説明

メンテナンス装置、メンテナンス方法、及び液体噴射装置

【課題】キャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を除去することが可能なメンテナンス装置、メンテナンス方法、及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】メンテナンス装置は、ノズルからインクを噴射する記録ヘッドに対してノズルを囲うように当接可能であって、記録ヘッド側に矩形状の開口部25aを有する有底箱状をなすキャップ25と、キャップ25における開口部25aの周縁部を構成する開口縁25bとインクを吸収可能な吸収布41とを接触させる駆動機構28と、吸収布41を開口縁25bが有する直線部分と交差する方向に移動させる布巻取リール43及び巻取モーター44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置、該液体噴射装置に備えられるメンテナンス装置、及びメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体噴射ヘッドのノズルからターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置としてインクジェット式プリンターが知られている。こうしたプリンターでは、ノズルからのインクの噴射不良を低減するために、ノズルから増粘したインク(液体)や気泡などを強制的に吐出させるクリーニングと呼ばれるメンテナンスが適宜行われる。
【0003】
クリーニングは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に対してノズルを囲うようにキャップを当接した状態で、記録ヘッドとキャップとで形成される密閉空間をチューブポンプによって吸引して負圧にすることで、この負圧を利用してノズルから増粘したインクや気泡などを強制的に排出するものである。
【0004】
そして、上述のようなクリーニングを行うと、記録ヘッドにおけるキャップとの接触部分に不要なインクが付着するため、この付着したインクは、通常、ワイパーによって払拭される。しかしながら、このワイパーによる払拭が十分でない場合があるため、従来、ヘッド(液体噴射ヘッド)のノズル面に付着した不要なインクを布で拭き取る拭き取り装置を備えたプリンターが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−12224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のプリンターでは、クリーニングによってノズル面に付着した不要なインクを拭き取ることはできるが、クリーニングによってキャップにおけるノズル面との接触部分に付着した不要なインクを拭き取ることはできない。このため、キャップに付着した不要なインクが乾燥して増粘した状態となり、この状態で、クリーニングを行うべく再びノズルを囲うようにキャップをノズル面に当接すると、キャップに付着した増粘インクがノズル面に付着する。
【0007】
そして、ノズル面に増粘インクが付着した状態で、ノズル面がワイパーによって払拭されると、この増粘インクがノズル面に擦りつけられてノズル内に侵入することで、インクの吐出不良を発生させてしまうおそれがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、キャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を除去することが可能なメンテナンス装置、メンテナンス方法、及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接可能であって、前記液体噴射ヘッド側に多角形状の開口部を有する有底箱状をなすキャップと、前記キャップにおける前記開口部の周縁部と前記液体を吸収可能な液体吸収シートとを接触させる接触手段と、前記液体吸収シートと前記キャップとを前記周縁部が有する直線部分と交差する方向に相対移動させる相対移動手段とを備えた。
【0010】
通常、キャップを液体噴射ヘッドに対してノズルを囲うように当接させた状態でキャップ内を吸引してノズルから液体を強制的に排出するクリーニングを行うと、キャップにおける開口部の周縁部に液体が付着して汚れてしまう。この点、この発明によれば、接触手段によってキャップにおける開口部の周縁部と液体を吸収可能な液体吸収シートとを接触させることで、キャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を液体吸収シートに吸収させて除去することが可能となる。また、今回のキャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を前回使用した液体吸収シートに吸収させる場合でも、相対移動手段によって液体吸収シートとキャップとを該キャップにおける開口部の周縁部が有する直線部分と交差する方向に僅かに相対移動させるだけで、前回液体吸収シートに吸収させた液体の染みと今回のキャップにおける開口部の周縁部に付着した液体との接触面積を小さく抑えることが可能となる。したがって、液体吸収シートを効率的に使用することが可能となる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを前記キャップにおける前記開口部の前記周縁部を含む平面と平行な方向に移動させる。
