説明

モノまたはジフッ素化炭化水素化合物の調製方法

本発明は、モノまたはジフッ素化炭化水素化合物を調製する方法に関する。アルコール、またはカルボニル化された化合物から、モノまたはジフッ素化炭化水素化合物を調製する本発明の方法は、場合によって塩基の存在下で、これらの1種とフッ素化試薬とを反応させることを含む。本発明は、フッ素化剤が、式(F)


[式中、Rは、アルキルまたはシクロアルキル基を表す。]に対応するピリジニウム主体を含む試薬であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、モノフルオロまたはジフルオロ炭化水素系化合物の調製方法である。
【背景技術】
【0002】
フルオロ化合物は、一般に得ることが難しい。フッ素の反応性から、フルオロ誘導体を直接得ることは困難または不可能でさえある。
【0003】
フルオロ誘導体を製造するために、最も多く使用されている技法の1つは、ハロ、一般にクロロ誘導体を、無機フッ素、一般に通常高原子量のアルカリ金属のフッ化物と反応させて、ハロゲンを交換するものである。
【0004】
一般に、使用されるフッ化物は、フッ化カリウムであり、これは、満足な経済的妥協点を成立させる。
【0005】
これらの条件下で、例えばFR2353516および文献Chem.Ind.(1978)−56に記載されているような多くの方法が、記載されており、フッ化アリールを得るために電子求引性基がグラフトされているアリールを工業的に使用してきた。
【0006】
基質が、このタイプの合成に特に適している場合を除いて、この技法は欠点を有し、この主なものは、以下本明細書において分析されるものである。
【0007】
この反応は、フッ化カリウムなどのアルカリ金属フッ化物のような試薬を必要とし、これらは、このタイプの合成に適することを満足させる規格によって比較的高価になり、非常に純粋で、乾燥していて、適切な物理的形態にある必要がある。
【0008】
また、液体または二極性非プロトン性溶剤によって希釈されたフッ化水素酸などの試薬が使用される。しかし、フッ化水素酸は、強力過ぎる試薬であり、しばしば望ましくない重合反応またはタールを生じる。
【0009】
この場合、とりわけ、電子求引性タイプ基の存在により電子不足である、アルキル(アラルキルを含む)タイプの炭素上のフルオロ誘導体を得ることが望まれる場合には、当分野の技術者は、その事柄が殆ど失望的である1つの選択に直面する、即ち、非常に厳しい条件を選択し、大抵タールが生じるか、または、穏やかな反応条件下で反応が生じ、最良の場合に、基質には変化が見られない。最後に、ある種の著者は、酸化物またはフッ化物の形態の重い元素の存在において、試薬としてフッ化水素酸塩を使用して交換を行うことを提案していることが言及されるべきことである。この使用される元素の中に、アンチモンおよび銀または水銀などの重い金属を挙げておくべきである。
【0010】
特に、炭素−酸素結合を炭素−フッ素結合に変換することを可能にする、穏やかなフッ素化条件を見出すことが重要である。
【0011】
このタイプの反応を生じさせるフッ素化試薬は、既に提案されている。
【0012】
トリフッ化アミノ硫黄(とりわけトリフッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST))をフッ素化剤(J.Org.Chem.,40,3808(1975);Tetrahedron,44,2875(1988);J.Fluorine Chem.,43(3),405〜13,(1989)および42(1),137〜43,(1989);EP0905109)として使用することが知られている。特に、これは、カルボニル基をジフルオロメチレン基に変換することを可能にする。
【0013】
DASTの欠点は、反応媒体から除去することが困難な悪臭のある副生成物を生じることにある。
【0014】
H.Hayashi等は、アルコールのモノフルオロ化合物への、およびアルデヒド/ケトンのgem−ジフルオロ化合物への変換を可能にする新規なフッ素化剤として、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリンを記載している。
【0015】
前記試薬は、非常に安定であるとは思われず、所与の収量を得ることは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、よりよい条件下でフッ素化を実施することを可能にする改良された方法を提供することが望まれた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの方法が、今回見出され、これが本発明の主題を構成するものであり、これは、アルコールからのまたはカルボニル系化合物からの、これらの1種とフッ素化試薬との、場合によって塩基の存在下での反応を含む、モノフルオロまたはジフルオロ炭化水素系化合物の調製方法であり、前記フッ素化試薬は、次式:
【0018】
【化4】

[前記式中、
は、アルキルまたはシクロアルキル基を表す。]
に対応するピリジニウム単位を含む試薬であることを特徴とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本文において、用語「アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝炭化水素系鎖を意味すると理解される。
【0020】
好ましいアルキル基の例は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、またはt−ブチル基である。
【0021】
用語「シクロアルキル」は、3〜7個の炭素原子、好ましくは5もしくは6個の炭素原子を含む環式または単環式炭化水素系の基を意味すると理解される。
【0022】
基は、その他の意味、例えばベンジルを有することができるが、経済的観点から複雑なR基を有することには利点はないことに留意されたい。したがって、C〜Cアルキル基、より具体的にはメチル基が好ましい。
【0023】
本発明の方法によれば、フッ素化は、アルコールまたはカルボニル系アルデヒドもしくはケトン化合物をフッ素化するための試薬を使用して実施される。
【0024】
本発明の第1の実施形態は、対応するヒドロキシル化化合物(アルコール)からモノフルオロ化合物を調製することにある。
【0025】
本発明のその他の変形は、カルボニル系化合物からのgem−ジフルオロ化合物を調製することにある。
【0026】
式(F)に対応する単位を含むフッ素化試薬が、本発明の方法に関与する。
【0027】
1つの好ましい試薬は、1−アルキル−または1−シクロアルキル−2−フルオロピリジニウムを使用することであるが、本発明はまた、前記単位が、例えばピリジニウム環が5または6個の炭素原子を有する飽和、不飽和または芳香族環に縮合しているような多環式構造に含まれている場合を想定している。
【0028】
さらに特定の例として、1−アルキル−または1−シクロアルキル−2−フルオロキノリニウムを挙げることができる。
【0029】
本発明は、試薬の環上の、特にピリジニウム環上の1つまたは複数(最高4)の置換基の存在を除外しない。
【0030】
説明のために示される例として、とりわけ、1〜4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルコキシ基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)または電子求引基、例えばニトロ基または1〜4個の原子を有するアルキルのカルボキシレートを挙げることができる。
【0031】
本発明のその他の実施形態によれば、フルオロ試薬を、フッ化物源と一緒に、次式:
【0032】
【化5】

