説明

メモリカード用コネクタ及び該メモリカード用コネクタを備えた携帯端末

【課題】小型かつ低背のコネクタにおいてスライダをハウジングに対して回転可能とした場合であっても、スライダを円滑に動作させることが可能であり、しかもスライダの案内部材である案内突部が摩耗し難いメモリカード用コネクタ及び該メモリカード用コネクタを備えた携帯端末を提供する。
【解決手段】スライダ40の下面に形成した単一の案内突部41が互いに平行な一対の側面を有し、ハウジングの下面に形成した単一の案内溝29が、スライダが非導通位置を除く位置に位置するときに案内突部が係合する移動案内部29aと、スライダが非導通位置に位置するときに案内突部が係合する回転許容部29bと、を有し、スライダを係合部44がメモリカードMCの被係合部MC3に係合する方向に回転付勢する付勢手段S1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、microSDカード等のメモリカード用のコネクタ及び該メモリカード用コネクタを備えた携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のメモリカード用コネクタの従来技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
このメモリカード用コネクタは、メモリカードを挿脱可能に受け入れる収納部を備えるハウジングと、収納部内をメモリカードと一緒にスライドしかつメモリカードの側縁部に形成した凹部と係脱可能な爪部を有するスライダ(イジェクト部材)と、を備えている。収納部の底面には、収納部に挿入したメモリカードの端子と電気的に導通可能な多数のコンタクトが設けてある。また、スライダはメモリカードの端子とハウジングのコンタクトが非接触となる非導通位置と、端子とコンタクトが接触する導通位置とに移動可能である。
ハウジングの底面には前後一対のガイド孔が前後方向に並べて形成してある。一方のガイド孔はスライダのスライド方向と平行な直線溝であり、他方のガイド孔は一部が該スライド方向と平行な直線部で、残りの部分が該直線部より広幅の回転許容部となっている。一方、スライダの底面には、一対のガイド孔にそれぞれ移動可能に嵌合する前後一対の案内ピンが突設してある。さらに、ハウジングの底面には所謂ハートカム溝が形成してあり、このハートカム溝にはカムバーの一端が移動可能に係合しており、カムバーの他端はスライダに回転可能に接続している。さらにハウジングとスライダの間には、スライダを導通位置側から非導通位置側に向けて付勢するコイルスプリングが設けてある。そのため、メモリカードを挿入しないときスライダは非導通位置に位置し、一方の案内ピンが上記他方のガイド孔の回転許容部に係合する。
【0003】
メモリカードをハウジングに挿入すると、メモリカードがスライダの爪部を押圧することにより一方の案内ピンが上記回転許容部内を回転し、スライダが非導通位置において回転するので、メモリカードはスライダの爪部を乗り越えてハウジングの奥側に進入する。そして、メモリカードが爪部を乗り越えた直後にコイルスプリングの付勢力によって元の位置に回転復帰したスライダの爪部がメモリカードの上記凹部に係合するので、スライダはメモリカードと一緒に導通位置までスライドする。
スライダが導通位置まで移動すると、カムバーの一端とハートカム溝の係合位置が変化し、ハートカム溝がカムバーを当該位置に保持するので、メモリカードに対する挿入力を解除した後もスライダは導通位置に保持される。
この状態でメモリカードをさらにハウジングの奥側に押し込むと、カムバーの一端とハートカム溝の係合位置がさらに変化し、ハートカム溝がカムバーの保持を解除するので、コイルスプリングの付勢力によってスライダが非導通位置に移動復帰し、メモリカードはハウジングから脱出可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4118633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のメモリカード用コネクタは、ハウジングの一方の案内孔にスライダの一方の案内ピンを係合し、ハウジングの他方の案内孔にスライダの他方の案内ピンを係合することにより、スライダをハウジングに対して移動案内している。
しかし、対をなす案内孔や案内ピンによるスライド機構を採用すると、スライダは一対の案内ピン間の距離より長くはスライドできなくなるので、スライダは自分自身の長さ以上に可動できない。
