説明

メラノコルチン受容体特異的ペプチド

本発明は、式(I)のメラノコルチン受容体特異的な環状ペプチドまたはその医薬的に許容できる塩に関するものであり、式中のR、R、R、R4a、R4b、R4c、R、xおよびyは明細書中に定めたものである。これらの化合物は、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態の処置に特に有用であり、これには肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラノコルチン(melanocortin)受容体特異的環状ペプチドに関するものであり、これらはメラノコルチン受容体が仲介する疾患、適応症、状態および症候群、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態の処置に使用でき、これには肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームが含まれる。
【背景技術】
【0002】
以下の記載では、(著者および公開年による)多数の刊行物に言及するが、公開日が新しいためいくつかの刊行物は本発明に対する先行技術とはみなされない。そのような刊行物について本明細書中で考察するのは、背景をより完全にするためであって、そのような刊行物が特許性を判断する際の先行技術であると認めたものと解釈すべきではない。
【0003】
メラノコルチン受容体タイプおよびサブタイプのファミリーが同定され、これには下記のものが含まれる:正常ヒトメラニン細胞およびメラノーマ細胞に発現するメラノコルチン−1受容体(MC1−R)、副腎の細胞に発現するACTH(アドレノコルチコトロピン)に対するメラノコルチン−2受容体(MC2−R)、主に視床下部、中脳および脳幹の細胞に発現するメラノコルチン−3受容体およびメラノコルチン−4受容体(MC3−RおよびMC4−R)、ならびに広範囲の末梢組織に発現するメラノコルチン−5受容体(MC5−R)。MC1−Rは毛髪および皮膚の色素産生および炎症に関連することが示唆され、MC2−Rはステロイド産生を仲介すると考えられ、MC3−Rはエネルギー恒常性、摂食および炎症に関連することが示唆され、MC4−Rは摂食行動、エネルギー恒常性および性的機能(たとえば勃起機能)を制御すると考えられ、MC5−Rは外分泌腺系に関与することが示唆されている。
【0004】
メラノコルチン受容体の構造決定において、受容体をコードする核酸配列および受容体を構成するアミノ酸配列の両方を含めた多くの研究が行なわれた。MC4−Rは、主に脳に発現すると考えられるGタンパク質共役型の7回膜貫通受容体である。
【0005】
MC4−Rの不活性化は肥満症を生じることが示された(Hadley, 1999, Ann N Y Acad Sci., 885: 1-21)。アグーチ関連タンパク質(agouti-related protein)(AgRP)は、MCアンタゴニストまたはMC4−Rに対するインバースアゴニストであることが示唆されている内在性化合物である。αメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)は主要な内在性MC4−Rアゴニストであると考えられる。
【0006】
末梢に位置するMC4−R受容体はエネルギー恒常性にに関与することも示唆され、迷走神経におけるMC4−Rシグナル伝達の役割ならびにそれと肥満症および糖尿病の処置との関連がGautron et al, The Journal of Comparative Neurology, 518: 6-24 (2010)により考察されている。
【0007】
MC4−Rに対して特異的なペプチド、およびそれに次いでMC3−Rに対して特異的なペプチドは、哺乳動物のエネルギー恒常性の調節に有用であると考えられ、これには食物摂取量および体重増加を低減させるための薬剤としての用途が含まれる。MC4−Rアゴニストペプチドは、雄性勃起機能障害を含めた性的機能障害の処置、ならびに食物摂取量および体重増加の減少、たとえば肥満症の処置に有用であると考えられる。そのようなペプチドは、随意エタノール摂取量の減少、薬物嗜癖の処置などにも使用できる。MC4
−RアゴニストペプチドはMC3−Rアゴニストペプチドと同様に、さらに循環性ショック、虚血、出血性ショック、炎症性疾患、ならびに関連する疾患、適応症、状態および症候群の処置に使用できる。これに対しMC4−Rアンタゴニストペプチドは、体重増加の補助、たとえば悪液質、筋肉減少症、消耗症候群または消耗性疾患、および食欲不振症の処置に使用するために有用であると考えられる。そのようなペプチドは、うつ病および関連障害の処置にも使用できる(Wikberg et al, Nature Reviews, Drug Discovery, 7, 307, (2008); Adan et al, British J. Pharm., 149, 815-827 (2006); Nogueiras et al, J. Clin., Invest., 117(11): 3475-3488 (2007); Maaser et al, Ann. N.Y. Acad. Sci.,
1072, 123-134 (2006); Giuliani et al, British J. Pharm., 150, 595-603 (2007); Balbani, Expert Opin. Ther. Patents, 17(3), 287-297 (2007);およびNavarro et al, Alcohol. Clin. Exp. Res., 29(6), 949-957 (2005))。メラノコルチン受容体特異的ペプチドには、環状α−MSH類似ペプチド、たとえばAc-Nle-cyclo(-Asp-His-D-Phe-Arg-Trp-Lys)-NH2 (SEQ ID NO:1)(参照:米国特許s. 5,674,839および5,576,290)およびAc-Nle-cyclo(-Asp-His-D-Phe-Arg-Trp-Lys)-OH (SEQ ID NO:2) (参照:米国特許s. 6,579,968および6,794,489)が含まれる。これらおよび他のメラノコルチン受容体特異的ペプチドは、一般に天然α−MSHの中心テトラペプチド配列、His6-Phe7-Arg8-Trp9 (SEQ ID NO:3)、またはPhe7をD-Pheで置換したものを含むその模倣配列もしくは変異配列を含む。1種類以上のメラノコルチン受容体に対して特異的であると主張された他のペプチドまたはペプチド様化合物が、下記に開示されている:米国特許公報5,731,408、6,054,556、6,350,430、6,476,187、6,600,015、6,613,874、6,693,165、6,699,873、6,887,846、6,951,916、7,008,925、および7,176,279;公開された米国特許公開公報 2001/0056179、2002/0143141、2003/0064921、2003/0105024、2003/0212002、2004/0023859、2005/0130901、2005/0187164、2005/0239711、2006/0105951、2006/0111281、2006/0293223、2007/0027091、2007/0105759、2007/0123453、2007/0244054、および2008/0039387;ならびに国際特許出願番号WO 98/27113、WO 99/21571、WO 00/05263、WO 99/54358、WO 00/35952、WO 00/58361、WO 01/30808、WO 01/52880、WO 01/74844、WO 01/85930、WO 01/90140、WO 02/18437、WO 02/26774、WO 03/006604、WO 2004/099246、WO 2004/046166、WO 2005/000338、WO 2005/000339、WO 2005/000877、WO 2005/030797、WO 2005/060985、WO 2006/048449、WO 2006/048450、WO 2006/048451、WO 2006/048452、WO 2006/097526、WO 2007/008684、WO 2007/008704、およびWO 2007/009894。科学文献中の多数の報文ならびに多数の特許出願および交付された特許により証明されたメラノコルチン受容体特異的ペプチドにおける科学および医薬上の強い関心(Nozawa et al, Expert Opin. Ther. Patents 18(4): 403-427 (2008); Bednarek et al, Expert Opin. Ther. Patents 14(3): 327-336 (2004); Todorovic et al, Peptides, 26, 2026-2036 (2005);およびUjjainwalla et al, Current Topics
in Med. Chem., 7, 1068-1084 (2007))にもかかわらず、いずれの療法効能についても薬物として承認されたメラノコルチン受容体特異的ペプチドはない。実際に、いずれの療法効能についても第II相臨床試験を通過したメラノコルチン受容体特異的ペプチドの報告はない。医薬用途に使用するためのメラノコルチン受容体特異的ペプチドに対する著しい実質的な要望が依然としてある。本発明を行なったのは、この背景に対するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許5,674,839
【特許文献2】米国特許5,576,290
【特許文献3】米国特許6,579,968
【特許文献4】米国特許6,794,489
【特許文献5】米国特許5,731,408
【特許文献6】米国特許6,054,556
【特許文献7】米国特許6,350,430
【特許文献8】米国特許6,476,187
【特許文献9】米国特許6,600,015
【特許文献10】米国特許6,613,874
【特許文献11】米国特許6,693,165
【特許文献12】米国特許6,699,873
【特許文献13】米国特許6,887,846
【特許文献14】米国特許6,951,916
【特許文献15】米国特許7,008,925
【特許文献16】米国特許7,176,279
【特許文献17】米国特許公開2001/0056179
【特許文献18】米国特許公開2002/0143141
【特許文献19】米国特許公開2003/0064921
【特許文献20】米国特許公開2003/0105024
【特許文献21】米国特許公開2003/0212002
【特許文献22】米国特許公開2004/0023859
【特許文献23】米国特許公開2005/0130901
【特許文献24】米国特許公開2005/0187164
【特許文献25】米国特許公開2005/0239711
【特許文献26】米国特許公開2006/0105951
【特許文献27】米国特許公開2006/0111281
【特許文献28】米国特許公開2006/0293223
【特許文献29】米国特許公開2007/0027091
【特許文献30】米国特許公開2007/0105759
【特許文献31】米国特許公開2007/0123453
【特許文献32】米国特許公開2007/0244054
【特許文献33】米国特許公開2008/0039387
【特許文献34】WO 98/27113
【特許文献35】WO 99/21571
【特許文献36】WO 00/05263
【特許文献37】WO 99/54358
【特許文献38】WO 00/35952
【特許文献39】WO 00/58361
【特許文献40】WO 01/30808
【特許文献41】WO 01/52880
【特許文献42】WO 01/74844
【特許文献43】WO 01/85930
【特許文献44】WO 01/90140
【特許文献45】WO 02/18437
【特許文献46】WO 02/26774
【特許文献47】WO 03/006604
【特許文献48】WO 2004/099246
【特許文献49】WO 2004/046166
【特許文献50】WO 2005/000338
【特許文献51】WO 2005/000339
【特許文献52】WO 2005/000877
【特許文献53】WO 2005/030797
【特許文献54】WO 2005/060985
【特許文献55】WO 2006/048449
【特許文献56】WO 2006/048450
【特許文献57】WO 2006/048451
【特許文献58】WO 2006/048452
【特許文献59】WO 2006/097526
【特許文献60】WO 2007/008684
【特許文献61】WO 2007/008704
【特許文献62】WO 2007/009894
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hadley, 1999, Ann N Y Acad Sci., 885: 1-21
【非特許文献2】Gautron et al, The Journal of Comparative Neurology, 518: 6-24 (2010)
【非特許文献3】Wikberg et al, Nature Reviews, Drug Discovery, 7, 307, (2008)
【非特許文献4】Adan et al, British J. Pharm., 149, 815-827 (2006)
【非特許文献5】Nogueiras et al, J. Clin., Invest., 117(11): 3475-3488 (2007)
【非特許文献6】Maaser et al, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1072, 123-134 (2006)
【非特許文献7】Giuliani et al, British J. Pharm., 150, 595-603 (2007)
【非特許文献8】Balbani, Expert Opin. Ther. Patents, 17(3), 287-297 (2007)
【非特許文献9】Navarro et al, Alcohol. Clin. Exp. Res., 29(6), 949-957 (2005)
【非特許文献10】Nozawa et al, Expert Opin. Ther. Patents 18(4): 403-427 (2008)
【非特許文献11】Bednarek et al, Expert Opin. Ther. Patents 14(3): 327-336 (2004)
【非特許文献12】Todorovic et al, Peptides, 26, 2026-2036 (2005)
【非特許文献13】Ujjainwalla et al, Current Topics in Med. Chem., 7, 1068-1084 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の目的は、MC4−Rおよび/またはMC3−Rの調節(活性化を含む)に応答する疾患、障害および/または状態の処置、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランス関連、ならびに体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものの処置に有用な新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1観点において、本発明は式(I)の環状ペプチド:
【0012】
【化1】

【0013】
に関するものであり、その鏡像異性体、立体異性体もしくはジアステレオ異性体、または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩をすべて含む;
式中:
は、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−であり;
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0014】
【化2】

【0015】
から選択され;
4a、R4bおよびR4cは、それぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではなく;
は、−OHまたは−N(R6a)(R6b)であり;
6aおよびR6bは、それぞれ独立してH、またはC−C線状、分枝または環状アルキル鎖であり;
は、−Hまたは−C(=O)−NHであり;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5であり;
xは、1〜5であり;
yは、1〜5であり;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5である。
【0016】
他の観点において本発明は、式(II):
【0017】
【化3】

【0018】
のものである式(I)の環状ペプチドまたはその医薬的に許容できる塩に関する。
【0019】
他の観点において本発明は、Rは−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3である、式(I)、特に式(II)の環状ペプチドに関する。
【0020】
他の観点において本発明は、Rは−NH−C(=O)−であり、xは3であり、yは2である、式(I)、特に式(II)の環状ペプチドに関する。
【0021】
他の観点において本発明は、
は−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0022】
【化4】

【0023】
から選択され;
wはそれぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択される;
式(I)、特に式(II)の環状ペプチドに関する;これらにおいて、。
【0024】
他の観点において本発明は、RはHであり、R
【0025】
【化5】

【0026】
から選択される、式I、特に式(II)または(III)の環状ペプチドに関する。
【0027】
他の観点において本発明は、Rは−CH−であり、Rは−(CH−であり、RとRは一緒に非置換ピロリジン環を形成している、式I、特に式(II)の環状ペプチドに関する。
【0028】
他の観点において本発明は、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは
【0029】
【化6】

