説明

モジュールMRIフェイズドアレイアンテナ

【課題】測定容積の周りに簡単なやり方で配列することができ、互いに電磁的に減結合され、且つMRI画像が、高い信号対ノイズ比を有すること様にを、測定容積に接近して設置しうる、個別アンテナモジュールを画定することができる、個別アンテナモジュールを提供する。
【解決手段】位相制御アレイとして設計され、少なくとも1つの導体ループと、1つの同調回路と、1つの整合回路とをそれぞれが備える少なくとも2つの個別アンテナを備え、同調回路が少なくとも1つの同調用コンデンサを含み、整合回路が少なくとも1つの整合用コンデンサを含み、個別アンテナがそれぞれ、支持体上に位置決め・装着されると共にそこから非破壊的に取り外すことができる別個のモジュールを構成する、磁気共鳴装置で使用するためのアンテナ構成であって、個別アンテナが、減結合素子を通して互いに接続され、減結合素子が、取り外しできないやり方で支持体に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御アレイとして設計され、少なくとも1つの導体ループ、1つの同調回路、並びに1つの整合回路をそれぞれが備える少なくとも2つの個別アンテナを備え、上記同調回路が少なくとも1つの同調用コンデンサを有し、上記整合回路が少なくとも1つの整合用コンデンサを有し、個別アンテナがそれぞれ、支持体上に位置決め・装着されると共にそこから非破壊的に取り外されうる別個のモジュールを構成する、磁気共鳴装置で使用するためのアンテナ構成に関する。
【0002】
このタイプのアンテナ構成は、米国特許第6,084,411号明細書に開示されている。
【背景技術】
【0003】
本発明は、周波数信号(ラーモア周波数)を送信および/または受信するために使用され、アレイ(場)を成す複数のアンテナ(コイル)を使用することによって、核磁気共鳴(NMRまたはMR)を使用する撮像装置であって、上記個別アンテナがある表面を画定する導体経路から成るものに関する。
【0004】
核磁気共鳴は幅広く使用される、重要な撮像法である。核磁気共鳴は、吸収による一定の周波数の電磁波によってエネルギーが供給されるときに、原子核スピンが、一様な磁場(B0)の中で励起されるという効果を利用する。従って、周波数は、一定の磁場(B0)の強さおよび特有且つ固有の原子核特性によって確定される。しばらくすると、励起されたスピンはこれらの基底状態、すなわちより低いエネルギーの状態に戻り、受信アンテナで検出可能であり、画像を構築するために使用されうる、無線周波数の電磁信号を放出する。信号の励起(送信)のためおよび信号の受信のための両方に同一の複数のアンテナ素子を使用することは、基本的には可能である。数個のアンテナが、いわゆるアレイを成すことができる。密度、すなわち単位面積当たりの個別アンテナの数、が高いほど信号対ノイズ比(SNR)が良くなり、そのことが、例えば生成される画像の解像度を高めるために利用されうる。アンテナアレイのさらにもう1つ重要な利点は、パラレルイメージング法、例えばSENSEまたはGRAPPAを利用できる点である。これらの方法は、より速い記録速度を実現する。
【0005】
[従来技術]
本発明は、数個の個別アンテナから成るアンテナアレイに関する。
【0006】
NMRを使用する医用画像では、MHz領域の高周波磁場が、RFアンテナによって人または動物の体から受信され、画像化のためにさらに処理される。
【0007】
対象物の表面であって検査される場所に適合された平面アンテナ(局所アンテナまたは局所コイル)として設計される受信アンテナは、MR画像において、全身アンテナで受信される信号対ノイズ比に比べてより高い信号対ノイズ比(SNR)を得る。
【0008】
これにより、より小さい平面アンテナは、より大きな平面アンテナより高いSNRを得るが、また、これに応じたより小さい視野(FOV、画像範囲)をもつ。このため、多くの場合、より大きなFOVを検査するための1つの個別の大きなアンテナの代わりに、複数のより小さなアンテナすなわちより小さなアンテナのアレイが使用される。これにより、個別の受信アンテナのそれぞれが、プリアンプ、ケーブルおよび受信器から成る、それ自体の受信経路を必要とする。このタイプのデバイスは、フェイズドアレイアンテナまたはアンテナアレイと呼ばれる。
【0009】
これにより、個別アンテナは、一般に、検査される場所の形状に適合する表面に配置される。
【0010】
