説明

モータ及びモータ用ブレーキ

【課題】構成を簡素化し、低コスト化できるようにする。
【解決手段】モータ100は、回転軸1に設けられた回転子9及びフレーム2に設けられた固定子10を有するモータ電磁部3と、モータ電磁部3の反負荷側に配置され、回転軸1の制動を行うブレーキ部4とを備えている。ブレーキ部4は、励磁コイル19が収容されたフィールドコア12と、フィールドコア12に対し回転軸1の軸方向に移動可能に支持されたアーマチュア13と、フィールドコア12とアーマチュア13との間に介装された制動ばね14と、回転軸1に固定され、制動ばね14のばね力によりアーマチュア13が摩擦係合するブレーキディスク15とを有している。ブレーキディスク15及びアーマチュア13の対応する位置には、ブレーキディスク15側より貫通してフィールドコア12に締結する固定ねじ16用の貫通孔29,25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、モータ及びモータ用ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸を制動するブレーキを備えたモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のモータ用ブレーキ(無励磁作動ブレーキ)は、電磁コイルが収容されたフィールドコアと、このフィールドコアに対し軸方向に移動可能に支持されたアーマチュアと、フィールドコアとアーマチュアとの間に介装された制動ばねと、この制動ばねのばね力によりアーマチュアが摩擦係合するブレーキディスク(フランジ部)を有するブレーキハブとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181089号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ブレーキハブがフィールドコアとアーマチュアの中心を貫通するボス部を有している。このボス部の一方端側にはブレーキディスクが設けられ、他方端側には固定部材が設けられる。この固定部材は、側面がフィールドコアに当接した状態でボス部に固定されることによって、アーマチュアとフィールドコアとの間隔を調整しつつ、アーマチュア、フィールドコア、及びブレーキハブを一体的に組み上げるための部材である。固定部材は、モータ用ブレーキがモータへ取り付けられた後に取り外される。
【0005】
固定部材には、ボス部の他方端側に設けられた取付ねじ穴に螺合される取付ねじの挿入部が軸方向に略垂直な方向に設けられており、複雑な形状を有している。また固定部材は、アーマチュアとフィールドコアとの間の微小な間隔を調整するので、精度が要求される。このように、固定部材は複雑な形状の精密部品であり、一般に高価である。上記従来技術ではこの固定部材を用いる必要があったため、構成が複雑となり、コストが増大するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、構成を簡素化し、低コスト化できるモータ及びモータ用ブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、回転軸に設けられた回転子及びフレームに設けられた固定子を有するモータ電磁部と、前記モータ電磁部の反負荷側に配置され、前記回転軸の制動を行うブレーキ部と、を備え、前記ブレーキ部は、励磁コイルが収容されたフィールドコアと、前記フィールドコアに対し前記回転軸の軸方向に移動可能に支持されたアーマチュアと、前記フィールドコアと前記アーマチュアとの間に介装された制動ばねと、前記回転軸に固定され、前記制動ばねのばね力により前記アーマチュアが摩擦係合するブレーキディスクと、を有し、前記ブレーキディスク及び前記アーマチュアの対応する位置に、前記ブレーキディスク側より貫通して前記フィールドコアに締結する固定ねじ用の第1貫通孔が設けられているモータが適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモータ及びモータ用ブレーキによれば、構成を簡素化し、低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施の形態に係るモータの全体構成を表す縦断面図である。
