説明

モバイル機器の電源回路装置

【課題】バッテリを複数個搭載したモバイル機器において、それぞれのバッテリ放電容量を効率よく使用することのできる電源回路装置を提供する。
【解決手段】ユーザー交換不可能な複数の内蔵バッテリ1、2あるいはユーザー交換可能な複数の交換バッテリ1、2と、前記おのおののバッテリ出力に対して内部寄生ダイオードのアノードを向かい合わせるようにそれぞれ1個ずつバッテリ側および回路側とに配置されたMOSFET16〜19と、これらのMOSFET16〜19のオンオフ制御端子11〜14とを備え、内部寄生ダイオードを用いたバッテリ間の逆流電流を防止するようにMOSFET16〜19を制御することで、バッテリ残容量を効率よく使用できるモバイル機器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話、ビデオカメラ、生活補助機器などのモバイル機器の電源回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモバイル機器にあって、近年、製品に占める表示パネルの大型化、CPUの高速化や高機能化が進み消費電力が増える傾向にある。この対策として、構成ICチップの低電圧駆動や、製品動作モードの細分化とそれに応じた必要最小限回路動作による省エネ駆動や大容量バッテリの採用により、一回の充電で使用できる時間を少しでも長くできるように製品設計が進められている。ここで図6のように例えば2個のバッテリ1,2を搭載することでバッテリ容量を増やす構成が考えられており、例えば、主に携帯型パーソナルコンピュータを例に複数のバッテリの正確な情報を管理しながらバッテリ駆動時に安心できる使用環境を与えることができるバッテリ制御装置および情報処理装置を提供している。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平10−187299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のバッテリ容量の課題について図6を用いて説明する。図6は複数のバッテリとして例えば2個のバッテリ1,2を搭載し、バッテリ切替え回路43と整流ダイオード44,45を介して負荷回路46に電力を供給する構成を示している。前記従来の構成では各バッテリ1,2の電圧差によって、バッテリ1,2間で電流が逆流しないように整流ダイオード44,45を挿入するが、整流ダイオード44,45に順方向電流が流れると、順方向電圧として少なくとも0.6V程度の電圧降下が発生する為、システムとしての動作電圧制限、すなわちアンダーカット電圧がその順方向電圧分だけ高く設定する必要が発生し、結果、バッテリの活用率を高めることができないという課題が発生する。ここで活用率とは、例えば4.2Vまで充電されているバッテリを3.0Vまで活用できるとすれば、4.2−3.0=1.2Vを100%の活用率と定義する。前記従来の構成では、ダイオードが0.6V電圧降下させるので3.0+0.6=3.6Vまでしか活用できず、0.6/1.2×100=50%の活用率となってしまうという課題を有していた。そこで本発明は、活用率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そしてこの目的を達成するために、本発明のモバイル機器の電源回路装置は複数のバッテリそれぞれのバッテリプラス端子出力に対して内部寄生ダイオードのアノードを向かい合わせるようにそれぞれ1個ずつバッテリ側および負荷回路側とに配置されたPchMOSFETと、これらのPchMOSFETのオンオフ制御端子とを備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のモバイル機器の電源回路装置によれば、各バッテリで放電する際には負荷回路に対して選択されたバッテリが一つのみ接続され、且つ放電する際には整流ダイオードが存在しないため順方向電圧が発生せず、それぞれのバッテリを高い活用率で放電することが可能で、結果バッテリ駆動時間を延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明のモバイル機器の電源回路装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0007】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるモバイル機器の電源回路装置において、バッテリを2個搭載した場合のバッテリ部回路図を示す。電源回路装置はマイコン出力ポートから制御端子11〜14を通して入力される信号により制御され、電源出力端子15より電源を供給する。