[前記式中、
Xは、フッ素より高順位のハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素を表し、および
は、アルキルまたはシクロアルキル基を表す。]
に対応するピリジニウム単位を含むハロゲン化試薬を使用して、そのままの位置で調製することができる。
【0033】
式(F)または(F)のピリジニウム単位において、窒素原子は、四級化されていることに留意されたい。Yにより示されるこれに伴う対イオンは、前記単位を調製する方法に起因する。ハライドまたはスルホネートもしくはカルボキシレート基が好ましい。
【0034】
ハライドの例として、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を挙げることができる。
【0035】
スルホネート基に関しては、これは、Rが炭化水素系の基である式RSOによって表すことができる。
【0036】
前記式において、Rは、任意の性質を有する炭化水素系の基である。しかし、経済的観点からRは単純な性質を有し、さらに詳細には1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基、好ましくはメチルまたはエチル基を表すが、これはまた、例えばフェニルまたはトリル基またはトリフルオロメチル基を表すことができる。RSOの中で、好ましい基は、トリフルオロメチル基を表すR基に対応するトリフレート基である。
【0037】
また、Yは、Rが炭化水素系の基である式RCOによって表すことができるカルボキシレート基であってもよい。
【0038】
スルホネート基に関しては、Rの性質は、非常に重要というわけではないが、Rが1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基であることが経済的に望ましい。
【0039】
本発明の方法において好ましく使用されるフッ素化試薬として、とりわけ
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレート、
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレート、
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムフルオリド、
N−メチル−2−フルオロキノリニウムトリフレート、および
N−メチル−2−フルオロキノリニウムフルオリド
を挙げることができる。
【0040】
使用されるフッ素化試薬の量は、基質、アルコールまたはカルボニル系化合物の量に対して表される。これは、好ましくは少なくとも化学量論的量に等しい。これは、フッ素化試薬のモル数と基質のモル数の間の比が、通常1から3の間で変化し、好ましくは1.5から2の間であるようなものである。
【0041】
本発明の方法によれば、アルコールまたはカルボニル系化合物を、塩基の存在下で有機媒体中において本発明のフッ素化試薬と反応させる。
【0042】
アルコール
アルコールに関して、これは、さらに詳細に一般式(I):
−OH (I)
[前記式(I)中、
は、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素系の基を表し、これは直鎖または分枝の、飽和または不飽和の非環式脂肪族基;飽和の、不飽和のまたは芳香族の脂環式基;環式置換基を担持する直鎖または分枝、飽和または不飽和脂肪族基を表す。]
に対応する。
【0043】
本発明の方法に関与するアルコールは、Rが直鎖または分枝、飽和または不飽和非環式脂肪族基を表す式(I)に対応する。
【0044】
さらに詳細には、Rは、好ましくは1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル、アルケニル、アルカジエニルまたはアルキニル基を表す。
【0045】
炭化水素系鎖は、場合により、
以下の基の1つによって遮断されたもの:
−O−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−S−、−SO−、−NR−、−CO−NR−、
(これらの式において、Rは、水素またはアルキル基、好ましくはメチルまたはエチル基を表す。)および/または
以下の置換基の1つを担持するもの:
−OH、−OCOO−、−COOR、−CHO、−NO、−X、−CF、(これらの式において、Rは、先に示された意味を有する。)
であってよい。
【0046】
直鎖または分枝、飽和または不飽和、非環式脂肪族残部は、場合により、環式置換基を担持することができる。用語「環」は、飽和、不飽和または芳香族炭素環式または複素環式環を意味すると理解される。
【0047】
非環式脂肪族残部は、原子価結合によって、または以下の基の1つによって環に結合することができる:
−O−、−CO−、−COO−、−OCOO−、−S−、−SO−、−NR−、−CO−NR−、
(これらの式において、Rは、先に示された意味を有する。)。
【0048】
環式置換基の例として、環またはベンゼン置換基に6個の炭素原子を含む、脂環式、芳香族または複素環式置換基、特に脂環式置換基を想定することが可能である。
【0049】
アルコールの一般式(I)において、Rはまた、飽和している、または環中に一般に3〜7個の炭素原子、好ましくは6個の炭素原子を有する、環中に1または2個の不飽和を含む炭素環式基を表す。
【0050】
基の好ましい例として、シクロヘキシルまたはシクロヘキセン/シクロヘキセニル基を挙げることができる。
【0051】
基が環を表す場合、本発明はまた、置換基が本発明の方法を妨げない限り、環が、1つまたは複数の置換基を担持することができることに留意されたい。特に1〜4個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を挙げることができる。
【0052】
この方法は、殆どのアルコールにより容易に実施される。
【0053】
アルコールのさらに詳細な例として:
例えば、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、イソペンチルアルコール、sec−ペンチルアルコールおよびtert−ペンチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルラクテート、イソブチルラクテート、メチルD−ラクテート、およびイソブチルD−ラクテートなどの1〜5個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコール;
例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプチルアルコール、オクタノール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキサノール、sec−オクチルアルコール、tert−オクチルアルコール、ノナノール、イソノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、オクタデカノール、ヘキサデカノール、オレイルアルコール、エイコシルアルコール、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの少なくとも6および約20個までの炭素原子を有する高級脂肪族アルコール;
例えば、シクロプロパノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、トリプロピルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールおよびメチルシクロヘプタノール、シクロペンテノール、シクロヘキセノールなどの3〜約20個の炭素原子を有する脂環式アルコール;および
例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フェニルオクタデシルアルコールおよびナフチルデシルアルコールなどの7〜約20個の炭素原子を有する、芳香族基を担持する脂肪族アルコール;
を挙げることができる。
【0054】
また、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールなどのポリオール、とりわけポリオキシエチレングリコールを使用することも可能である。
【0055】
上述のアルコールの中で、以下のものが本発明の方法において好ましくは使用される:
脂肪族または脂環式アルコール、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、第一または第二脂肪族アルコール。
【0056】
本発明の方法の1つの変形は、テルペンアルコールおよびさらに詳細には式(Ia):
T−OH (Ia)
[前記式(Ia)中、
Tは、5の倍数である炭素原子の数を有する、テルペンアルコールの残部を表す。]
のテルペンアルコールを使用することに存在する。
【0057】
本発明に従う記載において、用語「テルペン」は、イソプレンから得られるオリゴマーを意味すると理解される。
【0058】
さらに詳細には、使用されるアルコールは、一般式(Ia)に対応し、この中の残部Tは、5〜40個の炭素原子を有する炭化水素系の基およびさらに詳細には、直鎖または分枝、飽和または不飽和脂肪族基;3〜8個の炭素原子を有する環を含む、単環式または多環式、飽和、不飽和または芳香族、脂環式基を表す。
【0059】
しかし、本発明の範囲を制限することなしに、残部Tは、
直鎖または分枝、飽和または不飽和、脂肪族テルペンアルコール;
飽和または不飽和、または芳香族、単環式、脂環式テルペンアルコール;
少なくとも2つの飽和および/または不飽和炭素環を含む多環式、脂環式テルペンアルコール;
の残部を表すことを特定する。
【0060】
直鎖または分枝、飽和または不飽和、脂肪族テルペンアルコールの残部Tに関して、炭素原子の数は、5〜40個の炭素原子の間で変化する。残部Tのさらに特定の例として、飽和しているまたは二重結合を有しており、および好ましくは3および7位に2つのメチル基を担持する8個の炭素原子を含む基を挙げることができる。
【0061】
これが単環式化合物である場合、環の炭素原子の数は、広く3〜8個の炭素原子で変化してよいが、5または6個の炭素原子が好ましい。
【0062】
炭素環は、飽和されているまたは環中に1または2個の不飽和を、通常酸素原子のα位にある好ましくは1〜2個の二重結合を含んでいてよい。
【0063】
芳香族テルペンアルコールの場合、芳香族環は、一般にベンゼン環である。
【0064】
また、この化合物は、多環式、好ましくは二環式であってよく、これは少なくとも2つの環が2個の炭素原子を共有することを意味する。多環式化合物の場合、それぞれの環の炭素原子の数は、3から6の間で変化し、炭素原子の総数は好ましくは7に等しい。
【0065】
通常現れる二環式構造の例を以下に挙げる:
【0066】
【化6】