【図2】一実施の形態に係るモータ用ブレーキの全体構成を表す縦断面図である。
【図3】比較例におけるモータの全体構成を表す縦断面図である。
【図4】比較例におけるモータ用ブレーキの全体構成を表す縦断面図である。
【図5】ブレーキディスクをフィールドコアに対しモータ電磁部と同じ側に配置する変形例におけるモータの全体構成を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るモータ100は、回転軸1と、フレーム2と、モータ電磁部3と、ブレーキ部4と、フレーム2の負荷側(回転軸1の軸方向一方側。図1中右側)端部に設けられた負荷側ブラケット5と、負荷側ブラケット5に外輪が嵌合された負荷側軸受6と、フレーム2の反負荷側(回転軸1の軸方向他方側。図1中左側)端部に設けられた反負荷側ブラケット7と、反負荷側ブラケット7に外輪が嵌合された反負荷側軸受8とを備えている。
【0012】
回転軸1は、負荷側軸受6と反負荷側軸受8とにより回転自在に支持されている。この例では、負荷側軸受6は、反負荷側軸受8よりもサイズが大きく剛性が比較的高く構成されている。
【0013】
モータ電磁部3は、回転軸1と同一軸心となるように当該回転軸1に設けられた回転子9と、回転子9の外周面と径方向に対向するようにフレーム2の内周面に設けられた固定子10とを有している。
【0014】
ブレーキ部4は、回転軸1の制動を行う部分であり、モータ電磁部3の反負荷側、この例では反負荷側ブラケット7の反負荷側に配置されている。また、ブレーキ部4は、反負荷側ブラケット7の反負荷側に設けられたブレーキカバー11によって覆われている。ここで、ブレーキ部4の詳細について説明する前に、モータ100に組み付けられてブレーキ部4とされる前の本実施形態に係るモータ用ブレーキについて説明する。
【0015】
図2に示すように、本実施形態に係るモータ用ブレーキ200は、円筒状のフィールドコア12と、フィールドコア12の円筒軸方向一方側(図2中左側)に対向配置され、適宜の磁性材料(例えば鋼板等)で構成された円板状のアーマチュア13と、圧縮ばねで構成された制動ばね14と、アーマチュア13の円筒軸方向一方側に対向配置された円板状のブレーキディスク15と、アーマチュア13及びブレーキディスク15をフィールドコア12に固定する固定ねじ16と、ピン17とを有している。
【0016】
フィールドコア12は、内側円筒部12Aと、外側円筒部12Bと、底板部12Cとを備えている。内側円筒部12Aと外側円筒部12Bとの間の環状の半径方向空間は、円筒軸方向一方側に開放するコイル用凹部18となっている。このコイル用凹部18には、通電された状態においてアーマチュア13に対し円筒軸方向他方側(図2中右側)への磁気吸引力を与える励磁コイル19が収容されている。なお、内側円筒部12Aと外側円筒部12Bとの円筒軸方向一方側の面(すなわち、フィールドコア12のアーマチュア13に対向する側の面)は、アーマチュア13を磁気的に吸引する磁極面となっている。また、外側円筒部12Bの円筒軸方向一方側の面には、複数のばね用凹部20が円周方向に適宜の等間隔で設けられている。これらのばね用凹部20のそれぞれには、フィールドコア12とアーマチュア13との間に介装されるように上記制動ばね14が収容されている。これらの制動ばね14は、アーマチュア13に対し円筒軸方向一方側へ押圧する付勢力を作用させる。さらに、内側円筒部12Aの円筒軸方向一方側の面には、円周方向に等間隔に配置された上記固定ねじ16用の3つのねじ孔21が設けられると共に、少なくとも2つの上記ピン17が円周方向に等間隔で立設されている。またさらに、底板部12Cの円筒軸方向他方側の面には、フィールドコア12を上記反負荷側ブラケット7に固定して取り付ける取付ねじ22(図1参照)用のねじ孔23が設けられている。
【0017】
