説明

メチン化合物

【課題】高い吸光係数を有し、溶剤溶解性が良好であり、フッ化水素酸等の有害な分解物を生ぜず、且つ分解温度の高い赤外線吸収剤を提供すること。
【解決手段】例えば、下記式で表されるメチン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線吸収能に優れた新規な化合物及びその用途に関するものであり、更に詳しくは波長780〜840nmの赤外線を吸収する性能に優れたメチン化合物及びそれを用いた平版印刷法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を吸収する性質を有した有機化合物は、赤外線又は熱線吸収フィルムにおける赤外線吸収剤として、あるいは、光トナー、赤外線レーザーを利用した樹脂の硬化又は印刷等における光熱変換物質として利用されている。例えば特開2002−97239号ではかかる赤外線吸収剤を利用したエネルギー線硬化型樹脂組成物が提案され、又、例えば特開2000−81511号では同じくディスプレイ用の赤外線カットフィルタが提案され、更に例えば特開2003−302783号では赤外線を利用した光トナーなど数多くの検討、提案がされている。
他方、近年のレーザーの発展は目覚しく、赤外線吸収剤を含むメチン化合物がCD−RやDVD−Rなど光記録媒体に光熱変換物質として広く使用されており、その他波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できる様になっているため、例えばコンピューター等のデジタルデータから直接画像形成する際の記録光源としては主に800nmから840nmを発信波長とするレーザーが広く使用を検討されて、この波長域に対応する赤外線吸収剤も広く検討されている。このような赤外線レーザーによって記録可能な記録材料としては、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ノボラック樹脂およびアクリル樹脂等の樹脂と光熱変換物質からなる記録材料が数多く提案されている。また特許文献6にはメチン色素の合成法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3514900号
【特許文献2】特開2002−52855号
【特許文献3】特開2002−341536号
【特許文献4】特開2003−107687号
【特許文献5】特許第3606165号
【特許文献6】特公平5−37119号
【0004】
一方、光熱変換物質としてシアニン系化合物を利用する検討が広く検討され、例えば、特許文献1乃至特許文献5において、シアニン系化合物をダイレクト製版用印刷原版の赤外線吸収剤として用いることが検討されている。
【0005】
シアニン系化合物の分光特性は、環境による影響を受けやすく、樹脂膜等の中での最大吸収波長は、メタノール等の溶液中での最大吸収波長と異なり、樹脂等の薄膜や感光層中での最大吸収波長は10nm〜30nm程度溶液中のそれより長波長になる。従来のシアニン系化合物を赤外線を利用した画像形成材料における赤外線吸収剤として用いた場合、直鎖のシアニン化合物、未置換のインドール環を有するシアニン化合物等従来公知のシアニン系化合物では、画像形成材料の光源として主に用いられている800nm〜840nm光源に対しての最大吸収波長が合致しないという難点がある。高感度な画像形成材料を提供するためには高い吸光係数を有するだけではなく、メタノール中での最大吸収波長が780nm〜810nm付近にあることが好ましいとされるが、これらの要求を満たす赤外線吸収能を有するシアニン系化合物は見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜5で用いられているシアニン系化合物の対イオン(アニオン)としては過塩素酸塩、塩素酸塩、硝酸塩、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモナート等が用いられているが、過塩素酸塩をはじめとして塩素酸塩、硝酸塩などは消防法における危険物に該当し、使用及び保管に制限が生じ、また安全面からも好ましくない。またテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート等のフッ化物の塩は、光熱変換工程における分解時に毒物であるフッ化水素酸(HF)を生じるという問題がある。又、ヘキサフルオロアンチモナートはフッ化水素酸の発生に加えて含アンチモン成分が廃棄物となり問題がある。また、例えば特許文献4に記載のトルエンスルホン酸塩などの有機アニオンを有するシアニン系赤外線吸収剤は上記のような有害な廃棄物は産生しないが、分解温度が低いという欠点がある。分解温度が低い化合物はバインダー等の樹脂と混合したときの経時安定性が悪くなる傾向がある。
本発明の目的は、赤外線レーザー、特に800nmから840nmを発振波長とする赤外線レーザーの光熱変換物質として有用な、高い吸光係数を有し、溶剤溶解性が良好であり、フッ化水素酸等の有害な分解物を生じず、且つ分解温度の高い赤外線吸収剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意努力した結果、特定のメチン化合物が、特にメチン化合物の電荷を中和しうる特定の対イオン(アニオン)との組合わせにより前記課題を解決するものであることを見出し本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)で表されるメチン化合物、
【0008】
【化1】

