説明

モノアミン再取り込み阻害剤としてのテトラヒドロキノリンインドール誘導体

式(I)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩(式中、m、n、R、R、R、R、及びRは、本明細書に定義の通りである)。また、医薬組成物、前記化合物の使用方法及び調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロキノリンインドール化合物、及びそれを使用する方法に関する。具体的には、本発明の化合物は、モノアミン再取り込み阻害剤に関連する疾患の治療に有用である。
【0002】
発明の背景
モノアミン欠乏は、長い間、抑鬱障害、不安障害、及び他の障害と関連づけられてきた(例えば、Charney et al., J. Clin. Psychiatry (1998) 59, 1-14; Delgado et al., J. Clin. Psychiatry (2000) 67, 7-11; Resser et al., Depress. Anxiety(2000) 12 (Suppl 1) 2-19;及びHirschfeld et al., J. Clin. Psychiatry (2000) 61, 4-6を参照されたい)。具体的には、セロトニン(5−ヒドロキシトリプトアミン)及びノルエピネフリンが、気分の調整において重要な役割を果たす鍵となる調節性神経伝達物質として認識されている。フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、シタロプラム、及びエスシタロプラム等の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)が、抑鬱障害の治療のために提供されている(Masand et al., Harv. Rev. Psychiatry (1999) 7, 69-84)。レボキセチン、アトモキセチン、デシプラミン、及びノルトリプチリン等のノルアドレナリンすなわちノルエピネフリンの再取り込み阻害剤は、抑鬱障害、注意欠陥障害、及び多動性障害に対する有効な治療を提供している(Scates et al., Ann. Pharmacother. (2000) 34, 1302-1312; Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. (1997) 340, 249-258)。
【0003】
セロトニン及びノルエピネフリンの神経伝達を強化することは、セロトニン又はノルエピネフリンのみの神経伝達を強化することに比べて、抑鬱及び不安障害の薬物療法において相乗作用を有すると認識されている(Thase et al., Br. J. Psychiatry (2001) 178, 234, 241; Tran et al., J. Clin. Psychopharmacology (2003) 23, 78-86)。デュロキセチン、ミルナシプラン、及びベンラファキシン等の、セロトニン及びノルエピネフリンの両方に対する二重再取り込み阻害剤が、抑鬱障害及び不安障害の治療のために現在販売されている(Mallinckrodt et al., J. Clin. Psychiatry (2003) 5(1) 19-28; Bymaster et al., Expert Opin. Investig. Drugs (2003) 12(4) 531-543)。また、セロトニン及びノルエピネフリンの二重再取り込み阻害剤は、統合失調症及び他の精神障害;運動障害;薬物依存;認知障害;アルツハイマー病;強迫行動;注意欠陥障害;パニック発作;社交恐怖症;肥満、食欲不振、過食症、及び「多食症」等の摂食障害;ストレス;高血糖;高脂血症;インシュリン非依存性糖尿病;癲癇などの発作性障害;ならびに卒中、脳損傷、脳虚血、頭部外傷及び出血に起因する神経損傷に関連する症状も治療する可能性がある。また、セロトニン及びノルエピネフリンの二重再取り込み阻害剤は、尿路の障害及び疾患状態、ならびに疼痛及び炎症も治療する可能性がある。
【0004】
より最近では、ノルエピネフリン、セロトニン、及びドーパミンの再取り込みを阻害する「三重再取り込み」阻害剤(「広域抗鬱薬」)も、抑鬱及び他のCNS適応症の治療に有用であると認識されている(Beer et al., J. Clinical Pharmacology (2004) 44: 1360-1367; Skolnick et al., Eur J Pharmacol. (2003) Feb 14; 461 (2-3): 99-104)。
【0005】
また、モノアミン再取り込み阻害剤は、疼痛の治療にも用いられる。セロトニンは、末梢神経系における疼痛プロセシングにおいて何らかの役割を果たし、また、炎症及び神経損傷における末梢感作及び痛覚過敏の一因であることが見出されている(Sommer et al., Molecular Neurobiology (2004) 30(2), 117-125)。セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤であるデュロキセチンは、動物モデルにおいて疼痛の治療に有効であることが示されている(Iyengar et al., J. Pharm. Exper. Therapeutics (2004, 311, 576-584)。
【0006】
したがって、セロトニン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ドーパミン再取り込み阻害剤、ならびに/又はセロトニン、ノルエピネフリン、及び/もしくはドーパミンの二重再取り込み阻害剤、又はノルエピネフリン、セロトニン、及びドーパミンの三重再取り込み阻害剤として有効な化合物、ならびに前記化合物を製造する方法、抑鬱、不安、尿生殖器、疼痛、及び他の障害の治療において前記化合物を使用する方法が必要とされている。本発明は、これらの必要性を満たす。
【0007】
発明の概要
本発明の1つの態様は、以下の式I:
【化1】


