのNIRスペクトルを示す。
【図13】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの13C固体NMRスペクトルを示す。
【図14】メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの13C固体NMRスペクトルを示す。
【図15】式(Ia)のセミエタノール溶媒和物の計算されたX線回折図および分子構造を示す。
【図16】式(Ia)のモノイソプロパノール溶媒和物の計算されたX線回折図および分子構造を示す。
【図17】ジDMSO溶媒和物の計算されたX線回折図および分子構造を示す。
【図18】セスキジオキサン溶媒和物の計算されたX線回折図および分子構造を示す。
【図19】モノDMF溶媒和物の計算されたX線回折図および分子構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施例:
DSCサーモグラフは示差走査熱量計DSC7、Pyris-1またはDiamond(Perkin-Elmer製)を用い、20K/分の加熱速度を用いて記録された。測定は有孔アルミニウムるつぼ中で実施され、用いたパージガスは窒素であった。サンプルの調製はなかった。
【0037】
TGA測定はサーモバランスTGA7およびPyris-1-TGA(Perkin-Elmer製)を用い、10K/分の加熱速度を用いて実施された。測定は開口プラチナるつぼ中で実施され、用いたパージガスは窒素であった。サンプル調製はなかった。
【0038】
X線回折図は位置敏感型検出器(PSD2)を用いるSTOE STADI-P伝達回折計を用いて室温で記録された(照射:銅、Kα1、一次単色光分光器:Ge[1 1 1]、波長:1.5406Å)。
【0039】
ラマンスペクトルはFT−ラマンスペクトロメーターRFS100およびMultiRAM(Bruker製)を用い、室温で記録された。分解能は2cm−1である。サンプル調製はなかった。測定はガラス管中またはアルミニウムディスク上で実施された。
【0040】
IRスペクトルはFT−IRスペクトロメーターVertex80vおよびIFS66v(Bruker製)を用いて室温で記録された。分解能は2cm−1である。測定は加圧ディスクとしてのKBrマトリックスにて実施された。
【0041】
FIRスペクトルはFT−IRスペクトロメーターVertex80vおよびIFS66v(Bruker製)を用いて室温で記録された。分解能は2cm−1である。測定は加圧ディスクとしてのポリエチレンマトリックスにて実施された。
【0042】
NIRスペクトルはFT−NIRスペクトロメーターIFS28/N(Bruker製)を用いて室温で記録された。分解能は8cm−1である。サンプル調製はなかった。
【0043】
固体13C NMRスペクトルはDRX400スペクトロメーター(Bruker製)を用いて室温で記録された。測定周波数は100.6MHzであり、回転数は8500Hzおよび10 000Hzである。サンプル調製はなかった。
【0044】
実施例1
式(Ia)のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのセミエタノール溶媒和物の調製
【0045】
実施例1.1
メソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.1g)をエタノール(2ml)に懸濁させ、該懸濁液を50℃で攪拌した。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣を熱分析により試験し、それはセミエタノール溶媒和物としての標記化合物と一致する。
【0046】
実施例1.2
エタノール(3.5L)をメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(65g)に加え、該物質を還流温度で溶かし、該溶液を熱いうちに濾過する。濾液を還流温度に再度加熱し、冷却し、室温で一夜攪拌する。残渣を単離し、エタノールで洗浄し、減圧下、50℃で乾燥させる。残渣を熱分析により試験し、それはセミエタノール溶媒和物としての標記化合物と一致する。
【0047】
実施例2
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのセミ水和物の調製
【0048】
実施例2.1
変態IIのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.1g)をメタノール(5ml)に懸濁させ、−20℃で攪拌する。3週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣を熱分析により試験し、それはセミ水和物としての標記化合物と一致する。
【0049】
実施例2.2
メソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.1g)をメタノール(2ml)に懸濁させ、該懸濁液を50℃で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはセミ水和物としての標記化合物と一致する。
【0050】
実施例3
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのモノ水和物の調製
【0051】
実施例3.1
メソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.1g)をエタノール(2ml)に懸濁させ、0℃で振盪する。1週間後に、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはモノ水和物としての標記化合物と一致する。
【0052】
実施例3.2
変態IIのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.1g)をメタノール(2ml)に懸濁させ、室温で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはモノ水和物としての標記化合物と一致する。
【0053】
実施例4
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのモノイソプロパノール溶媒和物の調製
【0054】
実施例4.1
メソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.4g)を熱イソプロパノール(0.6L)に溶かし、該溶液を濾過する。該溶液を3部に分け、1部を溶媒が蒸発するまで室温で放置する。残渣を熱分析により試験し、それはモノイソプロパノール溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0055】
実施例4.2
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(1.5g)を熱イソプロパノール(1.2L)に溶かし、該溶液を濾過する。溶媒が蒸発するまで、該溶液を冷蔵庫中に静置する。残渣を熱分析により試験し、それはモノイソプロパノール溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0056】
実施例4.3
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(80mg)をイソプロパノール(2ml)に懸濁させ、室温で振盪する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはモノイソプロパノール溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0057】
実施例5
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのジDMSO溶媒和物の調製
【0058】
実施例5.1
イソプロパノール溶媒和物としてのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(約10.3kg)を、約90℃で、ジメチルスルホキシド(約59.4kg)および酢酸エチル(47.7kg)に溶かし、該溶液を濾過する。濾液を約20℃に冷却し、沈殿固体を濾過し、減圧下、45℃で24時間乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはジDMSO溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0059】
実施例6
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのセスキジオキサン溶媒和物の調製
【0060】
実施例6.1
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(3.5g)を1,4−ジオキサン(約3.5L)に溶かし、該溶液を濾過し、冷凍庫で2日間放置する。ついで、該溶液を室温で溶媒が蒸発するまで放置する。残渣をX線回折により試験し、それはセスキジオキサン溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0061】
実施例7
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのモノDMF溶媒和物の調製
【0062】
実施例7.1
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(3g)をジメチルホルムアミド:水(1:1)(75ml)に懸濁させ、室温で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはモノDMF溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0063】
実施例7.2
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(0.4g)をジメチルホルムアミド(約40ml)に溶かし、該溶液を濾過する。該溶液の一部を溶媒が蒸発するまで冷蔵庫内に静置する。残渣をX線回折により試験し、それはモノDMF溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0064】
実施例8
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのモノNMP溶媒和物の調製
【0065】
実施例8.1
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(3g)を1−メチル−2−ピロリドン(7ml)に懸濁させ、室温で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それはモノNMP溶媒和物としての標記化合物に一致する。
【0066】
実施例9
メチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのTHF/水の形態の調製
【0067】
実施例9.1
変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(3g)をテトラヒドロフラン(約1L)に溶かし、該溶液を濾過する。該溶液を溶媒が蒸発するまで室温で放置する。残渣をX線回折により試験し、それはTHF/水の形態としての標記化合物に一致する。
【0068】
実施例10
式(I)の変態Iのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの調製
【0069】
実施例10.1
式(I)のメソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(約100mg)をアセトニトリル(3ml)に懸濁させ、該懸濁液を室温で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それは変態Iの標記化合物に一致する。
【0070】
実施例10.2
式(I)のメソモルフィック形態のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(約100mg)をアセトン(2ml)に懸濁させ、該懸濁液を、還流下、50℃で攪拌する。1週間後、該懸濁液を濾過し、残渣を室温および外界湿度で乾燥させる。残渣をX線回折により試験し、それは変態Iの標記化合物に一致する。
【0071】
実施例10.3
式(I)のジDMSO溶媒和物としてのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(7.1kg)を酢酸エチル(171.6kg)およびエタノール(42kg)に懸濁させ、該懸濁液を、還流下、約73℃で20時間攪拌する。該懸濁液を室温に冷却し、吸引濾過し、酢酸エチルおよび水で洗浄する。その湿った生成物を減圧下50℃で乾燥させる。それをX線回折により試験し、それは変態Iの標記化合物に一致する。
【0072】
実施例11
式(I)の変態IIのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートの調製
【0073】
実施例11.1
式(I)のHCl塩としてのメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメート(110.5g)をエタノール(1960ml)に室温で懸濁させる。140mlのトリエチルアミンを計量して加え、該混合物を室温でさらに3時間攪拌する。固体を吸引濾過し、エタノールで洗浄する。その湿った生成物を減圧下50℃で一夜乾燥させる。それをX線回折により試験し、それは変態IIの標記化合物に一致する。
【0074】
表1:熱重量分析
【表1】

