説明

モノアミン再取り込み阻害剤としてのジフェニルアゼピン誘導体

式(I)[式中、m、n、X、X、Y、Y、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物。また医薬組成物、該化合物の使用方法及び製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ジフェニルアゼパン、ジアゼパン及びオキサゼパン化合物ならびにそれらの使用方法に関する。特に、本発明の化合物は、モノアミン再取り込み阻害剤に関連する疾患の処置のために有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノアミン欠乏は、長い間、鬱病性障害、不安障害及び他の障害に関連づけられてきた(例えば、: Charney et al., J. Clin. Psychiatry (1998) 59, 1-14; Delgado et al., J. Clin. Psychiatry (2000) 67, 7-11; Resser et al., Depress. Anxiety(2000) 12 (Suppl 1) 2-19;及び Hirschfeld et al., J. Clin. Psychiatry (2000) 61, 4-6を参照のこと)。特に、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン)及びノルエピネフリンは、気分の調節において重要な役割を担う主要な調節性神経伝達物質として認識されている。フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、シタロプラム及びエスシタロプラムのような選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、鬱病性障害のための処置を提供してきた(Masand et al., Harv. Rev. Psychiatry (1999) 7, 69-84)。レボキセチン、アトモキセチン、デシプラミン及びノルトリプチリンのようなノルアドレナリン又はノルエピネフリン再取り込み阻害剤は、鬱病性障害、注意欠陥障害及び多動性障害のための有効な処置を提供してきた(Scates et al., Ann. Pharmacother. (2000) 34, 1302-1312; Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. (1997) 340, 249-258)。
【0003】
セロトニン及びノルエピネフリン神経伝達の増進は、セロトニン又はノルエピネフリン単独の神経伝達増進と比較して、鬱病性障害及び不安障害の薬物療法において相乗的であることが認められている(Thase et al., Br. J. Psychiatry (2001) 178, 234, 241; Tran et al., J. Clin. Psychopharmacology (2003) 23, 78-86)。デュロキセチン、ミルナシプラン及びベンラファクシンのようなセロトニン及びノルエピネフリンの両方の二重再取り込み阻害剤は、現在、鬱病性障害及び不安障害の処置用に市販されている(Mallinckrodt et al., J. Clin. Psychiatry (2003) 5(1) 19-28; Bymaster et al., Expert Opin. Investig. Drugs (2003) 12(4) 531-543)。また、セロトニン及びノルエピネフリンの二重再取り込み阻害剤は、統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物中毒、認知障害、アルツハイマー病、強迫性行動、注意欠陥障害、パニック発作、対人恐怖症、摂食障害(例えば、肥満症、食欲不振、大食症及び「過食症」)、ストレス、高血糖症、高脂血症、インスリン非依存性糖尿病、発作性障害(例えば、てんかん)に対する可能性のある処置、ならびに脳卒中、脳損傷、脳虚血、頭部損傷及び出血に起因する神経損傷に関連する病状の処置も提供する。また、セロトニン及びノルエピネフリンの二重再取り込み阻害剤は、尿路の障害及び病態に、ならびに疼痛及び炎症に対する可能性のある処置も提供する。
【0004】
ごく最近になって、ノルエピネフリン、セロトニン、及びドパミンの再取り込みを阻害する「三重再取り込み」阻害剤(「広域抗鬱剤」)が、鬱病及び他のCNS兆候症の処置に有用であると認識されている(Beer et al., J. Clinical Pharmacology (2004) 44:1360-1367; Skolnick et al., Eur J Pharmacol. (2003) Feb 14;461(2-3):99-104)。
【0005】
また、モノアミン再取込み阻害剤は、疼痛の処置に用途を有する。セロトニンは、末梢神経系における疼痛過程に関与し、炎症及び神経損傷における末梢鋭敏化及び痛覚過敏に寄与することが見出されている(Sommer et al., Molecular Neurobiology (2004) 30(2), 117-125)。セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、デュロキセチンは、動物モデルにおける疼痛の処置に有効であることが示されている(Iyengar et al., J. Pharm. Exper. Therapeutics (20040, 311, 576-584)。
【0006】
したがって、セロトニン再取込み阻害剤、ノルエピネフリン再取込み阻害剤、ドパミン再取込み阻害剤、及び/又はセロトニン、ノルエピネフリン及び/もしくはドパミンの二重再取り込み阻害剤、或いはノルエピネフリン、セロトニン、及びドパミンの三重再取込み阻害剤として有効である化合物、ならびに、鬱病性障害、不安障害、泌尿生殖器障害、疼痛及び他の障害の処置において、かかる化合物を製造及び使用する方法が必要とされている。本発明は、これらの必要を満たすものである。
【0007】
発明の概要
本発明の一態様は、式(I):
式(I)の化合物:
【化1】


