説明

モジュール式ポリマーEMI/RFIシール

シールは、環状の空洞部を含むシール本体と、その環状の空洞部内部の環状のスプリングとを含み、そのシール本体は、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含む。この複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、約200オーム−cm以下の体積抵抗率、少なくとも約20%の伸び、約10オーム/sq以下の表面抵抗率、またはこれらの任意の組合せを有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には電磁障害/無線周波障害(electromagnetic interference/radio frequency interference:EMI/RFI)ガスケットに関し、さらに具体的には、モジュール式ポリマーEMI/RFIシールおよび遮蔽に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ノイズ(electronic noise:EMI)および無線周波障害(radio frequency interference:RFI)は、電子装置における好ましくない電磁エネルギーの存在である。EMIは、電子装置内およびその周囲における意図せざる電磁エネルギーの発生から生じる可能性がある。例えば、電線は約60Hzにおける電子ノイズを発生する可能性がある。意図せざる電磁エネルギーの他の発生源には、熱ノイズ、照明、および静電放電が含まれ得る。さらに、EMIは、ラジオおよびテレビの放送、移動電話のような無線通信システム、並びに無線コンピュータネットワークに用いられる無線信号のような意図された電磁エネルギーからも生じる可能性がある。
【0003】
EMIの除去は電子装置の設計において重要である。装置内部に構成部品を配置すること、並びに遮蔽およびフィルタリングを用いることによって、電子装置の機能と干渉するEMI、並びにその電子装置によって生成されるEMIであって他の装置と干渉する可能性があるEMIを制御しかつ低減することが可能になる。遮蔽およびフィルタリングの有効性は、複数の遮蔽材料が一緒に接合される方法に依存している。継手、接合部および間隙のようなエンクロージャ内の電気的不連続部が、すべて、遮蔽を破る可能性があるEMIの周波数および量に影響する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、シールが、環状の空洞部を含むシール本体と、その環状の空洞部内部の環状のスプリングとを含むことができる。このシール本体は、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むことができる。この複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、約200オーム−cm以下の体積抵抗率、少なくとも約20%の伸び、約10オーム/sq以下の表面抵抗率、あるいはこれらの任意の組合せを有することができる。
【0005】
別の態様において、装置が、静的構成部品および回転構成部品を含むことができる。回転構成部品は静的構成部品に対して回転可能である。さらに、静的構成部品の少なくとも一部分を回転構成部品の一部分の内部に設けるか、あるいは、回転構成部品の少なくとも一部分を静的構成部品の一部分の内部に設けることができる。この装置は、さらに、静的構成部品および回転構成部品の間のシールを含むことができる。このシールは、スプリングと、スプリングを囲繞するケーシングとを含むことができる。ケーシングは、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むことができる。この複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、約200オーム−cm以下の体積抵抗率、少なくとも約20%の伸び、約10オーム/sq以下の表面抵抗率、あるいはこれらの任意の組合せを有することができる。
【0006】
さらに別の態様において、シールの製作方法が、複合材料からケーシングを形成するステップを含むことができる。この複合材料は熱可塑性材料および充填剤を含むことができる。また、この複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、約200オーム−cm以下の体積抵抗率、少なくとも約20%の伸び、約10オーム/sq以下の表面抵抗率、またはこれらの任意の組合せを有することができる。この方法は、さらに、ケーシングに溝を形成するためにケーシングを機械加工するステップと、その溝の中にスプリングを挿入するステップとを含むことができる。
【0007】
本開示は、添付の図面を参照することによって、さらに良く理解され、かつその多くの特徴および利点が当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一態様による例示的なシールを示す。
【図2】図1の例示的なシールの断面図である。
【図3】例示的なスプリングの一例を示す。
【図4】例示的なスプリングの別の例を示す。
【図5】例示的なスプリングのさらに別の例を示す。
【図6】例示的なスプリングのさらに別の例を示す。