この発明によれば、キャップを移動させずに液体吸収シートを移動させる構成であるため、キャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を平坦な液体吸収シートによって容易且つ効率的に吸収して除去することが可能となる。なお、ここで言う「平行」とは、完全な平行状態を意味するだけでなく、上述した効果が得られる範囲内であれば、完全な平行状態でなくても多少の誤差を含むものとする。
【0012】
本発明のメンテナンス装置において、前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを直線的に移動させる。
この発明によれば、長尺帯状にした液体吸収シートをさらにロール状にしてキャップを挟んだ両側のうちの一方側から直線的に繰り出すとともに他方側で巻き取るように構成することで、液体吸収シートの交換頻度を抑制することが可能となる。なお、ここで言う「直線的」とは、「真っ直ぐ」ということを意味するものとする。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを、前記キャップを前記液体噴射ヘッドに当接させる際に移動させる方向と平行に延びる軸線を中心に回動させる。
【0014】
この発明によれば、キャップを回動させずに液体吸収シートを回動させる構成であるため、キャップにおける開口部の周縁部に付着した液体を所定の大きさに形成された液体吸収シートによって容易且つ効率的に吸収して除去することが可能となる。
【0015】
本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス手段とを備え、前記メンテナンス手段を上記構成のメンテナンス装置によって構成した。
【0016】
この発明によれば、上記構成のメンテナンス装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
本発明のメンテナンス方法は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接可能であって、前記液体噴射ヘッド側に多角形状の開口部を有する有底箱状をなすキャップにおける前記開口部の周縁部と前記液体を吸収可能な液体吸収シートとを接触させる接触ステップと、前記液体吸収シートと前記キャップとを前記周縁部が有する直線部分と交差する方向に相対移動させる相対移動ステップとを備えた。
【0017】
この発明によれば、上記構成のメンテナンス装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】同プリンターのヘッドクリーニングユニットにおいてキャップが当接位置にあるときの状態を示す断面模式図。
【図3】同プリンターのヘッドクリーニングユニットにおいてキャップが離間位置にあるときの状態を示す断面模式図。
【図4】同プリンターのキャップクリーニングユニットが使用位置にあるときの状態を示す断面模式図。
【図5】同プリンターのキャップクリーニングユニットによってキャップをクリーニングするときの状態を示す断面模式図。
【図6】キャップクリーニングユニットの吸収布にキャップの開口縁に付着したインクを複数回吸収させた場合のインクの染みの跡を示す平面模式図。
【図7】変更例において、キャップクリーニングユニットの吸収布にキャップの開口縁に付着したインクを複数回吸収させた場合のインクの染みの跡を示す平面模式図。
【図8】別の変更例において、キャップクリーニングユニットの吸収布にキャップの開口縁に付着したインクを複数回吸収させた場合のインクの染みの跡を示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなす本体フレーム12を備えている。本体フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿って延びる矩形板状の支持台13が設けられている。支持台13上には、本体フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構によりターゲットとしての記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0021】
本体フレーム12内における支持台13の上方には、該支持台13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16には左右方向に貫通するように支持孔16aが形成されるとともに、該支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、キャリッジ16がガイド軸15によって左右方向(主走査方向)に往復移動可能に支持されている。
【0022】
本体フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17a及び従動プーリー17bが回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されている。
【0023】