また、一方の案内ピンが上記回転許容部内を回転するときのスライダの回転角度は、他方の案内ピンと他方のガイド孔(直線溝)によって規制されるため大きくすることができない。
さらに、メモリカード用コネクタは1万回程度と非常に多くの挿脱回数を保証しなければならないが、特許文献1のコネクタにおいては円柱形状の案内ピンと案内孔の接触面積が小さいため、挿脱回数が多くなると案内ピンが磨耗して形状が変わったり、案内ピンが小さい場合は案内ピンそのものが削れてなくなり、スライダの動作に支障をきたす虞があった。
【0006】
本発明の目的は、小型かつ低背のコネクタにおいてスライダをハウジングに対して回転可能とした場合であっても、メモリカードの挿脱回数が多い場合においてもスライダを円滑に動作させることが可能であり、しかもスライダの案内部材である案内突部が摩耗し難いメモリカード用コネクタ及び該メモリカード用コネクタを備えた携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のメモリカード用コネクタは、側縁部に被係合部を有するメモリカードを挿脱可能な収納部、及び、該収納部に挿入したメモリカードの端子と電気的に導通するコンタクト、を有するハウジングと、上記被係合部と係脱する係合部を有し、該係合部が上記被係合部と係合した状態で上記メモリカードと一緒に上記収納部内をスライドし、上記端子と上記コンタクトが非接触となる非導通位置と、上記端子とコンタクトが接触する導通位置とに移動可能なスライダと、上記スライダにおける上記ハウジングの上面と下面の少なくとも一方との対向面に形成した単一の案内突部と、上記ハウジングの上面と下面の少なくとも一方に形成した、上記案内突部が移動可能に係合することにより、上記スライダを上記非導通位置と導通位置の間で移動案内する単一の案内溝と、を備え、上記案内突部が互いに平行な一対の側面を有し、上記案内溝が、上記スライダが上記非導通位置を除く位置に位置するときに上記案内突部が係合する該案内突部と同幅かつ直線形状の移動案内部と、上記スライダが上記非導通位置に位置するときに上記案内突部が係合する、該案内突部より広幅で、該案内突部が上記係合部を被係合部に係合させる方向と係合を解除させる方向とに回転するのを許容する回転許容部と、を有し、上記ハウジングとスライダの間に、該スライダを上記係合部が被係合部に係合する方向に回転付勢する付勢手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
上記ハウジングが、上部ハウジングと下部ハウジングを備えるのが好ましい。
【0009】
上記スライダの上下両面が、上記ハウジングの上下両面にそれぞれ接触するのが好ましい。
【0010】
一端部が上記スライダに回転可能に支持されると共に他端部が上記収納部の底面に形成したハートカム溝に係合し、該ハートカム溝との係合位置を変化させることにより上記スライダの上記導通位置への保持及び該保持の解除を行うカムバーを備えるのが好ましい。
【0011】
上記スライダにおける上記カムバーの回転支持部から外れた位置を上記付勢手段が付勢し、上記ハウジングに、上記非導通位置に位置するスライダが上記係合部が被係合部と係合可能な位置まで回転したときに、該スライダに接触してスライダの該回転位置を保持する回転ストッパ面を形成するのが好ましい。
【0012】
いずれのメモリカード用コネクタも携帯端末に搭載可能である。
【発明の効果】
【0013】
ハウジングとスライダに一対の案内突部と一対の案内溝をそれぞれ形成する場合は、コネクタを小型化するとスライダの移動可能距離が短くなり(一対の案内突部間の距離以下となる)、かつメモリカードの挿脱回数が多くなるとスライダの動作が不円滑になるおそれがあるが、本発明のメモリカード用コネクタは案内突部と案内溝がそれぞれ一つであるため、そのような問題が生じる余地がない。即ち、コネクタを小型化した上でスライダの移動可能距離を長くすることできるとともに、挿脱回数が多くなってもスライダを安定して円滑に動作させることが可能である。
また、非導通位置で案内突部自体が案内溝内で回転できるため、スライダの回転角度を大きくすることができる。そのため、メモリカード挿脱の作業性に優れた小型のコネクタを提供できる。
さらに、案内突部がスライダの移動方向と平行な一対の側面を有し、かつ、案内溝の移動案内部が案内突部と同幅なので、案内突部と案内溝がそれぞれ一つであるにも拘わらず、非導通位置を除く位置においてスライダを回転やがたつかせることなく円滑に移動案内できるため、メモリカードをハウジング内に確実に保持できる。