【図7】一態様による例示的な装置を示す。
【0009】
異なる図面における同じ参照符号は類似または同一の品目を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の実施形態において、シールが、環状の空洞部を有することができるシール本体と、その環状の空洞部内部の環状のスプリングとを含むことができる。このシール本体は、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むことができる。
【0011】
図1は、全体として符号100で示される例示的なシールを示す。シール100は、環状の空洞部104を有するシール本体102を含む。環状の空洞部104は、シール本体102の内部に、シール本体の成形中に形成できるかあるいは機械加工によって形成できる。環状のスプリング106を環状の空洞部104の内部に配置できる。
【0012】
図2は、図1の線2−2に沿うシール100の断面を示す。図2に示されるように、シール本体102は、側壁108および110と、各側壁108および110に取り付けられる底面壁112とを含むことができる。側壁108および110と底面壁112とは、底面壁112の反対側に開口114を有する環状の空洞部104を画定する。この環状の空洞部104の内部にスプリング106を配置できる。スプリング106は、通常、各側壁108および110と底面壁112とに接触することができる。
【0013】
一実施形態において、シール本体は複合材料を含むことができる。この複合材料は、エンジニアリング熱可塑性ポリマーまたは高性能熱可塑性ポリマーのような熱可塑性材料を含むことができる。例えば、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアミドイミド、超高分子ポリエチレン、熱可塑性フルオロポリマー、ポリアミド、ポリベンツイミダゾール、液晶ポリマー、またはこれらの任意の組合せのようなポリマーを含むことができる。一例において、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンツイミダゾール、これらの誘導体、またはこれらの組合せを含む。特定の例においては、熱可塑性材料は、ポリケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、これらの誘導体、またはこれらの組合せのようなポリマーを含む。別の例においては、熱可塑性材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、これらの誘導体、またはこれらの組合せのようなポリケトンを含む。熱可塑性フルオロポリマーの例としては、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフルオリドとのターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、またはこれらの任意の組合せが含まれる。例示的な液晶ポリマーの例としては、芳香族ポリエステルポリマー、例えば、商標名、XYDAR(登録商標)(Amoco)、VECTRA(登録商標)(Hoechst Celanese)、SUMIKOSUPER(商標)またはEKONOL(商標)(住友化学)、DuPont HX(商標)またはDuPont ZENITE(商標)(E.I.DuPont de Nemours)、RODRUN(商標)(ユニチカ)、GRANLAR(商標)(Grandmont)、またはこれらの任意の組合せとして入手可能なポリマーが含まれる。さらに追加例として、熱可塑性ポリマーを超高分子ポリエチレンとすることができる。
【0014】
一実施形態において、複合材料は、さらに、導電性を改善する導電性充填剤、例えば、金属および金属合金、導電性炭素質材料、ホウ化物および炭化物のようなセラミック、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。一例において、金属および金属合金は、ブロンズ、アルミニウム、金、ニッケル、銀、これらの合金、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。導電性炭素質材料の例としては、炭素繊維、糊付け炭素繊維、PAN炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、カーボンブラック、グラファイト、押し出しグラファイトなどが含まれる。導電性炭素質材料は、さらに、銀、ニッケルなどのような蒸着金属によって被膜処理された炭素繊維およびポリマー繊維を含むことができる。セラミックの例としてはホウ化物および炭化物を挙げることができる。セラミックは、さらに、被膜処理セラミックまたはドープセラミックとすることができる。特定の実施形態においては、導電性充填剤を複合材料の中に細かく分散させることができる。導電性充填剤は、複合材料の導電性を増大するために用いることができる。そのため、導電性充填剤は、約0.1オーム−cm以下の電気抵抗率、例えば約0.01オーム−cm以下、さらに約0.001オーム−cm以下の電気抵抗率を有することができる。
【0015】