各プーリー17a,17b間には、一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、キャリッジモーター18の駆動力により、ガイド軸15にガイドされながら無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動されるようになっている。
【0024】
図1及び図2に示すように、キャリッジ16上には、内部に液体としての複数色(本実施形態では、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの4色)のインクが互いに隔絶された状態で収容されたインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。
【0025】
一方、キャリッジ16の下部には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が支持されている。記録ヘッド19の下面であるノズル形成面19aには、各色のインクを噴射するための複数のノズル21が開口している。各ノズル21は、前後方向に並んでなる複数(本実施形態では4列)のノズル列を形成している。そして、各ノズル列は、左右方向において互いに等間隔で平行に並んでいる。
【0026】
そして、インクカートリッジ20内の各インクは、記録ヘッド19に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19の各ノズル列の各ノズル21から支持台13上に給送された記録用紙Pにそれぞれ噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0027】
また、本体フレーム12内の右端部に位置する記録用紙Pと対応しないホームポジション領域(非印刷領域)には、各種のメンテナンスを行うためのメンテナンス手段としてのメンテナンス装置23が設けられている。
【0028】
メンテナンス装置23は、非印刷時に記録ヘッド19のクリーニングを行うためのヘッドクリーニングユニット24と、記録ヘッド19のクリーニング後にヘッドクリーニングユニット24が有するキャップ25のクリーニングを行うためのキャップクリーニングユニット26とを備えている。キャップクリーニングユニット26は、本体フレーム12内におけるヘッドクリーニングユニット24よりも右側に配置されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、ヘッドクリーニングユニット24は、記録ヘッド19側である上端に矩形状の開口部25aを有する有底箱状をなすとともに記録ヘッド19に対して各ノズル21を囲うように当接可能なキャップ25と、記録ヘッド19のノズル形成面19aを払拭可能なワイパー27とを備えている。さらに、ヘッドクリーニングユニット24は、キャップ25を昇降及び回動するとともにワイパー27を昇降する接触手段としての駆動機構28とを備えている。
【0030】
駆動機構28は、その駆動源となる昇降モーター29及び回動モーター30を備えている。昇降モーター29及び回動モーター30は、インクジェット式プリンター11の稼働状態を統括的に制御する制御部31とそれぞれ電気的に接続されている。そして、昇降モーター29及び回動モーター30は、制御部31によってそれぞれ駆動制御される。
【0031】
キャップ25は、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態で、駆動機構28により、記録ヘッド19に当接する当接位置(図2で示す位置)と記録ヘッド19から離間する離間位置(図3で示す位置)との間で移動される。さらに、キャップ25は、駆動機構28により、該キャップ25が移動する上下方向(昇降方向)と平行に延びるとともにキャップ25の中心を通る軸線を中心として回動される。
【0032】
また、キャップ25の開口部25aの周縁部(キャップ25の上端)は、開口縁25bとされている。開口縁25bは、開口部25aが矩形状をなしているため、互いに対向する2組の直線部分を有している。すなわち、開口縁25bは、矩形枠状をなしている。2組の直線部分は、それぞれ左右方向及び前後方向に延びるとともに、左右方向に延びるものの方が前後方向に延びるものよりも長くなっている。そして、開口縁25bは、キャリッジ16をホームポジション領域に移動させた状態でキャップ25を当接位置に移動させると、記録ヘッド19のノズル形成面19aに当接する。
【0033】
ワイパー27は、キャップ25よりも印刷領域(記録用紙Pと対応する領域)側に配置されている。そして、ワイパー27は、駆動機構28によって昇降されることで、キャリッジ16の移動に伴う記録ヘッド19のノズル形成面19aの移動領域に対して出没するようになっている。
【0034】
図2及び図3に示すように、キャップ25の底壁には、可撓性材料よりなる排出チューブ32の基端側(上流側)がキャップ25内と連通するように接続される一方、該排出チューブ32の先端側(下流側)は廃インクタンク33内に挿入されている。排出チューブ32の途中位置には、キャップ25側から廃インクタンク33側へ向かってキャップ25内を吸引可能なチューブポンプ34が設けられている。
【0035】
