説明

メッシュ型ネットワーク及びパケットレート割り当て方法及び関連装置

【課題】本発明は、ネットワーク上のフローの制御に関し、特に、従来の負荷分散経路制御では困難であった公平なフローの割り当てが可能な方式を実現することを目的とする。
【解決手段】
各中継基地局Rは、自己に接続する無線リンクを使用する各フローが競合フローであるのか/非競合フローであるのかを判定し、ネットワークマネージャ20に報告する。レート制限装置Lは、自己を経由して網10に流入する各フローのパケットレートを測定しネットワークマネージャに報告する。ネットワークマネージャ20は、これらに基づき、各フローに対するパケットレートの上限値を決定し、レート制限装置Lに通知する。レート制限装置Lは、通知された上限値を越えて流入するパケットを破棄する。以上のような動作で、フローの公平な割り当てが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを利用した通信システムにおいて、システムの回線を効率よく利用する技術に関する。特に、無線メッシュ網において、ユーザあたりのスループットをなるべく公平に割り当てる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線メッシュ網で、システムの回線を効率よく利用してユーザあたりのスループットを高める手法として、従来から、負荷分散経路制御が知られている。
【0003】
従来の負荷分散経路制御における制御は、簡単に言えば、
まず、メッシュ網の各リンクに対して、チャネル利用率やそのリンクを使用するフローの数をもとに「チャネル負荷コスト」を設定する。次に、宛先までに経由するリンクのチャネル負荷コストの和が最小となる経路を選択するというものである。
【0004】
この手法は、特定の制御ノードを必要としない自律分散的制御であることが利点であるが、負荷分散を主目的としているため、送信ノード・受信ノードのペアごとの帯域利用の公平性を保つことは困難である。この現象は送信ノード・受信ノードのペアごとに利用できる経路の数が異なる時に特に顕著となる。
【0005】
先行特許文献の例
例えば、下記特許文献1には、ネットワーク上の経路を効率的に決定する方法が提案されている。特に各リンク毎の公平性を考えにいれたモデル化を行うことが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、ネットワークを流れるトラヒック量や通信経路を調整して負荷分散を図る技術が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献3には、ネットワーク上で公平な混雑制御を行えるシステムが開示されている。
【0008】
また、下記特許文献4及び下記特許文献5には、各加入者に対して公平な帯域割り当てが行えるシステムが開示されている。特に、論理的に多重化されたVLANについて、トラヒック量の大きなVLANに物理リンクが占有されてしまうことを防ぐことができ、公平性を確保できる技術が開示されている。
【0009】
また、下記特許文献6には、加入者チャネルの帯域割り当てを動的に変えて、効率の良い通信を行える技術が開示されている。特に、この技術によれば、セッション待ち行列を用いて多重アクセスの際の、バースト特性を有するデータ通信が生じた場合でも効率の良い伝送を実現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−090235号公報
【特許文献2】特開2001−016262号公報
【特許文献3】特開2003−124954号公報
【特許文献4】特開2003−204343号公報
【特許文献5】特開2004−104708号公報
【特許文献6】特開2007−251966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の負荷分散経路制御の様子を示す説明図が図1に示されている。
【0012】
図1に示す網10においては、各無線基地局がA、B、C、D、E、F、G、H、I、Jで表されている。また、送信端末(送信ノード)が、S1、S2、S3で表されている。さらに、受信端末(受信ノード)がD1、D2、D3で表されている。
【0013】
各無線基地局間は、無線リンク(以下、単に「リンク」と呼ぶ)により結ばれており、図1においてこのリンクは破線で示されている。
【0014】
この図1に示す網10の下では、まず、無線基地局(A ̄J)間を結ぶ各リンクの伝送速度は等しいものとしてこの伝送速度をRと表す。そして、各リンクには、互いのチャネル干渉が無視できる範囲で異なるチャネルが割り当てられるとする。
【0015】
図1に示すように、ユーザペアS1−D1と、S3−D3はそれぞれ経路が1本のみであるが、ユーザペアS2−D2には取りうる経路が2本あることが理解されよう。すなわち、
S2−B−D−F−I−D2
S2−B−E−G−I−D2
の2経路である。
【0016】
さて、このような状況下で、各ユーザペアS1−D1、 S2−D2、 S3−D3がファイル転送等のデータ通信を行う場合を想定する。そして、その際の各々のペアのスループットをTh(1)、 Th(2)、 Th(3) で表す。
【0017】
図1から、あきらかに、ユーザペアS2−D2は、隣接する他のユーザペアS1−D1、又は、S3−D3とリンクの帯域を共有することになる。したがって、上述したスループットTh(1)、Th(2)、Th(3)はS2−D2の取る経路によって変化し、それぞれ以下のような値をとることが容易に理解されよう。
【0018】
(1)S2−D2の経路がB−D−F−Iである場合:
Th(1)=R/2、 Th(2)=R/2、Th(3)=R
(2)S2−D2の経路がB−E−G−Iである場合:
Th(1)=R、 Th(2)=R/2、Th(3)=R/2
このように従来の負荷分散経路制御では、各ペアのスループットは異なる値となってしまう。これは、従来の負荷分散ルーティングでは解決することが困難な問題である。なお、図1中では、上記(1)の場合のフロー示す矢印が示されている。
【0019】
さて一方、図2に示すように、ユーザペアS2−D2が2種の経路の各々にフローを分散設定し、かつ各フローで流れるデータの量を最適に制御することによって、ユーザペア単位で公平性を維持することが可能となると考えられる。
【0020】
例えば、図2においては、ユーザペアS2−D2が2種の経路の各々にフロー(1/3)Rずつ設定し、合計のフローが(2/3)Rとなっている。一方、ユーザペアS1−D1とユーザペアS1−D1とについても、(2/3)Rずつフローを設定すれば、全ペアが、フローとして(2/3)Rづつ享有することができ、公平な割り当てができる。
