説明

モーター及びその磁性オイルシール構造

【課題】 潤滑油を軸承内に効果的に保存し、モーターの信頼度と使用寿命を高めるモーターとその磁性オイルシール構造を提供する。
【解決手段】 回転軸にはめ込まれ、軸承と接合される磁性オイルシール構造であって、前記軸承の二つの端部にそれぞれ設置される複数の磁性素子と、
前記磁性素子、前記回転軸、及び前記軸承との間に存在し、それと前記磁性素子の磁性作用によって、前記磁性流体が前記回転軸に吸着されることを特徴とする磁性オイルシール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルシール構造に関し、特に、磁性オイルシール構造を使用したモーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーターをスムーズに、安定させて高速回転させるために、従来技術では、軸承で回転軸を支えている。図1に示されるように、従来のモーター1は、固定子11、回転軸12、軸承13と、オイルシール14を含む。前記軸承13は、含油軸承であり、前記オイルシール14は、固定リング、或いは金属リングである。前記オイルシール14は、前記軸承13の上方に設置され、前記回転軸12に環設され、潤滑油を前記軸承13内に密封して保存する。前記モーター1が回転される時に、前記軸承13は、潤滑油そのものの粘着性を用いて、前記回転軸12を潤滑させ、スムーズな回転をすることができる。
【0003】
しかし、前記オイルシール14が非接触方式で前記回転軸12に環設されることから、潤滑油を保存する空間を完全に密閉することができない。よって、前記モーター1の長時間の高速回転に伴って、潤滑油が徐々に漏れやすくなり、騒音が発生するだけでなく、前記回転軸12の潤滑が足りない状況で、動かなくなる現象が生じ、前記モーター1の信頼度と使用寿命を下げる。
【0004】
よって、モーター及びその磁性オイルシール構造で、如何にして、潤滑油の漏れを防ぎ、潤滑油を軸承内に効果的に保存し、潤滑油の消耗を軽減し、モーターの信頼度と使用寿命を高めるかが重要な課題の一つとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の課題に鑑み、本発明の目的は、磁性流体と磁性素子との間の磁性作用により形成される磁性オイルシール構造によって、潤滑油を軸承内に効果的に保存し、モーターの信頼度と使用寿命を高めるモーターとその磁性オイルシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、上述の目的を達するために、本発明に基づいた磁性オイルシール構造は、回転軸に接合され、軸承と接続する。磁性オイルシール構造は、複数の磁性素子と磁性流体を含む。前記磁性素子は、前記軸承の二つの端部にそれぞれ設置される。前記磁性流体は、前記磁性素子、前記回転軸、及び前記軸承との間に存在し、前記磁性流体と前記磁性素子の磁性作用によって、前記磁性流体が前記回転軸に吸着されることで、前記磁性オイルシール構造を形成する。
【0007】
上述の目的を達するために、本発明に基づいたモーターは、軸管部、回転子、軸承、固定子、及び磁性オイルシール構造を含む。前記回転子は、回転軸を有し、前記軸承は、前記回転軸をはめ込み、前記軸管部に収容する。固定子は、前記回転子と対応して設置され、前記軸管部にはめ込まれる。前記磁性オイルシール構造は、前記回転軸に接合し、前記軸承と接続される。前記磁性オイルシール構造は、複数の磁性素子と磁性流体を含み、前記磁性素子は、前記軸承の二つの端部にそれぞれ設置され、前記磁性流体は、前記磁性素子、前記回転軸と前記軸承との間に存在し、前記磁性流体と前記磁性素子との磁性作用によって、前記磁性流体が前記回転軸に吸着されることで、前記磁性オイルシール構造を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモーターとその磁性オイルシール構造は、複数の磁性素子によって、軸承の二つの端部にそれぞれ設置され、磁性流体と磁性素子との間に磁気ループのオイルシール構造を形成する。従来技術と比べて、本発明は効果的に潤滑油を軸承内に保存することができ、潤滑油の消耗を軽減し、回転軸を安定して回転させ、モーターが震動と騒音を発生するのを防ぎ、モーターの信頼度と使用寿命を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明についての目的、特徴、長所が一層明確に理解されるよう、以下に実施形態を例示し、図面を参照にしながら、詳細に説明する。
図2に、本発明の好ましい実施例に基づいたモーターとその磁性オイルシール構造の概略図を示す。本発明の好ましい実施例のモーター2は、軸管部24、回転子22、軸承23、固定子21、及び磁性オイルシール構造26を含む。回転子22は、回転軸221と磁鉄222とを有する。固定子21は、回転子22と対応して設置され、具体的に言えば、固定子21は、磁鉄222と対応して設置され、磁鉄222と回転軸221との間に位置され、軸管部24にはめ込まれて設置される。軸承23は、回転軸221にはめ込まれ、軸管部24内に収容される。磁性オイルシール構造26は、複数の磁性素子261、262と、磁性流体263とを含む。本実施例では、磁性素子は二つの磁鉄が回転軸221にはめ込まれたものであり、前記磁鉄素子261、262は磁鉄、磁石、或いは電磁石より組成される。注意すべきことは、磁性素子261、262は、軸承23の二つの端部にそれぞれ接続され、軸方向上に磁極と相反する方式で取り付けられ、磁気ループC1を形成することである。磁性流体263と潤滑油31は、軸管部24と回転軸221との間に混合して存在し、中に鉄、コバルト、ニッケル、或いはその合金などの材料を含み、潤滑油31は、軸承23と回転軸221との間に必要な潤滑を提供する。
【0010】