チューブポンプ34は、制御部31と電気的に接続されるとともに、該制御部31によって駆動制御される。そして、記録ヘッド19のノズル形成面19aに各ノズル21を囲うようにキャップ25を当接させた状態でチューブポンプ34を駆動することで、各ノズル21から増粘したインクが気泡等とともに吸引されて、キャップ25内及び排出チューブ32内を介して廃インクタンク33内に排出される、いわゆるヘッドクリーニングが行われる。
【0036】
図1及び図4に示すように、キャップクリーニングユニット26は、前後方向に長い直方体の枠状のユニットフレーム40を備えている。ユニットフレーム40における前上部には、インクを吸収可能な長尺帯状の液体吸収シートとしての吸収布41がロール状に巻かれた布供給リール42が、左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。一方、ユニットフレーム40における後上部には、布供給リール42から繰り出される吸収布41を巻き取る布巻取リール43が、左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0037】
布巻取リール43は、その駆動源となる巻取モーター44を備えている。巻取モーター44は、制御部31と電気的に接続されるとともに、該制御部31によって駆動制御される。したがって、布巻取リール43は、巻取モーター44の駆動により、図4における時計方向に回転されて、布供給リール42から繰り出される吸収布41を巻き取る。この場合、吸収布41は、両リール42,43間において、キャップ25の開口縁25bを含む平面(本実施形態では水平面)と平行な方向である前方から後方に向かう方向に直線的に移動される。
【0038】
また、キャップクリーニングユニット26は、該キャップクリーニングユニット26が有するユニット移動モーター45の駆動により、ヘッドクリーニングユニット24の右側に位置する待機位置(図1で示す位置)と、ヘッドクリーニングユニット24が両リール42,43によって前後方向に挟まれる使用位置(図4で示す位置)との間で移動される。ユニット移動モーター45は、制御部31と電気的に接続されるとともに、該制御部31によって駆動制御される。
【0039】
図4に示すように、キャップ25が離間位置にあってキャップクリーニングユニット26が使用位置にある状態では、布供給リール42から繰り出されて布巻取リール43に巻き取られる吸収布41は、キャップ25よりも上側で該キャップ25と対向する。この状態でキャップ25を当接位置に移動(上昇)させると、該キャップ25の開口縁25bが、図5に示すように、吸収布41の下面に接触する。なお、本実施形態では、布巻取リール43及び巻取モーター44によって相対移動手段が構成されている。
【0040】
次に、インクジェット式プリンター11のメンテナンスを行う際の作用について説明する。
さて、インクジェット式プリンター11のメンテナンスを行う場合には、まず、記録ヘッド19のクリーニングを行う。そして、この記録ヘッド19のクリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をホームポジション領域のキャップ25の真上の位置に移動させた状態で、キャップ25を上昇させて該キャップ25を当接位置に移動させる。すると、キャップ25によって各ノズル21が囲まれるとともに、キャップ25の開口縁25bが記録ヘッド19のノズル形成面19aに密着する。
【0041】
続いて、チューブポンプ34を駆動させると、キャップ25内に負圧が発生し、該負圧に基づいて各ノズル21から増粘したインクが気泡等とともに吸引されて、キャップ25内及び排出チューブ32内を介して廃インクタンク33内に排出される。そして、所定時間経過後、チューブポンプ34を停止させることで、記録ヘッド19のクリーニングが完了する。
【0042】
続いて、キャップ25を下降させて該キャップ25を離間位置に移動させる。このとき、記録ヘッド19のノズル形成面19a及びキャップ25の開口縁25bには、記録ヘッド19のクリーニングに伴う不要なインクが付着したままになっている。続いて、ワイパー27を上昇させて該ワイパー27をキャリッジ16の移動に伴う記録ヘッド19のノズル形成面19aの移動領域に突出させる。
【0043】
続いて、キャリッジ16をホームポジション領域から印刷領域に移動させると、ワイパー27によって記録ヘッド19のノズル形成面19aが払拭されて、ノズル形成面19aに付着した不要なインクが除去されるとともに各ノズル21内のインクメニスカスが整えられる。続いて、ワイパー27を下降させた後、キャップクリーニングユニット26を待機位置から使用位置に移動させる。これにより、両リール42,43間において、キャップ25の開口縁25bと吸収布41の下面とが対向する。
【0044】
続いて、キャップ25を、該キャップ25の中心を回動中心として上から見て時計方向に所定角度Nだけ回動させる。この場合、所定角度Nは、0°よりも大きく且つ90°よりも小さければよいが、本実施形態では45°に設定されている。これにより、キャップ25の開口縁25bの各直線部分の延びる方向と吸収布41の移動方向(前後方向)とが45°の角度で交差した状態となる。
【0045】