アンテナアレイは、数個の個別アンテナが互いに隣り合って配列されると、個別アンテナのうちの1つの高周波数電流が、隣り合う個別アンテナに電圧を誘導することが起こりうる点から1つの問題が生じる。これは、アンテナの相互結合と呼ばれる。結合は、円偏波アンテナ構成と直線偏波の個別アンテナ構成との両方に発生する。結合は、信号対ノイズ比(SNR)を悪化させ、MR画像にアーチファクトを生成する。結合された個別アンテナの検査は、結合されない個別アンテナの検査よりも一層必要でなる。これゆえ、フェイズドアレイアンテナを設計する1つの狙いは、可能であれば、個別アンテナの結合を回避することにある。
【0011】
[減結合技術]
上述のタイプのアンテナアレイは、特許文献1[1]に記載されている。アンテナアレイは、互いに隣り合って配置された数個の個別アンテナを備える。減結合のために、隣り合う個別アンテナは、部分的に重なり合う。この重なり合いが、隣り合う個別アンテナの相互インダクタンスを引き下げる。また、重なり合いは、アンテナ導体が互いに交叉することを必要とし、これにより、対応する交差点が生成される。アンテナ導体は、交差点で互いに絶縁されるように誘導されなければならない。さらに、より高い周波数では、交差点に形成されるコンデンサが、今度は容量結合を生成する。
【0012】
上述の文献特許文献1[1]は、結合を引き下げるための他の手段について言及している。この手段は、個別アンテナのコネクタに作用し、またプリアンプの入力抵抗で確定されるインピーダンスが最大値を有するようなやり方で、個別アンテナに接続されたプリアンプのインピーダンスを選択することにある。その結果として、個別アンテナに誘導された電流はほとんど消滅し、これにより、隣り合う個別アンテナに誘導された電圧は、対応して小さくなり、ごくわずかになる。しかし、このやり方で十分な減結合を得るためには、大きな費用がかかる。これゆえ、このタイプの減結合は、実際には、他の減結合技術と一緒に使用される。このタイプの減結合を、以後、プリアンプの減結合と呼ぶ。
【0013】
他のアンテナアレイが、特許文献2[3]に記載されている。このアンテナアレイは、互いに直交して整列された2つのアンテナシステムを備える。これらの2つのアンテナシステムは、正確に整列されると、これらの配列のみによって、互いに減結合される。しかし、非対称となると、2つのアンテナシステムの結合が引き起こされ、この結合は、2つのアンテナシステムを接続するキャパシタによって補償される。
【0014】
特許文献3[4]は、定在波トラップを有するアンテナシステムを記載している。定在波トラップは、アンテナ網を介する望ましくない無線周波数の結合を抑圧する。
【0015】
特許文献4[5]は、誘導結合の容量性補償を有する、磁気共鳴装置のためのアンテナアレイを記載している。隣り合う個別アンテナは、それぞれ、インタラプションを有する。個別アンテナは、インタラプションにおいて並列に電気的に接続される。インタラプションのうちの少なくとも1つが容量性素子でブリッジされ、容量性素子は、個別アンテナが互いに減結合される容量値を有する。しかし、個別アンテナは、減結合回路を介してガルバニックに接続されるので、同相信号の結合が生じる。
【0016】
特許文献5[6]は、ガルバニックに非接触の減結合アンテナから成る他の減結合素子を記載している。この減結合アンテナは、2つの関連する個別アンテナ間の誘導結合が最小となるように、隣り合う個別アンテナと誘導的に結合するやり方で、設計および/または配列される。このため、多くの場合、このタイプのアンテナにおいて減結合素子は完全に省略され、個別アンテナは、上で説明したプリアンプの減結合によってのみ、互いに減結合される。
【0017】
[コンフォーマルアンテナ]
検査される場所の形状に最適に適合する場所に個別アンテナを配列させるために、柔軟なアンテナを使用するのが好ましい。
【0018】
特許文献6[7]は、ヒンジで互いに接続され、これにより、患者の形状に合わせることができる、数個の剛性のアンテナ素子から成るフェイズドアレイアンテナ構成の例を記載している。
【0019】
上記とは対照的に、特許文献7[8]は、全RFアンテナが柔軟な基板に装着され、これゆえ、全体として柔軟である、フェイズドアレイアンテナ構成を記載している。
【0020】
画像化される対象物の形状に対してフェイズドアレイアンテナを調節しうる別の方法は、フェイズドアレイアンテナの個別アンテナが、所望の形状に対応して配列されうるようなモジュール方式で、フェイズドアレイアンテナを形成することにある。このタイプのアンテナシステムが、特許文献8[9]に記載されている。
【0021】