(上記式(1)に於いてR1、R2はそれぞれ独立に炭素総数4までのアルキル基、炭素総数12までのアルコキシアルキル基若しくはアルコキシアルコキシアルキル基、ベンジルオキシエチル基又はフルフリルメチル基を表す。Yは下記式(Y)を表し、式(Y)においてXはハロゲン原子、炭素総数4までのアルキル基又は炭素総数4までのアルコキシ基を、nは1又は2の整数を、mは0又は1をそれぞれ表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(2)R1、R2は同一の基を表し、炭素総数4までのアルキル基又は総炭素数12までのアルコキシアルキル基である(1)に記載のメチン化合物
【0011】
(3)R1、R2は同一の基を表し、炭素総数4までのアルキル基又は総炭素数12までのアルコキシアルキル基であり、Yは下記式(Z)を表し、式(Z)においてXはメチル基、mは0又は1の整数である(1)に記載のメチン化合物
【0012】
【化3】

【0013】
(4)下記式(4)で表されるメチン化合物
【0014】
【化4】

【0015】
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のメチン化合物は、赤外線レーザー、特に800nmから840nmを発振波長とする赤外線レーザーに対して、高い吸光係数を有し、溶剤溶解性が良好であり、フッ化水素酸等の有害な分解物を生じない。又、分解温度が高く、安定性に優れているので、特に800nmから840nmを発振波長とする赤外線レーザーの光熱変換物質として有用で赤外線吸収剤とりわけコンピュータートウプレート(CTP)技術における赤外線吸収剤として優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のメチン化合物は下記式(1)で表される化合物であり、この化合物について説明する。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式(1)に於いてR1、R2はそれぞれ独立に炭素数4までのアルキル基、炭素数12までのアルコキシアルキル基若しくはアルコキシアルコキシアルキル基、ベンジルオキシエチル基又はフルフリルメチル基を表す。Yは上記式(Y)を表し、式(Y)においてXはハロゲン原子、炭素総数4までのアルキル基、アルコキシ基を表す。nは1又は2の整数を表し、mは0又は1を表す。)
【0020】
上記に於いて炭素数4までのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基のような直鎖又は分枝状のアルキル基が、炭素数12までのアルコキシアルキル基の具体例としてはエトキシメチル基、メトキシエチル基、プロポキシメチル基、ブトキシエチル基などが、又アルコキシアルコキシアルキル基の具体例としてはメトキシメトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
式(1)において、R1、R2の好ましいものはR1及びR2が共に炭素数4までのアルキル基であるか炭素数12までのアルコキシアルキル基若しくはアルコキシアルコキシアルキル基であり、更に好ましくはR1及びR2が共にメチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基又はブトキシエチル基であるものである。
【0021】
上記においてXの表すハロゲン原子の具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子が、炭素総数4までのアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基のような直鎖又は分枝状のアルキル基が、炭素総数4までのアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基等がそれぞれ挙げられる。Xとして好ましいものはメチル基、エチル基、メトキシ基、塩素原子である。nは1又は2を、mは0又は1をそれぞれ表す。

さらに上記Yが式(Z)で表される場合においてはXとしてメチル基が好ましい。またmは0又は1をそれぞれ表す。
【0022】
上記式(1)のうち好ましい化合物はYが下記式(Y)の化合物であり、更に好ましくはYが下記式(Z)の化合物であり、最も好ましい化合物は下記式(4)の化合物である。
【0023】

【0024】

【0025】

【0026】
次に、上記式(4)で示される化合物を含め上記式(1)で示される化合物の具体例を以下に示す。なお、化合物の構造式中でC49はノルマルブチル基を示す。
【0027】

