説明

メントールまたはイシリンのような冷却化合物を含有する化合物送給システム

(a)0.005〜0.5重量%の冷却化合物と、(b)0.1〜10重量%の乳化物質と、(c)0.15〜15重量%の界面活性剤と、(d)任意に5重量%まで、好ましくは0.05〜5重量%のコサーファクタントを含有する組成物。冷却化合物は、イシリンまたはメントールが好ましい。この組成物は、練り歯磨、口内洗浄剤、飲料、水、アイス、スプレッド、ドレッシングまたはアイスクリームに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの身体に触れさせると、冷却感をもたらすことのできる化合物の送給システムに関する。このような化合物は、多くの分野、特に口腔衛生用製品、身体衛生用製品、食品材料および飲料に利用できる。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロピリミジン−2−オン化合物は、薬剤調製に有用であることが知られている。例えば、US 3821221には、このような数多くの化合物と中枢神経系興奮剤または抑制剤としてのこれらの効果が開示されている。これらの化合物は、可能性のある向精神剤として治療に適用する価値のあるものと言われている。
【0003】
これらテトラヒドロピリミジン−2−オン誘導体についての薬理学的研究の結果として、イシリン(icilin)(またはAG‐3‐5、化学名 1−[2−ヒドロキシフェニル]−4−[2−ニトロフェニル]−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オンとして知られている。)は、研究者の粘膜(鼻孔、口唇およびまぶた)に接触すると、また摂取されると、冷却感をもたらすことが見出された(Wei et al, J. Pharm. Pharmacol. 1983, 35 :110-112参照)。
【0004】
冷却感をもたらす化合物として知られているのは、メントール(2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキサノール)であり、例えば食品材料や口腔衛生用製品中に、添加剤として広く利用されている。これは、口腔中に冷却感を誘発し、心地よいミント風味と匂いがあるので、主に使用されている。メントールの冷却効果は、熱いまたは冷たい刺激を感知するヒトの身体の神経終末へのメントールの作用によるものである。特に、メントールは、神経終末の冷却レセプタを活性化すると考えられている。しかしながら、メントールの使用は、その強烈なミント臭と相対的に揮発性であることにより、制限されている。
【0005】
イシリンは、メントールと同様の冷却効果をもたらすことができることが発見された。イシリンには、メントールよりも数多くの利点がある。例えば、薬効がより強く、麻酔性がないため、急性毒性がより低い。イシリンには、メントールの風味と匂いがなく、また、容易に肌を通って吸収されないことから、薬理学的利用に特に有用な化合物であると考えられた。しかしながら、イシリンが、非薬理学的利用において、メントールに置き換えられることは、開示されていなかった。
【0006】
食品や飲料製品に混合されるマイクロエマルションの形態に冷却化合物を調合すると、持続する冷却効果と、また、時には口当たりのよさをもたらすことが見出された。ここで、「口当たり」とは、食品や飲料を消費している間、口腔の感覚に由来する混ぜ合わさった体験を表すものとして用いる。それは、口腔内での製品のまったく物理的および化学的な相互作用、すなわち、密度、粘度、表面張力、口腔にまとわりつく感じ(mouthcoating)、渋み、口当たりのよさ、なめらかさのようなものに関係している相互作用を含んでいる。
【0007】
US特許4835002には、さらに所定のアルコール、界面活性剤成分および水を含有し、食品や飲料に使用される精油のマイクロエマルションが記載されている。
【0008】
US特許5045337には、熱力学的に安定で、透明で、均質であり、また、極性溶剤、特定のポリグリセロールモノジエステルおよび長鎖トリグリセリドでもよい脂質とを含有する食用の油中水型マイクロエマルションが記載されている。
【0009】
US特許5283056には、水と、1種以上の疎水性フレーバーまたは芳香油および1種以上の界面活性剤成分を含有する、安定で透明な水中油型マイクロエマルション濃縮物が記載されている。
【0010】
オーストラリア特許出願58449/98には、水中油型マイクロエマルションが、乳化剤としてのトリグリセロールモノ脂肪酸エステルと、マイクロエマルションの内相としてのカロチノイド、ビタミンまたは多価不飽和脂肪酸といった親油性物質を含有することが記載されている。
【0011】
国際特許出願99/62357には、消化の際に活性化されて消費者にそのフレーバーを提供するフレーバー前駆体を含有する油中水型マイクロエマルションが記載されている。
【0012】
欧州特許出願829206には、マイクロ波が照射されると褐色でカリカリになるように食品材料のコーティング剤に使われる、C6ないしC18脂肪酸を含む中鎖トリグリセリドとすることができる油を含有する食用のマイクロエマルションが記載されている。
【0013】