【0067】
環の場合に、置換基の存在は、置換基が想定される用途に適合する限り除外されない。炭素環により通常担持される置換基は、1つまたは複数のアルキル基、好ましくは3つのメチル基、メチレン基(環外結合に対応)、アルケニル基、好ましくはイソプロペニル基である。
【0068】
使用が可能なテルペンアルコールの例として:
飽和または不飽和脂肪族テルペンアルコール:
3,7−ジメチルオクタノール、
ヒドロキシシトロネロール、
1−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−7−オクテン、
ネロール、
ゲラニオール、
リナロール、および
シトロネロールなど、
芳香族脂環式テルペンアルコール:
チモールなど、
飽和または不飽和、単環式または多環式、脂環式テルペンアルコール:
クリサンセミルアルコール、
1−ヒドロキシエチル−2,2,3−トリメチルシクロペンタン、
β−テルピネオール、
1−メチル−3−ヒドロキシ−4−イソプロピルシクロヘキセン、
α−テルピネオール、
テルピネン−4−オール、
1,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシメチルシクロヘキセン、および
イソボルネオールなど、
が挙げられる。
【0069】
前述のアルコールの中で、好ましいアルコールは以下のものである:
クリサンセミルアルコール、
3,7−ジメチルオクタノール、
ゲラニオール、
リナロール、
シトロネロール、
ヒドロキシシトロネロール、
ネロール、
チモール、
メントール、および
イソボルネオール。
【0070】
カルボニル系化合物
一般式:
【0071】
【化7】