この状態で、キャップ25を離間位置から当接位置に移動させると、吸収布41の下面にキャップ25の開口縁25bが接触する(接触ステップ)。これにより、開口縁25bに付着した不要なインクが吸収布41に吸収されて除去され、キャップ25のクリーニングが完了する。このとき、図6に示すように、吸収布41における開口縁25bとの接触部分には、該吸収布41によって吸収された矩形状の不要なインクの染みの跡A1が残る。
【0046】
続いて、キャップ25を、当接位置から離間位置に移動させるとともに、元の位置に戻るように上から見て反時計方向に45°回動させる。続いて、吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において2点で交わる程度にインクの染みの跡A1が後方へ移動するように、布巻取リール43によって吸収布41を巻き取る(相対移動ステップ)。その後、キャップクリーニングユニット26を使用位置から待機位置に移動されて、記録用紙Pの印刷が行われる。
【0047】
そして、再び記録ヘッド19のクリーニングを行った後に、キャップ25のクリーニングを行う場合には、上述と同様に、キャップクリーニングユニット26を待機位置から使用位置に移動させるとともに、キャップ25を離間位置にて上から見て時計方向に45°回動させる。このとき、前回のキャップ25のクリーニングで付着した吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において2点で交わる。
【0048】
そして、キャップ25を離間位置から当接位置に移動させて、吸収布41の下面にキャップ25の開口縁25bを接触させると、前回のキャップ25のクリーニングで付着した吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが2点で交わった状態で接触する。これにより、開口縁25bに付着した不要なインクが吸収布41に吸収されて除去されて、キャップ25のクリーニングが完了する。
【0049】
このとき、前回のキャップ25のクリーニングで付着した吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとは、線で重なることなく点(2点)でしか交わらないため、吸収布41による開口縁25bに付着した不要なインクの吸収の妨げにはならない。さらに、このとき、図6に示すように、吸収布41における開口縁25bとの接触部分には、今回吸収布41によって吸収された矩形状の不要なインクの染みの跡A2が残る。
【0050】
続いて、キャップ25を、当接位置から離間位置に移動させるとともに、元の位置に戻るように上から見て反時計方向に45°回動させる。続いて、吸収布41のインクの染みの跡A2とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において2点で交わる程度にインクの染みの跡A2が後方へ移動するように、布巻取リール43によって吸収布41を巻き取る。その後、キャップクリーニングユニット26が使用位置から待機位置に移動されて、記録用紙Pの印刷が行われる。
【0051】
このように、記録ヘッド19のクリーニングを行ってからキャップ25のクリーニングを行う度に、吸収布41には、図6に示すように、インクの染みの跡A1,A2,A3,A4・・・が順次着くようになる。この場合、各インクの染みの跡A1,A2,A3,A4・・・は、それぞれ直近のインクの染みの跡と2点で交わっている。すなわち、両インクの染みの跡A1,A2、両インクの染みの跡A2,A3、両インクの染みの跡A3,A4・・・がそれぞれ2点で交わっている。
【0052】
このため、1回のキャップ25のクリーニングで巻き取る吸収布41の量を、1回のキャップ25のクリーニングで各インクの染みの跡A1,A2,A3,A4・・・が互いに全く交わらない程度に吸収布41を巻き取る場合に比べて、少なくすることができる。したがって、吸収布41を効率的に使用することができる。すなわち、吸収布41を節約することができる。
【0053】
因みに、キャップ25の開口縁25bの直線部分の延びる方向と吸収布41の移動方向とが平行である場合には、キャップ25のクリーニングを行う度に、前回のキャップ25のクリーニングで付着した吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において全く交わらない程度まで吸収布41を巻き取る必要がある。
【0054】
なぜなら、キャップ25のクリーニングを行う度に、前回のキャップ25のクリーニングで付着した吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において交わる程度に吸収布41を巻き取るようにすると、インクの染みの跡A1と開口縁25bとが線で重なるため、吸収布41によって開口縁25bに付着した不要なインクを十分に吸収することができなくなってしまうからである。この結果、吸収布41を無駄に消費してしまうこととなる。
【0055】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)メンテナンス装置23は、記録ヘッド19のクリーニングでキャップ25の開口縁25bに付着した不要なインクを吸収布41に吸収させて除去することができるので、キャップ25を容易にクリーニングすることができる。