【0021】
このような制御は、ネットワーク(メッシュ網10)全体のフローの分布を把握する必要があり、従来の自律分散制御で行うことは困難であると考えられる。
【0022】
本発明の課題・目的
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、従来の負荷分散経路制御では困難であった公平なフローの割り当てが可能な方式を実現することを目的とする。
【0023】
特に、本発明では、後述するように、無線メッシュ網にネットワークマネージャ20と呼ばれる集中制御ノードを置き、集中制御ノードがユーザペアのフロー数、各リンクで帯域を共有しているフローの数を把握するように構成している。このネットワークマネージャ20が、各ユーザペアの各フローが利用できる帯域を制限することで、ユーザペア単位で帯域利用の公平性を実現することができたのである。
【0024】
なお、公平とは、なるべく均一なパケットレートを割り当てることを意味する。
【0025】
また、請求の範囲においては、便宜上、ネットワークマネージャを、装置であることを明確にするために、「ネットワークマネージャ装置」と称しているが、両者は実質的に同様の装置を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、 前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワークにおいて、前記中継基地局装置は、自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断手段と、前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、を備え、前記レート制限装置は、自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定手段と、前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限手段と、を備え、前記ネットワークマネージャ装置は、前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定手段と、前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信手段と、を含み、前記上限値設定手段は、前記各フローに対して、他のフローのリンクと競合していない非競合グローに対しては、前記パケット上限値を設定せず、他のフローのリンクと競合する競合フローに対しては、以下の3種の動作のいずれかを実行することを特徴とするメッシュ型ネットワークである。
【0027】
(a)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させる。
【0028】
(b)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えない。
【0029】
(c)上記(a)(b)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させる。
【0030】
(2)本発明は、上記課題を解決するために、メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で、前記各フローへのパケットレート割り当て方法において、前記中継基地局装置が、自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断ステップと、前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告ステップと、
を実行し、前記レート制限装置は、自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定ステップと、前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告ステップと、前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限ステップと、を実行し、前記ネットワークマネージャ装置は、前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定ステップと、前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信ステップと、を実行し、前記上限値設定ステップは、以下の3種のステップを含むことを特徴とするパケットレート割り当て方法である。
【0031】
(a)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させるステップ。
【0032】
(b)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えないステップ。
【0033】
(c)上記(1)(2)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させるステップ。
【0034】
(3)本発明は、上記課題を解決するために、メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワークで用いられる前記ネットワークマネージャ装置において、前記ネットワークマネージャ装置は、前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定手段と、前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信手段と、を含み、前記上限値設定手段は、前記各フローに対して、他のフローのリンクと競合していない非競合グローに対しては、前記パケット上限値を設定せず、他のフローのリンクと競合する競合フローに対しては、以下の3種の動作のいずれかを実行することを特徴とするネットワークマネージャ装置である。
【0035】
(a)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させる。
【0036】
(b)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えない。
【0037】
(c)上記(1)(2)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させる。
【0038】
