モノクローナル抗体の生成のための方法および組成物
本発明は、モノクローナル抗体を作製するための組成物および方法を含む。本発明はさらに、免疫系構成成分、特に免疫シナプスの抗原提示細胞(APC)エレメントを複製するベクターを含む。加えて、本発明はさらに人工T細胞を含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して免疫学に関するものである。本発明はさらにモノクローナル抗体を生成するための方法および組成物、ならびにこのような抗体を生成するためのin vitroにおける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
所望の薬剤を特定の標的細胞内へ導入することは、長い間科学者にとって課題となってきた。薬剤を特異的に標的化することの課題は、生物体の他の部位を過剰に暴露することなく、生物体の標的細胞に対して適切な量の薬剤または的確な薬剤を送達することである。特定の薬剤の送達のために非常に望ましい対象は免疫系である。免疫系は身体の複雑な応答システムであり、異なる活性を有する多くの異なる種の細胞を含む。免疫系の一部の活性化は、通常、免疫系の他の関連部分の不要な活性化による種々の応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の構成エレメントを標的とすることによる、特定の所望の応答を引き出すために十分な方法または組成物はない。
【0003】
免疫系は、体内および体外の双方からの刺激と相互作用する、細胞を含む多種多様な構成エレメントならびに細胞性因子を含む、身体の複雑な相互作用システムである。その直接的作用に加え、免疫系の応答は、神経系、呼吸器系、循環器系および消化器系を含む身体の他のシステムによる影響も受ける。
【0004】
免疫系のよく知られた特徴の1つは、侵入生物、体内の細胞変化、またはワクチン接種によって提供される外来性抗原に対して応答する能力である。免疫系のそのような活性化に応答する第1の種類の細胞のいくつかは、食細胞およびナチュラルキラー細胞である。食細胞は数ある細胞の中で、単球、マクロファージおよび多形核好中球を含む。これらの細胞は一般的に外来性抗原に結合してそれを吸収し、そして多くの場合それを破壊する。これらはまた、炎症反応等の他の免疫応答を媒介する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は、ウイルスに感染した特定の胚細胞および腫瘍細胞を認識し、そして破壊することができる。免疫応答の他の因子は補体経路を含み、それらは外来性抗原とは無関係に応答し、または細胞もしくは抗体と連携して作用する能力がある。
【0005】
ワクチン接種にとって重要な免疫系の特徴の1つは、特定の病原体または外来性抗原に対する免疫系の特異的な応答である。その応答の一部は、外来性抗原に対する「記憶」の確立を含む。2度目の暴露の際に、記憶作用が外来性抗原に対するより迅速かつ通常より増強した応答を可能にする。リンパ球は他の細胞および因子と連携して、記憶作用および応答の双方において主要な役割を果たす。
【0006】
一般的に、抗原に対する応答は、液性応答および細胞性応答の双方を含むと考えられている。液性免疫応答は、細胞によって放出される非細胞性因子によって媒介され、これらは血漿または細胞内液中に遊離して見られてもよく、そうでなくともよい。免疫系の液性応答の主要な構成エレメントは、Bリンパ球によって産生される抗体によって媒介される。細胞媒介性免疫応答は、抗原提示細胞ならびにBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用に起因する。
【0007】
免疫応答能の最も広く用いられる特徴の1つは、モノクローナル抗体の生成である。1970年代半ばにおけるモノクローナル抗体(Mab)技術の出現は、有用な新規の治療および診断手段を提供した。初めて、研究者および臨床医学者は、所定の抗原部位に結合し、そして種々の免疫学的エフェクター作用を有する能力のある、無限の量の均一の抗体を入手する機会を得た。現在、モノクローナル抗体を生成するための技術は、当技術分野でよく知られている。
【0008】
これらのモノクローナル抗体は、医薬および診断において大いに有望であると考えられている。残念なことに、これらのタンパク質に基づいた治療薬の発展は、モノクローナル抗体治療に特有の問題によって制限されてきた。例えば、多くのモノクローナル抗体はマウス由来であり、ゆえにヒト補体に上手く固定しない。それらはまた、ヒトに使用した場合、他の重要な免疫グロブリン機能的特性に欠ける。
【0009】
モノクローナル抗体の使用に対する最大の障害は、非ヒトモノクローナル抗体がヒト患者に注入された場合に免疫原性となるという事実である。外来性抗体の注入の後、患者が開始する免疫応答は非常に強くなり得る。免疫応答は、外来性抗体の迅速な除去を引き起こし、初期治療の後の抗体の治療的有用性を本質的に除外する。残念なことに、一度免疫系が外来抗体に対する応答の準備をすると、同一または異なる非ヒト抗体による後の治療が無効または危険なものにさえなり得る。
【0010】
マウスは外来抗原で簡単に免疫することで、広範囲の高親和性抗体を生成することができる。しかしながら、ヒトへのマウス抗体の導入は、ヒト体内へマウス抗体を提示することによるヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者にマウス抗体を使用することは、一般的に日数または週数の期間が限定される。長期間の治療はアナフィラキシーを引き起こし得る。さらに、一度HAMAが患者において生成されると、多くの場合、将来的に、診断または治療を目的とするマウス抗体の使用が妨害されることになる。
【0011】
HAMA応答の問題を克服するために、研究者は非ヒト抗体を改変してそれらをヒト様抗体にするためのいくつかのアプローチを試みてきた。これらのアプローチは、マウス/ヒトキメラ、ヒト化、および霊長類化を含む。よりヒト様の抗体の作製における初期の実験は、組み合わせたウサギおよびヒト抗体を使用した。抗体のタンパク質サブユニットであるウサギFabフラグメントおよびヒトFcフラグメントを、タンパク質ジスルフィド結合を介して結合することで、新規の人工的なタンパク質分子すなわちキメラ抗体を形成した。
【0012】
組み換え分子生物学的技術は、キメラ抗体を作出するために使用されてきた。組み換えDNA技術は、マウス抗体の可変軽鎖および重鎖領域ならびにヒト抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)定常領域をコードするDNA配列間における遺伝子融合体を構築するために使用することで、キメラ抗体の発現を可能にした。これらのキメラ抗体は多数の非ヒトアミノ酸配列を含み、そしてヒトに対して免疫原性である。これらのキメラ抗体に暴露された患者は、ヒト抗キメラ抗体(HACA)を生成する。HACAはマウスV領域に対するものであり、かつ、組み換えキメラ抗体に存在する新規のV領域/C領域(定常領域)接合部に対するものともなり得る。
【0013】
キメラ抗体の免疫原性によってもたらされるいくつかの制限を克服するために、分子生物学技術は、ヒト化または再形成された抗体を作出するために使用される。マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列は、分子的手段によって、ヒト抗体重鎖および軽鎖のフレームワークをコードするDNA配列に接続される。ヒト化Mabは、キメラMabのそれより高い割合でヒト抗体配列を含む。約90%ヒト抗体および10%マウス抗体を含有する最終産物は、ヒト抗体上にマウスの結合部位を含む。これはまた、マウスMab由来の特定のアミノ酸置換をヒト化Mabのフレームワーク内に含むことで、正しい形状を保持し、ゆえに標的抗原に対する結合親和性を保持する。
【0014】
実際、マウスCDRを単にヒトCDRと置換しても、もとのマウス抗体の特異性を保持した有効なヒト化抗体を産生するのには不十分である。少数の重要なマウス抗体残基をヒト可変領域に含ませるためにさらに必要なことがある。これらの残基の同一性は、もとのマウス抗体および受容側であるヒト抗体の双方の構造に依存する。HACA応答を患者において引き起こすのを促進するこれらのマウス抗体残基の存在が、モノクローナル抗体の迅速な除去およびアナフィラキシーの恐れを引き起こす。
【0015】
別の技術は、再表面化技術と呼ばれ、マウス抗体をヒト化するのに用いられる。再表面化は、他のヒト化技術より迅速かつより効果的である過程において、マウス抗体表面をヒト抗体表面と置換することを含む。この技術は、マウスモノクローナル抗体を、組み換えFVのV領域の表面で利用可能なアミノ酸のみをヒト化することによってヒト抗体に類似させるように、マウスモノクローナル抗体を再設計する方法を提供する。マウスモノクローナル抗体の再表面化が、もとのマウスモノクローナル抗体の親和性を再形成バージョンにおいても維持させ得るのは、天然のフレームワーク-CDR相互作用が保持されているためである。また一方で、これらの抗体がマウス由来であるために抗原性となるという問題に苦しむ。
【0016】
他の技術は、Mabをヒト化するためにマウスよりも霊長類の配列を使用する。このアプローチの原理は霊長類化と呼ばれ、霊長類抗体可変領域における大部分の配列がヒト配列と区別できないことにある。関節リウマチおよび重症喘息の治療のための霊長類化抗CD4 Mabが開発されている。しかしながら、これらのMabは患者の免疫系に対しては依然として外来性タンパク質であり、そして免疫応答を引き起こす。
【0017】
外来性タンパク質に対する免疫応答を回避する試みにおいて、種々のアプローチが、ヒト抗体構成成分のみを含むヒトMabを作製するために開発されている。1つのアプローチは、所望の抗原に対する抗体を自然に産生するヒトB細胞クローンを単離し、そしてトリオーマ細胞培養系において増殖させることである。ヒト抗体が宿主に対して外来性である抗原に対してのみ作製されるため、ヒト抗原に対する抗体を作製するヒトB細胞はない。従って、このアプローチはヒトタンパク質である抗原に対するMabを生成するのに有用ではない。
【0018】
ヒトMabを作出するための2つの他のアプローチは、ファージディスプレイ法およびトランスジェニックマウスの使用である。ファージディスプレイ法技術は、可能性のあるあらゆる構造に対する抗体を作製するためのヒトの能力を利用する。この技術は多くの個々のヒト由来の抗体遺伝子を使用することでファージ抗体の大きなライブラリーを作出するものであり、各々はその表面で機能的な抗体可変領域を発現している。このライブラリーから、個々の可変領域は所望の抗原に結合する能力によって選択される。Mabは、所望の結合特性を有する抗体可変領域と、有望なヒト治療薬に最も適合する定常領域とを組み合わせることによる分子生物学的技術を通して作出される。また一方で、この技術は抗原特異性に欠ける。ファージライブラリーは、あらゆるすべての所望の抗原に対するすべての結合領域を含むことはできない。それはまた、特異性を欠損する結合領域も含み得る。従って、使用可能なレベルに抗体の親和性を増大させるために、この技術は相当な工学技術を必要とし得る。
【0019】
トランスジェニックマウスは、「ヒト」抗体を作出するためにも使用される。トランスジェニックマウスは、マウス免疫グロブリン遺伝子座をヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換することによって作出される。このアプローチがファージ提示法技術より優れた利点を提供し得るのは、マウスin vivo親和性成熟機構を利用するためである。
【0020】
ヒトMabまたはヒト様Mabを作製するための現在の技術はすべて、前述の抗原に対して抗原特異的である種特異的抗体を提供するためには不十分である。キメラ抗体は、マウス抗体の特異性を保持し、かつヒトFc依存性補体結合および細胞媒介性細胞傷害を刺激する利点を有する。しかしながら、これらのキメラ抗体のマウス可変領域は依然としてHAMA応答を引き起こす可能性があり、それにより、診断薬および治療薬としてのキメラ抗体の有用性を制限している。
【0021】
ワクチンはあらゆる外来性抗原に対するもので、別の生物体、変化した細胞、または正常な「自己」細胞内で誘導された外来性に属するもの由来であってもよい。外来性抗原の投与経路は、生じる免疫応答のタイプを決定するのに役立ち得る。例えば、生ポリオウイルスの経口接種等の粘膜面への抗原の送達は、免疫系を刺激して粘膜面における免疫応答を引き起こす。筋肉組織内への抗原の注入は、多くの場合、持続的なIgG応答の発生を促進する。
【0022】
ワクチンは一般的に、全ワクチンおよびサブユニット・ワクチンの2つのタイプに分類され得る。全ワクチンは、不活性化もしくは弱毒化したまたは殺したウイルスあるいは微生物より生成され得る。弱毒化生ワクチンは、野生型生物に対する応答と類似した免疫応答を誘発するのに十分な自然感染を再現する利点を有する。そのようなワクチンが一般的に高レベルでの予防効果を提供するのは、特に自然経路で投与される場合であり、免疫ができるのに1回の投薬しか必要としないものもある。いくつかの弱毒化ワクチンの別の利点は、それらがその個体群のメンバー間の直接接触経路を提供することである。しかし、これらの利点はいくつかの欠点と均衡する。いくつかの弱毒化ワクチンは品質保持期限を有し、熱帯環境における保存に耐えることができない。また、ワクチンが、有害な生死にさえ関わる病気を引き起こす毒性の野生型生物に戻る可能性もある。弱毒化ワクチンを使用することは、AIDS等の免疫不全状態および妊娠中においては禁忌である。
【0023】
死菌ワクチンがより安全であるのは、毒性に戻る可能性がないためである。これらは一般的に輸送および保存の間により安定しており、かつ免疫障害患者における使用にも適している。しかし、これらは弱毒化生ワクチンより有効性が低く、通常は1回以上の投薬が必要である。さらに、これらはその個体群のメンバー間の直接接触経路を提供しない。
【0024】
サブユニット・ワクチンの生成は、ワクチンが標的とするべき微生物または細胞のエピトープについての知識が必要である。サブユニット・ワクチンの設計における他の検討事項は、サブユニットのサイズ、およびサブユニットが微生物または細胞のすべての株をいかによく提示するかである。細菌性ワクチンの開発についての現在の焦点がサブユニット・ワクチンの生成に転換してきたのは、全細菌性ワクチンの生成において直面する問題およびそれらを使用するのに伴う副作用のためである。そのようなワクチンは、Vi莢膜多糖類に基づく腸チフスワクチンおよびインフルエンザ菌に対するHibワクチンを含む。
【0025】
弱毒化ワクチンの使用に関わる安全性の懸念および死菌ワクチンの弱い有効性のために、当技術分野において、ワクチンの有効性を向上させる組成物および方法が必要とされる。当技術分野においては、液性および細胞媒介性双方の応答を刺激する、免疫系を増強する組成物ならびに方法もまた必要とされる。当技術分野においてはさらに、免疫応答を選択的に調整し、そして所望の応答を発生させるために免疫系の種々の構成エレメントを操作する必要がある。さらに、より迅速な活性化応答のために免疫応答を促進および拡大し得る方法ならびに組成物が必要である。単回投与だけで予防となるワクチンを、ヒトおよび動物双方の個体群に接種可能であることへの必要性が増大している。
【0026】
必要であるのは、特定の薬剤が標的細胞にのみ送達されることを目標とする組成物および方法である。そのような組成物および方法は、治療薬を標的細胞に有効に送達することができるべきである。また、in vitroおよびin vivo系の双方で使用可能な組成物および方法も必要である。
【0027】
モノクローナル抗体の組成物およびそれらを生成するための改良された方法に対する一般的な必要性もある。所定の抗原に対する親和性を有するヒト抗体を生成するための方法が特に必要である。これらのヒト免疫グロブリンは、治療的および診断的処方に適する方法で容易かつ経済的に生成されるべきである。
【0028】
発明の概要
本発明は、種特異的抗原特異的モノクローナル抗体、好ましくはIgGモノクローナル抗体を作製するための組成物および方法を含む。本発明はさらに、免疫系のエレメント、特に免疫シナプスの抗原提示細胞(APC)エレメントを複製するベクターを含む。好ましいベクターは任意に、抗原負荷主要組織適合(MHC)クラスIIタンパク質、共刺激タンパク質B7、および構造タンパク質細胞内接着タンパク質(ICAM)の、コロイド金属ベクターの表面への結合を含む。そのようなベクターは、免疫B細胞の抗体応答を成熟させるためにCD4+T細胞を活性化することができる人工抗原提示細胞(sAPC)を生成するAPCの三次元的な配置を複製する(図3)。
【0029】
本発明はさらに、人工CD4+T細胞(sTc)および人工胚中心(sGC)を含むベクターを含む。1つの実施形態において、人工CD4+T細胞は、CD40リガンドおよびサイトカインと結合したコロイド金属ベクターから構成される。別の実施形態において、人工胚中心は、Bリンパ球刺激剤;BlySおよびCD30L/受容体システムと結合したコロイド金属ベクターから構成され、in vitroにおける免疫付与に対するB細胞抗体応答の有効性および特異性を増強する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、1つの実施形態において、抗原のB細胞増殖因子との物理的な並置は、表面IgM抗原受容体を介したヒトTNF抗原の取り込みを向上させ、そしてより強力なB細胞応答を誘導する。同一のB細胞上に並置されたシグナルを有することは、in vitroにおいて抗原特異的B細胞応答を誘発する能力をさらに向上させる。
【0030】
本発明は、人工免疫構成成分エレメントを作製する方法を含む。免疫系の構成成分の機能性を再現するベクター組成物を作製するための方法が、本明細書に教示される。本発明はまた、免疫系に関連した疾患および病状の治療の方法を含む。ワクチン接種の方法もまた、本発明に含まれる。
【0031】
本発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に含まれる以下の特定の実施形態の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本発明はある実施形態の特定の詳細を参照することで説明してきたが、そのような詳細が本発明の範囲を制限するものとしてみなされることを意図するものではない。本明細書に記載される参照の全文は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、米国特許仮出願第60/526,360号を含む。
【0032】
本発明は、抗原特異的、種特異的IgGモノクローナル抗体を作成するための方法および組成物を含む。本発明は、液性免疫応答の抗原提示細胞(APC)、T細胞および胚中心エレメントを複製する天然および/または人工ベクターを含む方法および組成物を含む。
【0033】
本発明は、免疫応答の任意のエレメントまたは段階を再現するベクターを含む。免疫応答は、種々の細胞、主としてマクロファージまたは他の抗原提示細胞による外来性抗原の認識によって開始する。これはリンパ球、特に特定の外来性抗原を特異的に認識するリンパ球の活性化を導き、そして結果として免疫応答が発生し、かつ場合により外来性抗原の排除をもたらす。外来性抗原の排除を目的とした免疫応答を重ねることは、ヘルパー作用、促進作用、抑制作用および他の応答を導く複雑な相互作用である。免疫系の応答の能力は、促進および抑制のための複数部位で慎重に調節されるべきであり、さもなくば、応答が起こらないか、過剰応答するか、または排除した後に停止できなくなるかのいずれかとなろう。
【0034】
外来性抗原に対する応答の認識段階は、外来性抗原が免疫細胞上の特異的受容体に結合することからなる。これらの受容体は一般的に抗原暴露の前から存在する。認識はまた、マクロファージ様細胞による、または血清もしくは体液中の因子による認識による、抗原との相互作用も含み得る。
【0035】
活性化段階において、リンパ球は少なくとも2つの大きな変化をする。これらは増殖して、抗原特異的リンパ球のクローンの拡大および応答の増幅をもたらし、そして抗原に刺激されたリンパ球の子孫が、生き残って抗原の再暴露への応答準備をするエフェクター細胞または記憶細胞のどちらかに分化する。この応答を増強する非常に多くの増幅機構がある。
【0036】
エフェクター段階において、活性化したリンパ球は抗原の排除またはワクチン応答の確立を導き得る作用を果たす。そのような作用は、調節、ヘルパー、刺激、抑制または記憶作用等の細胞応答を含む。多くのエフェクター作用は、細胞および細胞性因子が組み合わされて関与することを必要とする。例えば、抗体は外来性抗原に結合し、そして好中球および単核食細胞によるそれらの食作用を促進させる。補体経路は活性化され、そして発熱等の他の身体応答を引き起こすのに加えて、微生物の溶解および食作用に関与し得る。
【0037】
抗原に対する免疫応答において、免疫細胞は互いに直接的な細胞間接触または間接的な細胞間(因子媒介)伝達によって相互作用する。例えば、T細胞、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞間の相互作用は、有効な免疫応答に不可欠である。抗原提示細胞(APC)は、B細胞ならびにT細胞に処理抗原および他の活性化シグナルを提示することにより、B細胞およびT細胞を活性化する。活性化T細胞は免疫応答の調節を助け、外来性生物体の排除に関与する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞前駆体のキラー細胞への分化を助け、B細胞が抗体を生成するのを助け、およびマクロファージのような他の細胞の機能向上を助ける等して、細胞をより優れたエフェクター細胞にする。活性化B細胞は分裂し、そして抗原特異的抗体および記憶B細胞を産生する。免疫応答に関与する細胞はまた、細胞性因子またはサイトカインを分泌し、これらは食細胞の機能を向上させ、炎症反応を刺激し、そして種々の細胞に作用する。
【0038】
これらの細胞の反応は、フィードバック・ループも伴う。マクロファージおよび他の単核食細胞またはAPCは、B細胞およびT細胞に提示するために積極的に抗原を貪食し、そしてそのような活性はリンパ球細胞性因子によって増強され得る。マクロファージもまた、サイトカインを産生し、これは他の活性に混ざってT細胞増殖および分化を刺激し、他の炎症細胞(特に好中球)を増加させ、そして発熱等の炎症の全身的効果の多くの原因となる。そのようなサイトカインの1つはインターロイキン-12と呼ばれ、細胞媒介性免疫の進行に特に重要である。
【0039】
樹状細胞もまた、免疫応答を開始するAPCである。リンパ系樹状細胞および皮膚のランゲルハンス細胞を含む多くの異なるタイプの樹状細胞がある。これらは全身、特に脾臓、リンパ節、扁桃腺、パイアー斑および胸腺において見ることができる。これらは不規則な形状の細胞であり、樹状(樹様)突起を継続的に伸長および収縮する。免疫系におけるこれらの役割の1つは、B細胞およびT細胞の活性化および分化を誘導ならびに調節することである。これらは細胞傷害性T細胞の分化、B細胞による抗体形成、および酸化的有糸分裂誘発等のいくつかのポリクローナル応答に対する強力なアクセサリー細胞である。これらはまた、サイトカインインターロイキン-2を放出するようT細胞を刺激する。
【0040】
ワクチン接種の重要な武器は、Bリンパ球またはB細胞によって付与される、抗原に対する応答である。B細胞は、循環リンパ球の約5〜15%に相当する。B細胞は免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを産生し、これらは体液中に放出され得、接着タンパク質と共に分泌されるかまたはB細胞の表面膜内に挿入され得る。そのような固定化された免疫グロブリンは、特異的な抗原受容体として作用する。抗原に対する応答において、これらの免疫グロブリン受容体はB細胞の特定の部位に架橋される。この過程はキャッピングとして知られ、続いて免疫グロブリンの内在化および分解が起こる。B細胞を含み得るAPCにおいて、抗原断片はMHCと結合し、そして最終的にAPCの表面で発現する。
【0041】
B形質細胞は、外来性タンパク質、多糖類、脂質、または細胞外もしくは細胞結合型の他の化学物質を結合することが可能な抗体分子を産生および分泌する。単一形質細胞によって産生される抗体は、1つの抗原に対して特異的である。分泌される抗体は、抗原を結合し、そしてそれらの破壊を促進する機構を誘発する。
【0042】
1975年に、KohlerおよびMilstein(Kohler, G.,およびMilstein, C., Nature(London). 1975. volume256: pp-495)は、免疫マウスの脾臓より単離した抗体産生B細胞と積極的に増殖するマウス骨髄腫細胞とを融合する方法を記載した。この得られたハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)は、双方の親細胞の特徴を有する。これは、その継続的な成長および増殖の間に大量の抗体を産生および分泌する。一連の系統的な細胞希釈を経て、単一の特異性を有する抗体(モノクローナル抗体(Mab))を産生する、遺伝学的に単一のハイブリドーマ細胞を単離することができる。
【0043】
最も一般的な手順は、モノクローナル抗体の生成が動物の免疫付与により開始することを必要とする。抗原は局所リンパ節または脾臓内に流出し、ナイーブB細胞を活性化してIgM抗体を産生させる。これらの活性化B細胞は、次に抗原活性化CD4+T細胞を提示されて、クラス・スイッチを誘導する。クラス・スイッチは産生する抗体型がIgMからIgGに変化することによって特徴付けられる(Kuby, J., Immunology 第3版 1997、Allen D編., pp- 205-213)。抗体分泌B細胞リンパ球は、免疫動物のリンパ節または脾臓より単離され、そして種特異的骨髄腫細胞と融合される。次に融合細胞を増殖させて、抗原特異的IgG抗体を生成する。スクリーニングの過程において、陽性融合クローンはそれらの治癒能力により選択される。
【0044】
マウスは、外来性抗原によって容易に免疫されて広範囲の高親和性抗体を産生する。しかしながら、マウス抗体のヒトへの導入は、体内での外来性タンパク質の提示によるヒト-抗-マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者にマウス抗体を使用することは、一般的に日数または週数の期間が限定される。さらに、一度HAMAが患者において生じると、多くの場合、将来的に、他の診断的または治療的目的に対するマウス抗体の使用を妨害することになる。
【0045】
動物におけるこの技術の初期の成功は、1980年代に科学者たちがこの概念を広げ、ヒトモノクローナル抗体を生成する試みを促した。しかしながら、動物からヒトへの外挿は困難を伴った。第1のハードルは、抗原特異的B細胞の不足であった。標準的なモノクローナル抗体法は、これらの細胞が免疫された動物より採取されるという、一般的にヒトへ適用できない方法を必要とする。この問題をさらに困難にするのは、(i)活性化B細胞の容易な供給源がないという事実、(ii)末梢血に存在する免疫能力を有するB細胞の不足、および(iii)ヒト被験者からリンパ節または脾臓のどちらかを得ることが不可能であるためである。これらの要因は、ヒトモノクローナル抗体を生成するための種々のin vitroの方法の開発を促進した。初期の結果が有望であったのにも関わらず、in vivo抗体応答の一連の事象を完全に再構築することが不可能であることが、最終的にこの技術に衰退をもたらし、そしてこの技術的アプローチは基本的に見捨てられてきた。
【0046】
