説明

モノアミン再取り込み阻害薬としてのベンゾアゼピン誘導体

式(I)の化合物;又はその薬剤学的に許容しうる塩、溶媒和物若しくはプロドラッグ(ここで、Ar、R及びRは、本明細書に定義される)。また、薬剤組成物、この化合物の製造方法、及びモノアミン再取り込み阻害薬介在性疾患の治療のための本化合物の使用方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾアゼピン化合物及び同化合物の使用方法に関する。詳細には、本発明の化合物は、モノアミン再取り込み阻害薬に関連する疾患の治療に有用である。
【0002】
本発明は、式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
[式中、
Arは、場合により置換されているインドリルであり;
は、水素;又はC1−6アルキルであり;そして
は、水素;C1−6アルキル;C1−6アルコキシ;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;シアノ;アミノ;C1−6アルキルアミノ;ジ−C1−6アルキルアミノ;ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロフラニル(それぞれ場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル;ピペラジニル−C1−6アルキル、ピペリジニル−C1−6アルキル、ピロリジニル−C1−6アルキル、モルホリニル−C1−6アルキル、チオモルホリニル−C1−6アルキル、テトラヒドロピラニル−C1−6アルキル及びテトラヒドロフラニル−C1−6アルキル(それぞれのヘテロシクリル部分が場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル−C1−6アルキル;−(CH−C(O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−C(O)−OR;−NR−C(O)−R;−NR−SO−R;−O−C(O)−R;−O−C(O)−NR;−NR−C(O)−NR;又は−NR−C(O)−ORである(ここで、mは、0又は1であり、そしてR、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルである)]で示される化合物に関する。
【0005】
また提供されるのは、対象化合物の製造方法、対象化合物を含む薬剤組成物、及びモノアミン再取り込み阻害薬介在性疾患の治療のための対象化合物の使用方法である。
【0006】
モノアミン欠乏は、長い間、鬱病、抗不安及び他の障害に関連づけられていた(例えば、Charneyら, J. Clin. Psychiatry (1998) 59, 1-14;Delgadoら, J. Clin. Psychiatry (2000) 67, 7-11;Resserら, Depress. Anxiety (2000) 12 (Suppl 1) 2-19;及びHirschfeldら, J. Clin. Psychiatry (2000) 61, 4-6を参照のこと)。詳細には、セロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン)及びノルエピネフリンは、気分調節において重要な役割を演じる主要な調節性の神経伝達物質として認識されている。フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、シタロプラム及びエスシタロプラムのような選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、鬱病の治療法を提供した(Masandら, Harv. Rev. Psychiatry (1999) 7, 69-84)。レボキセチン、アトモキセチン、デシプラミン及びノルトリプチリンのようなノルアドレナリン又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬は、鬱病、注意欠陥及び多動性障害に対して有効な治療法を提供した(Scatesら, Ann. Pharmacother. (2000) 34, 1302-1312;Tatsumiら, Eur. J. Pharmacol. (1997) 340, 249-258)。
【0007】
セロトニン及びノルエピネフリン神経伝達の増強は、セロトニン又はノルエピネフリン神経伝達単独の増強に比較して、鬱病及び抗不安障害の薬物療法において相乗的であると認識されている(Thaseら, Br. J. Psychiatry (2001) 178, 234, 241;Tranら, J. Clin. Psychopharmacology (2003) 23, 78-86)。デュロキセチン、ミルナシプラン及びベンラファキシンのような、セロトニンとノルエピネフリン両方の二重再取り込み阻害薬は、鬱病及び抗不安障害の治療に関して現在開発中である(Mallinckrodtら, J. Clin. Psychiatry (2003) 5(1) 19-28;Bymasterら, Expert Opin. Investig. Drugs (2003) 12(4) 531-543)。セロトニンとノルエピネフリンとの二重再取り込み阻害薬はまた、統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物嗜癖、認知障害、アルツハイマー病、強迫的行動、注意欠陥障害、パニック発作、社会恐怖症、摂食障害(肥満、食欲不振、大食症及び「過食症」など)、ストレス、高血糖症、高脂質血症、インスリン非依存型糖尿病、てんかんのような発作性疾患の治療可能性を、並びに脳卒中、脳外傷、脳虚血、頭部損傷及び出血に起因する神経損傷に関連する症状の治療可能性を提示する。セロトニンとノルエピネフリンとの二重再取り込み阻害薬はまた、尿路の障害及び病状の、並びに疼痛及び炎症の治療可能性を提示する。
【0008】
更に最近になって、ノルエピネフリン、セロトニン、及びドーパミンの再取り込みを阻害する「三重再取り込み」阻害薬(「広域抗鬱薬」)が、鬱病及び他のCNS適応症の治療に有用であると認められている(Beerら, J. Clinical Pharmacology (2004) 44:1360-1367;Skolnickら, Eur J Pharmacol. (2003) Feb 14; 461(2-3):99-104)。
【0009】
したがってセロトニン再取り込み阻害薬、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ドーパミン再取り込み阻害薬、並びに/あるいはセロトニン、ノルエピネフリン及び/又はドーパミンの二重再取り込み阻害薬、あるいはノルエピネフリン、セロトニン、及びドーパミンの三重再取り込み阻害薬として有効な化合物、更にはこのような化合物の製造方法、並びに鬱病、抗不安、尿生殖器、疼痛、及び他の障害の治療におけるこのような化合物の使用方法に対するニーズが存在している。
【0010】
定義
特に断りない限り、明細書及び請求の範囲を含む本出願において使用される以下の用語は、後述の定義を有する。本明細書及び添付の請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、特に明らかに断りない限り複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0011】
「アゴニスト」とは、別の化合物又は受容体部位の活性を増強する化合物のことをいう。
【0012】
「アルキル」は、炭素及び水素原子だけからなり、1〜12個の炭素原子を有する、一価の直鎖又は分岐の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子のアルキル基、即ち、C−Cアルキルのことをいう。アルキル基の例は、特に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどを含む。「分岐アルキル」は、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルを意味する。
【0013】
「アルキレン」は、1〜6個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜6個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素ラジカル、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0014】
「アルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のアルキル部分である)の部分を意味する。アルコキシ部分の例は、特に限定されないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシなどを含む。
【0015】
「アルコキシアルキル」は、式:−R’−R”(式中、R’は、本明細書中と同義のアルキレンであり、そしてR”は、アルコキシである)の部分を意味する。典型的なアルコキシアルキル基は、一例として、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、1−メチル−2−メトキシエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル、及び1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピルを含む。
【0016】
「アルキルカルボニル」は、式:−R’−R”(式中、R’は、カルボニル、即ち、−C(O)−R”であり、そしてR”は、本明細書中と同義のアルキルである)の部分を意味する。
【0017】
「アルキルスルホニル」は、式:−R’−R”(式中、R’は、−SO−であり、そしてR”は、本明細書中と同義のアルキルである)の部分を意味する。
【0018】
「アルキルスルホニルアルキル」は、式:R−SO−R−(式中、Rは、本明細書中と同義のアルキルであり、そしてRは、アルキレンである)の部分を意味する。典型的なアルキルスルホニルアルキル基は、一例として、3−メタンスルホニルプロピル、2−メタンスルホニルエチル、2−メタンスルホニルプロピルなどを含む。
【0019】
「アルキルスルホニルオキシ」は、式:R−SO−O−(式中、Rは、本明細書中と同義のアルキルである)の部分を意味する。
【0020】
「アンタゴニスト」とは、別の化合物又は受容体部位の作用を弱めるか又は妨げる化合物のことをいう。
【0021】
「アリール」は、単環、二環又は三環式芳香環よりなる、一価の環状芳香族炭化水素部分を意味する。このアリール基は、場合により本明細書中と同義のとおり置換されていてもよい。アリール部分の例は、特に限定されないが、場合により置換されているフェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペリジニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど(これらの部分水素化誘導体を含む)を含む。
【0022】
「アリールオキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のアリール部分である)の部分を意味する。
【0023】
互換可能に使用することができる、「アリールアルキル」及び「アラルキル」は、ラジカル:−R(ここで、Rは、本明細書中と同義のアルキレン基であり、そしてRは、アリール基である)を意味し;例えば、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどのようなフェニルアルキル類は、アリールアルキルの例である。
【0024】
「アラルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のアラルキル部分である)の部分を意味する。
【0025】
「シアノアルキル」は、式:−R’−R”(式中、R’は、本明細書中と同義のアルキレンであり、そしてR”は、シアノ又はニトリルである)の部分を意味する。
【0026】
「シクロアルキル」は、単環又は二環式環よりなる、一価の飽和炭素環部分を意味する。シクロアルキルは、場合により1個以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、各置換基は、特に断りない限り、独立にヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、又はジアルキルアミノである。シクロアルキル部分の例は、特に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなど(これらの部分不飽和誘導体を含む)を含む。
【0027】
互換可能に使用することができる、「シクロアルキルオキシ」及び「シクロアルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のシクロアルキルである)の基を意味する。典型的なシクロアルキルオキシは、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含む。
【0028】
「シクロアルキルアルキル」は、式:−R’−R”(式中、R’は、本明細書中と同義のアルキレンであり、そしてR”は、シクロアルキルである)の部分を意味する。
【0029】
互換可能に使用することができる、「シクロアルキルアルキルオキシ」及び「シクロアルキルアルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のシクロアルキルアルキルである)の基を意味する。典型的なシクロアルキルアルキルオキシは、シクロプロピルメトキシ、シクロブチルメトキシ、シクロペンチルメトキシ、シクロヘキシルメトキシなどを含む。
【0030】
「ヘテロアルキル」は、このヘテロアルキルラジカルの結合点が炭素原子を介するという了解の下で、1個、2個又は3個の水素原子が、−OR、−NR、及び−S(O)(ここで、nは、0〜2の整数である)よりなる群から独立に選択される置換基で置換されている、分岐C−C−アルキルを含む、本明細書中と同義のアルキルラジカルを意味する(ここで、Rは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり;R及びRは、相互に独立に、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり;そしてnが0であるとき、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はシクロアルキルアルキルであり、そしてnが1又は2であるとき、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、又はジアルキルアミノである)。代表例は、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルなどを含む。ヘテロアルキルの一部又は好ましいヘテロアルキルは、本明細書中に前述のとおりのハロアルキル及びヒドロキシアルキルである。
【0031】
「ヘテロアリール」は、このヘテロアリールラジカルの結合点が芳香環上にあるという了解の下で、N、O、又はSから選択される1個、2個、又は3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香環を有する、5〜12個の環原子の単環、二環又は三環式ラジカルを意味する。このヘテロアリール環は、場合により本明細書中と同義のとおり置換されていてもよい。ヘテロアリール部分の例は、特に限定されないが、場合により置換されているイミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニルなど(これらの部分水素化誘導体を含む)を含む。
【0032】
互換可能に使用することができる、「ヘテロアリールアルキル」及び「ヘテロアラルキル」は、ラジカル:−R(ここで、Rは、本明細書中と同義のアルキレン基であり、そしてRは、ヘテロアリール基である)を意味する。
【0033】
互換可能に使用することができる、「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、置換基のフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードのことをいう。
【0034】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が、同一又は異なるハロゲンで置換されている、本明細書中と同義のアルキルを意味する。典型的なハロアルキルは、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば、−CF)などを含む。
【0035】
「ハロアルコキシ」は、式:−OR(式中、Rは、本明細書中と同義のハロアルキル部分である)の部分を意味する。ハロアルコキシ部分の例は、特に限定されないが、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシなどを含む。
【0036】
「ヒドロキシアルキル」とは、ヘテロアルキルの一部のことをいい、かつ詳細には、同じ炭素原子が1個を超えるヒドロキシ基を持たないという条件で、1個以上、好ましくは1個、2個又は3個のヒドロキシ基で置換されている、本明細書中と同義のアルキル部分のことをいう。代表例は、特に限定されないが、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルを含む。
【0037】
「ヘテロシクロアミノ」は、少なくとも1個の環原子が、N、NH又はN−アルキルであり、残りの環原子がアルキレン基を形成する、飽和環を意味する。
【0038】