[式中:
m及びnは、各々独立に、0〜3であり;
及びXの一方は、NHであり、そしてもう一方は、CHであり;
がNHの場合、Yは、O又はCHであり、そしてXがCHの場合、Yは、CHであり;
がCHの場合、Yは、N又はCHであり、そしてYがOの場合、Yは、CHであり;
及びRの各々は、独立に、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はハロ−C1−6アルキルである]で示される化合物、及びその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0008】
本発明はまた、医薬組成物、前述の化合物の使用方法及び製造方法を提供する。
【0009】
発明の詳細な記載
定義
特記のない限り、明細書及び請求の範囲を含む本出願で使用される下記の用語は、下記に示す定義を有する。明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他のことを示していなければ、複数の対象を含むことに留意しなければならない。
【0010】
用語「アゴニスト」は、例えば、Goodman and Gilman's "The Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th ed."(Macmillan Publ. Company, Canada, 1985)の35ページに定義されているように、別の化合物又は受容体部位の活性を増強させる化合物を表わす。「完全アゴニスト」は、十分な応答を及ぼすが、一方、「部分アゴニスト」は、受容体群全部を占有したときでさえ、十分な活性化よりは弱い効果を及ぼす。「インバースアゴニスト」は、アゴニストの効果の反対の効果を生じるが、しかし同じ受容体結合部位に結合する。
【0011】
用語「アンタゴニスト」は、例えば、Goodman and Gilman's "The Pharmacological Basis of Therapeutics, 7th ed."(Macmillan Publ. Company, Canada, 1985)の35ページに定義されているように、別の化合物又は受容体部位の作用を減少させる又は妨げる化合物を表わす。特に、アンタゴニストは、アゴニストの効果を減弱させる化合物を指す。「競合的アンタゴニスト」は、アゴニストと同じ部位に結合するが、しかしそれを活性化せず、したがってアゴニストの作用を遮断する。「非競合的アンタゴニスト」は、受容体上のアロステリック(非−アゴニスト)部位に結合して、受容体の活性化を阻害する。「可逆性アンタゴニスト」は、受容体に非共有結合的に結合するので、それゆえ「洗い流す」ことができる。「非可逆性アンタゴニスト」は、受容体に共有結合的に結合し、リガンドの競合又は洗浄のいずれによっても移動させることはできない。
【0012】
用語「モジュレーター」は、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用には、例えば、アゴニスト活性、アンタゴニスト活性、又はインバースアゴニスト活性が含まれる。
【0013】
用語「最大半量阻害濃度」(IC50)は、インビトロで生物学的プロセスの50%阻害を得るために必要な特定の化合物の濃度を表わす。IC50値は、pIC50値(−log IC50)に対数的に変換されることができ、ここで、値が高ければ高いほど、効力がより大きいことを指数関数的に示す。IC50値は、絶対値ではないが、しかし実験条件、例えば用いる濃度に依存する。IC50値は、チェン・プルソフ(Cheng-Prusoff)等式(Biochem. Pharmacol. (1973) 22:3099)を使用して絶対阻害定数(Ki)に変換することができる。
【0014】
用語「阻害定数」(Ki)は、受容体に対する特定の阻害剤の絶対結合親和性を表わす。それは、競合結合アッセイを使用して測定され、競争リガンド(例えば、放射性リガンド)が存在しない場合、特定の阻害剤が受容体の50%を占有する濃度に等しい。Ki値は、pKi値(−log Ki)に対数的に変換されることができ、ここで、値が高ければ高いほど、効力がより大きいことを指数関数的に示す。
【0015】
「アルキル」は、炭素原子及び水素原子のみからなり、1〜12個の炭素原子を有する、一価の直鎖状又は分岐状飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、すなわち、C−Cアルキル(C1−6アルキル)を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「分岐状アルキル」とは、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルを意味する。C−Cアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特に、メチルである。
【0016】
「アルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書に定義されるようなアルキル部分である)の部分を意味する。「C1−6アルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書に定義されるようなC1−6アルキル部分である)の部分を意味する。例には、メトキシ(OMe)、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。特に、OMeである。
【0017】
互換的に使用し得る、用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、置換基フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0018】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が同じ又は異なるハロゲンで置き換えられた、本明細書に定義されるようなアルキルを意味する。「ハロ−C−Cアルキル」は、1個以上の水素が同じ又は異なるハロゲン、特にFで置き換えられた、本明細書に定義されるようなC−Cアルキルを意味する。例には、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
「脱離基」は、有機合成化学においてこの語に通常用いられる意味を持つ基、すなわち置換反応条件下で置換可能な原子又は基を意味する。脱離基の例には、ハロゲン、アルカンスルホニルオキシ又はアリーレンスルホニルオキシ、例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、及びチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0020】
「場合による」又は「場合により」は、後に続く記載の事象又は状況が起きるかもしれないが、起きる必要はないこと、ならびにこの記述に、その事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合が含まれることを意味する。
【0021】
「疾患」及び「病態」は、任意の疾患、病状、症状、障害又は徴候を意味する。
【0022】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、その溶媒が、それに関連して記載されている反応条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどが挙げられる。特記のない限り、本発明の反応に使用される溶媒は、不活性溶媒である。
【0023】
「薬学的に許容しうる」は、一般的に安全で、非毒性であり、かつ生物学的にも又はそれ以外にも望ましくないものでない、医薬組成物の調製に有用であることを意味し、獣医学的及びヒトに対する薬学的使用に許容しうることを含む。
【0024】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書に定義されるような薬学的に許容しうる塩であって、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。かかる塩には:
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸を用いて形成されるか;又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などのような有機酸を用いて形成される、酸付加塩;或いは
親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置換されているか;又は有機もしくは無機塩基と配位して形成される、塩が挙げられる。許容しうる有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容しうる無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0025】
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。特に、塩酸である。
【0026】
薬学的に許容しうる塩の全ての言及には、同じ酸付加塩の、本明細書に定義されるような溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)が含まれることを理解すべきである。
【0027】
「保護基」は、合成化学においてこの語に慣用的に用いられる意味で、化学反応が別の非保護反応部位において選択的に行われることができるように、多官能化合物における1つの反応部位を選択的にブロックする基を意味する。本発明の特定の方法は、反応物中に存在する反応性の窒素及び/又は酸素原子をブロックするための保護基に依存する。例えば、用語「アミノ保護基」及び「窒素保護基」は、本明細書において互換的に使用され、合成手順の間の望ましくない反応に対して窒素原子を保護することを目的とする有機基を指す。例示的な窒素保護基には、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。当業者は、除去の容易性及びその後の反応に耐える能力について、どのように基を選択すべきか分かるであろう。
【0028】
「溶媒和物」は、化学量論的な量又は非化学量論的な量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。一部の化合物は、一定モル比の溶媒分子を結晶状固体状態中に捕捉する傾向をもつことから、溶媒和物を形成する。溶媒が水の場合、形成する溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールの場合、形成する溶媒和物はアルコラートである。水和物は、一つ以上の水の分子と、内部でその水がHOとしてその分子状態を保つ物質の一つとの組み合わせにより形成され、かかる組み合わせは、一つ以上の水和物を形成することができる。
【0029】
「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、哺乳綱の任意のメンバーを意味し、哺乳動物には、ヒト;チンパンジーならびに他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、及びネコなどの愛玩動物;ラット、マウス、及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。非哺乳動物の例には、鳥類などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。「対象」という用語は、特定の齢又は性別を表わすわけではない。特に、ヒトである。
【0030】
セロトニン、ノルエピネフリン及び/又はドパミン神経伝達に関連する「病態」には、鬱病性障害及び不安障害に加え、統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物中毒、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(例えば、ADHD)、強迫性行動、パニック発作、対人恐怖症、摂食障害(例えば、肥満症、食欲不振、大食症及び「過食症」)、ストレス、高血糖症、高脂血症、インスリン非依存性糖尿病、発作性障害(例えば、てんかん)、ならびに脳卒中、脳傷害、脳虚血、頭部損傷及び出血に起因する神経損傷に関連する病状の処置、ならびに尿路の障害及び病態が挙げられる。セロトニン、ノルエピネフリン及び/又はドパミン神経伝達に関連する「病態」にはまた、対象における炎症状態が挙げられる。本発明の化合物は、リューマチ性関節炎、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、変形性関節炎、痛風性関節炎ならびに他の関節炎状態が挙げられるが、これらに限定されるわけではない、関節炎の処置に有用である。
【0031】
本明細書で用いられる「鬱病」には、大鬱病、長期抑鬱、気分変調症、抑鬱気分の心理状態(悲しみ、絶望、落胆、「憂鬱」、哀愁の感情、低い自尊心、罪悪感及び自責の感情によって特徴付けられる)、人間同士の交流からの引きこもり、ならびに身体症状(例えば、摂食及び睡眠の乱れ)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
本明細書で用いられる「不安症」には、非現実的な、想像的な又は過大な危険又は危害の予想への精神生理的な反応に関連する、喜ばしくない又は望ましくない感情状態、ならびに身体的な付帯状況(例えば、心拍数の増加、呼吸数の変化、発汗、震え、衰弱及び疲労、切迫した危機感、無気力、懸念及び緊張感)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0033】
「治療有効量」は、病態を処置するために対象に投与した場合に、その病態のためにかかる処置の効果をもたらすのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置される病態、処置される疾患の重篤度、対象の年齢及び相対的な健康状態、投与の経路及び形態、担当の医師又は獣医師の判断、ならびに他の要因に応じて変動するものである。
【0034】
用語「上に定義されるもの」、「本明細書に定義されるもの」及び「本明細書に記載されるような」は、可変部分を言及する場合に、広義な可変部分の定義、ならびに好ましい、より好ましい、及び最も好ましい定義(もしあれば)を参照により組み入れる。
【0035】
病態を「処置すること」又は病態の「処置」には、以下を含む:
(i)病態を予防すること、すなわち、その病態に曝されるおそれがあるか、もしくは罹患しやすくなっているが、まだその病態の症状を経験又は表出していない対象に、その病態の臨床症状が発生しないようにすること、
(ii)病態を抑制すること、すなわちその病態もしくはその臨床症状の発生を抑止すること、又は
(iii)病態を軽減すること、すなわちその病態もしくはその臨床症状の一時的もしくは永続的減退を引き起こすこと。
【0036】
用語「処理すること」、「接触させること」及び「反応させること」は、化学反応を言及する場合に、適切な条件下で二つ以上の試薬を添加又は混合して、指示及び/又は所望の生成物を生成させることを意味する。指示及び/又は所望の生成物を生成する反応は、最初に添加された二つの試薬の組み合わせから必ずしも直接得られる必要がないこと、すなわち、混合物で生成し、最終的に指示及び/又は所望の生成物の形成を導く一つ以上の中間体であってもよいことを認識すべきである。
【0037】
用語「キラル中心」は、4個の同一でない置換基に結合している炭素原子を表わす。用語「キラル」は、鏡像を重ね合わせることができない(non−superimposability)能力を表わし、一方、用語「アキラル」は、鏡像と重ね合わせることができる現象を指す。キラル分子は光学活性であり、すなわち、平面偏光の面を回転させる能力を有している。本発明の化合物は、1個以上のキラル中心を有することができ、そして光学的に純粋な鏡像異性体、例えばラセミ体などの鏡像異性体の混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体のラセミ体、又はジアステレオ異性体のラセミ体の混合物の形態で存在することができる。キラル中心がキラル構造に存在する場合はいつでも、該キラル中心に関連する全ての立体異性体は、本発明に包含されることが意図される。
【0038】
用語「ジアステレオマー」は、2個以上のキラリティー中心を有し、そしてそれらの分子が互いに鏡像ではない、立体異性体を表わす。ジアステレオマー同士は、異なる物理特性、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性を有する。
【0039】
用語「鏡像異性体」は、互いに重ね合わすことのできない鏡像である化合物の2個の立体異性体を表わす。
【0040】
用語「多形」又は「多形態」とは、化合物が異なる結晶充填配列で結晶化することができる結晶構造を表わす。異なる多形は、結晶格子中で分子の異なる配列又は配座を有するが、しかし全てが同じ基本的組成を共有する。
【0041】
用語「ラセミ体」又は「ラセミ混合物」は、光学活性を欠く、2個の鏡像異性種の等モル混合物を指す。
【0042】
本明細書において使用される立体化学の定義及び慣習は、一般的に、S. P. Parker(編者), McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York;及びEliel, E. and Wilen, S., "Stereochemistry of Organic Compounds", John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994 に従っている。光学活性化合物の記載において、接頭辞のD及びL又はR及びSを用いて、そのキラル中心に関する分子の絶対配置を表わす。考慮中のキラル中心に結合する置換基は、Cahn-Ingold-Prelogの順位則(Sequence Rule of Cahn, Ingold and Prelog)に従ってランク付けされる(Cahn et al. Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; errata 511)。接頭辞のD及びL又は(+)及び(−)を用いて、化合物による直線偏光の回転のサインを明確に示し、(−)又はLによって化合物が左旋性であることを明確に示している。(+)又はDが接頭辞として付いている化合物は、右旋性である。
【0043】
用語「立体異性体」は、同一の分子結合性及び結合多重度を有するが、しかし空間におけるその原子の配列が異なる化合物を表わす。
【0044】
命名法及び構造
一般に、本願に使用される命名法は、IUPAC系統命名の作成のためのAUTONOM(商標)v.4.0というBeilstein Instituteのコンピュータシステムに基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書における構造の炭素、酸素、硫黄又は窒素原子上のいかなる空原子価も、水素原子の存在を示す。
【0045】
化学構造中にキラル炭素が存在する場合はいつでも、キラル炭素に関連する立体異性体は全て、その構造に包含されることが意図される。
【0046】
本明細書で特定された全ての特許及び出版物は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0047】
本発明の化合物
本発明は、式(I):
【化2】