in vitroでの抗体生成のための第1の障害は、ナイーブヒトB細胞リンパ球の活性化B細胞への変換率が比較的低いことである。従来、この課題を解決することは、ヒト末梢血B細胞リンパ球から一次抗体応答を誘導するために、破傷風毒素(Butlerら, J. Immunol. 1983. 第130巻: pp-165)等のリコール抗原を用いる場合でさえも困難であることが判明した。本発明は、抗体生成を導く経路を活性化するベクターを作製する方法を含む。本発明はまた、天然または人工ベクターの組成物を含む。そのようなベクターは、コロイド金骨格に複数のB細胞リガンドが結合しているものを含む。
【0047】
生物学的応答を増強するための受容体/リガンド対の架橋の多数の例示が記載されてきた(Carroll, K., Prosser, E.,およびKennedy, R. Hybridoma 1991. 10: 229-239)。本発明は、in vitroにおける免疫付与のためのB細胞抗体応答の有効性および特異性を向上させるコロイド金属のベクターを含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、抗原のB細胞増殖因子との物理的な並置は、表面IgM抗原受容体を介した抗原の取り込みを向上させ、そしてより強力なB細胞応答を誘導すると考えられている。抗原のプロセシングおよび提示もまた向上する。同一のB細胞上に並置したシグナルを有することは、in vitroにおいて抗原特異的B細胞応答を誘発する能力を向上させる。
【0048】
1つの実施形態において、構成成分に特異的な免疫刺激分子および/またはMHCタンパク質および/または抗原は、コロイド金属骨格に直接結合し得るか、あるいは結合基のメンバーを介してコロイド金属骨格に結合し得る。そのような結合基は、遊離のスルフヒドリル基もしくはピリジル基が、免疫構成成分に提示されるか、または人工的に付加されたものを含む。本発明の好ましい実施形態は、骨格としてコロイド金属を含み、これは、構成成分に特異的な免疫刺激物質またはMHCタンパク質または抗原が人工APCを作出するために結合している結合基のメンバーを結合することが可能である。別の好ましい実施形態において、結合基はストレプトアビジン/ビオチンであり、そして構成成分に特異的な免疫刺激物質はサイトカインである。本発明の実施形態はまた、特異性の低い方法において、ポリカチオンまたはタンパク質の使用による等の結合パートナーの使用をすることのない、抗原またはMHCタンパク質または構成成分に特異的な免疫刺激物質との結合を含む。このように、本発明は当業者に知られている、ポリリジン、硫酸プロタミン、ヒストンまたはアシアログリコプロテインを含むがこれらに限定されないポリカチオン性エレメント等の相互作用分子の使用を企図する。
【0049】
結合対のメンバーは、抗体-抗原対;酵素-基質対;受容体-リガンド対;およびストレプトアビジン-ビオチン対を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている任意の結合対を含む。新規の結合パートナーは、特異的に設計され得る。結合パートナーの必須の要素が結合対の一方と結合対のもう一方のメンバーとの間の特異的な結合であるのは、結合パートナーが特異的に接続することを可能にするためである。結合メンバーの別の所望の要素は、各メンバーが組み込み分子または標的分子のどちらかと結合するかまたは結合されることを可能にすることである。
【0050】
本発明の組成物は、コロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。あるいはまた、本発明の組成物は、コロイド金属、MHCタンパク質、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。構成成分に特異的な免疫刺激物質は、治療的用途に使用され得る生物学的に活性な物質を含んでもよく、また、構成成分に特異的な免疫刺激物質は検出法に有用となり得る。さらなる実施形態において、1以上の構成成分に特異的な免疫刺激物質はコロイド金属と混合、会合、または直接的もしくは間接的に結合される。混合、会合および結合は、共有結合およびイオン結合ならびに他のより弱い会合またはより強い会合を含み、これにより、誘導体化PEGまたは誘導体化ポリ-L-リジン、構成成分に特異的な免疫刺激物質、および他の構成成分の、互いのならびにコロイド金属粒子との長期間または短期間に渡る会合を可能にする。
【0051】
さらに別の実施形態において、組成物はまた、コロイド金属に混合、会合または結合された1以上の標的分子を含み得る。標的分子は金属粒子に直接的または間接的に結合され得る。間接的結合は、ポリリジンもしくは他の結合分子等の分子を介した結合、または標的分子と金属ゾルもしくは金属ゾルに結合した別の分子のどちらかとの双方に結合した分子とのあらゆる会合を含む。
【0052】
特に興味深いのは、封鎖されたコロイド金属ベクターを視覚化または検出するのに使用可能な染料または放射性物質等の検出剤である。蛍光性、化学発光性、熱感受性、不伝導性(opaque)、ビーズ状、磁性および振動性の物質もまた、本発明の組成物中のコロイド金属に会合または結合する検出剤としての使用が企図される。
【0053】
in vitroにおいてナイーブヒトB細胞からの一次抗体応答の発生は、ヒト抗体応答のin vitroでの再構築における第1のステップにしか相当しない。免疫ヒトB細胞由来の一次抗体応答は、IgM抗体の分泌をもたらす。抗原提示細胞(APC)として知られる第2のクラスのリンパ球様細胞もまた、抗原を吸収する。一度吸収されると、これらの細胞はタンパク質抗原を断片化処理し、それらは次に2つの主要組織適合複合体(MHC)の1つと結合されて細胞の表面に発現する。これらの細胞は、抗体のクラス・スイッチに重要である。
【0054】
免疫系応答の現在の理論を本明細書に示す。本発明は本明細書に記載される機構に限定されないが、複数の方法で機能することができ、本明細書に記載されるいかなる特定の理論によっても限定されない。微小環境に応じて、クラスII MHC分子に結合した抗原を提示したAPCは、CD4+ T細胞の2つのサブセットのうちの1つを活性化する。これらの細胞はヘルパーT細胞としても知られ、細胞性または液性(抗体)免疫応答を促進するために必須の補助機能を果たす。TH1 CD4+細胞が細胞性免疫応答を促進する一方で、CD4+細胞のTH2サブセットはクラス・スイッチの過程を開始するためにIgMを分泌するB細胞と相互作用する。
【0055】
APCによるCD4+ TH2 T細胞の活性化は、免疫シナプスとして知られる二細胞間隙の形成によって生じる(Wulfing C, Sumen C, Sjaastad MD, Wu LC, Dustin ML, Davis MM. Nat Immunol 2002. 31: 42-7)。免疫シナプスの形成は、APCにおけるシグナル伝達および構造リガンドの、T細胞上の個々の受容体との相互作用ならびに再配列を含み、それらの2つの細胞間の接触およびシグナル伝達を可能にする三次元(3-D)のブリッジを形成する(図1)。APCとT細胞との間の抗原シグナル伝達は、MHC/抗原複合体のT細胞受容体複合体との結合を介して生じる一方、免疫シナプスの構造完全性は各々、APC上のICAM(細胞内接着分子)、LFA-3およびCD72と、T細胞上のLFA-1、CD2およびCD5受容体との相互作用によって維持される。免疫シナプスの良好な形成は、CD4+ T細胞にCD40リガンドとして知られるB細胞刺激分子の発現をもたらす。
【0056】
免疫シナプスの形成は、T細胞に活性または不活性(アネルギー)となるようにシグナルを送り得る。どの応答が開始するかは、APC上のB7分子によってT細胞に提供される共刺激シグナルの強度に依存する。B7分子はT細胞上のB7受容体分子、CD28またはCTLA4のどちらかと相互作用し得る。これらのB7受容体は、B7分子に対するそれらの親和性と同様にT細胞の表面におけるそれらの密度について異なる。CD28はCTLA4よりもB7に対する親和性が低いが、しかしT細胞の表面においてはるかに高い密度で存在する。B7のCD28受容体への結合がT細胞に活性化シグナルを送る一方、CTLA4によるB7の結合はT細胞アネルギーを誘導する(Kuby, J., Immunology第3版 1997. Allen D.編, pp. 213-218)。従って、免疫シナプス中の過剰なB7の存在は、T細胞が活性化するのを確実にするだろう。活性化CD4+/CD40+ T細胞は、IgM分泌B細胞とシナプスを形成する。T細胞上のCD40リガンドの、B細胞上のCD40受容体との相互作用は、IgM分泌B細胞がIgGを産生するクラス・スイッチを受ける原因となる(図2)。
【0057】
本発明は、CD4+ T細胞を活性化できるAPC、ならびに免疫化B細胞または不死化B細胞の抗体応答を成熟させることができる人工CD4+ T細胞(sTc)および人工胚中心(sGC)を作製する方法を含む。本発明の組成物は、T細胞を活性化することができるコロイド金属ベクターおよび免疫化または不死化B細胞の成熟をもたらすベクターを含む。例えばベクターは、コロイド金属ベクターの表面と会合する抗原負荷主要組織適合(MHC)クラスIIタンパク質、共刺激タンパク質B7、および構造タンパク質細胞内接着分子(ICAM)を有し得る。このベクターはAPCの三次元的な配置を複製し(図3)、そしてCD4+ T細胞を活性化することにより免疫化B細胞の抗体応答を成熟させることのできる人工抗原提示細胞(sAPC)として機能する。sAPCの1つの実施形態は、コロイド金属の単一粒子におけるすべての構成成分を含む。sAPCの別の実施形態は、in vitroで自己組織化してsAPCを形成する金コロイドの個々の粒子上に結合した免疫シナプスの構造タンパク質を含む。
【0058】
本発明の人工抗原提示細胞(sAPC)を含む方法および組成物は、容易に入手可能かつ「冷蔵庫から取り出す」ことができ、そしてヒト抗体を操作するのに使用され得る組成物を含む。従って、本発明は疾患ならびに免疫関連機能不全および病状を治療する方法を含む。コロイド金属組成物は、免疫応答の開始、維持および制御(下方制御または上方制御のどちらか)に関与する変数を制御し、例えば、粒子サイズ、粒子当たりに結合するタンパク質の量、粒子上でのタンパク質移動の柔軟性、ならびに粒子の三次元的な集合がsAPCの再現可能な調節を確実にする。
【0059】
本発明のベクター組成物は、モノクローナル抗体のin vitroにおける生成に使用され得る。そのようなモノクローナル抗体は、多発性疾患を治療する方法において使用され得る。また、本発明のベクター組成物は、改良されたワクチン組成物を作製するのにも使用され得る。
【0060】
ワクチン治療において、ヒト免疫系の細胞性および液性応答の双方を刺激するように特に設計された人工免疫原の組成物が使用される。抗原の提示および特定の細胞の刺激のための特異的人工細胞免疫エレメントの作出によって、より予測可能かつ有効なワクチン応答が可能となる。
【0061】
本発明は、混合ワクチンおよびDNAワクチンを含む。混合ワクチンの例示は、百日咳菌毒素およびその表面線毛ヘマグルチニンである。DNAワクチンにおいて、患者はタンパク質抗原をコードする核酸を投与され、それはその後何らかの形で転写、翻訳および発現され、抗原に対して強く長期間の液性および細胞媒介性免疫応答を生成する。
【0062】
ワクチンによって生じる免疫応答は、アジュバントの使用によって非特異的に増強され得る。これらは化合物または担体構成成分の混成群であり、それらはリポソーム、エマルジョンまたはマイクロスフィア等であり、様々な異なる作用機構を有する。本発明の方法は、疾患に対する予防および癌を治療するためのワクチンの使用を含む。
【0063】
癌に加え、多くの疾患は免疫系によって媒介され、そして本発明は、免疫系およびその構成成分を刺激することが可能なコロイド金属ベクターを含む有効な量の組成物を投与することによってそのような疾患の治療をする方法を含む。疾患は、クローン病、乾癬、炎症性大腸炎、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、アトピー性皮膚炎、鼻炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、移植片(腎臓、心臓、膵臓、肺、骨および肝臓等の移植)拒絶反応、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、エイズ、手足口病、橋本病、グレーブス病、アジソン病、自己免疫性多腺性内分泌不全症、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイド症、慢性リンパ球性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含む。
【0064】
本発明の方法は、活性化のために特定の免疫構成成分を標的化することによって、ワクチンの有効性を向上させる。コロイド金属および抗原と会合している、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む組成物が使用される。ワクチンが現在使用可能な疾患の例示は、コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス属、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふく風邪、百日咳、天然痘、肺炎球菌性肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核、腸チフス、水痘帯状ヘルペス、百日咳、および黄熱病を含むが、これらに限定されない。
【0065】
投与経路と免疫系に抗原を送達するために使用するベクターとを組み合わせることは、所望の免疫応答を設計するための強力な手段となる。本発明は、種々のベクター、または免疫刺激ベクター組成物の持続的放出を提供し得るリポソーム、マイクロカプセルもしくはマイクロスフィア等の送達剤と会合したベクターを包含する方法および組成物を含む。これらの送達系は、ベクターを保持し、そして免疫系の活性化のためにそれを徐放するための体内のデポ剤として作用する。例えば、リポソームは抗原、およびコロイド金属と会合した構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有するベクターを含む組成物で充填され得る。
【0066】
抗原/構成成分に特異的な免疫刺激物質/金属複合体は、リポソームから徐々に放出され、そして免疫系によって外来性であると認識され、構成成分に特異的な免疫刺激物質が対象とする特異的な構成成分は、免疫系を活性化する。免疫系のカスケードは、構成成分に特異的な免疫刺激物質の存在によってより迅速に活性化され、そして免疫応答がより迅速かつより特異的に発生する。
【0067】
本発明で意図する他の方法および組成物は、コロイド金属粒子が異なるサイズである、抗原/構成成分に特異的な免疫刺激物質/コロイド金属複合体の使用を含む。構成成分に特異的な免疫刺激物質の連続投与は、これらの異なるサイズのコロイド金属粒子を使用することによって1用量投与で達成され得る。1用量には、抗原と複合した4つの独立した構成成分に特異的な免疫刺激物質が含まれ、その各々は異なるサイズのコロイド金属粒子を有するだろう。従って、同時投与は、免疫構成成分の連続的な活性化を提供することにより、個体群に対してより有効なワクチンおよびさらなる予防をもたらすだろう。連続的活性化を伴うそのような単回用量投与の他のタイプは、異なるサイズのコロイド金属粒子とリポソームまたは異なるサイズのコロイド金属粒子で充填されたリポソームとを組み合わせることによって提供され得る。
【0068】
上記のようなワクチン接種システムの使用は、1用量で投与することのできるワクチンを提供するのに非常に重要である。1用量投与は、家畜等の動物個体群または動物の野生個体群を治療するのに重要である。1用量投与は、医療が不十分な貧困、ホームレス、農村部の者または発展途上国の人々等の医療に抵抗のある個体群の治療において不可欠である。世界中の多くの人々は、ワクチン接種等の予防型医療のための手段を持たない。結核等の感染性疾患の再発は、一度受けると持続的で有効に予防することができるワクチンへの需要を増加させた。
【0069】
本明細書で使用する「コロイド金属」という用語は、あらゆる非水溶性金属粒子または金属化合物、ならびに液体または水(ヒドロゾル)中に分散したコロイド炭素等の非金属由来のコロイドを含む。本発明で使用され得るコロイド金属の例示は、周期表のIIA、IB、IIB、IIIB群、ならびに遷移金属、特にVIII群の金属を含むが、これらに限定されない。好ましい金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。他の適当な金属はまた、以下のものの種々の酸化状態すべてを含む:リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、白金およびガドリニウム。金属は好ましくはイオン型で提供され(好ましくは適切な金属化合物に由来する)、例えば、Al3+、Ru3+、Zn2+、Fe3+、Ni2+およびCa2+イオンである。好ましい金属は銀であり、特にホウ酸ナトリウムバッファー中で、濃度が約0.1%〜0.001%の間であり、最も好ましくは約0.01%の溶液である。別の好ましい金属は金であり、特にAu3+の型である。金コロイドの特に好ましい型は、HAuCl4(OmniCorp, South Plainfield, NJ)である。そのような銀コロイド溶液の色は黄色であり、そしてコロイド粒子は1〜100ナノメートルの範囲であり得る。そのような金属イオンは、複合体中で単独または他の無機イオンと共に存在し得る。
【0070】
あらゆる抗原が本発明において使用され得る。本発明において有用な抗原の例示は、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-3(「IL-3」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、百日咳毒素、破傷風毒素、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF-αまたはβ)、形質転換成長因子-β(「TGF-β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(「TGF-α」)、熱ショックタンパク質、上皮増殖因子(「EGF」)、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原(MART、MAGE、BAGE等)、ならびに熱ショックタンパク質(HSP);突然変異体p53;チロシナーゼ;ムチン(Muc-1、PSA、TSH、自己免疫抗原等)、免疫治療薬(AZT等)、ならびに血管形成薬および抗血管形成薬(アンギオスタチン、エンドスタチン、塩基性線維芽細胞増殖因子、および血管内皮増殖因子、前立腺特異的抗原等)、ならびに甲状腺刺激ホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0071】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、免疫系に作用するあらゆる分子または化合物、例えば、B細胞の抗体産生を刺激するAPCの能力を向上させる任意の分子であり得る。構成成分に特異的な免疫刺激物質の例示は、抗原、コロイド金属、アジュバント、受容体分子、核酸、免疫原性タンパク質、ならびに補助サイトカイン/免疫刺激剤、医薬品、化学療法剤、および担体を含むが、これらに限定されない。
【0072】
あらゆるタイプの医薬品が本発明で使用され得る。例えば、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤等の抗炎症剤、可溶性受容体、抗生物質、鎮痛剤、COX-2阻害剤。特に興味深い化学療法剤は以下の限定されない例示を含む:タキソール、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチン、メトトレキサート、ミトラマイシンおよびタクリン。
【0073】
これらの構成成分に特異的な免疫刺激物質は、別々にまたは組み合わせて使用され得る。これらは遊離状態またはコロイド金属との組み合わせなどの複合体で使用され得る。
【0074】
本発明で有用な、構成成分に特異的な免疫刺激物質の例示は、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-3(「IL-3」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF-α」)、Flt-3リガンド、形質転換成長因子-β(「TGF-β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(「TGF-α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原(MART、MAGE、BAGE等)、ならびに熱ショックタンパク質(HSP);突然変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬(AZT等)、ならびに血管形成薬および抗血管形成薬(アンギオスタチン、エンドスタチン、塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、および前立腺特異的抗原等)、ならびに甲状腺刺激ホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0075】
本発明で有用なアジュバントは、熱殺菌された牛酪菌およびヒト型結核菌を含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドの限定されない例示は、DNA、RNA、mRNA、センスおよびアンチセンスである。免疫原性タンパク質の例示は、KLH(キーホールリンペットシアニン)、チログロブリン、ならびに遺伝子内にコードされたアジュバントおよび抗原部分を有する融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0076】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、既知の遺伝子治療法を用いて、これらの核酸の形状で送達され、そして翻訳された後にそれらの効果が発揮され得る。免疫構成成分の活性化のためのさらなるエレメント(抗原等)が、同時にまたは連続して送達され得るのは、細胞で翻訳される構成成分に特異的な免疫刺激物質と外部から添加されるエレメントとが連携して作用し、免疫応答を特異的に標的化するためである。
【0077】
特に好ましい実施形態は、構成成分に特異的な免疫刺激物質と組み合わせた特異的抗原からなる薬剤を含むベクター組成物を使用して、免疫応答を活性化する方法を提供する。そのような方法はin vitroまたはin vivoにおいて有効であり、使用され得る。本明細書において、構成成分に特異的な免疫刺激物質とは、構成成分が免疫応答において活性を有するように、免疫系の構成成分(B細胞またはT細胞等)に対して特異的であって、かつその構成成分に作用することが可能な薬剤を意味する。構成成分に特異的な免疫刺激物質は免疫系のいくつかの異なる構成成分に作用することが可能であり得るものであり、そして、この可能性は本発明の方法および組成物に用いられ得る。この薬剤は、天然のものであってよく、または分子生物学技術もしくはタンパク質受容体操作を通して生成または修飾され得る。
【0078】
免疫応答における構成成分の活性化は、免疫応答の他の構成成分の刺激または抑制をもたらし、これらは免疫応答の全体的な刺激または抑制へ導く。説明を簡単にするために免疫構成成分の刺激が本明細書に記載されるが、しかし、免疫構成成分のすべての応答が刺激という用語により意図され、これは刺激活性、抑制活性、拒絶活性およびフィードバック活性を含むが、これらに限定されないことが理解される。
【0079】
作用を受ける免疫構成成分は複数の活性を有していてもよく、抑制および刺激の双方またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を導く。本発明は、本明細書に詳述される免疫応答の例示によって限定されるべきではないが、しかし、免疫系のすべての態様における構成成分に特異的な作用を意図する。
【0080】
免疫系の各構成成分の活性化は、同時的、連続的、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の方法の1つの実施形態において、複数の構成成分に特異的な免疫刺激物質は同時に投与される。この方法において、免疫系は複数の別々の調製物によって同時に刺激され、この調製物の各々は構成成分に特異的な免疫刺激物質を含むベクター組成物を含む。好ましくは、ベクター組成物はコロイド金属と会合した、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。より好ましくは、組成物は、単一サイズ粒子もしくは異なるサイズの粒子のコロイド金属および抗原と会合している、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。最も好ましくは、組成物は単一サイズ粒子もしくは異なるサイズ粒子のコロイド金属、抗原、およびPEGもしくはPEG誘導体、好ましくはチオールPEG(PEG(SH)n)、または誘導体化ポリ-L-リジン、好ましくはポリ-L-リジンチオール(PLL(SH)n)と会合した、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。
【0081】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、特異的な刺激性、上方制御を提供し、個々の免疫構成成分に作用する。例えば、インターロイキン-1β(IL-1β)はマクロファージを特異的に刺激する一方、TNF-α(腫瘍壊死因子α)およびFlt-3リガンドは樹状細胞を特異的に刺激する。熱殺菌された牛酪菌およびインターロイキン-6(IL-6)はB細胞の特異的刺激物質であり、インターロイキン-2(IL-2)はT細胞の特異的刺激物質である。このような構成成分に特異的な免疫刺激物質を含むベクター組成物は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞の各々に特異的な活性化を提供する。例えば、マクロファージが活性化するのは、構成成分に特異的な免疫刺激物質IL-1βを含むベクター組成物が投与された場合である。好ましい組成物は、コロイド金属と会合したIL-1βであり、最も好ましい組成物はコロイド金属および抗原と会合することでその抗原に対して特異的なマクロファージ応答を提供するIL-1βである。ベクター組成物はさらに、標的分子、統合分子(integrating molecules)、PEGまたは誘導体化PEGを含み得る。
【0082】
免疫応答の多くのエレメントは、抗原に対する有効な免疫応答に不可欠であり得る。同時的な刺激方法の実施形態は、1)マクロファージに対するIL-1β、2)樹状細胞に対するTNF-αおよびFlt-3リガンド、3)B細胞に対するIL-6、および4)T細胞に対するIL-2を含む、構成成分に特異的な免疫刺激物質の組成物の4つの個々の調製物を投与することである。各々の構成成分に特異的な免疫刺激物質のベクター組成物は、当業者に知られている任意の経路によって投与してよく、そして所望の免疫応答に応じて同じ経路または異なる経路を用いてもよい。
【0083】