「ヘテロシクリル」は、1個、2個、又は3個若しくは4個のヘテロ原子(窒素、酸素又は硫黄から選択される)を組み込んでいる、1〜3個の環よりなる、一価飽和部分を意味する。このヘテロシクリル環は、場合により本明細書中と同義のとおり置換されていてもよい。ヘテロシクリル部分の例は、特に限定されないが、場合により置換されているピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどを含む。
【0039】
「ヘテロシクリルアルキル」は、−R’−R”(ここで、R’は、本明細書中と同義のアルキレンであり、そしてR”は、ヘテロシクリルである)を意味する。
【0040】
「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」[インドリル(インドール−1−イル、インドール−2−イル及びインドール−3−イルなど)、2,3−ジヒドロインドリル(2,3−ジヒドロインドール−1−イル、2,3−ジヒドロインドール−2−イル及び2,3−ジヒドロインドール−3−イルなど)、インダゾリル(インダゾール−1−イル、インダゾール−2−イル及びインダゾール−3−イルなど)、ベンゾイミダゾリル(ベンゾイミダゾール−1−イル及びベンゾイミダゾール−2−イルなど)、ベンゾフラニル(ベンゾフラン−2−イル及びベンゾフラン−3−イルなど)、ベンゾチオフェニル(ベンゾチオフェン−2−イル及びベンゾチオフェン−3−イルなど)、ベンゾオキサゾール−2−イル、ベンゾチアゾール−2−イル、チエニル、フラニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びキノリニルを含む]又は「ヘテロシクリル」と関連して使用されるとき、「場合により置換されている」は、場合により、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヘテロアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ベンジルオキシ、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルコキシ、アルキルスルホニルオキシ、場合により置換されているチエニル、場合により置換されているピラゾリル、場合により置換されているピリジニル、モルホリノカルボニル、−(CH−S(O);−(CH−NR;−(CH−C(=O)−NR;−(CH−C(=O)−C(=O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−N(R)−C(=O)−R;−(CH−C(=O)−R;又は−(CH−N(R)−SO−R[ここで、qは、0又は1であり、rは、0〜2であり、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素又はアルキルであり、そして各Rは、独立に、水素、アルキル、ヒドロキシ、又はアルコキシである]から選択される、1〜4個の置換基、好ましくは1個又は2個の置換基で独立に置換されているアリール、フェニル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルを意味する。好ましくは、「場合により置換されている」は、場合により、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ、ヘテロアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ベンジルオキシ、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルコキシ、アルキルスルホニルオキシ、チエニル、ピラゾリル、ピリジニル、モルホリノカルボニル、−(CH−S(O);−(CH−NR;−(CH−C(=O)−NR;−(CH−C(=O)−C(=O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−N(R)−C(=O)−R;−(CH−C(=O)−R;又は−(CH−N(R)−SO−R[ここで、qは、0又は1であり、rは、0〜2であり、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素又はアルキルであり、そして各Rは、独立に、水素、アルキル、ヒドロキシ、又はアルコキシである]から選択される、1〜4個の置換基、好ましくは1個又は2個の置換基で独立に置換されているアリール、フェニル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルを意味する。
【0041】
「脱離基」は、合成有機化学において従来からそれに関連した意味を持つ基、即ち、置換反応条件下で置換可能な原子又は基を意味する。脱離基の例は、特に限定されないが、ハロゲン、アルカン−又はアリーレンスルホニルオキシ(メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、及びチエニルオキシなど)、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどを含む。
【0042】
「モジュレーター」は、標的と相互作用する分子を意味する。この相互作用は、特に限定されないが、本明細書中と同義のアゴニスト、アンタゴニストなどを含む。
【0043】
「場合による」又は「場合により」は、続いて記述される事象又は状況が、必ずしも存在しなくてもよいこと、そしてこの記述が、その事象又は状況が存在する場合と存在しない場合とを含むことを意味する。
【0044】
「疾患」及び「病状」は、任意の疾患、症状、症候、障害又は適応症を意味する。
【0045】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、この溶媒が、これと併せて記述される反応の条件下で不活性であることを意味し、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどを含む。特に断りない限り、本発明の反応に使用される溶媒は、不活性溶媒である。
【0046】
「薬剤学的に許容しうる」は、一般に安全で非毒性であり、かつ生物学的にも他の意味でも不適切でない薬剤組成物を製造するのに有用であることを意味し、そしてヒトの薬剤学的使用だけでなく獣医学的使用にも許容しうることを含む。
【0047】
ある化合物の「薬剤学的に許容しうる塩」は、本明細書中と同義のとおり薬剤学的に許容しうるものであり、そして親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩は、以下を含む:
無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)と形成されるか;又は有機酸(酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸など)と形成される酸付加塩;あるいは
親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンにより置換されるか;又は有機若しくは無機塩基と配位するとき形成される塩。許容しうる有機塩基は、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどを含む。許容しうる無機塩基は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含む。
【0048】
好ましい薬剤学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、及びマグネシウムから形成される塩である。
【0049】
当然のことながら、薬剤学的に許容しうる塩への全ての言及は、同酸付加塩の、本明細書中と同義の溶媒付加形(溶媒和物)又は結晶形(多形)を含む。
【0050】
本明細書において互換可能に使用することができる、「プロ−ドラッグ」及び「プロドラッグ」という用語は、このようなプロドラッグが哺乳動物対象に投与されると、インビボで式(I)の活性な親薬物を放出する、任意の化合物のことをいう。式(I)の化合物のプロドラッグは、式(I)の化合物中に存在する1個以上の官能基を修飾する(この修飾が、インビボで切断されることにより、親化合物を放出できるように)ことにより調製される。プロドラッグは、式(I)の化合物中のヒドロキシ、アミノ、又はスルフヒドリル基が、任意の基(インビボで切断されることにより、それぞれ、遊離のヒドロキシル、アミノ、又はスルフヒドリル基を再生できる)に結合している、式(I)の化合物を含む。プロドラッグの例は、特に限定されないが、式(I)の化合物中のヒドロキシ官能基のエステル類(例えば、酢酸、ギ酸、及び安息香酸誘導体)、カルバマート類(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基及びエナミノン類、式(I)の化合物中のケトン及びアルデヒド官能基のオキシム類、アセタール類、ケタール類及びエノールエステル類などを含む[Bundegaard, H.「プロドラッグのデザイン(Design of Prodrugs)」, p1-92, Elsevier, ニューヨーク-オックスフォード (1985)などを参照のこと]。
【0051】
「保護基("protective group" or "protecting group")」は、合成化学において従来からそれに関連した意味で、多官能基化合物中の1つの反応部位を選択的にブロックする(ある化学反応を、別の非保護反応部位で選択的に行うことができるように)基を意味する。本発明のあるプロセスでは、反応物に存在する反応性窒素及び/又は酸素原子をブロックするのに保護基に頼っている。例えば、「アミノ保護基」及び「窒素保護基」という用語は、本明細書では互換可能に使用され、合成中の不適切な反応に対して窒素原子を保護することを目的とした有機基のことをいう。典型的な窒素保護基は、特に限定されないが、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)などを含む。熟練者であれば、脱離の容易さのため、及び続く反応に耐える能力のための基の選択方法が分かるだろう。
【0052】
「溶媒和物」は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含む、溶媒付加形を意味する。幾つかの化合物は、結晶性の固体状態で固定モル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、そして溶媒和物を形成する。溶媒が水ならば、形成される溶媒和物は、水和物であり、溶媒がアルコールであるとき、形成される溶媒和物は、アルコラートである。水和物は、水がその分子状態をHOとして保持する、1分子以上の水と物質の1つとを合わせることにより形成されるが、このような組合せは1種以上の水和物を形成することができる。
【0053】
「対象」は、哺乳動物及び非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、特に限定されないが、ヒト;チンパンジーや他の類人猿のような非ヒト霊長類及びサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタのような家畜(農業用);ウサギ、イヌ、及びネコのような家畜;ラット、マウス、及びモルモットのような齧歯類を含む実験室動物;などを含む、哺乳綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例は、特に限定されないが、鳥類などを含む。「対象」という用語は、特定の年齢又は性別を意味するものではない。
【0054】
セロトニン及びノルエピネフリン神経伝達に関連する「病状」は、鬱病及び抗不安障害、更には統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物嗜癖、認知障害、アルツハイマー病、ADHDのような注意欠陥障害、強迫的行動、パニック発作、社会恐怖症、摂食障害(肥満、食欲不振、大食症及び「過食症」など)、ストレス、高血糖症、高脂質血症、インスリン非依存型糖尿病、てんかんのような発作性疾患を、並びに脳卒中、脳外傷、脳虚血、頭部損傷、出血に起因する神経損傷に関連する症状、及び尿路の障害及び病状の治療を含む。
【0055】
本明細書において使用されるとき「鬱病」は、特に限定されないが、大鬱病、長期抑圧、気分変調;悲しみ、絶望、落胆、「憂鬱」、メランコリーの感情、低い自尊心、罪及び自責の感情を特徴とする抑鬱気分の精神状態;人との接触の回避、並びに摂食及び睡眠障害のような身体症状を含む。
【0056】
本明細書において使用されるとき「不安」は、特に限定されないが、非現実的、想像上の又は誇大な危険又は危害の予期に対する精神生理学的反応に伴う、不愉快又は望ましくない情動状態、並びにこれに付随する、心拍数増加、呼吸数の変化、発汗、震え、虚弱及び疲労のような身体反応、切迫した危険、無力感、心配及び緊張の感情を含む。
【0057】
「尿路の症候」と互換可能に使用される「尿路の障害」又は「尿路疾患」は、尿路における病的変化を意味する。尿路障害の例は、特に限定されないが、緊張性尿失禁、切迫性尿失禁、良性前立腺肥大症(BPH)、前立腺炎、排尿筋過反射、排尿開口部閉塞、頻尿、夜間頻尿、尿意逼迫、過活動膀胱、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺痛、膀胱炎、特発性膀胱過敏症などを含む。
【0058】
「尿路の症候」と互換可能に使用される「尿路に関連する病状」又は「尿路病状」又は「尿路疾患」は、尿路における病的変化、又は蓄尿若しくは排尿障害を引き起こす膀胱平滑筋若しくはその神経支配の機能不全を意味する。尿路の症候は、特に限定されないが、過活動膀胱(排尿筋活動高進としても知られている)、排尿開口部閉塞、排尿開口部機能不全、及び骨盤過敏症を含む。
【0059】
「過活動膀胱」又は「排尿筋活動高進」は、特に限定されないが、切迫性、頻度、膀胱容量の変化、尿失禁、尿意閾値、不安定膀胱収縮、括約筋痙縮、排尿筋過反射(神経性膀胱)、排尿筋不安定性などとして症候的に現れる変化を含む。
【0060】
「排尿開口部閉塞」は、特に限定されないが、良性前立腺肥大症(BPH)、尿道狭窄症、腫瘍、低流量、排尿開始困難、切迫性、恥骨上痛などを含む。
【0061】
「排尿開口部機能不全」は、特に限定されないが、尿道の過可動性、内因性括約筋欠損、混合性尿失禁、緊張性尿失禁などを含む。
【0062】
「骨盤過敏症」は、特に限定されないが、骨盤痛、間質(細胞)性膀胱炎、前立腺痛、前立腺炎、外陰部痛、尿道炎、精巣痛、過活動膀胱などを含む。
【0063】
「疼痛」は、特殊な神経終末の刺激に起因する、不快、苦痛、又は苦悶の、多かれ少なかれ限局性の感覚を意味する。疼痛には、特に限定されないが、電撃痛、幻想痛、ずきずきする痛み、急性疼痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、複合性局所疼痛、神経痛、ニューロパシーなどを含む、多くのタイプが存在する(ドーランド図解医学辞典(Dorland's Illustrated Medical Dictionary), 第28版, W.B. Saunders Company, フィラデルフィア, ペンシルバニア州)。疼痛の治療の目的は、治療により対象が感知する疼痛の重篤度を減少させることである。
【0064】
「神経因性疼痛」は、末梢神経系における機能障害及び/又は病的変化、更には非炎症病変部に起因する疼痛を意味する。神経因性疼痛の例は、特に限定されないが、温熱性又は機械性痛覚過敏、温熱性又は機械性異痛、糖尿病性疼痛、エントラップメント疼痛などを含む。
【0065】
「治療有効量」は、病状を治療するために対象に投与されるとき、このような病状の治療を達成するのに充分である、化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、治療される病状、重篤度又は治療される疾患、対象の年齢及び相対健康度、投与の経路及び剤形、担当医又は獣医の判断、並びに他の要因に応じて変化しよう。
【0066】
可変部に関するとき「上に定義されるもの」及び「本明細書に定義されるもの」という用語は、参照することにより可変部の広い定義を、更には好ましい、更に好ましい及び最も好ましい定義を(もしあれば)組み込む。
【0067】
病状の「治療処置(treating)」又は「治療(treatment)」は、以下を含む:
(i) 病状を予防すること、即ち、病状に曝露されているか、又は病状の素因があるが、まだ病状に直面していないか、又は病状の症候を示していない対象において、その病状の臨床症候を発現させないこと。
(ii) 病状を阻害すること、即ち、病状又はその臨床症候の進展を止めること、あるいは
(iii) 病状を緩和すること、即ち、病状又はその臨床症候を一時的又は永久的に緩解させること。
【0068】
化学反応に関するとき「処理」、「接触」及び「反応」という用語は、適切な条件下で2つ以上の試薬を添加又は混合することを意味し、これによって指示及び/又は所望の生成物が生成する。当然のことながら、指示及び/又は所望の生成物が生成する反応は、必ずしも最初に加えた2つの試薬の組合せから直接生じるとは限らない、即ち、最終的に指示及び/又は所望の生成物の形成に至る、混合物中に生成する1つ以上の中間体が存在するかもしれない。
【0069】
命名法及び構造
一般に、本出願において使用される命名法は、IUPACの体系的命名法の生成のためのバイルシュタイン研究所(Beilstein Institute)のコンピュータ化システムである、オートノム(AUTONOM)(商標)v.4.0に基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を用いて作成した。本明細書の構造中の炭素、酸素又は窒素原子上に出現する任意のオープン結合価は、水素原子の存在を示している。
【0070】
ある化学構造中にキラル炭素が存在するときはいつも、その構造により、そのキラル炭素に関連する全ての立体異性体が包含されることが意図されている。
【0071】
本明細書において特定される全ての特許及び刊行物は、その全体が引用例として本明細書に取り込まれる。
【0072】
本発明は、式(I):
【0073】
【化2】