また、非食品等級の油を用いてマイクロエマルションを製造することが知られている。このようなマイクロエマルションを製造する方法は、「界面活性剤成分としてのBrij 96と、グリセリンと、エチレングリコールと、コサーファクタント成分としてのプロピレングリコールを用いるマイクロエマルションの研究 (Studies on microemulsions using Brij 96 as surfactant component and glycerin, ethylene glycol and propylene glycol as co-surfactant components)」、Neelima J. Kale and Loyd V. Allen, Jr. , International Journal of Pharmaceutics, 57 (1989) 87-93という題名の論文に記載されている。この製品は、食品に使用するには不適当な軽油(すなわち、パラフィン)を含有している。
【特許文献1】US 3821221
【特許文献2】US特許4835002
【特許文献3】US特許5045337
【特許文献4】US特許5283056
【特許文献5】オーストラリア特許出願58449/98
【特許文献6】国際特許出願99/62357
【特許文献7】欧州特許出願829206
【非特許文献1】Wei et al, J. Pharm. Pharmacol. 1983,35 :110-112
【非特許文献2】"Studies on microemulsions using Brij 96 as surfactant component and glycerin, ethylene glycol and propylene glycol as co-surfactant components", Neelima J. Kale and Loyd V. Allen, Jr. , International Journal of Pharmaceutics, 57 (1989) 87-93
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、マイクロエマルションに関する。
【0015】
マイクロエマルションの「前駆体」とは、連続相を除いてマイクロエマルションを製造するのに必要なすべての成分の混合物である。本発明の目的のための「中鎖トリグリセリド」とは、グリセロールとC4ないしC14脂肪酸との天然由来のエステルを意味する。中鎖トリグリセリドは、おのおのが4〜14個の炭素原子を含んでいる3個の脂肪酸炭素鎖を有している。これら脂肪酸は、同種であっても、異種であってもよい。本発明に使用するのに適する中鎖トリグリセリドは、ココナッツオイルから得られるものとすることができ、2%までのC6脂肪酸と、50〜65%のC8脂肪酸と、30〜45%のC10脂肪酸と、3%までのC12脂肪酸および1%までのC14脂肪酸を含有する「MCT OIL KQ 60/40」(商標名)としてQuest International社から販売されている。
【0016】
本発明のマイクロエマルション製造物は、例えば、食品、飲料、口腔ケア製品または他の製品に、以下の各種方法で混合される。
【0017】
(1)マイクロエマルションは、その構成成分と連続相とから製造される。次いで、得られたマイクロエマルションは、いずれかの残存成分に添加することができる。
【0018】
(2)マイクロエマルション前駆体の成分は、互いに混合され、in situでマイクロエマルションを製造するため、連続相に添加される。次いで、製造物のいずれかの残存成分と混ぜ合わされる。
【0019】
または、(3)マイクロエマルション前駆体の成分は、濃縮したマイクロエマルションを製造するため、in situで連続相と混合される。次いで、製造物のいずれかの残存成分と混合して希釈される。
【0020】
また、これらの各種製造方法を変えることも可能である。例えば、(2)または(3)の場合、いずれかの残存成分のうちのある種のまたはあらゆるものは、連続相にあらかじめ混合させてもよい。(1)および(2)の場合、ある種のマイクロエマルション成分は、(もしあるなら)残存成分と混合されてもよく、その場合には、マイクロエマルションはその段階まで形成されないかもしれない。
【0021】
最も広い意味で、また第1の態様について、本発明は、
(a)0.005〜0.5重量%の冷却化合物と、
(b)0.1〜10重量%の乳化物質と、
(c)0.15〜15重量%の界面活性剤と、
(d)任意に5重量%まで、好ましくは0.06〜5重量%のコサーファクタントを含有するマイクロエマルションのプレミックスに属すると考えられる。
【0022】
それゆえ、本発明の第2の態様に係るマイクロエマルション製造物は、連続相に分散させた本発明の第1の態様に係る組成物を含有する。そして、本発明の第1の態様に係る組成物は、製造物中にそれ自体が混合されたか、あるいはその成分が他のいずれかの方法で導入されたかにかかわらない。
【0023】
本発明の第2の態様に係るマイクロエマルションは、0.45〜30重量%の本発明の第1の態様の総成分を、典型的に含有する。
【0024】
乳化物質が水を含有し、連続相が油を含有する場合、マイクロエマルションは、スプレッド、ドレッシングおよびアイスクリームなどの製品形態に適した油中水型マイクロエマルションである。
【0025】
