説明

モータ制御方法およびモータ制御装置

【課題】円滑で正確な位置決めを行うことができるモータ制御方法およびモータ制御装置を提供する。
【解決手段】 誤差補償後位置検出値と前記位置検出値との差分である誤差補償関数として、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、前記検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求める。また、求められた前記誤差補償関数を適用して、前記誤差補償後位置検出値を前記位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御方法およびモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースプラテン上をスライダが移動する構成のリニアモータにおいて、スライダの位置を位置検出器により読み取り、その検出位置に基づいてスライダを位置指令値に近づけるように制御を行うものが知られている。位置検出器としてはLEDやレーザ等を用いた光学式エンコーダやレゾルバが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−098574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータに対し上記のような位置サーボ制御を行う場合、位置検出器の誤差に起因する周期的な位置偏差が現れることがある。この誤差は位置検出器の検出原理に基づくもので、例えば、スケールピッチ内の内挿検出を行う光学式エンコーダの場合にはスケールピッチを周期とする誤差であり、レゾルバを用いる場合には、プラテンの歯ピッチを周期とする誤差である。
【0005】
制御装置は位置検出器の出力値に従って位置偏差を小さくするような制御を実行するため、位置偏差にそのような誤差が重畳している場合には誤差を含んだ位置偏差を小さくするように制御してしまい、その結果、スライダを滑らかに駆動することができない。そのため、実際の位置偏差は制御装置が観測している位置偏差よりも大きくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、円滑で正確な位置決めを行うことができるモータ制御方法およびモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のモータ制御方法は、位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御方法において、誤差補償後位置検出値と前記位置検出値との差分である誤差補償関数として、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、前記検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求めるステップと、前記関数を求めるステップにより求められた前記誤差補償関数を適用して、前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行するステップと、を備えることを特徴とする。
このモータ制御方法によれば、位置指令値を等速変化させる条件下において位置指令値と誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求め、この関数を適用して誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるようにモータの位置制御を実行するので、円滑で正確な位置決めを行うことができる。
【0008】
前記関数を求めるステップは、前記検出誤差に対応する周期性をもつ既知の誤差補償関数を適用し、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行したときの前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を取得するステップと、前記差分を取得するステップで適用された前記既知の誤差補償関数と、前記差分を取得するステップにおいて当該既知の誤差補償関数を適用して取得された前記差分とに基づいて、前記周期性をもつ関数を求めるステップと、を具備してもよい。
【0009】
前記誤差補償関数はフーリエ級数として表現されてもよい。
【0010】
本発明のモータ制御装置は、位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御装置において、誤差補償後位置検出値と前記位置検出値との差分である誤差補償関数として、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、前記検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求める誤差補償関数取得手段と、前記誤差補償関数取得手段により求められた前記誤差補償関数を適用して、前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
このモータ制御装置によれば、位置指令値を等速変化させる条件下において位置指令値と誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求め、この関数を適用して誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるようにモータの位置制御を実行するので、円滑で正確な位置決めを行うことができる。
【0011】
前記誤差補償関数取得手段は、前記検出誤差に対応する周期性をもつ既知の誤差補償関数を適用し、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行したときの前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を取得するステップと、前記差分を取得するステップで適用された前記既知の誤差補償関数と、前記差分を取得するステップにおいて当該既知の誤差補償関数を適用して取得された前記差分とに基づいて、前記周期性をもつ関数を求めるステップと、を実行してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のモータ制御方法によれば、位置指令値を等速変化させる条件下において位置指令値と誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求め、この関数を適用して誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるようにモータの位置制御を実行するので、円滑で正確な位置決めを行うことができる。
【0013】
本発明のモータ制御装置によれば、位置指令値を等速変化させる条件下において位置指令値と誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求め、この関数を適用して誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるようにモータの位置制御を実行するので、円滑で正確な位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リニアモータの構成を示す図。
【図2】制御装置の構成を機能的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるモータ制御方法の一実施形態について説明する。
【0016】
図1はリニアモータの構成を示す図、図2は制御装置の構成を機能的に示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、リニアモータ1はベースプラテン11と、ベースプラテン11上を直線状に移動するスライダ12と、スライダ12をスライド可能に支持するガイド13aおよびガイド13bと、を備える。
【0018】
図1に示すように、ガイド13aの近傍にはスライダ12のスライド方向に沿って延びるスケール21が配置され、スケール21上にはスライダ12に取り付けられた検出器ヘッド22が位置付けられる。検出器ヘッド22にはセンサ22a(図2)が設けられ、センサ22aはスライダ12の移動に伴ってスケール21上をスライドし、スケール21の位置情報を読み取り、位置検出値として出力する。
【0019】
センサ22aから引き出された信号線3aおよびスライダ12から引き出された動力線3bは、それぞれ制御装置3に接続される。
【0020】
図2に示すように、制御装置3は、位置指令値Xcmdと誤差補償後位置検出値X´との差分である位置偏差を受ける位置・速度制御部31と、位置・速度制御部31からの信号に応じた駆動信号をスライダ12に与える転流・電流制御部32と、後述する誤差解析を実行する誤差解析器33と、誤差解析器33による誤差解析結果を保存するメモリ34と、メモリ34に保存された誤差解析結果に即した誤差補償値を出力する誤差補償値算出器35と、を備える。
【0021】
次に、制御装置3の動作について説明する。
【0022】
まず、誤差の解析、補償を行う上で、誤差の原因となっているスケールピッチのピッチ内位相を知る必要がある。センサ22aが絶対位置を検出できるものであれば、検出位置をスケール21のスケールピッチLで除した剰余を位相とすればよい。なお、位置検出器がインクリメンタル検出を行うものである場合には、原点復帰動作などにより座標系を確立させればよい。その後、同様にその座標系での検出位置をピッチLで除した剰余を位相とすればよい。ピッチ内位相θは、位置検出値(X+ΔX)より、
【0023】
θ=2π{(X+ΔX)/L}
として得られる。
【0024】
ピッチ内位相θをユニークに定めた後、最適な誤差補償関数を以下の手順で求める。
【0025】
まず、位置指令値(Xcmd)を等速で変化させた状態で適当な誤差補償関数を誤差補償値算出器35から出力させ、誤差解析器33により位置偏差(Xcmd−X´)をフーリエ積分する。
【0026】
ここでは、誤差補償関数を定める補償セットベクトルCcn[1] を適当に選びフーリエ積分を行う。ただし、補償係数セットベクトルは、
【0027】
【数1】