【0028】

【0029】


【0030】
次に、本発明の式(1)で表されるメチン化合物の合成法について説明する。
式(1)の化合物のうち、例えば、前記化合物1のような対称形のメチン化合物は特許文献6に記載の方法に従い、下記式に示す反応試薬(A)、(B)及び(C)を縮合することにより得られる。
【0031】
【化4】

【0032】
上記式(A)において、RAは前記式(1)におけるR1及びR2と同じ意味を、RBは同じくR1と同じ意味を、RCは同じくR2と同じ意味をそれぞれ表す。又、X、m及びnは前記式(1)におけるのと同じ意味を表す
【0033】
縮合反応は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリコール、ジメチルホルムアミド又は酢酸、無水酢酸等の溶媒中に、原料(A)(2モル相当)、原料(B)及び原料(C)の酸や、そのナトリウム等の塩を仕込み、反応温度50℃〜140℃で1時間〜12時間反応させ、目的の化合物を得る。この反応において、必要に応じ、ピペラジン、ピペリジン、酢酸ナトリウム等の塩基触媒を加えても良い。
【0034】
又、前記式(1)のメチン化合物のうち、例えば、前記化合物11のような非対称形のメチン化合物は、原料(A)においてRAがRBであるような化合物と、原料(B)をおよそ1モル対1モルの比率で縮合することにより上記式に示す(D)をまず合成し、これに(E)及び(C)を加えて前記と同様にして縮合させることにより得ることが出来る。
【0035】
本発明の式(1)で表されるメチン化合物は赤外線を吸収する能力が大きく赤外線吸収フィルターにおける赤外線吸収剤あるいは、感熱記録材、CD−R、DVD−R等における記録材としても利用可能であるが、最も好ましい用途はCTPとも呼ばれるダイレクト製版用印刷原版における赤外線吸収剤としての利用である。以下本発明のメチン化合物をダイレクト製版用印刷原版における赤外線吸収剤(光熱変換物質)として用いる方法について説明する。
【0036】
ダイレクト製版用印刷原版(以下CTP版ともいう)には通常下記するような態様が挙げられるが、本発明の式(1)で表されるメチン化合物は何れの態様にも適用が可能でる。
(1)基板上に(a)アルカリ可溶性バインダー、(b)酸発生剤、(c)酸架橋性化合物及び赤外線吸収剤を含有する感光層を設けたネガ型のCTP版
(2)基板上に(a)アルカリ可溶性バインダー、(d)熱分解性でありかつ未分解状態で該アルカリ可溶性バインダーの溶解性を実質的に低下させる物質及び赤外線吸収剤を含有する感光層を設けたポジ型のCTP版
(3)基板上に赤外線吸収剤を含有する感光層を設けその上にシリコーンゴム層を設けた水なしCTP版
(4)基板上にレーザー露光後に現像処理を施すことなく印刷機に取り付けそのまま印刷できるいわゆる無処理型の赤外線吸収剤を含有する感光層を設けたCTP版
(5)基板上に必ずしも熱分解性の物質を含まないが、レーザーによる加熱により露光部が可溶化あるいは不溶化する赤外線吸収剤を含有する感光層を設けたポジ型あるいはネガ型のCTP版
【0037】
上記(1)〜(5)の各態様において、本発明の式(1)で表されるメチン化合物は感光層の全固形中の含有量として0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%の範囲で使用される。本発明の化合物の含有量が0.01重量%よりも少ない場合には光を吸収して熱に変換しても熱量が充分とならず、又含有量が30重量%よりも多い場合には発生する熱量が実質飽和となりそれぞれ好ましい効果が得られない懸念がある。
【0038】
次に上記(1)〜(5)の各態様において使用される材料について詳しく説明する。
前記(1)の態様において、(a)アルカリ可溶性バインダーの例としては、例えばノボラック樹脂を挙げることが出来る。好ましいノボラック樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(o−、p−、m−の各クレゾール、m−/p−の混合クレゾール、o−/p−の混合クレゾール、m−/o−の混合クレゾールのいずれでも良い)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂等が挙げられる。
【0039】
ノボラック樹脂以外のアルカリ可溶性バインダーとしては、例えばポリヒドロスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン基、イミド基等が挙げられる。これらは、1種類のみで使用しても良いし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0040】
前記(1)の態様において、これらの(a)アルカリ可溶性バインダーは、感光層全固形分中、10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜80重量%の含有量で用いられる。(a)アルカリ可溶性バインダーの含有量が10重量%未満であると感光層の耐久性が悪化し、また、90重量%を越えると感度、耐久性の両面で好ましくない。
【0041】
前記(1)の態様において、(b)酸発生剤は熱又は光により酸を発生する物質であり、光カチオン重合における光開始剤、光ラジカル重合における光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている光により酸を発生させる物質等が使用でき、これらを適宜選択して1乃至数種使用する。(b)酸発生剤は、感光層全固形分中、0.001〜40重量%、好ましくは0.01〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%の含有量で使用される。
【0042】
前記(1)の態様において、(c)酸架橋性化合物としては、前記(a)アルカリ可溶性バインダーを酸の存在下で架橋する機能のある化合物を指し、その具体例としては、例えば、特開平7−20629号に提案されているレゾール樹脂等の酸架橋剤の他、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基、もしくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物および複素環化合物が挙げられる。これらを適宜選択して1乃至数種使用する。(c)酸架橋性化合物は感光層全固形分中、5〜80重量%、好ましくは10〜75重量%、さらに好ましくは20〜70重量%の含有量で使用される。(c)酸架橋性化合物の含有量が5重量%未満であると得られる感光層の耐久性が低下し、また、80重量%を越えると保存時の安定性の面で共に好ましい結果が得られない懸念がある。
【0043】
前記(2)の態様において、(a)アルカリ可溶性バインダーとしては、前記(1)の態様において述べたものがそのまま用いられる。
【0044】