しかも、案内突部の両側面が案内溝の移動案内部の両側面と平行な平面なので、案内突部を移動案内部に対してスライドさせても案内突部は摩耗し難く変形もしない。そのため、スライダを繰り返しスライド動作させても、スライダの動作が不円滑になるおそれは低い。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、スライダとハウジングの摩擦抵抗を低減できるとともに上下方向のがたつきを抑えられることから、スライダの動きがより安定する。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、簡単な構成により、スライダを導通位置と非導通位置に移動させることができると共に、スライダの導通位置での保持及び該保持の解除を行えるようになる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、スライダが非導通位置に位置するときに、付勢手段の付勢力によってスライダは係合部がメモリカードの被係合部と係合する方向に絶えず回転付勢されるので、スライダは回転支持部回りに回転する。そのため、非導通位置に位置するときのスライダによるメモリカードの保持力が高まり、かつ、スライダの係合部がメモリカードの被係合部に係合したときに良好なクリック感が得られる。
また、メモリカードを排出する際に付勢手段による付勢力によりメモリカードがコネクタから飛び出して脱落してしまうことを防止できる。
さらに、メモリカードの非装着時においてもスライダが動いたりがたついてしまうことがないので、コネクタが搭載された携帯端末等のアプリケーションを振ったり持ち運ぶ際にコネクタから異音を発することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタとmicroSDカードの斜視図である。
【図2】コネクタの分解斜視図である。
【図3】スライダの平面図である。
【図4】スライダの下側から見た斜視図である。
【図5】下部ハウジングの平面図である。
【図6】上部ハウジングを省略して示すコネクタとmicroSDカードの斜視図である。
【図7】圧縮コイルばねを省略して示す図6のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】microSDカードをコネクタ内に挿入した初期状態の様子を上部ハウジングを省略して示す平面図である。
【図9】図8と同じ状態のときのコネクタとmicroSDカードの底面図である。
【図10】microSDカードをコネクタ内にさらに挿入することによりスライダが回転したときの図8と同様の平面図である。
【図11】図10と同じ状態のときの図9と同様の底面図である。
【図12】スライダの係合凸部とmicroSDカードの係合凹部が係合したときの図8と同様の平面図である。
【図13】図12と同じ状態のときの図9と同様の底面図である。
【図14】スライダが導通位置に達したときの図8と同様の平面図である。
【図15】図14と同じ状態のときの図9と同様の底面図である。
【図16】変形例の図8と同様に平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、上下、及び左右の方向は図1等に記載した矢印の方向を基準としている。
図2等に示すように本実施形態のコネクタ10はmicroSDカードMC用のコネクタであり、例えば携帯電話、PDA、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯音楽端末等に実装可能である。
コネクタ10は大きな構成要素として下部ハウジング15、スライダ40、カムバー50、上部ハウジング60、及び、圧縮コイルばね(付勢手段)S1を具備している。
平面視略矩形の下部ハウジング15は、絶縁性の合成樹脂料からなる一体成形品であり、後部壁16、左側壁17及び右側壁18で囲まれた部分は前面及び上面が開放された収納部19となっている。下部ハウジング15の底面には左右方向に並ぶ計8本のコンタクト20が一列に設けてある。各コンタクト20の前半部は収納部19内に位置しており、各コンタクト20の前端部は接触端部20aとなっている。また、各コンタクト20の後端部は後部壁16を後方に貫通するテール部21となっており、各テール部21は図示を省略した回路基板の回路パターンに半田付けしてある。さらに、左側壁17と右側壁18の外側面には各々に3つの係合突起22が突設してある。