【0008】
図1において、電力供給源であるバッテリ1の電力供給回路は、バッテリ1のプラス端子側をソース(S)に接続したPchMOSFET3と、PchMOSFET3のドレイン(D)と負荷回路側PchMOSFETのドレイン(D)とを接続するように負荷回路側をソース(S)に接続したPchMOSFET4と、スイッチ回路7の出力端をPchMOSFET3のゲートに接続させることによりPchMOSFET3をオンオフさせるスイッチ回路7と、スイッチ回路8の出力端をPchMOSFET4のゲートに接続させることによりPchMOSFET4をオンオフさせるスイッチ回路8と、スイッチ回路7をマイコンポートから制御入力する制御端子11と、スイッチ回路8をマイコンポートから制御入力する制御端子12と、バッテリ電圧を負荷回路に出力する電源出力端子15と、2つのPchMOSFET3、4の内部寄生ダイオード16、17と、大容量コンデンサ20から構成される。
【0009】
電力供給源であるバッテリ2の電力供給回路は、バッテリ2のプラス端子側をソース(S)に接続したPchMOSFET5と、PchMOSFET5のドレイン(D)と負荷回路側PchMOSFETのドレイン(D)とを接続するように負荷回路側をソース(S)に接続したPchMOSFET6と、スイッチ回路9の出力端をPchMOSFET5のゲートに接続させることによりPchMOSFET5をオンオフさせるスイッチ回路9と、スイッチ回路10の出力端をPchMOSFET6のゲートに接続させることによりPchMOSFET6をオンオフさせるスイッチ回路10と、スイッチ回路9をマイコンポートから制御入力する制御端子13と、スイッチ回路10をマイコンポートから制御入力する制御端子14と、バッテリ電圧を負荷回路に出力する電源出力端子15と、2つのPchMOSFET5、6の内部寄生ダイオード18、19と、大容量コンデンサ20から構成される。
【0010】
ここにおいて、スイッチ回路7〜10は同一の構成となっており、スイッチ回路7を例にとって構成を説明すると、1つのトランジスタ78と3つの抵抗75〜77を、制御端子11がスイッチ回路の入力端とし、入力端が抵抗75を通してトランジスタ78のベースに接続され、さらに78のベースは抵抗76を通じてGNDに接続されている。またトランジスタ78のエミッタはGNDに接続され、コレクタはスイッチ回路の出力端になるとともに抵抗77を通してバッテリ1の+端子に接続されている。
【0011】
スイッチ回路7〜10は、マイコン出力ポートから制御端子11〜14それぞれに加えられた制御電圧によってPchMOSFET3〜6のオンオフを制御するが、制御端子11〜14がそれぞれHiレベルでスイッチ回路7〜10のNPNトランジスタのベース(b)にトランジスタをオンする電圧(ベース(b)に接続された分圧抵抗で生成されたもの)が印加され、エミッタ(e)とコレクタ(c)が導通することでコレクタ(c)電位がLowレベルに下がり、コレクタ(c)に接続されているPchMOSFET3〜6のゲート(G)もLowレベルに下がることでPchMOSFETをそれぞれオンできる。制御端子11〜14がそれぞれLowレベルのときは、スイッチ回路7〜10のNPNトランジスタがオフ状態で、エミッタ(e)とコレクタ(c)が絶縁状態となり、コレクタ(c)につながったプルアップ抵抗によりPchMOSFET3〜6のゲート(G)電圧がHiレベルとなることで、PchMOSFET3〜6をそれぞれオフできる。
【0012】
放電中のバッテリ1が放電終了間際に(すなわち放電中のバッテリ電圧が、電池メーカーが指定している放電電圧の最小値に近くなっている状態のバッテリを放電終了間際のバッテリと定義し、例えば1セルリチウムイオンバッテリの場合、電池端子電圧が約3.0Vに)なったとき、未放電のバッテリ2に放電を切替えるためには、制御端子11〜14をマイコンポートがどのようなシーケンスで制御するか図2を交えて説明する。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態1におけるモバイル機器の電源回路装置において、図1の制御端子11〜14の制御電圧と、電源出力端子15の時間的な電圧状態の変化を示したタイミングチャートである。
【0014】
図2において、放電中のバッテリ1での放電期間21は、制御端子11および12を