【0074】
[式中、
Arは、場合により置換されているインドリルであり;
は、水素;又はC1−6アルキルであり;そして
は、水素;C1−6アルキル;C1−6アルコキシ;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;シアノ;アミノ;C1−6アルキルアミノ;ジ−C1−6アルキルアミノ;ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロフラニル(それぞれ場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル;ピペラジニル−C1−6アルキル、ピペリジニル−C1−6アルキル、ピロリジニル−C1−6アルキル、モルホリニル−C1−6アルキル、チオモルホリニル−C1−6アルキル、テトラヒドロピラニル−C1−6アルキル及びテトラヒドロフラニル−C1−6アルキル(それぞれのヘテロシクリル部分が場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル−C1−6アルキル;−(CH−C(O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−C(O)−OR;−NR−C(O)−R;−NR−SO−R;−O−C(O)−R;−O−C(O)−NR;−NR−C(O)−NR;又は−NR−C(O)−ORである(ここで、mは、0又は1であり、そしてR、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルである)]で示される化合物を提供する。
【0075】
当然のことながら、本発明の範囲は、存在しうる種々の異性体、例えば、種々の光学異性体だけでなく、生成しうる異性体の種々の混合物をも包含する。更には、本発明の範囲はまた、式(I)の化合物の溶媒和物及び塩をも包含する。
【0076】
式(I)のある実施態様において、Arは、場合により置換されているインドール−5−イルである。
【0077】
式(I)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0078】
式(I)のある実施態様において、Rは、C1−6アルキルである。
【0079】
式(I)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0080】
式(I)のある実施態様において、本化合物は、式(Ia)又は(Ib):
【0081】
【化3】