本発明の方法および組成物の別の実施形態において、個々の免疫構成成分が連続して活性化される。例えば、この連続的活性化は2つの段階(プライマー段階および免疫段階)に分けることができる。プライマー段階はAPC(好ましくはマクロファージおよび樹状細胞)の刺激を含み、一方免疫段階はリンパ球、好ましくはB細胞およびT細胞の刺激を含む。2つの段階各々の間で、個々の免疫構成成分の活性化は同時または連続し得る。連続した活性化のために、好ましい活性化の方法はマクロファージに続いて樹状細胞、続いてB細胞、続いてT細胞の活性化を引き起こすベクター組成物の投与である。最も好ましい方法は、マクロファージおよび樹状細胞の同時的活性化に続いてB細胞およびT細胞の同時的活性化を引き起こすベクター組成物の投与を含む、同時的連続活性化である。これは免疫系のいくつかの経路を開始する、複数の構成成分に特異的な免疫刺激物質の方法および組成物の例示である。
【0084】
金属ゾルに薬剤を結合する1つの方法は以下のステップを含み、明瞭な目的のみに対してであるが、開示される方法は単一の薬剤(TNF)を金属ゾル(金コロイド)に結合することに関する。金コロイドゾル中の粒子とタンパク質溶液中のTNFとの間の相互作用を可能にする装置が使用された。装置の略図を図11に示す。この装置は、結合されるべきタンパク質(TNF)と結合していない金コロイド粒子との相互作用を、混合チャンバーを小容量に減らすことによって最大化する。この装置は、大容量の金ゾルと大容量のTNFとの相互作用が小容量のT字型コネクタ内で起こることを可能にする。反対に、小容量のタンパク質を大容量の金コロイド粒子に添加することは、タンパク質が金粒子に均一に結合するのを確実にする好ましい方法ではない。小容量の金コロイドを大容量のタンパク質に添加する逆の方法もそうである。物理的に、金コロイド粒子およびタンパク質(TNF)は、2つの大きな容器から金コロイド粒子およびTNFタンパク質を汲み上げる1つのペリスタポンプによってT字型コネクタ内に送り込まれる。適切な混合をさらに確実にするために、インラインミキサーがT字型コネクタのすぐ下流に設置される。ミキサーは、金コロイド粒子をTNFと激しく混合し、双方は好ましい流速である約1L/分でコネクタを通る。
【0085】
薬剤との混合の前に、1N NaOHを用いて金ゾルのpHをpH8〜9に調整する。金ゾルのpHを調整するために好ましい方法は、100 mMトリスを用いる方法であり、金コロイドゾルのpHをpH6に調整する。高純度の、凍結乾燥された組み換えヒトTNFを再構築する。TNFを希釈するための好ましい方法は、100 mMトリスでpH6に調整された水中で行う方法である。ゾルまたはTNFのどちらかをそれらの個々の容器に添加する前に、容器をT字型コネクタに連結する管類を閉鎖する。等容量の金コロイドゾルおよびTNF溶液を適当な容器に添加する。溶液中の活性剤の好ましい濃度は約0.01〜15μg/mlの範囲であり、薬剤の金属ゾル粒子に対する所望の割合によって変化し得る。溶液中のTNFの好ましい濃度は、0.5〜4μg/mlの範囲であり、そしてTNF-コロイド金属組成物についてのTNFの最も好ましい濃度は、0.5μg/mlである。
【0086】
一度溶液がそれらの個々の容器内に適切に装填されると、ぺリスタポンプが作動して、薬剤溶液および金コロイド溶液をT字型コネクタ内に汲み上げて、インラインミキサーを通過し、ペリスタポンプを抜けて収集フラスコ内に入る。混合された溶液は収集フラスコ中でさらに1時間に渡るインキュベーションの間、攪拌される。
【0087】
PEGを含む組成物において、誘導体であってもそうでなくても、そのような組成物を作製する方法は以下のステップを包含するが、明瞭にする目的にのみに対してであり、開示される方法はPEGチオールを金属ゾル組成物に添加することに関する。あらゆるPEG、誘導体化PEG組成物もしくはあらゆるサイズのPEG組成物、またはいくつかの異なるPEGを含有する組成物は、以下のステップを用いて作製され得る。15分間のインキュベーションの後、チオール誘導体ポリエチレングリコール(PEG)溶液は金コロイド/TNFゾルに添加される。本発明は、任意の誘導体基を有するあらゆるサイズのPEGの使用を意図するが、しかしながら、好ましい誘導体化PEGは、mPEG-OPSS/2,000、mPEG-OPSS/5,000、mPEG-OPSS/10,000、mPEG-OPSS/12,000、mPEG-OPSS/20,000、mPEG-OP(SS)2/2,000、mPEG-OP(SS)2/3,400、mPEG-OP(SS)2/8,000、mPEG-OP(SS)2/10,000、チオール-PEG-チオール/2,000、mPEG-チオール5,000、およびmPEGチオール10,000、mPEGチオール12,000、mPEGチオール20,000(Sun-BIO Inc.)を含む。好ましいPEGは、pH5〜8の、水中で150 μ/mlの濃度のmPEG-チオール 5000である。従って、10% v/vのPEG溶液が金コロイド-TNF溶液に添加される。金/TNF/PEG溶液はさらに15分間インキュベーションされる。
【0088】
好ましい方法において、TNFおよびPEG-THIOL部分は同時に金コロイドナノ粒子に結合する。この方法において、金コロイドナノ粒子のpHは、100 mMトリス塩基を用いて6.0に調節される。同様に、水のpHは100 mMトリス溶液を用いて6.0に調節される。TNFおよびPEG-THIOL(20,000)は、後者の溶液中に最終濃度が各々5および15μg/mlになるように希釈される。金コロイドナノ粒子およびTNF/PEG-THIOL溶液の双方は、それらの個々の容器に装填され、そしてT字型コネクタおよびインラインミキサーを通して、各々の溶液をT字型コネクタを通して汲み上げるペリスタポンプを用いて結合される。15分間の結合の後、ヒト血清アルブミン(H2O中200μg/ml)を金コロイド/TNF/PEG-THIOL溶液に添加し、そしてさらに15分間インキュベーションする。
【0089】
続いて金コロイド/TNF/PEG溶液を、50〜100K MWCOダイアフィルトレーションカートリッジを通して限外濾過する。50〜100K保持液および浸透液をTNF濃度に対してELISAによって測定することで、金粒子に結合したTNFの量が決定される。
【0090】
ダイアフィルトレーションの後、マンニトールの組成物等の抗凍結剤を20 mg/ml;および/またはヒト血清アルブミンを5 mg/mlを添加して、サンプルを-80℃で凍結する。サンプルを凍結乾燥させることで、真空下で乾燥および密封し、続いて再構築し、そして再構築したサンプル中に存在する遊離のTNFの量および金コロイドに結合したTNFの量について解析する。
【0091】
本発明の組成物は、in vitroおよびin vivo系に投与され得る。in vivo投与は、標的細胞への直接的な使用、または経口、直腸、経皮、目(硝子体内もしくは眼房内を含む)、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣内、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、気管内および硬膜外を含む)投与に適した製剤を含む(が、これらに限定されない)ような投与経路を含み得る。好ましい方法は、経口経路または注射経路を介して、本発明のベクターを含む有効量の組成物を投与することを包含する。
【0092】
製剤は、単位投与形態で都合よく提供され得、そして従来の製薬技術によって調製され得る。医薬製剤組成物は、金属ゾルベクターと医薬担体または賦形剤とを会合させることによって作製される。一般的に、製剤は液体担体もしくは細かく分割した固形担体またはその双方と共に、組成物を均一かつ密接に会合させ、そして次に必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0093】
この発明はさらに以下の実施例によって説明され、これらの実施例はその範囲に対する制限を課すようには解釈されるべきではない。反対に、種々の他の実施形態、改変およびこれらの等価物を有し得るものであり、本明細書中の説明を読解した後に、当業者にそれらを、本発明の意図および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく示唆し得ることが、明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0094】
実施例1.金コロイドの製造
金コロイドゾルは、FrensおよびHorisberger(Frens, G. Nature Phys. Sci. 1972, 241, 20-22およびHorsiberger, M. Biol. Cellulaire. 1979. 36: 253-258)によって記載される反応を用いて製造される。この反応において、イオン化金はHAuCl4の形態であり、クエン酸ナトリウムの添加によりAu0のナノ粒子に還元される。一般的には、2.5 mlの4%四塩化金酸(水中)溶液を1Lの脱イオン水に添加する。溶液を勢いよく攪拌し、沸騰させる。還元反応は、1%クエン酸ナトリウム溶液の添加によって開始する。粒子のサイズは反応液に添加するクエン酸の量によって調節される。例えば、17、32および64 nm粒子は、それぞれ40、15および7.5 mlのクエン酸溶液の添加によって形成される。クエン酸を添加した後、溶液を沸騰させ、そしてさらに45分間混合してもよい。冷却直後に、ゾルを0.22μm滅菌フィルターを通して濾過し、そして使用するまで室温で保存する。
【0095】
金コロイドゾルの生成は、1.0L〜10Lまでスケールアップされてきた。UV-VIS波長走査、動的光散乱、および分画遠心技術を用いて、それらの粒子の平均粒子サイズおよび均質性について確認する。製造された粒子は、通常それらの予測サイズの10%以内である平均粒子サイズを有し、そして1.03〜1.12またはそれ以下の多分散度を示す。
【0096】
実施例2.免疫担当B細胞数の増加
免疫付与のため免疫担当B細胞数を増加させるために、MHCクラスII限定表面IgM+/sIgD+ヒトB細胞が、全血または軟膜の一群から単離される。抗IgM、抗IgDおよび抗CD19抗体でコーティングされた磁気ビーズは、B細胞集団を分離する。sIgM+/sIgD-未成熟B細胞をサイトカインインターロイキン-7で処理することが、さらなるB細胞を採取するのに用いられる(Sudo, T., Ito, M., Ogawa, Y., Iizuka, M., Kodoma, H., Kunisasa, T., Hayashi, S.C., Ogawa, M., Sakai, K., Nishikawa, S., Nishikawa, S.C. J. Exp. Med. 1989. 170: 333-338)。この処理は、sIgM+/sIgD-B細胞がsIgM+/sIgD+B細胞に表現型変化することによって示されるように、これらのB細胞を成熟させることが明らかにされてきた。これらの単離された細胞は、FACS分離を用いてほぼ均質に精製される。
【0097】
TNFをKLHまたはチログロブリン等の担体と複合体化させること(以下の論考を参照せよ)で、ヒトTNFの抗原性を増強する。TNF:KLH抗原は、インターロイキン-6(IL-6)等のB細胞標的化/活性化剤を含有する金コロイド粒子の表面に結合する。IL-6は、サイトカインであり、免疫化B細胞由来の抗体の合成を刺激することが知られる。同一の金粒子上に双方の部分を有することは、B細胞がKLH:TNF抗原シグナルならびにIL-6シグナルを受け取ることを確実にし、抗体応答を活性化することを確実にする。
【0098】
実施例3.一次抗体応答の分化
治療的抗体の生成に重要なのは、クラス・スイッチの過程である。免疫化ヒトB細胞由来の一次抗体応答は、IgM抗体の分泌をもたらす。抗原提示細胞(APC)として知られる第2のクラスのリンパ球様細胞もまた抗原を吸収する。一度吸収されると、これらの細胞はタンパク質抗原を断片化処理し、それらは次に2つの主要組織適合複合体(MHC)の1つと結合されて細胞の表面に示される。
【0099】
微小環境に応じて、クラスII MHC分子に結合した抗原を示すAPCは、CD4+ T細胞の2つのサブセットのうちの1つを活性化する。これらの細胞は、ヘルパーT細胞としても知られるが、細胞性または液性(抗体)免疫応答を促進するために必須の補助機能を果たす。TH1 CD4+細胞が細胞性免疫応答を促進する一方で、CD4+細胞のTH2サブセットはIgMを分泌するB細胞と相互作用し、クラス・スイッチの過程を開始する。
【0100】
APCによるCD4+ TH2 T細胞の活性化は、免疫シナプスとして知られる二細胞間隙の形成を伴って生じる。免疫シナプスの形成は、APCにおけるシグナル伝達および構造リガンドのT細胞上での個々の受容体との相互作用ならびに再配列を含み、それらの2つの細胞間の接触およびシグナル伝達を可能にする三次元(3-D)のブリッジを形成する(図1)。APCとT細胞との間の抗原シグナル伝達は、MHC/抗原複合体のT細胞受容体複合体との結合を介して生じる一方、免疫シナプスの構造完全性は各々、APC上のICAM、LFA-3およびCD72と、T細胞上のLFA-1、CD2およびCD5受容体との相互作用によって維持される。免疫シナプスの良好な形成は、CD4+ T細胞がCD40リガンドとして知られるB細胞刺激分子を発現する原因となる。
【0101】
免疫シナプスの形成は、T細胞が活性または不活性(アネルギー)となるシグナルを送り得る。どの応答が開始するかは、APC上のB7分子によってT細胞に提供される共刺激シグナルの強度に依存する。B7分子はT細胞上のB7受容体分子、CD28またはCTLA4のどちらかと相互作用し得る。これらのB7受容体は、B7分子に対するそれらの親和性と同様にT細胞の表面におけるそれらの密度について異なる。CD28はCTLA4よりもB7に対する親和性が低いが、しかしT細胞の表面においてはるかに高い密度で存在する。B7のCD28受容体への結合がT細胞に活性化シグナルを送る一方、CTLA4によるB7の結合はT細胞アネルギーを誘導する(Kuby, J., Immunology第3版 1997. Allen D.編, pp. 213-218)。従って、免疫シナプス中の過剰なB7の存在は、T細胞が活性化するのを確実にするだろう。
【0102】
この過程において、免疫化ヒトB細胞が免疫グロブリン遺伝子の再構成を受けることで、高特異性高親和性IgG抗体を生成する。
【0103】
このベクターはまず、MHC、B7およびICAMタンパク質から金コロイド粒子の表面上へと集合する。免疫シナプスの提示は三次元的な配置でなされ、これによりこのベクターがうまくCD4+T細胞を誘導してMHC限定的にCD40リガンドを発現することを可能にする。
【0104】
この過程はまた、種々のサイトカインおよび人工胚中心と組み合わせてCD40リガンドを発現するsTcを用いることで任意に開始され、それらの複合分子は、治療的mAbに重要な親和性成熟を示す。
【0105】
実施例4.スペーサー・アームを有するsAPC/sTc/sGCの作出
このsAPCは、ビオチン化形態のMHC、B7およびICAMタンパク質を結合するのに使用される、ストレプトアビジン金コロイド粒子上に構築される。この単一粒子sAPCがより高度な柔軟性を有するのは、構造タンパク質がビオチン-アビジンブリッジを形成するビオチン化スペーサー・アームを介して間接的に金コロイド粒子に結合しているためである。同様に、sTcおよびsGCはそれらの各々の構成成分を金コロイドへ結合するための同様の方法を用いて生成され得る。
【0106】
実施例5.自己組織化APCs/sTcs/sGCs
自己組織化人工APCが作成される。各々のAPCタンパク質を異なる金コロイド粒子に結合することで、免疫シナプスタンパク質の複雑な基質を作出する。このsAPCの組織化を導くために、部位特異的な分子足場を作製して、3-Dにおいて種々の粒子をより正しい位置にする。図5に示されるのは、この自己組織化sAPCの説明である。各粒子サブユニットの製剤は、単一粒子が複数の試薬に結合することを可能にする。図示するために、MHCクラスII分子は32 nm金コロイド粒子に結合し、これはストレプトアビジンとも結合している。sAPCの残りの2つのサブユニット、B7およびICAMは、17 nm粒子に結合する。MHC粒子のように、ICAMサブユニットはストレプトアビジン連結部位を含む。この粒子を組織化するために、ビオチン化ヒト血清アルブミンを用いてICAMおよびMHC粒子を共に結合させる。ベクターの完全な組織化のために、ジチオレート化ポリエチレングリコールを用いてMHCおよびB7粒子を共に架橋する。
【0107】
このモデルにおいて、免疫シナプスの形成はT細胞受容体/膜再構成から生じる。このベクターは、EIAプレート等の固形支持台にも結合し得る。これらの足場は、金コロイド標的抗原およびsAPCの双方を同じ基質内に存在させることを可能にする。結果として、ナイーブB細胞の免疫化の後に、sAPCがCD4細胞を活性化してCD4リガンドを発現させ、そして結果としてクラス・スイッチを誘導し得る。
【0108】
結合パートナーをCD40L/サイトカインまたはBLYS/CD30Lに変更することによって、自己組織化人工T細胞または人工胚中心が生成される。
【0109】
実施例6.金コロイド粒子へのタンパク質の結合
金コロイド粒子へのタンパク質の結合は、金コロイドゾルおよびタンパク質溶液のpHによる影響を受ける。至適pHにおいて、タンパク質は金コロイド粒子の表面に結合し、そして塩によるそれらの沈殿を防止する。金コロイドの塩誘発性沈殿は、ゾルの色が赤色から黒色に変化することによって容易に証明される。最適結合pHは、MHC、B7、ICAM、IL-6およびKLH:TNF抗原を含む、記載される各タンパク質に対して決定される。例えば、以下に記載する手順は、MHC分子を金コロイド粒子に結合させる方法を概説する。同様の手順は、各々の他のタンパク質の結合条件を決定するのに使用される。
【0110】
金コロイドへのMHC結合についての最適結合pHは、1 ml分液の金コロイドのpHを1 N NaOHで4〜11に調整することで決定される。各金溶液由来の100μl分液を微小遠心管に移し、そして1 ngのMHCタンパク質と共に30分間インキュベーションする。次に100μlの10%NaCl溶液を各遠心管に添加する。最適結合pHは、MHCタンパク質が金コロイド粒子に結合できるようにし、同時に塩誘発性沈殿を防止するpHとして定義される。
【0111】
最適結合pHを決定するのに加え、飽和結合解析が各タンパク質に対して実施される。この試験のために、金コロイド粒子のpHは前述の最適結合pHに調整される。続いて、MHCタンパク質の増加量(0.025〜5 ngのタンパク質)を100μl分液の金コロイドに添加する。30分間結合した後、様々な分液を10,000 rpmで遠心分離して金コロイド結合タンパク質から分離する。上清および金コロイド沈殿物を、各画分に存在するMHCタンパク質の相対量について解析する。
【0112】
実施例7.結合したMHCタンパク質の質量の定量化
金の粒子当たりの結合MHCタンパク質の質量を定量するために、定量EIAがMHCおよびB7タンパク質の測定用に開発される。ICAMのためのEIAは、すでに市販されている。MHCおよびB7タンパク質は、各タンパク質に対する競合結合EIAの開発によって定量的に測定される。B7およびMHCタンパク質に対する市販の抗体(両抗体はResearch Diagnostics, Inc.より入手可能)は、炭酸/重炭酸バッファー(pH 9.6)を使用してEIAプレート上にコーティングされる。MHCおよびB7の参照基準は、1.56 ng/ml〜500 ng/mlの範囲の用量を提供するために作製される。これらの基準は、MHCまたはB7タンパク質のどちらかに特異的な抗体を含むEIAプレートに添加される。金コロイド結合サンプルは、EIAプレートにおける他の指定されたウエルに添加される。
【0113】
種々のタンパク質の濃度は、サンプルまたは基準中に存在するタンパク質と抗体部位に対する分子のビオチン化形態との間の競合結合反応を達成させることによって決定される。ビオチン化リガンドは、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼにより検出される。基質の添加に際し、サンプル中に存在する検体の質量と発色量との間に逆相関が生じる。
【0114】
実施例8. 同一粒子への複数のタンパク質結合
in vitroにおける免疫化の有効性および特異性を向上させるために、複数の化学的に異なるタンパク質を単一の金コロイド粒子の表面上に結合させる必要がある。3つの異なるタンパク質サイトカイン(IL-1、IL-6およびTNF)の、同一の金コロイド粒子への結合が実証されている。各サイトカインは、金コロイドに特定のpHで結合する。
【0115】
先に実証したように、IL-1は金コロイドにpH6〜8の間で結合する一方、TNFおよびIL-6はpH8〜11で結合することが各々測定された。0.25 ng/mlの3つのサイトカインを水中に含む溶液を、pH8で金コロイドゾルと共に混合した。サンプルを移し、そして残った溶液のpHを11に調整した。各pH変化の前に、さらにサンプルを採取した。2つのサンプルを遠心分離して、生じた金コロイドの沈殿物をPBS中に再懸濁した。
【0116】
同一の金粒子上に3つのサイトカインすべてが存在することを証明するために、種々のペレットを、TNFに対するモノクローナル抗体でコーティングされたEIAプレートに添加した。結合の後、プレートを洗浄し、そして指定されたウエルをアルカリホスファターゼ結合ウサギ抗IL-1、IL-6またはTNFのいずれかと共にインキュベーションした。洗浄の後、基質を各ウエルに添加して発色を開始した。図6に示されるデータは、最適結合pHが重複するために、pH8でIL-1およびTNFの双方が粒子上に存在したことを示す。しかしながら、IL-6シグナルは非常にわずかしか検出することができなかった。pHを11に上昇させることにより、IL-6のこれらの粒子への結合を可能にした。
【0117】
実施例9.キメラベクターの特定細胞への標的化
EGFおよびストレプトアビジンは同一の32 nm粒子の金コロイドに結合させた。二次/標的分子の結合のために、サンプルを3つの分液に分けた。1つのサンプルはビオチン化IL-1、別のはビオチン化GM-CSF、そして3つ目はビオチン化IL-6と結合させた。ビオチン化リガンドを結合した後、サンプルを遠心分離してあらゆる遊離の試薬を除去し、そして金コロイド沈殿物をFicoll分離ヒト白血球に添加した。培養液中で8日後に、種々の金コロイドベクターの取り込みがデジタル写真によって証明された。
【0118】
EGFストレプトアビジン金は、標的化のためにビオチン化IL-1、ビオチン化GM-CSF、またはビオチン化IL-6を使用することによって、マクロファージ(図7A)、樹状細胞(図7B)およびB細胞(図7C)を標的とした。各図における黒色染色(赤色矢印で表示される)が、種々の金コロイドベクターの取り込みを表す。
【0119】
図7に見られるように、種々の金コロイド/サイトカインキメラは、免疫系の種々の細胞エレメントを別々に標的とした。黒色染色(矢印で表示される)は金コロイド粒子を表し、これは種々の免疫細胞によって吸収され、そして凝集されたものである。これらのデータは、IL-1が金コロイドEGFをマクロファージに標的化し、同時にGM-CSFがキメラを樹状細胞に標的化し、そしてIL-6がベクターをB細胞に標的化したことを示唆する。
【0120】
実施例10.ヒトリンパ球の免疫化
これらのベクターを用いて、単離したリンパ球由来の一次免疫応答を発生させることが可能である。密度勾配遠心分離によって、白血球を全血より収集した。これらの細胞をチログロブリン結合TNF/IL-6金コロイドベクターで処理した。細胞は、2日毎に全部で8日間、金コロイドベクターのパルスを受けた。最後のパルスの後、細胞をさらに5日間培養した。上清を回収し、そして直接EIAを用いてヒト抗ヒトTNF(IgM/IgDおよびIgGの組み合わせ)抗体の存在について試験した。図8に見られるように、キメラcAUチログロブリンTNFは最も高い免疫密度を有した。
【0121】
実施例11.クラスIIMHC発現のためのヒトB細胞および樹状細胞の免疫化
in vitroにおけるヒトリンパ球免疫化の有効性を増加させるために、2つの異なるアプローチが使用される。第一に、TNFの免疫原性担体(チログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニンまたはマウス血清アルブミン等)へのカップリングはTNFの免疫原性を向上させる。担体:TNF結合は、標準的なEDC/NHSおよびグルタルアルデヒド法を用いて実施される。第二に、細胞特異的な標的物質を含む金コロイドの粒子へのそれらのカップリングは、これらの抗原の特異性を向上させる。抗原の送達をB細胞に標的化するために、担体:抗原複合体をIL-6を含む金コロイド粒子に結合させる。担体抗原の送達を樹状細胞に標的化するために、担体:抗原複合体をGM-CSFを含む金コロイド粒子に結合させる。
【0122】
これらのベクターは、クラスII MHC抗原を生成するために、まずナイーブMHC拘束性ヒトB細胞および樹状細胞を免疫化するのに使用される。これらの同一のベクターは後にも使用されて、新規または複製セットのナイーブB細胞由来の一次抗体応答を誘導する。免疫化スキームは、B細胞および樹状細胞の種々のベクターでの連続的な免疫化を含む。結果として、B細胞および樹状細胞は担体と一度、そしてTNF抗原と三度出会う。
【0123】
実施例12.B細胞によるクラスII MHCタンパク質の生成
ヒトB細胞にクラスII MHCタンパク質の生成をさせるために、106表面IgM+/IgD+ヒトB細胞を24ウエルプレートに播き、1.5 mlのAIM V培地中で培養する。播いてから24時間後に、細胞をIL-6標的化金コロイドベクターに結合したTHYRO:TNF抗原でパルスする。2日後に、細胞をIL-6ベクターによって標的化されるKLH:TNF担体でパルスする。培養液中にさらに2日間おいた後、細胞を3つ目の担体:TNF抗原、MSA:TNFで免疫する。細胞をさらに3〜7日間インキュベーションして、FACS解析によってクラスII MHC発現の存在について試験する。あるいはまた、細胞を金コロイド抗原で同時にパルスしてもよい。
【0124】
同様の手順がMHCクラスIIタンパク質を発現するために樹状細胞をパルスするのに用いられる。これらの細胞は、GM-CSF標的化金コロイドベクターに結合したTNF:担体抗原で免疫される。樹状細胞前駆体を、抗CD34でコーティングした磁気ビーズを使用して末梢血より単離する。これらの細胞は、これらを1000 ng/mlのGM-CSFおよび100 ng/mlのIL-4が添加されたAIM V無血清培地中でインキュベーションすることにより、in vitroで増殖する。CD1aおよび空のクラスII MHC分子の検出のためのFACS解析によって確認されるそれらの成熟化に際し、細胞は10 ng/mlパルスのTNFで成熟樹状細胞に分化する。これらの成熟樹状細胞は、GM-CSF標的化金コロイドTNF抗原で免疫される。抗原負荷MHCクラスIIタンパク質複合体は、FACSまたはストレプトアビジン結合フィコエリトリン(Research Diagnostic Inc.)検出システムで検出されるビオチン化抗原ペプチドのin situ解析によって検出される。
【0125】
実施例13.MHCクラスII抗原の単離のための方法開発
MHCの単離のための方法には、「一般的な」非MHC適合性血液サンプルを使用する。これらのMHC分子は、金コロイド粒子上のタンパク質に対する最適pHおよび最適飽和条件を決定するのに使用される。一度決定されると、これらの方法は抗原負荷MHCを免疫化MHC拘束性血液プールから精製するのに適用される。
【0126】
