説明

メッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙およびその製造方法

【課題】2層抄き合わせフィルターペーパーであって、鮮明かつ規則的なパターンと良好なろ水性とを併せ有する液体ろ過用ヒートシール紙及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】短網層より密度が高く、地合がとりやすい円網層の円網シリンダー3にパターンを付与した湿式抄紙機にて、円網層湿紙と短網層湿紙を抄き合わせ抄紙することにより、鮮明かつ規則的なパターンおよび良好なろ水性を有する液体ろ過用ヒートシール紙が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麦茶、緑茶、紅茶、コーヒー、だし等を充填し、家庭等での抽出に供される2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙、および、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来麦茶、緑茶、紅茶、コーヒー、だし等(以下「茶等」という)を充填する2層抄の液体ろ過用ヒートシール紙は、下記の方法で製造されている。すなわち、それは一方もしくは双方の層にポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエステル等の熱溶融繊維を配合した原料を2層抄で抄合わせ、片面もしくは両面にヒートシールが可能なフィルターペーパーを製造する方法である。
【0003】
前記ヒートシール紙は、三方もしくは四方のヒートシールを行うことにより、前記茶等の充填を行い、その後パック用紙として使用される。
通常前記ヒートシール紙は、パターンのないプレーンタイプのものが多い。
【0004】
上述したプレーンタイプとは別に、外観上の差別化並びにろ水性の向上を目的として、メッシュ状のパターン(以下単に「パターン」という)を施したヒートシール紙も提案されている。
【0005】
例えば、特公平53−45408号公報に記載のものがそれに該当し、そこには、抄紙ワイヤー(網)のmesh等を調整することによりパターンを付与する湿式抄紙方法が提案されている。それは、24〜18meshの単撚りの規則的なワイヤーを傾斜状に配置し、前記ワイヤー上で熱溶融繊維を配合した異種原料を抄き合せる方法である(米国特許第2,414,833号公報)。
【0006】
しかし、これらの方法では、一定の原料の供給量の調整が難しいため、一定の坪量および鮮明かつ規則的なパターンを持ったヒートシール紙を製造することは困難である。
【0007】
また、特表昭56−501492号公報においては、前記米国特許第2,414,833号で行われている抄合わせの後に、霧状水スプレーを使用して圧力水を噴射することにより、クレーター状の模様を形成させる方法が提案されているが、この方法の場合も上記方法の場合と同様に、一定の坪量および鮮明かつ規則的なパターンを持ったヒートシール紙を製造することは困難である。
【0008】
更に、別な方法として、短網上に、高圧シャワー水7を吹きつけることによりパターンを付与した短網層湿紙を、まったくパターンを付与していない円網層湿紙と抄き合わせる製造方法もある(図3参照)。
【0009】
但し、この方法によった場合は、円網層よりも良好な地合がとりにくい短網層にパターンが施されているので、鮮明かつ規則的なパターンが得られず、また、短網層より密度が高い円網層にパターンがないので、良好なろ水性が得られないおそれがある。良好なろ水性が得られないと、最終消費者がお茶パックからお茶を抽出する時に、所望の抽出性が得られないため、消費者クレームにつながるおそれがある。
【0010】
【特許文献1】特公平53−45408号公報
【特許文献2】米国特許第2,414,833号公報
【特許文献3】特表昭56−501492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来方法における諸問題を解決するためになされたもので、2層抄き合わせフィルターペーパーであって、鮮明かつ規則的なパターンと良好なろ水性とを併せ有する液体ろ過用ヒートシール紙及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、短網層より密度が高く、地合がとりやすい円網層の円網シリンダーにパターンを付与した湿式抄紙機にて、円網層湿紙と短網層湿紙を抄き合わせ抄紙することにより、鮮明かつ規則的なパターンおよび良好なろ水性を有する液体ろ過用ヒートシール紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明に係る方法では、円網シリンダーにmeshサイズが異なる2層のワイヤーを設置することにより、円網層湿紙にパターン付けをする。即ち、プレーンな短網層と抄き合せる円網シリンダーは、外側(円網湿紙原料との接触側)には、好ましくは20〜40meshの平織りワイヤーを、内側には前記平織りワイヤーよりmeshの粗いダイヤゴナル型ワイヤーを設置して、2層構造とする。
【発明の効果】
【0014】