[式中、
m及びnは、各々独立に、0〜3であり;
及びXの一方は、NHであり、そしてもう一方は、CHであり;
がNHの場合、Yは、O又はCHであり、そしてXがCHの場合、Yは、CHであり;
がCHの場合、Yは、N又はCHであり、そしてYがOの場合、Yは、CHであり;
及びRの各々は、独立に、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はハロ−C1−6アルキルである]で示される化合物、及びその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0048】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、そしてXは、CHである。
【0049】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、CHであり、そしてXは、NHである。
【0050】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、そしてYは、Oである。
【0051】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、そしてYは、CHである。
【0052】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0053】
式(I)の特定の実施態様において、Yは、CHであり、そしてYは、Nである。
【0054】
式(I)の特定の実施態様において、Yは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0055】
式(I)の特定の実施態様において、Yは、Oであり、そしてYは、CHである。
【0056】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、X、Yは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0057】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、X、Yは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0058】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、X、Yは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0059】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、Yは、Oであり、Xは、CHであり、そしてYは、CHである。
【0060】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、X及びYは、CHであり、そしてXは、Nである。
【0061】
式(I)の特定の実施態様において、Xは、NHであり、X及びYは、CHであり、そしてXは、Nである。
【0062】
式(I)の特定の実施態様において、mは、0又は1である。
【0063】
式(I)の特定の実施態様において、nは、0又は1である。
【0064】
式(I)の特定の実施態様において、mは、0である。
【0065】
式(I)の特定の実施態様において、nは、0である。
【0066】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、ハロ又はメトキシである。
【0067】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0068】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、フルオロ、クロロ又はメトキシである。
【0069】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、ハロ又はメトキシである。
【0070】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0071】
式(I)の特定の実施態様において、各Rは、独立に、フルオロ、クロロ又はメトキシである。
【0072】
式(I)の特定の実施態様において、mは、1であり、そしてRは、ハロである。
【0073】
式(I)の特定の実施態様において、mは、1であり、そしてRは、メトキシである。
【0074】
式(I)の特定の実施態様において、nは、1であり、そしてRは、ハロである。
【0075】
式(I)の特定の実施態様において、nは、1であり、そしてRは、メトキシである。
【0076】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(II):
【化3】


[式中、m、n、X、X、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0077】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(III):
【化4】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0078】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(IV):
【化5】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0079】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(V):
【化6】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0080】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(VI):
【化7】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0081】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(VII):
【化8】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0082】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(IIIa)又は(IIIb):
【化9】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0083】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(IVa)又は(IVb):
【化10】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0084】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、更に具体的には、式(Va)又は(Vb):
【化11】


[式中、m、n、R及びRは、本明細書で定義されたとおりである]で示される化合物であり得る。
【0085】
本発明の特定の実施態様において、式(I)の化合物は、下記:
【化12】


[式中:
m及びnは、各々独立に、0〜3であり;
及びXの一方は、NHであり、そしてもう一方は、CHであり;
がNHの場合、Yは、O又はCHであり、そしてXがCHの場合、Yは、CHであり;
がCHの場合、Yは、N又はCHであり、そしてYがOの場合、Yは、CHであり;
及びRの各々は、独立に、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はハロ−C1−6アルキルである]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩である。
【0086】
本発明の特定の実施態様において、Xは、NHであり、そしてXは、CHである。
【0087】
本発明の特定の実施態様において、Xは、CHであり、そしてXは、NHである。
【0088】
本発明の特定の実施態様において、Yは、Oである。
【0089】
本発明の特定の実施態様において、Yは、CHである。
【0090】
本発明の特定の実施態様において、Yは、Nである。
【0091】
本発明の特定の実施態様において、Yは、CHである。
【0092】
本発明の特定の実施態様において、mは、1である。
【0093】
本発明の特定の実施態様において、Rは、ハロ又はC1−6アルコキシである。
【0094】
本発明の特定の実施態様において、Rは、Cl、F又はOMeである。
【0095】
本発明の特定の実施態様において、Rは、Clである。
【0096】
本発明の特定の実施態様において、Rは、Fである。
【0097】
本発明の特定の実施態様において、Rは、OMeである。
【0098】
本発明の特定の実施態様において、mは、0である。
【0099】
本発明の特定の実施態様において、nは、1である。
【0100】
本発明の特定の実施態様において、Rは、ハロ又はC1−6アルコキシである。
【0101】
本発明の特定の実施態様において、Rは、F又はOMeである。
【0102】
本発明の特定の実施態様において、Rは、Fである。
【0103】
本発明の特定の実施態様において、Rは、OMeである。
【0104】
本発明の特定の実施態様において、nは、0である。
【0105】
本発明の特定の実施態様において、化合物は、下記:
(3S,4S)−3,4−ジフェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5R)−4−(2−メトキシ−フェニル)−5−フェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5S)−4,5−ジフェニル−アゼパン、
(6S,7R)−6,7−ジフェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(2−フルオロ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(2−メトキシ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(4−フルオロ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(4−メトキシ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7S)−6,7−ジフェニル−[1,4]オキサゼパン塩酸塩、
1,2−ジフェニル−[1,4]ジアゼパン、
1,7−ジフェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(4−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(4−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、及び
7−(4−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン
からなる群より選択されるか又はその薬学的に許容しうる塩である。
【0106】
本発明の特定の実施態様は、治療上活性な物質としての使用のための式(I)の化合物である。
【0107】
本発明の特定の実施態様は、鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置のための式(I)の化合物である。
【0108】
本発明の特定の実施態様は、鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置のための式(I)の化合物である。
【0109】
本発明の特定の実施態様は、鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置用の医薬の製造のための式(I)の化合物である。
【0110】
本発明の特定の実施態様は、式(I)の化合物及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物である。
【0111】
本発明の特定の実施態様は、本明細書に記載の式(I)の化合物を対象に投与することによる、不安症、鬱病及び/又は両方の処置方法である。
【0112】
本発明の方法の代表的な化合物を、SERT、NET及びDATに対する親和性と共に表1に示す。
【表1】