Hiレベル、且つ制御端子13および14をLowレベルとし、PchMOSFET3および4をオンとした状態で放電を続ける。十分時間が経過しバッテリ1の放電が進むと、放電終了間際のバッテリ1での放電期間22へと移行することとなり、未放電のバッテリ2での放電に切替える必要が出てくる。ここで本実施形態における最大の特徴は整流ダイオードを用いず内部寄生ダイオード17および19を用いる事でバッテリ切替え時のバッテリ間逆流電流を防ぐ点にあり、その制御方法を説明する。
【0015】
まず内部寄生ダイオード17を利用したバッテリ1での放電期間23では、制御端子
11をHiレベル、且つ制御端子12、13、14をLowレベルとし、PchMOSFET3をオンとした状態でバッテリ1での放電を続ける。但しこの放電期間23においては、内部寄生ダイオード17の順方向電圧が発生するため電源出力端子15の電圧は放電期間23での電源出力端子15の電圧ドロップ30が発生する。この電圧ドロップ30は、制御端子12をLowレベルにした時に発生するが、大容量コンデンサ20などを電源出力端子15の部分に設けることで電圧ドロップを防止したときの電圧31にすることができる。すなわち電圧ドロップ分の電力を大容量コンデンサから補っているわけだが、電圧ドロップ30が発生する時間をできるだけ短くしなければ大容量コンデンサ20で補える電力が限られているため、時間とともに電圧ドロップ30の電圧に向かって下がっていく。したがって制御端子12をLowレベルにした直後に制御端子13をHiレベルにし、電圧ドロップ30を防ぐ必要がある。
【0016】
これで放電を開始したバッテリ2の放電をバッテリ1と並列に行う放電期間24へできるだけ速く移行できるわけだが、ここで放電期間24の状態が本実施形態における最大の特徴である整流ダイオードを用いず内部寄生ダイオード17および19を用いる事でバッテリ切替え時のバッテリ間逆流電流を防いでいる状態となる。この放電期間24におけるバッテリ1の電源回路に対する電力供給面での役割は既に無くなっており、制御端子11をLowレベルにすることでバッテリ1を電源回路から電気的に切り離すことができる。
【0017】
これで放電期間25に移行したこととなるが、バッテリ2の電圧は内部寄生ダイオード19を介しての電源出力端子15への供給となるため、内部寄生ダイオード19の順方向電圧分だけの電圧降下が発生している。例えば、残容量十分なバッテリ2の電圧が4.2V、内部寄生ダイオード19の順方向電圧を0.6Vとすると、4.2−0.6=3.6Vが電源出力端子15への供給電圧ということになる。この状態もまた放電期間24と同じく、内部寄生ダイオードの順方向電圧が無駄となるため、制御端子14をHiレベルにすることで放電期間26に移行することができる。
【0018】
バッテリが2個の場合の一連のバッテリ切り替えシーケンスは以上で終了し、十分時間が経過しバッテリ2の放電が進むと、放電終了間際のバッテリ2での放電期間27へと移行する。放電期間27になると、バッテリ1およびバッテリ2共に残容量が無いため、アンダーカット処理をしてセットを電源オフすることになる。
【0019】
なお内部寄生ダイオード16は、制御端子11をLowレベルにしたときのバッテリ1を負荷回路から完全に切断し、バッテリ1の電圧が負荷回路に出力させないように作用し、内部寄生ダイオード18は、制御端子13をLowレベルにしたときのバッテリ2を負荷回路から完全に切断し、バッテリ2の電圧が負荷回路に出力させないように作用する。
【0020】
以上、放電期間21および放電期間26のように、放電中のバッテリ1あるいは2から電源出力端子の間のPchMOSFET3と4、あるいは5と6をオンにすることによってダイオードの順方向電圧を発生させないことで、バッテリの電圧をロスなく供給することができる。
【0021】
さらに、従来の回路構成図と本発明の実施形態の略図により、違いを説明する。
【0022】
従来の回路構成を図6に示す。バッテリ1とバッテリ2と、バッテリ切替え回路43と、整流ダイオード44、45と、負荷回路46とからなり、バッテリ切替え回路43によってバッテリ1とバッテリ2とが切替る時のバッテリ間の電流の逆流を防止する為に整流ダイオード44、45が入れられるが、バッテリが切替った後もこの整流ダイオード44、45によって電圧降下が0.6V程度発生するため、負荷回路46に加わる電圧がバッテリ1あるいはバッテリ2の電圧から0.6V低い電圧入力となり、バッテリ電圧を効率良く負荷回路に入力できていないことが明らかである。
【0023】