で表される化合物及び/又はその薬学的に許容しうる塩を提供する:
[式中、
m及びnは、それぞれ独立して、0〜3であり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ、又はハロ−C1−6アルキルであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、ハロ、C1−6アルキル、−C(O)−R、又は−C(O)−NR(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC1−6アルキルである)である]。
【0008】
また、本発明は、医薬組成物、前述の化合物の使用方法及び調製方法を提供する。
【0009】
発明の詳細な説明
定義
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲を含む本願で使用される以下の用語は、以下に示す定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に断りのない限り、複数の対象を含むことに留意しなければならない。
【0010】
「アゴニスト」は、別の化合物又は受容体部位の活性を増強する化合物を指す。
【0011】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する、炭素原子及び水素原子のみからなる一価の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、すなわち、C−Cアルキルを指す。「C−Cアルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を指す。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシル等を含むが、これらに限定されない。「分岐アルキル」は、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルを意味する。特に、「C−Cアルキル」はメチルである。
【0012】
「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rは、本明細書に定義する通りのアルキル部分である)で表される部分を意味する。「C−Cアルコキシ」は、式−OR(式中、Rは本明細書に定義する通りのC−Cアルキル部分である)で表される部分を意味する。例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0013】
「アミノ」は、式−NRR’(式中、R及びR’は、それぞれ独立して、水素又は本明細書に定義する通りのC−Cアルキルである)で表される部分を意味する。したがって、「アミノ」は、「アルキルアミノ」(式中、R及びR’のうち一方はアルキルであり、他方は水素である)及び「ジアルキルアミノ」(式中、R及びR’は両方ともアルキルである)を含む。例は、−NH、−N(メチル)、−N(H,メチル)等を含むが、これらに限定されない。
【0014】
「アンタゴニスト」は、別の化合物又は受容体部位の作用を低下又は阻害する化合物を指す。
【0015】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、互換的に使用することができ、置換基であるフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0016】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が同じ又は異なるハロゲンで置き換えられている、本明細書に定義する通りのアルキルを意味する。「ハロC−Cアルキル」は、1個以上の水素が同じ又は異なるハロゲンで置き換えられている、本明細書に定義する通りのC−Cアルキルを意味する。特に、ハロゲンはフルオロである。例は、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、−CF等を含むが、これらに限定されない。
【0017】
「脱離基」は、有機合成化学において慣習的にそれに関連する意味を有する基、すなわち、置換反応条件下で置換可能な原子又は基を意味する。脱離基の例は、ハロゲン;例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、及びチエニルオキシ等のアルカン−又はアリーレンスルホニルオキシ;ジハロホスフィノイルオキシ;場合により置換されているベンジルオキシ;イソプロピルオキシ;アシルオキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0018】
「調節因子」は、標的と相互作用する分子を意味する。前記相互作用は、本明細書に定義する通り、アゴニスト、アンタゴニスト等を含むが、これらに限定されない。
【0019】
「任意の」又は「場合により」は、その後に記載される事象又は状況が生じる可能性はあるが、必須ではなく、そして、その記載が、前記事象又は状況が生じる場合、及び前記事象又は状況が生じない場合を含むことを意味する。
【0020】
「疾患」及び「疾患状態」は、任意の疾患、症状、病徴、障害又は徴候を意味する。
【0021】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、溶媒が、これらと併せて記載される反応条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンすなわちジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジン等を含む。特に逆の指定のない限り、本発明の反応で使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0022】
「薬学的に許容しうる」は、一般に安全で、無毒で、そして、生物学的にも他の意味でも望ましい医薬組成物の調製において有用であることを意味し、そして、獣医学的使用及びヒトの薬学的使用のために許容しうるものを含む。
【0023】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書に定義する通り、薬学的に許容することができ、そして、親化合物の望ましい薬理学的活性を有する塩を意味する。このような塩は、以下を含む:
i) 塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸とともに形成される酸付加塩;又は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸等の有機酸とともに形成される酸付加塩;あるいは
ii) 親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置換されたときに形成される塩類;又は有機塩基もしくは無機塩基が配位した塩。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等を含む。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムを含む。
【0024】
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛及びマグネシウムから形成される塩である。
【0025】
薬学的に許容しうる塩に対するすべての言及は、同じ酸付加塩の、本明細書に定義する通りの溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形(多形)を含むと理解すべきである。
【0026】
「保護基(Protective group)」又は「保護基(protecting group)」は、合成化学において慣習的にそれに関連する意味において、ある非保護反応部位で化学反応を選択的に実施することができるように、多官能性化合物における別の反応部位を選択的にブロックする基を意味する。本発明の特定のプロセスは、保護基に依存して、反応物中に存在する反応性窒素原子及び/又は反応性酸素原子をブロックする。例えば、「アミノ保護基」及び「窒素保護基」という用語は、本明細書において互換的に使用され、合成手順中に望ましくない反応から窒素原子を保護することを意図する有機基を指す。例示的な窒素保護基は、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)等を含むが、これらに限定されない。当業者は、除去の容易さ、及び続く反応に耐える能力について基を選択する方法を知っているだろう。
【0027】
「溶媒和物」は、化学量論的量又は非化学量論的量のいずれかの溶媒を含有する溶媒付加形態を意味する。いくつかの化合物は、固定モル比の溶媒分子を結晶性固体状態にトラップし、それにより、溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1個以上の水分子と、内部で水がHOとしてその分子状態を保持する物質のうち1つとの組み合わせにより形成され、このような組み合わせから1つ以上の水和物を形成することができる。
【0028】
「被験体」は、哺乳類及び非哺乳類を意味する。哺乳類は、ヒト;チンパンジー及び他の類人猿等の非ヒト霊長類、ならびにサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタ等の家畜;ウサギ、イヌ及びネコ等の家庭動物;ラット、マウス及びモルモット等のげっ歯類を含む実験動物等を含むが、これらに限定されない哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳類の例は、鳥類等を含むが、これらに限定されない。用語「被験体」は、特定の年齢又は性別を意味するものではない。特に、ヒトである。
【0029】
セロトニン、ノルエピネフリン及び/又はドーパミン神経伝達に関連する「疾患状態」は、抑鬱障害及び不安障害に加えて、統合失調症及び他の精神障害;運動障害;薬物依存;認知障害;アルツハイマー病;ADHD等の注意欠陥障害;強迫行動;パニック発作;社交恐怖症;肥満、食欲不振、過食症、及び「多食症」等の摂食障害;ストレス;高血糖;高脂血症;インシュリン非依存性糖尿病;癲癇などの発作性障害;ならびに卒中、脳損傷、脳虚血、頭部外傷、出血に起因する神経損傷に関連する症状、ならびに尿路の障害及び疾患状態を含むが、これらに限定されない。また、セロトニン、ノルエピネフリン及び/又はドーパミン神経伝達に関連する「疾患状態」は、被験体における炎症症状を含む。本発明の化合物は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎、及び他の関節炎の病状を含むが、これらに限定されない関節炎の治療に有用である。
【0030】
「抑鬱」は、本明細書で使用するとき、大鬱病;長期抑鬱;気分変調;悲嘆、絶望、落胆、「悲哀(blues)」、憂鬱、自己評価の低下、罪悪感及び自己非難の感情を特徴とする抑鬱気分の精神状態;対人接触からの離脱;ならびに摂食障害及び睡眠障害等の身体症状を含むが、これらに限定されない。
【0031】
「不安」は、本明細書で使用するとき、非現実的な、想像上の又は誇張された危険又は被害観に対する精神心理学的応答に関連する不快又は望ましくない感情状態、心拍数の増加、呼吸数の変化、発汗、振戦、衰弱及び疲労等の身体的随伴症状、危険が迫りくる感情、無力感、憂慮及び緊張感を含むが、これらに限定されない。
【0032】
「治療上有効量」は、ある疾患状態を治療するために被験体に投与されたとき、前記疾患状態を治療するのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効量」は、化合物、治療される疾患状態、重症度又は治療される疾患、被験体の年齢及び相対的な健康、投与の経路及び形態、参加する医師又は獣医師の判断、ならびに他の要因に依存して変化する。
【0033】
用語「上に定義した」、「本明細書に定義する」、及び「本明細書に記載する」は、変数に言及するとき、変数の広義の定義に加えて、存在する場合は好ましい定義、より好ましい定義、及び最も好ましい定義も参照することにより組み込む。
【0034】
疾患状態を「治療すること」又は「治療」は、以下を含む:
(i)疾患状態の予防、すなわち、疾患状態に曝されるか、又は罹患しやすい可能性があるが、未だ疾患状態を経験していないか、又は症状を示していない被験体において疾患状態の臨床症状を発生させないこと、
(ii)疾患状態の抑制、すなわち、疾患状態又はその臨床症状の発現を妨げること、あるいは
(iii)疾患状態の軽減、すなわち、疾患状態又はその臨床症状を一時的又は永続的に後退させること。
【0035】
用語「処理」、「接触」、及び「反応」は、化学反応に言及するとき、指定された及び/又は所望の生成物を生成するのに適切な条件下で2つ以上の試薬を添加又は混合することを意味する。指定された及び/又は所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された2つの試薬の組み合わせから直接得られる訳ではない、すなわち、混合物中で生成される1つ以上の中間体が存在し、それが最終的に指定された及び/又は所望の生成物の形成を導く場合もあることを理解すべきである。
【0036】
命名法及び構造
一般的に、本願において使用される命名法は、IUPACの体系的命名法を実行するためにBeilstein Instituteによりコンピュータ化されたシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書における構造中の炭素、酸素、硫黄又は窒素原子に出現する任意の空の結合価(open valency)は、水素原子の存在を示す。
【0037】
不斉炭素が化学構造中に存在するときは常に、その不斉炭素に関連する全ての立体異性体が前記構造に包含されることを意図する。
【0038】
本明細書において特定される特許及び刊行物はすべて、参照によりその全文が本明細書に組込まれる。
【0039】
本発明の化合物
本発明は、式I:
【化2】