(4)本発明は、上記課題を解決するために、メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、1個又は複数個の前記中継基地局に接続している1個以上のレート制限装置と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で用いられる前記中継基地局装置において、自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断手段と、前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、を備えることを特徴とする中継基地局装置である。
【0039】
(5)本発明は、上記課題を解決するために、メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で用いられる前記レート制限装置において、自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定手段と、前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限手段と、を備えることを特徴とするレート制限装置である。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように、本発明によれば、データの送信と受信とを行っているペア(送信端末、受信端末)に対して公平な通信帯域を割り当てる(パケットレートを割り当てる)ことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来のメッシュ網の様子を示す説明図である。
【図2】図1のメッシュ網と同様のシステムを示す図であり、S2−D2の経路が、2個に分割されていることを表す従来技術の説明図である。
【図3】本実施の形態にかかるメッシュ網の様子を示す説明図である。
【図4】ネットワークマネージャ、中継基地局、レート制限装置の役割を示す概念図である。
【図5】本実施の形態にかかるフロー管理テーブルの様子を示す説明図である。
【図6】ネットワークマネージャがフロー管理テーブルに基づき、パケットレートの上限値を計算し、割り当てる動作を説明するフローチャートである。
【図7】本実施の形態におけるメッシュ網の様子を示す説明図であって、パケットレートが調整される前の状態を示す説明図である。
【図8】図5のフロー管理テーブルについて図6等の処理を行った結果であるフロー管理テーブルを示す説明図である。
【図9】処理を行った後のメッシュ網10の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。
【0043】
1 本実施の形態におけるシステムの構成と用語説明
1.1 構成
(1)全体構成
本実施の形態で説明する無線メッシュ網10(以下、単に網10と呼ぶ場合もある)のシステム構成が図3に示されている。
【0044】
網10全体に対してネットワークマネージャ20が1台設けられ、各中継基地局(R1、R2、R3、R4、R5、R6)と制御用の無線リンクで接続される。図3においては、基地局は2種類存在する。他の基地局とのみ通信を行う中継のための中継基地局R1〜R6)と、ユーザ端末と無線リンクで接続される収容機能を持つ基地局(E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8)である。本実施の形態では、このように、「基地局」「中継基地局」と呼び分けている。
【0045】
なお、請求の範囲では、便宜上、装置であることを明確にするために「中継基地局装置」と称しているが、これは、本実施の形態における中継基地局と実質的に同様の装置である。
【0046】
また、ユーザ端末は、送信ノードを、S1、S2、S3、S4と呼び、受信ノードをD1、D2、D3、D4と呼ぶ(図3参照)。
【0047】
制御用の無線リンクは概念的に灰色の雲で表している。また、データ通信用の無線リンクは、図1・図2と同様に破線で示されている。データ通信用の無線リンクは、以下、単に「リンク」と記す。
【0048】
図3中、ネットワークマネージャ20は、網10の各リンクのチャネル利用率とそのリンクを使用するフローについての情報を収集し、後述するレート制限装置(L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8)にその情報を通知する役割を有する。
【0049】
(2)レート制限装置
本実施の形態において特徴的なことは、ユーザ端末を収容する基地局(E1〜E8)には、レート制限装置(L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8)が、それぞれ接続されていることである。
【0050】
本実施の形態においてさらに特徴的なことは、図3に示すように、ユーザ端末を収容する基地局E1〜E6についてのみレート制限装置が設けられていることである。同じ基地局でも中継のみを行う基地局(R1〜R4)についてはレート制限装置Lは設けられていない。このような構成によって、より効率的にフローの分配・割り当てが可能となったものである。
【0051】
レート制限装置Lの重要な働きの一つは、ネットワークマネージャ20から与えられたフローの競合に関する情報に基づいて、対応する基地局Eが収容するフローのパケットが網10に流入する情報量を制限することである。この動作によって、レート制限装置(L1〜L8)が接続されているそれぞれの基地局(E1〜E8)は、その収容フローから予め定めた値を超過したパケットを受信した場合に、その基地局は超過したパケットの一部を破棄するのである。このような動作によって、フローの公平な割り当てが可能となる。詳しくは次節でその動作を説明する。
【0052】
(3)複数のフロー
なお、本実施の形態では、1組のユーザペアに対して網10内で設定されるフローは、1本でもよいし2本以上設定してもかまわない。原理的に、フローの本数に制限は設けられていない。但し、1組のユーザ端末ペアに対してフローを2本以上設定する場合は、各フローの経路が可能な限りリンク独立になるように網10側が経路を選択するものとする。そのユーザペアは、設定された各フローに対してそれぞれ個別に、TCP等のフロー制御と輻輳制御の機能を備えたトランスポートコネクションを設定する。
【0053】
2.2 用語説明
(1)競合フローと非競合フロー
競合フローとは、フローが経由するいずれかのリンクで、他のフローとリンクの帯域を競合しているフローである。つまり、ある単一の同じリンクを、2本以上のフローが使用しており、かつそのリンクのチャネル利用率がある決められた閾値より高い場合、それらのフローを競合フローと呼ぶ.そして、この条件に合致しないフローを非競合フローと呼ぶ.