【0113】
合成
本発明の化合物は、以下に示しかつ説明した例示的合成反応スキームに記述されている種々の方法によって調製することができる。
【0114】
これらの化合物の調製に使用される出発物質及び試薬は、一般に、Aldrich Chemical Co.のような商業供給者から入手可能であるか、又はFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplementals; 及びOrganic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40のような参考文献に記載の手順に従って当業者に既知の方法により調製されるかのいずれかである。下記の合成反応スキームは、単に本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法を例示しているに過ぎず、これらの合成反応スキームに対して種々の変更を行うことができ、本出願に含まれる開示内容に参考として当業者に示唆される。
【0115】
合成反応スキームの出発物質及び中間体を、所望であれば、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むが、これらに限定されるわけではない、従来の技術を使用して、単離及び精製することができる。
【0116】
特記のない限り、本明細書に記載される反応は、好ましくは不活性雰囲気下、大気圧で、約−78℃〜約150℃、より好ましくは約0℃〜約125℃の反応温度範囲で、そして最も好ましくかつ好都合には約室温(又は周囲温度)、例えば約20℃で実施される。
【0117】
下記のスキームA(ここで、m、n、R及びRは、本明細書に定義されるとおりである)は、本発明の化合物を調製するために使用することができる一つの合成手順を説明する。
【化13】

【0118】
スキームAの工程1で、J. Heterocyclic Chem., 33, 1631, 1996の手順に大まかに従って、ジフェニルエタノン化合物を、メチルビニルケトンで処理して、ジフェニルシクロヘキセノン化合物を得る。化合物は、工程2でヒドロキシルアミンと反応させて、対応するオキシム化合物を与える。次にオキシムは、工程3で、ポリリン酸(PPA)の存在下、ベックマン(Beckmann)転位を受けて、ジフェニルアゼピノン化合物を与える。工程4で、ジフェニルアゼピノン化合物を水素化して、対応するジフェニルアゼパノン化合物を与える。工程5で、アゼパノンのカルボニル基を還元して、ジフェニルアゼパンを得て、これが本発明の式(I)の化合物である。
【0119】
本発明の化合物はまた、スキームB(ここで、m、n、R及びRは、本明細書に定義されるとおりである)の手順により調製し得る。
【化14】