で表される化合物及び/又はその薬学的に許容しうる塩を提供する:
[式中、
m及びnは、それぞれ独立して、0〜3であり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ、又はハロ−C1−6アルキルであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、ハロ、C1−6アルキル、−C(O)−R、又は−C(O)−NR(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC1−6アルキルである)である]。
【0040】
式Iの特定の実施形態では、mは0又は1である。
【0041】
式Iの特定の実施形態では、mは0である。
【0042】
式Iの特定の実施形態では、nは0又は1である。
【0043】
式Iの特定の実施形態では、nは0である。
【0044】
式Iの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0045】
式Iの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0046】
式Iの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0047】
式Iの特定の実施形態では、Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0048】
式Iの特定の実施形態では、Rは、メチル又はクロロである。
【0049】
式Iの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0050】
式Iの特定の実施形態では、Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0051】
式Iの特定の実施形態では、Rは、メチル又はクロロである。
【0052】
式Iの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0053】
式Iの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0054】
式Iの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0055】
式Iの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0056】
式Iの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0057】
式Iの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0058】
式Iの特定の実施形態では、Rはハロである。
【0059】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−R(式中、Rは、水素又はC1−6アルキルである)である。
【0060】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−Hである。
【0061】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−C1−6アルキルである。
【0062】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−NR(式中、Rは、水素又はC1−6アルキルであり、Rは、水素又はC1−6アルキルである)である。
【0063】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−NHである。
【0064】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−N(C1−6アルキル)である。
【0065】
式Iの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−N(H,C1−6アルキル)である。
【0066】
式Iの特定の実施形態では、対象化合物は、式IIによって表される場合もある:
【化3】