本発明の実施形態1におけるモバイル機器の電源回路装置の概略構成を示す回路図を図3に示す。バッテリ1とバッテリ2と、バッテリ切替え回路53と、整流ダイオード54、55と、MOSFETによるスイッチ動作56、57と、負荷回路46とからなり、バッテリ切替え回路53によってバッテリ1とバッテリ2とが切替る時のバッテリ間の電流の逆流を防止する為に内部寄生ダイオード54、55を利用し、バッテリが切替った後はMOSFETによるスイッチ動作56あるいは57をオンにすることにより、内部寄生ダイオード54、55によって電圧降下0.6V程度を発生させないため、バッテリ1あるいはバッテリ2の電圧がそのまま負荷回路46に加わる電圧となり、バッテリ電圧を効率良く負荷回路46に入力することができる。
【0024】
すなわち、本実施形態では、従来の回路構成の整流ダイオード44、45の代わりとなる内部寄生ダイオード17および19が、バッテリ切替え時のみバッテリ間の電流の逆流防止に作用し、通常放電の場合はMOSFETをオンさせることによって電圧降下を発生させない。これらの構成およびバッテリ切替えシーケンスを繰り返すことで、バッテリが3個以上搭載されていても、バッテリ電圧を効率よく負荷回路に供給しながらバッテリを切替える事が可能となる。このように、バッテリを複数個搭載可能にした設計とすることで得られるメリットとしては、機構的制約・デザイン的制約により大容量単一固体のバッテリを採用できない機器においても、小型小容量バッテリの複数個採用により機器の重量バランスを取りながらバッテリ駆動時間の延長が可能となる。さらに小型モバイル機器において既に市場に出回っている安価な小型汎用バッテリを搭載可能とすることで、新規バッテリを設計するよりも、設計コスト・量産コストの削減、実績バッテリ採用による評価時間短縮などが見込まれ、製品価格の引き下げにも大いに効果が期待できる。
【0025】
また、MOSFETの代わりにスイッチ素子回路と外部整流ダイオードの組み合わせにより同様の効果を得ることができるので、これを実施の形態2で説明する。
【0026】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるモバイル機器の電源回路装置において、バッテリを2個搭載した場合のバッテリ部回路図を示す。
【0027】
図4において、電力供給源であるバッテリ1の電力供給回路は、バッテリ1のプラス端子側をカソードに接続したダイオード65と、ダイオード65のアノードと負荷回路側ダイオードのアノードとを接続するように負荷回路側をカソードに接続したダイオード66と、ダイオード65と並列に接続されたスイッチ61と、ダイオード66と並列に接続されたスイッチ62と、スイッチ61をマイコンポートから制御入力する制御端子71と、スイッチ62をマイコンポートから制御入力する制御端子72と、バッテリ電圧を負荷回路に出力する電源出力端子15と、大容量コンデンサ20から構成される。
【0028】
電力供給源であるバッテリ2の電力供給回路は、バッテリ2のプラス端子側をカソードに接続したダイオード67と、ダイオード67のアノードと負荷回路側ダイオードのアノードとを接続するように負荷回路側をカソードに接続したダイオード68と、ダイオード67と並列に接続されたスイッチ63と、ダイオード68と並列に接続されたスイッチ74と、スイッチ63をマイコンポートから制御入力する制御端子73と、スイッチ64をマイコンポートから制御入力する制御端子74と、バッテリ電圧を負荷回路に出力する電源出力端子15と、大容量コンデンサ20から構成される。
【0029】
放電中のバッテリ1の残量が少なくなったとき、未放電のバッテリ2に放電を切替えるためには、制御端子71〜74をマイコンポートがどのようなシーケンスで制御するか図5を交えて説明する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態2におけるモバイル機器の電源回路装置において、図4の制御端子71〜74の制御電圧と、電源出力端子15の時間的な電圧変化を示したタイミングチャートである。
【0031】
図5において、放電中のバッテリ1での放電期間21は、制御端子71および72をHiレベル、且つ制御端子73および74をLowレベルとし、スイッチ素子回路61および62をオンとした状態で放電を続ける。十分時間が経過しバッテリ1の放電が進むと、放電終了間際のバッテリ1での放電期間22へと移行することとなり、未放電のバッテリ2での放電に切替える必要が出てくる。ここで整流ダイオード66および68を用いる事でバッテリ切替え時のバッテリ間逆流電流を防ぐ点が実施の形態2の特徴であり、その制御方法を説明する。
【0032】