乳化物質が油を含有し、連続相が水を含有する場合、マイクロエマルションは、飲料、シャーベット、練り歯磨および口内洗浄剤などの製品形態に適した水中油型マイクロエマルションである。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、冷却化合物の風味放出を変更するおよび/または冷却化合物を含有する製品の口あたりを向上するためのマイクロエマルションまたはその前駆体に関する。そして、このマイクロエマルションは、0.0025〜0.5重量%の冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む0.1〜10重量%の油と、0.15〜15重量%の界面活性剤成分と、任意に0.05〜5重量%のコサーファクタント成分を含有する。
【0027】
冷却化合物の放出プロフィールを変更するための好ましいマイクロエマルションまたはその前駆体は、0.0025〜0.1重量%の冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む0.12〜0.4重量%の油成分と、0.23〜0.45重量%の界面活性剤成分と、任意に0.07〜0.15重量%のコサーファクタント成分を含有する。
【0028】
冷却化合物の口当たりを向上するための好ましいマイクロエマルションまたはその前駆体は、0.0001〜0.1重量%の冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む0.12〜0.4重量%の油成分と、0.23〜0.45重量%の界面活性剤成分と、任意に0.07〜0.15重量%のコサーファクタント成分を含有する。
【0029】
また、本発明は、水中油型マイクロエマルションを含有する食品や飲料製品に関する。そして、この水中油型マイクロエマルションは、製品の重量を基準として、水と、0.0001〜0.05重量%の冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む0.1〜10重量%の油成分と、0.15〜15重量%の界面活性剤成分と、任意に0.05〜5重量%のコサーファクタント成分とを含み、飲料製品の残部が、水と1種以上の他の成分である。
【0030】
さらに、本発明は、水中油型マイクロエマルションを含有する口腔ケア製品を提供する。そして、この水中油型マイクロエマルションは、製品の重量を基準として、水と、0.005〜0.15重量%の冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む0.1〜10重量%の油成分と、0.15〜15重量%の界面活性剤成分と、任意に0.05〜5重量%のコサーファクタント成分とを含み、口腔ケア製品の残部が、水と1種以上の他の成分である。
【0031】
口腔ケア製品に適した他の成分には、増粘剤、結合剤、保湿剤、界面活性剤および研磨剤が含まれる。
【0032】
また、本発明は、油中水型エマルションを含有するスプレッドや乳製品に関する。そして、この油中水型エマルションは、油成分と、0.0001〜0.05重量%の冷却化合物と、0.001〜2.5重量%の水と、0.001〜2.5重量%の界面活性剤成分と、任意に0.0001〜0.15重量%のコサーファクタント成分を含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、冷却化合物の放出プロフィールを変更するためのマイクロエマルションに関する。このマイクロエマルションは、冷却化合物と、1種以上の中鎖トリグリセリドを含む油成分と、界面活性剤成分と、任意にコサーファクタント成分と、水を含有する水中油型エマルションである。いずれの成分も、前記食品または飲料製品に使用するのに適していなければならない。
【0034】
[冷却化合物]
本発明のマイクロエマルションは、1種の冷却化合物または2種以上の異なった冷却化合物を含有する。ここで用いられるように、「冷却化合物」の文言は、このようなあらゆる可能なものを含んでいる。
【0035】
好ましい冷却化合物の一つは、メントールである。好ましいもう一種類の冷却化合物は、式(I)の化合物を含む。
【0036】
【化1】

【0037】
上式中、RおよびRは、独立に、水素原子またはハロゲン原子;ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、スルホン基およびカルボキシ基;または任意に置換したアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、シロキシ基、エステルおよび複素環基から選択される。
【0038】
好ましい下位の種類の冷却化合物は、式(II)の化合物またはその塩を含むものである。
【0039】
【化2】

【0040】
上式中、Xは、水素原子若しくはハロゲン原子、またはアルキル基若しくはアルコキシ基であり、Yは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、nは0、1、2または3である。
【0041】
以下に特に記載しない限り、アルキル基は、直鎖または枝分れ鎖である鎖状または環状の飽和炭化水素を表し、好ましくは20個までの炭素原子を含む。同様に、アルケニル基は、鎖状または環状の、直鎖または枝分れ鎖の不飽和炭化水素を表し、好ましくは20個までの炭素原子を含む。アルキル基が鎖状の場合、1〜10個の炭素原子を含むのが好ましく、1〜6個の炭素原子を含むのがより好ましい。適切な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびそれらの異性体が含まれる。例えば、C基は、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基の形で存在することができる。アルキル基が環状の場合、5〜10個の炭素原子を含むのが好ましく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、デカリン基またはアダマンチル基がある。