例示的な実施形態において、複合材料は少なくとも約40.0重量%の導電性充填剤を含む。例えば、複合材料は、少なくとも約50.0重量%の導電性充填剤、例えば、少なくとも約60.0重量%、少なくとも約65.0重量%、少なくとも約70.0重量%、あるいはさらに少なくとも約75.0重量%の導電性充填剤を含むことができる。しかし、抵抗率修飾剤が多すぎると、物理的または機械的特性に悪影響が及ぶ場合がある。そのため、複合材料は、約95.0重量%以下の導電性充填剤、例えば約90.0重量%以下または約85.0重量%以下の導電性充填剤を含むことができる。別の例において、複合材料は約75.0重量%以下の導電性充填剤を含むことができる。特定の例においては、複合材料は、約40.0重量%〜約75.0重量%の範囲の導電性充填剤、例えば約50.0重量%〜約75.0重量%の範囲、あるいはさらに約60.0重量%〜約75.0重量%の範囲の導電性充填剤を含む。
【0016】
導電性充填剤は、複合材料の電流通過能力を増大させることができ、シールの導電性を高めることができる。特定の実施形態において、複合材料は、約200オーム−cm以下の体積抵抗率、例えば約100オーム−cm以下、さらに約10オーム−cm以下の体積抵抗率を有することができる。複合材料は、さらに、約10オーム/sq以下の表面抵抗率、例えば約10オーム/sq以下、例えば約10オーム/sq以下、さらに約10オーム/sq以下の表面抵抗率を有することができる。
【0017】
一実施形態においては、複合材料を弾性材料とすることができる。ヤング率は複合材料の剛性の尺度であり、材料の試験片に関する引張試験における応力−ひずみ線図の勾配から決定できる。複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、例えば少なくとも約1.0GPa、例えば少なくとも約3.0GPa、さらに少なくとも約5.0GPaのヤング率を有することができる。
【0018】
一実施形態において、複合材料は相対的に低い摩擦係数を有することができる。例えば、複合材料の摩擦係数は約0.4以下、例えば約0.2以下、さらに約0.15以下とすることができる。
【0019】
別の実施形態において、複合材料は相対的に高い伸びを有することができる。例えば、複合材料は、少なくとも約20%の伸び、例えば少なくとも約40%、さらに少なくとも約50%の伸びを有することができる。
【0020】
一実施形態において、スプリングは多様なスプリング構造の任意の1つとすることができる。例えば、スプリングを、傾斜コイルバネ、U字形スプリング、つる巻きバネ、重なり型つる巻きバネ、その他とすることができる。さらに、スプリングの端部を一緒に接合して、例えば溶接して、環状のスプリングを形成できる。図3は傾斜コイルバネ300を示す。傾斜コイルバネは、コイルに巻かれて傾斜コイルバネ300を形成するワイヤ302を含む。図4はU字形スプリング400を示す。U字形スプリング400は、U字形スプリング400に成形される金属リボン402を含む。図5および6は、それぞれ、つる巻きバネ500および重なり型つる巻きバネ600を示す。つる巻きバネ500および重なり型つる巻きバネ600の両者において、リボン502および602をつる巻き形状に成形できる。リボンは、平坦な長方形断面または長方形に近い断面を有することができる。リボン502は、つる巻きバネ500の隣接する巻線の間に間隙504を有するつる巻き形状に成形することができるが、リボン602は、重なり型つる巻きバネ600の各巻線が先行する巻線に重なり合うつる巻き形状に成形することができる。重なり型つる巻きバネの隣接巻線間の重なりは、リボンの幅の約20%〜約40%とすることができる。
【0021】
一実施形態において、スプリングは、金属または金属合金のような導電性材料を含むことができる。金属合金は、ステンレス鋼、ベリリウム銅および銅−クロム−亜鉛合金のような銅合金、Hastelloy、Ni220およびPhynoxのようなニッケル合金などとすることができる。さらに、スプリングは、金、スズ、ニッケル、銀、またはこれらの任意の組合せのようなメッキ金属でメッキできる。代替的な実施形態においては、スプリングを、メッキ金属で被膜処理したポリマーから形成することが可能である。
【0022】
別の実施形態においては、シールを、EMI/RFIを低減し、かつ化学的抵抗力のある環境シールを提供する電子装置のガスケットまたはシールとして使用できる。特定の実施形態においては、シールを、電子エンクロージャの2つの部品の間、例えば本体と蓋との間に配置できる。別の特定の実施形態においては、低摩擦係数のシールを、静的構成部品および回転構成部品の間に用いることができる。スプリングの端部は、EMI/RFI遮蔽に間隙が形成されるのを防ぐために一緒に溶接できることが望ましい。代わりの方式として、スプリングの端部を溶接しなくてもよいが、その端部は、間隙の形成を最小化するために一緒に近付けて配置できる。
【0023】
図7は例示的な装置700を示す。装置700は静的構成部品702および回転構成部品704を含むことができる。回転構成部品704は、静的構成部品702に対して回転可能である。装置700は、さらに、静的構成部品702および回転構成部品704の間に配置されるシール706を含むことができ、このシール706はシール100と同等のものにすることができる。一実施形態において、シール706は、例えば、ダスト、水、化学物質、ガスなどのような環境汚染物質が静的構成部品702および回転構成部品704の間の間隙を通って装置に流入しあるいは装置から流出することを防止するように作用することができる。シール706は、さらに、EMI/RFIが装置に影響を及ぼすこと、あるいは装置から漏出することを低減するように作用することができる。