例えば図1で、S1−D1、S2−D2のフローは競合フローであるが、S3−D3のフローは非競合フローである。図2では全てのフローが競合フローである。但し、図2において、仮にS3−D3のフローが存在しない場合は、S2−D2間のフローB−E−G−Iのフローは非競合フローとなる一方、B−D−F−Iのフローは依然として競合フローのままである。このように、一組のユーザペアの通信の中に競合フローと非競合フローが混在する場合もある。
【0054】
3.本実施の形態において採用している方式の概要
本実施の形態で採用する方式においては、まず、ネットワークマネージャ20が網10の各リンクのチャネル利用率および網10内の競合フローおよび非競合フローの数を把握している。
【0055】
この把握した情報に基づいて、各フローの送信端末Sの最寄りの基地局Eに接続されているレート制限装置Lは、そのフローのパケットレートに上限値を設定するのである。
【0056】
そしてレート制限装置Lは、設定したこの上限値を超えて受信するパケットを破棄するのである。
【0057】
本実施の形態では、このような動作によって、ユーザペア単位での帯域利用公平性を実現している。詳しい動作については、次節から順に説明する。
【0058】
3.1 ネットワークマネージャ、中継基地局およびレート制限装置の役割
上記の各々の装置の役割を表す概念図が図4に示されている。
【0059】
(a)まず、網10内の各中継基地局Rは、自らに接続する無線リンクを使用する各フローが競合フローであるのか、それとも非競合フローであるのかを、上記2.2用語説明で述べた定義に沿って判定する。そして、各中継基地局Rは、その判定結果を、定期的にネットワークマネージャ20に報告する。後述するように、ネットワークマネージャ20は、この報告に基づき、フロー管理テーブルを構築し、また、更新していく。
【0060】
中継基地局Rの装置は、基本的に一般的な中継装置と同様のハードウェア構成・ソフトウェア構成を採用している。また、各無線リンクを構成する通信手段も、当業者であれば、従来の中継装置と同様の手段を採用することで容易に構築可能である。従来の中継装置は、基本的にコンピュータの構成に無線リンクを実現するためのインターフェースを組み合わせることによって構成されており、本実施の形態でも同様の構成を採用する。
【0061】
そして、競合フローであるか、非競合フローであるかの判断の手段は、このコンピュータの構成の部分のソフトウェアによって構成することが好適である。中継装置内のコンピュータは従来からデータのフローの監視や制御を行っているので、このコンピュータの記憶手段内に所定のプログラムを格納して、上記コンピュータのプロセッサにこのソフトウェアを実行させて、競合フローか非競合フローかを判断させることが好適である。
【0062】
競合フローか、非競合フローかを判断するには、そのフローが利用する無線リンクを、他のフローが利用しているか否かを判断すればよい。一般に従来から中継装置では、各無線リンク毎にどのフローがそのリンクを利用しているかを記憶させたテーブルを記憶手段内に構築し、そのテーブルに基づき各無線リンク及びフロー制御する場合が多い。このようなテーブルを検査することによって、あるフローが利用する無線リンクを選択する。そして、その無線リンクを利用するフローはテーブルを検査することによって容易に見つけ出すことができる。見つけたフローが1種のみであれば、そのフローは非競合フローであると判断できるし、フローが2種以上あれば、それらは競合フローであると判断することができる。なお、判断した結果は、上述したように、ネットワークマネージャ20に報告されるが、制御・管理の点から、上記テーブル中に格納しておくことも好適である。
【0063】
(b)次に、レート制限装置Lは、当該装置を経由して網10に流入する各フローのパケットレートを測定する。そして、レート制限装置Lは、その測定結果を定期的にネットワークマネージャに報告する。後述するように、ネットワークマネージャ20は、この報告に基づき、フロー管理テーブルを構築し、また、更新していく。
【0064】
この報告は、パケットレートの測定には一定時間係ることから、定期的に行うことが好ましいが、新しいフローが設定された場合等は、必ずしも定期的でなくても良い。また、各「フロー毎に定期的」であってもよい。この場合は、各フロー毎にばらばらに報告がなされることになる。また、パケットレートの変化が乏しい場合は、報告の周期を長くしても良いし、パケットレートが急峻に変化する場合は、周期を自動的に短くするように構成しても良い。
【0065】
レート制限装置は、一般に従来からコンピュータに所定の通信インターフェースを組み合わせて構成されることが多い。上記レートの測定は、このコンピュータ部分に行わせることが好適である。このコンピュータの記憶手段内にレート測定のためのソフトウェアを格納しておき、コンピュータのプロセッサ部分にこのソフトウェアを実行させることによって、上記レートの測定手段を構成することが恋うてである。レートの測定は、単位時間あたりのパケットの数を計数することによって行われる。パケットの計数は、従来からコンピュータが行ってきたことであるので、当業者であればこのような手段(ソフトウェア)を構築することは容易である。