【0042】
アルコキシ基およびアルキルチオ基は、おのおの酸素原子または硫黄原子に結合したアルキル基を表す。ここで、アルキル部分は上記に定義したものである。
【0043】
アリール基は、少なくとも1以上の芳香環を含む炭化水素を表す。そして、このアリール基は、5〜18個の炭素原子、好ましくは6〜14個の炭素原子、より好ましくは6〜10個の炭素原子、最も好ましくは6個の炭素原子を含有する。典型的なアリール基は、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニレニル基およびフルオレニル基を含む。特に好ましいアリール基には、フェニル基、ナフチル基およびフルオレニル基が含まれ、フェニル基が最も好ましい。
【0044】
アリールオキシ基およびアリールチオ基は、おのおの酸素原子または硫黄原子に結合したアリール基を表す。ここで、アリール部分は上記に定義したものである。
【0045】
アミノ基は、一般式 −NR’R”を有する基を表す。ここで、R’およびR”は、独立に、水素原子およびアルキル基から選択される。R’およびR”がアルキル基の場合、1〜10個の炭素原子を含むのが好ましく、1〜4個の炭素原子を含むのがより好ましい。可能なアミノ基は、−NH、メチルアミノ基(すなわち、−NHMe)、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ステアリルアミノ基、ジメチルアミノ基(すなわち、−NMe)、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジsec−ブチルアミノ基、ジtert−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基およびジステアリルアミノ基を含む。また、混合型ジアルキルアミノ基(すなわち、R’およびR”が異なる場合)も可能である。
【0046】
シロキシ基は、一般式 −OSiR基を表す。ここで、各R基は、独立に、水素原子およびアルキル基からなる基から選択される。このアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有するのが好ましく、1〜4個の炭素原子を有するのがより好ましい。
【0047】
エステル(またはアルコキシカルボニルとして知られている)の文言は、式 −C(O)OR基を表す。ここで、Rは水素原子またはアルキル基である。アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有するのが好ましく、1〜4個の炭素原子を有するのがより好ましい。
【0048】
複素環基の文言は、3ないし20個の間の炭素原子、より好ましくは3ないし10個の間の炭素原子を有する基と、1個、2個または3個の酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含む飽和または不飽和の4員環、5員環、6員環または7員環を1以上有する基を表す。飽和環を含む複素環基は、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロ−チオフェン、ジチオラン、オキサチオラン、オキサゾリジン、オキサジナン、オキサチアン、テトラヒドロ−チオピラン、テトラヒドロ−ピラン、ジオキソラン、ジオキサン、チアジナン、ジチアン、チアゾリジン、イミダゾリジン、ヘキサヒドロ−ピリミジンおよびテトラヒドロ−フランに基づく基を含む。
【0049】
芳香環(ヘテロアリール基)を含む複素環基は、チエニル基、ベンゾチエニル基、ナフトチエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチニル基、ピローリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、カルボンリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ピラジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルルリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フェノキサジニル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサジリル基、ベンゾイニダゾリル基、ピラントレニル基、オパレニル基およびフェノキサジニル基を含む。
【0050】
ハロゲンの文言は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択されるいずれかのハロゲン原子を表し、そのなかでも、フッ素および塩素であるのが好ましい。
【0051】