円網シリンダーに平織りワイヤーと前記平織りワイヤーより粗いダイヤゴナル型のワイヤーとの積層ワイヤーを設置してパターンを付与する湿式抄紙機にて、円網層湿紙と短網層湿紙を抄き合わせ抄紙することにより、鮮明かつ規則的なパターンと良好なろ水性を有する液体ろ過用ヒートシール紙が得られる。
【0015】
本発明は、前記2種類の積層ワイヤーを設置してある円網シリンダーを既存の円網シリンダーと交換し、または既存の円網シリンダーのワイヤーを前記2種類の積層ワイヤーに張替えるだけで、目的のパターンが得られ、従来法よりコスト面、設備スペース面および労力面で有利なる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、さらに詳しく本発明について説明する。
本発明のパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の製造に当っては、通常、製紙業界で使用されている、セルロース繊維と熱溶融繊維が配合される。前記セルロース繊維としては、マニラ麻、ジュート、サイザル麻等の靭皮繊維や、N−BKP、N−UKP等の木材パルプ等が挙げられる。
【0017】
前記セルロース繊維と前記熱溶融繊維を適宜混合して、異種原料もしくは同種原料を調成し、湿式抄紙機でそれら原料を円網1と短網2により抄き合わせて、抄紙する(図1)。図1において符号3は円網シリンダーを示し、6はヘッドボックスを示す。
片面ヒートシール紙を抄紙する場合は、円網層もしくは短網層に熱溶融繊維を配合し、両面ヒートシール紙を抄紙する場合は、円網層および短網層に熱溶融繊維を配合する。
【0018】
前記パターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の坪量は特に限定されないが、用途上14〜50g/mの範囲とされる。円網層/短網層の絶乾原料重量の割合、つまり層比は、90%/10%〜30%/70%の範囲にある。
【0019】
パターンを付与した円網層の割合が90%を越えると、紙の空隙が多くなりすぎて、破れ等の強度的な問題が発生する。逆に、パターンを付与した円網層の割合が30%を下回ると、鮮明かつ規則的なパターンが得られない。なお、短網2は、図1に示されるようなものだけではなく、傾斜式もしくは長網式のものも採用可能である。
【0020】
前記ろ水性を測定する方法としては、通気度試験法が用いられる。前記通気度はフィルトローナ社製通気度測定器(PPM100型)を用いて、差圧100mmHOの時の、試料の1cmの面積を1分間に通過する空気の容積により求められる。前記通気性試験による所望の通気度は20000〜40000ml/cm/minである。というのは、20000ml/cm/minを下回ると良好なろ水性が得られず、40000ml/cm/minを越えると、紙の空隙が多くなりすぎて破れ等の強度的な問題が発生するからである。
【0021】
続いて、円網シリンダーに設置する2種類のワイヤーについて説明する。円網シリンダー3の外側、つまり円網層原料に接触する側には、例えば20〜40meshの平織りワイヤー4を、その内側には前記平織りワイヤー4よりmeshが粗いダイヤゴナル型(ダイヤゴナルとはワイヤーを45度回転させたものをいう。)ワイヤー5を設置する(図2参照)。このような2種類のワイヤーを用い、且つ、meshの組み合わせを採用することにより、鮮明かつ規則的なパターンが得られるのである。
【0022】
なお、平織りワイヤー4のmeshが20meshより小さくなると、パターンが大きくなりすぎて鮮明性および規則性において好ましくない。また、平織りワイヤー4のmeshが40meshより大きくなると、逆にパターンが小さくなりすぎて鮮明性および規則性において好ましくない。
【0023】
また、内側のワイヤーをダイヤゴナル型に変更したため、外側および内側のワイヤーの配列が揃ってしまうことにより紙に生ずる干渉縞(紙の縦横に発生する筋)の発生を防止することができる。
【0024】
内側のダイヤゴナル型ワイヤー5のmeshは外側の平織りワイヤー4より粗いmeshのものを使用する(例えば、平織りワイヤーが上記meshのとき、10〜30mesh程度が好ましい)。ダイヤゴナル型ワイヤー5のmeshを平織りワイヤー4のmeshより細かくすると、円網シリンダー3への搾水が阻害され、鮮明かつ規則的なパターンが得られないことになる。
【0025】
本発明を、下記の実施例と比較例とにより更に具体的に説明するが、下記説明は本発明を限定する趣旨のものではないことは言うまでもない。
【0026】
(実施例1)
円網シリンダーの内側に16meshのダイヤゴナル型ワイヤーを、外側に30meshの平織りワイヤーを設置して2層構造とした。円網層原料として、マニラ麻20%、N−BKP80%の混合スラリーを調成し、短網層原料として、マニラ麻20%、N−BKP20%、ポリプロピレン繊維60%の混合スラリーを調成した。短網層のワイヤーは16meshとした。
前記原料を図1に記載の円網・短網組合せ抄紙機で、表1に記載の坪量の2層抄合わせ紙を製造して実施例1とした。そのときの層比(円網/短網の比率)は50%/50%とした。
【0027】
(実施例2)
層比を90%/10%とした以外は実施例1と同様にして、2層抄合わせ紙を製造して実施例2とした。
【0028】
(比較例1)