下部ハウジング15の底面の後側の右角部近傍には、右側壁18と平行をなすと共にその後端が後部壁16に接続する後部隔壁24が突設してある。さらに、下部ハウジング15の前縁の右端部には右側壁18の前端部に接続する前側端部壁25が突設してあり、右側壁18、前側端部壁25、後部隔壁24及び後部壁16の右端部で囲まれた部分がばね収容空間26となっている。後部壁16の右端部の前面には前方に向かって延びる支持軸27が突設してあり、収容空間26の底面には前後方向に延びる摺接用リブ28が突設してある。
下部ハウジング15の底面には、ばね収容空間26の左側に位置し、かつ前後方向に延びる案内溝29が貫通溝として形成してある。案内溝29は、左右両側面が共に前後方向に直線的に延びる(互いに平行である)平面をなす移動案内部29aと、移動案内部29aの前端に連なり、かつ移動案内部29aより左右幅が広い台形形状をなす案内許容部29bと、を有している。
下部ハウジング15の底面部の案内溝29の直後に位置する部分には、平面視で略ハート形状をなすハートカム溝30が凹設してある。ハートカム溝30はハート形凸部31の周囲に凹設した多数の段差を有する溝であり、その前端部をなす初期係合部30aと、ハート形凸部31の右側に位置する押し込み時通過部30bと、ハート形凸部31の後端部に位置する保持部30cと、ハート形凸部31の左側に位置する戻り時通過部30dとを有している。
左側壁17にはテール部(図示略)を有する第1スイッチ端子33が一体的に設けてある。左側壁17の前後方向の中間部に凹設した取付溝32には、第1スイッチ端子33の内側に位置する第2スイッチ端子34が嵌合固定してある。第2スイッチ端子34の後端部近傍には右側に向かって突出する被押圧部35が突設してあり、外側面の後端部には突起36が突設してあり、かつ前端部にはテール部37が形成してある。第1スイッチ端子33のテール部(図示略)と第2スイッチ端子34のテール部37は共に、上記回路基板の検知用回路パターンに半田付けしてある。
【0019】
合成樹脂材による成形品であるスライダ40の下面には、案内溝29の移動案内部29aと略同幅かつ移動案内部29aより前後長が短い案内突部41が突設してある。案内突部41の左右両側面は移動案内部29aの両側面及び案内許容部29bの左側面と平行な平面であり、案内突部41の左右幅は案内許容部29bより狭い。案内突部41は案内溝29に摺動可能に嵌合しているので、スライダ40は移動案内部29aに沿って下部ハウジング15の底面上をスライド可能である。さらに、案内突部41が案内突部41より広幅である案内許容部29b内に位置すると、案内突部41(スライダ40)は案内許容部29bに対して回転可能となる。案内突部41が移動案内部29a内の所定位置に位置するときのスライダ40の位置が導通位置(図14及び図15の位置)であり、案内突部41が案内許容部29b内に位置するときのスライダ40の位置が非導通位置(図6〜図13の位置)である。スライダ40の左端部にはメモリカード係合部42が設けてあり、メモリカード係合部42の前端部の左側面は前後方向及び左右方向に対して略45°の角度で傾斜する傾斜面43となっている。また、スライダ40の前端部には左方に向かって突出する係合凸部(係合部)44が突設してある。スライダ40の右端部の後面には、案内突部41を案内溝29に係合したときにばね収容空間26内に位置する支持軸45が後方に向けて突設してある。ばね支持軸45とばね支持軸27には自由状態から圧縮された圧縮コイルばねS1の前後両端部がそれぞれ嵌っているので、スライダ40に圧縮コイルばねS1以外の外力を掛けない状態においてスライダ40は上記非導通位置に位置する。
スライダ40の後端部の上面にはばね支持軸45から収納部19側にオフセットした位置に支持用凹部(回転支持部)46が下向きに凹設してある。さらに、スライダ40の上面には(案内突部41が移動案内部29aに係合するときに)前後方向に延びかつ長さがそれぞれ異なる3つの摺接リブ47が突設してあり、スライダ40の下面には摺接リブ47と平行でかつ長さがそれぞれ異なる3つの摺接リブ48が突設してある。案内突部41を案内溝29に係合すると、各摺接リブ48は下部ハウジング15の底面にスライド可能に接触し、かつスライダ40の底面(摺接リブ48とは別の箇所)が下部ハウジング15の摺接用リブ28にスライド可能に接触する。
【0020】