上記で定義したいずれかの基が、任意に置換されたものとして表される場合、置換基には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、シアノ基、アミノ基、シリル基、ニトロ基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、スルホナト基、アルキルスルホナト基、アリール基、アリールアルキル基、アルカリル基、アリールオキシ基、アリールスルフィニル基、アリールスルホニル基、アリールスルホナト基、スルホンアミド基、カルバモイル基、カルバミド基、アルキルアミド基、アルケニル基、アルケニルオキシ基およびアルキニル基、並びに複素環基が含まれる。好ましい任意の置換基は、ハロゲン原子およびニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基並びにカルボキシ基である。任意の置換基がアルキル基、ハロアルキル基またはアルコキシ基である場合、置換基のアルキル部分は、1〜6個の炭素原子を含むのが好ましく、また、鎖状であるのが好ましい。特に好ましい任意の置換基は、塩素原子およびニトロ基、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基並びにメトキシ基である。
【0052】
冷却化合物は、ヒトまたは動物の身体の肌および/または粘膜に触れると、冷却感をもたらすことができる。一貫して使われているように「冷却感」とは、ヒトまたは動物の身体で知覚されるいずれかの冷却感覚を意味するものである。このような冷却感は、メントールなどの化合物によりもたらされる感覚、および/またはMcKemy et al, Nature, Vol. 416,2002, 52-58に同定されたような冷却感覚レセプタが刺激された際に誘発される感覚に類似している。
【0053】
式(I)の化合物について、好ましいR基は、任意に置換されたアルキル基またはアリール基を含むことがわかっている。このアルキル基は、C1〜10脂肪鎖などの鎖状基、またはC3〜10環状炭化水素などの環状基とすることができる。R基は、フェニル基やシクロヘキシル基などの任意に置換されたアリール基または環状炭化水素基であるのが好ましい。
【0054】
好ましいR基は、水素原子、または任意に置換されたアルキル基若しくはアリール基を含む。また、R基は、R基と同様に、鎖状脂肪鎖または環状炭化水素とすることができる。好ましい基は、任意に置換したアリール基および環状炭化水素基であり、特にフェニル基およびシクロヘキシル基がより好ましい。あるいは、これらの環状基を、水素原子、直鎖アルキル基(例えば、C1〜10アルキル基)または枝分れ鎖アルキル基(例えば、tert−ブチル基)などの別の基に置き換えるのが望ましい。
【0055】
多くの化合物が合成され、冷却感を誘発する可能性のあることが示されている。冷却感をもたらす好ましい化合物には、1−(2’−メトキシフェニル)−4−(3”−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン、1−フェニル−4−(3”−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン、1−(2’−メトキシフェニル)−4−(3”−クロロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン、1−フェニル−4−(3”−クロロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン、1−(2’−メチルフェニル)−4−(3”−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン、1−(2’−メトキシフェニル)−4−(3”−メトキシフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オンまたは1−フェニル−4−(3”−メトキシフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オンが含まれる。
【0056】
これらの化合物は、単独で、あるいは別の物質または担体などの物質と組合わせた組成物で用いてもよい。これらの付加物質の性質および組成物の成分の相対的割合は、組成物が使用される特定の用途などの多くの因子に依存する。組成物は、上記に述べたような各種の適用に利用することができる。
【0057】
式(I)の化合物は、スキーム1に示した一般的な製造方法にしたがって製造できる。
【0058】
【化3】

【0059】
スキーム1で必要なβ−アミノ−ケトン化合物は、例えば、下記の実施例1および実施例2に記載した合成経路や、US 3821221の実施例に開示された合成経路によるいずれかの適切な製造方法により製造できる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態を、単なる例として記載する。本発明の範囲内のさらなる変更形態は、当業者には明らかである。
【0061】
[油成分]
マイクロエマルションの油成分は、1種以上の中鎖トリグリセリドを含むものでなければならない。このようなトリグリセリドは、ココナッツオイルまたはパーム核油などの天然由来の油から得ることができ、また、望ましい脂肪酸組成物のみを含有するトリグリセリドを供給するため分別される。本発明に用いる中鎖トリグリセリドの脂肪酸成分は、4〜14個の炭素原子を含む。トリグリセリドを構成するこれらの脂肪酸は、同種であっても異種であってもよい。脂肪酸が12個を超える炭素原子を含むトリグリセリド(例えば、主としてC18脂肪酸を有するヒマワリ油から得られるトリグリセリド)は、それだけで本発明に用いるのには適切でない。しかしながら、C4ないしC8脂肪酸を有するトリグリセリドがあるならば、12個を超える炭素原子を含む脂肪酸を有するトリグリセリドは、本発明のマイクロエマルションに混合させてもよい。