これらのアプローチのすべてが、1つの共通の問題を有する。アンテナアレイを整形することすなわちアンテナアレイの個別アンテナを再配置することで、個別アンテナの相互結合が変化し、その結果、減結合素子は、個別アンテナの結合を最小にするために再調節されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第4,825,162号明細書
【特許文献2】米国特許第5,216,368号明細書
【特許文献3】独国特許発明第41 13 120 C2号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2004 046 188A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102 44 172 A1号明細書
【特許文献6】米国特許第6,650,926 B1号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0238424 A1号明細書
【特許文献8】米国特許第6,084,411号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
測定容積の周りに簡単なやり方で配列することができ、さらに、互いに電磁的に減結合され、且つ、受信されるMRI画像ができるだけ高い信号対ノイズ比を有することを確実にするために、好ましくは測定容積に接近して設置しうる、個別アンテナモジュールを画定することが、本発明によるデバイスの根本的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的は、個別アンテナが、減結合素子を介して互いに接続され、減結合素子が支持体に装着され、支持体から取り外すことができないことにおいて達成される。
【0025】
これゆえ、
1.フェイズドアレイアンテナは、アレイのすべての個別アンテナが、対象物にできるだけ近く設置可能であり、これにより、フェイズドアレイアンテナが、複数の異なる対象物の寸法および形状に適合するように、様々な形を柔軟にとり、
2.項目1で説明した柔軟性は、フェイズドアレイアンテナの個別の素子を変形しなくてもよいやり方で達成され、
3.個別アンテナの減結合は、項目1で説明した柔軟性にもかかわらず保証されることが好ましい。
【0026】
本発明では、上で列記した目的は、磁気共鳴装置の一部であって、位相制御アレイとして設計されるアンテナ構成であって、そのアンテナ構成は、少なくとも1つの導体ループと、1つの同調回路と、1つの整合回路と、好ましくは、1つの非同調回路とからそれぞれが形成される少なくとも2つの個別アンテナを備え、上記同調回路が少なくとも1つの同調用コンデンサを含み、整合回路が少なくとも1つの整合用コンデンサを含み、非同調回路が有利には少なくとも1つのダイオードを含み、個別アンテナが減結合素子を通して互いに接続される、このアンテナ構成が、減結合素子だけが支持体に固定され、個別アンテナがそれぞれ組み合わされて、支持体上に位置決めされて装着可能であり、支持体から破壊されずに取り外されうる別個のモジュールを成すことを特徴とする、アンテナ構成を使用することによって達成される。マッチング形状は、異なる支持体を用意することによって、モジュール方式で構築されうる。
【0027】
以下に列挙するものは、本発明の全ての図面を示している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】MRIシステムのブロック図である。
【図2】フェイズドアレイアンテナのブロック図である。
【図3】個別アンテナモジュールの概略図である。
【図4】(a)は、モジュール式MRIフェイズドアレイアンテナを示す図であり、(b)は、モジュール式フェイズドアレイアンテナの支持体を示す図であり、(c)は、モジュール式フェイズドアレイアンテナの個別アンテナを示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、支持体の異なる形状を示す図である。
【図6】個別アンテナを支持体に装着するためのデバイスを示す図である。
【図7】減結合素子としての減結合コンデンサを示す図である。
【図8】(a)〜(d)は、減結合素子としてのコンデンサを有する本発明のアンテナ構成を示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、減結合素子としてのバタフライアンテナを有する本発明のアンテナ構成を示す図である。
【図10】(a)及び(b)は、減結合素子としての変圧器を有する本発明のアンテナ構成を示す図である。