円網シリンダーの内側にダイヤゴナル型でないワイヤー(前記平織りワイヤーと配列が揃ったワイヤー)を設置した以外は、実施例1と同じ条件で2層抄合わせ紙を製造して比較例1とした。
【0029】
(比較例2)
既存の55meshの平織りワイヤーを1層設置した円網シリンダーによる円網湿紙層と、図3に記載の16meshの短網上に、高圧シャワー水7を吹きつけてパターンを付与する方法で製造した短網層湿紙を、2層抄合わせした以外は実施例1と同じ条件で2層抄合わせ紙を製造して比較例2とした。
【0030】
(試験方法)
上記実施例1および2、並びに、比較例1および2により得られたパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の紙質試験は、以下の試験方法によって行い、その結果を表1に併せて示した。紙質試験用の標準状態はJIS P 8111により、坪量の測定はJIS P 8124により、また、通気度の測定は前記通気度試験法によった。そしてパターンの鮮明性、規則性およびお茶の抽出性は、目視評価によった(◎最良〜○良〜△中間〜×悪い)。
【0031】
(表1)

【0032】
比較例1のサンプルには干渉縞が発生し、パターンの鮮明性および規則性は今一歩であった。比較例2は地合のとりにくい短網層にパターンがあるので、実施例1および2と比較してパターンの鮮明性および規則性は不良であった。実施例1および2は比較例1および2よりパターンの鮮明性および規則性は良好だった。
また、緑茶をヒートシールしてパックし、その熱水抽出後のお茶の抽出性(全て同じ条件で抽出したときのお茶の色の出具合)を観察したところ、実施例2が最良であり、その評価は通気度に比例していた。
【0033】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る製造方法を実施するための抄紙機の構成図である。
【図2】本発明に係る製造方法を実施するための円網シリンダーの積層ワイヤーの構成を示す図である。
【図3】比較例2に記載の抄紙機の短網パートを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 円網
2 短網
3 円網シリンダー
4 平織りワイヤー
5 ダイヤゴナル型ワイヤー
6 ヘッドボックス
7 高圧シャワー水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円網層湿紙と短網層湿紙の抄合わせを、円網シリンダーにメッシュパターンワイヤーを設置した湿式抄紙機にて行って製造したことを特徴とする2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙。
【請求項2】
前記円網シリンダーのメッシュパターンワイヤーは、平織りワイヤーを外側にし、前記平織りワイヤーより粗いmeshのダイヤゴナル型のワイヤーを内側にして重ねて構成されたものである請求項1に記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙。
【請求項3】
前記平織りワイヤーは、20〜40meshである請求項2に記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙。
【請求項4】
フィルトローナ社製通気度測定器(PPM100型)で測定した通気度が20000〜40000ml/cm/minの範囲にある請求項1乃至3のいずれかに記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙。
【請求項5】
円網層湿紙と短網層湿紙の抄合わせを、円網シリンダーにメッシュパターンワイヤーを設置した湿式抄紙機にて行うことを特徴とする2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の製造方法。
【請求項6】
前記円網シリンダーのメッシュパターンワイヤーは、平織りワイヤーを外側にし、前記平織りワイヤーより粗いmeshのダイヤゴナル型のワイヤーを内側にして重ねて構成されたものである請求項5に記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の製造方法。
【請求項7】
前記平織りワイヤーは、20〜40meshである請求項6に記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の製造方法。
【請求項8】
フィルトローナ社製通気度測定器(PPM100型)で測定した通気度が20000〜40000ml/cm/minの範囲にあるように設定することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の2層抄のメッシュパターン付き液体ろ過用ヒートシール紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−152489(P2006−152489A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345228(P2004−345228)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000231257)日本大昭和板紙株式会社 (18)
【Fターム(参考)】