【0030】
から選択される、式I、特に式(II)の環状ペプチドに関する。
【0031】
他の観点において本発明は、R4aは4位にあって−C≡Nであり、R4bおよびR4cはそれぞれHである、式I、特に式(II)または(III)の環状ペプチドに関する。
【0032】
他の観点において本発明は、R4aは4位にあって−Fであり、R4bおよびR4cはそれぞれHである、式(I)、特に式(II)または(III)の環状ペプチドに関する。
【0033】
本発明によるペプチドは、1種類以上のメラノコルチン受容体のリガンド、特にMC4−Rのリガンド、より特別にはMC4−Rのアゴニスト(完全および部分アゴニストを含む)である。本明細書中で用いる用語“リガンド”には、前記のいずれかひとつの受容体の活性部位に結合するペプチドおよび1以上のアロステリック部位に結合するペプチドが含まれる。
【0034】
したがって本発明のペプチドは、特にMC3−Rおよび/またはMC4−Rの調節に応答する障害、疾患または状態、特にMC4−Rの活性化に応答する障害、疾患または状態の処置のための医薬として使用できる。より詳細には、本発明のペプチドは食物摂取量、体重および/または体重増加を低減させると考えられ、したがってその必要がある患者において、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症および過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを処置するのに有用であると考えられる。患者はヒトまたはヒト以外の動物であってもよく、特にヒトである。
【0035】
本発明のペプチドは、先行技術のペプチドと比較して有利な特性、特に増大した力価および/または増大した選択性をもつ可能性がある。これらの利点は、実用に際して対応する有用な特性を提供することができる。たとえば、医薬として用いる場合、本発明のペプチドはより低い臨床1日量で使用でき、より長い作用持続時間および/または改善された副作用プロフィールをもつ可能性がある。
【0036】
本発明の他の観点において、療法有効量の本発明のペプチドをその必要がある患者に投与することにより、MC3−Rおよび/またはMC4−Rの調節に応答する障害、疾患おまたは状態、たとえばMC4−Rの活性化に応答する障害、疾患または状態、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症および過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを処置する方法が提供される。
【0037】
本発明のさらに他の観点によれば、薬理学的有効量の本発明のペプチドをその必要がある個体、たとえばヒトに投与することにより、食物摂取量、体重および/または体重増加を低下させる方法が提供される。
【0038】
本発明のさらに他の観点によれば、薬理学的有効量の本発明のペプチドをその必要がある個体、たとえばヒトに投与することにより、減量後の再増量を阻止する方法が提供される。
【0039】
本発明のさらに他の観点において、MC4−Rの活性化に応答する障害、疾患および/または状態、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および
/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症および過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものの処置のための医薬の製造における、式Iのペプチドの使用が提供される。
【0040】
他の観点において、本発明は、メラノコルチン受容体が仲介する疾患、適応症、状態および症候群、特にMC4−Rの調節、たとえばMC4−Rの活性化に応答する疾患、障害、状態おおよび/または症候群の処置に使用するための、式Iのペプチドおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む、メラノコルチン受容体特異的なペプチドをベースとする医薬組成物を提供する。
【0041】
他の観点において、本発明は、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものの処置に使用するための、式Iのペプチドおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む、ペプチドをベースとするメラノコルチン受容体特異的な医薬組成物を提供し、その際、ペプチドは選択的MC4−Rリガンドである。
【0042】
他の観点において、本発明は、MC4−Rに対して特異的であり、MC4−Rにおける部分または完全アゴニストであるペプチドを提供する。特に、本発明は、MC4−Rに対して特異的であり、MC4−Rにおける部分アゴニストであるペプチドを提供する。
【0043】
他の観点において、本発明は、かなりの用量範囲にわたって有効である特異的MC4−R環状ペプチドを提供する。
【0044】
本発明の他の観点および新規な特徴、ならびにさらに他の適用範囲は、一部は以下の詳細な記述に示され、一部は以下を調べると当業者に明らかになり、あるいは本発明の実施により分かるであろう。本発明の観点は、特に特許請求の範囲に示す手段および組合わせにより実現および達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
1.0 定義
本発明の記述を続ける前に、特定の用語をここに述べるように定義する。
【0046】
本発明によるペプチドについて示す配列において、アミノ酸残基はChapter 2400, Manual of Patent Examining Procedure, 8th Ed.に示されるように、それらの一般的な意味をもつ。したがって、“Ala”はアラニンであり、“Asn”はアスパラギンであり、“Asp”はアスパラギン酸であり、“Arg”はアルギニンであり、“Cys”はシステインであり、“Gly”はグリシンであり、“Gln”はグルタミンであり、“Glu”はグルタミン酸であり、“His”はヒスチジンであり、“Ile”はイソロイシンであり、“Leu”はロイシンであり、“Lys”はリジンであり、“Met”はメチオニンであり、“Phe”はフェニルアラニンであり、“Pro”はプロリンであり、“Ser”はセリンであり、“Thr”はトレオニンであり、“Trp”はトリプトファンであり、“Tyr”はチロシンであり、“Val”はバリンである、など。“D”異性体は3文字コードまたはアミノ酸名称の前の“D-”により表示され、たとえばD-PheはD-フェニルアラニンである。以上に含まれないアミノ酸残基は下記の定義をもつ:
【0047】
【表1−1】