【0082】
[式中、Ar、R及びRは、本明細書中と同義である]で示されてもよい。
【0083】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Arは、場合により置換されているインドール−5−イルである。
【0084】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0085】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Rは、C1−6アルキルである。
【0086】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0087】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Arは、場合により置換されているインドール−5−イルであり、そしてRは、水素である。
【0088】
式(Ia)又は式(Ib)のある実施態様において、Arは、場合により置換されているインドール−5−イルであり、Rは、水素であり、そしてRは、水素である。
【0089】
本発明のある実施態様において、対象化合物は、式(II):
【0090】
【化4】

【0091】
[式中、
は、水素;C1−6アルキル;C1−6アルコキシ;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;又はシアノであり;
は、水素;C1−6アルキル;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;−C(O)−NR(ここで、R及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルである);C1−6アルキルスルホニル;又はシアノであり;
は、水素;又はC1−6アルキルであり;そして
及びRは、本明細書中と同義である]で示されてもよい。
【0092】
これら式(II)の実施態様の1つにおいて、Rは、水素又はC1−6−アルキルであり、そしてRは、水素である。
【0093】
本発明のある実施態様において、対象化合物は、式(IIa)又は(IIb):
【0094】
【化5】

【0095】
[式中、R、R、R、R及びRは、本明細書中と同義である]で示されてもよい。
【0096】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0097】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、C1−6アルキルである。
【0098】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0099】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0100】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0101】
式(II)、式(IIa)又は式(IIb)のある実施態様において、Rは、水素である。
【0102】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R又はRのいずれかが、アルキルであるか、又はアルキル部分を含むならば、このようなアルキルは、好ましくは低級アルキル、即ち、C−Cアルキル、そして更に好ましくはC−Cアルキルである。
【0103】
合成法
本発明の化合物は、以下に示されかつ後述される具体的合成反応スキームに描かれる、種々の方法により製造することができる。
【0104】
これらの化合物を製造するのに使用される出発物質及び試薬は、一般に、アルドリッチ化学(Aldrich Chemical Co.)のような供給業者から入手できるか、又はFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: ニューヨーク, 1991, 第1-15巻;Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, 第1-5巻と補遺;及びOrganic Reactions, Wiley & Sons: ニューヨーク, 1991, 第1-40巻のような参考文献に記載される手順により当業者には既知の方法によって調製されるかのいずれかである。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができる幾つかの方法を単に説明するものであり、これらの合成反応スキームには種々の改変を加えることができ、本出願に含まれる開示を参照した当業者に示唆を与えるものである。
【0105】
合成反応スキームの出発物質及び中間体は、必要に応じて、特に限定されないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含む従来法を用いて単離及び精製することができる。このような物質は、物理定数及びスペクトルデータを含む従来法を用いて特性決定することができる。
【0106】
特に断りない限り、本明細書に記述される反応は、好ましくは不活性雰囲気下で大気圧で約−78℃〜約150℃、更に好ましくは約0℃〜約125℃の反応温度範囲で、そして最も好ましくかつ便利には約室温(又は周囲温度)、例えば、約20℃で行われる。
【0107】
以下のスキームAは、本発明の化合物を調製するのに使用できる1つの合成手順を説明している[ここで、Ar及びRは、本明細書中と同義である]。
【0108】
【化6】