【0066】
(c)次に、ネットワークマネージャ20は、上記(a)(b)により得られた情報に基づき、各フローに対するパケットレートの上限値を決定する。そして、ネットワークマネージャ20は、そのフローを収容するレート制限装置Lにその値を通知する。
【0067】
レート制限装置Lは、内部にその通知された上限値を記憶(設定)しておき、この上限値を越えて流入するパケットを破棄する。具体的には、ネットワークマネージャ20は、フロー管理テーブルを構築し、その内容に基づき、フロー管理テーブルを逐次更新していくことによって、上記のような処理を行っている。
【0068】
また、レート制限装置Lは、上述したように、コンピュータと無線リンクを構成する所定の通信インターフェースとを組み合わせて構成されているが、このコンピュータの記憶手段内に各フローに対するパケットレートのテーブルを構築することが好適である。特に、上記パケットレートの上限値はこのテーブルに格納しておき、上記コンピュータのプロセッサが、この上限値を読み取るのである。そして、この上限値を超えないように各無線リンクのための他通信インターフェースを制御することによって、各フローの帯域を制御(制限)することが可能となる。帯域の制限・制御自体は従来の装置で広く行われてきたことであるので、そのように通信インターフェースを制御するソフトウェアを構築して上記プロセッサに実行させることは当業者であれば容易である。
【0069】
さて、以上のような動作で、フローの公平な割り当てが可能となる。具体的なアルゴリズムを次に述べる。
【0070】
3.2.パケットレートの上限値設定のアルゴリズム
次に、上述したネットワークマネージャ20におけるパケットレート上限値設定のアルゴリズムを説明する。
【0071】
(1)ネットワークマネージャ20はフロー管理テーブル22を持ち、中継基地局Rおよびレート制限装置Lから報告された情報を管理する。
【0072】
ネットワークマネージャ20も所定のコンピュータと通信インターフェースとを組み合わせて構成されている。そのコンピュータの記憶手段内に各動作を実行するソフトウェアを格納し、上記コンピュータのプロセッサにこのソフトウェアを実行させることによって、下記の各種動作を実現している。なお、図3で示したネットワーク10に対するフロー管理テーブル22の例が図5に示す.このフロー管理テーブルも、ネットワークマネージャ20のコンピュータ部分の記憶手段内に構築することが好適である。
【0073】
(2)ネットワークマネージャ20は下記のポリシーにより各フローへのパケットレート上限値を設定する。
【0074】
(2−1)まず、非競合フローについてはパケットレートの上限値を設定しない.
(2−2)競合フローについては、 同じリンクを使用する他の全てのフローとの 間で、フローが属するユーザペアの総パケットレートを比較する。その 結果に応じて以下の3通りの設定を行う。
【0075】
(2−2−1)着目するフローのユーザペアの総パケットレートが、他のユー ザペアと比較して最小であれば、そのフローのパケットレート の上限値を今の値よりもα(bit/sec)だけ上げる。
【0076】
(2−2−2)着目するフローのユーザペアの総パケットレートが、他の全て のユーザペアと同じであれば、そのフローのパケットレートの 上限値は変更しない。
【0077】
(2−2−3)上述した(2−2−1)、(2−2−2)以外の場合は、その フローのパケットレートの上限値を今の値よりもα(bit/ sec)だけ下げる。
【0078】
ここで、総パケットレートとは、そのユーザペアに属する全てのフローのパケットレートの合計値である。上述したように、本ネットワークでは、送信端末と受信端末との間のフローは、1個だけでなく2個以上でもかまわない。このような場合、総パケットレートとは、送信端末・受信端末のペアの間に設けられている全てのフローのそれぞれのパケットレートの合計である。つまり、総パケットレートは、そのユーザペア(送信端末・受信端末)の間の実質的なパケットレートとも言うべきものである。
【0079】
さて、上述した動作をフローチャートの形で書くと図6の通りとなる。ネットワークマネージャ20は、図5に示すフロー管理テーブル22の各フロー毎に、以下の処理を実行する。
【0080】
まず、図6のステップS6−1において、ネットワークマネージャ20は、着目しているフローが競合フローか、非競合フローかを判断する。競合フローである場合は、ステップS6−2に処理が移行し、非競合フローである場合は、後述するステップS6−4に処理が移行する。
【0081】
次に、ステップS6−2においては、着目しているフローと帯域を競合している他のフローとの間で、ユーザペアの総パケットレートを比較する。
【0082】
ステップS6−3においては、上記比較の結果、着目しているフローのユーザペアの総パケットレートが、他のすべてのフローのユーザペアのそれと等しい場合は、ステップS6−4に処理が移行する。等しくない場合は、後述するステップS6−5に処理が移行する。