(式中、m、n、R、R、R、R及びRは、本明細書に定義する通りである)。
【0067】
式IIの特定の実施形態では、mは0又は1である。
【0068】
式IIの特定の実施形態では、mは0である。
【0069】
式IIの特定の実施形態では、nは0又は1である。
【0070】
式IIの特定の実施形態では、nは0である。
【0071】
式IIの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0072】
式IIの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0073】
式IIの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0074】
式IIの特定の実施形態では、Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0075】
式IIの特定の実施形態では、Rは、メチル又はクロロである。
【0076】
式IIの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0077】
式IIの特定の実施形態では、Rは、メチル、メトキシ、フルオロ、クロロ又はトリフルオロメチルである。
【0078】
式IIの特定の実施形態では、Rは、メチル又はクロロである。
【0079】
式IIの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0080】
式IIの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0081】
式IIの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0082】
式IIの特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0083】
式IIの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0084】
式IIの特定の実施形態では、RはC1−6アルキルである。
【0085】
式IIの特定の実施形態では、Rはハロである。
【0086】
式IIの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−Rである。
【0087】
式IIの特定の実施形態では、Rは、−C(O)−NRである。
【0088】
本明細書に記載する式I又はIIで表される化合物、[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミン又はその薬学的に許容しうる塩。
【0089】
治療活性物質として使用するための本明細書に記載する化合物。
【0090】
抑鬱、不安、又は両方を治療的及び/又は予防的に処置するための本明細書に記載する化合物。
【0091】
抑鬱を治療的及び/又は予防的に処置するための本明細書に記載する化合物。
【0092】
不安を治療的及び/又は予防的に処置するための本明細書に記載する化合物。
【0093】
抑鬱及び不安を治療的及び/又は予防的に処置するための本明細書に記載する化合物。
【0094】
抑鬱、不安、又は両方を治療的及び/又は予防的に処置するための本明細書に記載する化合物の使用。
【0095】
抑鬱、不安、又は両方を治療的及び/又は予防的に処置する薬剤を製造するための本明細書に記載する化合物の使用。
【0096】
抑鬱、不安、又は両方を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載する化合物をそれを必要としている被験体に投与することを含む方法。
【0097】
抑鬱、不安、又は両方を治療的及び/又は予防的に処置するための方法であって、有効量の本明細書に記載する化合物をそれを必要としている被験体に投与することを含む方法。
【0098】
本明細書に記載する化合物と、薬学的に許容しうる担体とを含む医薬組成物。
【0099】
合成
本発明の化合物は、以下に図示及び説明する例示的な合成反応スキームに示される様々な方法によって製造することができる。
【0100】
これら化合物の調製に用いられる出発物質及び試薬は、一般的に、Aldrich Chemical Co.等の商業的供給元から入手可能であるか、又はFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons:New York, 1991, Volumes 1-15; Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplementals;及びOrganic Reactions, Wiley & Sons:New York, 1991, Volumes 1-40等の参照文献に記載されている手順に従って当業者に公知の方法により調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができるいくつかの方法を単に例示するものであり、これらの合成反応スキームに対して様々な変更を行ってもよく、前記変更は、本願に含まれる開示を参照した当業者に示唆される。
【0101】
必要に応じて、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を含むが、これらに限定されない従来の技術を使用して、合成反応スキームの出発物質及び中間体を単離し、そして精製することができる。このような物質は、物理定数及びスペクトルデータを含む、従来の手段を使用して特性評価することができる。
【0102】
別段逆の指定のない限り、本明細書に記載する反応は、好ましくは、不活性雰囲気下にて、大気圧で、約−78℃〜約150℃、より好ましくは約0℃〜約125℃、最も好ましくは、そして便利には約室温(すなわち、周囲温度)、例えば約20℃の反応温度範囲で実施される。
【0103】
以下のスキームAは、本発明の化合物(式中、Xはハロ又は他の脱離基であり、各出現時に同じであっても異なっていてもよく、PGは保護基であり、m、n、R、R、R、及びRは、本明細書に定義する通りである)を調製するために使用可能な1つの合成手順を例証する。
【化4】