【0109】
スキームAの工程1では、ヒドロキシ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体のようなロジウム(I)触媒又は他の適切な触媒を用いて、ケイ皮酸化合物(a)をボロン酸アリール化合物(b)とカップリングさせることにより、アリールプロピルエステル化合物(c)が得られる。化合物(a)は、対応するベンズアルデヒドから、ベンズアルデヒドと(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸メチルとの反応により調製することができる。ボロン酸アリール化合物(b)は、例えば、ボロン酸インドリル、ボロン酸インダゾリル、ボロン酸ベンゾフラニル、ボロン酸ベンゾチオフェニル又は他のボロン酸アリール若しくはヘテロアリール(それぞれが、場合により本明細書中と同義のとおり置換されていてもよい)を含んでいてよい。
【0110】
工程2における還元剤での化合物(c)の処理によって、ニトリル基の還元と環化とが起こり、ベンゾアゼピノン化合物(d)が生成する。この選択的還元には、水素化ホウ素ナトリウムを含む種々の還元剤が適している。工程2の反応は、ピナコールの存在下で実施してもよい。
【0111】
工程3では、ベンゾアゼピノン化合物(d)のカルボニル基がメチレンに還元されて、ベンゾアゼピン化合物(e)が得られる。この反応は、極性非プロトン性溶媒条件下で水素化アルミニウムリチウムを用いて達成することができる。化合物(e)は、本発明の式(I)の化合物である。
【0112】
スキームAの手順には多数の変法が可能である。シアノ化合物(c)は、例えば、ベンジルアミン化合物(図示せず)に還元することができ、次にこれが環化される。化合物(e)のアミン基は、Rがアルキルである本発明の実施態様には、次いでアルキル化することができる。このアルキル化は、式:R−C(O)H(ここで、Rは、本明細書に上記と同義である)のアルデヒドと、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤での還元的アミノ化を介して実施することができる。溶媒としては、不活性溶媒、例えば、1,2−ジクロロエタンを使用することができる。化合物(e)は、適切なクロマトグラフィー法を用いてエナンチオマーに分割することができる。他の変法は、本開示を再検討すれば当業者であれば示唆を受けるだろう。
【0113】
本発明の化合物を製造するための詳細情報は、以下の実施例の項に記述される。
【0114】
本発明の化合物は、セロトニン神経伝達、ノルエピネフリン神経伝達及び/又はドーパミン神経伝達に関連する疾患又は症状の治療に使用することができる。このような疾患及び症状は、鬱病及び抗不安障害、更には統合失調症及び他の精神病、ジスキネジア、薬物嗜癖、認知障害、アルツハイマー病、ADHDのような注意欠陥障害、強迫的行動、パニック発作、社会恐怖症、摂食障害(肥満症、食欲不振、大食症及び「過食症」など)、ストレス、高血糖症、高脂質血症、インスリン非依存型糖尿病、てんかんのような発作性障害を含み、そして脳卒中、脳外傷、脳虚血、頭部損傷、及び出血に起因する神経損傷に関連する症状の治療を含む。
【0115】
本発明の化合物はまた、緊張性尿失禁、切迫性尿失禁、良性前立腺肥大症(BPH)、前立腺炎、排尿筋過反射、排尿開口部閉塞、頻尿、夜間頻尿、尿意逼迫、過活動膀胱、骨盤過敏症、尿道炎、前立腺痛、膀胱炎、特発性膀胱過敏症のような、尿路の障害及び病状の治療に使用することができる。
【0116】
本発明の化合物はまた、インビボの抗炎症及び/又は鎮痛特性を持つため、特に限定されないが、神経因性疼痛、炎症性疼痛、術後疼痛、内臓痛、歯痛、月経前痛、中枢性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛又は群発頭痛、神経損傷、神経炎、神経痛、中毒、虚血性損傷、間質性膀胱炎、癌疼痛、ウイルス性、寄生性又は細菌性感染症、外傷後損傷(骨折及びスポーツ外傷を含む)、及び過敏性腸症候群のような機能性腸障害に関連する疼痛を含む、多種多様な原因に由来する疼痛症状に関連する病状の治療における有用性を見い出すことが期待される。
【0117】
投与及び薬剤組成物
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、又は個々の異性体、異性体のラセミ若しくは非ラセミ混合物、又はこれらの薬剤学的に許容しうる塩若しくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬剤学的に許容しうる担体と、並びに場合により他の治療用及び/又は予防用成分と一緒に含む、薬剤組成物を含む。
【0118】
一般に、本発明の化合物は、類似の有用性を持つ薬剤について容認された投与の様式のいずれかによって、治療有効量で投与される。適切な用量範囲は、治療すべき疾患の重篤度、対象の年齢と相対健康度、使用される化合物の効力、投与の経路と剤形、投与が指示される適応症、及び担当医の優先傾向と経験のような多数の要因に応じて、典型的には1日に1〜500mg、好ましくは1日に1〜100mg、そして最も好ましくは1日に1〜30mgである。このような疾患を治療する当業者であれば、過度の実験をすることなく、当人の知識と本出願の開示に頼って、所定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することができよう。
【0119】
本発明の化合物は、経口(口腔内及び舌下を含む)、直腸内、鼻内、局所、肺内、膣内、又は非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したものを含む製剤として、あるいは吸入又は吹送による投与に適した剤形にして投与することができる。好ましい投与のやり方は一般に、苦痛の程度により調整することができる、便利な1日用法用量を用いる経口投与である。
【0120】
本発明の化合物は、1種以上の従来の補助剤、担体、又は希釈剤と一緒に、薬剤組成物及び単位用量の形にすることができる。薬剤組成物及び単位投与剤形は、追加の活性化合物又は成分を伴うか又は伴わない、従来の割合の従来の成分を含み、そして単位投与剤形は、利用すべき所期の1日用量範囲に見合う任意の適切な有効量の活性成分を含むことができる。この薬剤組成物は、経口使用のための、錠剤又は充填カプセル剤のような固体、半固体、粉末、徐放製剤、又は液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、若しくは充填カプセル剤のような液体として;あるいは直腸内又は膣内投与用の坐剤の剤形で;又は非経口使用のための無菌注射液の剤形で利用することができる。よって1錠当たり、約1ミリグラムの活性成分、又は更に広くは約0.01〜約100ミリグラムを含む処方が、適切な代表的単位投与剤形である。
【0121】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形に処方することができる。薬剤組成物及び投与剤形は、活性成分として本発明の化合物又は薬剤学的に許容しうるその塩を含んでよい。薬剤学的に許容しうる担体は、固体又は液体のいずれかであってよい。固体剤形は、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤を含む。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤、又は封入材料としても作用しうる1種以上の物質であってよい。粉剤では、担体は一般に、微粉化活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤では、活性成分は一般に、適切な割合で必要な結合能を有する担体と混合して、所望の形状とサイズに圧縮する。粉剤及び錠剤は、好ましくは約1〜約70パーセントの活性化合物を含む。適切な担体は、特に限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などを含む。「製剤」という用語は、担体を伴うか又は伴わない活性成分が、担体に囲まれたカプセルが得られる、担体としての封入材料を伴う活性化合物の処方を含むことが意図され、このカプセルがその用語に関連している。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、粉剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤は、固体剤形として経口投与に適切であろう。
【0122】
経口投与に適した他の剤形は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を含む液体剤形、又は使用の直前に液体剤形に変換することになっている固体剤形を含む。乳剤は、溶液として、例えば、水性プロピレングリコール溶液として調製することができるか、又は乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、若しくはアラビアゴムなどを含むことができる。水性液剤は、活性成分を水に溶解して、適切な着色料、香味料、安定化剤、及び増粘剤を加えて調製することができる。水性懸濁剤は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤のような粘性材料と一緒に、微粉化活性成分を水に分散させて調製することができる。固体剤形は、液剤、懸濁剤、及び乳剤を含み、そして活性成分の他に、着色料、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてよい。
【0123】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)用に処方することができ、そしてアンプル、プレフィルドシリンジ、少量点滴に入れた単位投与剤形で、又は保存料を加えた複数回投与容器に入れて提示することができる。本組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液のような形態をとることができる。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射用有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)を含み、そして保存料、湿潤剤、乳化若しくは懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような配合剤を含んでいてもよい。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質を含まない水での構成のための、無菌固体の無菌単離により、又は溶液からの凍結乾燥により得られる粉末状にしてもよい。
【0124】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤若しくはローション剤として、又は経皮パッチとして、表皮への局所投与用に処方することができる。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた、水性又は油性基剤により処方することができる。ローション剤は、水性又は油性基剤により処方することができ、また一般に1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤をも含む。口内の局所投与に適した処方は、香味付けした基剤、通常ショ糖とアラビアゴム又はトラガント中に活性剤を含むトローチ剤;ゼラチンとグリセリン又はショ糖とアラビアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含む香錠;及び適切な液体担体中に活性成分を含む洗口液を含む。
【0125】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために処方することができる。脂肪酸グリセリドの混合物又はカカオ脂のような低融点ロウを最初に融解して、例えば、撹拌により活性成分を均質に分散させる。融解した均質な混合物を次に便利なサイズの鋳型に注ぎ入れ、冷却して凝固するのを待つ。
【0126】
本発明の化合物は、膣内投与用に処方することができる。活性成分の他に当該分野において適切であることが知られている担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤又はスプレー剤。
【0127】
対象化合物は、鼻内投与用に処方することができる。溶液又は懸濁液は、従来手段により、例えば、スポイト、ピペット又はスプレーにより鼻腔に直接適用される。この処方は、単回又は複数回投与剤形として提供することができる。スポイト又はピペットの後者(複数回)の場合には、これは、患者が適切な所定の容量の溶液又は懸濁液を投与することにより達成することができる。スプレーの場合に、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成することができる。
【0128】
本発明の化合物は、特に気道への、及び鼻内投与を含む、エアロゾル投与用に処方することができる。本化合物は、一般に小粒度(例えば、5ミクロン以下程度の)を有する。このような粒度は、当該分野において既知の手段により、例えば、微粉化により得られる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、又は二酸化炭素若しくは他の適切なガスのような、適切な噴射剤と共に加圧パックとして提供される。エアロゾルは便利にはまた、レシチンのような界面活性剤を含んでよい。薬物の用量は、計量バルブにより制御することができる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末、例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)及びポリビニルピロリドン(PVP)のような適切な粉末基剤中の本化合物の粉末混合物の剤形で提供することができる。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位投与剤形として、例えば、ゼラチンの、例えば、カプセル若しくはカートリッジとして、又は吸入器を用いて粉末を投与することができるブリスターパックとして提示することができる。
【0129】
必要に応じて、活性成分の徐放又は放出制御投与のために、腸溶性コーティングを施した処方を調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置中に処方することができる。これらの送達システムは、化合物の徐放が必要であるとき、及び治療法の患者コンプライアンスが決定的に重要であるときに有利である。経皮送達システム中の化合物は、しばしば皮膚接着性固体支持体に取り付けられる。問題の化合物はまた、浸透促進剤、例えば、アゾン(Azone)(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と合せることができる。徐放送達システムは、手術又は注入により皮下層中に皮下挿入される。この皮下インプラントは、脂溶性膜、例えば、シリコーンゴム、又は生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸中に化合物を封入している。
【0130】
本製剤は、好ましくは単位投与剤形にされる。このような剤形では、製剤は、適量の活性成分を含む単位用量に細分される。単位投与剤形は、包装された製剤であってよく、このパッケージは、パック入りの錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉剤のように、離散量の製剤を含む。また、単位投与剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤自体であってよいか、あるいは包装された形の適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0131】
他の適切な製剤担体及びその処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, E.W. Martin編, Mack Publishing Company, 第19版, イーストン, ペンシルバニア州に記載されている。本発明の化合物を含む代表的な製剤処方は、後述される。
【0132】
実施例
以下の調製法及び実施例は、当業者が、本発明をより明白に理解及び実施できるように与えられる。これらは、本発明の範囲を限定するものとしてでなく、単にそれを例証及び代表するものとして考えるべきである。
【0133】
特に断りない限り、融点(即ち、MP)を含む全ての温度は、摂氏度(℃)である。当然のことながら、指示及び/又は所望の生成物が生成する反応は、必ずしも最初に加えた2つの試薬の組合せから直接生じるとは限らない、即ち、最終的に指示及び/又は所望の生成物の形成に至る、混合物として生成する1つ以上の中間体が存在するかもしれない。以下の略語は、調製法及び実施例において使用することができる。
【0134】
略語
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
ECDI 1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
gc ガスクロマトグラフィー
HMPA ヘキサメチルホスホラミド
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
hplc 高性能液体クロマトグラフィー
mCPBA m−クロロ過安息香酸
MeCN アセトニトリル
NMP N−メチルピロリジノン
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
LAH 水素化アルミニウムリチウム
LDA リチウムジイソプロピルアミン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0135】
実施例1
本実施例において使用した合成手順は、スキームBにおいて以下に略述される。
【0136】
【化7】