一般的かつ抗原が負荷したヒトクラスII MHCの単離は、Sette(Setteら, J. Immunol. 1992. 148:844)によって記載される方法を用いて行われる。つまり、非HLA適合ヒト全血由来の軟膜を最低密度108細胞/mlで凍結し、細胞を破砕するために超音波分解する。これらの細胞を2%Renex、150 mM NaCl、5 mM EDTAおよび2 mM PMSFを含む50 mMトリス塩酸(pH8.5)のバッファー中に懸濁する。核を含む大きな粒子を、遠心分離(10000×gで20分間)によって除去する。次に細胞溶解物を、ヒトクラスII MHC分子(Research Diagnostics Inc.)に対するマウス抗体をタンパク質A/Gセファロースビーズに結合して作製されたアフィニティーカラムにおいて分画する。溶解物は少なくとも5回カラムを通して、MHCタンパク質の固定化抗体への結合を最大化する。カラムを10カラム容の10 mMトリス塩酸pH8.0/0.1%Renexを含むバッファーで洗浄し、続いて5カラム容の1%n-オクチルグルコシドを含むPBSでさらに洗浄する。MHCクラスIIタンパク質は、1%n-オクチルグルコシドを含む生理食塩水中の50 mMジエチルアミンのバッファー(pH11.5)を使用して、カラムから溶出される。溶出に際し、各画分を直ちに2 Mグリシン(pH2.0)の添加により中和する。MHC II分子を含む画分を分注し、そして25μg分液にして凍結乾燥する。
【0127】
実施例14.ヒトB7.1分子の生成
ヒト共刺激分子B7.1は、組み換えDNA技術によって作製する。この遺伝子は市販の一時的発現ベクター系(InVivogen Inc.)の1つとして供給される。構築物は適切な制限部位が備えられて、プラスミド構築物からの活性遺伝子の分離が可能である。ヒトB-7.1遺伝子は、制限酵素NcoIおよびNheIを使用してpORF宿主プラスミドから単離される。この二重消化は、2つのDNA直鎖化断片の形成をもたらす。一方の遺伝子断片はB-7.1遺伝子(893 bp)から構成され、もう一方の断片(3210 bp)はp-ORFプラスミドのアクセサリー遺伝子を構成する。遺伝子断片を1%アガロースゲル上で分画し、そしてエチジウムブロミド染色によって視覚化する。バンドをゲルから切り出し、そしてQuiaQuickゲル抽出樹脂を用いて精製する。精製された直鎖化遺伝子を、バキュロウイルス発現系(CloneTech Inc.)に、強力なCMVプロモーターの制御下で挿入する。バキュロウイルス組込み遺伝子を、製品明細および条件に従ってSF9昆虫細胞系内にトランスフェクションする。106 B7形質導入NOS細胞を、バイオリアクター内で増殖させる。インキュベーション培地および細胞溶解物を、あらかじめタンパク質A/Gセファロースカラムに固定しておいたヒトB7.1タンパク質(Research Diagnostics Inc.)に対するマウスモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって処理する。
【0128】
実施例15.人工抗原提示細胞の生成:単一粒子sAPC
一次抗体応答の成熟のために、可能性のあるsAPCは、その結果として抗体クラス・スイッチが起こる、CD4T細胞/B細胞相互作用を誘導しなければならない。一次sAPCは、金コロイドの単一粒子上への免疫シナプスのタンパク質の結合によって生じる。このベクター、ならびにストレプトアビジン金コロイドコア上に構築されたものを、CD4+T細胞を活性化するそれらの能力について試験する。
【0129】
一度免疫シナプスの構成成分を単離し、精製して均一化すると、これらは金コロイド粒子に結合して単一粒子sAPCを生成する。2つの方法がこれらのAPCを作製するために用いられる。第1の方法は、免疫シナプスの構成成分(つまり、ペプチド負荷MHC、B7およびICAM分子)の、金コロイド粒子への直接的な結合を含む。拘束されることを望まないが、各mlの金は、金コロイドゾル1 ml当たり250 ngの各タンパク質を結合するだろうと考えられる。
【0130】
第1の足場を、EIAプレートの表面上に組織化した。材料は、ヒトTNF;32 nm TNF/ストレプトアビジン金コロイドキメラ;ビオチン化BSA;17 nmストレプトアビジン金コロイドベクター;ビオチン化ヒトIL-6;アルカリホスファターゼに結合したウサギ抗ヒトIL-6に対するモノクローナル抗体でコーティングされたEIAプレートを含む。種々の構成成分を、図9Aに表すように足場内に組織化した。この実験の対照は単に足場が構築されるTNF結合部位のない32 nm粒子であった。図10Aに示されるように、強いシグナルが生じるのは、足場のすべての分子ブリックが存在する場合である。TNF結合部位を除去するだけで、足場を形成せず、そして結果としてシグナルが生じない。
【0131】
免疫シナプスタンパク質の、金コロイドの単一粒子への直接的な結合は、粒子の表面におけるタンパク質の堅い配置をもたらす。これらのタンパク質のsAPCにおける運動性の柔軟性を向上させるために、別の単一粒子sAPCを作製する。この単一粒子sAPCは、ビオチン化形態のMHC、B7およびICAMタンパク質に結合するストレプトアビジン金コロイド基本骨格上に作製される。タンパク質は、スペーサー・アームを介してタンパク質に連結されるビオチン残基を介して、ストレプトアビジン金粒子と結合する。
【0132】
タンパク質は、NHSビオチン(Piece Chemical Co.)等のいくつかのビオチン化試薬を使用してビオチン化される。この試薬は、タンパク質とビオチン部分との間に1.35 nmのスペーサー・アームを設置する。あるいはまた、NHS-LC-LC-Biotinを使用することで、タンパク質をビオチン化する。この物質は、タンパク質とビオチン残基との間に3.05 nmのスペーサー・アームを設置する。そのようなスペーサー・アームは、タンパク質の運動を容易にして、リガンド結合を促進する。この付加された柔軟性は、タンパク質の能力を改良し、適切な3-D配置を達成し、そしてCD4+T細胞と共に機能的な免疫シナプスを形成する。
【0133】
実施例16.自己組織化sAPCの生成
多粒子sAPCは、免疫シナプス形成の間に、自己配置の柔軟性を有し得る。この柔軟性は、粒子を接続するのに使用される部分の組織化の直接的な結果である。リンカーは、アルカン、タンパク質、およびポリエチレングリコール(PEG)であり得るものであり、これにより最大限のベクター機能性を可能とする。
【0134】
第2の足場(図9Bに示される)は、4つの末端遊離チオールを含む、4アームのポリエチレングリコール(10,000 MV)骨格を使用して組織化された。このリンカーは、IL-1またはTNFと結合した金コロイドの個々の粒子を接続するのに使用した。連結の後、調製物を遠心分離して、IL-1モノクローナル抗体でのみコーティングしたEIAプレートを使用して、両タンパク質についてアッセイした。結合の後、プレートを洗浄し、酵素に連結したIL-1またはTNFポリクローナル抗体を用いて検出した。同様に、図9Bに記載するベクターは、リンカーの存在下においてのみ、両タンパク質に対するシグナルを発した(図10B)。リンカーなしでは、背景色のみが観察された。
【0135】
sAPCの柔軟性をさらに向上させるために、構成成分タンパク質を異なる金コロイドの粒子上で組織化させる。これらの粒子は、足場システムで組織化され、CD4+T細胞活性化を誘導し得るsAPCを生じる。多粒子sAPCは、溶液中で使用される得るか、または図9Aおよび9Bに示されるように、EIAプレート上に固形支持体を提供するのに使用され得る。
【0136】
MHC、B7およびICAMタンパク質は、前述の通り異なる金コロイドの粒子に結合される。この粒子は種々の足場分子によって物理的に接続される。「接続」分子の機能は、免疫シナプスの形成における個々の金コロイドの粒子のより高い柔軟性を提供することである。この柔軟性は、sAPCが独立した粒子として、または固体表面に結合した基質部分として提供されるかに関わらず生じる。
【0137】
第1の添加物は、修飾されたジチオールアルカン部分より構成される。アルカンジチオールの機能は、チオール-金結合の形成を介して、個々の金コロイド粒子を結合することである。これらの部分は、バイオセンサーの開発において、ガラススライドの表面上に自己組織化金構造物を構築するのに用いられてきた(Mirkin, C.A., Letsinger, R., Mucic, R.C.およびStorhoff, J.J. Nature. 1996. 382 607-609)。チオール基は、アルカン部分を金コロイド粒子の表面に直接的に結合することを可能にする。市販のアルカンチオール試薬の例示は、1,5ペンタンジチオール、1,6ヘキサンジチオール、およびデカンジチオール(Sigma Chemical Company)を含む。
【0138】
アルカンジチオールの代用品として、種々のサイズの2、3および4-アームポリエチレングリコール(SunBio, Walnut Creek, CA)もまた使用される。これらのポリマーの各々のアームは遊離のチオール基を有し、これは金-チオール結合の形成を介して個々の金コロイドの粒子を結合するのに使用される。これらの試薬は、さらに完全な水溶性という利点を提供する。
【0139】
免疫シナプスの複数のタンパク質部分を、金コロイドの単一粒子または多粒子のどちらかに結合することは、ヒトB細胞の免疫化におけるクラス・スイッチを引き起こす細胞事象を推進することが可能な人工抗原提示細胞(sAPC)の生成を可能にする。
【0140】
実施例17.CD40リガンドを発現するためのsAPCによるCD4+T細胞の刺激
単一粒子および自己組織化sAPCを、MHC拘束性CD4+T細胞由来のCD40リガンドの発現を誘導するそれらの能力について試験する。続いて、0.1〜10μgの抗原負荷MHC(sAPC上に存在する)を、AIM V培地で培養した106のクラスII拘束性CD4+T細胞に添加する。刺激はIL-4およびIL-10の存在下で生じ、これはCD4+T細胞のTH2サブセットの生成を促進する。sAPC刺激の4、12および24時間後に、CD4細胞を回収し、そしてFITC標識化マウス抗ヒトCD40リガンド抗体で染色してFACSにより解析する。
【0141】
CD4+T細胞を活性化している間に、MHC拘束性B細胞リンパ球の新規のセット(つまりMHCの単離に使用されない細胞)を前述の通り免疫し、抗原特異的なIgM抗体の生成を行う。MHC拘束性B細胞は、前述の標的化TNF抗原を用いて免疫する。各々の細胞から生成する抗原特異的なIgMおよびCD40リガンドの検出の後、活性化CD4+T細胞をIgM分泌B細胞に添加する。クラス・スイッチは、ヒト抗ヒトTNF IgGの検出によってモニターされる。IgG陽性クローンは、以下に記載するようにK6H6/B5マウスヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞系と融合する。
【0142】
実施例18.抗体検出およびB細胞の不死化
陽性ウエル由来の細胞すべてを混合し、一度遠心分離をして、PBSで洗浄し、そして2×106のマウス/ヒトヘテロ骨髄腫K6H6/B5細胞と混合する。ヘテロ骨髄腫細胞系、K6H6/B5(ATCCを介して入手可能)がこれらのヒトリンパ球にとって理想の融合パートナーであるのは、これらの癌細胞が抗体を分泌せず、そして特許の制限なく入手可能であるためである。ヒトおよび骨髄腫細胞は、PEGを用いた標準的な融合プロトコルを用いて融合される。うまく融合した細胞を、従来のHAT/HT選抜プロトコルを用いて選抜する。直接ELISA法を用いて、増殖クローンをTNF特異的ヒトIgG抗体の産生について試験した。抗原認識を示すそれらのクローンをT-75フラスコ内でスケールアップし、この時点ですべてのクローンを低温保存して、それらの上清を以下に記載するように中和抗体活性について試験する。
【0143】
実施例19.TNF生物活性の中和
TNFの生物活性を中和するTNF抗体の能力は、よく特性化されたWEHI 164生物学的検定を用いて試験される。つまり、TNFは用量依存的にこれらの細胞のin vitroにおける増殖を阻害する。この生物学的検定のために、5000 WEHI細胞を24穴組織培養群中に播種する。TNF(15.6 pg/ml〜500 pg/ml)をプレート内の指定されたウエルに添加する。ヒトモノクローナル抗体のTNFの作用を中和する能力を測定するために、同一の標準的用量範囲のTNF標準を1μgの各TNFモノクローナル抗体の存在下において作製する。種々の処理をした細胞を5日間培養し、Coulter Counterを用いて細胞数を測定する。
【0144】
実施例20.金コロイド結合TNFの凍結乾燥安定性に対するイオン強度の効果
図11に示す金コロイド結合装置を使用して、前述のようにTNFを金コロイドナノ粒子に結合した。結合の後、30K PEG-Thiolを脱イオン水中50μg/ml(pH 9)の濃度で溶液に添加した。
【0145】
TNF-金コロイド結合の安定性に対するイオン強度の効果を試験するために、種々の量の塩(1×標準リン酸緩衝生理食塩水;PBSの形態で)をTNF溶液が入った容器に添加した。PBSの最終濃度は、標準PBSの0〜0.325%であった。結合およびダイアフィルトレーションの後、抗凍結剤(マンニトール、20 mg/ml;ヒト血清アルブミン、5 mg/ml)をサンプルに添加した。次にサンプルを1 mlサンプルに分注し、そして-80℃で凍結した。凍結後、サンプルを凍結乾燥させ、真空下で密封した。
【0146】
次に、サンプルを1 mlの脱イオン水で再構成し、そして1% PEG-1450/水の溶液で10倍に希釈した。サンプルを遠心分離して、金コロイド結合TNFを遊離のTNFから分離した。金コロイド沈殿物および上清の両方を、EIAによりTNF濃度について解析した。これらの実験からのデータを表1に示す。
【0147】
表I.塩非存在下で作製した凍結乾燥金コロイドTNFの放出特性
総TNFの割合
金コロイド沈殿物 68
上清 32
【0148】
表Iは、TNFの32%が凍結乾燥後にベクターから放出されることを示す。反復実験において、本発明者らは50%程のタンパク質が凍結乾燥後に放出されることを観察した。
【0149】
実施例21.凍結乾燥金コロイド-TNF薬の安定性に対するイオン強度上昇の効果
TNFの溶液を、事前に3 mMトリス溶液でTNFの最終濃度が0.5μg/mlとなるように希釈し、これを標準リン酸緩衝生理食塩水の0.25×溶液(77.25ミリオスモル/kg)を添加することで改変した。溶液を上記のように結合した。結合の後、上記の30K PEG-Thiolおよび抗凍結剤を添加し、そしてサンプルを-80℃で凍結した。上記のようにサンプルを凍結乾燥し、次に再構成し、そして再構成したサンプル中に存在する遊離のTNF量および金コロイドに結合したTNFの量について解析する。この実験からのデータは図12に示す。
【0150】
図12に見られるように、イオン強度の上昇は、凍結乾燥の間のベクターの安定性を大きく向上させる。加塩効果は用量依存的であった。表IIに示すように、TNFに添加される塩の量は、凍結乾燥後に放出される多くのタンパク質を減少させる。
【0151】
表II.ベクター凍結乾燥後のTNF放出に対する塩濃度の効果
塩濃度(ミリオスモル/kg) 0 4.5 19.3 46.5 77.25
放出割合 40 30 10 6 6
【0152】
塩非存在下においてTNFを結合することは、TNFの一部が金粒子に直接的に結合されるというよりはむしろイオン二重層中に結合されることとなる(図13)。凍結乾燥の間、イオン層を溶媒和する水は失われ、従って再構成に際し、このベクターはイオン雲中に結合するTNFの一部を放出した。塩の添加によってイオン強度が上昇することによりイオン層が収縮/崩壊し(図14)、そしてすべてのTNFが粒子の表面に直接的に結合できるようにする。凍結乾燥の後、この調製物は粒子の表面に結合したすべてのTNFを有する。
【0153】
上記に引用するすべての特許、刊行物および要約は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。上記が本発明の好ましい実施形態のみに関するものであり、そして多数の改良または改変が、以下の請求項に定義されるような本発明の意図および範囲から逸脱することなく達成され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、免疫シナプスの略図を提供する。
【図2】図2は、活性化CD4+T細胞による一次抗体応答の分化の略図を提供する。
【図3】図3Aは、金コロイド人工抗原提示細胞の概略図を提供する。図3Bは、金コロイド人工T細胞の概略図を提供する。図3Cは、金コロイド人工胚中心の概略図を提供する。
【図4】図4は、単一粒子sAPCが機能性免疫シナプスを形成することは不可能であることの略図を提供する。
【図5】図5は、多粒子金コロイドsAPCの生成の略図を提供する。
【図6】図6は、同一の金コロイド粒子への複数のサイトカインの結合を表すグラフを提供する。
【図7】図7は、マクロファージ(図7A)、樹状細胞(図7B)およびB細胞(図7C)に標的化されたEGFストレプトアビジン金の一連の写真である。
【図8】図8は、in vitroでの種々の刺激に対する応答における細胞の免疫応答性のグラフを提供する。
【図9A】図9Aは、EIAプレートの固体支持体上の金コロイド粒子の自己組織化の概略図を提供する。1=EIAプレート;2=ヒトTNFに対するマウスMab;3=ヒトTNF(青色四角);4=ストレプトアビジンでTNFに結合した32 nm金コロイド;5=ビオチン化BSA;6=17 nmストレプトアビジン金コロイド;7=ビオチン化ヒトIL-6;8=アルカリホスファターゼ結合ウサギ抗ヒトIL-6。
【図9B】図9Bは、4アームPEG-チオール骨格(Sun Bio, Inc.)上にIL-1またはTNFのどちらかで結合した金コロイド粒子の自己組織化の概略図を提供する。
【図10A】図10Aは、図9Aにおける粒子によって生成する免疫応答性シグナルのグラフを提供する。
【図10B】図10Bは、図9Bにおける粒子によって生成する免疫応答性シグナルのグラフを提供する。
【図11】図11は、金コロイド/TNF結合装置の略図を提供する。
【図12】図12は、凍結乾燥後の金コロイドTNFベクターの安定性に対するイオン強度の効果のグラフを提供する。
【図13】図13は、低イオン強度溶液中で金コロイドに結合するTNFについてのモデルの略図を提供する。
【図14】図14は、高イオン強度溶液中で金コロイドに結合するTNFについてのモデルの略図を提供する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して免疫学に関するものである。本発明はさらにモノクローナル抗体を生成するための方法および組成物、ならびにこのような抗体を生成するためのin vitroにおける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
所望の薬剤を特定の標的細胞内へ導入することは、長い間科学者にとって課題となってきた。薬剤を特異的に標的化することの課題は、生物体の他の部位を過剰に暴露することなく、生物体の標的細胞に対して適切な量の薬剤または的確な薬剤を送達することである。特定の薬剤の送達のために非常に望ましい対象は免疫系である。免疫系は身体の複雑な応答システムであり、異なる活性を有する多くの異なる種の細胞を含む。免疫系の一部の活性化は、通常、免疫系の他の関連部分の不要な活性化による種々の応答を引き起こす。現在、免疫系の特定の構成エレメントを標的とすることによる、特定の所望の応答を引き出すために十分な方法または組成物はない。
【0003】
免疫系は、体内および体外の双方からの刺激と相互作用する、細胞を含む多種多様な構成エレメントならびに細胞性因子を含む、身体の複雑な相互作用システムである。その直接的作用に加え、免疫系の応答は、神経系、呼吸器系、循環器系および消化器系を含む身体の他のシステムによる影響も受ける。
【0004】
免疫系のよく知られた特徴の1つは、侵入生物、体内の細胞変化、またはワクチン接種によって提供される外来性抗原に対して応答する能力である。免疫系のそのような活性化に応答する第1の種類の細胞のいくつかは、食細胞およびナチュラルキラー細胞である。食細胞は数ある細胞の中で、単球、マクロファージおよび多形核好中球を含む。これらの細胞は一般的に外来性抗原に結合してそれを吸収し、そして多くの場合それを破壊する。これらはまた、炎症反応等の他の免疫応答を媒介する可溶性分子を産生する。ナチュラルキラー細胞は、ウイルスに感染した特定の胚細胞および腫瘍細胞を認識し、そして破壊することができる。免疫応答の他の因子は補体経路を含み、それらは外来性抗原とは無関係に応答し、または細胞もしくは抗体と連携して作用する能力がある。
【0005】
ワクチン接種にとって重要な免疫系の特徴の1つは、特定の病原体または外来性抗原に対する免疫系の特異的な応答である。その応答の一部は、外来性抗原に対する「記憶」の確立を含む。2度目の暴露の際に、記憶作用が外来性抗原に対するより迅速かつ通常より増強した応答を可能にする。リンパ球は他の細胞および因子と連携して、記憶作用および応答の双方において主要な役割を果たす。
【0006】
一般的に、抗原に対する応答は、液性応答および細胞性応答の双方を含むと考えられている。液性免疫応答は、細胞によって放出される非細胞性因子によって媒介され、これらは血漿または細胞内液中に遊離して見られてもよく、そうでなくともよい。免疫系の液性応答の主要な構成エレメントは、Bリンパ球によって産生される抗体によって媒介される。細胞媒介性免疫応答は、抗原提示細胞ならびにBリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)を含む細胞の相互作用に起因する。
【0007】
免疫応答能の最も広く用いられる特徴の1つは、モノクローナル抗体の生成である。1970年代半ばにおけるモノクローナル抗体(Mab)技術の出現は、有用な新規の治療および診断手段を提供した。初めて、研究者および臨床医学者は、所定の抗原部位に結合し、そして種々の免疫学的エフェクター作用を有する能力のある、無限の量の均一の抗体を入手する機会を得た。現在、モノクローナル抗体を生成するための技術は、当技術分野でよく知られている。
【0008】
これらのモノクローナル抗体は、医薬および診断において大いに有望であると考えられている。残念なことに、これらのタンパク質に基づいた治療薬の発展は、モノクローナル抗体治療に特有の問題によって制限されてきた。例えば、多くのモノクローナル抗体はマウス由来であり、ゆえにヒト補体に上手く固定しない。それらはまた、ヒトに使用した場合、他の重要な免疫グロブリン機能的特性に欠ける。
【0009】
モノクローナル抗体の使用に対する最大の障害は、非ヒトモノクローナル抗体がヒト患者に注入された場合に免疫原性となるという事実である。外来性抗体の注入の後、患者が開始する免疫応答は非常に強くなり得る。免疫応答は、外来性抗体の迅速な除去を引き起こし、初期治療の後の抗体の治療的有用性を本質的に除外する。残念なことに、一度免疫系が外来抗体に対する応答の準備をすると、同一または異なる非ヒト抗体による後の治療が無効または危険なものにさえなり得る。
【0010】
マウスは外来抗原で簡単に免疫することで、広範囲の高親和性抗体を生成することができる。しかしながら、ヒトへのマウス抗体の導入は、ヒト体内へマウス抗体を提示することによるヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者にマウス抗体を使用することは、一般的に日数または週数の期間が限定される。長期間の治療はアナフィラキシーを引き起こし得る。さらに、一度HAMAが患者において生成されると、多くの場合、将来的に、診断または治療を目的とするマウス抗体の使用が妨害されることになる。
【0011】
HAMA応答の問題を克服するために、研究者は非ヒト抗体を改変してそれらをヒト様抗体にするためのいくつかのアプローチを試みてきた。これらのアプローチは、マウス/ヒトキメラ、ヒト化、および霊長類化を含む。よりヒト様の抗体の作製における初期の実験は、組み合わせたウサギおよびヒト抗体を使用した。抗体のタンパク質サブユニットであるウサギFabフラグメントおよびヒトFcフラグメントを、タンパク質ジスルフィド結合を介して結合することで、新規の人工的なタンパク質分子すなわちキメラ抗体を形成した。
【0012】
組み換え分子生物学的技術は、キメラ抗体を作出するために使用されてきた。組み換えDNA技術は、マウス抗体の可変軽鎖および重鎖領域ならびにヒト抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)定常領域をコードするDNA配列間における遺伝子融合体を構築するために使用することで、キメラ抗体の発現を可能にした。これらのキメラ抗体は多数の非ヒトアミノ酸配列を含み、そしてヒトに対して免疫原性である。これらのキメラ抗体に暴露された患者は、ヒト抗キメラ抗体(HACA)を生成する。HACAはマウスV領域に対するものであり、かつ、組み換えキメラ抗体に存在する新規のV領域/C領域(定常領域)接合部に対するものともなり得る。
【0013】
キメラ抗体の免疫原性によってもたらされるいくつかの制限を克服するために、分子生物学技術は、ヒト化または再形成された抗体を作出するために使用される。マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列は、分子的手段によって、ヒト抗体重鎖および軽鎖のフレームワークをコードするDNA配列に接続される。ヒト化Mabは、キメラMabのそれより高い割合でヒト抗体配列を含む。約90%ヒト抗体および10%マウス抗体を含有する最終産物は、ヒト抗体上にマウスの結合部位を含む。これはまた、マウスMab由来の特定のアミノ酸置換をヒト化Mabのフレームワーク内に含むことで、正しい形状を保持し、ゆえに標的抗原に対する結合親和性を保持する。
【0014】
実際、マウスCDRを単にヒトCDRと置換しても、もとのマウス抗体の特異性を保持した有効なヒト化抗体を産生するのには不十分である。少数の重要なマウス抗体残基をヒト可変領域に含ませるためにさらに必要なことがある。これらの残基の同一性は、もとのマウス抗体および受容側であるヒト抗体の双方の構造に依存する。HACA応答を患者において引き起こすのを促進するこれらのマウス抗体残基の存在が、モノクローナル抗体の迅速な除去およびアナフィラキシーの恐れを引き起こす。
【0015】
別の技術は、再表面化技術と呼ばれ、マウス抗体をヒト化するのに用いられる。再表面化は、他のヒト化技術より迅速かつより効果的である過程において、マウス抗体表面をヒト抗体表面と置換することを含む。この技術は、マウスモノクローナル抗体を、組み換えFVのV領域の表面で利用可能なアミノ酸のみをヒト化することによってヒト抗体に類似させるように、マウスモノクローナル抗体を再設計する方法を提供する。マウスモノクローナル抗体の再表面化が、もとのマウスモノクローナル抗体の親和性を再形成バージョンにおいても維持させ得るのは、天然のフレームワーク-CDR相互作用が保持されているためである。また一方で、これらの抗体がマウス由来であるために抗原性となるという問題に苦しむ。
【0016】
他の技術は、Mabをヒト化するためにマウスよりも霊長類の配列を使用する。このアプローチの原理は霊長類化と呼ばれ、霊長類抗体可変領域における大部分の配列がヒト配列と区別できないことにある。関節リウマチおよび重症喘息の治療のための霊長類化抗CD4 Mabが開発されている。しかしながら、これらのMabは患者の免疫系に対しては依然として外来性タンパク質であり、そして免疫応答を引き起こす。
【0017】
外来性タンパク質に対する免疫応答を回避する試みにおいて、種々のアプローチが、ヒト抗体構成成分のみを含むヒトMabを作製するために開発されている。1つのアプローチは、所望の抗原に対する抗体を自然に産生するヒトB細胞クローンを単離し、そしてトリオーマ細胞培養系において増殖させることである。ヒト抗体が宿主に対して外来性である抗原に対してのみ作製されるため、ヒト抗原に対する抗体を作製するヒトB細胞はない。従って、このアプローチはヒトタンパク質である抗原に対するMabを生成するのに有用ではない。
【0018】