【0048】
【表1−2】

【0049】
【表1−3】

【0050】
【表1−4】

【0051】
【表1−5】

【0052】
用語“アシル”には基R(C=O)−が含まれ、その際、Rは有機基、たとえばアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルである。したがって、本明細書中で置換アシル基と述べる場合、それはその有機基(R)が置換されていることを意味する。一例はアセチル基CH−C(=O)−であり、本明細書中で“Ac”と表示する。前記に定めたアルキル基または置換アルキル基が1以上のカルボニル{−(C=O)−}基により結合している場合、ペプチドまたは脂肪族部分は“アシル化”されている。ペプチドは最も普通の場合はN末端でアシル化されている。
【0053】
用語“アルカン”には、線状または分枝した飽和炭化水素が含まれる。線状アルカン基の例には、メタン、エタン、プロパンなどが含まれる。分枝した、または置換されたアルカン基の例には、メチルブタンまたはジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタンまたはトリメチルペンタンなどが含まれる。一般に、いかなるアルキル基もアルカンの置換基となることができる。
【0054】
用語“アルケン”には、1以上の炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素が含まれる。そのようなアルケン基の例には、エチレン、プロペンなどが含まれる。
【0055】
用語“アルケニル”には、少なくとも1つの二重結合を含む、炭素原子2〜6個の線状一価炭化水素基、または炭素原子3〜6個の分枝した一価炭化水素基が含まれる;その例には、エテニル、2−プロペニルなどが含まれる。
【0056】
用語“アルキル”には、直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基が含まれる。C1−10アルキルは、1〜10個の炭素原子をもつアルキルを意味する。そのようなアルキル基の限定ではない例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが含まれる。
【0057】
用語“アルキン”には、少なくとも1つの三重結合を含む、炭素原子2〜6個の線状一価炭化水素基、または炭素原子3〜6個の分枝した一価炭化水素基が含まれる;その例には、エチン、プロピン、ブチンなどが含まれる。
【0058】
用語“アリール”には、環原子6〜12個の単環式または二環式芳香族炭化水素基が含まれ、場合により、独立してアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。用語“アリール”には、一方の環が芳香族であり、一方の環が非芳香族(飽和または部分飽和環を含む)である、二環式芳香族環系も含まれる。二環式芳香族環系においては、2個以上の環炭素が2つの隣接環に共通である(これらの環は“縮合環”である)。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、インダニル、ナフチ
ル、1−ナフチルおよび2−ナフチル、その誘導体などが含まれる。
【0059】
用語“アラルキル”には、基Rが含まれ、その際、Rはアルキレン(二価アルキル)基であり、Rは前記に定めたアリール基である。アラルキル基の例には、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどが含まれる。
【0060】
用語“脂肪族”には、炭化水素鎖をもつ化合物、たとえばアルカン、アルケン、アルキン、およびその誘導体が含まれる。
【0061】
本明細書中で用いる用語“アミド”には、カルボニル基に結合した三価窒素をもつ化合物、すなわち−C(=O)−NH(すなわち第一級アミド)、−C(=O)−NHRおよび−C(=O)−NRが含まれ、その際、RおよびRはそれぞれ独立して有機基を表わす。本明細書中で置換アミド基と述べる場合、それはそれらの有機基(RおよびR)のうち少なくとも1つが置換されていることを意味する。アミドの例には、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどが含まれる。
【0062】
用語“アミン”には、−NH(すなわちアミノ基)、−NHRおよび−NRが含まれ、その際、RおよびRはそれぞれ独立して有機基を表わす。本明細書中で置換アミン基と述べる場合、それはそれらの有機基(RおよびR)のうち少なくとも1つが置換されていることを意味する。
【0063】
用語“ニトリル”には、官能基−C≡Nが含まれる。
【0064】
用語“ハロゲン”(または“ハロ”)には、ハロゲン原子であるフッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれるものとする。
【0065】
用語“アルキル−ハロ”には、1個のハロゲン原子で置換されたアルキル、たとえば−CHFが含まれる。用語“アルキル−ジハロ”には、2個のハロゲン原子で置換されたアルキル、たとえば−CHFが含まれる。用語“アルキル−トリハロ”には、3個のハロゲン原子で置換されたアルキル、たとえば−CFが含まれる。
【0066】
用語“アルキルチオ”には、−S−アルキルが含まれ、その際、アルキルは前記に定めたものである。C−C10アルキルチオの限定ではない例には、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソ−プロピルチオ、およびn−ブチルチオが含まれる。
【0067】
用語“ニトロ”には、−NOが含まれるものとする。
【0068】
用語“ヒドロキシ”には、−OHが含まれるものとする。
【0069】
用語“アルコキシ”には、−O−アルキルが含まれ、その際、アルキルは前記に定めたものである。C−C10アルコキシは、1〜10個の炭素原子をもつアルキルを含む。C−C10アルコキシの限定ではない例には、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソ−プロピルオキシ、および2−メチル−1−プロピルオキシが含まれる。
【0070】
用語“アリールオキシ”には、−O−アリールが含まれ、その際、アリールは前記に定めたものである。
【0071】
用語“アルコキシカルボニル”には、−C(=O)−O−Rが含まれ、その際、Rは前記に定めたアルキルである。C−C10アルコキシカルボニルの限定ではない例には、
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソ−プロポオキシ−カルボニル、およびイソペントキシカルボニルが含まれる。
【0072】
用語“カルボキシ”には、−C(=O)OHが含まれる。
【0073】
用語“オキソ”には、=Oが含まれる。
【0074】
用語“スルホンアミド”には、アミン基に結合したスルホニル基、すなわち−S(=O)NH、−S(=O)NHR、および−S(=O)NRが含まれ、その際、RおよびRはそれぞれ独立して有機基を表わす。本明細書中で置換スルホンアミド基と述べる場合、それはそれらの有機基(RおよびR)のうち少なくとも1つが置換されていることを意味する。
【0075】
たとえば医薬組成物における用語“組成物”は、活性成分(単数または複数)およびキャリヤーを構成する不活性成分(単数または複数)を含む製品、ならびに直接または間接的に、いずれか2種類以上の成分の組合わせ、複合体形成もしくは凝集から得られる、または1種類以上の成分の解離から得られる、または1種類以上の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から得られる、いずれかの製品を包含するものとする。したがって、本発明に用いる医薬組成物は、活性成分と1種類以上の医薬的に許容できるキャリヤーを混和することにより調製した、いずれかの組成物を包含する。
【0076】
メラノコルチン受容体“アゴニスト”とは、メラノコルチン受容体と相互作用して、メラノコルチン受容体の特徴であるアデニルシクラーゼ活性化を含めた(これに限定されない)薬理学的応答を開始することができる、内在性物質、薬物または化合物を意味し、これには本発明のペプチドのような化合物が含まれる。
【0077】
“α−MSH”とは、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(SEQ ID NO:4)ならびにその類似体および同族体を意味し、これには限定ではないがNDP−α−MSHが含まれる。
【0078】
“NDP−α−MSH”とは、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH2(SEQ ID NO:5)ならびにその類似体および同族体を意味する。
【0079】
“EC50”とは、そのアゴニストについて可能な最大応答の50%を発生したアゴニスト(部分アゴニストを含む)のモル濃度を意味する。たとえば、MC4−R細胞発現系におけるcAMPアッセイにおいて測定してその化合物について可能な最大応答の50%を72nMの濃度で発生する被験化合物は、72nMのEC50をもつ。別途特定しない限り、EC50測定に関連するモル濃度はリットル当たりのナノモル数(nM)である。
【0080】
“Ki(nM)”とは、平衡状態で放射性リガンドまたは他の競合物質の不存在下において受容体の結合部位の半分に結合する競合性化合物のモル濃度を表わす、平衡状態での阻害物質解離定数を意味する。一般に、Kiの数値は受容体に対するその化合物の親和性に逆相関し、したがってKiが低ければ親和性は高い。KiはChengおよびPrusoffの方程式を用いて決定できる(Cheng Y., Prusoff W. H., Biochem. Pharmacol. 22: 3099-3108,
1973):
Kiは、特異的受容体(たとえば、MC1−R、MC3−R、MC4−RまたはMC5−R)と特異的リガンド(たとえば、α−MSHまたはNDP−α−MSH)に関して表わすことができる。
【0081】
“阻害率”とは、競合阻害アッセイにおいて既知の標準物質と比較した受容体結合の減
弱または低下のパーセントを意味する。したがって、“1μM(NDP−α−MSH)における阻害率”は、たとえば後記のアッセイ条件下での、一定量の被験化合物、たとえば1μMの被験化合物の添加による、NDP−α−MSHの結合の低下率を意味する。たとえば、NDP−α−MSHの結合を阻害しない化合物は0%の阻害率をもち、NDP−α−MSHの結合を完全に阻害する化合物は100%の阻害率をもつ。一般に後記のように、競合阻害試験には、たとえばI125標識NDP−α−MSHによる放射アッセイ、またはたとえばEu−NDP−α−MSHによるランタニドキレート蛍光アッセイを用いる。しかし、放射性同位体以外の標識系またはタグ系の使用を含めて、競合阻害を試験するための他の方法が知られており、一般に、競合阻害を試験するための当技術分野で知られているいずれの方法も本発明に使用できる。したがって、“阻害”は被験化合物がメラノコルチン受容体へのα−MSHの結合を減弱させるかどうかを判定するためのひとつの手段であることが分かるであろう。
【0082】
“結合親和性”とは、化合物または薬物がそれの生物学的ターゲットに結合する能力を意味し、本明細書中ではKi(nM)として表わす。
【0083】
“固有活性(intrinsic activity)”は、特定のメラノコルチン受容体発現細胞系において化合物により達成される最大刺激(機能活性)、たとえばアデニリルシクラーゼの最大刺激を意味する。α−MSHまたはNDP−α−MSHにより達成される最大刺激を固有活性1.0(または100%)と表示し、α−MSHまたはNDP−α−MSHの最大活性の半分を刺激しうる化合物は0.5(または50%)の固有活性をもつと表示される。本明細書に記載するアッセイ条件下で0.7(70%)以上の固有活性をもつ本発明化合物はアゴニストと分類され、0.1(10%)と0.7(70%)の間の固有活性をもつ化合物は部分アゴニストと分類され、0.1(10%)未満の固有活性をもつ化合物は不活性または固有活性をもたないと分類される。1観点において、本発明の環状ペプチドは、一般にα−MSHまたはNDP−α−MSHに関してMC4−Rにおける部分アゴニストとして特徴づけることができる。
【0084】
一般に“機能活性”は、化合物によって活性化された際の受容体、たとえばメラノコルチン受容体、特にMC4−RまたはhMC4−Rのシグナル伝達の尺度、または受容体関連シグナル伝達の変化の尺度である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化によりシグナル伝達を開始する。1観点において、メラノコルチン受容体は、アデニリルシクラーゼによるcAMPの産生を触媒するGαを介してシグナルを伝達する。したがって、アデニリルシクラーゼの刺激の測定、たとえばアデニリルシクラーゼの最大刺激の測定は、機能活性の尺度のひとつであり、本明細書に例示する主な尺度である。しかし、本発明の実施に際して機能活性の別の尺度を採用でき、それらは本発明の範囲において明確に考慮および包含されることを理解すべきである。たとえば、一例では細胞内遊離カルシウムを測定することができる;たとえば、Mountjoy K.G. et al., Melanocortin receptor-medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells. Physiol Genomics 5: 11-19, 2001、またはKassack M.U. et al., Functional screening of G protein-coupled receptors by measuring intracellular calcium with a fluorescence microplate reader. Biomol Screening 7: 233-246, 2002に報告されたように、それらに示された方法を使用。ホスファトジルイノシトール4,5−二リン酸からのイノシトール三リン酸またはジアシルグリセロールの産生をたとえば放射アッセイの使用により測定することによって、活性化を測定することもできる。機能活性のさらに他の尺度は、調節経路の活性化から生じる受容体インターナリゼーションである;たとえば、Nickolls S.A. et al., Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists: evidence for ligand specific conformational states. J Pharm Exper Therapeutics 313: 1281-1288, 2005に示された方法を使用。機能活性のさらに他の尺度は、Gタンパク質受容体に関連するヌクレオチドの交換および交換率、たとえば
Gタンパク質αサブユニット上のGDP(グアノシン二リン酸)からGTP(グアノシン三リン酸)への交換であり、これは多数の手段のいずれかにより測定でき、これにはグアノシン5’−(γ−[35S]チオ)−三リン酸を用いる放射アッセイが含まれる;Manning D.R., Measures of efficacy using G proteins as endpoints: differential engagement of G proteins through single receptors. Mol Pharmacol 62: 451-452, 2002に示されるもの。G−共役型タンパク質の活性化を測定するために多様な遺伝子ベースのアッセイ法が開発された;たとえば、Chen W. et al., A colorimetric assay from measuring activation of Gs- and Gq-coupled signaling pathways. Anal Biochem 226: 349-354, 1995; Kent T.C. et al., Development of a generic dual-reporter gene assay for screening G-protein-coupled receptors. Biomol Screening, 5: 437-446, 2005;またはKotarsky K. et al., Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven-transmembrane receptors. Pharmacology & Toxicology 93: 249-258, 2003に示されるもの。Chenらの比色アッセイ法は、メラノコルチン受容体活性化を測定する際に使用するために、Hruby V.J. et al., Cyclic lactam α-melanocortin analogues of Ac-Nle4-cyclo[Asp5,D-Phe7,Lys10] α-melanocyte-stimulating hormone-(4-10)-NH2 with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors. J Med Chem 38: 3454-3461, 1995に示されるように応用された。一般に機能活性は、G−共役型受容体の活性化および/またはシグナル伝達を測定する方法を含めた、さらに今後開発または報告される可能性のある方法を含めた、いずれかの方法により測定できる。本明細書中で用いる用語“処置する(treat)”、“処置すること(treating)”および“処置(treatment)”は、患者が特定の疾患、障害および/または状態に罹患している間に起きる作用であって、その疾患、障害および/または状態の重症度を低下させる作用を表わす。さらに、用語“処置する”、“処置すること”および“処置”は、指示した疾患、障害および/または状態の治療(治癒)処置、予防(阻止)処置、抑制処置および対症処置を含むものとする。
【0085】
本明細書中で用いる用語“薬理学的に有効な量”(“療法有効量”を含む)は、希望する療法効果または生物学的効果を誘導するのに十分である本発明ペプチドの量を意味する。
【0086】
本明細書中で用いる用語“療法有効量”は、医師または他の臨床医により処置される哺乳動物において生物学的応答または医学的応答を誘発するであろう本発明ペプチドの量を意味する。
【0087】
本明細書中で用いる用語“予防に有効な”または“予防的”は、患者が特定の疾患または障害を患う前に、医師または他の臨床医が予防、阻害または緩和を試みている病的状態に哺乳動物が罹病するのを阻止もしくは阻害し、または罹病を緩和する、本発明ペプチドの量を意味する。
【0088】
用語“糖尿病”には下記のものが含まれる:1型糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病:Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus (Diabetes Care, Vol. 24, Supp. 1, January 2001)に公表された基準に従って診断されたものであり、これによれば空腹時血糖値が126mg/dl以上で、その主因は膵ベータ細胞の破壊である;2型糖尿病、すなわちインスリン非依存性糖尿病:Report of the Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitusに公表された基準に従って診断されたものであり、これによれば空腹時血糖値が126mg/dl以上である;および成人潜在性自己免疫性糖尿病(latent autoimmune diabetes mellitus of adults)(LADA)。
【0089】
用語“メタボリックシンドローム”は、代謝障害、特にグルコースおよび脂質の調節障
害を表わし、これにはインスリン抵抗性、および膵ベータ細胞によるインスリン分泌の障害が含まれ、さらに腹部脂胖症、異脂肪血症、高血圧症、グルコース不耐症または血栓形成性状態などの症状および状態を含む場合があり、これらがさらに高脂血症、肥満症、糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐症、高血糖症、および高血圧症などの障害を生じる可能性がある。
【0090】
2.0 臨床適応症および有用性
本明細書に開示する組成物および方法は、医学的用途および酪農または獣医学的用途の両方に使用できる。一般に、これらの方法はヒトに用いられるが、他の哺乳動物にも使用できる。用語“患者”は、哺乳動物個体を表わすものとし、本明細書全体および特許請求の範囲においてそのように用いられる。本発明の主な用途はヒト患者に関するものであるが、本発明は実験室、農場、動物園、野生動物、ペット、スポーツその他の動物にも適用できる。臨床適応症および具体的な有用性には下記のものが含まれる。
【0091】
2.1 肥満症および関連のメタボリックシンドローム
式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは、MC4受容体のリガンドであることが見出された。特に、式(I)のペプチドは、MC4−R機能の調節、より詳細にはMC4−Rの活性化に応答する疾患、障害および/または状態、すなわちMCR−4におけるアゴニズム(完全または部分アゴニズムを含む)が有益となるであろう疾患、障害および/または状態の処置に有用であると考えられ、これにはエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば、糖尿病、特に2型糖尿病;異脂肪血症;脂肪肝;高コレステロール血症;高トリグリセリド血症;高尿酸血症;グルコース耐性障害;空腹時血糖障害;インスリン抵抗性症候群;およびメタボリックシンドローム)、摂食関連(たとえば、過食症;暴食;大食症;および強迫性摂食)、ならびに/あるいはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態、より詳細には過体重および/または過剰摂食を特徴とする疾患、障害および/または状態が含まれる。
【0092】
式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは特に、過体重を特徴とする体重関連の疾患、障害および/または状態の処置のために有用であると考えられ、これには下記のものが含まれる:肥満症および過体重(減量の促進、減量の維持、および/または投薬誘発性の体重増加もしくは禁煙後の体重増加を含めた体重増加の阻止による)ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえばインスリン抵抗性;グルコース耐性障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;異脂肪血症(高脂血症を含む);高血圧症;心障害(たとえば、冠性心疾患、心筋梗塞);心血管障害;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝炎を含む);関節障害(続発性骨関節炎を含む);胃食道逆流;睡眠無呼吸;アテローム性硬化症;発作;大血管および小血管疾患;脂肪症(たとえば肝臓における);胆石;および胆嚢障害。
【0093】
式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは特に、肥満症および2型糖尿病、より特別には肥満症の処置のために有用であると考えられる。
【0094】
肥満症および過体重の医薬的に受け入れられている定義があることは理解されるであろう。患者はたとえば、体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ることにより計算される肥満指数(BMI)を測定し、結果を定義と比較することにより同定される。ヒトのBMIについて推奨される分類法であって、Expert Panel on the Identification, Evaluation and Treatment of Overweight and Obesity in Adultsが採用し、主要な保健専門機関が承認しているものは下記のとおりである:低体重<18.5kg/m、正常体重18.5〜24.9kg/m、過体重25〜29.9kg/m、肥満症(クラス1)30〜34.9kg/m、肥満症(クラス2)35〜39.9kg/m、超肥満症(クラス3)≧40kg/m(Practical Guide to the Identification, Evaluation
, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults, The North American Association for the Study of Obesity (NAASO) and the National Heart, Lung and Blood Institute (NHLBI) 2000)。特殊な人種および小児にはこの分類法を改変したものを採用できる。過体重および肥満症を評価するための他の別法は、胴囲を測定することによるものである。人種に基づくカットオフには、提唱された幾つかの分類法および識別法がある。たとえば、International Diabetes Federationからの分類法によれば、94cmを超える胴囲をもつ男性(欧州人についてのカットオフ)および80cmを超える胴囲をもつ女性(欧州人についてのカットオフ)は、腹部脂肪過剰のため糖尿病、高血圧症、異脂肪血症および心血管疾患のリスクがより高い。他の分類法はAdult Treatment Panel IIIからの推奨に基づくものであり、その場合は推奨カットオフは男性について102cm、女性について88cmである。しかし、式(I)のペプチドは、自己診断による過体重を低減させるために、またライフスタイル、遺伝的理由、遺伝および/または他の要因が原因で肥満症になるリスクを低下させるためにも使用できる。
【0095】
式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは、ヒトを含む動物に投与すると、その動物において食物摂取量、体重および/または体重増加を低減させるであろうと考えられる。
【0096】
何らかの理論により拘束されるわけではないが、式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは、食欲および/または満腹感を調節し、代謝速度を増大させ、脂肪および/または炭水化物の摂取および/またはそれらに対する欲求を低下させることにより作用すると考えられる。
【0097】
何らかの理論により拘束されるわけではないが、式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは、グルコース耐性を増強し、および/またはインスリン抵抗性を低下させることにより作用すると考えられる。したがって、式(I)のペプチドは、過体重および肥満症の個体と同様に、低体重および正常体重の個体においても2型糖尿病の処置に使用できる。
【0098】
本発明のペプチドは、(i)血管閉塞(たとえば血栓症による)による低潅流、出血、外傷、外科処置、出血性ショック、心原性ショック、毒素ショックもしくは敗血症性ショックにより起きる、臓器もしくは組織の損傷の阻止、または(iii)雄性および雌性性的機能障害、たとえば雄性勃起機能障害もしくは雌性性的刺激機能障害の処置にも使用できる。
【0099】
本発明のさらに他の観点によれば、医薬として使用するための、前記に定めた式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドが提供される。
【0100】
他の観点において、本発明は、MC4−Rの調節に応答する障害、疾患および/または状態、たとえばMC4−Rの活性化に応答する障害、疾患および/または状態、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを処置するための、式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドの使用を提供する。
【0101】
さらに他の観点において、本発明は、MC4−Rの調節、たとえばMC4−Rの活性化に応答する障害、疾患および/または状態、特にエネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に
関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを処置するための医薬の製造における、式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドの使用を提供する。
【0102】
本発明のペプチドは、有利には、MC1−R、MC2−RおよびMC5−R、特にMC1−Rに対するより、MC4−Rおよび/またはMC3−Rに対して、より選択的(すなわち、より高い親和性および/またはより高い特異性)である。特に、本発明のペプチドは、有利には、MC3−RおよびMC1−Rに対するよりMC4−Rに対して、より選択的である。本発明のペプチドは、適切には、MC1−R、MC2−R、MC3−RおよびMC5−Rのいずれかに対するよりMC4−Rに対して、少なくとも3倍、特に10倍、より特別には30倍、選択的である。本発明のあるペプチドは、7.1に記載する受容体結合アッセイで測定して、MC1−RよりMC4−Rに対して、さらに100倍以上、たとえば約150倍すら、選択的である。この選択性プロフィールは、これらのペプチドを投与した際に得られるインビボ安全性および副作用に影響を及ぼす可能性があることが注目される。
【0103】
エネルギー恒常性および代謝関連、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態を処置する際には、MC4−Rの活性化から生じる可能性がある望ましくない副作用、たとえばペニス勃起を含む性的副作用および血圧作用を低減または排除することが望ましい。
【0104】
本発明のペプチドは、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを、実質的な血圧上昇を含む実質的な有害心血管作用を引き起こすことなく処置するために有用であると考えられる。
【0105】
本発明のペプチドは、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含むものを、MC4−Rの活性化から生じる実質的な望ましくない性的作用、たとえばペニス勃起を引き起こすことなく処置するために有用であると考えられる。
【0106】
式(I)、および特に式(II)または(III)のペプチドは、満足すべき薬理学的プロフィールおよび有望な生物医薬特性、たとえば毒性プロフィール、代謝および薬物動態特性、溶解性および透過性をもつと考えられる。適切な生物医薬特性が当業者の知識内のものであることは理解されるであろう。
【0107】
3.0 特定の適応症のための併用療法
本発明のペプチド、組成物および方法は、1種類以上の他の医薬活性化合物と組み合わせて投与することにより、以上のいずれかの疾患、適応症、状態もしくは症候群、またはメラノコルチン受容体が仲介するいずれかの疾患、適応症、状態もしくは症候群を処置するために使用できる。そのような組合わせ投与は、本発明のペプチドおよび1種類以上の他の医薬活性化合物の両方を含有する単一剤形により行なうことができ、そのような単一剤形には錠剤、カプセル剤、スプレー剤、吸入用粉末剤、注射用液剤などが含まれる。あるいは、組合わせ投与は、一方の剤形が本発明のペプチドを含有し、他方の剤形が他の医薬活性化合物を含有する、2つの異なる剤形の投与により行なうことができる。この場合、これらの剤形は同一でも異なってもよい。併用療法を限定する意味ではなく、以下は使
用できる特定の併用療法を例示する。
【0108】
3.1 肥満症および関連のメタボリックシンドロームのための併用療法
1種類以上の本発明のペプチドを、体重および摂食関連の種々の障害、たとえば肥満症および/または過体重の処置に有用な1種類以上の他の薬理活性薬剤、特にエネルギー支出、解糖、糖新生(gluconeogenesis)、糖原分解(glucogenolysis)、脂肪分解、脂肪新生、脂肪吸収、脂肪蓄積、脂肪排出、飢餓および/または満腹感および/または欲求の機序、食欲/動機付け、摂食、または胃腸の運動性に作用する他の肥満症薬と組み合わせることができる。エネルギー摂取量を低下させる薬物には、一部は、減量プログラムの行動療法に対する補助剤として用いられる、食欲抑制剤と呼ばれる種々の薬理作用剤が含まれる。
【0109】
一般に、後記の肥満症抑制剤または抑制薬の全投与量は、1種類以上の本発明のペプチドと併用する場合、0.1から3,000mg/日まで、好ましくは約1から1,000mg/日まで、より好ましくは約1から200mg/日までの範囲の、1回量または2〜4回の分割量であってもよい。ただし、厳密な用量は担当医が決定し、投与する化合物の力価、患者の年齢、体重、状態および応答などの要因に依存する。
【0110】
1種類以上の本発明のペプチドを、糖尿病の処置に有用な1種類以上の他の薬理活性薬剤、たとえば他の抗糖尿病薬と組み合わせることができる。
【0111】
1種類以上の本発明のペプチドは、そのほか、またはさらに、肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえばインスリン抵抗性;グルコース耐性障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;異脂肪血症(高脂血症を含む);高血圧症;心障害(たとえば、冠性心疾患、心筋梗塞);心血管障害;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝炎を含む);関節障害(続発性骨関節炎を含む);胃食道逆流;睡眠無呼吸;アテローム性硬化症;発作;大血管および小血管疾患;脂肪症(たとえば肝臓における);胆石;および胆嚢障害の処置に有用な1種類以上の他の薬理活性薬剤、たとえば他の抗糖尿病薬と組み合わせることができる。
【0112】
本発明のさらに他の観点によれば、薬理学的有効量の本発明によるペプチドまたはその医薬的に許容できる塩を、場合により医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと一緒に、下記から選択される1種類以上の薬剤と同時、逐次または個別に投与することを含む、併用処置が提供される:
−インスリンおよびインスリン類似体;
−インスリン分泌促進薬:下記を含む:スルホニル尿素(たとえばグリピジド(glipizide))および食事グルコース調節薬(時には“短時間作用性分泌促進薬”と呼ばれる;たとえばメグルチニド類(たとえばレパグリニド(repaglinide)およびナテグリニド(nateglinide));
−インクレチン作用を改善する薬剤、たとえばジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−4)阻害薬(たとえば、ビルダグリプチン(vildagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)およびシタグリプチン(sitagliptin))、およびグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)アゴニスト(たとえばエキセナチド(exenatide));
−インスリン増感薬:下記を含む:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト、たとえばチアゾリジンジオン類(たとえばピオグリタゾン(pioglitazone)およびロシグリタゾン(rosiglitazone))、ならびにPPARアルファ、ガンマおよびデルタいずれかの活性の組合わせをもつ薬剤;
−肝グルコースバランスを調節する薬剤、たとえばビグアニド類(たとえばメトホルミン(metformin))、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ阻害薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害薬、およびグルコキナーゼ活
性化薬;
−腸からのグルコース吸収を減少/遅延させるために設計された薬剤、たとえばアルファ−グルコシダーゼ阻害薬(たとえばミグリトール(miglitol)およびアカルボース(acarbose));
−グルカゴンの作用に拮抗し、またはその分泌を減少させる薬剤、たとえばアミリン類似体(たとえばプラムリンチド(pramlintide));
−腎臓によるグルコース再吸収を阻害する薬剤、たとえばナトリウム依存性グルコース輸送因子2(SGLT−2)阻害薬(たとえばダパグリフロジン(dapagliflozin));
−持続性高血糖症の合併症を処置するために設計された薬剤、たとえばアルドースレダクターゼ阻害薬(たとえばエパルレスタット(epalrestat)およびラニレスタット(ranirestat));ならびに微小血管障害に関連する合併症を処置するために用いられる薬剤;
−抗異脂肪血症薬、たとえばHMG−CoAレダクターゼ阻害薬(スタチン類、たとえばロスバスタチン(rosuvastatin))および他のコレステロール低下薬;PPARαアゴニスト(フィブレート類、たとえばゲムフィブロジル(gemfibrozil)およびフェノフィブレート(fenofibrate));胆汁酸封鎖薬(たとえばコレスチラミン(cholestyramine));コレステロール吸収阻害薬(たとえば植物ステロール(すなわちフィトステロール類)、合成阻害薬);コレステリルエステル伝達タンパク質(cholesteryl ester transfer protein)(CETP)阻害薬;回腸胆汁酸輸送系(ileal bile acid transport system)の阻害薬(IBAT阻害薬);胆汁酸結合樹脂;ニコチン酸(ナイアシン)およびその類似体;抗酸化薬、たとえばプロブコール(probucol);ならびにオメガ−3脂肪酸;
−抗高血圧症薬:下記を含む:アドレナリン受容体アンタゴニスト、たとえばベータ遮断薬(たとえばアテノロール(atenolol))、アルファ遮断薬(たとえばドキサゾシン(doxazosin))、および混合アルファ/ベータ遮断薬(たとえばラベタロール(labetalol));アドレナリン受容体アゴニスト:アルファ−2アゴニスト(たとえばクロニジン(clonidine))を含む;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(たとえばリシノプリル(lisinopril))、カルシウムチャンネル遮断薬、たとえばジヒドロピリジン類(たとえばニフェジピン(nifedipine))、フェニルアルキルアミン類(たとえばベラパミル(verapamil))、およびベンゾチアゼピン類(たとえばジルチアゼム(diltiazem));アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(たとえばカンデサルタン(candesartan));アルドステロン受容体アンタゴニスト(たとえばエプレレノン(eplerenone));中枢作用性アドレナリン作動薬、たとえば中枢性アルファアゴニスト(たとえばクロニジン(clonidine));ならびに利尿薬(たとえばフロセミド(furosemide));
−止血調節薬:下記を含む:抗血栓薬、たとえばフィブリン溶解の活性化薬;トロンビンアンタゴニスト;VIIa因子阻害薬;抗凝固薬、たとえばビタミンKアンタゴニスト(たとえばワルファリン(warfarin))、ヘパリンおよびその低分子量類似体、Xa因子阻害薬、および直接的トロンビン阻害薬(たとえばアルガトロバン(argatroban));抗血小板薬、たとえばシクロオキシゲナーゼ阻害薬(たとえばアスピリン)、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害薬(たとえばクロピドグレル(clopidogrel))、ホスホジエステラーゼ阻害薬(たとえばシロスタゾール(cilostazol))、糖タンパク質IIB/IIA阻害薬(たとえばチロフィバン(tirofiban))、ならびにアデノシン再取込み阻害薬(たとえばジピリダモール(dipyridamole));
−抗肥満症薬、たとえば食欲抑制薬(たとえばエフェドリン):下記を含む:ノルアドレナリン作動薬(たとえばフェンテルミン(phentermine))およびセロトニン作動薬(たとえばシブトラミン(sibutramine))、膵リパーゼ阻害薬(たとえばオルリスタット(orlistat))、ミクロソーム伝達タンパク質(MTP)調節薬、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害薬、ならびにカンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト(たとえばリモナバント(rimonabant));
−摂食行動調節薬、たとえばオレキシン受容体調節薬およびメラミン濃縮ホルモン(MCH)調節薬;
−グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体調節薬;
−神経ペプチドY(NPY)/NPY受容体調節薬;
−ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)調節薬;
−セロトニン受容体調節薬;
−レプチン/レプチン受容体調節薬;
−グレリン/グレリン受容体調節薬;または
−モノアミン透過調節薬、たとえば選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)(たとえばフルオキセチン(fluoxetine))、ノルアドレナリン再取込み阻害薬(NARI)、ノルアドレナリン−セロトニン再取込み阻害薬(SNRI)、トリプルモノアミン再取込み遮断薬(たとえばテソフェンシン(tesofensine))、およびモノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)(たとえばトロキサトン(toloxatone)およびアミフラミン(amiflamine));
あるいはその医薬的に許容できる塩、溶媒和物、塩の溶媒和物、またはプロドラッグを、場合により医薬的に許容できるキャリヤーと一緒に、そのような療法処置を必要とする哺乳動物、たとえばヒトに投与する。
【0113】
本発明のさらに他の観点によれば、薬理学的有効量の本発明によるペプチドまたはその医薬的に許容できる塩を、場合により医薬的に許容できる希釈剤またはキャリヤーと一緒に、超低カロリー食(very low calorie diet)(VLCD)または低カロリー食(LCD)と同時、逐次または個別に投与することを含む、併用処置が提供される。
【0114】
4.0 製造方法
一般に、本発明のペプチドは当技術分野で既知の方法に従って固相合成により合成し、そして精製することができる。多様な樹脂および試薬を使用する周知の多数の方法のいずれかを用いて、本発明のペプチドを製造できる。
【0115】
本発明の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド結合を形成するための既知の一般的な方法によって容易に合成できる。そのような一般的方法には、たとえば、それのカルボキシル基その他の反応性基が保護されたアミノ酸またはその残基の遊離アルファアミノ基とそれのアミノ基その他の反応性基が保護された他のアミノ酸またはその残基の遊離第一級カルボキシルとを縮合させることができる、いずれかの液相法が含まれる。好ましい一般的方法において、本発明の環状ペプチドは当技術分野で既知の方法に従って固相合成により合成し、そして精製することができる。多様な樹脂および試薬を使用する周知の多数の方法のいずれかを用いて、本発明のペプチドを製造できる。
【0116】
環状ペプチドを合成するための方法は、目的とする配列中の各アミノ酸を一度に1つずつ他のアミノ酸またはその残基に連続的に付加する方法により、あるいは目的とするアミノ酸配列をもつペプチドのフラグメントをまず合成し、次いで縮合させて目的とするペプチドを得る方法により実施できる。得られたペプチドを次いで環化して、本発明の環状ペプチドを得ることができる。
【0117】
固相ペプチド合成法は当技術分野で周知であり、実用化されている。そのような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般原理に従って、生長しつつあるペプチド鎖中へ希望するアミノ酸残基を一度に1つずつ連続的に取り込ませることにより実施できる。これらの方法は下記を含めた多数の参考文献に示されている:Merrifield, R.B., Solid phase synthesis (Nobel lecture). Angew Chem 24: 799-810 (1985)、およびBarany et al., The Peptides, Analysis, Synthesis and Biology, Vol. 2, Gross, E. and Meienhofer, J., Eds. Academic Press 1-284 (1980)。
【0118】
ペプチドの化学合成に際して、各種アミノ酸残基の反応性側鎖基を適切な保護基で保護し、これによりその保護基を除去するまでその部位で化学反応が起きるのを阻止する。同
様に一般的なものは、アミノ酸の残基またはフラグメントがカルボキシル基において反応している間はそれのアルファアミノ基を保護しておき、続いてアルファアミノ保護基を選択的に除去して、その部位で後続反応を行なわせるものである。具体的な保護基は、固相合成法および液相合成法において開示されており、既知である。
【0119】
アルファアミノ基は、下記を含めた適切な保護基で保護することができる:ウレタンタイプ保護基、たとえばベンジルオキシカルボニル(Z)および置換ベンジルオキシカルボニル、たとえばp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロポキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)、ならびに脂肪族ウレタンタイプの保護基、たとえばt−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)。アルファアミノの保護にはFmocが好ましい。
【0120】
グアニジノ基は、適切な保護基、たとえばニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)およびBocにより保護することができる。PbfおよびPmcはArgに好ましい保護基である。
【0121】
本明細書に記載する本発明のペプチドは、固相合成法を用いて、たとえばSymphony Multiplex Peptide Synthesizer (Rainin Instrument Company/Protein Technologies Inc)自動ペプチド合成装置により、製造業者が提供するプログラミングモジュールを用いて製造業者のマニュアルに示されるプロトコルに従って製造された。
【0122】
固相合成は、保護されたアルファアミノ酸を適切な樹脂にカップリングさせることにより、ペプチドのC末端から開始される。そのような出発物質は、アルファアミノ保護されたアミノ酸をアミド結合により4−(2’、4’−ジメトキシルフェニル−アミノメチル−フェノキシ(Rink Amide)樹脂、4−(2’、4’−ジメトキシルフェニル−アミノメチル)−フェノキシアセトアミド−ノルロイシル−MBHA樹脂、アミノ−キサンテン−3−イルオキシ−メリフィール樹脂(Sieber Amide)などの樹脂に、またはエステル結合によりp−ベンゾイルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、2−クロロトリチルクロリド樹脂に付着させることによって、あるいは当技術分野で周知の他の手段で製造される。Fmoc−リンカー−BHA樹脂支持体は市販されており、実用可能であれば一般に使用できる。樹脂は必要に応じてアミノ酸を連続的に付加する反復サイクル全体を通して維持される。アルファアミノFmoc保護基は塩基性条件下で除去される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミンまたはモルホリン(20〜40% v/v)をこの目的に使用できる。