[前記式中、
、RおよびRは、同一でありもしくは異なり、直鎖もしくは分枝の、飽和もしくは不飽和の、非環式脂肪族基;単環式もしくは多環式の、飽和の、不飽和のもしくは芳香族の炭素環式もしくは複素環式基;または前述した基の連鎖であってよい、1から40個の炭素原子を含む炭化水素系の基を表し;
およびR基は、一緒に結合して、5または6個の原子を含む環を形成してよく;
およびR基は、カルボニル基に対してα位の炭素原子上に水素原子を含まない。]
の1つに対応するアルデヒドまたはケトン(またはジケトン)が、基質として本発明の方法に関与することができる。
【0072】
本発明は、式(III)または(IV)において、RがRと同一の場合、対称ケトンまたはジケトンを、およびRがRと異なる場合、非対称ケトンまたはジケトンを使用することができる。
【0073】
さらに詳細には、式(II)〜(IV)において、R、RおよびRは、直鎖または分枝の、飽和または不飽和の非環式脂肪族基であってよい、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素系の基;単環式または多環式の、飽和の、不飽和のまたは芳香族の炭素環式または複素環式基;または環式置換基を担持する、直鎖または分枝の、飽和または不飽和の脂肪族基を表す。
【0074】
、RおよびRは、好ましくは1〜12個の炭素原子、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の、飽和非環式脂肪族基を表す。
【0075】
本発明は、共役または非共役であってよい1つまたは複数の二重結合、または、三重結合などの炭化水素系鎖上の不飽和の存在を除外しない。
【0076】
炭化水素系鎖は、ヘテロ原子(例えば、酸素または硫黄)により、または反応しない限り官能基(特に、とりわけ−CO−などの基が挙げられる。)により、場合によって遮断されていてもよい。
【0077】
炭化水素系分子鎖は、これらがケトン化反応を妨害しない限り、場合によって1つまたは複数の置換基(例えば、ハロゲン、エステル)を担持してよい。
【0078】
直鎖または分枝の、飽和または不飽和の非環式脂肪族基は、場合によって環式置換基を担持することができる。用語「環」は、飽和の、不飽和のまたは芳香族の炭素環式または複素環式環を意味すると理解される。
【0079】
非環式脂肪族基は、原子価結合、ヘテロ原子またはオキシ、カルボニル、カルボキシ、スルホニル等の官能基によって環に結合することができる。
【0080】
環式置換基の例として、脂環式、芳香族または複素環式置換基、とりわけ環に6個の炭素原子を含む脂環式置換基またはベンゼン置換基を想定することが可能であり、これらの環式置換基はこれ自体、これらが本発明の方法において生じる反応を妨げない限り、場合によって任意のタイプの置換基を担持している。特に、1〜4個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を挙げることができる。
【0081】
さらに詳しくは、環式置換基を担持する脂肪族基の中で、シクロアルキルアルキル基、例えばシクロヘキシルアルキル基または7〜12個の炭素原子を有するアラルキル基、とりわけベンジルまたはフェニルエチル基が対象とされる。
【0082】
式(III)または(IV)において、R、RおよびRはまた、環に好ましくは5または6個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭素環式基;窒素、硫黄および酸素原子などの1または2個のヘテロ原子を含めて5または6個の原子を環に含む飽和または不飽和複素環式基;単環式の、芳香族の、炭素環式基または複素環式基、好ましくはフェニル、ピリジル、ピラゾリルまたはイミダゾリル基、または縮合したまたは縮合していない多環式基、好ましくはナフチル基を表す。
【0083】
、RおよびR基の1つは、環を含むので、これはまた置換することができる。この置換基の性質は、主反応を妨害しない限り、いかなるものであってもよい。置換基の数は、一般に多くとも環当り4であるが、通常1または2に等しい。
【0084】
前に示した全ての意味の中で、Rは、好ましくは1〜12個の炭素原子、好ましく1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基またはフェニル基を表す。
【0085】
前に述べたように、RおよびR基は、カルボニル基に対してα位の炭素原子上に水素を含まない。
【0086】
したがって、カルボニル基に対してα位の炭素原子は、第三級炭素原子である。第三級炭素原子の例は、式(R)(R)(R)Cによって表され、ここでR、RおよびRは、特にハロゲン原子、好ましくはフッ素原子;1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基;また、環、例えばナフタレンタイプなどの多環式構造に場合によって含まれる例えばフェニル基を形成することもできるR、RおよびR基を表す。
【0087】
式(III)および(IV)において、RおよびR基は、一緒に結合されて5または6個の原子を含む環を形成することができる。カルボニル基[式(III)]の、またはカルボニル基[式(IV)]の両側のα位に位置する炭素原子は第三級であるので、これら炭素原子は、置換されている(上述のように)か、5または6個の原子を有する不飽和または芳香族環、好ましくはベンゼン環に含まれていることを意味する。
【0088】
本発明の方法において使用することができるケトンの特定の例として、
ベンゾフェノン、
2−メチルベンゾフェノン、
2,4−ジメチルベンゾフェノン、
4,4’−ジメチルベンゾフェノン、
2,2’−ジメチルベンゾフェノン、
4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、
4−ベンゾイルビフェニル、
フルオレノン、および
フェナントレン−9,10−ジオン
をさらに詳細には挙げることができる。
【0089】
本発明の方法において使用されるアルコールの、およびカルボニル系化合物の例を以下に挙げる:1−デカノール、イソプロピルマンデレート、アニスアルデヒド、テレフタルアルデヒドおよびフェナントレン−9,10−ジオン。
【0090】
塩基
塩基は、本発明の方法において場合によって含まれ、この役割は、酸ハライドである脱離基を捕捉することである。
【0091】
この塩基の特性は、少なくとも4以上、好ましくは5から14の間、さらに好ましくは7から11の間のpKaを有することである。
【0092】
このpKaは、水を溶剤として使用する場合、酸/塩基対のイオン解離定数として定義される。
【0093】
本発明によって定義されるpKaを有する塩基の選択については、特に、Handbook of Chemistry and Physics,第66版、頁D−161およびD−162を参照することができる。
【0094】
この塩基の選択を決定する別の必要条件は、非求核性であること、即ち反応において基質の代わりにならないことである。
【0095】
塩基の別の特性は、有機媒体に溶解性であることが好ましいことである。
【0096】
本発明の方法に適する塩基の中で、特に、好ましくはナトリウム、カリウムもしくはセシウムのアルカリ金属の、または好ましくはカルシウム、バリウムもしくはマグネシウムのアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩などの無機塩基を挙げることができる。
【0097】
また、第三級アミンなどの有機塩基が適当であり、さらに詳しくは、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアミノ−4−ピリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−n−ブチルピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,2−ジメチルピロリジンを挙げることができる。
【0098】
塩基の中で、好ましくはトリエチルアミンが選択される。
【0099】
ピリジニウム塩に対して表された使用される塩基の量は、少なくとも化学量論的量に等しい。さらに好ましくはピリジニウム塩のモル数と塩基のモル数との比は、好ましくは1から3の間、およびよりさらに好ましくは1.5から2の間で変化する。
【0100】
フッ化物源
フッ化物は、塩の形態で媒体に導入される。
【0101】
例として、フッ化水素酸;例えばフッ化カリウムまたはフッ化アンモニウムなどの塩を挙げることができる。
【0102】
また、第四級フッ化アンモニウム、好ましくはテトラアルキルフッ化アンモニウム、およびさらに詳しくは、フッ化テトラプロピルアンモニウムおよびフッ化テトラブチルアンモニウム;二フッ化水素テトラアルキル水素アンモニウム、好ましくは二フッ化水素アンモニウムを使用することが可能である。
【0103】
好ましくは、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAT)が選択される。
【0104】
酸素化された基質に対して表された使用されるフッ化物源の量は、は少なくとも化学量論的量に等しい。さらに好ましくは、フッ化物のモル数と基質(アルコールまたはケトン)のモル数との比は、1から3の間、およびよりさらに好ましくは1.5から2の間で変化する。
【0105】
有機溶剤
反応は、一般に反応溶剤の存在下で実施される。
【0106】
反応条件下で不活性である溶剤が選択される。
【0107】
本発明に適する溶剤のさらに具体的な例として、ジメチルスルホキシド、スルホラン、またはN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジエチルホルムアミドなどの直鎖または環式カルボキサミド;脂肪族または芳香族ニトリル、好ましくはアセトニトリル、プロピオニトリル、ブタンニトリル、イソブタンニトリル、ペンタンニトリル、2−メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル、マロニトリル、1,4−ベンゾニトリルなどの極性非プロトン性溶剤を好ましくは挙げることができる。
【0108】
本発明に適する、より極性の少ない有機溶剤の他の例として、ハロゲン化または非ハロゲン化脂肪族の、脂環式のまたは芳香族の炭化水素;またはエーテルを、とりわけ挙げることができる。
【0109】
また、脂肪族および脂環式炭化水素、さらに詳細には、とりわけヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、テトラデカン、石油エーテルおよびシクロヘキサンなどのパラフィン;とりわけベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、プソイドクメンおよびアルキルベンゼンの混合物からなる石油留分、とりわけSolvesso(登録商標)タイプ留分を使用することが可能である。
【0110】
また、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素を使用することも可能であり、さらに詳細には、特にテトラクロロエチレンおよびヘキサクロロエタンなどの過塩素化炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、1,2−ジクロロブタンなどの部分塩素化炭化水素;モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンまたは種々のクロロベンゼンの混合物が挙げられる。
【0111】
好ましくは、ジクロロメタンまたはクロロホルムが選択される。
【0112】
溶剤の例として、脂肪族、脂環式または芳香族エーテル、およびさらに詳細には、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(または1,2−ジメトキシエタン)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(または1,5−ジメトキシ−3−オキサペンタン)、ジオキサンまたはテトラヒドロフランが挙げられる。
【0113】
また、有機溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0114】
使用される有機溶剤の量は、好ましくは溶剤中の出発基質の重量濃度が5から40%の間、好ましくは10から20%の間であるように選択される。
【0115】
反応は、一般に0℃から140℃の間、好ましくは80℃から100℃の間の温度において実施される。
【0116】
フッ化反応は、一般に大気圧下で、しかし好ましくは不活性ガスの制御された雰囲気下で実施される。希ガス、好ましくはアルゴンの雰囲気を設定することが可能であるが、窒素を使用することがより経済的である。大気圧よりも僅かに大きいか、または小さい圧力が適当であり得る。
【0117】
実際的観点から、この反応は、実施することが簡単である。
【0118】
試薬を使用する順序は、決定的なものではない。1つの好ましい変形は、基質、溶剤およびフッ素化剤、および次いで塩基を装入し、所望の温度に加熱することにある。
【0119】
反応時間は、極めて調節可能である。反応時間は、1から24時間であってよく、好ましくは8から15時間の間である。
【0120】
反応の終わりに、フルオロ生成物は、当分野の技術者の通常の技法を実施することによって回収される。
【0121】
一般に、水相に塩を溶解させるために水を添加し、非混合性の溶剤、例えばジクロロエタン、トルエンまたはモノクロロベンゼンを添加して、有機相中の得られたフッ素化合物を回収する。
【0122】
次いで、水および有機相を分離する。
【0123】
フッ素化合物は、例えば、適切な溶剤、とりわけイソプロピルエーテルなどのエーテルまたはメタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール中で蒸留または結晶化による通常の分離方法によって回収される。
【0124】
単位(F)または(F)を含む、本発明によるフッ素化試薬は、従来の方法で調製することができる。
【0125】
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートの調製についてはP.H.Gross等、J.Org.Chem.(1991),56巻,509〜513、および2−クロロ−N−メチルピリジニウムトシレートの調製についてはMarvell等、J.Am.Chem.Soc.(1929),51巻,3640による研究をとりわけ参照することができる。
【0126】
前記試薬を得るための1つの経路は、以下の式:
【0127】
【化8】