【0083】
ステップS6−5においては、着目しているフローのユーザペアの総パケットレートが、他のフローのユーザペアのそれと比較して最小か否か検査を行う。その結果、最小であれば、後述するステップS6−6に処理が移行し、最小でなければステップS6−7に処理が移行する。
【0084】
ステップS6−6においては、その着目しているフローのパケットレートの上限を所定量α(bit/sec)だけ増加させる。
【0085】
一方、ステップS6−7においては、その着目しているフローのパケットレートの上限を所定量α(bit/sec)だけ減少させる。
【0086】
以上のような処理によって、それぞれのフローに設定されていパケットレートを適宜更新していくのである。この結果、最終的には、各ユーザペアの総パケットレートの差が徐々に少なくなり、公平なレートの割り当てが実現される。
【0087】
ここでは、説明をわかりやすくするために、一つのフローが他のフローと帯域を競合するリンクが経路上で1つのみである場合について説明した。しかし、一般には経路上の2つ以上のリンクで、各々異なるフローと帯域を競合する場合があり得る。この場合は、各競合しているリンクのそれぞれに対して上述した処理を行い、その結果算出された上限値の中で最も低い値を、そのフローへのパケットレートの上限値とする。
【0088】
4.動作例
動作の具体的な例を図7に基づき説明する。図7には、無線メッシュ網10で通信を行うユーザペアが、S1−D1、S2−D2、S3−D3、S4−D4の4種類が存在する例が示されている。
【0089】
それぞれのユーザペアに対して、図7中の太い矢印で示すように2本、1本、2本、1本のフローが設定され、通信をそれぞれ開始している。説明をわかりやすくするために、各フローには”S1−E1−R1−R2−E5−D1”という形で、フローが経由するノードを順に並べたものを識別子として与える。
【0090】
この時、当初、各フローのスループット(パケットレート)は図7中の矢印の横に示した値となっている。
【0091】
このような初期状態に対して、上述した3.発明方式の概要の3.2で述べた手順に沿って、本発明におけるパケットレート上限値設定の動作の例を示そう。
【0092】
(1)フロー管理テーブルの作成
まず、上述したように、ネットワークマネージャ20は、各中継基地局Rから報告されてきた情報に基づき、上述したようにフロー管理テーブルを作成する。ここで、作成されるフロー管理テーブルは、図5に示されているとおりである。つまり、図7のメッシュ網10において、最初に作成されるフロー管理テーブルは図5と同一である。
【0093】
この図5に示すように、フロー管理テーブルは、各フローの情報が格納されている。例えば、図5に示すように、ユーザペア(S2,D2)に対しては、フローは1種のみ設定されており、その経路は、S2−E2−R3−R4−E6−D2である。このうち、R3−R4のリンクが他のフロート競合している。競合している他のフローは2種存在する。その一つは、ユーザペア(S1、D1)の第2フロー(S1−E1−R3−R4−E5−D1)であり、二つ目は、ユーザペア(S3、D3)の第1フロー(S3−E3−R3−R4−E7−D3)である。
【0094】
なお、図5のフロー管理テーブルにおいて、「パケットレート」はパケットレートの上限値を表している。
【0095】
このフロー管理テーブルは、ネットワークマネージャ20上の記憶装置上に配置される。例えば、ハードディスク装置・半導体記憶装置等が好適である。
【0096】
(2)各フローへのパケットレート上限値の設定
上記(1)で作成した、フロー管理テーブル中の各値に基づき、ネットワークマネージャ20は、パケットレート上限値を以下のように決定していく。
【0097】
(2−1)まず、非競合フローであるS1−E1−R1−R2−E5−D1のフローに対しては、上限値を設定しない.設定しないとは、そのリンクの物理的な上限を設定することを意味する。図5のフロー管理テーブルにおいては、物理的な上限である「R」を設定・記入している(図5参照)。
【0098】
(2−2)次に、リンクR3−R4では、上述したように、3種のフローが競合している。この中で、ユーザペアの総パケットレートが最小であるフローは、ユーザペア(S2,D2)のS2−E2−R3−R5−E6−D2であるので、この最小のフローに関しては、上限値を現在のパケットレート+α(bit/sec)と設定する。一方、残りの他の2つのフローについては、上限値を現在のパケットレート−α(bit/sec)と設定する。
【0099】
ここで、αは、パケットレートの上限(R)より十分に小さい値とするが、小さすぎればパケットレートの公平な割り当てに至るまでの時間が長くなるので、物理的な上限値Rの数%〜数10%程度に設定することが好ましいが、用途・目的に応じて適切な値に随時設定することが可能である。また、αの値はその絶対値を動的に変化させても好適である。
【0100】
同様にして、リンクR5−R6では2つのフローが競合しており、各々のリンクへのパケットレートの上限値の設定は、R3−R4の場合と同様に行う.