【0123】
アルファアミノ保護基を除去した後、後続の保護されたアミノ酸を希望する順序で段階的にカップリングさせて、中間体である保護されたペプチド−樹脂を得る。ペプチドの固相合成に際してアミノ酸をカップリングさせるために用いる活性化剤は当技術分野で周知である。ペプチドを合成した後、所望により、ペプチドをさらに誘導体化するために、オルトゴナル(orthogonal)保護された側鎖保護基を当技術分野で周知の方法により除去することができる。
【0124】
一般に、オルトゴナル保護基は適宜使用される。たとえば本発明のペプチドは、アミノ基を含む側鎖をもつ多数のアミノ酸を含有する。1観点において、それらの側鎖によりラクタム橋を形成するアミノ酸についてはアリル−Alloc保護スキームを用い、アミノ基を含む側鎖をもつ他のアミノ酸については異なる反応条件下で開裂しうるオルトゴナル
保護基を用いる。したがって、たとえば環化に際してラクタム橋を形成する位置についてはFmoc−Orn(Alloc)−OHおよびFmoc−Glu(OAll)−OHアミノ酸(Glu(OAll)はグルタミン酸5−アリルエステルを表わす)を使用でき、一方、アミノ基を含む側鎖をもつ他のアミノ酸は、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Lys(Pbf)−OH、Fmoc−Dab(Pbf)−OHなどのように、異なるオルトゴナル保護基をもつ。他の保護基も使用できる:たとえば限定ではなく、環化に際してラクタム橋を形成する側鎖についてはMtt/OPp(4−メチルトリチル/2−フェニルイソプロピル)を使用でき、Mtt/OPpの開裂に適切な条件を用いて開裂されない他の位置についてはオルトゴナル保護基を用いる。
【0125】
ペプチド中の反応性基を、固相合成の途中または樹脂から分離した後で選択的に修飾できる。たとえば、樹脂上にある間にペプチドを修飾してN末端修飾、たとえばアセチル化することができ、あるいは開裂試薬の使用により樹脂から分離し、次いで修飾することができる。アミノ酸の側鎖を修飾するための方法もペプチド合成の当業者に周知である。ペプチド上に存在する反応性基に対して行なう修飾の選択は、一部はそのペプチドに望まれる特性により決定されるであろう。
【0126】
本発明のペプチドにおいて、1態様ではN−アセチル基の導入によりN末端基を修飾する。1観点において、N末端の保護基を除去した後、樹脂結合したペプチドをDMF中で有機塩基、たとえばピリジンの存在下に無水酢酸と反応させる方法を用いる。液相アセチル化を含めた他のN末端アセチル化法が当技術分野で既知であり、それらを使用できる。
【0127】
1態様において、ペプチドをペプチド樹脂から開裂させる前に環化することができる。反応性側鎖部分による環化のために、希望する側鎖を脱保護し、そのペプチドを適切な溶媒に懸濁し、環状カップリング剤を添加する。適切な溶媒には、たとえばDMF、ジクロロメタン(DCM)または1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が含まれる。適切な環状カップリング試薬には、たとえば下記のものが含まれる:2−(1H−ベンドトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2−(1H−ベンドトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2−(7−アザ−1H−ベンドトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、2−(2−オキソ−1(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)またはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)。カップリングは一般に適切な塩基、たとえばN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym−コリジンまたはN−メチルモルホリン(NMM)の使用により開始される。
【0128】
いずれか適切な試薬、たとえばDCM中のエチルアミン、または種々の組合わせの作用剤、たとえばトリフルオロ酢酸(TFA)、トリ−イソプロピルシラン(TIS)、ジメトキシベンゼン(DMB)、水などを用いて、環化ペプチドを次いで固相から開裂させることができる。得られた粗製ペプチドを乾燥させ、残留するアミノ酸側鎖保護基があればそれらをいずれか適切な試薬、たとえば水の存在下でのTFA、TIS、2−メルカプトエタン(ME)、および/または1,2−エタンジチオール(EDT)を用いて開裂させる。最終生成物を冷エーテルの添加により沈殿させ、濾過により採集する。最終精製は逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により、適切なカラム、たとえばC18カラムを用いて行なわれ、あるいは分離または精製のための他の方法、たとえばペプチドのサイズまたは電荷に基づく方法も採用できる。精製されると、ペプチドを多数の方法
のいずれか、たとえば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アミノ酸分析、質量分析などにより特性解明することができる。
【0129】
C末端置換されたアミド誘導体またはN−アルキル基をもつ本発明のペプチドについては、ペプチドのC末端から開始する固相合成により、保護されたアルファアミノ酸を適切な樹脂にカップリングさせることによって合成を進めることができる。固相合成において置換アミド誘導体を製造するためのそのような方法は当技術分野で記載されている。たとえば、Barn D.R. et al., Synthesis of an array of amides by aluminum chloride assisted cleavage on resin bound esters. Tetrahedron Letters, 37: 3213-3216 (1996);
DeGrado W.F. and Kaiser E.T., Solid-phase synthesis of protected peptides on a polymer bound oxime: Preparation of segments comprising the sequences of a cytotoxic 26-peptide analogue. J. Org. Chem., 47: 3258-3261 (1982)を参照。そのような出発物質は、アルファアミノ保護されたアミノ酸をエステル結合によりp−ベンゾイルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂に、またはアミド結合により4−(2’,4’−ジメトキシルフェニル−アミノメチル−フェノキシ(Rink Amide)樹脂に、周知の手段で付着させることによって製造できる。希望する配列のアミノ酸でペプチド鎖を生長させる。開裂前に、ペプチドを固相で環化させる。p−ベンゾイルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂を用いたペプチドはDCM中の塩化アルミニウムにより樹脂から開裂でき、Rink Amide樹脂を用いたペプチドはTFA、TISおよび水の混合物により開裂できる。
【0130】
主に固相Fmoc化学に関して合成を記載したが、本発明の環状ペプチドを製造するために他の化学および合成法を採用できることを理解すべきである:たとえば例示であって限定ではないが、Boc化学、溶液化学、ならびに他の化学および合成法を用いる方法。
【0131】
5.1 本発明の環状ペプチドの塩形態
本明細書中で用いる本発明によるペプチドという表記はすべて、具体的な化学式または名称を含めて、そのすべての医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、水和物、多型、プロドラッグ、代謝産物、立体異性体、および互変異性体を含むものであることを理解すべきである。
【0132】
本発明の環状ペプチドは、医薬的に許容できるいずれかの塩の形態であってもよい。用語“医薬的に許容できる塩”は、無機塩基または有機塩基および無機酸または有機酸を含めた医薬的に許容できる無毒性の塩基または酸から調製される塩類を表わす(参照:“Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use”, P. H. Stahl, P. G. Wermuth, IUPAC, Wiley-VCH, 2002)。無機塩基から誘導される塩類には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄(III)塩、鉄(II)塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(III)塩、マンガン(II)塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩である。医薬的に許容できる有機無毒性塩基から調製される塩類には、第一級、第二級および第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、たとえばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジペンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が含まれる。本発明の環状ペプチドが塩基性である場合、無機酸および有機酸を含めた医薬的に許容できる無毒性酸から酸付加塩を調製できる。そのような酸には下記のものが含まれる:酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸
、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など。本発明のペプチドの酸付加塩は、そのペプチドに適切な溶媒、および過剰の酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸またはメタンスルホン酸中で調製できる。酢酸塩、酢酸アンモニウム塩およびトリフルオロ酢酸塩の形態が特に有用である。
【0133】
本発明のペプチドが酸性部分を含む場合、適切な医薬的に許容できる塩類には、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム塩もしくはカリウム塩、またはアルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム塩もしくはマグネシウム塩を含めることができる。特定の式(I)のペプチドは、遊離ペプチドの溶媒和物または前記化合物の塩の溶媒和物を含めた溶媒和形態、および非溶媒和形態で存在する可能性があることも、理解すべきである。用語“溶媒和物”は、本明細書中で本発明の化合物および1以上の医薬的に許容できる溶媒分子、たとえばエタノールを含む、分子複合体を記載するために用いられる。用語“水和物”は、その溶媒が水である場合に用いられる。異なる多型の混合物を含めてすべての多型が特許請求の範囲のペプチドの範囲に含まれることを理解すべきである。
【0134】
5.2 医薬組成物
本発明は、1種類以上の本発明の環状ペプチドおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含有する、医薬組成物を提供する。医薬的に許容できるキャリヤーと共に配合する場合、本発明の化合物は医薬組成物中に全組成物の0.1から99.5重量%まで、たとえば0.5から95重量%までの濃度で存在することができる。キャリヤーの選択は当業者の知識の範囲内にあり、たとえば投与様式、剤形、および活性化合物の物理的特性、たとえば溶解性および安定性に依存する。本明細書中で用いる用語“キャリヤー”は、療法不活性成分に関する。剤形は固体、半固体または液体系であってもよい。配合物は即時放出および/または改変放出であってよく、これには遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、ターゲティッド放出およびプログラムド放出配合物が含まれる。
【0135】
キャリヤーは液体配合物であってもよく、好ましくは緩衝化された等張水溶液である。医薬的に許容できるキャリヤーには、以下に記載する賦形剤、たとえば希釈剤、キャリヤーなど、および添加剤、たとえば安定剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤なども含まれる。
【0136】
本発明の環状ペプチド組成物は、少なくとも1種類の本発明の環状ペプチドを、所望により賦形剤、たとえば希釈剤、キャリヤーなど、および添加剤、たとえば安定剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などを含めた1種類以上の医薬的に許容できるキャリヤーと一緒に含有する医薬組成物中に、配合または混和することができる。配合物賦形剤には、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを含めることができる。注射その他の液体投与用配合物には、少なくとも1種類またはそれ以上の緩衝成分を含有する水が好ましく、安定剤、保存剤および可溶化剤も使用できる。固体投与用配合物には、多様な増粘剤、増量剤、充填剤およびキャリヤー添加剤のいずれか、たとえばデンプン、糖類、セルロース誘導体、脂肪酸などを使用できる。局所投与用配合物については、多様なクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤などのいずれかを使用できる。大部分の医薬配合物について、不活性成分が製剤のより大きな重量%または容量%を構成するであろう。医薬配合物について、多様な計量放出(measured-release)、徐放または持続放出型の配合物および添加剤のいずれかを使用できることも考慮され、したがって剤形は本発明のペプチドを一定時間にわたって送達するように配合することができる。
【0137】
一般に、患者に投与する本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与様式、使用する配合物、および希望する応答に応じてかなり広範に変動するであろう。
【0138】
実際に使用する際、本発明の環状ペプチドを活性成分として、一般的な医薬配合技術に従って医薬的に許容できるキャリヤーとの混合物中に混和することができる。キャリヤーは、たとえば経口、非経口(静脈内を含む)、尿道、膣、鼻腔、口腔、舌下などの投与に望ましい剤形に応じて多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を調製する際には、通常の医薬媒質のいずれかを使用できる:たとえば、経口液体製剤、たとえば懸濁液剤、エリキシル剤および液剤の場合には、水、グリコール類、油、アルコール類、着香剤、保存剤、着色剤など;または経口固体製剤、たとえば散剤、硬および軟カプセル剤、ならびに錠剤の場合には、キャリヤー、たとえばデンプン、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など。
【0139】
錠剤およびカプセル剤はそれらの投与が容易であるので有利な経口単位剤形である。所望により、錠剤を標準的な水性または非水性の方法でコートすることができる。そのような療法有用組成物中の活性ペプチドの量は、有効用量が得られる量である。他の単位剤形において、舌下構築体、たとえばシート、ウェハー、錠剤などを使用できる。
【0140】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは、結合剤、たとえばポビドン、トラガントガム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチン;希釈剤;増量剤、たとえば微結晶性セルロース;賦形剤、たとえばリン酸二カルシウム;崩壊剤、たとえばトウモロコシデンプン、バレイショデンプンまたはアルギン酸;保存剤;着色剤;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、たとえばショ糖、乳糖またはサッカリンも含有することができる。単位剤形がカプセル剤である場合、それは前記タイプの材料のほかに、液体キャリヤー、たとえば脂肪油を含有することができる。他の多様な材料を、コーティングとして、または単位剤形の物理的形状を改変するために使用できる。たとえば、錠剤をセラック、糖または両者でコートすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性成分のほかに甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素および着香剤、たとえばチェリーまたはオレンジのフレーバーを含有することができる。
【0141】
経口送達用に配合する場合、ペプチドが腸溶保護剤中に封入されるように、より好ましくは錠剤またはカプセル剤が胃を通過し、場合によりさらに小腸の部分を通過するまでペプチドが放出されないように、ペプチドを配合および作成することが好ましい。この適用に関して、腸溶コーティングまたは腸溶材料という用語は、本質的に無傷で胃を通過するけれども胃を通過した後に崩壊して活性薬物を放出するコーティングまたは材料を表わすことは理解されるであろう。使用できる材料には、酢酸フタル酸セルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチル−エチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、およびメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーが含まれる。使用する腸溶コーティングは主に胃以外の部位での剤形の溶解を促進し、腸溶コーティングが少なくとも約5.5のpH、より好ましくは約6.0から約8.0までのpHで溶解するように選択できる。
【0142】
腸溶コーティングが溶解した際の腸での取込みを増大させるために、多様な透過増強剤のいずれかを使用できる。1観点において、透過増強剤は傍細胞または経細胞輸送系のいずれかを高める。そのような透過増強剤の限定ではない代表的例には、カルシウムキレート化剤、胆汁酸塩(たとえばコール酸ナトリウム)および脂肪酸が含まれる。ある態様において、腸プロテアーゼの基質として作用するペプチドまたはポリペプチドをさらに添加する。環状ペプチドを非経口投与することもできる。たとえばこれらの活性ペプチドの液
剤または懸濁液剤は、たとえばヒドロキシプロピルセルロースと混合した水中に調製することができる。分散液剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中におけるその混合物中に調製することもできる。これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐために、場合により保存剤を含有することができる。
【0143】
注射用に適した医薬剤形には、無菌の水性液剤または分散液剤、および無菌の水性液剤または分散液剤を即時調製するための無菌散剤が含まれる。すべての場合、剤形は無菌でなければならず、かつ注射器で投与できる程度の流体でなければならない。剤形は製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐されなければならない。キャリヤーは溶媒または分散媒質であってもよく、これにはたとえば水、エタノール、ポリオール、たとえばグリセロール、プロピレングリコールまたは液体ポリエチレングリコール、その適切な混合物、および植物油が含まれる。
【0144】
本発明の環状ペプチドは、鼻腔投与により療法適用することができる。“鼻腔投与”は、いずれかの本発明の環状ペプチドのいずれかの鼻腔内投与剤形を意味する。これらのペプチドは、水溶液、たとえば塩類、クエン酸または他の一般的な賦形剤もしくは保存剤を含有する溶液中にあってもよい。これらのペプチドは、乾燥配合物または粉末配合物中にあってもよい。
【0145】
水溶液状である場合、環状ペプチドは塩類、アセテート、ホスフェート、シトレート、アセテートまたは他の緩衝剤によって適宜緩衝化されてもよく、それらは生理的に許容できるいずれかのpH、たとえば薬pH4から約pH7までであってよい。緩衝剤の組合わせ、たとえばリン酸緩衝化生理食塩水、生理食塩水および酢酸緩衝液なども使用できる。塩類溶液の場合、0.9%塩類溶液を使用できる。アセテート、ホスフェート、シトレートなどの場合、50mM溶液を使用できる。緩衝剤のほかに、細菌および他の微生物の増殖を阻止または制限するために適切な保存剤を使用できる。使用できるそのような保存剤のひとつは、0.05%塩化ベンザルコニウムである。
【0146】
別態様において、本発明の環状ペプチドを肺に直接投与できる。肺内投与は、計量式インヘラー、すなわち患者が吸入中に作動させた際に計量されたボーラス量の本発明のペプチドを自己投与することができる器具により実施できる。乾燥粉末微粒子を調製するために多種多様な技術のいずれかを使用でき、これにはミクロミリング、噴霧乾燥、および急速凍結エアゾール化に続く凍結乾燥が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
本発明の環状ペプチドは、持続放出配合物の注射により療法投与することができる。一般に、多数の注入可能な生体侵食性ポリマーのいずれかを注射用持続放出配合物中に使用できる。あるいは、皮下注射できる配合物を含めた他の持続放出配合物を使用でき、これら他の配合物は1種類以上のナノ/マイクロスフェア、リポソーム、エマルジョン(たとえば、油中水型エマルジョン)、ゲル、不溶性塩類、または油中の懸濁液を含有することができる。この配合物は、環状ペプチドの濃度および量、使用する材料の持続放出速度、および当業者に既知の他の要因に応じて、毎日1回、毎週1回、毎月1回、または他の周期基準での注射を必要とするものであってもよい。
【0148】
5.3 投与経路
1種類以上の本発明のペプチドを含有する組成物を注射により投与する場合、注射は静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または当技術分野で既知の他の手段であってもよい。
【0149】
本発明のペプチドは、錠剤、カプセル剤、カプレット、懸濁液剤、散剤、凍結乾燥製剤、坐剤、点眼剤、皮膚パッチ、経口可溶性配合物、スプレー剤、エアゾール剤などの配合
物を含めた(これらに限定されない)当技術分野で既知のいずれかの手段で配合することができ、緩衝剤、結合剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、および当技術分野で既知の他の作用剤と混合および配合することができる。一般に、本発明のペプチドが表皮層の細胞を通って導入されるいずれかの投与経路を使用できる。したがって投与手段には、粘膜を通した投与、口腔投与、経口投与、皮膚投与、吸入投与、鼻腔投与、尿道投与、膣投与などを含めることができる。
【0150】
5.4 療法有効量
一般に、患者に投与する本発明の環状ペプチドの実際の量は、投与様式、患者(体重、性別、健康状態および食事を含む)、使用する配合物、および希望する応答に応じてかなり広範囲で変動するであろう。処置のための用量は、以上のいずれかの手段、または当技術分野で既知の他のいずれかの手段により、希望する療法効果をもたらすのに十分な量で投与される。本発明の環状ペプチドは有効性が高い。たとえば、環状ペプチドは、選択する個々のペプチド、希望する療法応答、投与経路、配合物、および当業者に既知の他の要因に応じて、約0.1、0.5、1、5、50、100、500、1000または5000μg/kg体重で投与できる(1回量として、または分割した1日量で)。
【0151】
6.0 本発明のペプチド
1観点において、本発明は式(I)の環状ペプチド:
【0152】
【化7】