磁性オイルシール構造26は、潤滑油31の漏れを防ぐのに次の方式を用いている。モーター2が回転していない状態の時、磁性素子261、262が軸承23の二つの端部にそれぞれ接続され、且つ回転軸221が透磁性を有することから、磁性素子261は、回転軸221によって、もう一つの磁性素子262と磁気ループC1を形成することができる。磁気ループC1は、回転軸221の、軸方向に分布し、磁力線を前記磁性素子261、262の中間に集めさせ、回転軸221と磁性オイルシール26との間に比較的大きな吸着力を持たせる。モーター2が回転する時に、磁性流体263は、回転軸221に伴って回転をし、磁性素子261、262の方向に徐々に移動する。この時、磁性流体263にしっかり吸着する磁気ループC1の分布によって、磁性流体263は、潤滑油31が回転軸221に沿って、外に向けて、漏れるのを阻止することができ、潤滑油31は、モーター2に伴って長時間回転しても、軸承23と回転軸221との間に保存される。
【0011】
本発明の磁性オイルシール26とその形成された磁気ループC1は次の三つの作用を提供する。第一に、磁性オイルシール構造26の構造設置によって、潤滑油31が軸承23と回転軸221との間に均等に分布され、潤滑の作用を提供する。第二に、磁性素子261と回転軸221間の磁性作用によって、磁性流体263を吸着し、オイルシール構造を形成し、モーター2に伴って長時間回転しても、潤滑油31を軸承23内に保存することができるため、潤滑油31の消耗を防ぐことができる。第三に、磁気ループC1は、より大きな軸方向の吸引力を発生することができ、モーター2が高速回転のために上下の震動を発生し、余分な震動と騒音を引き起こすことなく、回転軸221を安定して回転させることができる。以上の三つの作用がモーターの信頼度と使用寿命を高めるために、著しい効果を有する。
【0012】
上記をまとめると、本発明のモーターとその磁性オイルシール構造は、複数の磁性素子が、軸承の二つの端部にそれぞれ設置され、磁性流体と磁性素子との間に磁気ループのオイルシール構造を形成する。従来技術と比べて、本発明は、潤滑油を効果的に軸承内に保存し、潤滑油の消耗を軽減し、回転軸を安定して回転させ、モーターが震動と騒音を生じるのを防いで、モーターの信頼度と使用寿命を高めることができる。
【0013】
以上、本発明の好適な実施例を例示したが、これは本発明を限定するものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱しない限りにおいては、当業者であれば行い得る少々の変更や修飾を付加することは可能である。従って、本発明が保護を請求する範囲は、特許請求の範囲を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来モーターの概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施例に基づいたモーターとその磁性オイルシール構造の概略図である。
【符号の説明】
【0015】
1、2 モーター
24 軸管部
11、21 固定子
26 磁性オイルシール
12、221 回転軸
222 磁鉄
13 軸承
261、262 磁性素子
14 オイルシール
263 磁性流体
22 回転子
31 潤滑油
23 軸承
C1 磁気ループ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸にはめ込まれ、軸承と接合される磁性オイルシール構造であって、
前記軸承の二つの端部にそれぞれ設置される複数の磁性素子と、
前記磁性素子、前記回転軸、及び前記軸承との間に存在する磁性流体とを含み、前記磁性素子と前記磁性流体との磁性作用によって、前記磁性流体が前記回転軸に吸着されることを特徴とする磁性オイルシール構造
【請求項2】
前記磁性素子は、軸方向上に、磁極と相反する方式で取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の磁性オイルシール構造。
【請求項3】
前記回転軸は、透磁性を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性オイルシール構造。
【請求項4】
磁気ループは、前記回転軸の軸方向に分布することを特徴とする請求項1に記載の磁性オイルシール構造。
【請求項5】
軸管部と、
回転軸を有する回転子と、
前記回転軸にはめ込まれ、前記軸管部に収容される軸承と、
前記回転子と対応して設置され、前記軸管部にはめ入れられる固定子と、
前記回転軸に接合され、前記軸承と接続され、前記軸承の二つの端部にそれぞれ設置される複数の磁性素子と、
前記磁性素子、前記回転軸、及び前記軸承との間に存在する磁性流体とを含み、前記磁性流体と前記磁性素子の磁性作用によって、前記磁性流体が前記回転軸に吸着されることを特徴とする磁性オイルシール構造を含むモーター。
【請求項6】
前記磁性素子は、軸方向上に、磁極と相反する方式で取り付けられることを特徴とする請求項5に記載のモーター。
【請求項7】
前記回転軸は透磁性を有することを特徴とする請求項5に記載のモーター。
【請求項8】
磁気ループは、前記回転軸の軸方向に分布することを特徴とする請求項5に記載のモーター。
【請求項9】
前記磁性流体は、鉄、コバルト、ニッケル、或いはその合金を含むことを特徴とする請求項5に記載のモーター。
【請求項10】
前記磁性流体と混合され、前記軸管部と前記回転軸との間に存在する潤滑油を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のモーター。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−298282(P2008−298282A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329220(P2007−329220)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(596039187)台達電子工業股▲ふん▼有限公司 (192)
【Fターム(参考)】