【0104】
スキームAの工程1では、無水Boc又は他の好適なアミン保護基で処理することによりテトラヒドロキノリンアミンを保護して、保護されたテトラヒドロキノリンアミンを得る。工程2では、ブーフバルト(Buchwald)型反応において保護されたテトラヒドロキノリンアミンをハロインドール化合物と反応させて、保護されたテトラヒドロキノリンインドール化合物を得る。工程3で化合物を脱保護して、テトラヒドロキノリンインドールを得る。場合により、工程4にて化合物をN−アルキル化に供して、本発明に係る式Iで表される化合物を得ることができる。
【0105】
スキームAの手順における多数の変更が可能であり、そして、当業者に容易に明らかになるであろう。例えば、工程1及び3を省略できるように、工程2の前に工程4のN−アルキル化を実行してもよい。上に示した工程の後に、基R、R及びRを導入してもよい。本発明の化合物を生成するための詳細は、以下の実施例の項に記載する。
【0106】
有用性
本発明の化合物は、セロトニン神経伝達、ノルエピネフリン神経伝達、及び/又はドーパミン神経伝達に関連する疾患又は症状の治療に使用可能である。このような疾患及び症状は、抑鬱障害及び不安障害に加えて、統合失調症及び他の精神障害;運動障害;薬物依存;認知障害;アルツハイマー病;ADHD等の注意欠陥障害;強迫行動;パニック発作;社交恐怖症;肥満、食欲不振、過食症、及び「多食症」等の摂食障害;ストレス;高血糖;高脂血症;インシュリン非依存性糖尿病;癲癇などの発作性障害;ならびに卒中、脳損傷、脳虚血、頭部外傷及び出血に起因する神経損傷に関連する症状を含む。
【0107】
また、本発明の化合物は、緊張性尿失禁、切迫尿失禁、良性前立腺肥大(BPH)、前立腺炎、排尿筋過反射、排尿開口部閉塞、頻尿、夜間多尿、尿意逼迫、過活動膀胱、骨盤の過敏症、尿道炎、前立腺痛、膀胱炎、突発性膀胱過敏症等の尿路の障害及び病状の治療に使用可能である。
【0108】
また、本発明の化合物は、インビボにおいて抗炎症及び/又は鎮痛特性を有するので、神経因性疼痛、炎症性疼痛、術後疼痛、内臓痛、歯痛、月経前の疼痛、中心性疼痛、熱傷による疼痛、片頭痛又は群発性頭痛、神経損傷、神経炎、神経痛、被毒、虚血性傷害、間質性膀胱炎、癌性疼痛、ウイルス、寄生虫又は細菌感染、外傷後傷害(骨折及びスポーツ傷害を含む)、及び過敏性大腸症候群等の機能性腸障害に関連する疼痛を含むが、これらに限定されない、広範囲にわたる原因による疼痛症状に関連する疾患状態の治療において、有用性が見出されると予測される。
【0109】
また、本発明の化合物は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎、ならびに他の関節炎状態を含むが、これらに限定されない関節炎の治療にも有用である。
【0110】
投与及び医薬組成物
本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物、あるいはその個々の異性体、異性体のラセミ混合物もしくは非ラセミ混合物、又は薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物とともに、少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体、場合により他の治療成分及び/又は予防成分を含む医薬組成物を含む。
【0111】
一般的に、本発明の化合物は、類似の有用性を有する剤について許容されている投与方法のいずれかにより、治療上有効量投与される。適切な用量域は、治療される疾患の重症度、被験体の年齢及び相対的健康、用いられる化合物の効力、投与の経路及び形態、投与の対象となる適応症、ならびに関与する医師の嗜好及び経験等の多くの要因に依存して、典型的には毎日1〜500mg、好ましくは毎日1〜100mg、最も好ましくは毎日1〜30mgである。このような疾患を治療する当業者は、過度の実験をすることなく、そして自分自身の知見及び本願の開示に依存して、所与の疾患に対する本発明の化合物の治療上有効量を突き止めることができる。
【0112】
本発明の化合物は、経口(頬側及び舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所、肺内、膣内、又は非経口(筋肉内、動脈内、鞘内、皮下、及び静脈内を含む)投与に適しているものを含む医薬製剤として、又は吸入もしくは吹送による投与に適している形態で投与してよい。好ましい投与方法は、一般的に、病気の程度によって調節することができる便利な日用量レジメンを使用する経口投与である。
【0113】
本発明の化合物(単数又は複数)は、1つ以上の従来の佐剤、担体又は希釈剤とともに、医薬組成物及び単位剤形の形態にしてもよい。医薬組成物及び単位剤形は、さらなる活性化合物又は成分を含む又は含まない、従来の比率の従来の成分で構成されてよく、単位剤形は、使用される対象日用量域に相応する任意の適切な有効量の活性成分を含有してよい。医薬組成物は、錠剤もしくは充填カプセル剤等の固体、半固体、散剤、徐放性製剤、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、もしくは経口用途用の充填カプセル剤等の液体として;あるいは直腸又は膣内投与用の坐剤の形態で;あるいは非経口用途用の無菌注射剤溶液の形態で使用してよい。したがって、錠剤1個当たり、約1mg、又はより広く約0.01〜約100mgの活性成分を含有する製剤が、適切な例示的単位剤形である。
【0114】
本発明の化合物は、広範囲にわたる経口投与剤形に製剤化してよい。医薬組成物及び剤形は、活性成分として本発明の化合物(単数又は複数)、又はその薬学的に許容しうる塩を含んでよい。薬学的に許容しうる担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態の調製品は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又は封入材料としても作用しうる1つ以上の物質であってよい。散剤では、担体は、一般的に、微粉活性成分との混合物である微粉固体である。錠剤では、活性成分は、一般的に、必要な結合能を有する担体と適切な比率で混合され、望ましい形状及び大きさに圧縮される。散剤及び錠剤は、好ましくは、約1〜約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオ脂等を含むが、これらに限定されない。用語「調製品」は、活性成分が、担体とともに又は担体を含まずに、それに関連する担体により包まれたカプセル剤を提供する、担体として封入材料を含む活性化合物の製剤を含むことを意図する。同様に、カシェ剤及びロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジ剤は、経口投与に適している固体形態であり得る。
【0115】
経口投与に適している他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液、水懸濁液を含む液体形態の調製品、又は使用直前に液体形態の調製品に変換することを意図する固体形態の調製品を含む。乳剤は、溶液、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製してもよく、又は例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタンもしくはアラビアゴム等の乳化剤を含有してもよい。水溶液は、水に活性成分を溶解させ、そして適切な着色剤、香料、安定剤、及び増粘剤を添加することにより調製できる。水懸濁液は、天然又は合成のゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁化剤等の粘着性物質とともに、水中に微粉活性成分を分散させることにより調製できる。固体形態の調製品は、液剤、懸濁剤、及び乳剤を含み、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、バッファ、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有してもよい。
【0116】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注入、例えば大量注射又は持続注入による)用に製剤化することができ、そして、アンプル、プレフィルドシリンジの単位剤形で、少量注入、又は保存剤を添加した複数回用量容器で提示してもよい。組成物は、油性又は水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルション、例えば、ポリエチレングリコール水溶液等の形態をとってよい。油性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)及び注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)を含み、そして保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、安定剤、及び/又は分散剤等の製剤化剤(formulatory agent)を含有してもよい。あるいは、活性成分は、無菌固体を無菌的に単離することによるか、又は適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質不含水を用いて使用前に構成するために溶液を凍結乾燥することによって得られる粉末形態であってもよい。
【0117】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤又はローション剤、あるいは経皮貼布として表皮に局所投与するために製剤化してよい。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性の基剤を用いて製剤化することができる。ローション剤は、水性又は油性の基剤を用いて製剤化することができ、そして、一般的に、1つ以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤又は着色剤も含有する。口内の局所投与に適している製剤は、風味のある基剤、通常、スクロース、及びアラビアゴム又はトラガカント中に活性剤を含むロゼンジ剤;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性基剤中に活性成分を含むトローチ剤;及び適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄液を含む。
【0118】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤化してもよい。脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂等の低融点ろうを、まず融解させ、そして、例えば撹拌によって、活性成分を均質に分散させる。次いで、融解した均質な混合物を便利な大きさの型に注ぎ、冷却し、そして固化させる。
【0119】
本発明の化合物は、膣内投与するために製剤化してもよい。活性成分に加えて担体等も含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、又は噴霧剤は、適切であることが当技術分野において公知である。
【0120】
対象化合物は、鼻腔内投与用に製剤化してもよい。液剤又は懸濁剤は、例えば、滴瓶、ピペット又はスプレーを用いて、従来の手段によって鼻腔に直接適用される。製剤は、単回又は複数回投与形態で提供してよい。後者の滴瓶又はピペットの場合、これは、患者が適切な所定の体積の液剤又は懸濁剤を投与することによって達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、定量霧化噴霧ポンプによって達成され得る。
【0121】
本発明の化合物は、鼻腔内投与を含む、特に呼吸器官へのエアロゾル投与用に製剤化することができる。化合物は、一般に、例えば約5ミクロン以下の小さな粒径を有する。このような粒径は、当技術分野において公知の手段、例えば微粒子化によって得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素もしくは他の適切な気体等の適切な噴射剤を含む加圧パックで提供される。エアロゾルは、また、便利なようにレシチン等の界面活性剤を含有してもよい。薬の用量は、定量バルブによって制御することができる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の澱粉誘導体、及びポリビニルピロリジン(PVP)等の適切な粉末基剤中の化合物の混合粉体で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジで単位剤形として、又は吸入器を用いて粉末を投与することができるブリスターパックとして提示してもよい。
【0122】
望ましい場合、活性成分の持続又は制御放出投与に適合した腸溶コーティングが施された製剤を調製してもよい。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達デバイスに製剤することができる。化合物の持続放出が必要なとき、及び患者が治療レジメンを遵守することが重要なとき、これらの送達システムは有利である。経皮送達システムにおいて化合物は、皮膚接着性固体支持体に付着していることが多い。また、対象となる化合物は、経皮吸収促進剤、例えばAzone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と混ぜ合わせてもよい。持続放出送達システムは、外科処置又は注入によって皮下層に皮下挿入される。皮下インプラントは、脂質可溶性膜、例えばシリコーンゴム、又は生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸中に化合物を封入している。
【0123】
医薬調製品は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製品は、適切な量の活性成分を含有している単位用量に細分される。単位剤形は、パッケージ化調製品であってもよく、前記パッケージは、パック入り(packeted)錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の散剤等の個別量の調製品を含む。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤もしくはロゼンジ剤自体であってもよく、又はパッケージ化形態の適切な数の任意のこれら剤であってもよい。
【0124】
他の適切な薬学的担体及びそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvania.に記載されている。本発明の化合物を含有する例示的な医薬製剤を以下に記載する。
【0125】
実施例
当業者が本発明をより明白に理解し、そして実施できるように、以下の調製及び実施例を示す。これらは、本発明の範囲を限定するとみなすべきではなく、単なる本発明の例証及び代表例である。実施例において以下の略記を使用してよい。
略記
AcOH 酢酸
Bn ベンジル
(BOC)O ジ−tert−ブチルジカーボネート;
t−BuLi tert−ブチルリチウム
t−BuOH tert−ブチルアルコール
m−CPBA 3−クロロペルオキシ安息香酸
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DEA ジエチルアミン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DIBALH 水素化ジイソブチルアルミニウム
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMP デスマーチンペルヨージナン(酢酸1,1−ジアセトキシ−3−オキソ−1λ5−ヨーダ−2−オキサ−インダン−1−イルエステル)
Dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
EtOAc 酢酸エチル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LAH 水素化リチウムアルミニウム
LHMDS リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MeOH メタノール
MsCl 塩化メタンスルホニル
NBS N−ブロモスクシンイミド
PFBSF フッ化ペルフルオロブタンスルホニル
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBAHS 硫酸水素テトラブチルアンモニウム
TBDMS tert−ブチルジメチルシリル
TMSI ヨードトリメチルシラン
TEA トリエチルアミン
TIPS トリイソプロピルシリル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMAF フッ化テトラメチルアンモニウム
TMS トリメチルシリル
【0126】
実施例1
[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミン
この実施例に記載する合成手順は、スキームBに示す方法に従って実施した。
【化5】