【0024】
このシールは、エンクロージャの2つの部品の間の空間を通過し得る電磁エネルギーを大幅に低減できる。例えば、このシールは、その空間を通過する電磁エネルギーを、少なくとも−70dB、例えば少なくとも−80dB減衰させることができる。さらに、このシールは、例えば約1MHz〜約600MHzの周波数の範囲全域にわたってほぼ一定の減衰能力を有することができる。
【0025】
主題をシールの製作方法に転じると、複合材料を形成するために、熱可塑性材料および充填剤を、例えば二軸スクリュー押出し機においてコンパウンド化または押出し加工することができる。コンパウンド化は、二重コンパウンド化(double compounding)またはせん断混合を含むことができる。代わりの方式として、複合材料を形成するために、熱可塑性材料および充填剤を、例えばBrabenderミキサーにおいて混合することが可能であり、あるいは、例えば乾式粉砕または湿式粉砕によって粉砕することができる。複合材料は成形できる。例えば、複合材料は押出し成形可能である。代替的に、複合材料を型内にプレス加工して焼結することも可能である。さらに、複合材料を成形後に機械加工して、シール本体を形成することもできる。スプリングはシール本体の溝の中に挿入できる。一実施形態において、スプリングの端末を、溝の中に挿入する前に一緒に溶接することが可能である。
【実施例】
【0026】
試料を「Mil DTL 83528−C」規格に従って試験して体積抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
試料1は、PTFEを4重量%の炭素充填剤と混合して調製した。ビレットは熱間プレス法によって成形した。
【0028】
試料2は、試料1と同様に調製したが、炭素充填剤を12重量%添加している。
【0029】
試料3は、試料2と同様に調製したが、炭素充填剤を20重量%添加している。
【0030】
試料4は、PTFEを40重量%のニッケル粉体と混合して調製した。ビレットは冷間プレス法によって成形し、続いて焼結した。
【0031】
試料5は、試料4と同様に調製したが、ニッケル粉体を50重量%添加している。
【0032】
試料6は、試料4と同様に調製したが、ニッケル粉体を55重量%添加している。
【0033】
試料7は、PTFEをグラファイト粉体と混合して調製した。ビレットは冷間プレス法によって成形し、続いて焼結した。
【0034】
試料8は、炭素充填剤を含むETFEである。
【0035】
【表1】

【0036】
一般的な説明または例において以上述べたすべてのアクティビティが必要というわけではないこと、特定のアクティビティの一部分は必要でない場合があること、および、以上述べたアクティビティに加えて1つ以上の別のアクティビティが遂行される場合があることに留意されたい。さらに、アクティビティが列挙される順序は、必ずしもそれが遂行される順序ではない。
【0037】
以上述べた詳細説明においては、概念を、具体的な実施形態を参照して説明した。しかし、当業者は、以下の請求項において述べる本発明の範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更をなし得ることを理解する。従って、詳細説明および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味に読み取られるべきであり、このような修正は、すべて本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【0038】
本明細書において使用する用語「備える(comprises/comprising)」、「含む(includes/including)」、「有する(has/having)」、またはこれらの任意の他の変形語句は、非排他的包含を意味するように意図されている。例えば、一連の特徴を備えたプロセス、方法、製品または機器は、必ずしもそれらの特徴だけに限定されるのではなく、明示的には列挙されていない他の特徴、あるいはそのようなプロセス、方法、製品または機器には固有の他の特徴を含むことができる。さらに、明示的に反対の意味に述べられない限り、「または/あるいは(or)」は「包括的−or」を意味し、「排他的−or」を意味しない。例えば、条件Aまたは(or)Bは、次のいずれか1つによって満足される。すなわち、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、および、AおよびBの両者が真である(または存在する)、のいずれか1つによって満足される。
【0039】
また、単数形の「a」または「an」を用いているのは、本明細書に記述される要素および構成部品を一般的に記述するためである。これは単に便宜上のためであり、本発明の範囲の一般的意味を示すためのものである。この表現は、1つまたは少なくとも1つを含意すると読まれるべきであり、単数は、それが明らかに複数でないことを意味していない限り複数をも含む。