ヒトMabを作出するための2つの他のアプローチは、ファージディスプレイ法およびトランスジェニックマウスの使用である。ファージディスプレイ法技術は、可能性のあるあらゆる構造に対する抗体を作製するためのヒトの能力を利用する。この技術は多くの個々のヒト由来の抗体遺伝子を使用することでファージ抗体の大きなライブラリーを作出するものであり、各々はその表面で機能的な抗体可変領域を発現している。このライブラリーから、個々の可変領域は所望の抗原に結合する能力によって選択される。Mabは、所望の結合特性を有する抗体可変領域と、有望なヒト治療薬に最も適合する定常領域とを組み合わせることによる分子生物学的技術を通して作出される。また一方で、この技術は抗原特異性に欠ける。ファージライブラリーは、あらゆるすべての所望の抗原に対するすべての結合領域を含むことはできない。それはまた、特異性を欠損する結合領域も含み得る。従って、使用可能なレベルに抗体の親和性を増大させるために、この技術は相当な工学技術を必要とし得る。
【0019】
トランスジェニックマウスは、「ヒト」抗体を作出するためにも使用される。トランスジェニックマウスは、マウス免疫グロブリン遺伝子座をヒト免疫グロブリン遺伝子座で置換することによって作出される。このアプローチがファージ提示法技術より優れた利点を提供し得るのは、マウスin vivo親和性成熟機構を利用するためである。
【0020】
ヒトMabまたはヒト様Mabを作製するための現在の技術はすべて、前述の抗原に対して抗原特異的である種特異的抗体を提供するためには不十分である。キメラ抗体は、マウス抗体の特異性を保持し、かつヒトFc依存性補体結合および細胞媒介性細胞傷害を刺激する利点を有する。しかしながら、これらのキメラ抗体のマウス可変領域は依然としてHAMA応答を引き起こす可能性があり、それにより、診断薬および治療薬としてのキメラ抗体の有用性を制限している。
【0021】
ワクチンはあらゆる外来性抗原に対するもので、別の生物体、変化した細胞、または正常な「自己」細胞内で誘導された外来性に属するもの由来であってもよい。外来性抗原の投与経路は、生じる免疫応答のタイプを決定するのに役立ち得る。例えば、生ポリオウイルスの経口接種等の粘膜面への抗原の送達は、免疫系を刺激して粘膜面における免疫応答を引き起こす。筋肉組織内への抗原の注入は、多くの場合、持続的なIgG応答の発生を促進する。
【0022】
ワクチンは一般的に、全ワクチンおよびサブユニット・ワクチンの2つのタイプに分類され得る。全ワクチンは、不活性化もしくは弱毒化したまたは殺したウイルスあるいは微生物より生成され得る。弱毒化生ワクチンは、野生型生物に対する応答と類似した免疫応答を誘発するのに十分な自然感染を再現する利点を有する。そのようなワクチンが一般的に高レベルでの予防効果を提供するのは、特に自然経路で投与される場合であり、免疫ができるのに1回の投薬しか必要としないものもある。いくつかの弱毒化ワクチンの別の利点は、それらがその個体群のメンバー間の直接接触経路を提供することである。しかし、これらの利点はいくつかの欠点と均衡する。いくつかの弱毒化ワクチンは品質保持期限を有し、熱帯環境における保存に耐えることができない。また、ワクチンが、有害な生死にさえ関わる病気を引き起こす毒性の野生型生物に戻る可能性もある。弱毒化ワクチンを使用することは、AIDS等の免疫不全状態および妊娠中においては禁忌である。
【0023】
死菌ワクチンがより安全であるのは、毒性に戻る可能性がないためである。これらは一般的に輸送および保存の間により安定しており、かつ免疫障害患者における使用にも適している。しかし、これらは弱毒化生ワクチンより有効性が低く、通常は1回以上の投薬が必要である。さらに、これらはその個体群のメンバー間の直接接触経路を提供しない。
【0024】
サブユニット・ワクチンの生成は、ワクチンが標的とするべき微生物または細胞のエピトープについての知識が必要である。サブユニット・ワクチンの設計における他の検討事項は、サブユニットのサイズ、およびサブユニットが微生物または細胞のすべての株をいかによく提示するかである。細菌性ワクチンの開発についての現在の焦点がサブユニット・ワクチンの生成に転換してきたのは、全細菌性ワクチンの生成において直面する問題およびそれらを使用するのに伴う副作用のためである。そのようなワクチンは、Vi莢膜多糖類に基づく腸チフスワクチンおよびインフルエンザ菌に対するHibワクチンを含む。
【0025】
弱毒化ワクチンの使用に関わる安全性の懸念および死菌ワクチンの弱い有効性のために、当技術分野において、ワクチンの有効性を向上させる組成物および方法が必要とされる。当技術分野においては、液性および細胞媒介性双方の応答を刺激する、免疫系を増強する組成物ならびに方法もまた必要とされる。当技術分野においてはさらに、免疫応答を選択的に調整し、そして所望の応答を発生させるために免疫系の種々の構成エレメントを操作する必要がある。さらに、より迅速な活性化応答のために免疫応答を促進および拡大し得る方法ならびに組成物が必要である。単回投与だけで予防となるワクチンを、ヒトおよび動物双方の個体群に接種可能であることへの必要性が増大している。
【0026】
必要であるのは、特定の薬剤が標的細胞にのみ送達されることを目標とする組成物および方法である。そのような組成物および方法は、治療薬を標的細胞に有効に送達することができるべきである。また、in vitroおよびin vivo系の双方で使用可能な組成物および方法も必要である。
【0027】
モノクローナル抗体の組成物およびそれらを生成するための改良された方法に対する一般的な必要性もある。所定の抗原に対する親和性を有するヒト抗体を生成するための方法が特に必要である。これらのヒト免疫グロブリンは、治療的および診断的処方に適する方法で容易かつ経済的に生成されるべきである。
【0028】
発明の概要
本発明は、種特異的抗原特異的モノクローナル抗体、好ましくはIgGモノクローナル抗体を作製するための組成物および方法を含む。本発明はさらに、免疫系のエレメント、特に免疫シナプスの抗原提示細胞(APC)エレメントを複製するベクターを含む。好ましいベクターは任意に、抗原負荷主要組織適合(MHC)クラスIIタンパク質、共刺激タンパク質B7、および構造タンパク質細胞内接着タンパク質(ICAM)の、コロイド金属ベクターの表面への結合を含む。そのようなベクターは、免疫B細胞の抗体応答を成熟させるためにCD4+T細胞を活性化することができる人工抗原提示細胞(sAPC)を生成するAPCの三次元的な配置を複製する(図3)。
【0029】
本発明はさらに、人工CD4+T細胞(sTc)および人工胚中心(sGC)を含むベクターを含む。1つの実施形態において、人工CD4+T細胞は、CD40リガンドおよびサイトカインと結合したコロイド金属ベクターから構成される。別の実施形態において、人工胚中心は、Bリンパ球刺激剤;BlySおよびCD30L/受容体システムと結合したコロイド金属ベクターから構成され、in vitroにおける免疫付与に対するB細胞抗体応答の有効性および特異性を増強する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、1つの実施形態において、抗原のB細胞増殖因子との物理的な並置は、表面IgM抗原受容体を介したヒトTNF抗原の取り込みを向上させ、そしてより強力なB細胞応答を誘導する。同一のB細胞上に並置されたシグナルを有することは、in vitroにおいて抗原特異的B細胞応答を誘発する能力をさらに向上させる。
【0030】
本発明は、人工免疫構成成分エレメントを作製する方法を含む。免疫系の構成成分の機能性を再現するベクター組成物を作製するための方法が、本明細書に教示される。本発明はまた、免疫系に関連した疾患および病状の治療の方法を含む。ワクチン接種の方法もまた、本発明に含まれる。
【0031】
本発明の詳細な説明
本発明は、本明細書に含まれる以下の特定の実施形態の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本発明はある実施形態の特定の詳細を参照することで説明してきたが、そのような詳細が本発明の範囲を制限するものとしてみなされることを意図するものではない。本明細書に記載される参照の全文は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、米国特許仮出願第60/526,360号を含む。
【0032】
本発明は、抗原特異的、種特異的IgGモノクローナル抗体を作成するための方法および組成物を含む。本発明は、液性免疫応答の抗原提示細胞(APC)、T細胞および胚中心エレメントを複製する天然および/または人工ベクターを含む方法および組成物を含む。
【0033】
本発明は、免疫応答の任意のエレメントまたは段階を再現するベクターを含む。免疫応答は、種々の細胞、主としてマクロファージまたは他の抗原提示細胞による外来性抗原の認識によって開始する。これはリンパ球、特に特定の外来性抗原を特異的に認識するリンパ球の活性化を導き、そして結果として免疫応答が発生し、かつ場合により外来性抗原の排除をもたらす。外来性抗原の排除を目的とした免疫応答を重ねることは、ヘルパー作用、促進作用、抑制作用および他の応答を導く複雑な相互作用である。免疫系の応答の能力は、促進および抑制のための複数部位で慎重に調節されるべきであり、さもなくば、応答が起こらないか、過剰応答するか、または排除した後に停止できなくなるかのいずれかとなろう。
【0034】
外来性抗原に対する応答の認識段階は、外来性抗原が免疫細胞上の特異的受容体に結合することからなる。これらの受容体は一般的に抗原暴露の前から存在する。認識はまた、マクロファージ様細胞による、または血清もしくは体液中の因子による認識による、抗原との相互作用も含み得る。
【0035】
活性化段階において、リンパ球は少なくとも2つの大きな変化をする。これらは増殖して、抗原特異的リンパ球のクローンの拡大および応答の増幅をもたらし、そして抗原に刺激されたリンパ球の子孫が、生き残って抗原の再暴露への応答準備をするエフェクター細胞または記憶細胞のどちらかに分化する。この応答を増強する非常に多くの増幅機構がある。
【0036】
エフェクター段階において、活性化したリンパ球は抗原の排除またはワクチン応答の確立を導き得る作用を果たす。そのような作用は、調節、ヘルパー、刺激、抑制または記憶作用等の細胞応答を含む。多くのエフェクター作用は、細胞および細胞性因子が組み合わされて関与することを必要とする。例えば、抗体は外来性抗原に結合し、そして好中球および単核食細胞によるそれらの食作用を促進させる。補体経路は活性化され、そして発熱等の他の身体応答を引き起こすのに加えて、微生物の溶解および食作用に関与し得る。
【0037】
抗原に対する免疫応答において、免疫細胞は互いに直接的な細胞間接触または間接的な細胞間(因子媒介)伝達によって相互作用する。例えば、T細胞、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞間の相互作用は、有効な免疫応答に不可欠である。抗原提示細胞(APC)は、B細胞ならびにT細胞に処理抗原および他の活性化シグナルを提示することにより、B細胞およびT細胞を活性化する。活性化T細胞は免疫応答の調節を助け、外来性生物体の排除に関与する。ヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞前駆体のキラー細胞への分化を助け、B細胞が抗体を生成するのを助け、およびマクロファージのような他の細胞の機能向上を助ける等して、細胞をより優れたエフェクター細胞にする。活性化B細胞は分裂し、そして抗原特異的抗体および記憶B細胞を産生する。免疫応答に関与する細胞はまた、細胞性因子またはサイトカインを分泌し、これらは食細胞の機能を向上させ、炎症反応を刺激し、そして種々の細胞に作用する。
【0038】
これらの細胞の反応は、フィードバック・ループも伴う。マクロファージおよび他の単核食細胞またはAPCは、B細胞およびT細胞に提示するために積極的に抗原を貪食し、そしてそのような活性はリンパ球細胞性因子によって増強され得る。マクロファージもまた、サイトカインを産生し、これは他の活性に混ざってT細胞増殖および分化を刺激し、他の炎症細胞(特に好中球)を増加させ、そして発熱等の炎症の全身的効果の多くの原因となる。そのようなサイトカインの1つはインターロイキン-12と呼ばれ、細胞媒介性免疫の進行に特に重要である。
【0039】
樹状細胞もまた、免疫応答を開始するAPCである。リンパ系樹状細胞および皮膚のランゲルハンス細胞を含む多くの異なるタイプの樹状細胞がある。これらは全身、特に脾臓、リンパ節、扁桃腺、パイアー斑および胸腺において見ることができる。これらは不規則な形状の細胞であり、樹状(樹様)突起を継続的に伸長および収縮する。免疫系におけるこれらの役割の1つは、B細胞およびT細胞の活性化および分化を誘導ならびに調節することである。これらは細胞傷害性T細胞の分化、B細胞による抗体形成、および酸化的有糸分裂誘発等のいくつかのポリクローナル応答に対する強力なアクセサリー細胞である。これらはまた、サイトカインインターロイキン-2を放出するようT細胞を刺激する。
【0040】
ワクチン接種の重要な武器は、Bリンパ球またはB細胞によって付与される、抗原に対する応答である。B細胞は、循環リンパ球の約5〜15%に相当する。B細胞は免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを産生し、これらは体液中に放出され得、接着タンパク質と共に分泌されるかまたはB細胞の表面膜内に挿入され得る。そのような固定化された免疫グロブリンは、特異的な抗原受容体として作用する。抗原に対する応答において、これらの免疫グロブリン受容体はB細胞の特定の部位に架橋される。この過程はキャッピングとして知られ、続いて免疫グロブリンの内在化および分解が起こる。B細胞を含み得るAPCにおいて、抗原断片はMHCと結合し、そして最終的にAPCの表面で発現する。
【0041】
B形質細胞は、外来性タンパク質、多糖類、脂質、または細胞外もしくは細胞結合型の他の化学物質を結合することが可能な抗体分子を産生および分泌する。単一形質細胞によって産生される抗体は、1つの抗原に対して特異的である。分泌される抗体は、抗原を結合し、そしてそれらの破壊を促進する機構を誘発する。
【0042】
1975年に、KohlerおよびMilstein(Kohler, G.,およびMilstein, C., Nature(London). 1975. volume256: pp-495)は、免疫マウスの脾臓より単離した抗体産生B細胞と積極的に増殖するマウス骨髄腫細胞とを融合する方法を記載した。この得られたハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)は、双方の親細胞の特徴を有する。これは、その継続的な成長および増殖の間に大量の抗体を産生および分泌する。一連の系統的な細胞希釈を経て、単一の特異性を有する抗体(モノクローナル抗体(Mab))を産生する、遺伝学的に単一のハイブリドーマ細胞を単離することができる。
【0043】
最も一般的な手順は、モノクローナル抗体の生成が動物の免疫付与により開始することを必要とする。抗原は局所リンパ節または脾臓内に流出し、ナイーブB細胞を活性化してIgM抗体を産生させる。これらの活性化B細胞は、次に抗原活性化CD4+T細胞を提示されて、クラス・スイッチを誘導する。クラス・スイッチは産生する抗体型がIgMからIgGに変化することによって特徴付けられる(Kuby, J., Immunology 第3版 1997、Allen D編., pp- 205-213)。抗体分泌B細胞リンパ球は、免疫動物のリンパ節または脾臓より単離され、そして種特異的骨髄腫細胞と融合される。次に融合細胞を増殖させて、抗原特異的IgG抗体を生成する。スクリーニングの過程において、陽性融合クローンはそれらの治癒能力により選択される。
【0044】
マウスは、外来性抗原によって容易に免疫されて広範囲の高親和性抗体を産生する。しかしながら、マウス抗体のヒトへの導入は、体内での外来性タンパク質の提示によるヒト-抗-マウス抗体(HAMA)応答を引き起こす。患者にマウス抗体を使用することは、一般的に日数または週数の期間が限定される。さらに、一度HAMAが患者において生じると、多くの場合、将来的に、他の診断的または治療的目的に対するマウス抗体の使用を妨害することになる。
【0045】
動物におけるこの技術の初期の成功は、1980年代に科学者たちがこの概念を広げ、ヒトモノクローナル抗体を生成する試みを促した。しかしながら、動物からヒトへの外挿は困難を伴った。第1のハードルは、抗原特異的B細胞の不足であった。標準的なモノクローナル抗体法は、これらの細胞が免疫された動物より採取されるという、一般的にヒトへ適用できない方法を必要とする。この問題をさらに困難にするのは、(i)活性化B細胞の容易な供給源がないという事実、(ii)末梢血に存在する免疫能力を有するB細胞の不足、および(iii)ヒト被験者からリンパ節または脾臓のどちらかを得ることが不可能であるためである。これらの要因は、ヒトモノクローナル抗体を生成するための種々のin vitroの方法の開発を促進した。初期の結果が有望であったのにも関わらず、in vivo抗体応答の一連の事象を完全に再構築することが不可能であることが、最終的にこの技術に衰退をもたらし、そしてこの技術的アプローチは基本的に見捨てられてきた。
【0046】
in vitroでの抗体生成のための第1の障害は、ナイーブヒトB細胞リンパ球の活性化B細胞への変換率が比較的低いことである。従来、この課題を解決することは、ヒト末梢血B細胞リンパ球から一次抗体応答を誘導するために、破傷風毒素(Butlerら, J. Immunol. 1983. 第130巻: pp-165)等のリコール抗原を用いる場合でさえも困難であることが判明した。本発明は、抗体生成を導く経路を活性化するベクターを作製する方法を含む。本発明はまた、天然または人工ベクターの組成物を含む。そのようなベクターは、コロイド金骨格に複数のB細胞リガンドが結合しているものを含む。
【0047】
生物学的応答を増強するための受容体/リガンド対の架橋の多数の例示が記載されてきた(Carroll, K., Prosser, E.,およびKennedy, R. Hybridoma 1991. 10: 229-239)。本発明は、in vitroにおける免疫付与のためのB細胞抗体応答の有効性および特異性を向上させるコロイド金属のベクターを含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、抗原のB細胞増殖因子との物理的な並置は、表面IgM抗原受容体を介した抗原の取り込みを向上させ、そしてより強力なB細胞応答を誘導すると考えられている。抗原のプロセシングおよび提示もまた向上する。同一のB細胞上に並置したシグナルを有することは、in vitroにおいて抗原特異的B細胞応答を誘発する能力を向上させる。
【0048】
1つの実施形態において、構成成分に特異的な免疫刺激分子および/またはMHCタンパク質および/または抗原は、コロイド金属骨格に直接結合し得るか、あるいは結合基のメンバーを介してコロイド金属骨格に結合し得る。そのような結合基は、遊離のスルフヒドリル基もしくはピリジル基が、免疫構成成分に提示されるか、または人工的に付加されたものを含む。本発明の好ましい実施形態は、骨格としてコロイド金属を含み、これは、構成成分に特異的な免疫刺激物質またはMHCタンパク質または抗原が人工APCを作出するために結合している結合基のメンバーを結合することが可能である。別の好ましい実施形態において、結合基はストレプトアビジン/ビオチンであり、そして構成成分に特異的な免疫刺激物質はサイトカインである。本発明の実施形態はまた、特異性の低い方法において、ポリカチオンまたはタンパク質の使用による等の結合パートナーの使用をすることのない、抗原またはMHCタンパク質または構成成分に特異的な免疫刺激物質との結合を含む。このように、本発明は当業者に知られている、ポリリジン、硫酸プロタミン、ヒストンまたはアシアログリコプロテインを含むがこれらに限定されないポリカチオン性エレメント等の相互作用分子の使用を企図する。
【0049】
結合対のメンバーは、抗体-抗原対;酵素-基質対;受容体-リガンド対;およびストレプトアビジン-ビオチン対を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている任意の結合対を含む。新規の結合パートナーは、特異的に設計され得る。結合パートナーの必須の要素が結合対の一方と結合対のもう一方のメンバーとの間の特異的な結合であるのは、結合パートナーが特異的に接続することを可能にするためである。結合メンバーの別の所望の要素は、各メンバーが組み込み分子または標的分子のどちらかと結合するかまたは結合されることを可能にすることである。
【0050】
本発明の組成物は、コロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。あるいはまた、本発明の組成物は、コロイド金属、MHCタンパク質、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。構成成分に特異的な免疫刺激物質は、治療的用途に使用され得る生物学的に活性な物質を含んでもよく、また、構成成分に特異的な免疫刺激物質は検出法に有用となり得る。さらなる実施形態において、1以上の構成成分に特異的な免疫刺激物質はコロイド金属と混合、会合、または直接的もしくは間接的に結合される。混合、会合および結合は、共有結合およびイオン結合ならびに他のより弱い会合またはより強い会合を含み、これにより、誘導体化PEGまたは誘導体化ポリ-L-リジン、構成成分に特異的な免疫刺激物質、および他の構成成分の、互いのならびにコロイド金属粒子との長期間または短期間に渡る会合を可能にする。
【0051】
さらに別の実施形態において、組成物はまた、コロイド金属に混合、会合または結合された1以上の標的分子を含み得る。標的分子は金属粒子に直接的または間接的に結合され得る。間接的結合は、ポリリジンもしくは他の結合分子等の分子を介した結合、または標的分子と金属ゾルもしくは金属ゾルに結合した別の分子のどちらかとの双方に結合した分子とのあらゆる会合を含む。
【0052】
特に興味深いのは、封鎖されたコロイド金属ベクターを視覚化または検出するのに使用可能な染料または放射性物質等の検出剤である。蛍光性、化学発光性、熱感受性、不伝導性(opaque)、ビーズ状、磁性および振動性の物質もまた、本発明の組成物中のコロイド金属に会合または結合する検出剤としての使用が企図される。
【0053】
in vitroにおいてナイーブヒトB細胞からの一次抗体応答の発生は、ヒト抗体応答のin vitroでの再構築における第1のステップにしか相当しない。免疫ヒトB細胞由来の一次抗体応答は、IgM抗体の分泌をもたらす。抗原提示細胞(APC)として知られる第2のクラスのリンパ球様細胞もまた、抗原を吸収する。一度吸収されると、これらの細胞はタンパク質抗原を断片化処理し、それらは次に2つの主要組織適合複合体(MHC)の1つと結合されて細胞の表面に発現する。これらの細胞は、抗体のクラス・スイッチに重要である。
【0054】
免疫系応答の現在の理論を本明細書に示す。本発明は本明細書に記載される機構に限定されないが、複数の方法で機能することができ、本明細書に記載されるいかなる特定の理論によっても限定されない。微小環境に応じて、クラスII MHC分子に結合した抗原を提示したAPCは、CD4+ T細胞の2つのサブセットのうちの1つを活性化する。これらの細胞はヘルパーT細胞としても知られ、細胞性または液性(抗体)免疫応答を促進するために必須の補助機能を果たす。TH1 CD4+細胞が細胞性免疫応答を促進する一方で、CD4+細胞のTH2サブセットはクラス・スイッチの過程を開始するためにIgMを分泌するB細胞と相互作用する。
【0055】
APCによるCD4+ TH2 T細胞の活性化は、免疫シナプスとして知られる二細胞間隙の形成によって生じる(Wulfing C, Sumen C, Sjaastad MD, Wu LC, Dustin ML, Davis MM. Nat Immunol 2002. 31: 42-7)。免疫シナプスの形成は、APCにおけるシグナル伝達および構造リガンドの、T細胞上の個々の受容体との相互作用ならびに再配列を含み、それらの2つの細胞間の接触およびシグナル伝達を可能にする三次元(3-D)のブリッジを形成する(図1)。APCとT細胞との間の抗原シグナル伝達は、MHC/抗原複合体のT細胞受容体複合体との結合を介して生じる一方、免疫シナプスの構造完全性は各々、APC上のICAM(細胞内接着分子)、LFA-3およびCD72と、T細胞上のLFA-1、CD2およびCD5受容体との相互作用によって維持される。免疫シナプスの良好な形成は、CD4+ T細胞にCD40リガンドとして知られるB細胞刺激分子の発現をもたらす。
【0056】
免疫シナプスの形成は、T細胞に活性または不活性(アネルギー)となるようにシグナルを送り得る。どの応答が開始するかは、APC上のB7分子によってT細胞に提供される共刺激シグナルの強度に依存する。B7分子はT細胞上のB7受容体分子、CD28またはCTLA4のどちらかと相互作用し得る。これらのB7受容体は、B7分子に対するそれらの親和性と同様にT細胞の表面におけるそれらの密度について異なる。CD28はCTLA4よりもB7に対する親和性が低いが、しかしT細胞の表面においてはるかに高い密度で存在する。B7のCD28受容体への結合がT細胞に活性化シグナルを送る一方、CTLA4によるB7の結合はT細胞アネルギーを誘導する(Kuby, J., Immunology第3版 1997. Allen D.編, pp. 213-218)。従って、免疫シナプス中の過剰なB7の存在は、T細胞が活性化するのを確実にするだろう。活性化CD4+/CD40+ T細胞は、IgM分泌B細胞とシナプスを形成する。T細胞上のCD40リガンドの、B細胞上のCD40受容体との相互作用は、IgM分泌B細胞がIgGを産生するクラス・スイッチを受ける原因となる(図2)。
【0057】
本発明は、CD4+ T細胞を活性化できるAPC、ならびに免疫化B細胞または不死化B細胞の抗体応答を成熟させることができる人工CD4+ T細胞(sTc)および人工胚中心(sGC)を作製する方法を含む。本発明の組成物は、T細胞を活性化することができるコロイド金属ベクターおよび免疫化または不死化B細胞の成熟をもたらすベクターを含む。例えばベクターは、コロイド金属ベクターの表面と会合する抗原負荷主要組織適合(MHC)クラスIIタンパク質、共刺激タンパク質B7、および構造タンパク質細胞内接着分子(ICAM)を有し得る。このベクターはAPCの三次元的な配置を複製し(図3)、そしてCD4+ T細胞を活性化することにより免疫化B細胞の抗体応答を成熟させることのできる人工抗原提示細胞(sAPC)として機能する。sAPCの1つの実施形態は、コロイド金属の単一粒子におけるすべての構成成分を含む。sAPCの別の実施形態は、in vitroで自己組織化してsAPCを形成する金コロイドの個々の粒子上に結合した免疫シナプスの構造タンパク質を含む。
【0058】
本発明の人工抗原提示細胞(sAPC)を含む方法および組成物は、容易に入手可能かつ「冷蔵庫から取り出す」ことができ、そしてヒト抗体を操作するのに使用され得る組成物を含む。従って、本発明は疾患ならびに免疫関連機能不全および病状を治療する方法を含む。コロイド金属組成物は、免疫応答の開始、維持および制御(下方制御または上方制御のどちらか)に関与する変数を制御し、例えば、粒子サイズ、粒子当たりに結合するタンパク質の量、粒子上でのタンパク質移動の柔軟性、ならびに粒子の三次元的な集合がsAPCの再現可能な調節を確実にする。
【0059】
本発明のベクター組成物は、モノクローナル抗体のin vitroにおける生成に使用され得る。そのようなモノクローナル抗体は、多発性疾患を治療する方法において使用され得る。また、本発明のベクター組成物は、改良されたワクチン組成物を作製するのにも使用され得る。