【0127】
工程1 [1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
(1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルは、市販の1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イルアミン(JW Pharmaceutical #7578-79-2)を無水BOCで処理することにより調製した。50mLのチューブ内で、(1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.28g、5.15mmol)を、5−ブロモインドール(0.67g、3.44mmol)、Pddba(0.063g、0.069mmol)、XPHOS(0.082g、0.17mmol)、炭酸カリウム(1.2g、8.6mmol)、及びtert−ブタノール(10mL)と合わせた。前記チューブを密閉し、18時間、撹拌しながら100℃に加熱した。次いで、前記チューブを室温に冷却し、EtOAcと重炭酸ナトリウム飽和水溶液との間で内容物を分配した。有機相を分離させ、減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(0%〜25%のEtOAc/ヘキサン)によって残渣を精製して、1.3gの[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを得た。
【0128】
工程2 [1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミン
[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.2g、4.3mmol)を30mLのTHFに溶解させ、混合物を0℃に冷却した。5mLのTHFに懸濁させた水素化アルミニウムリチウム(0.70g、4.6mmol)を添加し、混合物を撹拌しながら室温に加温し、次いで、3時間加熱還流させた。前記混合物を室温に冷却し、THF(25mL)で希釈し、次いで、0℃に冷却した。含水硫酸ナトリウム(36g)を撹拌しながらゆっくり添加し、前記混合物を30分間撹拌し、次いで濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール/水酸化アンモニウム90:9:1)によって精製して、0.064gの[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミンを得た。MS(M+H)=278.
【0129】
実施例2
製剤
以下の表に示す通り、様々な経路によって送達するための医薬調製品を製剤化する。以下の表で用いられるとき、「活性成分」又は「活性化合物」は、式Iで表される化合物のうち1つ以上を意味する。
【表1】

【0130】
成分を混合し、各々約100mgを含有するカプセルに分配する;1個のカプセルは、おおよそ合計日用量である。
【表2】

【0131】
成分を合わせ、そして、メタノール等の溶媒を用いて顆粒化する。次いで、その製剤を乾燥させて、適切な打錠機で錠剤(約20mgの活性化合物を含有する)に成形する。
【表3】

【0132】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【表4】

【0133】
活性成分を注射用水の一部に溶解させる。次いで、十分な量の塩化ナトリウムを撹拌しながら添加して、等張溶液を作製する。注射用水の残りを用いて溶液の重量を調整し、0.2ミクロンのメンブランフィルターを用いて濾過し、無菌条件下でパッケージ化する。
【表5】