【0120】
スキームBの工程1で、フェニルシクロヘキサノン化合物は、酸化を受けて、対応するフェニルシクロヘキセノンを与える。工程2で、フェニルシクロヘキセノン化合物を、フェニルリチウム試薬で処理して、ジフェニルシクロヘキサノンを得る。次にジフェニルシクロヘキサノンを、工程3でヒドロキシルアミンと反応させて、対応するオキシムを得る。次に工程4で、ポリリン酸の存在下、ベックマン転位を実施して、ジフェニルアゼパノンm1及びm2を与える。次にジフェニルアゼパノンm1及びm2を、工程5で還元して、ジフェニルアゼパンn1及びn2を与え、これが本発明の式(I)の化合物である。
【0121】
スキームA及びBの手順に関する多くの変更が可能であり、かつ本発明の範囲内であると考えられる。オキシム及びの異性体は、PPAを用いて混合物として処理し得るか、又は単離しそしてPPAで別々に処理し得る。アゼピノンm1及びm2は、別々に単離し、そして工程5で別々に還元を受け得る。或いは、アゼピノンm1及びm2を、混合物として一緒に還元して、アゼパンn1n2の混合物を与え得、次にこれらをクロマトグラフ的に分離する。本発明の化合物を生成する詳細な記載が、下記の実施例部分に記述されている。
【0122】
有用性
本発明の化合物は、セロトニン神経伝達、ノルエピネフリン神経伝達及び/又はドパミン神経伝達に関連する疾患又は病状の処置のために使用可能である。かかる疾患及び病状には、鬱病性障害及び不安障害に加え、統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物中毒、認知障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(例えば、ADHD)、強迫性行動、パニック発作、対人恐怖症、摂食障害(例えば、肥満症、食欲不振、大食症及び「過食症」)、ストレス、高血糖症、高脂血症、インスリン非依存性糖尿病、発作性障害(例えば、てんかん)、ならびに脳卒中、脳損傷、脳虚血、頭部損傷及び出血に起因する神経損傷に関連する病状の処置が挙げられる。
【0123】
本発明の化合物はまた、例えば、ストレス性尿失禁、切迫性尿失禁、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺炎、排尿筋反射亢進、排尿開口部閉塞、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫、過活動膀胱、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺痛、膀胱炎、特発性膀胱過敏症のような尿路の障害及び病態の処置のために使用可能である。
【0124】
本発明の化合物はまた、インビボでの抗炎症的及び/又は鎮痛的特質を保持し、したがって、神経因性疼痛、炎症痛、手術痛、内臓痛、歯痛、月経痛、中枢痛、熱傷による疼痛、片頭痛又は群発性頭痛、神経損傷、神経炎、神経痛、中毒、虚血性損傷、間質性膀胱炎、癌性疼痛、ウイルス、寄生虫もしくは細菌感染、外傷後損傷(骨折及び運動傷害を含む)、及び腸機能障害(例えば、過敏性腸症候群)に関連する疼痛を包含するが、これらに限定されるわけではない、多種多様な原因に起因する疼痛状態に関連する病態の処置に有用性を見出すことが期待される。
【0125】
本発明の化合物はまた、リューマチ性関節炎、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、変形性関節炎、痛風性関節炎ならびに他の関節炎状態を包含するが、これらに限定されるわけではない、関節炎の処置のために有用である。
【0126】
投与及び医薬組成物
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、又は個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、又はこれらの薬剤学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体、ならびに場合により他の治療及び/又は予防成分と一緒に含む、医薬組成物を包含する。
【0127】
一般に、本発明の化合物は、類似の有用性を与える薬剤に許容される任意の投与の様式により、治療有効量で投与されよう。適切な用量範囲は、処置すべき疾患の重篤度、対象の年齢及び相対健康度、使用される化合物の効力、投与の経路及び剤形、投与が指示される適応症、ならびに担当医の優先傾向及び経験のような多数の要因に応じて、典型的には1日に1〜500mg、好ましくは1日に1〜100mg、そして最も好ましくは1日に1〜30mgである。かかる疾患を処置するような当業者であれば、過度の実験なしに、かつ個人の知識及び本出願の開示に頼って、所定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を突きとめることができよう。
【0128】
本発明の化合物は、経口(バッカル及び舌下を包含する)、直腸内、鼻腔内、局所、肺内、膣内、又は非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下及び静脈内を包含する)投与に適したものを包含する医薬製剤として、或いは吸入又は吹送による投与に適した剤形で、投与し得る。好ましい投与のやり方は、一般には、罹患の程度により調整することができる、便利な1日用量レジメンを用いた経口投与である。
【0129】
本発明の化合物は、1種以上の従来の補助剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位剤形中に入れられ得る。本医薬組成物及び単位剤形は、追加の活性化合物又は成分を含むか又は含まない、従来の割合の従来成分からなるものであってよく、そして単位剤形は、使用すべき所期の1日用量範囲に見合う任意の適切な有効量の活性成分を含有し得る。本医薬組成物は、経口使用のための、錠剤もしくは充填カプセル剤、半固体、粉剤、徐放性製剤のような固体として、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、もしくは充填カプセル剤のような液体として;或いは直腸内又は膣内投与のための坐剤の剤形で;或いは、非経口使用のための無菌注射液の剤形で利用し得る。よって1錠当たり約1mgの活性成分、又は更に広くは約0.01〜約100mgを含有する処方が、適切な代表的単位剤形である。
【0130】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形に処方し得る。本医薬組成物及び剤形は、本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩を活性成分として含み得る。薬学的に許容しうる担体は、固体でも又は液体でもあり得る。固形調剤は、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤を包含する。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用してよい、1種以上の物質であり得る。粉剤において、担体は一般に、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤において、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。粉剤及び錠剤は、好ましくは約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などを包含するが、これらに限定されるわけではない。用語「調剤」は、担体を伴うか又は伴わない活性成分が、それを伴うある担体により囲まれているカプセル剤を与える、担体として封入材料を伴う活性化合物の処方を包含することが意図されている。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が包含される。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、固体剤形として経口投与に適していよう。
【0131】
経口投与に適した他の剤形は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を包含する液体調剤、又は使用の直前に液体調剤に変換することが意図された固体調剤を包含する。乳剤は、溶液として、例えば、水性プロピレングリコール溶液として調製し得るか、又は、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、もしくはアラビアゴムのような乳化剤を含有し得る。水性液剤は、活性成分を水に溶解し、適切な着色料、香味料、安定化剤、及び増粘剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁剤は、微粉化活性成分を粘性材料(天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤など)と共に水に分散させることにより調製することができる。固体調剤は、液剤、懸濁剤、及び乳剤を包含し、そして活性成分の他に、着色料、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤を含有してもよい。
【0132】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)用に処方し得、そしてアンプル、プレフィルドシリンジ、少量輸液にした単位剤形として、又は保存料を加えた反復投与用容器に入れて提示し得る。本組成物は、油性又は水性溶剤中の懸濁液、溶液、又は乳濁液、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液のような剤形をとってもよい。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒又は溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を包含し、そして保存料、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような配合剤を含有してもよい。或いは、活性成分は、滅菌固体の無菌分離により、又は溶液からの凍結乾燥により得られる、適切な溶剤、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で使用前に構成するための粉末形状であってもよい。
【0133】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤として、又は経皮パッチとして、表皮への局所投与用に処方し得る。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、水性又は油性基剤と共に、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えて処方し得る。ローション剤は、水性又は油性基剤と共に処方してもよく、そして一般的にはまた1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を包含するだろう。口内の局所投与に適した処方は、着香基剤、通常はショ糖及びアラビアゴム又はトラガント中に活性物質を含むトローチ剤;ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアラビアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含む香錠;ならびに適切な液体担体中に活性成分を含む含嗽剤を包含する。
【0134】
本発明の化合物は、坐剤としての投与用に処方し得る。脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂のような低融点ロウを最初に溶融して、例えば、撹拌することにより、活性成分を均質に分散させる。溶融した均質な混合物は次に、便利なサイズの鋳型に注ぎ入れ、冷却し、凝固するのを待つ。
【0135】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方し得る。活性成分の他に、当該分野において適切であることが知られているような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤又はスプレー剤。
【0136】
対象化合物は、鼻内投与用に処方し得る。液剤又は懸濁剤が、従来手段により、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーで鼻腔に直接適用される。本処方は、単回又は多回投与剤形で提供してもよい。スポイト又はピペットの後者の場合には、これは、患者が適切な所定容量の液剤又は懸濁剤を投与することにより達成し得る。スプレーの場合には、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成し得る。
【0137】
本発明の化合物は、特に気道への、及び鼻内投与を含む、エーロゾル投与用に処方し得る。本化合物は、一般に、例えば、5ミクロン以下程度の小粒径を有する。かかる粒径は、当該分野において既知の手段により、例えば、微粉化により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素もしくは他の適切なガスのような、適切な噴射剤での加圧パックとして提供される。このエーロゾルは、便利にはまたレシチンのような界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量は、計量バルブにより制御してもよい。或いは活性成分は、ドライパウダーの剤形として、例えば、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなデンプン誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)のような、適切な粉末基剤中の化合物の粉末混合物として提供してもよい。この粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するだろう。粉末組成物は、単位剤形として、例えば、カプセル剤、又は例えば、ゼラチンのカートリッジ、又はブリスターパック(吸入器を用いてそこから粉末を投与することができる)として提示することができる。
【0138】
所望であれば、活性成分の徐放又は放出制御投与に適合させた腸溶性コーティングをした処方を調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置中に処方することができる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要なとき、及び治療レジメンへの患者コンプライアンスが決定的に重要であるとき、有利である。経皮送達システム中の化合物は、しばしば皮膚接着性固体支持体に取り付けられる。当該化合物はまた、浸透増強剤、例えば、Azone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と合わせることができる。徐放送達システムは、手術又は注射により皮下層へと皮下挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜、例えば、シリコーンゴム、又は生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸中に本化合物を封入している。
【0139】
本医薬調剤は、好ましくは単位剤形である。かかる剤形では、本調剤は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。この単位剤形は、包装された調剤であることができ、このパッケージは、パック入り錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル入りの粉剤のような、離散量の調剤を含有する。また、この単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自体であることができるか、或いは包装された形の適切な数の任意のこれらであることができる。
【0140】
他の適切な医薬担体及びその処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, E.W. Martin編, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤は、後述される。
【0141】
実施例
以下の調製例及び実施例は、当業者が本発明をより明瞭に理解しかつ実施できるようにするために記載されている。それらは本発明の範囲を制限すると考えられるべきではなく、単に本発明の例示及び代表例として考えられるべきである。下記略語が実施例で使用されてもよい。
【0142】
略語
AcOH 酢酸
BQ ベンゾキノン
(BOC)O 二炭酸ジ-tert-ブチル
t−BuLi tert−ブチルリチウム
t−BuOH tert−ブチルアルコール
m−CPBA 3−クロロペルオキシ安息香酸
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DEA ジエチルアミン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
Dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミ ド塩酸塩
EtOAc 酢酸エチル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LAH 水素化アルミニウムリチウム
MeOH メタノール
MsCl メタンスルホニルクロリド
MVK メチルビニルケトン
Pd/C パラジウム担持活性炭
PPA ポリリン酸
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMAF フッ化テトラメチルアンモニウム
TMSCl 塩化トリメチルシリル
【0143】
実施例1
(±)−4−(2−メトキシ−フェニル)−5−フェニル−アゼパン
この実施例で使用される合成手順を、スキームCに示す。
【化15】