カムバー50は、下部ハウジング15の底面に形成したハートカム溝30とスライダ40を連係する部材である。即ち、カムバー50はその前後両端部に下向きに屈曲する前端係合突部51と後端係合突部52を有しており、前端係合突部51はスライダ40の支持用凹部46に回転可能に支持され、後端係合突部52はハートカム溝30に相対移動可能に係合している。
このようにスライダ40、圧縮コイルばねS1、及び、カムバー50を収納する下部ハウジング15の上部は、金属板のプレス成形品であり下部ハウジング15とハウジングを構成する上部ハウジング(シェル)60によって覆われている。上部ハウジング60の側壁には複数の係合孔61が形成してあり、さらに上部ハウジング60の前端には下向きの嵌合突部62が突設してある。そして、各係合孔61に下部ハウジング15の対応する係合突起22を嵌合し、嵌合突部62を下部ハウジング15の前側端部壁25に凹設した嵌合凹部23に嵌合することにより、上部ハウジング60を下部ハウジング15に装着している。上部ハウジング60を下部ハウジング15に装着すると、スライダ40の各摺接リブ47が上部ハウジング60の天井面に接触する。また、上部ハウジング60の左右の側壁の下端部にはそれぞれ2つのテール部63が突設してあり、これらテール部63は上記回路基板の接地パターンに半田付けしてある。
図1及び図2に示すように、上部ハウジング60の上面の後端の右側角部近傍には、上記プレス成形によって上部ハウジング60の成形時に同時に成形した片持ち式の板ばね64が設けてある。この板ばね64はカムバー50を常に下部ハウジング15の底面側(下向き)に押圧する付勢手段である。
【0021】
次に以上構成のコネクタ10にmicroSDカードMCを挿脱するときの動作について説明する。
microSDカードMCは、その右側縁部の後部に係合突部MC1を有し、係合突部MC1の後面は当接傾斜面MC2となっている。また、microSDカードMCの右側縁部には係合突部MC1の直前に位置する係合凹部(被係合部)MC3が凹設してあり、microSDカードMCの下面には8つの端子MC4が形成してある。
図1に示すようにコネクタ10にmicroSDカードMCを挿入していない状態においては、図6及び図7に示すようにスライダ40は上記非導通位置に位置している。さらに、圧縮コイルばねS1の軸(ばね支持軸27)から左側にオフセットした位置でカムバー50の前端係合突部51と支持用凹部46が回転可能に係合しているため、スライダ40は圧縮コイルばねS1から平面視で時計方向の回転付勢力を受けている。そのため、スライダ40の案内突部41の左側面が案内許容部29bの左側面(回転ストッパ面)に接触するので(図13参照)、スライダ40は各摺接リブ47、48が前後方向を向く回転位置に保持されている。また、カムバー50の後端係合突部52はハートカム溝30の初期係合部30aに係合している(図6及び図7参照)。
この状態でmicroSDカードMCをコネクタ10の前面開口部から収納部19内に挿入し後方に押し込むと、microSDカードMCの係合突部MC1の当接傾斜面MC2がスライダ40の係合凸部44に接触し、支持用凹部46を回転中心としてスライダ40を平面視で反時計方向に回転付勢する。すると、図9に示すようにそれまで移動案内部29aと平行だった案内突部41が案内許容部29b内で回転するので、図8に示すようにスライダ40が平面視で反時計方向に回転する。microSDカードMCをさらに後方に押し込むと、図11に示すように案内突部41が案内許容部29b内でさらに回転するので、図10に示すようにスライダ40が平面視で反時計方向にさらに回転し、かつ係合突部MC1の側面が係合凸部44の側面に接触する。microSDカードMCをさらに後方に押し込むと、図12に示すように係合突部MC1が係合凸部44を乗り越えてスライダ40の係合凸部44とメモリカード係合部42の間の凹部に嵌合し当接傾斜面MC2と傾斜面43が当接しかつ係合凸部44が係合凹部MC3と係合するので、圧縮コイルばねS1の付勢力によってスライダ40が平面視で時計方向に回転する。そのため、スライダ40の摺接リブ47及び摺接リブ48が再び前後方向を向き、かつ図13に示すように案内突部41の後部が移動案内部29aの前端部に係合し、かつ案内突部41の左側面が案内許容部29bの左側面に接触する。