【0134】
成分を一緒に融解させ、蒸気浴上で混合し、全重量2.5gを収容する型に注ぐ。
【表6】

【0135】
水以外の成分をすべて合わせて、撹拌しながら約60℃に加熱する。次いで、約60℃の十分な量の水を激しく撹拌しながら添加して、成分を乳化させ、次いで、約100gまでの適量の水を添加する。
【0136】
鼻内噴霧製剤
鼻内噴霧製剤として約0.025〜0.5パーセントの活性化合物を含有しているいくつかの水懸濁剤を調製する。前記製剤は、場合により、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロース等の不活性成分を含有してもよい。塩酸を添加してpHを調節してもよい。鼻内噴霧製剤は、典型的には、1回の作動当たり約50〜100μLの製剤が鼻内噴霧定量ポンプを介して送達され得る。典型的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回噴霧である。
【0137】
実施例3
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いたヒトセロトニン輸送体(hSERT)アンタゴニストのスクリーニング
この実施例のスクリーニングアッセイを用いて、[H]−シタロプラムとの競合によりhSERT輸送体におけるリガンドの親和性を決定した。
【0138】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)は、ビーズのシンチラントに放射性リガンドを極近接させて、発光を刺激することにより行われる。このアッセイでは、受容体を含有する膜をSPAビーズに予めカップリングさせておき、輸送体に対する適切な放射性リガンドの結合を測定した。発光は、結合している放射性リガンドの量に比例していた。シンチラントとの距離が離れていた結果として、結合していない放射性リガンドはシグナルを発しなかった(エネルギー移動の欠如)。
【0139】
組換えhSERTを安定して発現するHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を培地(10%のFBS、300μg/mLのG418、及び2mMのL−グルタミンを含む高グルコースDMEM培地)で維持し、5%COで37℃にてインキュベートした。1〜2分間PBSを用いて培養フラスコから細胞を遊離させた。次いで、細胞を5分間1000gで遠心分離し、PBSに懸濁させた後、膜調製において用いた。
【0140】
50mMのTRIS(pH7.4)の膜調製バッファを用いて細胞膜を調製した。1本のチューブから細胞膜を調製した(合計7.5×10細胞)。Polytron(4秒間バーストさせるための定着培地)を用いて細胞をホモジナイズした。次いで、ホモジネートを15分間48,000gで遠心分離し、次いで、上清を除去し、廃棄し、そして、ペレットを新たなバッファに再懸濁させた。2回目の遠心分離後、ペレットを再度ホモジナイズし、アッセイ中に決定された最終体積にした。典型的に、膜部分を3mg/mL(w:v)に分注し、−80℃で保存した。
【0141】
シンチレーション近接アッセイのIC50/Kiを決定するために、50mMのTris−HCl及び300mMのNaCl(pH7.4)バッファを利用した。連続希釈プロトコールを用いて、Beckman Biomek 2000を介して本発明の化合物を10mM〜0.1nMのFACに希釈した(10点曲線、全対数/半対数希釈)。次いで、試験化合物を移し(20μL/ウェル)、[H]−シタロプラム放射性リガンドを50μL/ウェルで添加した。膜及びビーズを10μg:0.7mgの比になるように調製し、1ウェル当たり0.7mgのPVT-WGA Amershamビーズ(カタログ番号RPQ0282V)を添加した。130μLの膜:ビーズ混合物をアッセイプレートに添加した。混合物を1時間室温で静置させ、次いで、一般的なシンチレーション近接アッセイの計数プロトコールの設定(エネルギー範囲:低、有効性モード:ノーマル、領域A:1.50−35.00、領域B:1.50−256.00、計数時間(分):0.40、バックグラウンド減算:無し、半減期補正:無し、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:無し、クロストーク低減:オフ)を用いてPackard TopCount LCSで計数した。
【0142】
試験した各化合物について阻害率(%)を計算した[(最高濃度における化合物のカウント毎分(CPM)−非特異的CPM)/合計CPM×100]。以下の式を用いて、Activity Base/Xlfitを用いる反復非線形曲線適合技術を用いて50%阻害濃度(IC50)を決定した。
【数1】


(式中、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験した化合物の濃度(M)、及びn=ヒル勾配である。)Cheng-Prusoffの方法に従って各化合物の阻害解離定数(Ki)を求め、次いで、Kiの対数に負号を付けたもの(pKi)に変換した。
【0143】
上記手順を用いて、本発明の化合物がヒトセロトニン輸送体に対する親和性を有していることが見出された。例えば、上記アッセイを用いて、[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミンは、約7.48のpKiを示した。
【0144】
実施例4
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いたヒトノルエピネフリン輸送体(hNET)において活性である化合物のスクリーニング
このアッセイを用いて、[H]−ニソキセチンとの競合によりhNET輸送体に対するリガンドの親和性を決定した。上記実施例のhSERTアッセイのように、受容体を含有する膜をSPAビーズに予めカップリングさせておき、輸送体に対する適切な放射性リガンドの結合を測定した。発光は、結合している放射性リガンドの量に比例しており、結合していない放射性リガンドは、シグナルを発しなかった。
【0145】
組換えhNETを安定して発現するHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)(クローン:HEK-hNET #2)を培地(10%のFBS、300μg/mLのG418、及び2mMのL−グルタミンを含む高グルコースDMEM培地)で維持し、5%COで37℃にてインキュベートした。1〜2分間PBSを用いて培養フラスコから細胞を遊離させた。次いで、細胞を5分間1000gで遠心分離し、PBSに懸濁させた後、膜調製において用いた。
【0146】
50mMのTRIS(pH7.4)の膜調製バッファを用いて細胞膜を調製した。1本のチューブから細胞膜を調製した(合計7.5×10細胞)。Polytron(4秒間バーストさせるための定着培地)を用いて細胞をホモジナイズした。次いで、ホモジネートを15分間48,000gで遠心分離し、次いで、上清を除去し、廃棄し、ペレットを新たなバッファに再懸濁させた。2回目の遠心分離後、ペレットを再度ホモジナイズし、アッセイ中に決定された最終体積にした。典型的に、膜部分を3〜6mg/mL(w:v)に分注し、−80℃で保存した。
【0147】
シンチレーション近接アッセイのIC50/Kiを決定するために、[H]ニソキセチン放射性リガンド(Amershamカタログ番号TRK942又はPerkin Elmerカタログ番号NET1084、比活性:70〜87Ci/mmol、原液濃度:1.22e−5M、最終濃度:8.25e−9M)、及び50mMのTris−HCl、300mMのNaCl(pH7.4)バッファを使用した。連続希釈プロトコールを用いて、Beckman Biomek 2000を介して本発明の化合物を10mM〜0.1nMのFACに希釈した(10点曲線、全対数/半対数希釈)。次いで、試験化合物を移し(20μL/ウェル)、放射性リガンドを50μL/ウェルで添加した。膜及びビーズを10μg:0.7mgの比になるように調製し、1ウェル当たり0.7mgのPVT-WGA Amershamビーズ(カタログ番号RPQ0282V)を添加した。130μLの膜:ビーズ混合物をアッセイプレートに添加した。混合物を1時間室温で静置させ、次いで、一般的SPAの計数プロトコールの設定(エネルギー範囲:低、有効性モード:ノーマル、領域A:1.50−35.00、領域B:1.50−256.00、計数時間(分):0.40、バックグラウンド減算:無し、半減期補正:無し、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:無し、クロストーク低減:オフ)を用いてPackard TopCount LCSで計数した。
【0148】
試験した各化合物について阻害率(%)を計算した[(最高濃度における化合物のCPM−非特異的CPM)/合計CPM×100]。以下の式を用いて、Activity Base/Xlfitを用いる反復非線形曲線適合技術を用いて50%阻害濃度(IC50)を決定した。
【数2】