【0144】
工程1 4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン
THF(26mL)中の2−(2−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−エタノン(2.5g、11.1mmol)の撹拌している溶液に、−30℃でN雰囲気下、EtOH(1.3mL)中のKOH(0.207g)の溶液を5分間かけて滴下し、続いてメチルビニルケトン(0.95mL、11.1mmol)を8分間かけて滴下した。反応混合物を−30℃で撹拌し、室温で徐々に温めた。次にそれを氷水に注ぎ、EtOAc及びEtOで抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン、(0.784g、収率26%)を得た:M+H=278。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm): 2.18-2.27 (m, 1H), 2.32-2.45 (m, 3H), 3.91(s, 3H), 4.74 (m, 1H), 6.71 (s, 1H), 6.76-6.83 (dt, 1H, J = 1.13, 7.54 Hz), 6.89-6.95 (dd, 1H, J = 1.13, 8.29 Hz), 7.00-7.05 (dd, 1H, J = 1.88, 7.54 Hz), 7.17-7.22 (m, 1H), 7.27-7.31 (m, 3H), 7.42-7.47 (m, 2H)。
【0145】
工程2 4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノンオキシム
温EtOH 中の4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン(1.29g、4.64mmol)の撹拌している溶液に、ピリジン(1.7mL)を加え、続いて水(13mL)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(435mg、6.26mmol)の溶液を加えた。反応物を撹拌し、100℃で1時間加熱し、次に冷却し、氷水に注ぐことによりクエンチした。混合物をDCMで抽出し、有機抽出物を合わせ、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノンオキシム(1.15g、収率85%)を得た:M+H=294。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm) オキシムA: 2.07 (m, 3H), 2.93 (m, 1H), 3.92 (s, 3H), 4.62 (m, 1H), 6.75-6.82 (dt, 1H, J = 1.13, 7.35 Hz), 6.88-6.93 (m, 2H), 7.00-7.04 (dd, 1H, J = 1.70, 7.54 Hz), 7.15-7.25 (m, 4H), 7.38-7.42 (m, 2H)。
【0146】
工程3 5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−アゼピン−2−オン
キシレン(1.46mL)中のポリリン酸(0.73g、2.06mmol)の撹拌している溶液に、4−(2−メトキシ−フェニル)−3−フェニル−シクロヘキサ−2−エノンオキシム(400mg、1.37mmol)を加えた。反応物を138℃で6時間加熱し、次に室温に冷まし、水の添加によりクエンチした。混合物をCHClで抽出し、有機抽出物を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗物質をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−アゼピン−2−オン(300mg、収率50%)を得た:M+H=294。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm): 2.13-2.47 (m, 2H), 3.26 (m, 2H), 3.81 (s, 3H), 4.87 (m, 1H), 6.40 (m, 1H), 6.74-6.83 (m, 2H), 7.00-7.18 (m, 3H), 7.18-7.22 (m, 3H), 7.33 (m, 2H)。
【0147】
工程4 (±)−5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−アゼパン−2−オン
EtOH(8mL)中の5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−アゼピン−2−オン(250mg、0.853mmol)の溶液に、Pd/C(10%、33mg)を加えた。混合物をパール(Parr)装置中、H雰囲気(3.45Bar)下、撹拌した。24時間後、更なるPd/C(10%、33mg)を加え、そして同じ条件下、混合物を更に24時間水素化した。次に、セライトパッドを通して濾過により触媒を除去し、濾液を減圧下で蒸発させた。粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH)により精製して、(±)−5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−アゼパン−2−オン(210mg、収率71%)を得た:M+H=296。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.72-1.82 (m, 1H), 2.27-2.43 (m, 1H), 2.85-2.95 (m, 1H), 3.04-3.12 (dd, 1H, J = 3.58, 14.51 Hz), 3.38-3.55 (m, 3H), 3.71-3.80 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 4.87 (m, 1H), 6.28 (dd, 1H, J = 1.51, 7.54 Hz), 6.55 (dt, 1H, J = 1.13, 7.54 Hz), 6.82 (dd, 1H, J = 1.13, 7.16 Hz), 6.87-7.00 (m, 2H), 7.03-7.11 (m, 4H)。
【0148】
工程5 (±)−4−(2−メトキシ−フェニル)−5−フェニル−アゼパン
THF(1.7mL)中の(±)−5−(2−メトキシ−フェニル)−4−フェニル−アゼパン−2−オン(126mg、0.43mmol)の撹拌している溶液に、室温でN雰囲気下、THF(0.7mL)中のLiAlH(37mg、0.92mmol)の懸濁液を加えた。反応物を室温で5時間撹拌し、次にNaSO.10HOの添加によりクエンチした。混合物を一晩撹拌し、固体残留物をセライトパッドを通して濾過により除去した。濾液を減圧下で蒸発させて、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH)により精製して、(±)−4−(2−メトキシ−フェニル)−5−フェニル−アゼパン(60.3mg、収率50%)を得た。この生成物をTHF(0.3mL)に溶解し、HCl(EtO中の2M、0.215mmol)を加えた。混合物を蒸発させて、塩酸塩を得た:M+H=282。H1-NMR (CD3OD) δ (ppm): 1.99 (m, 1H), 2.07-2.20 (m, 1H), 2.40-2.59 (m, 2H), 3.08-3.28 (m, 2H), 3.41-3.57 (m, 6H), 3.82-3.62 (m, 1H), 6.46 (dt, 1H, J = 1.13, 7.54 Hz), 6.55-6.62 (m, 2H), 6.70-6.77 (m, 2H), 6.82-6.92 (m, 4H)。
【0149】
実施例2
(±)−3,4−ジフェニル−アゼパン塩酸塩及び(±)−4,5−ジフェニル−アゼパン
この実施例で使用される合成手順を、スキームDに示す。
【化16】

【0150】
工程1 4−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン
BuLi(ヘキサン中2.5M、26.4mL)を、N雰囲気下、−78℃で、ヘキサン(18mL)中のジイソプロピルアミン(9.3mL、66mmol)に滴下した。混合物を、−78℃でN雰囲気下、10分間撹拌し、次にTHF(120mL)中のTMSCl(75.8mL、600mmol)の溶液を滴下し、続いてTHF(120mL)中の4−フェニル−シクロヘキサノン(10g)の溶液を滴下した。混合物を−78℃で5分間撹拌し、次にTEA(120mL)を加えた。反応物を飽和NaHCO水溶液の添加によりクエンチし、次に石油エーテルで抽出した。有機抽出物を合わせ、水及び5%クエン酸水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。得られた固体を、アセトニトリル(240mL)中のPd(OAc)(6.74g、30mmol)及びp−ベンゾキノン(3.24g、30mmol)の溶液に、N雰囲気下、加え、反応物を室温で4日間撹拌した。次に固体を濾過により除去し、濾液を減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/DCM)により精製して、4−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン(5.51g、収率56%)を得た:M+H=173。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.98-2.13 (m, 1H), 2.31-2.58 (m, 3H), 2.40-2.59 (m, 2H), 3.73 (m, 1H), 6.17 (dd, 1H, J = 2.45, 10.17 Hz), 7.00 (m, 1H), 7.20-7.24 (m, 2H), 7.28-7.39 (m, 3H)。
【0151】
工程2 (±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノン
EtO(60mL)中のCu(CN)(804mg、9mmol)の懸濁液に、−78℃でN雰囲気下、フェニルリチウム(BuO中2M、9.6mL)を加えた。混合物を0℃に温め、10分間撹拌し、次に−78℃に30分間再び冷却した。EtO(60mL)中の4−フェニル−シクロヘキサ−2−エノン(1.03g、6mmol)の溶液をゆっくりと加え、続いてBF.EtO(0.75mL、6mmol)を加えた。反応物を−78℃で30分間撹拌し、次に飽和NHCl水溶液に注ぐことによりクエンチした。混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、(±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノン(408mg、収率27%)を得た:M+H=251。H1-NMR (CDCl3) δ (ppm): 1.98-2.17 (m, 1H), 2.24-2.36 (m, 1H), 2.53-2.80 (m, 4H), 3.14-3.28 (m, 2H), 6.97-7.17 (m, 10H)。
【0152】
工程3 (±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノンオキシム
温EtOH(6mL)中の(±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノン(407mg、1.62mmol)の溶液に、ピリジン(0.63mL)を加え、続いて水(4mL)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(69.5mg、2.19mmol)の溶液を加えた。反応物を100℃で1時間加熱し、次に室温に冷まし、氷水に注ぐことによりクエンチした。混合物をDCMで抽出し、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、(±)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノンオキシム(240mg、収率54%)を得た:M+H=266。H1-NMR (CD3OD) δ (ppm) オキシムA: 1.69-1.86 (m, 1H), 1.97-2.14 (m, 2H), 2.45-2.61 (m, 2H), 2.95-3.17 (m, 2H), 3.49-3.19 (m, 1H), 6.96-7.12 (m, 10H)。
【0153】
工程4 (±)−(5R,6R)−5,6−ジフェニル−アゼパン−2−オン及び(±)−(4R,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン−2−オン
キシレン(1.0mL)中のポリリン酸(0.26g)の撹拌している溶液に、キシレン(1.0mL)中の(±)−3,4−ジフェニル−シクロヘキサノンオキシム(85mg)の溶液を加えた。反応物を15分間還流し、次に室温に冷まし、水の添加によりクエンチした。混合物をCHClで抽出し、有機抽出物を合わせ、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。(±)−5,6−ジフェニル−アゼパン−2−オンと(±)−4,5−ジフェニル−アゼパン−2−オンの得られた粗混合物(105mg)を、更なる精製をしないで次の工程で直接使用した。
【0154】
工程5 (±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−アゼパン塩酸塩及び(±)−4,5−ジフェニル−アゼパン
THF(2.5mL)中の(±)−5,6−ジフェニル−アゼパン−2−オン及び(±)−4,5−ジフェニル−アゼパン−2−オン(105mg、0.566mmol)の撹拌している溶液に、0℃でN雰囲気下、THF(1mL)中のLiAlH(86.3mg、2.26mmol)の懸濁液を加えた。反応物を加熱還流し、5時間撹拌し、次に室温に冷まし、NaSO.10HOの添加によりクエンチした。混合物を30分間撹拌し、固体残留物を、セライトパッドを通して濾過により除去した。濾液を減圧下で蒸発させて、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH)により精製して、(±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−アゼパン(42mg)及び(±)−(4R,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン(8mg)を別々の画分として得た。遊離塩基アミンをEtOに溶解し、HCl(EtO中1M、1当量)を加えた。得られた塩酸塩を濾過により回収し、減圧下で乾燥させた。H1-NMR (CD3OD) δ (ppm) (±)−(3R,4R)−3,4−ジフェニル−アゼパン塩酸塩: 2.01-2.28 (m, 4H), 3.00-3.14 (m, 1H), 3.35-3.45 (m, 3H), 3.59-3.72 (m, 1H), 6.98-7.18 (m, 10H)。 H1-NMR (CD3OD) δ(ppm)(±)−(4R,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン:塩酸塩: 1.84-1.95 (m, 2H), 1.98-2.12 (m, 2H), 2.88-2.94 (m, 2H), 2.97-3.17 (m, 4H), 6.81-6.98 (m, 10H)。
【0155】
実施例3
(±)−(4S,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン
【化17】