このようにmicroSDカードMCの係合突部MC1がスライダ40の凹部に係合することによりmicroSDカードMCがスライダ40と一体化した後にmicroSDカードMCをさらに後方に押圧すると、初期係合部30aの前端に係合していたカムバー50の後端係合突部52が初期係合部30a及び押し込み時通過部30bに係合しながら後方に移動するので、カムバー50及びスライダ40が下部ハウジング15に対して後方に直線的にスライドする。そして、後端係合突部52が押し込み時通過部30bの後端部(ハート形凸部31の後方に位置する部分)まで移動した後にmicroSDカードMCに対する後方への押圧力を解除すると、圧縮コイルばねS1の付勢力によって前方に押圧されたカムバー50の後端係合突部52がハートカム溝30の保持部30cに係合するのでカムバー50の前方移動が規制される。そのため、スライダ40が図14及び図15に示す導通位置に保持され、各端子MC4が対応するコンタクト20の接触端部20aに接触することにより電気的に導通する。
さらに、スライダ40が導通位置まで移動すると、microSDカードMCの前端部の左側面が第2スイッチ端子34の被押圧部35を左側に押圧するので、突起36が第1スイッチ端子33の右側面の前端部に接触する。すると、上記回路基板に形成した検知用回路パターンを通してコネクタ10を実装した電子機器(携帯電話、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等)の制御部に検知信号が送られるので、該制御部がmicroSDカードMCとコンタクト20が電気的に導通したことを検知する。
【0022】
カムバー50の後端係合突部52と保持部30cによってスライダ40を導通位置に保持した状態で、スライダ40を再度圧縮コイルばねS1による前向きの付勢力に抗して後方に押し込み、さらにmicroSDカードMCに対する後方への押圧力を解除すると、圧縮コイルばねS1による前向きの付勢力により後端係合突部52が保持部30cから離れて戻り時通過部30d側に移動し、戻り時通過部30dを通って初期係合部30aの前端まで自動的に移動する。従って、スライダ40は図12及び図13に示す非導通位置に復帰し、microSDカードMCの端子と各コンタクト20の接触が解除される。さらに、microSDカードMCの前端部の左側面が第2スイッチ端子34の被押圧部35から離れ、第2スイッチ端子34の突起36が第1スイッチ端子33の右側面の前端部から離れるので、microSDカードMCとコンタクト20が非導通状態になったことを上記電子機器の制御部が検知する。
このようにスライダ40が非導通位置に復帰した後に、microSDカードMCを手で掴んでさらに前方に引き出せば、係合突部MC1がスライダ40の係合凸部44を前方に押圧しスライダ40が平面視で反時計方向に回転する。すると、係合突部MC1が係合凸部44を前方に乗り越えるので、microSDカードMCをコネクタ10から前方に取り出すことができる。microSDカードMCを取り出すと、スライダ40は圧縮コイルばねS1の付勢力によって図6の位置まで再び回転する。
【0023】
以上説明したように本実施形態では、下部ハウジング15に形成した案内溝29とスライダ40に形成した案内突部41が共に一つであるため、特許文献1のコネクタのようにハウジングとスライドに一対の案内突部と一対の案内溝をそれぞれ形成する場合のような問題が生じる余地がない。即ち、コネクタ10を小型化した上でスライダ40の移動可能距離を長くすることできる。
さらに、案内突部41がスライダ40の移動方向(移動案内部29aの延長方向)と平行な一対の側面を有し、かつ、案内突部41が案内溝29の移動案内部29aと同幅なので、案内突部41と案内溝29がそれぞれ一つであるにも拘わらず、非導通位置を除く位置においてスライダ40を回転やがたつくことなく円滑に移動案内でき、かつmicroSDカードMCをハウジング(下部ハウジング15及び上部ハウジング60)内に確実に保持できる。
特に、microSDカードMC挿入状態(図14、図15)においては一般ユーザーがmicroSDカードMCを無理に引き抜いてしまおうとする誤操作、所謂無理抜き操作をする虞があるが、スライダ40の案内突部41が移動案内部29aにより回転が規制されているため、microSDカードMCが容易に抜ける虞がない。また、案内突部41を長く形成できるため案内部41の破損を抑止できる。
しかも、案内突部41の両側面が移動案内部29aの両側面と平行な平面なので、案内突部41を移動案内部29aに対してスライドさせても案内突部41の側面は摩耗し難い。そのため、スライダ40を繰り返しスライド動作させても、スライダ40の形状が変化したり動作が不円滑になるおそれは低い。