【0153】
に関するものであり、そのすべての鏡像異性体、立体異性体もしくはジアステレオ異性体、または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩を含む;
式中:
は、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−であり;
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0154】
【化8】

【0155】
から選択され;
4a、R4bおよびR4cは、それぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではなく;
は、−OHまたは−N(R6a)(R6b)であり;
6aおよびR6bは、それぞれ独立してH、またはC−C線状、分枝または環状アルキル鎖であり;
は、−Hまたは−C(=O)−NHであり;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5であり;
xは、1〜5であり;
yは、1〜5であり;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5である。
【0156】
他の観点において、本発明は、式(II)のものである式(I)の環状ペプチド:
【0157】
【化9】

【0158】
またはその医薬的に許容できる塩に関する。
【0159】
他の観点において、本発明は、式(III)のものである式(I)の環状ペプチド:
【0160】
【化10】

【0161】
またはその医薬的に許容できる塩に関する。
【0162】
1観点において、本発明は、環状部分内のHis-Phe-Arg-Trpから誘導されたコア配列を含み、最初の位置のアミノ酸がArgであって環状部分の外側にある、環状ヘプタペプチドを提供する。何らかの理論により拘束されるわけではないが、このArg残基はMC1−Rにおける活性が低いことに大きく寄与すると考えられる。
【0163】
さらに、式Iのペプチドのコア配列は置換D−Pheを含む。何らかの理論により拘束されるわけではないが、本発明によるペプチド内に置換D−Pheを用いることにより、実質的に力価を維持した状態で固有活性を低下させることができると考えられる。表1中で参考例1と呼ばれるペプチド(非置換D−Pheを含む)を実施例1〜5、9〜11、17、26および27のうち1以上と比較することができる。表1は平均値を含むことを指摘できる。
【0164】
【表2】

【0165】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、フェニル、ニトロ、ニトリル、アミノまたはヒドロキシから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではないペプチドが提供される。
【0166】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、フェニル、ニトロ、ニトリル、アミノまたはヒドロキシから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではないペプチドが提供される。
【0167】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して
【0168】
【化11】

【0169】
から選択されるペプチドが提供される。
【0170】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、ニトロ、ニトリル、アミノまたはヒドロキシから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではないペプチドが提供される。
【0171】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して
【0172】
【化12】

【0173】
から選択されるペプチドが提供される。
【0174】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4aは下記のものから選択され:
【0175】
【化13】

【0176】
4bおよびR4cはそれぞれHであるペプチドが提供される。
【0177】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4aは−C≡Nまたは−Fから選択され、R4bおよびR4cはそれぞれHであるペプチドが提供される。
【0178】
本発明の特定の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4aは4位にあって−C≡Nであり、R4bおよびR4cはそれぞれHであるペプチドが提供される。
【0179】
本発明の特定の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドであって、R4aは4位にあって−Fであり、R4bおよびR4cはそれぞれHであるペプチドが提供される。
【0180】
式(I)に包含されるペプチドは、1個以上の非対象要素、たとえばステレオジェン(stereogenic)中心、ステレオジェン軸などを含み、したがって式(I)に包含されるペプチドは種々の立体異性体形態で存在する可能性がある。式(I)に包含されるペプチドを含めて個別および一般的に記載したペプチドの両方について、鏡像異性体およびジアステレオマーを含めてすべてのキラル中心その他の異性体中心におけるすべての形態の異性体が本発明に包含されるものとする。本発明のペプチドはそれぞれ多数のキラル中心を含み、鏡像異性体純粋な調製物での本発明のペプチドの使用のほかに、ラセミ混合物または鏡像異性体富化混合物として使用できる。一般に、本発明のペプチドはキラル純粋試薬、たとえば特定したL−またはD−アミノ酸の使用により、鏡像異性体純度が維持される試薬、条件および方法を用いて合成されるであろうが、ラセミ混合物が製造される場合も可能であり、かつ考慮される。そのようなラセミ混合物は場合により周知の方法を用いて分離でき、個々の鏡像異性体を単独で使用できる。ペプチドが互変異性体形態で存在しうる場合、ならびにそのような温度、溶媒およびpHの特殊な条件下では、平衡状態で存在するかまたは主に1形態で存在するかにかかわらず、それぞれの互変異性体形態が本発明に含まれるものとする。したがって、光学活性形態である式(I)のペプチドの単一鏡像異性体は、不斉合成、光学的に純粋な前駆物質からの合成、またはラセミ体の分割により得ることができる。
【0181】
式(II)および(III)のペプチドは式(I)のペプチドの特定の立体異性体形態であるが、本発明は式(II)および(III)に包含される立体異性体形態に限定されると解釈すべきではない。
【0182】
本発明はさらに本発明のペプチドのプロドラッグを含むものとし、これらは投与されると代謝プロセスにより化学変換を受けた後に薬理活性ペプチドになる。一般に、そのよう
なプロドラッグは本発明のペプチドの機能性誘導体であり、それらはインビボで容易に式(I)のペプチドに変換できる。プロドラッグはいずれかの共有結合した化合物であり、それらはインビボで式(I)の活性親ペプチド薬物を放出する。適切なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための一般法は、たとえば“Design of Prodrugs”ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。典型的なプロドラッグの例は、たとえばヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノ官能基のエステル化により、官能基部分に生物学的に不安定な保護基をもつ。たとえば例示であって限定ではないが、プロドラッグにはエステルプロドラッグ形態を採用した式(I)のペプチド、たとえばRが−OHである場合に式(I)のR基の低級アルキルエステル(低級アルキルエステルは、アルキル基中に1〜8個の炭素原子を含むことができる)、またはアラルキルエステル(アラルキル基中に6〜12個の炭素原子をもつ)が含まれる。おおまかに言うと、プロドラッグには、インビボで酸化、還元、アミノ化、脱アミノ、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル、アシル化、脱アシル、リン酸化または脱リン酸されて式(I)の活性親ペプチド薬物を生成しうる化合物が含まれる。
【0183】
ペプチドの半減期を延長するために、式Iのペプチドの特定の修飾を行なうことができる(参照:G. Pasuta and F. M. Veronese (2007) “Polymer-drug conjugation, recent achievements and general strategies” Progress in Polymer Science 32 (8-9): 933-961)。
【0184】
本発明には、式(I)に示したものと同一であるが、実際には式(I)に描かれた1個以上の原子が自然界で通常みられる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数をもつ原子で交換されたペプチドも含まれる。本発明のペプチドに取り込ませることができる同位体の例には、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、たとえばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが含まれる。上記の同位体および/または他の原子の同位体を含む本発明のペプチドおよびそのペプチドの医薬的に許容できる塩類または溶媒和物は、本発明の範囲に含まれる。本発明の特定の同位体標識ペプチド、たとえば放射性同位体、たとえばHおよび14Cを取り込ませたものは、多様なアッセイ、たとえば薬物および/または基質の組織分布アッセイに有用である。より重い同位体による置換、たとえばジュウテリウム(H)による1個以上の水素原子の置換は、場合により代謝安定性の増大を含めた薬理学的利点を提供できる。同位体標識した式(I)のペプチドは一般に、同位体標識した試薬を同位体標識していない試薬の代わりに用いて製造できる。
【0185】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの1態様において、Rは−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3である。
【0186】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの他の態様において、Rは−C(=O)−NH−であり、xは1であり、yは4である。
【0187】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの他の態様において、Rは−NH−C(=O)−であり、xは3であり、yは2である。
【0188】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドのさらに他の態様において、Rは−NH−C(=O)−であり、xは4であり、yは1である。
【0189】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの特定の態様において、Rは−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3であるか、あるいはRは−NH−C(=O)−であり、xは3であり、yは2である。より特別には、Rは−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3である。意外にも予想外に、ラクタム橋をも
つ本発明によるペプチドであってアミド結合がGlu(環状部分のN末端にある)の側鎖およびOrn(環状部分のC末端にある)の側鎖により配置されたものは一般に、特に本明細書に記載する低密度hMC4−R系におけるEC50により測定して、アミド結合がAspおよびLysにより配置されているけれども他の点では同一のものと比較して、改善された力価をもたらすことが見出された。この知見は、メラノコルチン受容体特異的ペプチドのラクタム橋のアミド結合の位置および方向は活性にとってほとんど重要ではなく受容体と相互作用しないという先行技術における主張に反する。たとえば、Bednarek MA et al., Potent and selective peptide agonists of α-melanotropin action at human
melanocortin receptor 4: their synthesis and biological evaluation in vitro. Biochem. Biophys. Res. Comm. 286: 641-645 (2001)を参照。
【0190】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの態様において、
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0191】
【化14】

【0192】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択される。
【0193】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの態様において、
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0194】
【化15】

【0195】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択される。
【0196】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの態様において、RはHである。
【0197】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの態様において、
は、Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0198】
【化16】

【0199】
から選択される。
【0200】
何らかの理論により拘束されるわけではないが、Hisを、非芳香族アミノ酸、特に非極性の小分子脂肪族アミノ酸、たとえばProもしくはAla、または極性の非荷電もしくは荷電アミノ酸、たとえばLys、Asp、GlnおよびAsnにより置き換えることは、血圧作用の減弱に寄与すると考えられる。したがって、コア配列中のHisの位置を、たとえばDab、Dab(アセチル)、Ser、Met(O)、Met(O)、Thr、Hyp、Gln、Pro、Ala、Asn、Cit、Orn、Dap、Lys、またはArg、特にPro、AsnまたはGlnにより置き換えることができる。
【0201】
したがって、本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)の下記のペプチドが提供される:
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0202】
【化17】

【0203】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択される。
【0204】
本発明のさらに他の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)の下記のペプチドが提供される:
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0205】
【化18】

【0206】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択される。
【0207】
本発明の特定の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)の下記のペプチドが提供される:
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0208】
【化19】

【0209】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5、特に0〜2、たとえば0から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5、特に1〜4から選択される。
【0210】
本発明のさらに他の特定の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)の下記のペプチドが提供される:
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0211】
【化20】