【0040】
上記においては、効用、他の利点および問題の解決策を、特定の実施形態に関して記述した。しかし、これらの効用、利点および問題の解決策と、任意の効用、利点または解決策を生じさせるかあるいはさらに顕著なものにする可能性がある任意の特徴とは、任意の請求項の、あるいはすべての請求項の決定的に重要な、必要な、または必須の特徴と解釈されるべきではない。
【0041】
当業者は、詳細説明を読了すると、本明細書においては、明確さのために別個の実施形態の文脈において記述された特定のいくつかの特徴が、組み合わされて単一の実施形態においても表現され得ることを理解するであろう。逆に、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈に記述された種々の特徴を、分離して、あるいは任意のサブコンビネーションにおいて表現することもできる。さらに、範囲において記述された値への言及は、その範囲内の各値およびあらゆる値を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の空洞部を含むシール本体であり、前記シール本体、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むシール本体であって、その複合材料は、少なくとも約0.5GPaのヤング率、および、約200オーム−cm以下の体積抵抗率を有するシール本体と、
前記環状の空洞部内部の環状のスプリングと、
を備えたシール。
【請求項2】
導電性のスプリングと、
前記スプリングを囲繞するケーシングであり、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むケーシングであって、その複合材料は、(i)少なくとも約20%の伸びおよび約200オーム−cm以下の体積抵抗率、あるいは、(ii)少なくとも約0.5GPaのヤング率および約10オーム/sq以下の表面抵抗率を有するケーシングと、
を備えたシール。
【請求項3】
前記複合材料が、約0.4以下、約0.2以下、または約0.15以下の摩擦係数を有する、請求項1または2に記載のシール。
【請求項4】
前記複合材料が、少なくとも約20%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%の摩擦の伸びを有する、請求項1または2に記載のシール。
【請求項5】
前記ヤング率が、少なくとも約1GPa、少なくとも約3GPa、または少なくとも約5GPaである、請求項1または2に記載のシール。
【請求項6】
前記体積抵抗率が、約100オーム−cm以下、または約10オーム−cm以下である、請求項1または2に記載のシール。
【請求項7】
前記複合材料が、約10オーム/sq以下、約10オーム/sq以下、約10オーム/sq以下、または約10オーム/sq以下の表面抵抗率を有する、請求項1または2に記載のシール。
【請求項8】
前記熱可塑性材料が、ポリケトン、ポリアラミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアミドイミド、超高分子ポリエチレン、熱可塑性フルオロポリマー、ポリアミド、ポリベンツイミダゾール、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1または2に記載のシール。
【請求項9】
前記熱可塑性フルオロポリマーが、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフルオリドとのターポリマー(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項8に記載のシール。
【請求項10】
前記充填剤が導電性充填剤を含む、請求項1または2に記載のシール。
【請求項11】
前記導電性充填剤が、炭素充填剤、炭素繊維、炭素粒子、グラファイト、ブロンズ、アルミニウムおよび他の金属並びにそれらの合金のような金属充填剤、金属酸化物充填剤、金属被膜処理炭素充填剤、金属被膜処理ポリマー充填剤、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項10に記載のシール。
【請求項12】
前記充填剤が前記複合材料の中に細かく分散される、請求項1または2に記載のシール。
【請求項13】
前記環状のスプリングが、傾斜コイルバネ、U字形スプリング、つる巻きバネ、または重なり型つる巻きバネを含む、請求項1または2に記載のシール。
【請求項14】
前記環状のスプリングが複数の巻線を含むつる巻きの形状である、請求項1または2に記載のシール。
【請求項15】
前記環状のスプリングが環状の形状を有する閉ループになっている、請求項1または2に記載のシール。
【請求項16】
前記環状のスプリングが導電性リボンを含む、請求項1または2に記載のシール。
【請求項17】
前記導電性リボンが、一緒に溶接される第1および第2端部を含む、請求項16に記載のシール。
【請求項18】
導電性リボンが約0.060インチ〜約0.300インチの幅を有する、請求項16に記載のシール。
【請求項19】
前記環状のスプリングが、前記導電性リボンの幅の約3倍未満のコイル直径を有する、請求項18に記載のシール。
【請求項20】
前記コイル直径が約0.060インチ〜約0.250インチである、請求項19に記載のシール。