THF(1.4mL)中の(4S,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン−2−オン(J. Heterocyclic Chem., 33, 1631, 1996に記載されているように調製した、96.7mg、0.345mmol)の撹拌している溶液に、0℃でN雰囲気下、THF(0.7mL)中のLiAlH(31.4mg、0.785mmol)の懸濁液を加えた。反応混合物を、0℃で1時間、室温で5時間撹拌した。次にそれをNaSO.10HOの添加によりクエンチした。混合物を30分間撹拌し、固体残留物を濾別し、THF及びEtOAcで洗浄した。母液を減圧下で蒸発させて、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NHOH)により精製して、所望のアミン(48.3mg、収率53%)を得た。生成物をTHF(0.3mL)に溶解し、HCl(EtO中2M、0.171mmol)を加えた。塩酸塩を粉砕し、その後、それを濾過し、減圧下で乾燥させて、(±)−(4S,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパンを明黄色の固体として得た:M+H=252。H1-NMR (DMSO-d6) δ (ppm): 2.00-2.11 (m, 1H), 3.07-3.20 (m, 1H), 3.32-3.49 (m, 2H), 6.75-6.86 (m, 2H), 6.96-7.09 (m, 3H)。
【0156】
実施例4
処方
種々の経路で送達される医薬調剤を下記の表で示されるように処方する。表中で使用される「活性成分」又は「活性化合物」は、1つ以上の式(I)の化合物を意味する。
【0157】
【表2】

【0158】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するようにカプセルに分注する。1カプセルがほぼ全投薬用1日量となる。
【0159】
【表3】

【0160】
成分を合わせ、メタノールなどの溶媒を使用して粒状にする。次に製剤を乾燥させ、適切な錠剤成形機を用いて錠剤(活性化合物約20mg含有)を形成する。
【0161】
【表4】

【0162】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0163】
【表5】

【0164】
活性成分を注射用の水の一部に溶解する。次に十分な量の塩化ナトリウムを撹拌しながら加えて、溶液を等張にする。注射用水の残りを溶液に負荷し、0.2μm膜フィルタを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0165】
【表6】

【0166】
成分を一緒に溶融し、蒸気浴上で混合し、全重量2.5gを含有するように鋳型に注ぐ。
【0167】
【表7】

【0168】
水以外の全ての成分を合わせ、撹拌しながら約60℃に加熱する。次に、十分な量の水を激しく撹拌しながら約60℃で加え、成分を乳化し、次に、約100gにするのに十分な量の水を加える。
【0169】
鼻腔スプレー用処方
活性化合物を約0.025〜0.5%含有するいくつかの水性懸濁液を、鼻腔スプレー用処方として調製する。該処方は、場合により、例えば、微晶質セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デキストロースなどのような不活性成分を含む。塩酸を加えてpHを調整してもよい。鼻腔スプレー用処方は、典型的には1回の作動で製剤を約50〜100μL送達する鼻腔スプレー計量ポンプを介して送達することができる。一般的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回のスプレーである。
【0170】
実施例5
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトセロトニントランスポーター(hSERT)アンタゴニストのスクリーニング
この実施例のスクリーニングアッセイを使用して、[H]−シタロプラム(Citalopram)との競合によるhSERTトランスポーターでのリガンドの親和性を測定した。
【0171】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)は、放射性リガンドを、ビーズのシンチラントに近接させて発光を刺激させることにより機能する。このアッセイにおいて、受容体含有膜を予めSPAビーズに結合させ、トランスポーターに対する適切な放射性リガンドの結合を測定した。発光は、結合した放射性リガンドの量に比例した。未結合放射性リガンドは、シンチラントに対して離れている結果(エネルギー移動の欠如)として、シグナルを生成しなかった。
【0172】
組み換えhSERTを安定的に発現しているHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を、培地(10%FBS、300μg/mL G418及び2mM L−グルタミン含有DMEM高グルコース)を用いて維持し、37℃で5%COでインキュベートした。細胞を、PBSを用いて1〜2分間処理し、培養フラスコから取り出した。その後、細胞を1000gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁してから、膜調製に使用した。
【0173】
細胞膜を、50mM TRIS(pH7.4)の膜調製緩衝液を用いて調製した。細胞膜は、単一キューブ(合計細胞7.5×10個)から調製した。細胞を、Polytron(中程度に設定して4秒間破砕)を用いて均質化した。次に、ホモジェネートを、48,000×gで15分間遠心分離し、続いて上清を除去し、廃棄し、ペレットを新鮮な緩衝液で再懸濁した。2回目の遠心分離後、ペレットを再均質化し、アッセイ中に測定された最終容量にした。典型的には、膜部分を、3mg/mL(w:v)に小分けし、−80℃で保存した。
【0174】
シンチレーション近接アッセイ IC50/Kの測定のために、50mM Tris−HCl及び300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を用いた。本発明の化合物を、段階希釈プロトコルを用いて、Beckman Biomek 2000により、10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)に希釈した。次に、試験化合物を移し(20μL/ウエル)、[H]−シタロプラム放射性リガンドを、50μL/ウエルで加えた。膜とビーズを10μg:0.7mgの比として調製して、1ウエル当たり0.7mg PVT−WGA Amershamビーズ(カタログ番号 RPQ0282V)を加えた。膜:ビーズの混合物130μLを、アッセイプレートに加えた。混合物を、室温で1時間静置し、次にPackard TopCount LCS、一般的シンチレーション近接アッセイカウントプロトコル設定(エネルギー範囲:低、効率モード:ノーマル、領域A:1.50〜35.00、領域B:1.50〜256.00、カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストーク低減:オフ)でカウントした。
【0175】
阻害百分率(%)を、各試験化合物について算出した[(最大濃度での1分当たりの化合物のカウント(CPM)−非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害をもたらす濃度(IC50)を、下式を用いた活性ベース/Xlフィットによる反復非線形曲線適合法を用いて測定した:
【数1】


(ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)そしてn=ヒル勾配)。各化合物の阻害解離定数(K)を、Cheng-Prusoffの方法に準じて測定し、次にKの負対数(pK)に変換した。
【0176】
上記の手順を用いて、本発明の化合物が、ヒトセロトニントランスポーターに対する親和性を有することが判明した。pK値を、表1に示す。
【0177】
実施例24
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトノルエピネフリントランスポーター(hNET)で活性な化合物のスクリーニング
このアッセイを使用して、[H]−ニソキセチン(Nisoxetine)との競合によるリガンドのhNETトランスポーターに対する親和性を測定した。上記実施例のhSERTアッセイと同様に、受容体含有膜を予めSPAビーズに結合し、適切な放射性リガンドのトランスポーターへの結合を測定した。発光は、結合した放射性リガンドの量に比例し、未結合放射性リガンドはシグナルを生成しなかった。
【0178】
組み換えhNET(クローン:HEK−hNET#2)を安定的に発現しているHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を、培地(10%FBS、300μg/mL G418及び2mM L−グルタミン含有DMEM高グルコース)を用いて維持し、5%COで37℃でインキュベートした。細胞を、PBSを用いて1〜2分処理し、培養フラスコから間取り出した。その後、細胞を1000gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁してから、膜調製に使用した。
【0179】
細胞膜を、50mM TRIS(pH7.4)の膜調製緩衝液を用いて調製した。細胞膜は、単一キューブ(合計細胞7.5×10個)から調製した。細胞を、Polytron(中程度に設定4秒間破砕)を用いて均質化した。次に、ホモジェネートを、48,000×gで15分間遠心分離し、続いて上清を除去し、廃棄し、ペレットを新鮮な緩衝液で再懸濁した。2回目の遠心分離後、ペレットを再均質化し、アッセイ中に測定された最終容量にした。典型的には、膜部分を、3〜6mg/mL(w:v)に小分けし、−80℃で保存した。
【0180】
シンチレーション近接アッセイ IC50/Kの測定のために、[H]ニソキセチン放射性リガンド(Amershamカタログ番号 TRK942又はPerkin Elmerカタログ番号 NET1084、比活性度:70〜87Ci/mmol、原液濃度:1.22e−5M、最終濃度:8.25e−9M)及び50mM Tris−HCl、300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を使用した。本発明の化合物を、段階希釈プロトコルを用いて、Beckman Biomek 2000により、10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)に希釈した。次に、試験化合物を移し(20μL/ウエル)、放射性リガンドを、50μL/ウエルで加えた。膜とビーズを10μg:0.7mgの比として調製し、1ウエル当たり0.7mg PVT−WGA Amershamビーズ(カタログ番号RPQ0282V)を加えた。膜:ビーズの混合物130μLを、アッセイプレートに加えた。混合物を、室温で1時間静置し、次にPackard TopCount LCS、一般的SPAカウントプロトコル設定(エネルギー範囲:低、効率モード:ノーマル、領域A:1.50〜35.00、領域B:1.50〜256.00、カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストーク低減:オフ)でカウントした。
【0181】
阻害百分率(%)を、各試験化合物について算出した[(最大濃度での化合物のCPM−非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害をもたらす濃度(IC50)を、下式を用いた活性ベース/Xlフィットによる反復非線形曲線適合法を用いて測定した:
【数2】


(ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)そしてn=ヒル勾配)。各化合物の阻害解離定数(K)を、Cheng-Prusoffの方法に準じて測定し、次にKの負対数(pK)に変換した。
【0182】
上記の手順を用いて、本発明の化合物が、ヒトノルエピネフリントランスポーターに対する親和性を有することが判明した。pK値を、表1に示す。
【0183】
本発明を、その具体的な実施態様を参照しながら説明したが、当業者には、種々の変更をおこなうことでき、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく同等物を置き換えることができることが理解されるであろう。さらに、特定の状況、材料、組成物、方法、1つ以上のプロセス工程を本発明の目的とする精神及び範囲に適合させるために、数多くの修正をおこなうことができる。全てのかかる修正は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0184】
実施例25
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトドーパミントランスポーターで活性な化合物のスクリーニング
このアッセイを使用して、[H]−バノキセリン(Vanoxerine)との競合によるリガンドのドーパミントランスポーターに対する親和性を測定した。
【0185】
組み換えhDATを安定的に発現しているHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を、培地(10%FBS、300μg/mL G418及び2mM L−グルタミン含有DMEM高グルコース)を用いて維持し、5%COで37℃でインキュベートした。白色の不透明なCell-Tak塗布96ウエルプレート上に1ウエル当たり約30,000個の細胞を配置すること(PBS中)により、細胞を、実験の4時間前に平板培養した。余分な緩衝液を、ELx405プレートウォッシャーを用いて細胞プレートから除去した。
【0186】
シンチレーション近接アッセイ IC50/Kの測定のために、[H]バノキセリン(GBR 12909)放射性リガンド、特異的活性約59Ci/mmol、原液濃度400nM及び50mM Tris−HCl、300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を使用した。本発明の化合物を、10点希釈プロトコルを用いて、Beckman Biomek 2000により、10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)に希釈した。混合物を、室温で30分間静置し、次にPackard TopCount LCS、一般的SPAカウントプロトコル設定(カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストーク低減:オフ)でカウントした。
【0187】
阻害百分率(%)を、各試験化合物について算出した[(最大濃度での化合物のCPM−非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害をもたらす濃度(IC50)を、下式を用いた活性ベース/Xlフィットによる反復非線形曲線適合法を用いて測定した:
【数3】


(ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)そしてn=ヒル勾配)。各化合物の阻害解離定数(K)を、Cheng-Prusoffの方法に準じて測定し、次にKの負対数(pK)に変換した。
【0188】
上記の手順を用いて、本発明の化合物が、ヒトドーパミントランスポーターに対する親和性を有することが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化18】


[式中:
m及びnは、各々独立に、0〜3であり;
及びXの一方は、NHであり、そしてもう一方は、CHであり;
がNHの場合、Yは、O又はCHであり、そしてXがCHの場合、Yは、CHであり;
がCHの場合、Yは、N又はCHであり、そしてYがOの場合、Yは、CHであり;
及びRの各々は、独立に、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ又はハロ−C1−6アルキルである]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
が、NHであり、そしてXが、CHである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、CHであり、そしてXが、NHである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が、Oである、請求項1〜2のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
が、CHである、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
が、Nである、請求項1〜3及び5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
が、CHである、請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
mが、1である、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
が、Cl、F又はOMeである、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
mが、0である、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
nが、1である、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
が、F又はOMeである、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
nが、0である、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
下記:
(3S,4S)−3,4−ジフェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5R)−4−(2−メトキシ−フェニル)−5−フェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5R)−4,5−ジフェニル−アゼパン塩酸塩、
(4S,5S)−4,5−ジフェニル−アゼパン、
(6S,7R)−6,7−ジフェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(2−フルオロ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(2−メトキシ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(4−フルオロ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7R)−7−(4−メトキシ−フェニル)−6−フェニル−[1,4]オキサゼパン、
(6S,7S)−6,7−ジフェニル−[1,4]オキサゼパン塩酸塩、
1,2−ジフェニル−[1,4]ジアゼパン、
1,7−ジフェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(2−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
2−(4−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(2−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(4−クロロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、
7−(4−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン、及び
7−(4−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−[1,4]ジアゼパン
からなる群より選択される、請求項1〜13のいずれか一項記載の化合物又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項15】
治療上活性な物質としての使用のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項18】
鬱病、不安症、又はその両方の治療的及び/又は予防的処置用の医薬の製造のための、請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項記載の化合物及び薬学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2013−512272(P2013−512272A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541449(P2012−541449)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068451
【国際公開番号】WO2011/067219
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】