【0062】
[界面活性剤成分]
界面活性剤成分は、1種以上の表面活性剤または表面張力および界面張力を低減する両性物質を含んでもよい。水中油型マイクロエマルションは、親水性−親油性バランス(HLB)が8〜18の数値内の界面活性剤成分を用いて形成されるのがよい。非イオン型界面活性剤は、毒性が少なく、電解質やpHによって影響されないため、好ましく使用される。ポリエチレングリコールオレイルエーテル(例えば、Fluka社が製造して、Sigma Aldrich社が販売しているBrij 96(商標名)として入手可能なもの)が、特に好ましい。Brij 96の化学構造は、下記のとおりである。
[CH(CHCHCH=CHCH(CHCH(OCHCH10OH]
【0063】
他の適切な界面活性剤は、8〜18の範囲のHLB値を有する非イオン界面活性剤を含む。このような界面活性剤には、レシチン、ポリグリセロールエステル、ポリオキシエチレンソルビテート、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどが含まれてもよい。
【0064】
[コサーファクタント]
(本発明の一部の態様で任意である)コサーファクタント成分は、精製グリセロールとすることができる。適切な食品等級グリセロールは、Pricene社から販売されているものでもよく、あるいは、植物原料から得られたグリセロール(例えば、Fina Chemicals社から販売されているGlycerine 4810)でもよい。本発明のマイクロエマルションの形成に使用される他の適切なコサーファクタント成分には、グリセロールと同様の機能性を有する別の化合物、例えば、エリトリトールまたはブタノール、ペンタノール、ヘキサノール若しくはヘプタノールなどの短鎖アルコールがある。
【0065】
[製造方法]
本発明のマイクロエマルション前駆体は、適切な方法で、前駆体成分を混合する、例えば、界面活性剤成分[例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(Brij 96)]とコサーファクタント成分(例えば、グリセロール)とを望ましい比率で、60℃を超える温度で、マグネチックスターラーを用いて混合することで製造することができる。次いで、望ましい量の中鎖トリグリセリド油と冷却化合物が添加されて、混合物は完全に混ぜ合わされる。冷却化合物は、80℃またはそれを超える温度に加熱して、この油に可溶するものであるのが好ましい。次いで、このマイクロエマルション前駆体の混合物に、熱水(>60℃)を添加すると、本発明のマイクロエマルションが製造される。
【0066】
[製品形態]
本発明に係るマイクロエマルションを含有する好ましい製品形態は、食品、飲料および口腔ケア製品を含む。
【0067】
(a)食品
本発明に係るマイクロエマルションを混合する適切な食品には、スプレッド、マヨネーズ、ソース、セイヴァリー製品および加熱調理加工済み食品(これらすべてが、水性エマルションとしてマイクロエマルションを混合することが好ましい。)が含まれる。他には、(ヨーグルトアイスクリームを含む)アイスクリームなどの氷菓子、シャーベットおよび菓子商品が含まれる。
【0068】
(b)飲料
典型的な飲料は、炭酸飲料および非炭酸飲料のどちらでも、および/またはアルコール飲料およびノンアルコール飲料でもよい。いくつかの典型例には、一般的に、ティー・ベースの製品、フルーツジュース・ベースの飲料並びにフルーツ・スカッシュ、エナジー・ドリンク、フレーバー・ミルクシェークおよびミルクとヨーグルトベースの飲料がある。
【0069】
ここで使われる「ティー飲料」とは、植物の葉を煮出して製造された飲料または植物の葉に由来する濃縮物から製造された飲料を表すものである。この葉は、有利には中国種チャ(Camellia sinensis var. sinensis)またはアッサム種チャ(Camellia sinensis var. assamica)に由来し、発酵させていないもの(緑茶)、部分的に発酵させたもの(ウーロン茶)または完全に発酵させたもの(紅茶)であってもよい。しかしながら、他の種の葉を、本発明の実施に用いることができる。これらは、ルイボス(Aspalathus linear)から得られるルイボス茶、ハーブティー(例えば、カモミール、ローズヒップ、フェンネル、イラクサ、ペパーミントまたはレモン・バーベナ)を含んでいる。また、これらの葉のいずれかを2種以上ブレンドして製造した葉を含むことも考慮される。本発明の目的のための「リーフ・ティー」は、煮出さない形態の1種以上の茶原料を含むティー製品を意味する。リーフ・ティーは、緑茶、紅茶およびウーロン茶またはティー飲料を製造するのに使用される他の植物からの葉を含む。チャ(Camellia sinensis)に由来する飲料が好ましく、以下、これを「ティー・ベースの飲料」と呼ぶ。
【0070】
(c)口腔ケア製品
好ましい口腔ケア製品は、練り歯磨および口内洗浄剤である。
【0071】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して記載する。
【0072】
[実施例1]