【0060】
ワクチン治療において、ヒト免疫系の細胞性および液性応答の双方を刺激するように特に設計された人工免疫原の組成物が使用される。抗原の提示および特定の細胞の刺激のための特異的人工細胞免疫エレメントの作出によって、より予測可能かつ有効なワクチン応答が可能となる。
【0061】
本発明は、混合ワクチンおよびDNAワクチンを含む。混合ワクチンの例示は、百日咳菌毒素およびその表面線毛ヘマグルチニンである。DNAワクチンにおいて、患者はタンパク質抗原をコードする核酸を投与され、それはその後何らかの形で転写、翻訳および発現され、抗原に対して強く長期間の液性および細胞媒介性免疫応答を生成する。
【0062】
ワクチンによって生じる免疫応答は、アジュバントの使用によって非特異的に増強され得る。これらは化合物または担体構成成分の混成群であり、それらはリポソーム、エマルジョンまたはマイクロスフィア等であり、様々な異なる作用機構を有する。本発明の方法は、疾患に対する予防および癌を治療するためのワクチンの使用を含む。
【0063】
癌に加え、多くの疾患は免疫系によって媒介され、そして本発明は、免疫系およびその構成成分を刺激することが可能なコロイド金属ベクターを含む有効な量の組成物を投与することによってそのような疾患の治療をする方法を含む。疾患は、クローン病、乾癬、炎症性大腸炎、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、アトピー性皮膚炎、鼻炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、移植片(腎臓、心臓、膵臓、肺、骨および肝臓等の移植)拒絶反応、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、エイズ、手足口病、橋本病、グレーブス病、アジソン病、自己免疫性多腺性内分泌不全症、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイド症、慢性リンパ球性白血病、および非ホジキンリンパ腫を含む。
【0064】
本発明の方法は、活性化のために特定の免疫構成成分を標的化することによって、ワクチンの有効性を向上させる。コロイド金属および抗原と会合している、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む組成物が使用される。ワクチンが現在使用可能な疾患の例示は、コレラ、ジフテリア、ヘモフィルス属、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふく風邪、百日咳、天然痘、肺炎球菌性肺炎、ポリオ、狂犬病、風疹、破傷風、結核、腸チフス、水痘帯状ヘルペス、百日咳、および黄熱病を含むが、これらに限定されない。
【0065】
投与経路と免疫系に抗原を送達するために使用するベクターとを組み合わせることは、所望の免疫応答を設計するための強力な手段となる。本発明は、種々のベクター、または免疫刺激ベクター組成物の持続的放出を提供し得るリポソーム、マイクロカプセルもしくはマイクロスフィア等の送達剤と会合したベクターを包含する方法および組成物を含む。これらの送達系は、ベクターを保持し、そして免疫系の活性化のためにそれを徐放するための体内のデポ剤として作用する。例えば、リポソームは抗原、およびコロイド金属と会合した構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有するベクターを含む組成物で充填され得る。
【0066】
抗原/構成成分に特異的な免疫刺激物質/金属複合体は、リポソームから徐々に放出され、そして免疫系によって外来性であると認識され、構成成分に特異的な免疫刺激物質が対象とする特異的な構成成分は、免疫系を活性化する。免疫系のカスケードは、構成成分に特異的な免疫刺激物質の存在によってより迅速に活性化され、そして免疫応答がより迅速かつより特異的に発生する。
【0067】
本発明で意図する他の方法および組成物は、コロイド金属粒子が異なるサイズである、抗原/構成成分に特異的な免疫刺激物質/コロイド金属複合体の使用を含む。構成成分に特異的な免疫刺激物質の連続投与は、これらの異なるサイズのコロイド金属粒子を使用することによって1用量投与で達成され得る。1用量には、抗原と複合した4つの独立した構成成分に特異的な免疫刺激物質が含まれ、その各々は異なるサイズのコロイド金属粒子を有するだろう。従って、同時投与は、免疫構成成分の連続的な活性化を提供することにより、個体群に対してより有効なワクチンおよびさらなる予防をもたらすだろう。連続的活性化を伴うそのような単回用量投与の他のタイプは、異なるサイズのコロイド金属粒子とリポソームまたは異なるサイズのコロイド金属粒子で充填されたリポソームとを組み合わせることによって提供され得る。
【0068】
上記のようなワクチン接種システムの使用は、1用量で投与することのできるワクチンを提供するのに非常に重要である。1用量投与は、家畜等の動物個体群または動物の野生個体群を治療するのに重要である。1用量投与は、医療が不十分な貧困、ホームレス、農村部の者または発展途上国の人々等の医療に抵抗のある個体群の治療において不可欠である。世界中の多くの人々は、ワクチン接種等の予防型医療のための手段を持たない。結核等の感染性疾患の再発は、一度受けると持続的で有効に予防することができるワクチンへの需要を増加させた。
【0069】
本明細書で使用する「コロイド金属」という用語は、あらゆる非水溶性金属粒子または金属化合物、ならびに液体または水(ヒドロゾル)中に分散したコロイド炭素等の非金属由来のコロイドを含む。本発明で使用され得るコロイド金属の例示は、周期表のIIA、IB、IIB、IIIB群、ならびに遷移金属、特にVIII群の金属を含むが、これらに限定されない。好ましい金属は、金、銀、アルミニウム、ルテニウム、亜鉛、鉄、ニッケルおよびカルシウムを含む。他の適当な金属はまた、以下のものの種々の酸化状態すべてを含む:リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、スズ、タングステン、レニウム、白金およびガドリニウム。金属は好ましくはイオン型で提供され(好ましくは適切な金属化合物に由来する)、例えば、Al3+、Ru3+、Zn2+、Fe3+、Ni2+およびCa2+イオンである。好ましい金属は銀であり、特にホウ酸ナトリウムバッファー中で、濃度が約0.1%〜0.001%の間であり、最も好ましくは約0.01%の溶液である。別の好ましい金属は金であり、特にAu3+の型である。金コロイドの特に好ましい型は、HAuCl4(OmniCorp, South Plainfield, NJ)である。そのような銀コロイド溶液の色は黄色であり、そしてコロイド粒子は1〜100ナノメートルの範囲であり得る。そのような金属イオンは、複合体中で単独または他の無機イオンと共に存在し得る。
【0070】
あらゆる抗原が本発明において使用され得る。本発明において有用な抗原の例示は、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-3(「IL-3」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、百日咳毒素、破傷風毒素、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF-αまたはβ)、形質転換成長因子-β(「TGF-β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(「TGF-α」)、熱ショックタンパク質、上皮増殖因子(「EGF」)、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原(MART、MAGE、BAGE等)、ならびに熱ショックタンパク質(HSP);突然変異体p53;チロシナーゼ;ムチン(Muc-1、PSA、TSH、自己免疫抗原等)、免疫治療薬(AZT等)、ならびに血管形成薬および抗血管形成薬(アンギオスタチン、エンドスタチン、塩基性線維芽細胞増殖因子、および血管内皮増殖因子、前立腺特異的抗原等)、ならびに甲状腺刺激ホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0071】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、免疫系に作用するあらゆる分子または化合物、例えば、B細胞の抗体産生を刺激するAPCの能力を向上させる任意の分子であり得る。構成成分に特異的な免疫刺激物質の例示は、抗原、コロイド金属、アジュバント、受容体分子、核酸、免疫原性タンパク質、ならびに補助サイトカイン/免疫刺激剤、医薬品、化学療法剤、および担体を含むが、これらに限定されない。
【0072】
あらゆるタイプの医薬品が本発明で使用され得る。例えば、ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤等の抗炎症剤、可溶性受容体、抗生物質、鎮痛剤、COX-2阻害剤。特に興味深い化学療法剤は以下の限定されない例示を含む:タキソール、パクリタキセル、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アシクロビル、シスプラチン、メトトレキサート、ミトラマイシンおよびタクリン。
【0073】
これらの構成成分に特異的な免疫刺激物質は、別々にまたは組み合わせて使用され得る。これらは遊離状態またはコロイド金属との組み合わせなどの複合体で使用され得る。
【0074】
本発明で有用な、構成成分に特異的な免疫刺激物質の例示は、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-3(「IL-3」)、インターロイキン-4(「IL-4」)、インターロイキン-5(「IL-5」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、インターロイキン-7(「IL-7」)、インターロイキン-8(「IL-8」)、インターロイキン-10(「IL-10」)、インターロイキン-11(「IL-11」)、インターロイキン-12(「IL-12」)、インターロイキン-13(「IL-13」)、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、および他の毒素、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(「TNF-α」)、Flt-3リガンド、形質転換成長因子-β(「TGF-β」)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「CSF」)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(「VEGF」)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(「TGF-α」)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、ならびに他の炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、癌細胞特異的抗原(MART、MAGE、BAGE等)、ならびに熱ショックタンパク質(HSP);突然変異体p53;チロシナーゼ;自己免疫抗原;免疫治療薬(AZT等)、ならびに血管形成薬および抗血管形成薬(アンギオスタチン、エンドスタチン、塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子(VEGF)、および前立腺特異的抗原等)、ならびに甲状腺刺激ホルモンを含むが、これらに限定されない。
【0075】
本発明で有用なアジュバントは、熱殺菌された牛酪菌およびヒト型結核菌を含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドの限定されない例示は、DNA、RNA、mRNA、センスおよびアンチセンスである。免疫原性タンパク質の例示は、KLH(キーホールリンペットシアニン)、チログロブリン、ならびに遺伝子内にコードされたアジュバントおよび抗原部分を有する融合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0076】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、既知の遺伝子治療法を用いて、これらの核酸の形状で送達され、そして翻訳された後にそれらの効果が発揮され得る。免疫構成成分の活性化のためのさらなるエレメント(抗原等)が、同時にまたは連続して送達され得るのは、細胞で翻訳される構成成分に特異的な免疫刺激物質と外部から添加されるエレメントとが連携して作用し、免疫応答を特異的に標的化するためである。
【0077】
特に好ましい実施形態は、構成成分に特異的な免疫刺激物質と組み合わせた特異的抗原からなる薬剤を含むベクター組成物を使用して、免疫応答を活性化する方法を提供する。そのような方法はin vitroまたはin vivoにおいて有効であり、使用され得る。本明細書において、構成成分に特異的な免疫刺激物質とは、構成成分が免疫応答において活性を有するように、免疫系の構成成分(B細胞またはT細胞等)に対して特異的であって、かつその構成成分に作用することが可能な薬剤を意味する。構成成分に特異的な免疫刺激物質は免疫系のいくつかの異なる構成成分に作用することが可能であり得るものであり、そして、この可能性は本発明の方法および組成物に用いられ得る。この薬剤は、天然のものであってよく、または分子生物学技術もしくはタンパク質受容体操作を通して生成または修飾され得る。
【0078】
免疫応答における構成成分の活性化は、免疫応答の他の構成成分の刺激または抑制をもたらし、これらは免疫応答の全体的な刺激または抑制へ導く。説明を簡単にするために免疫構成成分の刺激が本明細書に記載されるが、しかし、免疫構成成分のすべての応答が刺激という用語により意図され、これは刺激活性、抑制活性、拒絶活性およびフィードバック活性を含むが、これらに限定されないことが理解される。
【0079】
作用を受ける免疫構成成分は複数の活性を有していてもよく、抑制および刺激の双方またはフィードバック機構の開始もしくは抑制を導く。本発明は、本明細書に詳述される免疫応答の例示によって限定されるべきではないが、しかし、免疫系のすべての態様における構成成分に特異的な作用を意図する。
【0080】
免疫系の各構成成分の活性化は、同時的、連続的、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の方法の1つの実施形態において、複数の構成成分に特異的な免疫刺激物質は同時に投与される。この方法において、免疫系は複数の別々の調製物によって同時に刺激され、この調製物の各々は構成成分に特異的な免疫刺激物質を含むベクター組成物を含む。好ましくは、ベクター組成物はコロイド金属と会合した、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。より好ましくは、組成物は、単一サイズ粒子もしくは異なるサイズの粒子のコロイド金属および抗原と会合している、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。最も好ましくは、組成物は単一サイズ粒子もしくは異なるサイズ粒子のコロイド金属、抗原、およびPEGもしくはPEG誘導体、好ましくはチオールPEG(PEG(SH)n)、または誘導体化ポリ-L-リジン、好ましくはポリ-L-リジンチオール(PLL(SH)n)と会合した、構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む。
【0081】
構成成分に特異的な免疫刺激物質は、特異的な刺激性、上方制御を提供し、個々の免疫構成成分に作用する。例えば、インターロイキン-1β(IL-1β)はマクロファージを特異的に刺激する一方、TNF-α(腫瘍壊死因子α)およびFlt-3リガンドは樹状細胞を特異的に刺激する。熱殺菌された牛酪菌およびインターロイキン-6(IL-6)はB細胞の特異的刺激物質であり、インターロイキン-2(IL-2)はT細胞の特異的刺激物質である。このような構成成分に特異的な免疫刺激物質を含むベクター組成物は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞およびT細胞の各々に特異的な活性化を提供する。例えば、マクロファージが活性化するのは、構成成分に特異的な免疫刺激物質IL-1βを含むベクター組成物が投与された場合である。好ましい組成物は、コロイド金属と会合したIL-1βであり、最も好ましい組成物はコロイド金属および抗原と会合することでその抗原に対して特異的なマクロファージ応答を提供するIL-1βである。ベクター組成物はさらに、標的分子、統合分子(integrating molecules)、PEGまたは誘導体化PEGを含み得る。
【0082】
免疫応答の多くのエレメントは、抗原に対する有効な免疫応答に不可欠であり得る。同時的な刺激方法の実施形態は、1)マクロファージに対するIL-1β、2)樹状細胞に対するTNF-αおよびFlt-3リガンド、3)B細胞に対するIL-6、および4)T細胞に対するIL-2を含む、構成成分に特異的な免疫刺激物質の組成物の4つの個々の調製物を投与することである。各々の構成成分に特異的な免疫刺激物質のベクター組成物は、当業者に知られている任意の経路によって投与してよく、そして所望の免疫応答に応じて同じ経路または異なる経路を用いてもよい。
【0083】
本発明の方法および組成物の別の実施形態において、個々の免疫構成成分が連続して活性化される。例えば、この連続的活性化は2つの段階(プライマー段階および免疫段階)に分けることができる。プライマー段階はAPC(好ましくはマクロファージおよび樹状細胞)の刺激を含み、一方免疫段階はリンパ球、好ましくはB細胞およびT細胞の刺激を含む。2つの段階各々の間で、個々の免疫構成成分の活性化は同時または連続し得る。連続した活性化のために、好ましい活性化の方法はマクロファージに続いて樹状細胞、続いてB細胞、続いてT細胞の活性化を引き起こすベクター組成物の投与である。最も好ましい方法は、マクロファージおよび樹状細胞の同時的活性化に続いてB細胞およびT細胞の同時的活性化を引き起こすベクター組成物の投与を含む、同時的連続活性化である。これは免疫系のいくつかの経路を開始する、複数の構成成分に特異的な免疫刺激物質の方法および組成物の例示である。
【0084】
金属ゾルに薬剤を結合する1つの方法は以下のステップを含み、明瞭な目的のみに対してであるが、開示される方法は単一の薬剤(TNF)を金属ゾル(金コロイド)に結合することに関する。金コロイドゾル中の粒子とタンパク質溶液中のTNFとの間の相互作用を可能にする装置が使用された。装置の略図を図11に示す。この装置は、結合されるべきタンパク質(TNF)と結合していない金コロイド粒子との相互作用を、混合チャンバーを小容量に減らすことによって最大化する。この装置は、大容量の金ゾルと大容量のTNFとの相互作用が小容量のT字型コネクタ内で起こることを可能にする。反対に、小容量のタンパク質を大容量の金コロイド粒子に添加することは、タンパク質が金粒子に均一に結合するのを確実にする好ましい方法ではない。小容量の金コロイドを大容量のタンパク質に添加する逆の方法もそうである。物理的に、金コロイド粒子およびタンパク質(TNF)は、2つの大きな容器から金コロイド粒子およびTNFタンパク質を汲み上げる1つのペリスタポンプによってT字型コネクタ内に送り込まれる。適切な混合をさらに確実にするために、インラインミキサーがT字型コネクタのすぐ下流に設置される。ミキサーは、金コロイド粒子をTNFと激しく混合し、双方は好ましい流速である約1L/分でコネクタを通る。
【0085】
薬剤との混合の前に、1N NaOHを用いて金ゾルのpHをpH8〜9に調整する。金ゾルのpHを調整するために好ましい方法は、100 mMトリスを用いる方法であり、金コロイドゾルのpHをpH6に調整する。高純度の、凍結乾燥された組み換えヒトTNFを再構築する。TNFを希釈するための好ましい方法は、100 mMトリスでpH6に調整された水中で行う方法である。ゾルまたはTNFのどちらかをそれらの個々の容器に添加する前に、容器をT字型コネクタに連結する管類を閉鎖する。等容量の金コロイドゾルおよびTNF溶液を適当な容器に添加する。溶液中の活性剤の好ましい濃度は約0.01〜15μg/mlの範囲であり、薬剤の金属ゾル粒子に対する所望の割合によって変化し得る。溶液中のTNFの好ましい濃度は、0.5〜4μg/mlの範囲であり、そしてTNF-コロイド金属組成物についてのTNFの最も好ましい濃度は、0.5μg/mlである。
【0086】
一度溶液がそれらの個々の容器内に適切に装填されると、ぺリスタポンプが作動して、薬剤溶液および金コロイド溶液をT字型コネクタ内に汲み上げて、インラインミキサーを通過し、ペリスタポンプを抜けて収集フラスコ内に入る。混合された溶液は収集フラスコ中でさらに1時間に渡るインキュベーションの間、攪拌される。
【0087】
PEGを含む組成物において、誘導体であってもそうでなくても、そのような組成物を作製する方法は以下のステップを包含するが、明瞭にする目的にのみに対してであり、開示される方法はPEGチオールを金属ゾル組成物に添加することに関する。あらゆるPEG、誘導体化PEG組成物もしくはあらゆるサイズのPEG組成物、またはいくつかの異なるPEGを含有する組成物は、以下のステップを用いて作製され得る。15分間のインキュベーションの後、チオール誘導体ポリエチレングリコール(PEG)溶液は金コロイド/TNFゾルに添加される。本発明は、任意の誘導体基を有するあらゆるサイズのPEGの使用を意図するが、しかしながら、好ましい誘導体化PEGは、mPEG-OPSS/2,000、mPEG-OPSS/5,000、mPEG-OPSS/10,000、mPEG-OPSS/12,000、mPEG-OPSS/20,000、mPEG-OP(SS)2/2,000、mPEG-OP(SS)2/3,400、mPEG-OP(SS)2/8,000、mPEG-OP(SS)2/10,000、チオール-PEG-チオール/2,000、mPEG-チオール5,000、およびmPEGチオール10,000、mPEGチオール12,000、mPEGチオール20,000(Sun-BIO Inc.)を含む。好ましいPEGは、pH5〜8の、水中で150 μ/mlの濃度のmPEG-チオール 5000である。従って、10% v/vのPEG溶液が金コロイド-TNF溶液に添加される。金/TNF/PEG溶液はさらに15分間インキュベーションされる。
【0088】
好ましい方法において、TNFおよびPEG-THIOL部分は同時に金コロイドナノ粒子に結合する。この方法において、金コロイドナノ粒子のpHは、100 mMトリス塩基を用いて6.0に調節される。同様に、水のpHは100 mMトリス溶液を用いて6.0に調節される。TNFおよびPEG-THIOL(20,000)は、後者の溶液中に最終濃度が各々5および15μg/mlになるように希釈される。金コロイドナノ粒子およびTNF/PEG-THIOL溶液の双方は、それらの個々の容器に装填され、そしてT字型コネクタおよびインラインミキサーを通して、各々の溶液をT字型コネクタを通して汲み上げるペリスタポンプを用いて結合される。15分間の結合の後、ヒト血清アルブミン(H2O中200μg/ml)を金コロイド/TNF/PEG-THIOL溶液に添加し、そしてさらに15分間インキュベーションする。
【0089】
続いて金コロイド/TNF/PEG溶液を、50〜100K MWCOダイアフィルトレーションカートリッジを通して限外濾過する。50〜100K保持液および浸透液をTNF濃度に対してELISAによって測定することで、金粒子に結合したTNFの量が決定される。
【0090】
ダイアフィルトレーションの後、マンニトールの組成物等の抗凍結剤を20 mg/ml;および/またはヒト血清アルブミンを5 mg/mlを添加して、サンプルを-80℃で凍結する。サンプルを凍結乾燥させることで、真空下で乾燥および密封し、続いて再構築し、そして再構築したサンプル中に存在する遊離のTNFの量および金コロイドに結合したTNFの量について解析する。
【0091】
本発明の組成物は、in vitroおよびin vivo系に投与され得る。in vivo投与は、標的細胞への直接的な使用、または経口、直腸、経皮、目(硝子体内もしくは眼房内を含む)、経鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣内、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、気管内および硬膜外を含む)投与に適した製剤を含む(が、これらに限定されない)ような投与経路を含み得る。好ましい方法は、経口経路または注射経路を介して、本発明のベクターを含む有効量の組成物を投与することを包含する。
【0092】
製剤は、単位投与形態で都合よく提供され得、そして従来の製薬技術によって調製され得る。医薬製剤組成物は、金属ゾルベクターと医薬担体または賦形剤とを会合させることによって作製される。一般的に、製剤は液体担体もしくは細かく分割した固形担体またはその双方と共に、組成物を均一かつ密接に会合させ、そして次に必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0093】
この発明はさらに以下の実施例によって説明され、これらの実施例はその範囲に対する制限を課すようには解釈されるべきではない。反対に、種々の他の実施形態、改変およびこれらの等価物を有し得るものであり、本明細書中の説明を読解した後に、当業者にそれらを、本発明の意図および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく示唆し得ることが、明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0094】
実施例1.金コロイドの製造
金コロイドゾルは、FrensおよびHorisberger(Frens, G. Nature Phys. Sci. 1972, 241, 20-22およびHorsiberger, M. Biol. Cellulaire. 1979. 36: 253-258)によって記載される反応を用いて製造される。この反応において、イオン化金はHAuCl4の形態であり、クエン酸ナトリウムの添加によりAu0のナノ粒子に還元される。一般的には、2.5 mlの4%四塩化金酸(水中)溶液を1Lの脱イオン水に添加する。溶液を勢いよく攪拌し、沸騰させる。還元反応は、1%クエン酸ナトリウム溶液の添加によって開始する。粒子のサイズは反応液に添加するクエン酸の量によって調節される。例えば、17、32および64 nm粒子は、それぞれ40、15および7.5 mlのクエン酸溶液の添加によって形成される。クエン酸を添加した後、溶液を沸騰させ、そしてさらに45分間混合してもよい。冷却直後に、ゾルを0.22μm滅菌フィルターを通して濾過し、そして使用するまで室温で保存する。
【0095】
金コロイドゾルの生成は、1.0L〜10Lまでスケールアップされてきた。UV-VIS波長走査、動的光散乱、および分画遠心技術を用いて、それらの粒子の平均粒子サイズおよび均質性について確認する。製造された粒子は、通常それらの予測サイズの10%以内である平均粒子サイズを有し、そして1.03〜1.12またはそれ以下の多分散度を示す。
【0096】
実施例2.免疫担当B細胞数の増加