【0212】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5、特に0〜2、たとえば0から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5、特に1〜4から選択される。
【0213】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドのさらに他の態様において、
は、Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;

【0214】
【化21】

【0215】
から選択される。
【0216】
本発明の他の態様において、RはHであり、R
【0217】
【化22】

【0218】
から選択される、式(I)、特に式(II)または(III)のペプチドが提供される。
【0219】
本発明の他の態様において、RはHであり、R
【0220】
【化23】

【0221】
から選択される、式(I)、特に式(II)または(III)のペプチドが提供される。
【0222】
本発明の他の態様において、Rは−CH−であり、Rは−(CH−であり、RとRは一緒に非置換ピロリジン環を形成している、式(I)、特に式(II)または(III)のペプチドが提供される。
【0223】
本発明のさらに他の態様において、Rは−CH−であり、Rは−(CH−であり、RとRは一緒に−OHで置換されたピロリジン環を形成している、式(I)、特に式(II)または(III)のペプチドが提供される。式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドのさらに他の態様において、Rは−NHまたは−OHである。
【0224】
式(I)、特に式(II)または(III)によるペプチドの特定の態様において、Rは−NHである。
【0225】
前記の1以上の態様を組み合わせて、本発明によるペプチドのさらに他の特定の態様を提供することができる。
【0226】
したがって、本発明の特定の態様において、式(I)、特に式(II)または(III)による下記のペプチドが提供される:
は−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3であり;
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【0227】
【化24】

【0228】
から選択され;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5から選択され;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5から選択され;
4a、R4bおよびR4cのうち1以上はそれぞれ独立して
【0229】
【化25】

【0230】
から選択され;
は、−NHまたは−OHである。
【0231】
本発明の若干の具体的ペプチドは
【0232】
【化26−1】

【0233】
【化26−2】

【0234】
【化26−3】

【0235】
【化26−4】

【0236】
または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩である。
【0237】
特に、本発明は
【0238】
【化27】

【0239】
または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩に関する。
【0240】
特に、本発明は
【0241】
【化28】

【0242】
または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩にも関する。
【0243】
特に、本発明は
【0244】
【化29】

【0245】
または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩にも関する。
【0246】
本発明のさらに他の若干の具体的ペプチドは
【0247】
【化30】

【0248】
または以上のいずれかの医薬的に許容できる塩である。
【0249】
6.1 具体的ペプチド
下記の構造のペプチドは前記の一般法により合成され、指示した場合以外、各ペプチドのMC1−R KiおよびMC4−R Ki値は後記の7.1に記載する[I125]−NDP−α−MSHを用いる競合結合アッセイ法で測定された。すべてのペプチドをTFA塩の形態で製造し、ただし、実施例43、46および67のペプチドは酢酸塩の形態で製造された。
【0250】
本発明の若干の具体的ペプチドの合成を以下に示す。これらのペプチドは、Symphony Multiplex Peptide Synthesizer (Rainin Instrument Company/Protein Technologies Inc)自動ペプチド合成装置により固相合成を用いて製造された。
【0251】
工程1:Ornのカップリング
Sierber樹脂9−Fmoc−アミノキサンテン−3−イルオキシ−ポリスチレン樹脂(
0.39mol/g,ChemPep Inc., #151902)を、3×5mLのDMF中で10分間、膨潤させた。その後、2×5mLのDMF中20%ピペリジンを用いて10分間、Fmocを脱保護した。次いで樹脂を6×5mLのDMF中で30秒間、洗浄した。5mLのDMF中200mM Fmoc−Orn(Alloc)−OHおよび5mLのDMF中200mM HBTU(400mM NMMを含有)を添加し、30分後に樹脂を3×5mLのDMFで30秒間、洗浄した。
【0252】
工程2:次の6つのアミノ酸(AA)のカップリング
工程1からの樹脂をまず3×5mLのDMF中で30秒間、膨潤させ、2×5mLのDMF中20%ピペリジンを用いて10分間、Fmocを脱保護し、次いで6×5mLのDMFで30秒間、洗浄した。5mLの200mM Fmoc−AA−OH溶液および5mLのDMF中200mM HBTU(400mM NMMを含有)を添加し、30分後に樹脂を3×5mLのDMFで30秒間、洗浄した。
【0253】
この工程を各アミノ酸(AA)について繰り返した。
【0254】
工程3:アセチル化
2×5mLのDMF中20%ピペリジンを用いて10分間、Fmocを脱保護し、次いで樹脂を3×5mLのDMFで30秒間、洗浄した。その後、5mLの50% AcO/DMF溶液を添加し、30分後にペプチド樹脂を3×5mLのDMFで30秒間、および6×5mLのDMFで30秒間、洗浄した。
【0255】
工程4:アリル/Alloc脱保護
ペプチド樹脂(0.6mmol)とフェニルシラン(Oakwood Chemical, #S13600)(20当量)を20mLのDCM中で混合し、窒素を5分間、吹き込んだ。
【0256】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(Strem Chemicals, Inc., #46-2150)(0.2当量)を添加し、混合物を窒素と共に1時間、撹拌した。新鮮な試薬を用いて、この操作を1回1時間、さらに1回30秒間、繰り返した。処理したペプチド樹脂を、次いでDCM×3およびDMF×3で洗浄した。
【0257】
工程5:ラクタム形成
TBTU(2当量)およびエチルジイソプロピルアミン(DIEA)(4当量)を用いて20mLのDMF中で1時間、ペプチド樹脂上でラクタム環を形成した。陽性のKaiserニンヒドリン試験がみられた場合には、2回目のカップリングが必要な可能性がある。
【0258】
工程6:ペプチド開裂
ペプチド樹脂(0.6mmol)と20mLの5%ジエチルジチオ−カルバミン酸ナトリウム3水和物(NaCSNEt,Aldrich, #228680)をDMF中で20分間、混合し、次いでDMF×3、DCM×3およびジエチルエーテル×2で洗浄した。
【0259】
次いで樹脂(0.6mmol)を25mLのTFA/TIS/HO(90:5.0:5.0 v/v/v)中で2.5時間、撹拌した。樹脂を濾過した。濾液を約10mLの体積まで真空濃縮し、約140mLの冷ジエチルエーテル(約0℃に予冷)を添加した。
【0260】
混合物をボルテックス撹拌し、次いで冷蔵庫(約−4℃)に1時間入れておき、2800rpmで5分間、遠心し、エーテル層をデカントした。
【0261】
ペプチドを90mLの冷ジエチルエーテル(約0℃に予冷)で洗浄し、ボルテックス撹拌し、2800rpmで5分間、遠心し、エーテル層をデカントした。
【0262】
得られた固体を50% AcOH/HOに溶解し、室温で一夜保存した。
【0263】
粗製ペプチド溶液を濃縮して、HPLC精製用の固体粗製ペプチドを得た。
【0264】
HPLC精製後、イオン交換(×100当量)を用いてペプチドTFA塩をペプチド酢酸塩に変換した。用いた陰イオン交換樹脂は、Dowex SBR LC NG, OH形(Supelco, Cat# 14036-U)であった。
【0265】
実施例46:Ac-Arg-cyclo(Glu-Gln-D-Phe(4-CN)-Arg-Trp-Orn)-NH2 (SEQ ID NO:51)
表題ペプチドの製造に際して、前記の方法に従った。
【0266】
工程2で添加したアミノ酸は、カップリングさせた順に、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-D-Phe(4-CN)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OAll)-OH、およびFmoc-Arg(Pbf)-OHであった。
【0267】
得られたペプチドをHPLC(カラム: Atlantis dC18 OBD(商標)19×100mm(5μ, Waters part # 186001367)により、10% MeOH/HO,0.1% TFAを含有(溶媒A)および90% MeOH/HO,0.1% TFAを含有(溶媒B)を用いて精製した。0%−5%の溶媒Bで5分間、そして5%−35%の溶媒Bで30分間の勾配を用いた。
【0268】
ペプチドの収率は10%であった。
【0269】
実施例67:Ac-Arg-cyclo(Glu-Pro-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-Orn)-NH2 (SEQ ID NO:72)
表題ペプチドの製造に際して、前記の方法に従い、ただし、15mLのDMF中5%ジエチルジチオ−カルバミン酸ナトリウム3水和物、16mLのTFA/TIS/HO、および90mL+60mLのジエチルエーテルを工程6で用いた。さらに、濾液を5mLに濃縮した。
【0270】
工程2で添加したアミノ酸は、カップリングさせた順に、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-D-Phe(4-F)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Glu(OAll)-OH、およびFmoc-Arg(Pbf)-OHであった。
【0271】
得られたペプチドをHPLC(カラム: Atlantis dC18 OBD(商標)19×100mm(5μ, Waters part # 186001367)により、10% MeOH/HO,0.1% TFAを含有(溶媒A)および90% MeOH/HO,0.1% TFAを含有(溶媒B)を用いて精製した。5%−10%の溶媒Bで5分間、そして10%−40%の溶媒Bで30分間の勾配を用いた。
【0272】
ペプチドの収率は16%であった。
【0273】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表3−10】