また、スライダ40の案内突部41自身が回転許容部29b内で回転することから、スライダ40の回転角度を大きくすることが可能となる。これにより、小型のコネクタ10においても、microSDカードMCの挿脱作業性を良好にできる。
さらに、スライダ40の上下両面に形成した摺接リブ47と摺接リブ48が下部ハウジング15の底面と上部ハウジング60の天井面にそれぞれ接触するので、スライダ40を下部ハウジング15及び上部ハウジング60に対して安定した状態でスライドさせることが可能である。
しかも、スライダ40が非導通位置に位置するときに、圧縮コイルばねS1がスライダ40の回転中心である支持用凹部46から右側にずれた位置を前方に移動付勢することによりスライダ40を平面視で時計方向に回転付勢しているので、スライダ40には常にスライダ40の上記凹部とmicroSDカードMCの係合突部MC1が係合する方向の回転モーメントが生じる。そのため、非導通位置に位置するときのスライダ40によるmicroSDカードMCの保持力が高まるので、スライダ40の上記凹部がmicroSDカードMCの係合突部MC1に係合したときに良好なクリック感を得ることが出来る。また、microSDカードMCの排出の際に圧縮コイルばねS1による付勢力でmicroSDカードMCが勢い良くコネクタ10から飛び出して脱落してしまうことを抑止できる。さらには、microSDカードMCが装着されていな状態においてもスライド40は絶えず回転モーメントを受けているため動いたりがたつくことはなく、それゆえコネクタ10が搭載された携帯端末等のアプリケーションを振ったり持ち運ぶ際にコネクタ10から異音を発することを防止できる。
【0024】
本発明は本実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、図16に示すように、下部ハウジング15の右側壁18の前端部の内面に圧縮コイルばねS2の右端部を固定してもよい。このようにすると、スライダ40が導通位置に位置するときはスライダ40が圧縮コイルばねS2から後方に離間し、スライダ40が非導通位置に移動したときに圧縮コイルばねS2がスライダ40の右側面によって圧縮されるので、圧縮コイルばねS2の左端(自由端)がスライダ40を平面視で時計方向に回転付勢する。このように、圧縮コイルばねS1のみならず圧縮コイルばねS2によってもスライダ40をmicroSDカードMCと係合する方向に回転付勢するので、スライダ40とmicroSDカードMCの係合力を高めることが可能になる。
また、非導通位置に位置するスライダ40が平面視で反時計方向に最も回転したときに(図10の状態になったときに)スライダ40の右側面と右側壁18の内側面の間の隙間をなくすために、右側壁18の内側面の当該部分を左側に出っ張らせて、当該部分によってスライダ40の回転を規制してもよい。このように構成すれば下部ハウジング15の剛性が向上するので、例えばmicroSDカードMCをコネクタ10に対して斜め方向に挿抜することにより、スライダ40と下部ハウジング15の間に大きな力が発生した場合に下部ハウジング15が破損するのを防止できる。
【0025】
また、案内溝29に相当する溝を上部ハウジング60に形成し、スライダ40の上部ハウジング60と対向する面に案内突部41に相当する突部を形成しもよい。さらには、下部ハウジング15と上部ハウジング60の両方に案内溝29に相当する溝を形成し、スライダ40の上下両面に案内突部41に相当する突部を形成してもよい。
さらに、圧縮コイルばねS1や圧縮コイルばねS2を別タイプの付勢手段(例えば引張ばね)によって構成してもよい。
さらに、前側端部壁25とスライダ40の前端との間に、圧縮コイルばねS1よりも付勢力が小さい圧縮コイルばね(ブレーキ用付勢手段)を設けてもよい。
また、本実施形態のコネクタ10はmicroSDカードMC用のものであるが、その他のメモリカード(SDカード、miniSDカード、microSDカード、メモリースティック、xDピクチャーカード、MMC等)用のコネクタとして実施することは勿論可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 コネクタ
15 下部ハウジング
16 後部壁
17 左側壁
18 右側壁
19 収納部
20 コンタクト
20a 接触端部
21 テール部
22 係合突起
23 嵌合凹部
24 後部隔壁
25 前側端部壁
26 ばね収容空間
27 ばね支持軸
28 摺接用リブ
29 案内溝
29a 移動案内部
29b 回転許容部
30 ハートカム溝
30a 初期係合部
30b 押し込み時通過部