以上のような処理を各フローに対して行った結果、フロー管理テーブルの内容は、図8のように変化する。ネットワークマネージャ20はこのフロー管理テーブル結果を各レート制限装置Lに通知する。すなわち、ネットワークマネージャ20は、フロー管理テーブル内の各フローのパケットレートの上限値(図8のテーブルの「パケットレート」で表されている)を、各レート制限装置Lに通知し、各レート制限装置Lは、内部でこの値を記憶し、各フローに対してこのパケットレート上限値を適用するのである。
【0101】
ネットワークマネージャ20が、以上のような処理を周期的に行うことによって、各フローに割り当てられるパケット上限値は、各フローに対して均一化され、最終的には公平な値が割り当てられるのである。
【0102】
このアルゴリズムが動作すれば、各フローのパケットレートは最終的に図9に示すような値に到達する。すなわちユーザペア(S1、D1)がパケットを送出できるフローは実質的に非競合フローのみとなり、リンクの帯域を競合するフローをもつ他の3つのユーザペア(S2、D2)、(S3、D3)、(S4、D4)については、総パケットレートが全て等しくなる。
【0103】
これは、上述したアルゴリズムが、割り当てられているパケットレートが他より小さいものは増やされ(+αされ)、それ以外は減らされる(−αされる)ことに基づく。このような処理の結果、各フローのパケットレートは均一となり、公平な割り当てが可能となるのである。
【0104】
レート制限装置による帯域制限の実施方法
さて、レート制限装置Lでは、自らが管理するフローの各々に対してバッファが備えられている。そして、レート制限装置は、所定のフローからパケットを受信するとそれを対応するバッファに一度格納し、バッファから出力するパケットの情報量が上記の動作例で説明した当該フローへのスループット制限を超えないように制御する(制限する)ことで、目的を実現している。
【0105】
バッファは、半導体記憶装置等の記憶手段を用いて構成することが好ましい。いわゆる半導体メモリで構成しても良いし、FIFO等のキューや、その他種々の記憶装置が利用可能である。レート制限装置L内のプロセッサは、上記各フローごとのバッファから出力されるデータ量を監視しており、その値がそのフローに割り当てられたパケットレートに達すると、データ出力を停止させることによって、上記の通り、スループットの制限を行うのである。
【0106】
5.まとめ
以上述べたように、本実施の形態では、以下のようにして各ユーザペアに対して公平なフローを割り当てるように構成することができた。
【0107】
(1)各中継基地局Rが、自己に接続するフローの情報を、ネットワークマネージャ20に送信する。特に、上述したように、そのフローに競合フローか、非競合フローであるのかについて、情報をネットワークマネージャ20に送信する。
【0108】
(2)レート制限装置Lは、自己を通過するパケットレートを測定して、この情報をネットワークマネージャ20に送信する。
【0109】
(2)ネットワークマネージャ20は、上記送信されてきた情報に基づきフロー管理テーブルを構築し、管理している。つまり、送信されてくる情報に基づき、適宜フロー管理テーブルは更新されている。
【0110】
(3)また、ネットワークマネージャ20は、このフロー管理テーブルの内容を定期的に検査し、各フローに割り当てられるパケットレートの上限値を計算して、決定する。決定した上限値もフロー管理テーブルに格納される。
【0111】
(4)ネットワークマネージャ20は、上記計算したパケットレートの上限値をレート制限装置Lに送信する。
【0112】
(5)レート制限装置Lは、送信されてきたパケットレートの上限値を内部に記okするとともに、この上限値で、対応するフローの通信の制限を行う。
【0113】
以上のような手法によって、各ユーザペアに対して公平なフローの割り当てが可能となったものである。
【0114】
5.1 応用例・変形例
(1)上述した本実施の形態では、各リンクは無線リンクであるとし、また、ユーザ端末も無線を利用する例を示したが、通信を行うことができれば、無線には限られず優先による通信を利用した網でも本実施の形態と同様の手法を適用することが可能である。
【0115】
(2)本実施の形態では、基地局Eと、レート制限装置Lとが別体である例を示したが、同一筐体に内蔵しても好適である。この場合は、基地局の交換装置がレート制限装置Lを兼ねる構成とすることが便利であろう。
【0116】
(3)レートの変化量である上記αは、用途に応じて種々の値を採用することが可能である。実際のフローのレートに比べて十分に小さい値とすることも好適であるし、リンクの物理的な上限値より十分に値にすることもまた好適である。
【0117】
(4)また、フローのパケットレートの大きさに応じて、αの値を変化させることも好適である。フローのパケットレートが大きい場合は、αも大きくし、フローのパケットレートが小さい場合は、それに応じてαも小さくすることが好適である。
【0118】
(5)さらに、各フローのパケットレートの差が大きい場合は、このαも大きく設定し、フローのパケットレート差が小さくなってきた場合は、αも小さな値にすることも好適である。差が大きい場合は、大きなαで迅速にパケットレートの差を小さくし、差が大きくない場合は、小さなαで精密に調整することができると考えられる。
【0119】
(6)また、上述した実施の形態では、図6等の処理を周期的に行うとしているが、その周期は、使用する用途・目的に応じて適宜定めればよい。また、中継基地局Rやレート制限装置Lからの報告を受けるたびに、行うことも好適である。
【符号の説明】
【0120】
10 メッシュ網、網
12 基地局
20 ネットワークマネージャ
22 フロー管理テーブル
E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、基地局
R1、R2、R3、R4、R5、R6 中継基地局
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8 レート制限装置
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7 送信端末
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7 受信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、
1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、
前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、
を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワークにおいて、
前記中継基地局装置は、
自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、
を備え、
前記レート制限装置は、
自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定手段と、
前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、
前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限手段と、
を備え、
前記ネットワークマネージャ装置は、
前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定手段と、
前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信手段と、