[前記式中、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を表す。]
によって表すことができる2−ハロピリジンをアルキル化する反応を実施することにある。
【0128】
アルキル化剤として、好ましくは低いC〜C炭素数を有するアルキルハライド、好ましくはヨウ化メチルまたは臭化メチルを使用することができる。
【0129】
また、以下の式:
SO(VI)およびRCO(VII)[式中、RおよびRは、前に示した意味を有し、Xは、ハロゲン原子、塩素、臭素またはヨウ素を表す。]によって表すことができる、スルホン酸またはカルボン酸ハライドを使用することも可能である。
【0130】
2−ハロピリジンは、上述のようにアルキル化剤と反応させる。
【0131】
一般に、アルキル化剤は、僅かに過剰に存在し、アルキル化剤と2−ハロピリジンとのモル比は、有利には1.1から1.2の間で変化する。
【0132】
アルキル化反応の温度は、一般に0℃から80℃の間、好ましくは20℃から50℃の間である。
【0133】
反応は、反応条件下で不活性である有機溶剤の存在下で実施される。
【0134】
溶剤の例として、とりわけハロゲン化または非ハロゲン化脂肪族または芳香族炭化水素、またはニトリルを挙げることができる。この明細書において前に示した一覧を参照することができる。
【0135】
ジクロロメタン、クロロベンゼンおよびトルエンが好ましい。
【0136】
形成されたピリジニウム塩は、反応媒体中に沈殿する。
【0137】
沈殿は、通常の固体/液体分離技法、好ましくは濾過により回収される。
【0138】
沈殿を、好ましくは反応の間に使用した有機溶剤を使用して洗浄してよく、次いで溶剤を蒸発によって除去する。
【0139】
次いで、これを本発明の方法において使用する。
【0140】
本発明の一変形によれば、1−アルキル−または1−シクロアルキル−2−フルオロピリジニウムを、別のハロゲンを含む試薬、例えば1−アルキル−または1−シクロアルキル−2−クロロピリジニウムから、アルカリ金属の、好ましくはナトリウムまたはカリウムのフッ化物を使用して塩素をフッ素原子により交換することによって調製することが可能である。
【0141】
出発試薬を、前に述べたように有機溶剤、例えばアセトニトリル中に懸濁させ、次いでアルカリ金属フッ化物を、化学量論的量から例えば20%の過剰の量までの範囲の量において、粉体形態で添加する。
【0142】
形成されたアルカリ金属塩化物は、通常の固体/液体分離技法、好ましくは濾過により分離される。
【0143】
次いでフルオロ試薬は、回収される。
【0144】
本発明の例示的実施形態を、実例により非限定的に以下に示す。
【0145】
実施例において定義された収率は、形成された生成物のモル数と使用された基質のモル数との比に対応する。
【0146】
実施例AからKは、フッ素化試薬の調製に関し、以下の実施例は、モノフルオロ化合物(実施例1から5)またはジフルオロまたはポリフルオロ化合物(実施例6から8)を調製するためのこれらの使用に関する。
【実施例】
【0147】
実施例A
2−クロロ−N−メチルピリジニウムトシレートの調製:
【0148】
【化9】

【0149】
凝縮器を上部に付けた25ml丸底フラスコ中で、2−クロロピリジン(2.3g、20.6ミリモル)およびメチルトシレート(3.83g、20.6ミリモル)を80〜85℃で1時間加熱した。
【0150】
次いで、加温したトルエン(15ml)を添加してから、この混合物を冷却させ、結晶化させた。
【0151】
混合物全体を10分間撹拌し、この混合物を室温に戻した。
【0152】
結晶化した下の相を回収した。
【0153】
生成物は、白色固体の形態であり、88%(5.4g)の収率で得られた。
【0154】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(300MHz,CDCl):2.26(s,3H);4.35(s,3H);7.04(d,J=8Hz,2H);7.56(d,J=8Hz,2H);7.85〜7.91(m,2H);8.38〜8.44(m,1H);9.34(d,J=5.3Hz,1H)。
13C NMR(75MHz,CDCl):
一級:21.3;47.8。
二級:−
三級:125.7;126.7(2C);128.8(2C);129.5;149.6;154.5。
四級:140.1;143.4;147.4。
【0155】
実施例B
2−クロロ−N−メチルピリジニウムトリフレートの調製:
【0156】
【化10】

【0157】
25ml丸底フラスコ中で、2−クロロピリジン(2g、20.6ミリモル)をトルエン15ml中で希釈した。
【0158】
注入器を使用してメチルトリフレート(2.33ml、20.6ミリモル)をこの溶液に添加した。
【0159】
この混合物を室温で1時間磁気的に撹拌した。
【0160】
次いで、沈殿をブフナー漏斗で濾過した。
【0161】
溶剤の微量を、約20mmHgの減圧下で蒸発により除去した。
【0162】
生成物は、白色固体の形態であり、99%の収率で得られた。
【0163】
NMR特性は、以下のものであった:−H NMR(300MHz,DMSO):4.33(s,3H);8.08(ddd,J=7.6Hz,J=6.2Hz,J=1.3Hz,1H);8.37(dd,J=8.3Hz,J=1.3Hz,1H)、8.58(ddd,J=8Hz,J=8Hz,J=1.6Hz,1H);9.16(dd,J=6.2Hz,J=1.6Hz,1H)。
13C NMR(75MHz,DMSO):
一級:47.3。
二級:−
三級:126.1;129.4;147.0;148.2。
四級:170.6(q,J=322.2Hz);121.1(q,J=322Hz)。
【0164】
実施例C
2−フルオロピリジンからの2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートの調製:
凝縮器を上部に付けた25ml丸底フラスコ中で、2−フルオロピリジン(2g、20.6ミリモル)をトルエン15ml中で希釈した。
【0165】
注入器を使用してメチルトリフレート(3.83g、20.6ミリモル)をこの溶液に添加した。
【0166】
この混合物を磁気的に撹拌しながら終夜還流した。
【0167】
反応の間に、室温で結晶化する別の黄色相が現れた。
【0168】
次いで、この沈殿をブフナー漏斗で濾過した。
【0169】
溶剤の微量を、約20mmHgの減圧下で蒸発により除去した。
【0170】
生成物は、黄色固体の形態であり、89%の収率で得られた(5.16g)。
【0171】
実施例D
2−クロロ−N−メチルピリジニウムトシレートからの2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレートの調製:
凝縮器を上部に付けた50ml丸底フラスコ中で、2−クロロ−N−メチルピリジニウムトシレート(4.77g、15.9ミリモル)をアセトニトリル20mlに溶解した。
【0172】
この溶液に、高温において約20mmHgの減圧下で予め乾燥させた「噴霧乾燥された」フッ化カリウム(1.02g、17.5ミリモル、1.1当量)を添加した。
【0173】
全体の混合物を1時間還流した。
【0174】
この溶液を冷却した後に、塩化カリウムをブフナー漏斗で濾過した。
【0175】
この濾液を約20mmHgの減圧下で濃縮し、次いでジクロロメタン100mlに再溶解させた。
【0176】
この混合物を再び濾過し、これが過剰のフッ化カリウムを除去することを可能にした。
【0177】
濾液を約20mmHgの減圧下で再び濃縮した。
【0178】
次いで、回収された固体をメチルt−ブチルエーテル中で1時間微細に粉砕し、次いでこの混合物を濾過した。
【0179】
生成物は、黄色固体の形態であり、90%の収率で得られた。
【0180】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(300MHz,CDCl):2.31(s,3H);4.29(d,J=3.8Hz,3H);7.10(d,J=8Hz,2H);7.58(d,J=8Hz,2H);7.62(dd,J=8.4Hz,J=4.2Hz,1H);7.79(m,1H);8.52(m,1H);9.07(m,1H)。
13C NMR(75MHz,CDCl):
一級:21.3;42.0(d,J=5.3Hz)。
二級:−
三級:114.0(d,J=19.9Hz);124.3(d,J=3.8Hz);125.8(2C);128.8(2C);145.8(d,J=7.7Hz);150.9(d,J=11Hz)。
四級:139.9;142.6;158.6(d,J=278.3Hz)。
【0181】
実施例E
2−フルオロピリジンからの2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレートの調製:
【0182】
【化11】