【0056】
(2)メンテナンス装置23は、キャップ25のクリーニングを行う際に、キャップ25の開口縁25bの各直線部分の延びる方向と吸収布41の移動方向(前後方向)とが上から見て45°の角度で交差している。このため、前回のキャップ25のクリーニングで着いた吸収布41のインクの染みの跡A1とキャップ25の開口縁25bとが上下方向において2点で交わる程度にインクの染みの跡A1が後方へ移動された状態で今回のキャップ25のクリーニングを行うことで、インクの染みの跡A1と開口縁25bとの接触面積を小さく抑えることができる。この場合、インクの染みの跡A1と開口縁25bとが、線ではなく2点で接触するため、吸収布41による開口縁25bに付着した不要なインクの吸収の妨げにはならない。したがって、1回のキャップ25のクリーニングで、インクの染みの跡A1と開口縁25bとが上下方向において全く交わらない程度まで吸収布41を巻き取らなくても、吸収布41によって開口縁25bに付着した不要なインクを吸収して除去する今回のキャップ25のクリーニングを、問題なく行うことができる。この結果、吸収布41を効率的に使用することができる。すなわち、吸収布41を節約することができる。
【0057】
(3)メンテナンス装置23は、キャップ25を前後方向に移動させずに吸収布41を前後方向に直線的に移動させる構成であるため、キャップ25の開口縁25bに付着した不要なインクを平坦な吸収布41によって容易且つ効率的に吸収して除去することができる。
【0058】
(4)メンテナンス装置23のキャップクリーニングユニット26は、長尺帯状の吸収布41をロール状にしてキャップ25の前方から後方に向かって直線的に繰り出すとともに、該繰り出した吸収布41をキャップ25の後方で巻き取るように構成されているため、吸収布41の交換頻度を抑制することができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0059】
・吸収布41をキャップ25よりも少し面積の大きい正方形状とするとともに、吸収布41の上下方向に延びる中心軸線をキャップ25の中心軸線と一致させた状態で、吸収布41をキャップ25の開口縁25bに接触させてキャップ25のクリーニングを行うようにしてもよい。この場合、吸収布41をキャップ25の開口縁25bに接触させる毎に、キャップ25を回動することなく、該吸収布41をその中心軸線を回動中心として所定角度ずつ段階的に回動する回動手段を相対移動手段として設ける。回動手段としては、例えば、可動式のアーム(図示略)と、該アームの先端に設けられるとともに吸収布41を吸着しながら回動可能な回動吸着部(図示略)とを備えた装置などが用いられる。この場合、回動吸着部によって吸収布41を吸着した状態で該吸収布41がキャップ25上に移動するようにアームを動かした後、回動吸着部によって吸収布41が回動される。このようにしても、前回のキャップ25のクリーニングにおける吸収布41のインクの染みの跡A1と、今回クリーニングするキャップ25の開口縁25bとが、線ではなく点(ここでは8点)で接触するため、吸収布41による開口縁25bに付着した不要なインクの吸収の妨げにはならない。したがって、キャップ25の各クリーニングにおける吸収布41のインクの染みの跡A1〜A3は、図7に示すように、互いに線で重なることなく点(ここでは8点)で交わる。このようにすれば、キャップ25の開口縁25bに付着した不要なインクを、所定の大きさに形成された吸収布41によって容易且つ効率的に吸収して除去することができる。なお、キャップ25のクリーニングを何度も行って、吸収布41が開口縁25bに付着した不要なインクを十分に吸収できなくなる程度までインクで汚れた場合には、該吸収布41は速やかに新しいものと交換される。
【0060】
・また、上記変更例の場合においては、吸収布41をキャップ25の開口縁25bに接触させる毎に、吸収布41を回動することなくキャップ25をその中心を回動中心として所定角度R(0°<R<180°)ずつ段階的に回動するようにしてもよい。あるいは、吸収布41及びキャップ25の両方をそれらの中心を回動中心として所定角度Rずつ回動するようにしてもよい。但し、この場合、吸収布41及びキャップ25のそれぞれの回動角度及び回動方向は、前回のキャップ25のクリーニングにおけるインクの染みの跡A1と、今回クリーニングするキャップ25の開口縁25bとが上下方向において一致しない(線で重ならない)ようにする必要がある。すなわち、キャップ25の各クリーニングにおける吸収布41のインクの染みの跡A1〜A3が、図7に示すように、互いに一致しないようにする必要がある。
【0061】
・吸収布41を、正方形状とするとともにその中心を通る互いに直交する2直線で面積を4つの領域に等分した場合における1つの領域の面積がキャップ25の面積よりも少し大きくなるようにしてもよい。この場合、キャップ25のクリーニング時には、吸収布41の回動中心となる上下方向に延びる中心軸線がキャップ25の中心軸線と平行であって且つキャップ25の外部に位置するように、吸収布41が配置される。そして、吸収布41をキャップ25の開口縁25bに接触させる毎に、キャップ25を回動することなく該吸収布41をその中心軸線を回動中心として所定角度(ここでは90°)ずつ段階的に回動する。このようにすれば、キャップ25の各クリーニングにおける吸収布41のインクの染みの跡A1〜A4は、図8に示すように、互いに重なることがない。したがって、キャップ25の開口縁25bに付着した不要なインクを、所定の大きさに形成された吸収布41によって好適に吸収して除去することができる。