【図11】エンコーディング素子を有する支持体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明において説明するアンテナ構成と共に使用するのに適した磁気共鳴画像化(MRI)システムの本質的な構成要素の簡略化されたブロック図である。
【0030】
システムは、記憶ユニットおよびインターフェースユニットに接続されたコンピュータから成る。
【0031】
無線周波数(RF)送信器、RF受信器および傾斜磁場のための電源が、インターフェースユニットを介してコンピュータに接続される。
【0032】
傾斜磁場用の電源は、画像化される対象物の上でX、YおよびZ方向の傾斜磁場Gx、GyおよびGzを生成する傾斜コイルに供給される。
【0033】
RF送信器はコンピュータパルスによってトリガされ、これにより、対象物内でMR信号を励起するために、それに対応する変調のRFパルスが生成される。
【0034】
RFパルスは、RF電力用アンプ内で、画像化法に応じて数百ワットから数キロワットの間の電力に増幅され、送信アンテナに送信される。例えば、全身MR画像生成用である場合や、多くのNMR周波数帯域幅を励起するための複数の短パルスが必要な場合など、サンプルの容積が大きい(又は多い)ほど、より高い電力を必要とする。
【0035】
送信アンテナによって放射されるRFパルスは、検査対象物内にMR信号を誘導する。
【0036】
上記MR信号は、受信アンテナにより受信され、低ノイズプリアンプで増幅され、同信号のさらなる処理(例えばさらなる増幅、フィルタリング、混合、平均化等)を行う受信器に送られる。
【0037】
一の変形例としての構成においては、数個の受信アンテナが備えられ、それらの受信アンテナは、接続ケーブルを介して夫々用の低ノイズプリアンプに接続され、低ノイズプリアンプは、今度は夫々用の受信器に接続される。
【0038】
次いで、信号はデジタル化され、その信号に対してさらなる処理が行われるコンピュータにインターフェースユニットを介して送信される。プリアンプおよび受信器に対しては、能動的スイッチオフまたは受動フィルタによる高いRF送信パルスに対する保護がなされる。
【0039】
いくつかのMRシステムは、RF信号の送信にも受信にも共に、同じアンテナを利用する。しかし、RF信号の送信と受信とで、別個のアンテナを使用する別の構成をとることもできる。いずれの場合でも、アンテナで生成される磁場B1は、静的な磁場B0と直交する。
【0040】
傾斜コイルは、サンプルの容積表面上で、単調かつ可能な限り線形である傾斜磁場Gx、GyおよびGzを生成する。サンプルの容積表面上の非単調な傾斜磁場は、MR画像の中に、「偽信号」として知られるアーチファクトを生成する。傾斜磁場が非線形であると、MR画像に幾何学的歪みが生じる。
【0041】
臨床的用途では、MRIシステムは、広く変化する寸法の個々人の、異なる体の領域の画像を生成するために使用される。このため、異なる受信アンテナが必要であり、さらに、対応する周波数に応じて、その異なる受信アンテナを交換する必要がある。受信アンテナの交換には時間がかかり、各用途に対して別個の受信アンテナを準備すると、費用が非常にかかる。
【0042】
次に、本発明における、モジュール方式で組み立て、これによりフェイズドアレイアンテナを形成することができる、数個の個別アンテナから成るアンテナシステムを説明する。
【0043】
磁気共鳴装置の一部を成し、位相制御されたアレイとして設計された、本発明のアンテナ構成を、以下に説明する。これにより、少なくとも2つの個別アンテナを備え、且つその個別アンテナが減結合素子によって互いに接続されるアンテナ構成において、上記減結合素子だけが支持体に固定されると共に、個別アンテナがそれぞれ、支持体上に位置決め・固定されると共にそこから破壊することなく取り外されうる別個のモジュールを構成することを特徴とする。
【0044】
これゆえ、撮像される対象物に適合する形状は、異なる支持体を用意することによって組み立てることができる。
【0045】
図4(a)は、個別アンテナが支持体に装着されるときの、本発明に対応する上述のアンテナシステムを示す。
【0046】
図4(b)は、個別アンテナモジュールを持たない支持体を示す。
【0047】
図4(c)は、1つの個別アンテナモジュールを示す。
【0048】
[個別アンテナモジュール]