まず整流ダイオード66を利用したバッテリ1での放電期間23では、制御端子71をHiレベル、且つ制御端子72、73、74をLowレベルとし、スイッチ素子回路61をオンとした状態でバッテリ1での放電を続ける。但しこの放電期間23においては、整流ダイオード66の順方向電圧が発生するため電源出力端子15の電圧は放電期間23での電源出力端子15の電圧ドロップ30が発生する。この電圧ドロップ30は、制御端子72をLowレベルにした時に発生するが、大容量コンデンサ20などを電源出力端子15の部分に設けることで電圧ドロップを防止したときの電圧31にすることができる。すなわち電圧ドロップ分の電力を大容量コンデンサ20から補っているわけだが、電圧ドロップ30が発生する時間をできるだけ短くしなければ大容量コンデンサ20で補える電力が限られているため、時間とともに電圧ドロップ30の電圧に向かって下がっていく。したがって制御端子72をLowレベルにした直後に制御端子73をHiレベルにし、電圧ドロップ30を防ぐ必要がある。
【0033】
これでバッテリ2の放電をバッテリ1と並列に行う放電期間24へできるだけ速く移行できるわけだが、ここで放電期間24の状態が実施の形態2における特徴である整流ダイオード66および68を用いる事でバッテリ切替え時のバッテリ間逆流電流を防いでいる状態となる。この放電期間24におけるバッテリ1の電源回路に対する電力供給面での役割は既に無くなっており、制御端子71をLowレベルにすることでバッテリ1を電源回路から電気的に切り離すことができる。
【0034】
これで放電期間25に移行したこととなるが、バッテリ2の電圧は整流ダイオード68を介しての電源出力端子15への供給となるため、整流ダイオード68の順方向電圧分だけの電圧降下が発生している。例えば、残容量十分なバッテリ2の電圧が4.2V、整流ダイオード68の順方向電圧を0.6Vとすると、4.2−0.6=3.6Vが電源出力端子15への供給電圧ということになる。この状態もまた放電期間24と同じく、整流ダイオードの順方向電圧が無駄となるため、制御端子74をHiレベルにすることで放電期間26に移行することができる。
【0035】
バッテリが2個の場合の一連のバッテリ切り替えシーケンスは以上で終了し、十分時間が経過しバッテリ2の放電が進むと、放電終了間際のバッテリ2での放電期間27へと移行する。放電期間27になると、バッテリ1およびバッテリ2共に残容量が無いため、アンダーカット処理をしてセットを電源オフすることになる。
【0036】
なお整流ダイオード65は、制御端子71をLowレベルにしたときのバッテリ1を負荷回路から完全に切断し、バッテリ1の電圧が負荷回路に出力させないように作用し、整流ダイオード67は、制御端子73をLowレベルにしたときのバッテリ2を負荷回路から完全に切断し、バッテリ2の電圧が負荷回路に出力させないように作用する。
【0037】
以上、放電期間21および放電期間26のように、放電中のバッテリ1あるいは2から電源出力端子の間のスイッチ素子回路61と62、あるいは63と64をオンにすることによってダイオードの順方向電圧を発生させないことで、バッテリの電圧をロスなく供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかるモバイル機器の電源回路装置は、各バッテリで放電する際には負荷回路に対してバッテリ一つのみが接続され、且つ放電する際には整流ダイオードが存在しないため順方向電圧が発生せず、バッテリ容量の全てを使用する事ができバッテリ駆動時間を延長することができる。さらに、機構的制約・デザイン的制約等により大容量単一固体のバッテリを採用できない機器においても、バッテリの複数個採用により機器の重量バランスを取りながらバッテリ駆動時間の延長を可能となる。最後に量産コストを低く抑えることのできるバッテリを採用した場合、新規にバッテリを設計する必要がなく、コスト削減にも大いに効果が期待でき、主に重量配分やデザインを重視した特殊なモバイル機器の電源回路装置等の用途として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1におけるモバイル機器の電源回路装置の回路図
【図2】同装置における、制御端子の制御電圧と、電源出力端子の時間的な電圧変化を示すタイミングチャート
【図3】本発明の実施形態1におけるモバイル機器の電源回路装置の概略構成を示す回路図
【図4】本発明の実施の形態2におけるモバイル機器の電源回路装置の回路図
【図5】同実施の形態2の装置における、制御端子の制御電圧と、電源出力端子の時間的な電圧変化を示すタイミングチャート
【図6】従来のモバイル機器の電源回路装置の概略構成を示す回路図