30c 保持部
30d 戻り時通過部
31 ハート形凸部
32 取付溝
33 第1スイッチ端子
34 第2スイッチ端子
35 被押圧部
36 突起
37 テール部
40 スライダ
41 案内突部
42 メモリカード係合部
43 傾斜面
44 係合凸部(係合部)
45 ばね支持軸
46 支持用凹部(回転支持部)
47 48 摺接リブ
50 カムバー
51 前端係合突部
52 後端係合突部
60 上部ハウジング(シェル)
61 係合孔
62 嵌合突部
63 テール部
64 板ばね
MC microSDカード(メモリカード)
MC1 係合突部
MC2 当接傾斜面
MC3 係合凹部(被係合部)
MC4 端子
S1 圧縮コイルばね(付勢手段)
S2 圧縮コイルばね(回転付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側縁部に被係合部を有するメモリカードを挿脱可能な収納部、及び、該収納部に挿入したメモリカードの端子と電気的に導通するコンタクト、を有するハウジングと、
上記被係合部と係脱する係合部を有し、該係合部が上記被係合部と係合した状態で上記メモリカードと一緒に上記収納部内をスライドし、上記端子と上記コンタクトが非接触となる非導通位置と、上記端子とコンタクトが接触する導通位置とに移動可能なスライダと、
上記スライダにおける上記ハウジングの上面と下面の少なくとも一方との対向面に形成した単一の案内突部と、
上記ハウジングの上面と下面の少なくとも一方に形成した、上記案内突部が移動可能に係合することにより、上記スライダを上記非導通位置と導通位置の間で移動案内する単一の案内溝と、を備え、
上記案内突部が互いに平行な一対の側面を有し、
上記案内溝が、上記スライダが上記非導通位置を除く位置に位置するときに上記案内突部が係合する該案内突部と同幅かつ直線形状の移動案内部と、上記スライダが上記非導通位置に位置するときに上記案内突部が係合する、該案内突部より広幅で、該案内突部が上記係合部を被係合部に係合させる方向と係合を解除させる方向とに回転するのを許容する回転許容部と、を有し、
上記ハウジングとスライダの間に、該スライダを上記係合部が被係合部に係合する方向に回転付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするメモリカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のメモリカード用コネクタにおいて、
上記ハウジングが、上部ハウジングと下部ハウジングを備えるメモリカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のメモリカード用コネクタにおいて、
上記スライダの上下両面が、上記ハウジングの上下両面にそれぞれ接触するメモリカード用コネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のメモリカード用コネクタにおいて、
一端部が上記スライダに回転可能に支持されると共に他端部が上記収納部の底面に形成したハートカム溝に係合し、該ハートカム溝との係合位置を変化させることにより上記スライダの上記導通位置への保持及び該保持の解除を行うカムバーを備えるメモリカード用コネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のメモリカード用コネクタにおいて、
上記スライダにおける上記カムバーの回転支持部から外れた位置を上記付勢手段が付勢し、
上記ハウジングに、上記非導通位置に位置するスライダが上記係合部が被係合部と係合可能な位置まで回転したときに、該スライダに接触してスライダの該回転位置を保持する回転ストッパ面を形成したメモリカード用コネクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のメモリカード用コネクタを備えたことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−212146(P2010−212146A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58135(P2009−58135)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000128407)京セラエルコ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】