アーマチュア13は、上記回転軸1が貫通する貫通孔13aを半径方向中心側に備えると共に、上記ピン17に対向する位置に、当該ピン17が嵌合する貫通孔24(第2貫通孔)を有している。また、アーマチュア13における上記フィールドコア12側の3つのねじ孔21に対向する位置には、上記固定ねじ16用の貫通孔25(第1貫通孔)がそれぞれ設けられている。このアーマチュア13は、フィールドコア12に対し円筒軸方向(言い換えれば、貫通孔13aに挿通される上記回転軸1の軸方向)に移動可能に支持されており、上記制動ばね14のばね力により円筒軸方向一方側に押圧されることにより、後述の摩擦板26を介してブレーキディスク15(詳細には、後述の芯部15A)の円筒軸方向他方側の面に摩擦係合する。また、このアーマチュア13は、上記励磁コイル19が通電されていない状態では、フィールドコア12の磁極面に間隔G(例えば0.1mm〜0.2mm程度のエアギャップ)を介して対向している。
【0018】
ブレーキディスク15は、上記回転軸1が貫通する貫通孔15aを半径方向中心側に備えると共に、円板状の芯部15Aと、芯部15Aより円筒軸方向一方側に突出し、上記回転軸1に固定される突出部15Bとを備えている。芯部15Aの外周側縁部の円筒軸方向他方側の面(すなわち、アーマチュア13に対向する側の面)には、環状の摩擦板26が取り付けられている。そして、この摩擦板26を介して、上記制動ばね14のばね力によりアーマチュア13が芯部15Aの円筒軸方向他方側の面に摩擦係合する。なお、摩擦板26を、ブレーキディスク15の芯部15Aに設ける代わりに、アーマチュア13側に設けてもよい。また、芯部15Aにおける上記アーマチュア13側の3つの貫通孔25に対向する位置には、上記固定ねじ16用の貫通孔29(第1貫通孔)がそれぞれ設けられている。また、突出部15Bの外周面には、ブレーキディスク15を上記回転軸1に固定するディスク固定ねじ27(図1参照)用の貫通したねじ孔28(あるいは、貫通孔でもよい)が設けられている。
【0019】
以上のように、フィールドコア12には、3つのねじ孔21が円周方向に等間隔に配置され、アーマチュア13には、3つの貫通孔25が円周方向に等間隔に配置され、ブレーキディスク15には、3つの貫通孔29が円周方向に等間隔に配置されており、これらねじ孔21、貫通孔25、及び貫通孔29は、フィールドコア12、アーマチュア13、及びブレーキディスク15の対応する位置に設けられている。
【0020】
そして、固定ねじ16がブレーキディスク15側より貫通孔29,25を貫通してねじ孔21に螺合して締結することによって、アーマチュア13及びブレーキディスク15がフィールドコア12に固定されて、フィールドコア12、アーマチュア13、及びブレーキディスク15が一体的に組み上げられている。このとき、アーマチュア13は固定ねじ16が締結することによりフィールドコア12に固定されているので、アーマチュア13とフィールドコア12との間の上記間隔Gは保持される。この間隔Gは、固定ねじ16の頭部16Aとねじ部16B(ねじ孔21への締結部)との間の長さLによって、調整されている。すなわち、長さLが長ければ(長さLが長い固定ねじ16を用いれば)間隔Gは長くなり、長さLが短ければ(長さLが短い固定ねじ16を用いれば)間隔Gは短くなる。
【0021】
以上のように構成されたモータ用ブレーキ200は、モータ100に組み付けられる前は、上記のように固定ねじ16が貫通孔29,25を貫通してねじ孔21に螺合して締結することによって、フィールドコア12、アーマチュア13、及びブレーキディスク15が一体的に組み上げられている。
【0022】
そして、モータ100に組み付けられる際は、上記反負荷側ブラケット7が上記モータ電磁部3の反負荷側に組み付けられる前に、固定ねじ16により一体的に組み上げられた状態で、反負荷側ブラケット7の反負荷側の面にフィールドコア12の底板部12Cが固定される。すなわち、本実施形態においては、反負荷側ブラケット7が、特許請求の範囲に記載のブレーキ取付部材に相当する。具体的には、図1に示すように、上記取付ねじ22が反負荷側ブラケット7の負荷側の面側より当該反負荷側ブラケット7を貫通して当該反負荷側ブラケット7の反負荷側の面側に対向配置されたフィールドコア12の底板部12Cに設けられた上記ねじ孔23に螺合して締結することによって、固定ねじ16により一体的に組み上げられた状態で、反負荷側ブラケット7の反負荷側の面にフィールドコア12の底板部12Cが固定される。