【符号の説明】
【0040】
1,2 バッテリ
3,4,5,6 PchMOSFET
7 PchMOSFET3をオンオフさせるスイッチ回路
8 PchMOSFET4をオンオフさせるスイッチ回路
9 PchMOSFET5をオンオフさせるスイッチ回路
10 PchMOSFET6をオンオフさせるスイッチ回路
11 スイッチ回路7をマイコンポートから制御入力する制御端子
12 スイッチ回路8をマイコンポートから制御入力する制御端子
13 スイッチ回路9をマイコンポートから制御入力する制御端子
14 スイッチ回路10をマイコンポートから制御入力する制御端子
15 バッテリ電圧を電源回路に出力する電源出力端子15
16 PchMOSFET3の内部寄生ダイオード
17 PchMOSFET4の内部寄生ダイオード
18 PchMOSFET5の内部寄生ダイオード
19 PchMOSFET6の内部寄生ダイオード
20 大容量コンデンサ
21 残容量十分なバッテリ1での放電期間
22 残容量残りわずかなバッテリ1での放電期間
23 内部寄生ダイオード17を利用したバッテリ1での放電期間
24 内部寄生ダイオード17および19を利用したバッテリ1およびバッテリ2での放電期間
25 内部寄生ダイオード19を利用したバッテリ2での放電期間
26 残容量十分なバッテリ2での放電期間
27 残容量残りわずかなバッテリ2での放電期間
30 放電期間23での電圧ドロップ電圧
31 電圧ドロップを防止したときの電圧
43 バッテリ切替え回路
44,45 整流ダイオード
46 負荷回路
53 バッテリ切替え回路
54,55 内部寄生ダイオード
56,57 MOSFETによるスイッチ動作
61,62,63,64 スイッチ素子回路
65,66,67,68 整流ダイオード
71 スイッチ61をマイコンポートから制御入力する制御端子
72 スイッチ62をマイコンポートから制御入力する制御端子
73 スイッチ63をマイコンポートから制御入力する制御端子
74 スイッチ64をマイコンポートから制御入力する制御端子
75,76,77 抵抗
78 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリと、前記複数のバッテリそれぞれのバッテリプラス端子出力に対して内部寄生ダイオードのアノードを向かい合わせるようにそれぞれ1個ずつバッテリ側および負荷回路側とに配置されたPchMOSFETと、これらのPchMOSFETのオンオフ制御端子とを備えたモバイル機器の電源回路装置。
【請求項2】
前記複数のバッテリのうち、放電中バッテリから未放電バッテリの一つに放電切換するとき、それぞれのバッテリのPchMOSFETのオンオフ制御端子を制御し、負荷回路に電力の並列供給することを特徴とする請求項1に記載のモバイル機器の電源回路装置。
【請求項3】
放電終了間際の前記放電中バッテリおよび放電を開始した前記未放電バッテリの一つが回路に対して並列に電力供給するとき、内部寄生ダイオードの働きによってバッテリ間の逆流電流を防止することを特徴とする請求項2に記載のモバイル機器の電源回路装置。
【請求項4】
放電終了間際の前記放電中PchMOSFETのオンオフ制御端子を制御することで、放電終了間際の前記放電中バッテリを回路から切り離すことを特徴とする請求項3に記載のモバイル機器の電源回路装置。
【請求項5】
放電を開始した前記未放電バッテリの一つが回路に対して電力供給している状態からPchMOSFETのオンオフ制御端子を制御し、内部寄生ダイオードによる電圧降下を排除するようPchMOSFETのオンオフ制御端子を制御することを特徴とする請求項4に記載のモバイル機器の電源回路装置。
【請求項6】
電源出力端子に対して複数のバッテリを並列接続し、これら各バッテリと前記電源出力端子との間にそれぞれ切替回路を介在させたモバイル機器の電源回路装置であり、前記それぞれの切替回路を、バッテリ側をカソードとした第1の整流ダイオードと、出力端子側をカソードとした第2の整流ダイオードとをアノードを向かい合わせて直列に接続し、さらにそれぞれのダイオードにスイッチが並列に接続する構成とした、モバイル機器の電源回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−183020(P2009−183020A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17767(P2008−17767)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】