前記(2)の態様において、(d)熱分解性でありかつ未分解状態で該アルカリ可溶性バインダーの溶解性を実質的に低下させる物質としては、特許文献5に記載のオキサジアゾール化合物や種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物等が挙げられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げることができる。これらのうち特にジアゾニウム塩が好ましい。好適なキノンジアジド化合物類としては、o−キノンジアド化合物を挙げることができる。有用なo−キノンジアジド化合物としては、例えば、特開昭47−5303号、特公昭41−11222号、米国特許第2,797,213号、米国特許第3,544,323号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、ドイツ特許第854,890号等に記載されているものを挙げることが出来る。
【0045】
前記(3)の態様としては、特開平6−199064号、米国特許第5339737号、特開平7−164773号、特開平11−59005号、特開平11−157327号、特開平11−157326号、特開平11−129638号、特開平11−348445号に開示されているような前記(1)の態様に類するネガ型印刷版において、感光層上にシリコーンゴム層を設けた浸し水不要のいわゆるネガ型水なしCTP版等が挙げられる。
【0046】
前記(4)の態様としては、特開平10−282672号、特開平10−230582号、特開平10−282642号、特開平10−282644号、特開平10−282646号に記載されているスルホン酸を発生する官能基を含む高分子化合物を用いる系や、WO−9635143号、米国特許第5506090号、ヨーロッパ特許第652483号に開示されている、酸分解性基で保護されたカルボン酸ポリマーを用いる系等が挙げられる。
【0047】
前記(4)の態様としては、特公昭46−27919号に記載されている、加熱する前は不溶性もしくはわずかに可溶性であり、熱の影響下に溶媒中でより可溶性になり得る重合体化合物又は組成物を混入した記録材料や特開2005−81740号に記載されているカルボキシル基又はその塩を含有するポリウレタンを親油層とする系等が挙げられる。
【0048】
(1)〜(5)の態様において、各感光層やその他設けられる層には、必要に応じて上記以外に種々の薬剤を添加しても良い。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ色素を画像の着色剤として用いることが出来る。具体的には、ビクトリアブルー(C.I.42595)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等の色素(C.I.はカラーインデックスナンバーを意味する。)を用いる事が出来る。これらの色素は画像形成後、画像部と非画像部の区別を容易にする上で有益で、添加するのが好ましい。
【0049】
また、前記各CTP版には現像処理に対する安定性を向上させるための化合物を添加することが出来る。例えば、特開昭62−251740号や特開平3−208514号、特開昭59−121044、特開平4−13149号に記載されているような非イオン性、両性界面活性剤等を添加する事が出来る。
さらにCTP版には塗布性を良化するためにも界面活性剤を、例えば特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加しても良い。また塗膜の柔軟性等種々の特性を向上させるために、可塑剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0050】
次いで、前記各態様のCTP版の作成方法について述べる。
各態様に応じて適宜組成は変更されるが、一般的には、前述の各成分を下記するような溶媒に溶解させて得た塗工液を、下記するような支持体上に塗布又は積層して感光層他を形成せしめることにより製造することが出来る。ここで使用しうる溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることが出来る。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の前述した感光層を形成する各固形分(各添加物含む)の濃度は好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、好ましくは0.5〜5.0g/m2である。塗布方法としては、種々の方法を採用することが出来るが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が使用出来る。
【0051】
次に、CTP版を作成するための基板(支持体)について説明する。
使用しうる支持体としては、形状が安定な種々の板状物が用いられる。好ましいものとしては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも形状安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。好適に用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜1.0mm程度、好ましくは0.15mm〜0.75mm、特に好ましくは0.2mm〜0.6mmである。また、支持体として用いられるアルミニウム板は感光層との密着性を向上させる目的で粗面化するのが好ましい。粗面化の処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法等により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0052】
CTP版用の基板には必要に応じて基板上に下塗層を設けることができる。下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 が適当である。
【0053】
次に作製したCTP版は、800〜830nm、特に830nm付近で発光する半導体レーザーにより0.1〜20m/sの線速度により3〜500mJ/cm2の照射エネルギー量で照射することにより良好な感度で露光される。
【0054】
次に、画像露光された前記(1)、(2)及び(5)の各態様におけるCTP版の現像処理について説明する。
まず、画像露光されたCTP版は、必要に応じて加熱処理を行った後、アルカリ性水溶液(現像液)にて現像される。現像液およびその補充液としてはそれ自体公知のアルカリ水溶液が使用できる。使用しうる現像液およびその補充液用のアルカリ剤の具体例としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
これらのアルカリ剤を用いた現像剤の中で特に好ましいものは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。これらはケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物(M2O)の比率と濃度によって現像特性の調節が可能で、例えば、特開昭54−62004号、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく用いられる。