【0028】
誤差解析器33では、制御装置3が観測している位置偏差を、下記の式に示すようにフーリエ積分を用いて解析する。0次成分はオフセット誤差なので、解析対象外とする。
【0029】
【数2】

【0030】
次に、位置指令値(Xcmd)を同じ速度で等速変化させつつ、補償セットベクトルCcn[2] を適当に選び、上記の手順を繰り返す。
【0031】
次に、補償係数セットベクトルCcn[1],Ccn[2]、および対応するフーリエ積分結果ベクトルRCcn[1],RCcn[2]を用いて補償係数セットベクトルCcnを求める。この補償係数セットベクトルCcnは、センサ22aの検出誤差を相殺して位置偏差を最小化する誤差補償関数に対応する。
【0032】
【数3】

【0033】
得られた補償係数セットベクトルCcnはメモリ34に記録される。以降、通常の稼動時には、誤差補償値算出器35はメモリ34より補償係数セットベクトルCcnを読み出し、補償係数セットベクトルCcnに対応する誤差補償値(ΔX´)を出力する。これにより、センサ22aの検出誤差が相殺され、滑らかで正確な位置決めを行うことができる。
【0034】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御方法およびモータ制御装置に対し、広く適用することができる。また、本発明は、リニアモータに限定されず、回転型モータに対しても適用される。
【符号の説明】
【0035】
3 制御装置(制御手段)
33 誤差解析器(誤差補償関数取得手段)
35 誤差補償値算出器(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御方法において、
誤差補償後位置検出値と前記位置検出値との差分である誤差補償関数として、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、前記検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求めるステップと、
前記関数を求めるステップにより求められた前記誤差補償関数を適用して、前記誤差補償後位置検出値を前記位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行するステップと、
を備えることを特徴とするモータ制御方法。
【請求項2】
前記関数を求めるステップは、
前記検出誤差に対応する周期性をもつ既知の誤差補償関数を適用し、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行したときの前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を取得するステップと、
前記差分を取得するステップで適用された前記既知の誤差補償関数と、前記差分を取得するステップにおいて当該既知の誤差補償関数を適用して取得された前記差分とに基づいて、前記周期性をもつ関数を求めるステップと、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記誤差補償関数はフーリエ級数として表現されることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
位置周期性の検出誤差を有するモータの位置検出値に基づいて、前記モータの位置を位置指令値に一致させるように制御を行うモータ制御装置において、
誤差補償後位置検出値と前記位置検出値との差分である誤差補償関数として、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を最小化するような、前記検出誤差に対応する周期性をもつ関数を求める誤差補償関数取得手段と、
前記誤差補償関数取得手段により求められた前記誤差補償関数を適用して、前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行する制御手段と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
前記誤差補償関数取得手段は、
前記検出誤差に対応する周期性をもつ既知の誤差補償関数を適用し、前記位置指令値を等速変化させる条件下において前記誤差補償後位置検出値を位置指令値に一致させるように前記モータの位置制御を実行したときの前記位置指令値と前記誤差補償後位置検出値との差分を取得するステップと、
前記差分を取得するステップで適用された前記既知の誤差補償関数と、前記差分を取得するステップにおいて当該既知の誤差補償関数を適用して取得された前記差分とに基づいて、前記周期性をもつ関数を求めるステップと、
を実行することを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−36065(P2011−36065A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181384(P2009−181384)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】