【表3−11】

【表3−12】

【表3−13】

【表3−14】

【表3−15】

【表3−16】

【表3−17】

【表3−18】

【表3−19】

【表3−20】

【表3−21】

【表3−22】

【表3−23】

【表3−24】

【表3−25】

【表3−26】

【表3−27】

【表3−28】

【表3−29】

【表3−30】

【表3−31】

【表3−32】

【表3−33】

【表3−34】

【表3−35】

【表3−36】

【表3−37】

【表3−38】

【表3−39】

【表3−40】

【表3−41】

【表3−42】

【表3−43】

【表3−44】

【表3−45】

【表3−46】

【表3−47】

【表3−48】

【表3−49】

【表3−50】

【表3−51】

【表3−52】

【表3−53】

【表3−54】

【表3−55】

【表3−56】

【表3−57】

【表3−58】

【表3−59】

【0274】
7.0 本発明のペプチドの評価に用いた試験法およびアッセイ法
本発明のメラノコルチン受容体特異的ペプチドは、結合、機能状態および有効性を判定するための多様なアッセイ系および動物モデルにより試験することができる。
【0275】
7.1 [I125]−NDP−α−MSHを用いる競合阻害アッセイ
例示したペプチドにつき、本発明に従い、組換えhMC4−R、hMC3−RまたはhMC5−Rを発現するHEK−293細胞から、およびB−16マウスメラノーマ細胞(内在性MC1−Rを含む)から調製した膜ホモジェネートを用いて、競合阻害結合アッセイを実施した。若干の例では、組換えhMC1−Rを発現するHEK−293細胞を用いた。0.5%ウシ血清アルブミン(フラクションV)で予めコートした96ウェルGF/B Milliporeマルチスクリーン濾過プレート(MAFB NOB10)中でアッセイを実施した。膜ホモジェネートを下記のものと共にインキュベートした:0.2nM(hMC4−Rについて)、0.4nM(MC3−RおよびMC5−Rについて)または0.1nM(マウスB16
MC1−RまたはhMC1−Rについて)[I125]−NDP−α−MSH(Perkin
Elmer)、ならびに漸増濃度の本発明の被験ペプチド:100mMのNaCl、2mMのCaCl、2mMのMgCl、0.3mMの1,10−フェナントロリンおよび0.2%のウシ血清アルブミンを含む25mM HEPES緩衝液(pH7.5)中。37℃で60分間のインキュベーション後、アッセイ混合物を濾過し、膜を氷冷緩衝液で3回洗浄した。フィルターを乾燥させ、結合した放射能につきガンマ計数管で計数した。1μMのNDP−α−MSHの存在下での[I125]−NDP−α−MSHの結合の阻害により、非特異的結合を測定した。最大特異的結合(100%)を、1μMのNDP−α−MSHの不存在下と存在下で細胞膜に結合した放射能(cpm)の差として定義した。被験ペプチドの存在下で得られた放射能(cpm)を100%特異的結合に対して正規化して、[I125]−NDP−α−MSH結合の阻害率パーセントを決定した。各アッセイを三重に実施し、実際の平均値を記載し、0%未満の結果を0%として報告した。本発明の被験ペプチドのKi値は、Graph-Pad Prism(登録商標)曲線フィッティングソフトウェアを用いて決定された。このアッセイからの結果を本明細書に提示する(6.1を参照)
。若干のペプチドについては、2より多い数値の平均値を提示する。
【0276】
7.2 アゴニスト活性のアッセイ
MC4−Rを発現するHEK−293細胞において本発明のペプチドが機能性応答を誘発する能力の尺度として、細胞内cAMPの蓄積を調べた。組換えhMC4−Rを発現する集密状態のHEK−293細胞を、無酵素の細胞解離用緩衝液中でのインキュベーションにより培養プレートから剥離した。分散した細胞を、Earleの平衡塩類溶液に懸濁した:10mMのHEPES(pH7.5)、1mMのMgCl、1mMのグルタミン、0.5%のアルブミンおよび0.3mMの3−イソブチル−1−メチル−キサンチン(IBMX)(ホスホジエステラーゼ阻害剤)を含有。細胞を96ウェルプレートにウェル当たり0.5×10細胞の密度で播種し、10分間プレインキュベートした。細胞を37℃で15分間、DMSO(最終DMSO濃度1%)に濃度範囲0.05〜5000nMで溶解した全アッセイ体積200μLk本発明のペプチドに曝露した。NDP−α−MSHを標準アゴニストとして用いた。cAMPレベルを、HTRF(登録商標)cAMP細胞ベースアッセイ系(Cisbio Bioassaysから)により、クリプテート標識抗cAMPおよびd2標識cAMPを用いて測定し、プレートをPerkin-Elmer Victorプレート読取装置により665および620nMで読み取った。データ分析をGraph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアで非線形回帰分析により行なった。本発明の被験ペプチドの最大有効性を、これに関して完全アゴニスト基準として用いた標準メラノコルチンアゴニストNDP−α−MSHにより達成されたものと比較した。
【0277】
7.3 高密度および低密度hMC4−R機能アッセイ
ヒトMC4−R(Palatin Technologies, US, University of Michiganからのライセンスをもつ)で形質転換したHEK293細胞系を用いた。ヒトMC4−RはT-REx(商標)System, Invitrogenを用いてHEK293に導入された。T-REx(商標)Systemは、大腸菌(E. coli)Tn10エンコードしたテトラサイクリン(Tet)耐性オペロン由来の調節エレメントを用いたテトラサイクリン調節された哺乳動物発現系を用いている。T-REx(商標)Systemの使用により、目的遺伝子であるヒトMC4−R遺伝子の発現が、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの不存在下では抑制され、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの存在下では誘導される(参照:T-REx(商標) System Manual, Invitrogen発行)。
【0278】
HEK293−T−REx−MC4−R細胞を、L−グルタミン(Gibco 25030)、10%のウシ胎仔血清(FBS)、200μg/mLのゼオシン(Zeocin)(Invitrogen 46-0072)および6μg/mLのブラスチサイジン(Invitrogen 46-1120)を補充したDMEM(Gibco 11965)中で、5% COおよび湿度95%において37℃で培養した。75%集密状態の細胞のT−150フラスコを、2種類の濃度のドキシサイクリン(低密度hMC4−R系を提供する0.1ng/mL、および高密度hMC4−R系を提供する10ng/mL)と共に、5% COにおいて37℃で16〜18時間インキュベートして、MC4−R発現を誘導した。アッセイ当日、細胞をPBS(Gibco 14190)で洗浄し、細胞解離用緩衝液(Gibco 13150-016)を用いて収穫し、次いで遠心し、ハンクス平衡塩類溶液(+Ca,+Mg)(Gibco 14025)、10mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH7.4)(Sigma H0887)、1mMのL−グルタミン(Gibco 25030)、1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma A3311)および0.3mMの3−イソブチル−1−メチル−キサンチン(IBMX)に再懸濁した。次いで細胞を計数し、体積を2.5×10細胞/mlに調整した。
【0279】
次いで細胞を96ウェルプレート(BD 353916)に198μL(約5×10)細胞/ウェルで分配し、37℃で10分間インキュベートした。被験化合物をDMSOで最終濃度1mMに希釈した。系列希釈液をポリプロピレン製の取出し可能な12ウェルライブラリ
ーチューブストリップ(VWR cat# 83009-682)内で調製した。120μLの1mM化合物原液をプレートの第2列にピペット添加した。Janusリキッドハンドラー(liquid handler)を用いて化合物を1:10に系列希釈して(25μLの化合物+225μLのDMSO)、合計9種類の濃度にした(10−5〜10−13Mの範囲の最終アッセイ濃度となる)。
【0280】
2μLの標準物質[Nle,D−Phe]−アルファ−メラノコルチン刺激ホルモン(NDP−α−MSH)、または化合物を、96ウェルプレートにJanusロボットシステムを用いて添加した。すべてのアッセイ試料を二重に試験した(すなわち、各試料がそれぞれ2つの低ドキシサイクリンプレートおよび2つの高ドキシサイクリンプレート内にあった)。プレートを穏やかに振とうし、37℃で15分間インキュベートした。ウェル当たり15μLの溶解用緩衝液の添加により反応を停止し、プレートを室温で30分間、振とうした。
【0281】
MC4−Rのアゴニスト刺激はアデニル酸シクラーゼを活性化する;これはアデノシン三リン酸(ATP)からの3’,5’−サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)形成を刺激する酵素である。したがって、MC4−Rのアゴニスト刺激はcAMPのレベルを上昇させる。cAMPレベルをcAMP dynamic 2 HTRFキット(CisBio cat# 62AM4PEC; CisBioが発行したマニュアルを参照)で測定した。cAMPレベルをプレート対照(0%について1% DMSO,100%について400nM NDP−α−MSH)および712nMから0.04nMまでのcAMPの範囲の検量曲線に対して正規化した(本質的にCisBio HTRFキットの記載に従った)。プレートを振とう機上で室温において1時間インキュベートし、Perkin-Elmer Victorプレート読取装置により665および620nmで読み取った。次いでCisBio HTRFキットの記載に従って蛍光比を計算し、GraphPad Prismソフトウェアを用いて蛍光パーセント値の変化をcAMP濃度に対してプロットし、この変動勾配用量応答曲線を利用し、かつ計算したcAMP濃度に基づいて、EC50値および活性化率パーセントを決定した。このアッセイからの結果を本明細書に提示する(8.0を参照)。
【0282】
7.4 食物摂取量および体重の変化
皮下注射経路で投与した選択したペプチドについて、食物摂取量および体重の変化を評価した。雄Sprague-DawleyラットをHilltop Lab Animals, Inc. (ペンシルベニア州スコットデール)から入手した。動物を一般的なポリスチレン製ハンギングケージ内に個別に収容し、管理された12時間オン/オフ照明サイクルで飼育した。水およびペレット状飼料(ProLab RMH 2500, W.F. Fisher & Son Inc.)を適宜与えた。ラットにビヒクル(3.2%マンニトール/50mM Tris緩衝液)または選択したペプチド(1.0mg/kg)を皮下投与した。投与後4および24時間の期間の食物摂取量の変化、ならびに投与後24時間の期間の体重の変化を測定した。投与後48および72時間の期間の体重および食物摂取量の変化も測定して、体重および食物摂取量の変化のベースラインレベルへの復帰を判定した(示していない)。
【0283】
1.0mg/kgの実施例43、46および67の皮下注射による試験ならびに平行した対応するビヒクル対照試験からの食物摂取量(FI,0〜4時間および0〜24時間)および体重(BW,0〜24時間)の結果を下記の表2に示す;平均値±SEM(n=8〜10)として表示。
【0284】
【表4】

【0285】
7.5 ペニス勃起の誘導
本発明のペプチドが雄ラットにおいてペニス勃起(PE)を誘導する能力を、選択したペプチドについて評価した。体重250〜300gの雄Sprague-Dawleyラットを12時間オン/オフ照明サイクルで、食物および水を適宜与えて飼育した。すべての行動試験を9a.m.と4p.m.の間に行なった。ラット6〜8匹のグループに、ペプチドを種々の用量で皮下注射経路により投与した。投与の直後、ラットを一般に遠隔ビデオモニタリング(ハイスピードデジタルビデオ記録システムEVS-DSX-16000DVD-H, CCDカメラ付き, Epic
Systems Inc., 米国ミズーリ州セントルイス)による行動観察のために個別のポリスチレン製ケージ(長さ27cm、幅16cm、および高さ25cm)に入れ、続いてビデオ記録を盲検法でオフラインスコアリングした。ラットを1時間観察し、あくび、毛づくろい動作およびPEを10分間のビン(bin)で記録した。
【0286】
1.0〜3.0mg/kgの実施例43、46および67の皮下注射による試験からのPE結果を、参考例2と共に下記の表3に示す;PEの総数/ラットの平均値±SEM(n=7〜11)、および試験期間中に少なくとも1回の勃起を示したラット数/グループ(レスポンダー%)として表示。対応するビヒクル対照(3.2%マンニトール/50mM Tris緩衝液)を平行して試験した。
【0287】
【表5】

【0288】
8.0 高密度および低密度hMC4−R機能アッセイの結果
例示したペプチドを、前記のセクション7.3に記載した高密度および低密度hMC4−R機能アッセイにより試験し、下記の表4に示す結果を得た。表4は単一点値および平均値の両方を含む。
【0289】
【表6−1】

【0290】
【表6−2】

【0291】
【表6−3】

【0292】
【表6−4】

【0293】
【表6−5】

【0294】
【表6−6】

【0295】
前記の高密度hMC4−R系(すなわち、10ng/mlのドキシサイクリンで処理したHEK293TRexMC4R細胞)において、α−MSHまたはNDP−α−MSHにより達成される最大刺激を1.0(100%)の固有活性と表示した場合に、同じ高密度hMC4−R系でその化合物により達成されるアデニリルシクラーゼの最大刺激に基づいて、約0.1(10%)以上、たとえば0.2(20%)以上、または約0.3(30%)以上、または約0.4(40%)以上、または約0.5(50%)以上、または約0.6(60%)以上、または約0.7(70%)以上、または約0.8(80%)以上、または約0.9(90%)以上、または約1.0(100%)以上の固有活性を示す本発明のペプチドは、MC4受容体に対するアゴニスト(完全または部分的)活性を備えていると考えられる。
【0296】
前記の高密度hMC4−R系(すなわち、10ng/mlのドキシサイクリンで処理したHEK293TRexMC4R細胞)で試験した実施例のペプチドの大部分が、そのアッセイにおいてcAMP産生に関して0.05μM未満、たとえば0.01μM未満、特に0.001μM未満のEC50値を与えた。
【0297】
表4から分かるように、本発明のペプチドは低密度hMC4−R系では固有活性を欠如し、高密度hMC4−R系では完全アゴニストである場合がある。
【0298】
表4からさらに分かるように、本発明のペプチドは前記の低密度hMC4−R系では部分アゴニストであり、前記の高密度hMC4−R系では完全アゴニストである場合がある。
【0299】
表4からさらに分かるように、本発明のペプチドは低密度hMC4−R系と高密度hMC4−R系の両方で完全アゴニストである場合がある。
【0300】
何らかの理論により拘束されるわけではないが、前記の低密度hMC4−R系では固有活性を欠如するか、あるいは部分アゴニストであり(すなわち、低密度hMC4−R系で0から70%までの固有活性をもつペプチド)、かつ前記の高密度hMC4−R系では部分または完全アゴニストであるペプチド(すなわち、高密度hMC4−R系で10%以上また70%以上の固有活性をもつペプチド)は、低密度と高密度の両方のhMC4−R系で完全アゴニストであるペプチドと比較して、MC4受容体活性化から生じる性的作用、たとえばペニス勃起作用をもたないか、あるいはそれが低レベルであると考えられる。前記に説明したように、これらの性的作用は、エネルギー恒常性および代謝関連、摂食関連
、および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態の処置に際しては望ましくない副作用であると考えられる。
【0301】
したがって、本発明によるペプチドは、MC4受容体の活性化に応答する疾患、障害および/または状態、特に、エネルギー恒常性および代謝関連(たとえば糖尿病)、摂食関連、および/またはエネルギーバランスおよび体重関連の疾患、障害および/または状態であって、肥満症、過体重、ならびに肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態、たとえば2型糖尿病およびメタボリックシンドロームを含めたものの処置に有用であるための有望なMC4受容体親和性、有効性および力価をもつと考えられる。
【0302】
本発明を特にこれらの好ましい態様に関して詳述したが、他の態様も同じ結果を達成できる。本発明の変更および改変は当業者に明らかであり、そのような態様および均等物はすべて包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の環状ペプチド:
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩
[式中:
は、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−であり;
は、−Hまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【化2】

から選択され;
4a、R4bおよびR4cは、それぞれ独立して水素、ハロ、(C−C10)アルキル−ハロ、(C−C10)アルキル−ジハロ、(C−C10)アルキル−トリハロ、(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、(C−C10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、モノ置換アミノ、ジ置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはアルコキシ−カルボニルから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではなく;
は、−OHまたは−N(R6a)(R6b)であり;
6aおよびR6bは、それぞれ独立してH、またはC−C線状、分枝または環状アルキル鎖であり;
は、−Hまたは−C(=O)−NHであり;
wは、それぞれの場合、独立して0〜5であり;
xは、1〜5であり;
yは、1〜5であり;
zは、それぞれの場合、独立して1〜5である]。
【請求項2】
式(II):
【化3】

またはその医薬的に許容できる塩である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
は−C(=O)−NH−であり、xは2であり、yは3である、請求項1または請求項2に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
は−NH−C(=O)−であり、xは3であり、yは2である、請求項1または請求項2に記載の環状ペプチド塩。
【請求項5】
はHまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合にはR
【化4】

から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
はHまたは−CH−であり、Rが−CH−である場合にはRと共にピロリジン環を形成し、そのピロリジン環は場合により−OHで置換されていてもよく;
は、Rが−CH−である場合には−(CH−であり、そうでない場合に
はR
【化5】

から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
はHであり、R
【化6】

から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
は−CH−であり、Rは−(CH−であり、RとRは一緒に非置換ピロリジン環を形成している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは独立して
【化7】

から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは独立して水素、ハロ、(C−C)アルキル−ハロ、(C−C)アルキル−ジハロ、(C−C)アルキル−トリハロ、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、ニトロ、ニトリル、アミノまたはヒドロキシから選択され、ただし、R4a、R4bおよびR4cのうち少なくとも1つは水素ではない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項11】
4aは4位にあって−C≡Nであり、R4bおよびR4cはそれぞれHである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項12】
4aは4位にあって−Fであり、R4bおよびR4cはそれぞれHである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の環状ペプチド。
【請求項13】
【化8】

から選択される環状ペプチドまたは前記のいずれかの医薬的に許容できる塩。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の環状ペプチドまたはその医薬的に許容できる塩および医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項16】
MC4受容体の活性化に応答する疾患、障害および/または状態の処置に使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項17】
糖尿病;肥満症;過体重;ならびに/あるいは肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態であって、インスリン抵抗性;グルコース耐性障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;異脂肪血症;高脂血症;高血圧症;心障害;心血管障害;非アルコール性脂肪肝疾患;関節障害;続発性骨関節炎;胃食道逆流;睡眠無呼吸;アテローム性硬化症;発作;大血管および小血管疾患;脂肪症;胆石;および胆嚢障害を含むものの処置に使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項18】
MC4受容体の活性化に応答する疾患、障害および/または状態を処置する方法であって、療法有効量の請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチドをその必要がある患者に投与することを含む方法。
【請求項19】
糖尿病、肥満症、過体重、ならびに/あるいは肥満症および/または過体重に関連する疾患、障害および/または状態であって、インスリン抵抗性;グルコース耐性障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;異脂肪血症;高脂血症;高血圧症;心障害;心血管障害;非アルコール性脂肪肝疾患;関節障害;続発性骨関節炎;胃食道逆流;睡眠無呼吸;アテローム性硬化症;発作;大血管および小血管疾患;脂肪症;胆石;および胆嚢障害を含むものを処置する方法であって、療法有効量の請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチドをその必要がある患者に投与することを含む方法。
【請求項20】
食物摂取量、体重および/または体重増加を低下させる方法であって、薬理学的有効量の請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチドをその必要がある個体に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−529505(P2012−529505A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514921(P2012−514921)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050626
【国際公開番号】WO2010/144038
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】