フルーツ・フレーバー・ティー飲料の典型的な調合
材料 %w/w
砂糖 7.2
粉末ティー 0.14
酸および塩 0.215
フルーツジュースおよびフレーバー 0.38
Brij 96 0.15
グリセロール 0.05
中鎖トリグリセリド 0.1
冷却活性剤 0.005
水 残部
【0073】
[実施例2]
シャーベットの典型的な調合
材料 %w/w
砂糖 20.63
クエン酸 0.45
フレーバー 0.015
Brij 96 0.3
グリセロール 0.1
中鎖トリグリセリド 0.2
冷却活性剤 0.01
水 残部
【0074】
[実施例3]
練り歯磨の典型的な調合
材料 %w/w
研磨剤および増粘シリカ 18.0
ソルビトールおよびポリエチレングリコール 50.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
セルロース・ガム 0.9
フッ化ナトリウム 0.32
甘味料および他の副成分 1.17
ペパーミント・フレーバー 1.0
Brij 96 3.0
グリセロール 1.0
中鎖トリグリセリド 0.5
冷却活性剤 0.05
水 残部
【0075】
冷却活性剤として、それぞれメントールまたは1−(2’−メトキシフェニル)−4−(3”−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オンを使用すると、上記実施例の組成物形態での摂取により、冷却活性剤単体での同量の摂取と比べて、知覚される冷却効果を持続させることが認められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.005〜0.5重量%の冷却化合物と、
(b)0.1〜10重量%の乳化物質と、
(c)0.15〜15重量%の界面活性剤と、
(d)任意に5重量%まで、好ましくは0.05〜5重量%のコサーファクタントを含有する組成物。
【請求項2】
連続相に分散させた請求項1に記載の0.45〜30重量%の組成物を含有するマイクロエマルション。
【請求項3】
前記乳化物質が油を含有し、前記連続相が水を含有する請求項2に記載のマイクロエマルション。
【請求項4】
飲料、シャーベット、練り歯磨または口内洗浄剤の形態をとる請求項3に記載のマイクロエマルション。
【請求項5】
前記乳化物質が水を含有し、前記連続相が油を含有する請求項2に記載のマイクロエマルション。
【請求項6】
スプレッド、ドレッシングまたはアイスクリームの形態をとる請求項5に記載のマイクロエマルション。
【請求項7】
前記冷却化合物が、メントールを含有する請求項1に記載の組成物または請求項2〜6のいずれか一項に記載のマイクロエマルション。
【請求項8】
前記冷却化合物が、式(I)の化合物:
【化1】

[上式中、RおよびRは、独立に、水素原子またはハロゲン原子;ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、スルホン基およびカルボキシ基;または任意に置換したアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、シロキシ基、エステルおよび複素環基から選択される。]
を含有する請求項1に記載の組成物または請求項2〜7のいずれか一項に記載のマイクロエマルション。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.45〜30重量%の組成物を含むマイクロエマルションであって、前記組成物が、
(a)0.005〜0.5重量%の冷却化合物と、
(b)0.1〜10重量%の乳化物質と、
(c)0.15〜15重量%の界面活性剤と、
(d)任意に5重量%まで、好ましくは0.05〜5重量%のコサーファクタントを含有し、
前記組成物が、連続相に分散させたものであって、かつ
(i)前記乳化物質が油を含有し、前記連続相が水を含有し、前記マイクロエマルションが、飲料、シャーベット、練り歯磨または口内洗浄剤の形態をとるか、または、
(ii)前記乳化物質が水を含有し、前記連続相が油を含有し、前記マイクロエマルションが、スプレッド、ドレッシングまたはアイスクリームの形態をとる、マイクロエマルション。
【請求項2】
前記冷却化合物が、メントールを含有する請求項1に記載のマイクロエマルション。
【請求項3】
前記冷却化合物が、式(I)の化合物:
【化1】

[上式中、RおよびRは、独立に、水素原子またはハロゲン原子;ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、カルボニル基、スルホン基およびカルボキシ基;または任意に置換したアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アミノ基、シロキシ基、エステルおよび複素環基から選択される。]
を含有する請求項1または2に記載のマイクロエマルション。

【公表番号】特表2006−515295(P2006−515295A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561286(P2004−561286)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014179
【国際公開番号】WO2004/056332
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】