免疫付与のため免疫担当B細胞数を増加させるために、MHCクラスII限定表面IgM+/sIgD+ヒトB細胞が、全血または軟膜の一群から単離される。抗IgM、抗IgDおよび抗CD19抗体でコーティングされた磁気ビーズは、B細胞集団を分離する。sIgM+/sIgD-未成熟B細胞をサイトカインインターロイキン-7で処理することが、さらなるB細胞を採取するのに用いられる(Sudo, T., Ito, M., Ogawa, Y., Iizuka, M., Kodoma, H., Kunisasa, T., Hayashi, S.C., Ogawa, M., Sakai, K., Nishikawa, S., Nishikawa, S.C. J. Exp. Med. 1989. 170: 333-338)。この処理は、sIgM+/sIgD-B細胞がsIgM+/sIgD+B細胞に表現型変化することによって示されるように、これらのB細胞を成熟させることが明らかにされてきた。これらの単離された細胞は、FACS分離を用いてほぼ均質に精製される。
【0097】
TNFをKLHまたはチログロブリン等の担体と複合体化させること(以下の論考を参照せよ)で、ヒトTNFの抗原性を増強する。TNF:KLH抗原は、インターロイキン-6(IL-6)等のB細胞標的化/活性化剤を含有する金コロイド粒子の表面に結合する。IL-6は、サイトカインであり、免疫化B細胞由来の抗体の合成を刺激することが知られる。同一の金粒子上に双方の部分を有することは、B細胞がKLH:TNF抗原シグナルならびにIL-6シグナルを受け取ることを確実にし、抗体応答を活性化することを確実にする。
【0098】
実施例3.一次抗体応答の分化
治療的抗体の生成に重要なのは、クラス・スイッチの過程である。免疫化ヒトB細胞由来の一次抗体応答は、IgM抗体の分泌をもたらす。抗原提示細胞(APC)として知られる第2のクラスのリンパ球様細胞もまた抗原を吸収する。一度吸収されると、これらの細胞はタンパク質抗原を断片化処理し、それらは次に2つの主要組織適合複合体(MHC)の1つと結合されて細胞の表面に示される。
【0099】
微小環境に応じて、クラスII MHC分子に結合した抗原を示すAPCは、CD4+ T細胞の2つのサブセットのうちの1つを活性化する。これらの細胞は、ヘルパーT細胞としても知られるが、細胞性または液性(抗体)免疫応答を促進するために必須の補助機能を果たす。TH1 CD4+細胞が細胞性免疫応答を促進する一方で、CD4+細胞のTH2サブセットはIgMを分泌するB細胞と相互作用し、クラス・スイッチの過程を開始する。
【0100】
APCによるCD4+ TH2 T細胞の活性化は、免疫シナプスとして知られる二細胞間隙の形成を伴って生じる。免疫シナプスの形成は、APCにおけるシグナル伝達および構造リガンドのT細胞上での個々の受容体との相互作用ならびに再配列を含み、それらの2つの細胞間の接触およびシグナル伝達を可能にする三次元(3-D)のブリッジを形成する(図1)。APCとT細胞との間の抗原シグナル伝達は、MHC/抗原複合体のT細胞受容体複合体との結合を介して生じる一方、免疫シナプスの構造完全性は各々、APC上のICAM、LFA-3およびCD72と、T細胞上のLFA-1、CD2およびCD5受容体との相互作用によって維持される。免疫シナプスの良好な形成は、CD4+ T細胞がCD40リガンドとして知られるB細胞刺激分子を発現する原因となる。
【0101】
免疫シナプスの形成は、T細胞が活性または不活性(アネルギー)となるシグナルを送り得る。どの応答が開始するかは、APC上のB7分子によってT細胞に提供される共刺激シグナルの強度に依存する。B7分子はT細胞上のB7受容体分子、CD28またはCTLA4のどちらかと相互作用し得る。これらのB7受容体は、B7分子に対するそれらの親和性と同様にT細胞の表面におけるそれらの密度について異なる。CD28はCTLA4よりもB7に対する親和性が低いが、しかしT細胞の表面においてはるかに高い密度で存在する。B7のCD28受容体への結合がT細胞に活性化シグナルを送る一方、CTLA4によるB7の結合はT細胞アネルギーを誘導する(Kuby, J., Immunology第3版 1997. Allen D.編, pp. 213-218)。従って、免疫シナプス中の過剰なB7の存在は、T細胞が活性化するのを確実にするだろう。
【0102】
この過程において、免疫化ヒトB細胞が免疫グロブリン遺伝子の再構成を受けることで、高特異性高親和性IgG抗体を生成する。
【0103】
このベクターはまず、MHC、B7およびICAMタンパク質から金コロイド粒子の表面上へと集合する。免疫シナプスの提示は三次元的な配置でなされ、これによりこのベクターがうまくCD4+T細胞を誘導してMHC限定的にCD40リガンドを発現することを可能にする。
【0104】
この過程はまた、種々のサイトカインおよび人工胚中心と組み合わせてCD40リガンドを発現するsTcを用いることで任意に開始され、それらの複合分子は、治療的mAbに重要な親和性成熟を示す。
【0105】
実施例4.スペーサー・アームを有するsAPC/sTc/sGCの作出
このsAPCは、ビオチン化形態のMHC、B7およびICAMタンパク質を結合するのに使用される、ストレプトアビジン金コロイド粒子上に構築される。この単一粒子sAPCがより高度な柔軟性を有するのは、構造タンパク質がビオチン-アビジンブリッジを形成するビオチン化スペーサー・アームを介して間接的に金コロイド粒子に結合しているためである。同様に、sTcおよびsGCはそれらの各々の構成成分を金コロイドへ結合するための同様の方法を用いて生成され得る。
【0106】
実施例5.自己組織化APCs/sTcs/sGCs
自己組織化人工APCが作成される。各々のAPCタンパク質を異なる金コロイド粒子に結合することで、免疫シナプスタンパク質の複雑な基質を作出する。このsAPCの組織化を導くために、部位特異的な分子足場を作製して、3-Dにおいて種々の粒子をより正しい位置にする。図5に示されるのは、この自己組織化sAPCの説明である。各粒子サブユニットの製剤は、単一粒子が複数の試薬に結合することを可能にする。図示するために、MHCクラスII分子は32 nm金コロイド粒子に結合し、これはストレプトアビジンとも結合している。sAPCの残りの2つのサブユニット、B7およびICAMは、17 nm粒子に結合する。MHC粒子のように、ICAMサブユニットはストレプトアビジン連結部位を含む。この粒子を組織化するために、ビオチン化ヒト血清アルブミンを用いてICAMおよびMHC粒子を共に結合させる。ベクターの完全な組織化のために、ジチオレート化ポリエチレングリコールを用いてMHCおよびB7粒子を共に架橋する。
【0107】
このモデルにおいて、免疫シナプスの形成はT細胞受容体/膜再構成から生じる。このベクターは、EIAプレート等の固形支持台にも結合し得る。これらの足場は、金コロイド標的抗原およびsAPCの双方を同じ基質内に存在させることを可能にする。結果として、ナイーブB細胞の免疫化の後に、sAPCがCD4細胞を活性化してCD4リガンドを発現させ、そして結果としてクラス・スイッチを誘導し得る。
【0108】
結合パートナーをCD40L/サイトカインまたはBLYS/CD30Lに変更することによって、自己組織化人工T細胞または人工胚中心が生成される。
【0109】
実施例6.金コロイド粒子へのタンパク質の結合
金コロイド粒子へのタンパク質の結合は、金コロイドゾルおよびタンパク質溶液のpHによる影響を受ける。至適pHにおいて、タンパク質は金コロイド粒子の表面に結合し、そして塩によるそれらの沈殿を防止する。金コロイドの塩誘発性沈殿は、ゾルの色が赤色から黒色に変化することによって容易に証明される。最適結合pHは、MHC、B7、ICAM、IL-6およびKLH:TNF抗原を含む、記載される各タンパク質に対して決定される。例えば、以下に記載する手順は、MHC分子を金コロイド粒子に結合させる方法を概説する。同様の手順は、各々の他のタンパク質の結合条件を決定するのに使用される。
【0110】
金コロイドへのMHC結合についての最適結合pHは、1 ml分液の金コロイドのpHを1 N NaOHで4〜11に調整することで決定される。各金溶液由来の100μl分液を微小遠心管に移し、そして1 ngのMHCタンパク質と共に30分間インキュベーションする。次に100μlの10%NaCl溶液を各遠心管に添加する。最適結合pHは、MHCタンパク質が金コロイド粒子に結合できるようにし、同時に塩誘発性沈殿を防止するpHとして定義される。
【0111】
最適結合pHを決定するのに加え、飽和結合解析が各タンパク質に対して実施される。この試験のために、金コロイド粒子のpHは前述の最適結合pHに調整される。続いて、MHCタンパク質の増加量(0.025〜5 ngのタンパク質)を100μl分液の金コロイドに添加する。30分間結合した後、様々な分液を10,000 rpmで遠心分離して金コロイド結合タンパク質から分離する。上清および金コロイド沈殿物を、各画分に存在するMHCタンパク質の相対量について解析する。
【0112】
実施例7.結合したMHCタンパク質の質量の定量化
金の粒子当たりの結合MHCタンパク質の質量を定量するために、定量EIAがMHCおよびB7タンパク質の測定用に開発される。ICAMのためのEIAは、すでに市販されている。MHCおよびB7タンパク質は、各タンパク質に対する競合結合EIAの開発によって定量的に測定される。B7およびMHCタンパク質に対する市販の抗体(両抗体はResearch Diagnostics, Inc.より入手可能)は、炭酸/重炭酸バッファー(pH 9.6)を使用してEIAプレート上にコーティングされる。MHCおよびB7の参照基準は、1.56 ng/ml〜500 ng/mlの範囲の用量を提供するために作製される。これらの基準は、MHCまたはB7タンパク質のどちらかに特異的な抗体を含むEIAプレートに添加される。金コロイド結合サンプルは、EIAプレートにおける他の指定されたウエルに添加される。
【0113】
種々のタンパク質の濃度は、サンプルまたは基準中に存在するタンパク質と抗体部位に対する分子のビオチン化形態との間の競合結合反応を達成させることによって決定される。ビオチン化リガンドは、ストレプトアビジンアルカリホスファターゼにより検出される。基質の添加に際し、サンプル中に存在する検体の質量と発色量との間に逆相関が生じる。
【0114】
実施例8. 同一粒子への複数のタンパク質結合
in vitroにおける免疫化の有効性および特異性を向上させるために、複数の化学的に異なるタンパク質を単一の金コロイド粒子の表面上に結合させる必要がある。3つの異なるタンパク質サイトカイン(IL-1、IL-6およびTNF)の、同一の金コロイド粒子への結合が実証されている。各サイトカインは、金コロイドに特定のpHで結合する。
【0115】
先に実証したように、IL-1は金コロイドにpH6〜8の間で結合する一方、TNFおよびIL-6はpH8〜11で結合することが各々測定された。0.25 ng/mlの3つのサイトカインを水中に含む溶液を、pH8で金コロイドゾルと共に混合した。サンプルを移し、そして残った溶液のpHを11に調整した。各pH変化の前に、さらにサンプルを採取した。2つのサンプルを遠心分離して、生じた金コロイドの沈殿物をPBS中に再懸濁した。
【0116】
同一の金粒子上に3つのサイトカインすべてが存在することを証明するために、種々のペレットを、TNFに対するモノクローナル抗体でコーティングされたEIAプレートに添加した。結合の後、プレートを洗浄し、そして指定されたウエルをアルカリホスファターゼ結合ウサギ抗IL-1、IL-6またはTNFのいずれかと共にインキュベーションした。洗浄の後、基質を各ウエルに添加して発色を開始した。図6に示されるデータは、最適結合pHが重複するために、pH8でIL-1およびTNFの双方が粒子上に存在したことを示す。しかしながら、IL-6シグナルは非常にわずかしか検出することができなかった。pHを11に上昇させることにより、IL-6のこれらの粒子への結合を可能にした。
【0117】
実施例9.キメラベクターの特定細胞への標的化
EGFおよびストレプトアビジンは同一の32 nm粒子の金コロイドに結合させた。二次/標的分子の結合のために、サンプルを3つの分液に分けた。1つのサンプルはビオチン化IL-1、別のはビオチン化GM-CSF、そして3つ目はビオチン化IL-6と結合させた。ビオチン化リガンドを結合した後、サンプルを遠心分離してあらゆる遊離の試薬を除去し、そして金コロイド沈殿物をFicoll分離ヒト白血球に添加した。培養液中で8日後に、種々の金コロイドベクターの取り込みがデジタル写真によって証明された。
【0118】
EGFストレプトアビジン金は、標的化のためにビオチン化IL-1、ビオチン化GM-CSF、またはビオチン化IL-6を使用することによって、マクロファージ(図7A)、樹状細胞(図7B)およびB細胞(図7C)を標的とした。各図における黒色染色(赤色矢印で表示される)が、種々の金コロイドベクターの取り込みを表す。
【0119】
図7に見られるように、種々の金コロイド/サイトカインキメラは、免疫系の種々の細胞エレメントを別々に標的とした。黒色染色(矢印で表示される)は金コロイド粒子を表し、これは種々の免疫細胞によって吸収され、そして凝集されたものである。これらのデータは、IL-1が金コロイドEGFをマクロファージに標的化し、同時にGM-CSFがキメラを樹状細胞に標的化し、そしてIL-6がベクターをB細胞に標的化したことを示唆する。
【0120】
実施例10.ヒトリンパ球の免疫化
これらのベクターを用いて、単離したリンパ球由来の一次免疫応答を発生させることが可能である。密度勾配遠心分離によって、白血球を全血より収集した。これらの細胞をチログロブリン結合TNF/IL-6金コロイドベクターで処理した。細胞は、2日毎に全部で8日間、金コロイドベクターのパルスを受けた。最後のパルスの後、細胞をさらに5日間培養した。上清を回収し、そして直接EIAを用いてヒト抗ヒトTNF(IgM/IgDおよびIgGの組み合わせ)抗体の存在について試験した。図8に見られるように、キメラcAUチログロブリンTNFは最も高い免疫密度を有した。
【0121】
実施例11.クラスIIMHC発現のためのヒトB細胞および樹状細胞の免疫化
in vitroにおけるヒトリンパ球免疫化の有効性を増加させるために、2つの異なるアプローチが使用される。第一に、TNFの免疫原性担体(チログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニンまたはマウス血清アルブミン等)へのカップリングはTNFの免疫原性を向上させる。担体:TNF結合は、標準的なEDC/NHSおよびグルタルアルデヒド法を用いて実施される。第二に、細胞特異的な標的物質を含む金コロイドの粒子へのそれらのカップリングは、これらの抗原の特異性を向上させる。抗原の送達をB細胞に標的化するために、担体:抗原複合体をIL-6を含む金コロイド粒子に結合させる。担体抗原の送達を樹状細胞に標的化するために、担体:抗原複合体をGM-CSFを含む金コロイド粒子に結合させる。
【0122】
これらのベクターは、クラスII MHC抗原を生成するために、まずナイーブMHC拘束性ヒトB細胞および樹状細胞を免疫化するのに使用される。これらの同一のベクターは後にも使用されて、新規または複製セットのナイーブB細胞由来の一次抗体応答を誘導する。免疫化スキームは、B細胞および樹状細胞の種々のベクターでの連続的な免疫化を含む。結果として、B細胞および樹状細胞は担体と一度、そしてTNF抗原と三度出会う。
【0123】
実施例12.B細胞によるクラスII MHCタンパク質の生成
ヒトB細胞にクラスII MHCタンパク質の生成をさせるために、106表面IgM+/IgD+ヒトB細胞を24ウエルプレートに播き、1.5 mlのAIM V培地中で培養する。播いてから24時間後に、細胞をIL-6標的化金コロイドベクターに結合したTHYRO:TNF抗原でパルスする。2日後に、細胞をIL-6ベクターによって標的化されるKLH:TNF担体でパルスする。培養液中にさらに2日間おいた後、細胞を3つ目の担体:TNF抗原、MSA:TNFで免疫する。細胞をさらに3〜7日間インキュベーションして、FACS解析によってクラスII MHC発現の存在について試験する。あるいはまた、細胞を金コロイド抗原で同時にパルスしてもよい。
【0124】
同様の手順がMHCクラスIIタンパク質を発現するために樹状細胞をパルスするのに用いられる。これらの細胞は、GM-CSF標的化金コロイドベクターに結合したTNF:担体抗原で免疫される。樹状細胞前駆体を、抗CD34でコーティングした磁気ビーズを使用して末梢血より単離する。これらの細胞は、これらを1000 ng/mlのGM-CSFおよび100 ng/mlのIL-4が添加されたAIM V無血清培地中でインキュベーションすることにより、in vitroで増殖する。CD1aおよび空のクラスII MHC分子の検出のためのFACS解析によって確認されるそれらの成熟化に際し、細胞は10 ng/mlパルスのTNFで成熟樹状細胞に分化する。これらの成熟樹状細胞は、GM-CSF標的化金コロイドTNF抗原で免疫される。抗原負荷MHCクラスIIタンパク質複合体は、FACSまたはストレプトアビジン結合フィコエリトリン(Research Diagnostic Inc.)検出システムで検出されるビオチン化抗原ペプチドのin situ解析によって検出される。
【0125】
実施例13.MHCクラスII抗原の単離のための方法開発
MHCの単離のための方法には、「一般的な」非MHC適合性血液サンプルを使用する。これらのMHC分子は、金コロイド粒子上のタンパク質に対する最適pHおよび最適飽和条件を決定するのに使用される。一度決定されると、これらの方法は抗原負荷MHCを免疫化MHC拘束性血液プールから精製するのに適用される。
【0126】
一般的かつ抗原が負荷したヒトクラスII MHCの単離は、Sette(Setteら, J. Immunol. 1992. 148:844)によって記載される方法を用いて行われる。つまり、非HLA適合ヒト全血由来の軟膜を最低密度108細胞/mlで凍結し、細胞を破砕するために超音波分解する。これらの細胞を2%Renex、150 mM NaCl、5 mM EDTAおよび2 mM PMSFを含む50 mMトリス塩酸(pH8.5)のバッファー中に懸濁する。核を含む大きな粒子を、遠心分離(10000×gで20分間)によって除去する。次に細胞溶解物を、ヒトクラスII MHC分子(Research Diagnostics Inc.)に対するマウス抗体をタンパク質A/Gセファロースビーズに結合して作製されたアフィニティーカラムにおいて分画する。溶解物は少なくとも5回カラムを通して、MHCタンパク質の固定化抗体への結合を最大化する。カラムを10カラム容の10 mMトリス塩酸pH8.0/0.1%Renexを含むバッファーで洗浄し、続いて5カラム容の1%n-オクチルグルコシドを含むPBSでさらに洗浄する。MHCクラスIIタンパク質は、1%n-オクチルグルコシドを含む生理食塩水中の50 mMジエチルアミンのバッファー(pH11.5)を使用して、カラムから溶出される。溶出に際し、各画分を直ちに2 Mグリシン(pH2.0)の添加により中和する。MHC II分子を含む画分を分注し、そして25μg分液にして凍結乾燥する。
【0127】
実施例14.ヒトB7.1分子の生成
ヒト共刺激分子B7.1は、組み換えDNA技術によって作製する。この遺伝子は市販の一時的発現ベクター系(InVivogen Inc.)の1つとして供給される。構築物は適切な制限部位が備えられて、プラスミド構築物からの活性遺伝子の分離が可能である。ヒトB-7.1遺伝子は、制限酵素NcoIおよびNheIを使用してpORF宿主プラスミドから単離される。この二重消化は、2つのDNA直鎖化断片の形成をもたらす。一方の遺伝子断片はB-7.1遺伝子(893 bp)から構成され、もう一方の断片(3210 bp)はp-ORFプラスミドのアクセサリー遺伝子を構成する。遺伝子断片を1%アガロースゲル上で分画し、そしてエチジウムブロミド染色によって視覚化する。バンドをゲルから切り出し、そしてQuiaQuickゲル抽出樹脂を用いて精製する。精製された直鎖化遺伝子を、バキュロウイルス発現系(CloneTech Inc.)に、強力なCMVプロモーターの制御下で挿入する。バキュロウイルス組込み遺伝子を、製品明細および条件に従ってSF9昆虫細胞系内にトランスフェクションする。106 B7形質導入NOS細胞を、バイオリアクター内で増殖させる。インキュベーション培地および細胞溶解物を、あらかじめタンパク質A/Gセファロースカラムに固定しておいたヒトB7.1タンパク質(Research Diagnostics Inc.)に対するマウスモノクローナル抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって処理する。
【0128】
実施例15.人工抗原提示細胞の生成:単一粒子sAPC
一次抗体応答の成熟のために、可能性のあるsAPCは、その結果として抗体クラス・スイッチが起こる、CD4T細胞/B細胞相互作用を誘導しなければならない。一次sAPCは、金コロイドの単一粒子上への免疫シナプスのタンパク質の結合によって生じる。このベクター、ならびにストレプトアビジン金コロイドコア上に構築されたものを、CD4+T細胞を活性化するそれらの能力について試験する。
【0129】
一度免疫シナプスの構成成分を単離し、精製して均一化すると、これらは金コロイド粒子に結合して単一粒子sAPCを生成する。2つの方法がこれらのAPCを作製するために用いられる。第1の方法は、免疫シナプスの構成成分(つまり、ペプチド負荷MHC、B7およびICAM分子)の、金コロイド粒子への直接的な結合を含む。拘束されることを望まないが、各mlの金は、金コロイドゾル1 ml当たり250 ngの各タンパク質を結合するだろうと考えられる。
【0130】
第1の足場を、EIAプレートの表面上に組織化した。材料は、ヒトTNF;32 nm TNF/ストレプトアビジン金コロイドキメラ;ビオチン化BSA;17 nmストレプトアビジン金コロイドベクター;ビオチン化ヒトIL-6;アルカリホスファターゼに結合したウサギ抗ヒトIL-6に対するモノクローナル抗体でコーティングされたEIAプレートを含む。種々の構成成分を、図9Aに表すように足場内に組織化した。この実験の対照は単に足場が構築されるTNF結合部位のない32 nm粒子であった。図10Aに示されるように、強いシグナルが生じるのは、足場のすべての分子ブリックが存在する場合である。TNF結合部位を除去するだけで、足場を形成せず、そして結果としてシグナルが生じない。
【0131】
免疫シナプスタンパク質の、金コロイドの単一粒子への直接的な結合は、粒子の表面におけるタンパク質の堅い配置をもたらす。これらのタンパク質のsAPCにおける運動性の柔軟性を向上させるために、別の単一粒子sAPCを作製する。この単一粒子sAPCは、ビオチン化形態のMHC、B7およびICAMタンパク質に結合するストレプトアビジン金コロイド基本骨格上に作製される。タンパク質は、スペーサー・アームを介してタンパク質に連結されるビオチン残基を介して、ストレプトアビジン金粒子と結合する。
【0132】
タンパク質は、NHSビオチン(Piece Chemical Co.)等のいくつかのビオチン化試薬を使用してビオチン化される。この試薬は、タンパク質とビオチン部分との間に1.35 nmのスペーサー・アームを設置する。あるいはまた、NHS-LC-LC-Biotinを使用することで、タンパク質をビオチン化する。この物質は、タンパク質とビオチン残基との間に3.05 nmのスペーサー・アームを設置する。そのようなスペーサー・アームは、タンパク質の運動を容易にして、リガンド結合を促進する。この付加された柔軟性は、タンパク質の能力を改良し、適切な3-D配置を達成し、そしてCD4+T細胞と共に機能的な免疫シナプスを形成する。
【0133】
実施例16.自己組織化sAPCの生成
多粒子sAPCは、免疫シナプス形成の間に、自己配置の柔軟性を有し得る。この柔軟性は、粒子を接続するのに使用される部分の組織化の直接的な結果である。リンカーは、アルカン、タンパク質、およびポリエチレングリコール(PEG)であり得るものであり、これにより最大限のベクター機能性を可能とする。
【0134】
第2の足場(図9Bに示される)は、4つの末端遊離チオールを含む、4アームのポリエチレングリコール(10,000 MV)骨格を使用して組織化された。このリンカーは、IL-1またはTNFと結合した金コロイドの個々の粒子を接続するのに使用した。連結の後、調製物を遠心分離して、IL-1モノクローナル抗体でのみコーティングしたEIAプレートを使用して、両タンパク質についてアッセイした。結合の後、プレートを洗浄し、酵素に連結したIL-1またはTNFポリクローナル抗体を用いて検出した。同様に、図9Bに記載するベクターは、リンカーの存在下においてのみ、両タンパク質に対するシグナルを発した(図10B)。リンカーなしでは、背景色のみが観察された。
【0135】
sAPCの柔軟性をさらに向上させるために、構成成分タンパク質を異なる金コロイドの粒子上で組織化させる。これらの粒子は、足場システムで組織化され、CD4+T細胞活性化を誘導し得るsAPCを生じる。多粒子sAPCは、溶液中で使用される得るか、または図9Aおよび9Bに示されるように、EIAプレート上に固形支持体を提供するのに使用され得る。
【0136】
MHC、B7およびICAMタンパク質は、前述の通り異なる金コロイドの粒子に結合される。この粒子は種々の足場分子によって物理的に接続される。「接続」分子の機能は、免疫シナプスの形成における個々の金コロイドの粒子のより高い柔軟性を提供することである。この柔軟性は、sAPCが独立した粒子として、または固体表面に結合した基質部分として提供されるかに関わらず生じる。
【0137】
第1の添加物は、修飾されたジチオールアルカン部分より構成される。アルカンジチオールの機能は、チオール-金結合の形成を介して、個々の金コロイド粒子を結合することである。これらの部分は、バイオセンサーの開発において、ガラススライドの表面上に自己組織化金構造物を構築するのに用いられてきた(Mirkin, C.A., Letsinger, R., Mucic, R.C.およびStorhoff, J.J. Nature. 1996. 382 607-609)。チオール基は、アルカン部分を金コロイド粒子の表面に直接的に結合することを可能にする。市販のアルカンチオール試薬の例示は、1,5ペンタンジチオール、1,6ヘキサンジチオール、およびデカンジチオール(Sigma Chemical Company)を含む。
【0138】
アルカンジチオールの代用品として、種々のサイズの2、3および4-アームポリエチレングリコール(SunBio, Walnut Creek, CA)もまた使用される。これらのポリマーの各々のアームは遊離のチオール基を有し、これは金-チオール結合の形成を介して個々の金コロイドの粒子を結合するのに使用される。これらの試薬は、さらに完全な水溶性という利点を提供する。
【0139】
免疫シナプスの複数のタンパク質部分を、金コロイドの単一粒子または多粒子のどちらかに結合することは、ヒトB細胞の免疫化におけるクラス・スイッチを引き起こす細胞事象を推進することが可能な人工抗原提示細胞(sAPC)の生成を可能にする。
【0140】
実施例17.CD40リガンドを発現するためのsAPCによるCD4+T細胞の刺激
単一粒子および自己組織化sAPCを、MHC拘束性CD4+T細胞由来のCD40リガンドの発現を誘導するそれらの能力について試験する。続いて、0.1〜10μgの抗原負荷MHC(sAPC上に存在する)を、AIM V培地で培養した106のクラスII拘束性CD4+T細胞に添加する。刺激はIL-4およびIL-10の存在下で生じ、これはCD4+T細胞のTH2サブセットの生成を促進する。sAPC刺激の4、12および24時間後に、CD4細胞を回収し、そしてFITC標識化マウス抗ヒトCD40リガンド抗体で染色してFACSにより解析する。
【0141】