【0183】
25ml丸底フラスコ中で、2−フルオロピリジン(2g、20.6ミリモル)をトルエン15ml中で希釈した。
【0184】
注入器を使用して、メチルトリフレート(2.33ml、20.6ミリモル)をこの溶液に添加した。
【0185】
数分後に、白色沈殿が形成された。
【0186】
この混合物を室温で1時間磁気的に撹拌した。
【0187】
次いで、沈殿をブフナー漏斗で濾過した。
【0188】
溶剤の微量を、約20mmHgの減圧下で蒸発により除去した。
【0189】
生成物は、白色固体の形態であり、99%の収率で得られた。
【0190】
実施例F
2−クロロ−N−メチルピリジニウムトリフレートからの2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレートの調製:
凝縮器を上部に付けた50ml丸底フラスコ中で、2−クロロ−N−メチルピリジニウムトリフレート(2.7g、10ミリモル)をアセトニトリル15mlに溶解した。
【0191】
この溶液に、高温において約20mmHgの減圧下で予め乾燥させた「噴霧乾燥された」フッ化カリウム(0.64g、11ミリモル、1.1当量)を添加した。
【0192】
全体の混合物を1時間還流した。
【0193】
この溶液を冷却した後に、塩化カリウムをブフナー漏斗で濾過した。
【0194】
この濾液を約20mmHgの減圧下で濃縮し、次いでジクロロメタン100ml中に再溶解させた。
【0195】
この固体を再び濾過し、20mmHgの減圧下で乾燥させた。
【0196】
生成物は、白色固体の形態であり、99%の収率で得られた。
【0197】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(300MHz,DMSO):4.11(d,J=4.1Hz,3H)、7.86(m,1H)、7.98(dd,J=4.5Hz,J=8Hz)、8.62(m,1H)、8.80(m,1H)。
13C NMR(75MHz,DMSO):
一級:41.9(d,J=5.3Hz)。
二級:−
三級:114.6(d,J=20.3Hz);124.2(d,J=3.7Hz);144.9(d,J=7.6Hz);151.2(d,J=11.6Hz)。
四級:157.8(d,J=276.7Hz)。
【0198】
実施例G
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレートからのフッ化2−フルオロ−N−メチルピリジニウムの調製:
100ml丸底フラスコ中で、2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレート(10ミリモル)をアセトニトリル最少量(5ml)に溶解した。
【0199】
この混合物に、ジクロロメタン50mlに溶解したTBATを添加した。
【0200】
白色沈殿が直ちに形成した。
【0201】
この後者をブフナー漏斗で濾過し、ジクロロメタンにより洗浄した。
【0202】
次いで、この固体を約20mmHgの減圧下で乾燥させた。
【0203】
実施例H
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレートからのフッ化2−フルオロ−N−メチルピリジニウムの調製:
25ml丸底フラスコ中で、2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレート(10ミリモル)をジクロロメタン10mlに溶解した。
【0204】
この混合物に、ジクロロメタン10mlに溶解したTBATを添加した。
【0205】
白色沈殿が直ちに形成した。
【0206】
この後者をブフナー漏斗で濾過し、ジクロロメタンにより洗浄した。
【0207】
次いで、この固体を約20mmHgの減圧下で乾燥させた。
【0208】
イオン交換は、この方法にかかわらず定量的であった。
【0209】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(300MHz,DMSO):4.11(d,J=4.1Hz,3H)、7.86(ddd,J=1.2Hz,J=6.3Hz,J=7.5Hz,1H)、7.99(ddd,J=1Hz,J=4.6Hz,J=8.6Hz)、8.62(m,1H)、8.81(ddd,J=1.8Hz,J=4.6Hz,J=6.3Hz,1H)。
13C NMR(75MHz,DMSO):
一級:41.6(d,J=5Hz)。
二級:−
三級:114.3(d,J=20.3Hz);123.9(d,J=3.8Hz);144.8Hz(d,J=7.6Hz);150.8(d,J=11.6Hz)。
四級:158.9(d,J=271.9Hz)。
【0210】
実施例I
N−メチル−2−クロロキノリニウムトリフレートの調製:
【0211】
【化12】

【0212】
50ml丸底フラスコ中で、2−クロロキノリン(20ミリモル)をトルエン30mlに溶解した。
【0213】
この混合物を氷浴中で冷却し、メチルトリフレート(11当量)を添加した。
【0214】
この全体の混合物を室温で8時間撹拌した。
【0215】
沈殿した白色固体を、次いで濾過し、トルエンにより洗浄した。
【0216】
次いで、これを約20mmHgの減圧下で乾燥させた。
【0217】
キノリニウム塩が、95%の収率で得られた。
【0218】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):.80(s,3H);7.97(m,1H);8.04(d,J=8.8Hz,1H);8.22〜8.3(m,2H);8.47(d,J=9.5Hz,1H);8.94(d,J=8.8Hz,1H)。
【0219】
実施例J
N−メチル−2−フルオロキノリニウムトリフレートの調製:
【0220】
【化13】

【0221】
N−メチル−2−クロロピリジニウムトリフレートからN−メチル−2−フルオロピリジニウムトリフレートを得るのと同じ手順を使用し、同様な収率であった。
【0222】
実施例K
N−メチル−2−フルオロキノリニウムフルオリドの調製:
【0223】
【化14】

【0224】
N−メチル−2−フルオロピリジニウムトリフレートからN−メチル−2−フルオロピリジニウムフルオリドを得るのと同じ手順を使用し、同様な収率であった。
【0225】
実施例1
1−フルオロデカンの調製:
【0226】
【化15】

【0227】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(560mg、2ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1/2時間乾燥した。
【0228】
冷却後に、トリエチルアミン(0.14ml、1ミリモル)を添加した。
【0229】
全体の混合物をクロロホルムに溶解し、次いで1−デカノール(158mg、2ミリモル)および1−メチル−2−フルオロ−ピリジニウムトシレート(560mg、2ミリモル)を添加した。
【0230】
この混合物をクロロホルムの還流下で5時間加熱した。
【0231】
次いで、これを水2mlにより加水分解し、一水素炭酸ナトリウムの飽和水溶液により中和した。
【0232】
抽出を石油エーテル5mlで4回実施した。
【0233】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、250mmHgの減圧下で濃縮した。
【0234】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0235】
蒸発後、次いで生成物は、透明な液体の形態にあり、56%の収率(m=90mg)で得られた。
【0236】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):0.81(t,J=8Hz,3H);1.1〜1.3(m,14H);1.5〜1.7(m,2H);4.37(dt,J=47.4Hz,J=6.2Hz,2H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:14.1。
二級:22.7;25.2;25.3;29.3(d,J=4Hz);29.5;30.4(d,J=19Hz);31.9;84.3(d,J=164Hz)。
三級:−
四級:−
【0237】
実施例2
2−フルオロデカンの調製:
【0238】
【化16】

【0239】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(560mg、2ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1/2時間乾燥した。
【0240】
冷却後に、トリエチルアミン(0.14ml、1ミリモル)を添加した。
【0241】
全体の混合物をクロロホルムに溶解し、次いで2−デカノール(158mg、1ミリモル)および1−メチル−2−フルオロ−ピリジニウムトシレート(560mg、2ミリモル)を添加した。
【0242】
この混合物をクロロホルムの還流下で5時間加熱した。
【0243】
次いで、これを水2mlにより加水分解し、炭酸一水素ナトリウムの飽和水溶液により中和した。
【0244】
抽出を石油エーテル5mlで4回実施した。
【0245】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、250mmHgの減圧下で濃縮した。
【0246】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0247】
次いで生成物は、透明な液体の形態にあり、43%の収率(m=69mg)で得られた。
【0248】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):0.75〜0.85(m,6H);1.1〜1.3(m,14H);4.37(m,1H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:14.1;21.0(d,J=23Hz)。
二級:22.3;22.6;25.1(d,J=5Hz);29.2;29.5(d,J=2Hz);31.9;37.0(d,J=21Hz)。
三級:91.1(d,J=164Hz)。
四級:−
【0249】
実施例3
2−フルオロ−1,2−ジフェニルエタノンの調製:
【0250】
【化17】