図3は、個別アンテナモジュールの概略図を示す。個別アンテナは、少なくとも1つの導体ループと、1つの同調回路と、1つの整合回路と、有利には1つの非同調回路とからなり、同調回路は少なくとも1つの同調用コンデンサを含み、整合回路は少なくとも1つの整合用コンデンサを含み、非同調回路は、有利には少なくとも1つのダイオードを含む。個別アンテナ自体は、剛体のハウジング内に置かれる。ハウジングは、以下に説明する支持体上に位置決めされて装着されうるやり方で設計される。本明細書で説明する特定の場合では、このハウジングは、支持体の位置決めピンを受けるための2つのボアと、きざみ付きねじで個別アンテナモジュールが支持体に装着されうる穴とを含む。しかし、個別アンテナモジュールを支持体に位置決めして装着できるのであれば、他の方法でもよい。
【0049】
[支持体]
図4(b)に示す支持体は、アンテナアレイの形状を画定する。支持体は、MRと共存できる安定な材料(例えば、ガラス繊維強化エポキシ樹脂)で作成される。図4(b)の支持体は、平らな形状を有する。しかし、支持体の形状は、平らな形状に限定されるものではなく、撮像される対象物の形状に調節される任意の形状であってよい。図5(a)および図5(b)は、支持体の他の実現可能な形状を示す。図5(a)は、例えば、全身MRI画像または四肢のMRI画像を生成するために使用されるであろうアンテナ構成のために使用されるタイプの円筒形の支持体を示す。
【0050】
図5(b)は、頭のMRI画像を生成するために使用されるであろう、切欠部を有するほぼ球状の支持体を示す。
【0051】
有利には、支持体を撮像される対象物に装着するためのデバイス、例えば、(伸縮性の)バンド、ベルクロファスナー、スナップロック等なども支持体上に設けられる。しかし、いずれの場合でも、個別アンテナを支持体上に装着して位置決めするために使用される数個のデバイスが、支持体上に存在する。図6は、個別アンテナを支持体の上に装着して位置決めするためのそのようなデバイスの簡単な設計を示す。このデバイスは、個別アンテナモジュール内の2つのボアに嵌合され、これにより、個別アンテナモジュールを支持体に対して位置決めする、支持体内の2つのピンと、個別アンテナモジュールを支持体に固定するためのきざみ付きねじとから成る。個別アンテナモジュールは、きざみ付きねじを緩めることによって支持体から容易に外すことができ、必要ならば、別の支持体に装着することができる。
【0052】
いずれの場合でも、個別アンテナモジュール間の結合を最小化するために使用される減結合素子が、同様に、支持体上に存在する。図4(a)〜(c)に示す特定の実施形態では、上述の減結合素子は、接触スリーブ、短い導体経路およびコンデンサから成る。このことを、図7により詳細に示す。個別アンテナモジュール上に複数の電気的接触ピンが存在し、これらのピンは、個別アンテナモジュールを支持体に装着する際に、支持体上の対応する接触スリーブに挿入される。これにより、個別アンテナモジュールと支持体上の導電経路との間に電気的接続が生じる。従って、個別アンテナモジュールは、互いに電気的に接続されることが好ましい。「好ましい」とは、これにより、隣り合う個別アンテナモジュールの結合が、このやり方で最小化されることを意味する。
【0053】
図8(a)および図8(b)は、異なる支持体の使用方法、及び支持体に属する減結合素子の概念を示す、さらにより概略的な図である。
【0054】
図8(a)および図8(b)では、2つの異なる支持体を示す。これにより、図8(b)に示す支持体の個別アンテナモジュールは、図8(a)に示す支持体の個別アンテナモジュールのものより互いの離隔距離が小さい。2つのアンテナの配置位置が近くなるほど、2つのアンテナの結合はより大きくなるので、図8(b)の支持体上の減結合コンデンサは、図8(a)の支持体上の減結合コンデンサよりも高い容量値を有する。図8(c)および図8(d)は、個別アンテナモジュールが装着された状態となった、図8(a)および図8(b)それぞれの支持体を示す。
【0055】
図9(a)および図9(b)は、本発明の他の好ましい実施形態を表す。図9(a)および図9(b)では、2つの異なる支持体を示す。図9(b)に示す支持体の個別アンテナモジュールは、図9(a)に示す支持体の個別アンテナモジュールのものよりも互いの離隔距離が小さい。
【0056】
この場合は、支持体上の減結合素子は、バタフライの形状の閉じた導体経路のみからなり、個別アンテナモジュールと電気的に接触する必要はない。この減結合素子の実施形態は、個別アンテナモジュールと減結合素子との間のガルバニックな接触が不要である点で好ましい。減結合素子としてバタフライの形状を有する導体ループを使用するアイデアは新しいものではなく、より詳細な説明が、とりわけ独国特許出願公開第102 44 172 A1号明細書に記載されている。また、この場合は、2つのアンテナの配置位置が近くなるほど、2つのアンテナの結合はより大きい。これゆえ、2つの個別アンテナの結合を補償するために、図9(d)のバタフライアンテナは、図9(c)のバタフライアンテナより、個別アンテナモジュールと重なる程度が、より大きくなる。