を含み、
前記上限値設定手段は、前記各フローに対して、
他のフローのリンクと競合していない非競合グローに対しては、前記パケット上限値を設定せず、
他のフローのリンクと競合する競合フローに対しては、以下の3種の動作のいずれかを実行することを特徴とするメッシュ型ネットワーク。
(1)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させる。
(2)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えない。
(3)上記(1)(2)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させる。
【請求項2】
メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、
1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、
前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、
を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で、前記各フローへのパケットレート割り当て方法において、
前記中継基地局装置が、
自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告ステップと、
を実行し、
前記レート制限装置は、
自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定ステップと、
前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告ステップと、
前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限ステップと、
を実行し、
前記ネットワークマネージャ装置は、
前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定ステップと、
前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信ステップと、
を実行し、
前記上限値設定ステップは、以下の3種のステップを含むことを特徴とするパケットレート割り当て方法。
(1)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させるステップ。
(2)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えないステップ。
(3)上記(1)(2)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させるステップ。
【請求項3】
メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、
1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、
前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、
を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワークで用いられる前記ネットワークマネージャ装置において、
前記ネットワークマネージャ装置は、
前記中継基地局装置、及び、前記レート制限装置、から受信した報告に基づき、本ネットワーク上の各フロー毎に、そのパケットレートの大きさの上限値を設定する上限値設定手段と、
前記設定した各上限値を、前記レート制限装置に送信する送信手段と、
を含み、
前記上限値設定手段は、前記各フローに対して、
他のフローのリンクと競合していない非競合グローに対しては、前記パケット上限値を設定せず、
他のフローのリンクと競合する競合フローに対しては、以下の3種の動作のいずれかを実行することを特徴とするネットワークマネージャ装置。
(1)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上で最小であれば、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ増加させる。
(2)その競合フローが属する送信端末と受信端末との間の全てのフローのパケットレートの合計値が、本ネットワーク上の他のユーザペアと同じ値であれば、その競合フローに対するパケット上限値は変えない。
(3)上記(1)(2)以外の場合は、その競合フローに対するパケット上限値を所定のαだけ減少させる。
【請求項4】
メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、
1個又は複数個の前記中継基地局に接続している1個以上のレート制限装置と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、
前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、
を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で用いられる前記中継基地局装置において、
自己に接続するフローが利用するリンクが、他のフローが利用する前記リンクと競合しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、
を備えることを特徴とする中継基地局装置。
【請求項5】
メッシュ型に接続され、他の中継基地局装置との間でリンクを張る複数の中継基地局装置群と、
1個又は複数個の前記中継基地局装置に接続している1個以上のレート制限装置と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、データを送信する送信端末と、
いずれかの前記レート制限装置に接続され、前記送信端末が送信するデータを受信する受信端末と、
前記中継基地局装置と接続されるネットワークマネージャ装置と、
を備え、前記送信端末と前記受信端末間にフローが設定されることによって、前記データの送信を行うネットワーク上で用いられる前記レート制限装置において、
自己を通過するフローのパケットレートを測定する測定手段と、
前記測定結果を、前記ネットワークマネージャ装置に報告する報告手段と、
前記ネットワークマネージャ装置から送信されてきたパケットレートの上限値に基づき、自己を通過するフローのパケットの送信を制限する制限手段と、
を備えることを特徴とするレート制限装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−160123(P2011−160123A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19189(P2010−19189)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年、総務省委託「戦略的情報通信研究開発推進制度地域ICT振興型研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599016431)学校法人 芝浦工業大学 (109)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【出願人】(504141425)ナシュア・ソリューションズ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】