CD4+T細胞を活性化している間に、MHC拘束性B細胞リンパ球の新規のセット(つまりMHCの単離に使用されない細胞)を前述の通り免疫し、抗原特異的なIgM抗体の生成を行う。MHC拘束性B細胞は、前述の標的化TNF抗原を用いて免疫する。各々の細胞から生成する抗原特異的なIgMおよびCD40リガンドの検出の後、活性化CD4+T細胞をIgM分泌B細胞に添加する。クラス・スイッチは、ヒト抗ヒトTNF IgGの検出によってモニターされる。IgG陽性クローンは、以下に記載するようにK6H6/B5マウスヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞系と融合する。
【0142】
実施例18.抗体検出およびB細胞の不死化
陽性ウエル由来の細胞すべてを混合し、一度遠心分離をして、PBSで洗浄し、そして2×106のマウス/ヒトヘテロ骨髄腫K6H6/B5細胞と混合する。ヘテロ骨髄腫細胞系、K6H6/B5(ATCCを介して入手可能)がこれらのヒトリンパ球にとって理想の融合パートナーであるのは、これらの癌細胞が抗体を分泌せず、そして特許の制限なく入手可能であるためである。ヒトおよび骨髄腫細胞は、PEGを用いた標準的な融合プロトコルを用いて融合される。うまく融合した細胞を、従来のHAT/HT選抜プロトコルを用いて選抜する。直接ELISA法を用いて、増殖クローンをTNF特異的ヒトIgG抗体の産生について試験した。抗原認識を示すそれらのクローンをT-75フラスコ内でスケールアップし、この時点ですべてのクローンを低温保存して、それらの上清を以下に記載するように中和抗体活性について試験する。
【0143】
実施例19.TNF生物活性の中和
TNFの生物活性を中和するTNF抗体の能力は、よく特性化されたWEHI 164生物学的検定を用いて試験される。つまり、TNFは用量依存的にこれらの細胞のin vitroにおける増殖を阻害する。この生物学的検定のために、5000 WEHI細胞を24穴組織培養群中に播種する。TNF(15.6 pg/ml〜500 pg/ml)をプレート内の指定されたウエルに添加する。ヒトモノクローナル抗体のTNFの作用を中和する能力を測定するために、同一の標準的用量範囲のTNF標準を1μgの各TNFモノクローナル抗体の存在下において作製する。種々の処理をした細胞を5日間培養し、Coulter Counterを用いて細胞数を測定する。
【0144】
実施例20.金コロイド結合TNFの凍結乾燥安定性に対するイオン強度の効果
図11に示す金コロイド結合装置を使用して、前述のようにTNFを金コロイドナノ粒子に結合した。結合の後、30K PEG-Thiolを脱イオン水中50μg/ml(pH 9)の濃度で溶液に添加した。
【0145】
TNF-金コロイド結合の安定性に対するイオン強度の効果を試験するために、種々の量の塩(1×標準リン酸緩衝生理食塩水;PBSの形態で)をTNF溶液が入った容器に添加した。PBSの最終濃度は、標準PBSの0〜0.325%であった。結合およびダイアフィルトレーションの後、抗凍結剤(マンニトール、20 mg/ml;ヒト血清アルブミン、5 mg/ml)をサンプルに添加した。次にサンプルを1 mlサンプルに分注し、そして-80℃で凍結した。凍結後、サンプルを凍結乾燥させ、真空下で密封した。
【0146】
次に、サンプルを1 mlの脱イオン水で再構成し、そして1% PEG-1450/水の溶液で10倍に希釈した。サンプルを遠心分離して、金コロイド結合TNFを遊離のTNFから分離した。金コロイド沈殿物および上清の両方を、EIAによりTNF濃度について解析した。これらの実験からのデータを表1に示す。
【0147】
表I.塩非存在下で作製した凍結乾燥金コロイドTNFの放出特性
総TNFの割合
金コロイド沈殿物 68
上清 32
【0148】
表Iは、TNFの32%が凍結乾燥後にベクターから放出されることを示す。反復実験において、本発明者らは50%程のタンパク質が凍結乾燥後に放出されることを観察した。
【0149】
実施例21.凍結乾燥金コロイド-TNF薬の安定性に対するイオン強度上昇の効果
TNFの溶液を、事前に3 mMトリス溶液でTNFの最終濃度が0.5μg/mlとなるように希釈し、これを標準リン酸緩衝生理食塩水の0.25×溶液(77.25ミリオスモル/kg)を添加することで改変した。溶液を上記のように結合した。結合の後、上記の30K PEG-Thiolおよび抗凍結剤を添加し、そしてサンプルを-80℃で凍結した。上記のようにサンプルを凍結乾燥し、次に再構成し、そして再構成したサンプル中に存在する遊離のTNF量および金コロイドに結合したTNFの量について解析する。この実験からのデータは図12に示す。
【0150】
図12に見られるように、イオン強度の上昇は、凍結乾燥の間のベクターの安定性を大きく向上させる。加塩効果は用量依存的であった。表IIに示すように、TNFに添加される塩の量は、凍結乾燥後に放出される多くのタンパク質を減少させる。
【0151】
表II.ベクター凍結乾燥後のTNF放出に対する塩濃度の効果
塩濃度(ミリオスモル/kg) 0 4.5 19.3 46.5 77.25
放出割合 40 30 10 6 6
【0152】
塩非存在下においてTNFを結合することは、TNFの一部が金粒子に直接的に結合されるというよりはむしろイオン二重層中に結合されることとなる(図13)。凍結乾燥の間、イオン層を溶媒和する水は失われ、従って再構成に際し、このベクターはイオン雲中に結合するTNFの一部を放出した。塩の添加によってイオン強度が上昇することによりイオン層が収縮/崩壊し(図14)、そしてすべてのTNFが粒子の表面に直接的に結合できるようにする。凍結乾燥の後、この調製物は粒子の表面に結合したすべてのTNFを有する。
【0153】
上記に引用するすべての特許、刊行物および要約は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。上記が本発明の好ましい実施形態のみに関するものであり、そして多数の改良または改変が、以下の請求項に定義されるような本発明の意図および範囲から逸脱することなく達成され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、免疫シナプスの略図を提供する。
【図2】図2は、活性化CD4+T細胞による一次抗体応答の分化の略図を提供する。
【図3】図3Aは、金コロイド人工抗原提示細胞の概略図を提供する。図3Bは、金コロイド人工T細胞の概略図を提供する。図3Cは、金コロイド人工胚中心の概略図を提供する。
【図4】図4は、単一粒子sAPCが機能性免疫シナプスを形成することは不可能であることの略図を提供する。
【図5】図5は、多粒子金コロイドsAPCの生成の略図を提供する。
【図6】図6は、同一の金コロイド粒子への複数のサイトカインの結合を表すグラフを提供する。
【図7】図7は、マクロファージ(図7A)、樹状細胞(図7B)およびB細胞(図7C)に標的化されたEGFストレプトアビジン金の一連の写真である。
【図8】図8は、in vitroでの種々の刺激に対する応答における細胞の免疫応答性のグラフを提供する。
【図9A】図9Aは、EIAプレートの固体支持体上の金コロイド粒子の自己組織化の概略図を提供する。1=EIAプレート;2=ヒトTNFに対するマウスMab;3=ヒトTNF(青色四角);4=ストレプトアビジンでTNFに結合した32 nm金コロイド;5=ビオチン化BSA;6=17 nmストレプトアビジン金コロイド;7=ビオチン化ヒトIL-6;8=アルカリホスファターゼ結合ウサギ抗ヒトIL-6。
【図9B】図9Bは、4アームPEG-チオール骨格(Sun Bio, Inc.)上にIL-1またはTNFのどちらかで結合した金コロイド粒子の自己組織化の概略図を提供する。
【図10A】図10Aは、図9Aにおける粒子によって生成する免疫応答性シグナルのグラフを提供する。
【図10B】図10Bは、図9Bにおける粒子によって生成する免疫応答性シグナルのグラフを提供する。
【図11】図11は、金コロイド/TNF結合装置の略図を提供する。
【図12】図12は、凍結乾燥後の金コロイドTNFベクターの安定性に対するイオン強度の効果のグラフを提供する。
【図13】図13は、低イオン強度溶液中で金コロイドに結合するTNFについてのモデルの略図を提供する。
【図14】図14は、高イオン強度溶液中で金コロイドに結合するTNFについてのモデルの略図を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工APCを含むベクター組成物であって、ここで、人工APCがコロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有するベクター組成物。
【請求項2】
構成成分に特異的な免疫刺激物質が、抗原、コロイド金属、アジュバント、受容体分子、核酸、免疫原性タンパク質、補助サイトカイン/免疫刺激物、医薬品、化学療法剤、または担体を含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項3】
構成成分に特異的な免疫刺激物質が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF-α)、Flt-3リガンド、形質転換成長因子(TGF-β)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(CSF)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(VEGF)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(TGF-α)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ポリヌクレオチド、癌細胞特異的抗原、突然変異体p53、チロシナーゼ、ムチン、自己免疫抗原、免疫治療薬、血管形成薬または抗血管形成薬を含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項4】
癌細胞特異的抗原がMAGE、BAGE、またはMARTである、請求項3に記載の構成成分に特異的な免疫刺激物質。
【請求項5】
ムチンがMUC-1、PSA、またはTSHである、請求項3に記載の構成成分に特異的な免疫刺激物質。
【請求項6】
コロイド金属が、金コロイド、銀コロイド、鉄コロイド、アルミニウムコロイド、または白金コロイドを含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項7】
賦形剤、バッファー、または担体を含む製薬上許容され得る構成成分をさらに含有する、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項8】
アジュバントをさらに含み、ここで、アジュバントが、リポソーム、エマルジョン、マイクロスフィア、生分解性ポリマーおよびポリスチレン、ミョウバン、熱殺菌された牛酪菌およびヒト型結核菌、百日咳毒素および破傷風毒素、またはLPS、ならびにブドウ球菌エンテロトキシンBを含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項9】
ベクターが共刺激タンパク質をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項10】
ベクターが主要組織適合複合体をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項11】
ベクターが胚中心をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項12】
ベクターが構造タンパク質をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項13】
標的分子、統合分子、PEG、誘導体化PEG、ポリ-L-リジンまたは誘導体化ポリ-L-リジン、ビオチン-アビジン、二官能性PEG、または二官能性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項14】
二官能性PEGがチオールおよびビオチンを含む、請求項13に記載のベクター組成物。
【請求項15】
ポリ-L-リジンがチオールおよびビオチンを含む、請求項13に記載のベクター組成物。
【請求項16】
人工APCが凍結乾燥され、そして投与の前の期間に保存される、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項17】
in vitroにおけるモノクローナル抗体の生成のための方法であって、
a)抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質をコロイド金属と混合および結合して、人工APCを形成すること;ならびに
b)in vitroにおいてヒト由来の免疫細胞を刺激して、免疫細胞を活性化することにより、人工APCに対する一次応答を引き起こすこと;ここで人工APCは抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質、およびコロイド金属を含む;ならびに
c)活性化免疫細胞を不死化させること;ならびに
d)モノクローナル抗体産生細胞を選抜すること
を含む方法。
【請求項18】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
胚中心をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ヒトタンパク質のみを含む抗原特異的、ヒト特異的モノクローナル抗体であって、以下のプロセス:
a)in vitroにおいてヒト由来の免疫細胞を刺激して、免疫細胞を活性化することにより、人工APCに対する一次応答を引き起こすこと;ここで人工APCは抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質、およびコロイド金属を含む;ならびに
b)活性化免疫細胞を不死化させること;ならびに
c)モノクローナル抗体産生細胞を選抜すること
によって生成される、モノクローナル抗体。
【請求項21】
少なくとも1つのコロイド金属粒子、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する組成物を投与することを含む、免疫応答に作用する方法。
【請求項22】
少なくとも1つのコロイド金属粒子、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する組成物を投与することを含む、ワクチンの有効性を向上させる方法。
【請求項23】
疾患ならびに免疫関連機能不全および病状を治療する方法であって、ヒトまたは動物に、人工APCを含む治療的に有効な量のベクター組成物を投与することを含み、ここで、人工APCは少なくとも1つのコロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する、方法。
【請求項24】
コロイド金属粒子が異なるサイズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
構成成分に特異的な免疫刺激物、抗原、および異なるサイズのコロイド金属粒子の投与が、構成成分に特異的な免疫刺激物、抗原、および異なるサイズのコロイド金属粒子を単回用量として同時に投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
方法が疾患の治療において免疫構成成分を刺激または抑制するために使用される請求項23に記載の方法であって、ここで疾患は癌、固形腫瘍癌、クローン病、乳癌、乾癬、炎症性大腸炎、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、移植片拒絶反応、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、エイズ、橋本病、グレーブス病、アジソン病、自己免疫性多腺性内分泌不全症、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイド症、慢性リンパ球性白血病、または非ホジキンリンパ腫である、方法。
【請求項27】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも2つのコロイド金属、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む多粒子自己組織化人工APCであって、ここで多粒子人工APCは足場分子を用いて組織化され、ここで足場分子はビオチン化スペーサー・アーム、アルカンリンカー、タンパク質、ポリエチレングリコール、誘導体化PEG、多腕PEG、またはチオール化ポリ-L-リジンを含む、多粒子自己組織化人工APC。
【請求項29】
コロイド金属粒子が異なるサイズである、請求項28に記載の多粒子自己組織化人工APC。
【請求項30】
標的分子および統合分子をさらに含む、請求項28に記載の多粒子自己組織化人工APC。
【請求項31】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
人工APCを含むベクター組成物であって、ここで、人工APCがコロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有するベクター組成物。
【請求項2】
構成成分に特異的な免疫刺激物質が、抗原、コロイド金属、アジュバント、受容体分子、核酸、免疫原性タンパク質、補助サイトカイン/免疫刺激物、医薬品、化学療法剤、または担体を含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項3】
構成成分に特異的な免疫刺激物質が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、脂質A、ホスホリパーゼA2、内毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンB、I型インターフェロン、II型インターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF-α)、Flt-3リガンド、形質転換成長因子(TGF-β)、リンホトキシン、遊走阻止因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(CSF)、単球-マクロファージCSF、顆粒球CSF、血管上皮増殖因子(VEGF)、アンギオゲニン、形質転換成長因子(TGF-α)、熱ショックタンパク質、血液型の糖鎖成分、Rh因子、線維芽細胞増殖因子、炎症性および免疫制御性タンパク質、ヌクレオチド、DNA、RNA、mRNA、センス、アンチセンス、ポリヌクレオチド、癌細胞特異的抗原、突然変異体p53、チロシナーゼ、ムチン、自己免疫抗原、免疫治療薬、血管形成薬または抗血管形成薬を含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項4】
癌細胞特異的抗原がMAGE、BAGE、またはMARTである、請求項3に記載の構成成分に特異的な免疫刺激物質。
【請求項5】
ムチンがMUC-1、PSA、またはTSHである、請求項3に記載の構成成分に特異的な免疫刺激物質。
【請求項6】
コロイド金属が、金コロイド、銀コロイド、鉄コロイド、アルミニウムコロイド、または白金コロイドを含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項7】
賦形剤、バッファー、または担体を含む製薬上許容され得る構成成分をさらに含有する、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項8】
アジュバントをさらに含み、ここで、アジュバントが、リポソーム、エマルジョン、マイクロスフィア、生分解性ポリマーおよびポリスチレン、ミョウバン、熱殺菌された牛酪菌およびヒト型結核菌、百日咳毒素および破傷風毒素、またはLPS、ならびにブドウ球菌エンテロトキシンBを含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項9】
ベクターが共刺激タンパク質をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項10】
ベクターが主要組織適合複合体をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項11】
ベクターが胚中心をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項12】
ベクターが構造タンパク質をさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項13】
標的分子、統合分子、PEG、誘導体化PEG、ポリ-L-リジンまたは誘導体化ポリ-L-リジン、ビオチン-アビジン、二官能性PEG、または二官能性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項14】
二官能性PEGがチオールおよびビオチンを含む、請求項13に記載のベクター組成物。
【請求項15】
ポリ-L-リジンがチオールおよびビオチンを含む、請求項13に記載のベクター組成物。
【請求項16】
人工APCが凍結乾燥され、そして投与の前の期間に保存される、請求項1に記載のベクター組成物。
【請求項17】
in vitroにおけるモノクローナル抗体の生成のための方法であって、
a)抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質をコロイド金属と混合および結合して、人工APCを形成すること;ならびに
b)in vitroにおいてヒト由来の免疫細胞を刺激して、免疫細胞を活性化することにより、人工APCに対する一次応答を引き起こすこと;ここで人工APCは抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質、およびコロイド金属を含む;ならびに
c)活性化免疫細胞を不死化させること;ならびに
d)モノクローナル抗体産生細胞を選抜すること
を含む方法。
【請求項18】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
胚中心をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ヒトタンパク質のみを含む抗原特異的、ヒト特異的モノクローナル抗体であって、以下のプロセス:
a)in vitroにおいてヒト由来の免疫細胞を刺激して、免疫細胞を活性化することにより、人工APCに対する一次応答を引き起こすこと;ここで人工APCは抗原、構成成分に特異的な免疫刺激物質、およびコロイド金属を含む;ならびに
b)活性化免疫細胞を不死化させること;ならびに
c)モノクローナル抗体産生細胞を選抜すること
によって生成される、モノクローナル抗体。
【請求項21】
少なくとも1つのコロイド金属粒子、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する組成物を投与することを含む、免疫応答に作用する方法。
【請求項22】
少なくとも1つのコロイド金属粒子、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する組成物を投与することを含む、ワクチンの有効性を向上させる方法。
【請求項23】
疾患ならびに免疫関連機能不全および病状を治療する方法であって、ヒトまたは動物に、人工APCを含む治療的に有効な量のベクター組成物を投与することを含み、ここで、人工APCは少なくとも1つのコロイド金属、抗原、および構成成分に特異的な免疫刺激物質を含有する、方法。
【請求項24】
コロイド金属粒子が異なるサイズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
構成成分に特異的な免疫刺激物、抗原、および異なるサイズのコロイド金属粒子の投与が、構成成分に特異的な免疫刺激物、抗原、および異なるサイズのコロイド金属粒子を単回用量として同時に投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
方法が疾患の治療において免疫構成成分を刺激または抑制するために使用される請求項23に記載の方法であって、ここで疾患は癌、固形腫瘍癌、クローン病、乳癌、乾癬、炎症性大腸炎、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー、移植片拒絶反応、リウマチ性疾患、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症、シェーグレン症候群、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、エイズ、橋本病、グレーブス病、アジソン病、自己免疫性多腺性内分泌不全症、肝炎、硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、セリアック病、抗体媒介性腎炎、糸球体腎炎、ヴェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性動脈炎、結節性多発性動脈炎、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、乾癬、白斑、多発性硬化症、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、強膜、上強膜、ブドウ膜炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、乳児一過性低γグロブリン血症、骨髄腫、X連鎖高IgM症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、アミロイド症、慢性リンパ球性白血病、または非ホジキンリンパ腫である、方法。
【請求項27】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも2つのコロイド金属、抗原、および少なくとも1つの構成成分に特異的な免疫刺激物質を含む多粒子自己組織化人工APCであって、ここで多粒子人工APCは足場分子を用いて組織化され、ここで足場分子はビオチン化スペーサー・アーム、アルカンリンカー、タンパク質、ポリエチレングリコール、誘導体化PEG、多腕PEG、またはチオール化ポリ-L-リジンを含む、多粒子自己組織化人工APC。
【請求項29】
コロイド金属粒子が異なるサイズである、請求項28に記載の多粒子自己組織化人工APC。
【請求項30】
標的分子および統合分子をさらに含む、請求項28に記載の多粒子自己組織化人工APC。
【請求項31】
主要組織適合複合体をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−504216(P2008−504216A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542857(P2006−542857)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040785
【国際公開番号】WO2005/065121
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506186400)サイトイミューン サイエンシズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040785
【国際公開番号】WO2005/065121
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506186400)サイトイミューン サイエンシズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]