【0056】
通常、現像温度は15〜40℃、現像時間は1〜180秒の条件で行われる。現像液としては前記現像剤の0.1〜10重量%水溶液が用いられる。尚、現像液は濃縮型のネガPS版用又はポジPS版用現像液を適宜希釈して用いることも出来る。
【0057】
以上のようにして現像されたCTP版は、所望により、不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニング処理する場合には、バーニング処理面を、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号等に記載されているような整面液で処理することが好ましい。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサーなどで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している樹脂成分等の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0058】
次に、前記(4)の態様によるCTP版を画像処理した後の平版印刷版の現像について説明する。この種のCTP版は、露光した後、酸前駆体を加えている場合には、酸前駆体から発生した酸による不溶化反応を促進するための加熱が施される。この加熱工程は80〜150℃の温度範囲で、5秒〜20分の範囲で行われることが好ましい。
【0059】
露光および必要に応じて加熱工程を経た平版印刷版は、画像部の感光層の一部あるいは全部を溶解あるいは膨潤し得る現像液、あるいはシリコーンゴム層を膨潤し得る現像液で現像されるか、水や有機溶剤、現像液の存在又は非存在下で摩擦処理により現像される。この場合画像部の感光層およびその上のシリコーンゴム層が除去される場合と、画像部のシリコーンゴム層のみが除去される場合とがあり、これは現像液の強さによって区別することができる。
【0060】
この種の平板印刷版の現像液としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、ガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(トリクレン等)に下記の極性溶媒を添加したものや極性溶媒そのものが好適である。使用しうる極性溶媒の例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、カルビトールモノメチルエーテル、カルビトールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート)等が挙げられる。
【0061】
前記(3)の態様によるCTP版は、無処理型CTP版の場合は、レーザー描画後直ちに印刷機に平版印刷版を装着し印刷を行っても良いが、レーザー照射後に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、80〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させる事ができる。
【0062】
本発明のメチン化合物は、赤外線レーザー、特に800nmから840nmを発振波長とする赤外線レーザーに対して、高い吸光係数を有し、溶剤溶解性が良好であり、フッ化水素酸等の有害な分解物を生じない。又、分解温度が高く、安定性に優れているので、赤外線レーザーの光熱変換物質として有用であるほか、赤外線フイルター、感熱記録材料、CD−R、DVD−R等における記録材料としても有用である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例中、部、%は限定しない限り重量部、重量%を意味する。分解温度はTG/DTA220(セイコー電子工業(株)製)による減量開始温度を示した。又、モル吸光係数はUV−3150((株)島津製作所製)により測定した。又、溶解度は、25℃で、約10mgのサンプルを分取し、目視判定でサンプルが完溶するのに要した溶媒量から算出した。
【0064】
実施例1
5−クロロ−3,3−ジメチル−1−メトキシエチル−2−メチレンインドリン4部、2−クロロ−3−(ヒドロキシメチリデン)シクロヘキサ−1−エンカルバルデヒド1.1部、p−フェノールスルホン酸1.2部および無水酢酸ナトリウム0.5部を無水酢酸10部中、還流冷却下1時間煮沸し、次いで室温まで冷却した後、この反応液を吸引濾過し、不溶な不純物を除去する。次いでこの反応液を氷水30部にあけ、沈殿した結晶を吸引濾過し、メタノール20部で洗浄し、乾燥すると、前記化合物例に示す化合物1が4.2部得られた。得られた化合物1の分光特性及び分解温度は下記の通りであった。
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 234.8℃
又、各種溶媒に対する溶解度は下記の通りであった。
メタノール 4.8%
N,N−ジメチルホルムアミド 11.8%
2−メトキシエタノール 1.6%
【0065】
実施例2
実施例1において、p−フェノールスルホン酸1部に代えて1−ナフトール−5−スルホン酸ナトリウム1.9部を用いる他は実施例1同様に操作して、前記化合物例に示す化合物9が7.4部が得られた。化合物9の分光特性及び分解温度は下記の通りであった。
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 253℃
また、各種溶媒に対する溶解度は下記の通りであった。
メタノール 1.1%
N,N−ジメチルホルムアミド 5.5%
2−メトキシエタノール 0.5%
【0066】
実施例3
実施例1及び2に準じ製造した、前記化合物例に示す化合物8、化合物11、化合物15、化合物19及び化合物20のそれぞれの物性は下記の通りであった。
【0067】
化合物8
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 234℃
(溶解性)
メタノール 0.5%
N,N−ジメチルホルムアミド 7.9%
2−メトキシエタノール 1.3%
【0068】
化合物11
最大吸収波長 786nm(メタノール中)
モル吸光係数 279,000(メタノール中)
分解温度 240℃
(溶解性)
メタノール 1.9%
N,N−ジメチルホルムアミド 5.9%
2−メトキシエタノール 1.7%
【0069】
化合物15
最大吸収波長 786nm(メタノール中)
モル吸光係数 279,000(メタノール中)
分解温度 255℃
(溶解性)
メタノール 0.6%
N,N−ジメチルホルムアミド 5.7%
2−メトキシエタノール 0.3%
【0070】
化合物19
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 225℃
(溶解性)
メタノール 3.1%
N,N−ジメチルホルムアミド 4.9%
2−メトキシエタノール 1.5%