【0251】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(280mg、1ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1/2時間乾燥した。
【0252】
冷却後に、トリエチルアミン(0.07ml、1ミリモル)を添加した。
【0253】
全体の混合物をクロロホルムに溶解し、次いでベンゾイン(106mg、0.5ミリモル)および1−メチル−2−フルオロ−ピリジニウムトシレート(280mg、1ミリモル)を添加した。
【0254】
この混合物をクロロホルムの還流下で終夜加熱した。
【0255】
次いで、これを水2mlにより加水分解し、炭酸一水素ナトリウムの飽和水溶液により中和した。
【0256】
抽出をエチルエーテル5mlで4回実施した。
【0257】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、20mmHgの減圧下で濃縮した。
【0258】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル/ジクロロメタン:1/1;R=0.25)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0259】
次いで生成物は、白色固体の形態にあり(融点:53℃)、87%の収率(m=93mg)で得られた。
【0260】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):6.52(d,J=48.7Hz,1H);7.3〜7.6(m,8H);7.9〜8.0(m,2H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:−
二級:−
三級:94.0(d,J=186Hz);127.3(d,J=6Hz);128.7;129.1;129.1;129.6(d,J=3Hz)133.8。
四級:134.1;134.3(d,J=20Hz);194.3(d,J=21Hz)。
【0261】
実施例4
エチルフルオロフェニルアセテートの調製:
【0262】
【化18】

【0263】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(280mg、1ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1/2時間乾燥した。
【0264】
冷却後に、トリエチルアミン(0.07ml、1ミリモル)を添加した。
【0265】
全体の混合物をクロロホルム(1ml)に溶解し、次いでエチルマンデレート(90mg、0.5ミリモル)および1−メチル−2−フルオロピリジニウムトシレート(280mg、1ミリモル)を添加した。
【0266】
この混合物をクロロホルムの還流下で3時間加熱した。
【0267】
次いで、これを水5mlにより加水分解した。
【0268】
抽出をエチルエーテル5mlで3回実施した。
【0269】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、約20mmHgの減圧下で濃縮した。
【0270】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル/ジクロロメタン:1/1)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0271】
次いで、生成物は、無色の液体の形態にあり、56%の収率(m=51mg)で得られた。
【0272】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl 300MHz):1.29(t,J=7.3Hz;3H)4.25(q,J=7.3Hz;2H);5.76(d,J=48.2Hz;1H);7.10〜7.48(m,5H)。
【0273】
実施例5
イソプロピルフルオロフェニルアセテートの調製:
【0274】
【化19】

【0275】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(280mg、1ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1/2時間乾燥した。
【0276】
冷却後に、トリエチルアミン(0.07ml、1ミリモル)を添加した。
【0277】
全体の混合物をクロロホルム(1ml)に溶解し、次いでイソプロピルマンデレート(90mg、0.5ミリモル)および1−メチル−2−フルオロピリジニウムトシレート(280mg、1ミリモル)を添加した。
【0278】
この混合物をクロロホルムの還流下で3時間加熱した。
【0279】
次いで、これを水5mlにより加水分解した。
【0280】
抽出をエチルエーテル5mlで3回実施した。
【0281】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、約20mmHgの減圧下で濃縮した。
【0282】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル/ジクロロメタン:1/1)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0283】
次いで、生成物は、無色の液体の形態にあり、63%の収率(m=62mg)で得られた。
【0284】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):1.20(t,d=6.3Hz;3H);1.30(t,d=6.3Hz;3H);5.12(spt,J=6.3Hz;.1H);5.76(d,J=48.0Hz;1H)7.10〜7.48(m,5H)。
13C NMR(CDCl,75MHz)
一級:21.5;21.7。
二級:−
三級:69.7;89.4(d,J=185Hz);126.6;127.9;128.7。
四級:134.6(d,J=38Hz);168.1(d,J=27Hz)。
【0285】
実施例6
1−ジフルオロメチル−4−メトキシベンゼンの調製:
【0286】
【化20】

【0287】
25ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム一水和物(3g、10ミリモル、3.3当量)を導入した。
【0288】
後者を油浴中、100℃において1mmHgの減圧下で1時間加熱した。
【0289】
アルゴン下で冷却後に、1−メチル−2−フルオロピリジニウムトシレート(2.8g、10ミリモル、3.3当量)を、続いてアニスアルデヒド(408mg、3ミリモル)およびトリエチルアミン(1.4ml、10ミリモル、3.3当量)を導入した。
【0290】
5分間撹拌した後に、混合物を次いで80℃にすると、完全に均一になった。
【0291】
5時間後に、この混合物を水(5ml)により加水分解し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(10ml)により中和した。
【0292】
次いで、この水溶液をジエチルエーテルにより抽出した(20mlで3回)。
【0293】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。
【0294】
濾過後に、溶剤を約20mmHgの減圧下で蒸発させた。
【0295】
黒色液体残渣が、薄層クロマトグラフィーにおいて、それぞれのRf値0.27および0.71(石油エーテル/ジクロロメタン:1/1)、または0.08および0.41(石油エーテル/ジクロロメタン:3/1)において2つのスポットを有した。
【0296】
クロマトグラフィーを3/1〜1/1の石油エーテル/ジクロロメタン勾配を有する溶出によってシリカカラムにより実施する。
【0297】
1−ジフルオロメチル−4−メトキシベンゼンは、僅かに黄色の油(278mg、1.76ミリモル、59%)の形態にあった。
【0298】
回収されたアニスアルデヒドは、白色固体であった(100mg、0.73ミリモル、24%)。
【0299】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):3.85(s,3H);6.62(t,J=56.8Hz,1H);6.96(d,J=8.9Hz,2H);7.45(d,J=8.9Hz,2H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:55.34。
二級:−
三級:114.0;114.9(t,J=237Hz);127.1(t,J=6Hz)。
四級:126.5(t,J=23Hz)、161.4。
【0300】
実施例7
1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの調製
【0301】
【化21】

【0302】
5ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(750mg、2.5ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1時間乾燥した。
【0303】
冷却後に、トリエチルアミン(0.35ml、2.5ミリモル)、1−メチル−2−フルオロピリジニウムトシレート(700mg、2.5ミリモル)、次いでテレフタルアルデヒド(36mg、0.25ミリモル)を添加した。
【0304】
この全体の混合物を80℃において6時間加熱した。
【0305】
次いで、これを水3mlにより加水分解し、炭酸一水素ナトリウムの飽和溶液(3ml)により中和した。
【0306】
抽出を、エチルエーテル5mlにより3回実施した。
【0307】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、約20mmHgの減圧下で濃縮した。
【0308】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル中のジクロロメタンの勾配)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0309】
次いで生成物は、無色の液体の形態にあり、30%の収率(m=13mg)で得られた。
【0310】
4−ジフルオロメチルベンズアルデヒドを20%の収率(8mg)で単離した。
【0311】
クロマトグラフィー結果は:
溶離剤:石油エーテル中/ジクロロメタン:1/1
現像法:UV
遅延ファクター:Rf=0.8;および
Rf=0.27。
【0312】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):6.70(t,J=56.5Hz,2H);7.62(s,4H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:−
二級:−
三級:114.0(t,J=239Hz);126.0(t,J=6Hz)。
四級:136.7(t,J=22Hz)。
【0313】
4−ジフルオロメチルベンズアルデヒド:
H NMR(CDCl 300MHz):6.71(t,J=55.9Hz,1H);7.70(d,J=7.9Hz,2H);7.99(d,J=7.9Hz,2H);10.09(s,1H)。
【0314】
実施例8
10,10−ジフルオロフェナントレン−9−オンの調製:
【0315】
【化22】