【請求項21】
導電性リボンが約0.003インチ〜約0.006インチの厚さを有する、請求項16に記載のシール。
【請求項22】
導電性リボンが重なり型つる巻きコイルに成形される、請求項16に記載のシール。
【請求項23】
前記重なり型つる巻きコイルが、幅の約20%〜約40%の重なり距離を有する、請求項22に記載のシール。
【請求項24】
前記環状のスプリングが金属または金属合金から形成される、請求項1または2に記載のシール。
【請求項25】
前記金属合金が、ニッケル合金、銅合金、ステンレス鋼、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項24に記載のシール。
【請求項26】
前記ニッケル合金が、Hastelloy、Ni220、Phynox、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項25に記載のシール。
【請求項27】
銅合金が、ベリリウム銅、銅−クロム−亜鉛合金、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項26に記載のシール。
【請求項28】
前記環状のスプリングがメッキ金属でメッキされる、請求項1または2に記載のシール。
【請求項29】
前記メッキ金属が、金、スズ、ニッケル、銀、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項28に記載のシール。
【請求項30】
静的構成部品と、
前記静的構成部品に対して回転する回転構成部品であって、(i)前記静的構成部品の少なくとも一部分が前記回転構成部品の一部分の内部にあるか、あるいは、(ii)前記回転構成部品の少なくとも一部分が前記静的構成部品の一部分の内部にある回転構成部品と、
前記静的構成部品および前記回転構成部品の間のシールであって、
スプリングと、
前記スプリングを囲繞するケーシングであり、熱可塑性材料および充填剤を有する複合材料を含むケーシングであって、その複合材料は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の伸び、および、10オーム/sq、約10オーム/sq以下、約10オーム/sq以下、または約10オーム/sq以下の表面抵抗率を有するケーシングと、
を備えたシールと、
を備えた装置。
【請求項31】
前記複合材料が、少なくとも約0.5GPa、少なくとも約1GPa、少なくとも約3GPa、または少なくとも約5GPaの摩擦ヤング率を有する、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記複合材料が、約0.4以下、約0.2以下、または約0.15以下の摩擦係数を有する、請求項30に記載の装置。
【請求項33】
前記複合材料が、約200オーム−cm以下、約100オーム−cm以下、または約10オーム−cm以下の体積抵抗率を有する、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
複合材料からケーシングを形成するステップであって、その複合材料は熱可塑性材料および充填剤を含み、かつ、その複合材料は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%の伸び、および、約10オーム/sq以下、約10オーム/sq以下、約10オーム/sq以下、または約10オーム/sq以下の表面抵抗率を有するステップと、
前記ケーシングに溝を形成するために前記ケーシングを機械加工するステップと、
スプリングを前記溝の中に挿入するステップと、
を含むシールの製作方法。
【請求項35】
前記ケーシングを形成するステップが圧縮成形および焼結するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記形成するステップが押出し加工するステップを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記複合材料が、少なくとも約0.5GPa、少なくとも約1GPa、少なくとも約3GPa、または少なくとも約5GPaの摩擦ヤング率を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記複合材料が、約0.4以下、約0.2以下、または約0.15以下の摩擦係数を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記複合材料が、約200オーム−cm以下、約100オーム−cm以下、または約10オーム−cm以下の体積抵抗率を有する、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−504895(P2013−504895A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529988(P2012−529988)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051319
【国際公開番号】WO2011/041781
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】