【0137】
工程1 3−(2−シアノ−フェニル)−アクリル酸メチルエステル
ベンゼン(100mL)中の2−シアノベンズアルデヒド(5.0g、38mmol)の溶液に、(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸メチル(14g、42mmol)を加えて、生じた溶液を15時間加熱還流した。この粗生成物を減圧下でシリカゲルで濃縮して、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により精製することによって、3−(2−シアノ−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステルを白色の固体(7.0g)として得た。MS(M+H)=188。
【0138】
工程2 3−(2−シアノ−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステル
3−(2−シアノ−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステル(3.0g、16mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボララン−2−イル)−1H−インドール(5.8g、24mmol)、及びヒドロキシ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体(0.37g、0.80mmol)の混合物に、6:1のジオキサン:水(120mL)及びトリエチルアミン(2.4g、24mmol)を加えた。この反応混合物を窒素下で90℃の油浴中で90分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、水(200mL)で希釈して、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濃縮して暗緑色の油状物にしたが、これをフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製することによって、純粋な3−(2−シアノ−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステルを淡黄色の泡状物(2.7g)として、更にはピナコールとのモル比1:2混合物の少量の生成物を黄橙色の半固体(2.1g)として得た。MS(M+H)=305。
【0139】
工程3 5−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[c]アゼピン−3−オン
メタノール(100mL)中の3−(2−シアノ−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステル及びピナコール(モル比1:2、2.1g)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(2.6g、14mmol)を何回かに分けて45分かけて加えた。室温で15時間撹拌を続けた。次に反応混合物をセライトで濾過し、メタノールで洗浄して、合わせた濾液を濃縮した。こうして得られた粗生成物を酢酸エチルと5%水酸化アンモニウム水溶液とに分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して濃縮して、5−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[c]アゼピン−3−オン及び非環化3−(2−アミノメチル−フェニル)−3−(1H−インドール−5−イル)−プロピオン酸メチルエステル(スキームBには図示せず)の混合物を含む黄色の油状物にした。この粗油状物を1,4−ジオキサン(100mL)に懸濁して、40時間加熱還流し、次に冷却して濃縮して、褐色の油状物にして、フラッシュクロマトグラフィー(メタノール/酢酸エチル)により精製することによって、純粋な5−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[c]アゼピン−3−オンを白色の固体(0.50g)として得た。MS(M+H)=277。
【0140】
工程4 5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン
テトラヒドロフラン(75mL)中の5−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−ベンゾ[c]アゼピン−3−オン(0.50g、1.8mmol)の氷水浴冷却懸濁液に、水素化アルミニウムリチウム(0.27g、7.2mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)中のスラリーとして加えた。この混合物を100分間加熱還流し、次に氷水浴中で冷却して、水(0.6mL)、15% KOH水溶液(0.6mL)、及び更に破砕した硫酸ナトリウム十水和物(14g)でクエンチした。この混合物を室温で30分間撹拌し、次に濾過して酢酸エチルで洗浄した。有機層を濃縮して黄色の油状物にし、これをフラッシュクロマトグラフィー(水酸化アンモニウム/メタノール/ジクロロメタン)により精製することによって、純粋な5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンを無色の泡状物(0.20g、MS(M+H)=263)として、更には特性決定していないテトラヒドロフラン−アルミニウム複合体が混入した少量の生成物(0.23g)を無色の泡状物として得た。混入生成物を1:1の酢酸エチル:ジエチルエーテル(5mL)に溶解して、ジエチルエーテル中の1.0M HCl(0.9mL)を、乾燥窒素ガスシール下で滴下により加えた。この白色の固体沈殿物を濾過により収集して、氷冷ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランで洗浄した。この固体をエタノールに懸濁して、減圧下で蒸発乾固し、そしてこのプロセスを反復することにより、純粋な5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン塩酸塩をオフホワイト色の粉末(0.16g)として得た。
【0141】
実施例2
(R)−5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン及び(S)−5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンへの5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンの分割
少量の5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン試料(0.065g)を、分取HPLC(キラルパックIA(Chiralpak IA)、85:15のヘキサン:エタノール、0.1%ジエチルアミン)を用いてそのエナンチオマーに分離することにより、各エナンチオマー0.016gを無色の泡状物として得た。
【0142】
実施例3
5−(1H−インドール−5−イル)−2−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン
5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンを、1,2−ジクロロエタン中のホルムアルデヒド及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元的アミノ化に付すことにより、標題化合物を白色の粉末として収率50%で得た(MS(M+H)=277)。
【0143】
実施例4
処方
種々の経路による送達用の製剤は、以下の表に示されるように処方される。表中に使用されるとき「活性成分」又は「活性化合物」は、1種以上の式(I)の化合物を意味する。
【0144】
【表1】