【0316】
10ml丸底フラスコ中に、二フッ化水素テトラブチルアンモニウム(2.8g、10ミリモル)を1mmHgの減圧下、100℃で1時間乾燥した。
【0317】
冷却後に、トリエチルアミン(0.7ml、10ミリモル)および1−メチル−2−フルオロピリジニウムトシレート(2.8g、10ミリモル)を添加した。
【0318】
全体の混合物を、均一な溶液が得られるまで磁気的に撹拌した(僅かな加熱が必要な場合がある。)。
【0319】
フェナントレン−9,10−ジオン(208mg、1ミリモル)を、次いで添加し、混合物を80℃で終夜加熱した。
【0320】
次いで、これを水3mlにより加水分解し、炭酸一水素ナトリウムの飽和水溶液により中和した。
【0321】
抽出をエチルエーテル10mlにより4回実施した。
【0322】
この有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、約20mmHgの減圧下で濃縮した。
【0323】
残渣をシリカカラム(溶離剤:石油エーテル/ジクロロメタン:1/1;Rf=0.3)のクロマトグラフィーによって精製した。
【0324】
次いで、生成物は、白色固体の形態にあり(融点:90℃)、58%の収率で得られた(m=124mg)。
【0325】
NMR特性は、以下のものであった:
H NMR(CDCl,300MHz):7.48(m,2H);7.61(tq,J=1.3Hz,J=7.5Hz,1H);7.74(ddd,J=1.5Hz J=7.5Hz J=8Hz,1H);7.87(dd,J=1Hz,J=7.7Hz,1H);7.94(m,2H);8.09(ddd,J=0.5Hz,J=1.5Hz,J=7.7Hz,1H)。
13C NMR(CDCl,75MHz):
一級:−
二級:−
三級:123.7;124.4;127.3(t,J=5Hz);128.8(t,J=1Hz);129.3;129.6(t,J=1Hz);132.4(t,J=2Hz);136.2。
四級:108.0(t,J=245Hz);127.7(t,J=2Hz);130.2(t,J=23Hz);131.7(t,J=6Hz);136.1(t,J=2Hz);186.9(t,J=26Hz)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールからのまたはカルボニル系化合物からの、これらの1種とフッ素化試薬との、場合によって塩基の存在下での反応を含む、モノフルオロまたはジフルオロ炭化水素系化合物の調製方法であり、前記フッ素化試薬は、次式:
【化1】

[前記式中、
は、アルキルまたはシクロアルキル基を表す。]
に対応するピリジニウム単位を含む試薬であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フッ素化試薬を、フッ化物源と一緒に、次式:
【化2】

[前記式中、
Xは、フッ素より高順位のハロゲン原子、好ましくは塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくは塩素を表し、および
は、アルキルまたはシクロアルキル基を表す。]
に対応するピリジニウム単位を含むハロゲン化試薬を使用して、そのままの位置で調製することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素化試薬が、多環式構造中に含まれる式(F)または(F)(好ましくはピリジニウム環が、5または6個の炭素原子を有する、飽和の、不飽和のまたは芳香族の環に縮合されている。)に対応する単位を含むことを特徴とする、請求項1および2の一項に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化試薬が、RがC〜Cアルキル基、好ましくはメチル基を表す式(F)または(F)に対応する単位を含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化試薬が、ピリジニウム単位を含み、前記ピリジニウム単位は、四級化された窒素原子がハライド、またはスルホネートもしくはカルボキシレート基から選択されたY対イオンを伴うことを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化試薬が、
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトシレート、
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムトリフレート、
2−フルオロ−N−メチルピリジニウムフルオリド、
N−メチル−2−フルオロキノリニウムトリフレート、および
N−メチル−2−フルオロキノリニウムフルオリド
から選択されることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールが、一般式(I):
−OH (I)
[前記式(I)中、
は、1から30個の炭素原子を有する炭化水素系の基を表し、これは直鎖または分枝の、飽和または不飽和の非環式脂肪族基;飽和の、不飽和のまたは芳香族の脂環式基;環式置換基を担持する、直鎖または分枝の、飽和または不飽和の脂肪族基であってよい。]
に対応することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボニル系化合物が、一般式:
【化3】

[前記式中、
、RおよびRは、同一でありまたは異なり、直鎖または分枝の、飽和または不飽和の非環式脂肪族基;単環式または多環式の、飽和の、不飽和のまたは芳香族の炭素環式または複素環式基;または前述した基の連鎖であってよい1から40個の炭素原子を含む炭化水素系の基を表し;
およびR基は、一緒に結合して、5または6個の原子を含む環を形成してよく;
およびR基は、カルボニル基に対してα位の炭素原子上に水素原子を含まない。]
の1つに対応するアルデヒドまたはケトン(またはジケトン)であることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項9】
フッ素化試薬のモル数と基質のモル数との間の比が、1から3の間で変化し、好ましくは1.5から2の間であることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の方法。
【請求項10】
pKaが少なくとも4以上、好ましくは5から14の間、さらに好ましくは7から11の間である塩基を使用することを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基が、無機塩基(好ましくは、アルカリ金属の、好ましくはナトリウム、カリウムもしくはセシウムの、またはアルカリ土類金属の、好ましくはカルシウム、バリウムもしくはマグネシウムの、好ましくは炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩もしくはリン酸水素塩)であるか、または有機塩基、好ましくは三級アミンであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フッ化物源が、フッ化水素酸;塩、好ましくはフッ化カリウムまたはフッ化アンモニウム;フッ化第四アンモニウム、好ましくはフッ化テトラブチルアンモニウムであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
ジメチルスルホキシド、スルホラン、または直鎖もしくは環式カルボキサミド、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジエチルホルムアミド;脂肪族または芳香族ニトリル、好ましくはアセトニトリル;ハロゲン化または非ハロゲン化脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素;またはエーテルから選択された有機溶剤が使用されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の方法。
【請求項14】
フッ素化反応が、0℃から140℃の間、好ましくは80℃から100℃の間の温度において実施されることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載の方法。
【請求項15】
モノフルオロ化合物が、式(I)に好ましくは対応するアルコールから得られることを特徴とする、請求項1から14の一項に記載の方法。
【請求項16】
gem−ジフルオロ化合物が、式(II)から(IV)の1つに好ましくは対応するカルボニル系化合物から得られることを特徴とする、請求項1から14の一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−501770(P2009−501770A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522003(P2008−522003)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001648
【国際公開番号】WO2007/010111
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【出願人】(503337254)
【Fターム(参考)】