(式中、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験した化合物の濃度(M)、及びn=ヒル勾配である。)Cheng-Prusoffの方法に従って各化合物の阻害解離定数(Ki)を求め、次いで、Kiの対数に負号を付けたもの(pKi)に変換した。
【0149】
上記手順を用いて、本発明の化合物がヒトノルエピネフリン輸送体に対する親和性を有していることが見出された。例えば、上記アッセイを用いて、[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミンは、約7.81のpKiを示した。
【0150】
実施例5
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いたヒトドーパミン輸送体において活性である化合物のスクリーニング
このアッセイを用いて、[H]−バノキセリンとの競合によりドーパミン輸送体に対するリガンドの親和性を決定した。
【0151】
組換えhDATを安定して発現するHEK−293細胞(Tatsumi et al., Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を培地(10%のFBS、300μg/mLのG418、及び2mMのL−グルタミンを含む高グルコースDMEM培地)で維持し、5%COで37℃にてインキュベートした。白色の不透明なCell-Takでコーティングされているた96ウェルプレート上に約30,000細胞/ウェル(PBS中)を配置することにより、実験の4時間前に細胞をプレーティングした。ELx405プレート洗浄器を使用して、細胞プレートから余分なバッファを吸引した。
【0152】
シンチレーション近接アッセイのIC50/Kiを決定するために、[H]バノキセリン(GBR 12909)放射性リガンド(比活性:59Ci/mmol、原液濃度:400nM)、及び50mMのTris−HCl、300mMのNaCl(pH7.4)バッファを使用した。10点希釈プロトコールを用いて、Beckman Biomek 2000を介して本発明の化合物を10mM〜0.1nMのFACに希釈した(10点曲線、全対数/半対数希釈)。混合物を30分間室温で静置させ、次いで、一般的なSPAの計数プロトコールの設定(計数時間(分):0.40、バックグラウンド減算:無し、半減期補正:無し、クエンチインジケータ:tSIS、プレートマップブランク減算:無し、クロストーク低減:オフ)を用いてPackard TopCount LCSで計数した。
【0153】
試験した各化合物について阻害率(%)を計算した[(最高濃度における化合物のCPM−非特異的CPM)/合計CPM×100]。以下の式を用いて、Activity Base/Xlfitを用いる反復非線形曲線適合技術を用いて50%阻害濃度(IC50)を決定した。
【数3】


(式中、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験した化合物の濃度(M)、及びn=ヒル勾配である。)Cheng-Prusoffの方法に従って各化合物の阻害解離定数(Ki)を求め、次いで、Kiの対数に負号を付けたもの(pKi)に変換した。
【0154】
上記手順を用いて、本発明の化合物がヒトドーパミン輸送体に対する親和性を有していることが見出された。例えば、上記アッセイを用いて、[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミンは、約7.85のpKiを示した。
【0155】
本発明はその特定の態様を参照して記載されたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行ってもよく、また、等価物に置換してもよいことを当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、物質、組成物、方法、方法工程又は工程を本発明の客観的趣旨及び範囲に適応させるために多くの変更を行ってもよい。このような変更は全て、本明細書に添付される特許請求の範囲の範囲内であることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化6】


で表される化合物又はその薬学的に許容しうる塩
[式中、
m及びnは、それぞれ独立して、0〜3であり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ、又はハロ−C1−6アルキルであり;
は、水素又はC1−6アルキルであり;
は、水素、ハロ、C1−6アルキル、−C(O)−R、又は−C(O)−NR(式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素又はC1−6アルキルである)である]。
【請求項2】
mが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが0である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
がC1−6アルキルである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がメチルである、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
がメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、又はトリフルオロメチルである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がメチル、メトキシ、フルオロ、クロロ、又はトリフルオロメチルである、請求項1〜6のいずれか記載の化合物。
【請求項8】
が水素である、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が式II:
【化7】


(式中、m、n、R、R、R、R、及びRは、請求項1〜9のいずれかに記載の通りである)
で表される、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
[1−(1H−インドール−5−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−4−イル]−メチル−アミン又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
治療活性物質として使用するための請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
抑鬱、不安、又はこれら両方を治療的及び/又は予防的に処置するための請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
抑鬱、不安、又はこれら両方を治療的及び/又は予防的に処置するための請求項1〜10のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
抑鬱、不安、又はこれら両方を治療的及び/又は予防的に処置する薬剤を製造するための請求項1〜10のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載の化合物と薬学的に許容しうる担体とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2013−512876(P2013−512876A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541481(P2012−541481)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068607
【国際公開番号】WO2011/067273
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】