【0057】
図10(a)および図10(b)は、本発明の他の好ましい実施形態を表し、この場合は、減結合素子は、変圧器として設計される。これにより、図10(a)は、変圧器が取り付けられた支持体を表す。図10(b)は、変圧器のコネクタと接触することにより減結合された、支持体に装着された2つの個別アンテナモジュールを示す。
【0058】
本発明の一実施形態のうちより複雑なものにおいては、支持体は、上で説明した素子に加えて、各個別アンテナモジュールに対するエンコーディング素子をさらに有する。図11に示す具体例では、このエンコーディング素子は、抵抗から成る。抵抗の大きさは、支持体上の位置に応じて変わり、支持体の形状に応じて変わる。このことは、抵抗値が、支持体の形状、および支持体上の個別アンテナの位置をエンコードすることを意味する。さらに、エンコーディング抵抗の2つのコネクタとコンピュータとの間に、電気的接続が存在する。複数の個別アンテナモジュールの1つ以上の容量性素子(とりわけ、例えば整合用コンデンサ)が、容量ダイオードの形で、さらに実現される。
【0059】
このことは、これらの素子の容量が、素子の両端に印加される電圧を変えることによって調節されうることを意味する。さらに、各容量ダイオードの2つのコネクタと、コンピュータで制御される1つのそれぞれの電圧源との間に電気的接続が存在する。このデバイスにより、支持体の形状、および支持体上の個別アンテナモジュールの位置にしたがって、別個の個別アンテナモジュールを所定の容量値を調節することが以下に説明する方法によって可能になる。
【0060】
上記デバイスによって個別アンテナモジュール内の容量ダイオードを調節する方法は、以下の通りである。
【0061】
支持体上の各エンコーディング素子が、それぞれの電気的接続を介してコンピュータで読み出され、予め作成されている、抵抗値の表と比較される。この表は、1つの電圧値を各抵抗値に一意的に割り振る。次いで、コンピュータは、対応する電圧がそれぞれの容量ダイオードの両端に印加され、これにより、容量ダイオードが所定の容量値をとるように、対応する電圧源を制御する。表に入力される電圧値は、個別アンテナモジュールの配列の違いに起因する、個別の発振回路の調節における変化に対して補正がなされるように、予め一意的に確定されている。
【0062】
上記本発明の具体例を以下に示す。
【0063】
この具体例の目的は、マウスの腹部のMRI検査である。
【0064】
この目的のために、円筒形の外被面上に配列された、6つの個別の素子を有するフェイズドアレイアンテナを使用できる。これを、図5(a)に概略的に示す。
【0065】
本発明では、異なる寸法のマウスに適合するコイルを有するために、6つの別個の個別アンテナモジュールと、例えば異なる寸法の3つの支持体一式とが提供される。
【0066】
次いで、支持体のセットから、検査されるマウスが、その中にぴったりと適合する円筒形を選択することができる。これに続いて、6つのアンテナモジュールが、この支持体に装着される。このことで、所望の検査に対して最適な寸法となる、目的とする6重フェイズドアレイアンテナが得られる。
【0067】
これにより、支持体に装着された減結合素子によって、個別アンテナの最適な減結合が確実に行われるようにする。
【0068】
[参照文献の一覧]
[1]:米国特許第4,825,162号明細書
[2]:独国特許出願公開第38 20 168 A1号明細書
[3]:米国特許第5,216,368号明細書
[4]:独国特許発明第41 13 120 C2号明細書
[5]:独国特許出願公開第10 2004 046 188 A1号明細書
[6]:独国特許出願公開第102 44 172 A1号明細書
[7]:米国特許第6,650,926 B1号明細書
[8]:米国特許出願公開第2008/0238424 A1号明細書
[9]:米国特許第6,084,411号明細書
【符号の説明】
【0069】
1 MRIシステム
2 コンピュータ
2a インターフェース
2b ディスク記憶装置
3 送信器
4 平均化器
5a 傾斜磁場Gx用電流源
5b 傾斜磁場Gy用電流源
5c 傾斜磁場Gz用電流源
6a 傾斜磁場Gx用傾斜コイル
6b 傾斜磁場Gy用傾斜コイル
6c 傾斜磁場Gz用傾斜コイル
7 RF電力アンプ
8 送信アンテナ
9 受信器
10 プリアンプ