【0075】
表2:X線回折法














【表2−1】

【表2−2】


【表2−3】



【表2−4】


【表2−5】












【0076】
表3:IR分光法
【表3−1】




【表3−2】


【表3−3】


【表3−4】



【0077】
表4:ラマン分光法
【表4−1】





【表4−2】












【表4−3】



【表4−4】







【0078】
表5:FIR分光法
【表5−1】




【表5−2】



【0079】
表6:NIR分光法
【表6−1】




【表6−2】


【0080】
表7:13C固体NMR分光法
【表7−1】

【表7−2】

【0081】
表8:結晶構造データ
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のメチル{4,6−ジアミノ−2−[1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−イル]ピリミジン−5−イル}カルバメートのセミエタノール溶媒和物としての式(Ia):
【化1】

(Ia)
で示される化合物。
【請求項2】
X線回折図にてピーク最大値が18.8の2θ°を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
X線回折図にてピーク最大値が14.0、18.8および24.5の2θ°を有する、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
NIRスペクトルが6851cm−1、6017cm−1および4163cm−1にてピーク最大値を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
疾患の治療のための、請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の化合物を含み、式(I)の化合物の他の形態を主たるフラクションとして含まない、医薬。
【請求項7】
存在する式(I)の化合物の総量に基づいて、請求項1ないし3に記載の化合物を90重量%より多くの量にて含む、医薬。
【請求項8】
例えば、メソモルフィック形態の式(I)の化合物をエタノール配合の溶媒に懸濁させ、式(Ia)のセミエタノール溶媒和物への定量的変換が得られるまで、10℃ないし溶媒の還流温度の温度で攪拌または振盪させることを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物の調製方法。
【請求項9】
心血管障害の治療用の医薬を製造するための請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
有効量の請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物を投与することを含む、心血管障害の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−513640(P2013−513640A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543643(P2012−543643)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069457
【国際公開番号】WO2011/073118
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】