【0145】
成分を混合して、それぞれ約100mgを収容するカプセルに分配する;カプセル1個は、総1日用量に相当する。
【0146】
【表2】

【0147】
成分を合わせて、メタノールのような溶媒を用いて造粒する。次にこの処方を乾燥して、適切な打錠機により錠剤(活性化合物約20mgを含む)へと成形する。
【0148】
【表3】

【0149】
成分を混合することにより、経口投与用の懸濁液を生成させる。
【0150】
【表4】

【0151】
活性成分を少量の注射用水に溶解する。次に十分量の塩化ナトリウムを撹拌しながら加えることにより、この溶液を等張性にする。この溶液を、残りの注射用水で分量にし、0.2ミクロン膜フィルターで濾過して、無菌条件下で包装する。
【0152】
【表5】

【0153】
成分を一緒に溶融して、蒸気浴で混合し、そして総重量2.5gを収容する鋳型に注ぎ入れる。
【0154】
【表6】

【0155】
水を除く全ての成分を合わせて、撹拌しながら約60℃に加熱する。次に激しく撹拌しながら約60℃で十分量の水を加えることにより、成分を乳化し、次いで水を適宜約100g加える。
【0156】
鼻内スプレー処方
約0.025〜0.5パーセントの活性化合物を含む幾つかの水性懸濁液を鼻内スプレー処方として調製する。本処方は、場合により、例えば、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロースなどのような不活性成分を含む。pHを調整するために塩酸を加えてもよい。この鼻内スプレー処方は、典型的には1回の作動で約50〜100マイクロリットルの処方を送達する、鼻内スプレー計量ポンプを介して送達することができる。典型的な投与スケジュールは、4〜12時間毎に2〜4回のスプレーである。
【0157】
実施例5
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトセロトニントランスポーター(hSERT)アンタゴニストのスクリーニング
本実施例のスクリーニングアッセイは、[H]−シタロプラムとの競合によるhSERTトランスポーターでのリガンドの親和性を測定するために使用した。
【0158】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)は、放射性リガンドをビーズのシンチラントに極めて近接させることによって発光を刺激することにより作用する。このアッセイでは、受容体含有膜をSPAビーズに前もって結合させて、トランスポーターへの適切な放射性リガンドの結合を測定した。発光は、結合放射性リガンドの量に比例した。非結合放射性リガンドは、シンチラントへの近接度が遠い結果としてシグナルを生成しなかった(エネルギー移動の欠乏)。
【0159】
組換えhSERTを安定に発現するHEK−293細胞(Tatsumiら, Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を培地(10% FBS、300μg/ml G418及び2mM L−グルタミンを含むDMEM高グルコース)で維持培養して、37℃で5% COでインキュベートした。1〜2分間、PBSを用いて細胞を培養フラスコから放出させた。次いで細胞を1000gで5分間遠心分離して、PBSに再懸濁し、次に膜調製に使用した。
【0160】
細胞膜は、50mMトリス(pH7.4)の膜調製緩衝液を用いて調製した。細胞膜は、単独の立方体(総数7.5×10細胞)から調製した。ポリトロン(4秒の破砕のため中位に設定)を用いて細胞をホモジナイズした。次にホモジネートを48,000×gで15分間遠心分離し、次いで上清を除去して廃棄し、そしてペレットを新鮮緩衝液で再懸濁した。1秒の遠心分離後、ペレットを再ホモジナイズして、アッセイ中に決定される最終容量にした。典型的には、膜部分は3mg/ml(w:v)に等分して、−80℃で貯蔵した。
【0161】
シンチレーション近接アッセイのIC50/K測定には、50mMトリス−HCl及び300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を利用した。本発明の化合物は、連続希釈プロトコールを用いてベックマン・バイオメック2000(Beckman Biomek 2000)を介して10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)まで希釈した。次に試験化合物を移して(20μl/ウェル)、[H]−シタロプラム放射性リガンドを50μl/ウェルで加えた。膜及びビーズを10μg:0.7mgの比に調製し、1ウェル当たり0.7mg PVT−WGAアマシャム(Amersham)ビーズ(カタログ番号RPQ0282V)を加えた。130μlの膜:ビーズ混合物をアッセイプレートに加えた。この混合物を室温で1時間静置し、次にパッカード・トップカウントLCS(Packard TopCount LCS)で、一般的なシンチレーション近接アッセイの計数プロトコール設定(エネルギー範囲:低、効率モード:ノーマル、領域A:1.50〜35.00、領域B:1.50〜256.00、カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチ指示薬:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストークリダクション:停止)でカウントした。
【0162】
阻害%は、各試験化合物について算出した[(最大濃度での化合物の1分当たりのカウント(CPM) − 非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害を引き起こす濃度(IC50)は、下記方程式:
【0163】
【数1】

【0164】
[ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)、そしてn=ヒル(Hill)の傾き]を用いる活性ベース/XLフィットでの反復非線形曲線当てはめ法を用いて決定した。各化合物の阻害解離定数(Ki)は、チェン・プルソフ(Cheng-Prusoff)の方法により求め、次にKiの負の対数(pKi)に変換した。
【0165】
上記手順を用いて、本発明の化合物は、ヒトセロトニントランスポーターに対する親和性を有することが見い出された。例えば、5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンは、上記アッセイを用いて約6.9のpKiを示した。
【0166】
実施例6
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトノルエピネフリントランスポーター(hNET)で活性な化合物のスクリーニング
本アッセイは、[H]−ニソキセチンとの競合によるhNETトランスポーターに対するリガンドの親和性を測定するために使用した。上記実施例のhSERTアッセイにおけるように、受容体含有膜をSPAビーズに前もって結合させて、トランスポーターへの適切な放射性リガンドの結合を測定した。発光は、結合放射性リガンドの量に比例し、非結合放射性リガンドはシグナルを生成しなかった。
【0167】
組換えhNETを安定に発現するHEK−293細胞(Tatsumiら, Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)(クローン:HEK−hNET#2)を培地(10% FBS、300μg/ml G418及び2mM L−グルタミンを含むDMEM高グルコース)で維持培養して、37℃で5% COでインキュベートした。1〜2分間、PBSを用いて細胞を培養フラスコから放出させた。次いで細胞を1000gで5分間遠心分離して、PBSに再懸濁し、次に膜調製に使用した。
【0168】
細胞膜は、50mMトリス(pH7.4)の膜調製緩衝液を用いて調製した。細胞膜は、単独の立方体(総数7.5×10細胞)から調製した。ポリトロン(4秒の破砕のため中位に設定)を用いて細胞をホモジナイズした。次にホモジネートを48,000×gで15分間遠心分離し、次いで上清を除去して廃棄し、そしてペレットを新鮮緩衝液で再懸濁した。1秒の遠心分離後、ペレットを再ホモジナイズして、アッセイ中に決定される最終容量にした。典型的には、膜部分は3〜6mg/ml(w:v)に等分して、−80℃で貯蔵した。
【0169】
シンチレーション近接アッセイのIC50/K測定には、[H]−ニソキセチン放射性リガンド(アマシャム、カタログ番号TRK942又はパーキン・エルマー(Perkin Elmer)カタログ番号NET1084、比活性:70〜87Ci/mmol、ストック濃度:1.22e−5M、最終濃度:8.25e−9M)、及び50mMトリス−HCl、300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を利用した。本発明の化合物は、連続希釈プロトコールを用いてベックマン・バイオメック2000を介して10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)まで希釈した。次に試験化合物を移して(20μl/ウェル)、放射性リガンドを50μl/ウェルで加えた。膜及びビーズを10μg:0.7mgの比に調製し、1ウェル当たり0.7mg PVT−WGAアマシャム・ビーズ(カタログ番号RPQ0282V)を加えた。130μlの膜:ビーズ混合物をアッセイプレートに加えた。この混合物を室温で1時間静置し、次にパッカード・トップカウントLCSで、一般的なSPA計数プロトコール設定(エネルギー範囲:低、効率モード:ノーマル、領域A:1.50〜35.00、領域B:1.50〜256.00、カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチ指示薬:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストークリダクション:停止)でカウントした。
【0170】
阻害%は、各試験化合物について算出した[(最大濃度での化合物CPM − 非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害を引き起こす濃度(IC50)は、下記方程式:
【0171】
【数2】