11 受信アンテナ
12 磁石
13a〜13c 減結合素子の概略表示
14 個別アンテナモジュールの導体ループ
15 同調回路
16 整合回路
17 非同調回路
18 同調用コンデンサ
19 整合用コンデンサ
20 ダイオード
21 バラン/定在波トラップ
22 RFケーブル
23 個別アンテナ素子のハウジング
24 支持体
25a、25b 支持体を対象物に装着するためのバンド
26a、26b 支持体を対象物に装着するためのベルクロファスナー
27 個別アンテナモジュール
28 個別アンテナモジュールを支持体に対して位置決めするための支持体のピン
29 ピン28を入れるための個別アンテナの案内穴
30 きざみ付きねじ
31 きざみ付きねじのための個別アンテナモジュールの穴
32 きざみ付きねじのための支持体におけるねじ山
33 個別アンテナモジュールの位置を示す、支持体上の印
34 個別アンテナモジュールの接触ピン
35 接触ピンのための接触スリーブ
36 減結合コンデンサ
37 導体経路
38 エンコーディング抵抗
39 エンコーディングのための接触ピン用接触スリーブ
40 エンコーディング抵抗のための接触ピン
41 バタフライの形状の導体ループ
42 変圧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相制御アレイとして設計され、少なくとも1つの導体ループと、1つの同調回路と、1つの整合回路とをそれぞれが備える少なくとも2つの個別アンテナを備え、前記同調回路が少なくとも1つの同調用コンデンサを含み、前記整合回路が少なくとも1つの整合用コンデンサを含み、前記個別アンテナがそれぞれ、支持体上に位置決め・装着されると共にそこから非破壊的に取り外されうる別個のモジュールを構成する、磁気共鳴装置で使用するためのアンテナ構成であって、前記個別アンテナが、減結合素子を通して互いに接続され、前記減結合素子が、取り外しできないやり方で前記支持体に装着されることを特徴とするアンテナ構成。
【請求項2】
前記支持体上の前記減結合素子が、バタフライ形状を有する導体経路の形で設計されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ構成。
【請求項3】
前記支持体上の前記減結合素子が、コンデンサの形で設計されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ構成。
【請求項4】
前記支持体上の前記減結合素子が、誘導性減結合コイルの形で設計されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ構成。
【請求項5】
前記支持体上の前記減結合素子が、変圧器の形で設計されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ構成。
【請求項6】
少なくとも1つのダイオードを含む非同調回路を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ構成。
【請求項7】
前記支持体には、個別アンテナ素子内で容量ダイオードの電源電圧を調整するエンコーディング素子が付加的に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ構成。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項によるアンテナ構成を形成するための、同一の複数のアンテナモジュールからなるモジュール配置のシステムであって、異なる支持体であって減結合素子がこれらに固定されているものを用意し、前記アンテナモジュールが前記個別の支持体にモジュール方式で装着可能であり、前記支持体に装着された前記減結合素子が、前記個別アンテナの減結合が最小になるように選択されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
前記支持体が、異なる寸法の円筒形として設計されることを特徴とする請求項8記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30076(P2012−30076A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−166641(P2011−166641)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(591148048)ブルーカー バイオシュピン アー・ゲー (53)
【Fターム(参考)】