化合物20
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 225℃
(溶解性)
メタノール 1.3%
N,N−ジメチルホルムアミド 1.9%
2−メトキシエタノール 1.5%
【0071】
実施例4
0.30mmのアルミニウム板をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、400メッシュの研磨剤の水懸濁液を用いてその表面をブラシ法にて砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3 により20秒間浸漬して水洗した。電流密度15A/dm2 で3g/m2 の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。この脱脂処理を行なったアルミニウム版上に下記の組成からなる下塗り液を塗布し、80℃、3分間乾燥し、0.02g/m2の層を設けた。
【0072】
下塗り層組成
(a)β―アラニン 1部
(b)フェニルスルホン酸 0.5部
(c)溶媒(メタノール:純水=2:3(重量比)) 500部
【0073】
次いで、この層上に下記組成からなる感光層組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥させることにより、被覆重量が3g/m2の感光層を有するネガ型CTP版を得た。
【0074】
感光層組成
(a)表1の化合物1 2部
(b)4−(p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン 2部
(c)クレゾールとホルムアルデヒドからなるノボラック樹脂
(メタ:パラ比=8:2、平均分子量6000) 25部
(d)ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られるレゾール樹脂 20部
(e)ビクトリアピュアブルーBOH(商品名 C.I.42595) 1部
(f)フッ素系界面活性剤:商品名メガファックF−177(大日本インキ化学工業(株)製) 1.2部
(g)溶媒(メチルエチルケトン:メタノール=8:3(重量比)) 55部
【0075】
得られたCTP版を半導体レーザー(830nm、ビーム直径20μm、出力0.5W)を用いて線速度8m/sで走査露光した。露光後、パネルヒーターにて110℃で30秒間加熱処理した後、アルカリ性現像液を用いて現像した。この際得られた版を用いて印刷を行ったところ、非画像部に汚れのない良好な印刷物得られた。
【0076】
比較例1
実施例1において、p−フェノールスルホン酸1部に代えてp−トルエンスルホン酸1部を用いる他は実施例1と同様な操作をして、下記に示す化合物A 4.1部を得た。化合物Aの分光特性及び分解温度は下記の通りであった。
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 205℃