【0172】
[ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)、そしてn=ヒルの傾き]を用いる活性ベース/XLフィットでの反復非線形曲線当てはめ法を用いて決定した。各化合物の阻害解離定数(Ki)は、チェン・プルソフの方法により求め、次にKiの負の対数(pKi)に変換した。
【0173】
上記手順を用いて、本発明の化合物は、ヒトノルエピネフリントランスポーターに対する親和性を有することが見い出された。例えば、5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンは、上記アッセイを用いて約8.0のpKiを示した。
【0174】
実施例7
シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いるヒトドーパミントランスポーターで活性な化合物のスクリーニング
本アッセイは、[H]−バノキセリン(Vanoxerine)との競合によるドーパミントランスポーターに対するリガンドの親和性を測定するために使用した。
【0175】
組換えhDATを安定に発現するHEK−293細胞(Tatsumiら, Eur. J. Pharmacol. 1997, 30, 249-258)を培地(10% FBS、300μg/ml G418及び2mM L−グルタミンを含むDMEM高グルコース)で維持培養して、37℃で5% COでインキュベートした。細胞は、1ウェル当たり約30,000細胞(PBS中)を、白色の不透明なセル・タック(Cell-Tak)コーティング96ウェルプレートに播くことにより、実験の4時間前に平板培養した。余分な緩衝液は、ELx405プレートウォッシャーを用いて、細胞板から吸引した。
【0176】
シンチレーション近接アッセイのIC50/K測定には、[H]−バノキセリン(GBR12909)放射性リガンド(比活性:約59Ci/mmol、ストック濃度:400nM)、及び50mMトリス−HCl、300mM NaCl(pH7.4)緩衝液を利用した。本発明の化合物は、10点希釈プロトコールを用いてベックマン・バイオメック2000を介して10mMから0.1nM FAC(10点曲線、全対数/半対数希釈)まで希釈した。この混合物を室温で30分間静置し、次にパッカード・トップカウントLCSで、一般的なSPA計数プロトコール設定(カウント時間(分):0.40、バックグラウンド減算:なし、半減期補正:なし、クエンチ指示薬:tSIS、プレートマップブランク減算:なし、クロストークリダクション:停止)でカウントした。
【0177】
阻害%は、各試験化合物について算出した[(最大濃度での化合物CPM − 非特異的CPM)/総CPM×100]。50%阻害を引き起こす濃度(IC50)は、下記方程式:
【0178】
【数3】

【0179】
[ここで、max=総結合、min=非特異的結合、x=試験化合物の濃度(M)、そしてn=ヒルの傾き]を用いる活性ベース/XLフィットでの反復非線形曲線当てはめ法を用いて決定した。各化合物の阻害解離定数(Ki)は、チェン・プルソフの方法により求め、次にKiの負の対数(pKi)に変換した。
【0180】
上記手順を用いて、本発明の化合物は、ヒトドーパミントランスポーターに対する親和性を有することが見い出された。例えば、5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピンは、上記アッセイを用いて約8.7のpKiを示した。
【0181】
下記の結果が得られた:
【0182】
【表7】

【0183】
本発明は、その具体的な実施態様に関して記述されているが、当業者には当然のことながら、本発明の本質と範囲から逸することなく、種々の変更を加えることができ、均等物に置換することができると理解される。更には、特定の状況、材料、組成物、製造法、製造工程又は工程を、本発明の客観的本質と範囲に適合させるために、多くの改変を加えることができる。このような全ての改変は、本明細書に添付の請求の範囲に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化8】


[式中、
Arは、場合により置換されているインドリルであり;
は、水素;又はC1−6アルキルであり;そして
は、水素;C1−6アルキル;C1−6アルコキシ;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;シアノ;アミノ;C1−6アルキルアミノ;ジ−C1−6アルキルアミノ;ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロフラニル(それぞれ場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル;ピペラジニル−C1−6アルキル、ピペリジニル−C1−6アルキル、ピロリジニル−C1−6アルキル、モルホリニル−C1−6アルキル、チオモルホリニル−C1−6アルキル、テトラヒドロピラニル−C1−6アルキル及びテトラヒドロフラニル−C1−6アルキル(それぞれのヘテロシクリル部分が場合により置換されている)から選択されるヘテロシクリル−C1−6アルキル;−(CH−C(O)−NR;−(CH−SO−NR;−(CH−C(O)−OR;−NR−C(O)−R;−NR−SO−R;−O−C(O)−R;−O−C(O)−NR;−NR−C(O)−NR;又は−NR−C(O)−ORである(ここで、mは、0又は1であり、そしてR、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルである)]で示される化合物。
【請求項2】
Arが、場合により置換されているインドール−5−イルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が、水素である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
が、水素である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
が、ハロである、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
が、水素又はC1−6アルキルであり、そしてRが、水素又はハロである、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
該化合物が、式(Ia)又は(Ib):
【化9】


[式中、Ar、R及びRは、請求項1と同義である]で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Arが、場合により置換されているインドール−5−イルである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
が、水素又はC1−6アルキルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
該化合物が、式(IIa)又は(IIb):
【化10】


[式中、
は、水素;C1−6アルキル;C1−6アルコキシ;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;C1−6アルキルスルホニル;又はシアノであり;
は、水素;C1−6アルキル;ハロ;ハロ−C1−6アルキル;ヘテロ−C1−6アルキル;−C(O)−NR(ここで、R及びRは、それぞれ独立に水素又はC1−6アルキルである);C1−6アルキルスルホニル;又はシアノであり;
は、水素;又はC1−6アルキルであり;そして
及びRは、請求項1と同義である]で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、式(IIa)で示される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
が、水素である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
が、水素又はC1−6アルキルであり、そしてRが、水素又はハロである、請求項10記載の化合物。
【請求項14】
が、水素である、請求項12記載の化合物。
【請求項15】
が、水素である、請求項13又は14記載の化合物。
【請求項16】
が、水素である、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
が、水素である、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン、
(R)−5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン、
(S)−5−(1H−インドール−5−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン、又は
5−(1H−インドール−5−イル)−2−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[c]アゼピン
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物及び薬剤学的に許容しうる担体を含む、薬剤組成物。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物の製造方法であって、式(c):
【化11】


で示される化合物を、ニトリル基の還元と環化とに付すことにより、式(d):
【化12】


で示されるベンゾアゼピノンが生成し、次にこのベンゾアゼピノンのカルボニル基の還元、続いて場合によるベンゾアゼピンの窒素のアルキル化によって、式(I)[式中、R、R及びArは、請求項1と同義である]の化合物を得る方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法により製造される化合物。
【請求項22】
治療活性物質として使用するための、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
セロトニン神経伝達、ノルエピネフリン神経伝達及び/又はドーパミン神経伝達に関連する疾患又は症状の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用するための、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
セロトニン神経伝達、ノルエピネフリン神経伝達物質及び/又はドーパミン神経伝達に関連する疾患又は症状の治療及び/又は予防用医薬の製造のための、請求項1〜18のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項25】
鬱病、抗不安及び尿生殖器障害並びに疼痛の治療及び/又は予防用医薬の製造のための、請求項24記載の使用。
【請求項26】
本明細書に上記の発明。

【公表番号】特表2009−538857(P2009−538857A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512540(P2009−512540)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054851
【国際公開番号】WO2007/137953
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】