【0062】
・キャップ25を回動させずに、キャップクリーニングユニット26を待機位置から使用位置に移動させるだけで、キャップ25の開口縁25bの各直線部分の延びる方向に対して吸収布41の移動方向が(例えば、上から見て45°で)交差するように構成してもよい。このようにすれば、キャップ25を回動させるための機構や回動モーター30を省略することができる。
【0063】
・1回の記録ヘッド19のクリーニングに対してキャップ25のクリーニングを複数回行うようにしてもよい。すなわち、1回の記録ヘッド19のクリーニングに対してキャップ25の開口縁25bを吸収布41に対して複数回接触させるようにしてもよい。この場合、キャップ25の各クリーニングにおける吸収布41の各インクの染みの跡は、少なくとも互いに線で重なることなく点でしか交わらないようにする必要がある。
【0064】
・インクを吸収できるものであれば、吸収布41の代わりに、吸い取り紙やスポンジを液体吸収シートとして採用してもよい。
・吸収布41は、織物や編物によって構成してもよいし、あるいは不織布によって構成してもよい。
【0065】
・吸収布41は、必ずしも直線的に(移動軌跡が真っ直ぐとなるように)移動させる必要はなく、例えば蛇行のように曲線的に(移動軌跡が湾曲するように)移動させるようにしてもよい。
【0066】
・吸収布41は、必ずしもキャップ25の開口縁25bを含む平面と平行な方向に移動させる必要はない。
・キャップ25の開口部25a(開口縁25b)の形状は、矩形(四角形)以外の多角形(例えば、三角形、六角形、八角形など)に変更してもよい。
【0067】
・インクジェット式プリンター11は、本体フレーム12内におけるキャリッジ16とは離間した位置に設けられたカートリッジホルダーに装着されるインクカートリッジのインクをインク供給チューブなどによって記録ヘッド19に供給する、いわゆるオフキャリッジ方式のプリンターであってもよい。
【0068】
・インクジェット式プリンター11において、ターゲットは、プラスチックフィルム、布、金属箔などであってもよい。
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、21…ノズル、23…メンテナンス手段としてのメンテナンス装置、25…キャップ、25a…キャップ25の開口部、25b…キャップ25の開口部25aの周縁部を構成する開口縁、28…接触手段としての駆動機構、41…液体吸収シートとしての吸収布、43…相対移動手段を構成する布巻取リール、44…相対移動手段を構成する巻取モーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接可能であって、前記液体噴射ヘッド側に多角形状の開口部を有する有底箱状をなすキャップと、
前記キャップにおける前記開口部の周縁部と前記液体を吸収可能な液体吸収シートとを接触させる接触手段と、
前記液体吸収シートと前記キャップとを前記周縁部が有する直線部分と交差する方向に相対移動させる相対移動手段と
を備えたことを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを前記キャップにおける前記開口部の前記周縁部を含む平面と平行な方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを直線的に移動させることを特徴とする請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記相対移動手段は、前記液体吸収シートを、前記キャップを前記液体噴射ヘッドに当接させる際に移動させる方向と平行に延びる軸線を中心に回動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス手段とを備え、
前記メンテナンス手段を請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のメンテナンス装置によって構成したことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドに対して前記ノズルを囲うように当接可能であって、前記液体噴射ヘッド側に多角形状の開口部を有する有底箱状をなすキャップにおける前記開口部の周縁部と前記液体を吸収可能な液体吸収シートとを接触させる接触ステップと、
前記液体吸収シートと前記キャップとを前記周縁部が有する直線部分と交差する方向に相対移動させる相対移動ステップと
を備えたことを特徴とするメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192567(P2012−192567A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56963(P2011−56963)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】