実施例1〜3の化合物との比較から明らかなように、比較例1の化合物Aは分解温度が205℃であり、実施例1〜3の化合物の分解温度が225〜255℃であるのと比較し最小値で15℃、最大値では実に50℃もの差があり、本発明の化合物の優れた熱安定性が示された。
【0077】
比較例2
実施例1において、p−フェノールスルホン酸1部に代えて過塩素酸1部を用いる他は実施例1と同様な操作をして、下記に示す化合物B 4.1部を得た。化合物Bの分光特性及び分解温度は下記の通りであった。
最大吸収波長 790nm(メタノール中)
モル吸光係数 289,000(メタノール中)
分解温度 250℃
又、各種溶媒に対する溶解度は下記の通りであった。
メタノール 0.4%
2−メトキシエタノール 0.4%

実施例1の化合物と比較例2の化合物はメチン色素部分は同一であり、対イオンが過塩素酸イオンであるものが比較例2の化合物、一方対イオンがp−フェノールスルホン酸イオンであるものが本願発明の実施例1の化合物である。
比較例2の化合物の溶解度はメタノール及び2−メトキシエタノールのいずれについても0.4%であった。これと比較し実施例1の化合物の溶解度は2−メトキシエタノールにつき1.6%、メタノールについては4.8%であり、2−メトキシエタノールにつき比較例2の4倍、メタノールについては同様に12倍と極めて高い溶解度を示し、非常に優れた溶剤溶解性を有することが証明された。

【0078】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるメチン化合物
【化1】

(上記式(1)に於いてR1、R2はそれぞれ独立に炭素総数4までのアルキル基、炭素総数12までのアルコキシアルキル基若しくはアルコキシアルコキシアルキル基、ベンジルオキシエチル基又はフルフリルメチル基を表す。Yは下記式(Y)を表し、式(Y)においてXはハロゲン原子、炭素総数4までのアルキル基又は炭素総数4までのアルコキシ基を、nは1又は2の整数を、mは0又は1をそれぞれ表す。)
【化2】

【請求項2】
1、R2は同一の基を表し、炭素総数4までのアルキル基又は総炭素数12までのアルコキシアルキル基である請求項1に記載のメチン化合物
【請求項3】
1、R2は同一の基を表し、炭素総数4までのアルキル基又は総炭素数12までのアルコキシアルキル基であり、Yは下記式(Z)を表し、式(Z)においてXはメチル基、mは0又は1の整数である請求項1に記載のメチン化合物
【化3】

【請求項4】
下記式(4)で表されるメチン化合物
【化4】


【公開番号】特開2007−106899(P2007−106899A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299528(P2005−299528)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】