【0023】
その後、反負荷側ブラケット7の負荷側の面側より反負荷側ブラケット7の内部、フィールドコア12の内部、アーマチュア13の上記貫通孔13a、及びブレーキディスク15の上記貫通孔15aに上記回転軸1が挿通されて、反負荷側ブラケット7がフレーム2の反負荷側に取り付けられると共に、上記ディスク固定ねじ27がブレーキディスク15の突出部15Bに設けられた上記ねじ孔28に螺合して回転軸1に締結することによってブレーキディスク15が回転軸1に固定される。これにより、反負荷側ブラケット7、及び、固定ねじ16によりフィールドコア12、アーマチュア13、及びブレーキディスク15が一体的に組み上げられた状態のモータ用ブレーキ200がモータ100に組み付けられる。このようにモータ用ブレーキ200が組み付けられた場合、上記フィールドコア12の円筒軸方向が回転軸1の軸方向と一致し、上記円筒軸方向一方側が反負荷側と一致し、上記円筒軸方向他方側が負荷側と一致する。
【0024】
そして、固定ねじ16が上記ねじ孔21及び貫通孔25,29から取り外されることによって、モータ用ブレーキ200はモータ100の上記ブレーキ部4とされる。すなわち、ブレーキ部4は、モータ100に組み付けられたモータ用ブレーキ200の上記ねじ孔21及び貫通孔25,29から固定ねじ16が取り外されたものである。なお、固定ねじ16が取り外されても、フィールドコア12及びブレーキディスク15が固定されているので、上記間隔Gは保持される。ブレーキ部4においては、アーマチュア13及びブレーキディスク15は、フィールドコア12に対し反負荷側ブラケット7とは反対となる側であるモータ電磁部3とは反対となる側、言い換えればフィールドコア12に対し反負荷側に配置されている。
【0025】
そして、このブレーキ部4は、励磁コイル19が通電されていない状態(無励磁状態)では、アーマチュア13が制動ばね14のばね力により反負荷側へ押圧されることにより、当該アーマチュア13は摩擦板26を介してブレーキディスク15に摩擦係合する。このとき、フィールドコア12の内側円筒部12Aに立設された上記ピン17がアーマチュア13の上記貫通孔24に嵌合することにより、アーマチュア13は回転しないようになっている。この結果、ブレーキディスク15は制動されて、回転軸1の回転が制動される(慣性回転している回転軸1を静止させる、又は、静止している回転軸1に外部から回転しようとする力が加えられたときに、回転軸1を保持することによって回転軸1の静止状態を維持する)。一方、励磁コイル19が通電されている状態(励磁状態)では、励磁コイル19がアーマチュア13に対し負荷側への磁気吸引力を与えることにより、アーマチュア13は制動ばね14のばね力に抗しつつ負荷側へ移動する。この結果、ブレーキディスク15は上記制動から開放されて、回転軸1が回転可能となる。
【0026】
ここで、以上説明した本実施形態の効果を説明する前に、本実施形態の効果を説明するための比較例を説明する。
【0027】
図3に示すように、比較例に係るモータ100′において、本実施形態に係るモータ100と異なる点は、ブレーキ部4に代えてブレーキ部4′を備えている点である。ここで、ブレーキ部4′の詳細について説明する前に、モータ100′に組み付けられてブレーキ部4′とされる前の比較例に係るモータ用ブレーキについて説明する。
【0028】
図4に示すように、比較例に係るモータ用ブレーキ200′は、円筒状のフィールドコア12′と、フィールドコア12′の円筒軸方向他方側(図4中右側)に対向配置された円板状のアーマチュア13′と、制動ばね14′と、ブレーキディスク15′と、固定部材30とを有している。
【0029】
フィールドコア12′は、円筒軸方向他方側に開放するコイル用凹部18′に励磁コイル19′が収容されている。また、フィールドコア12′における外側円筒部12B′の円筒軸方向他方側の面には、複数のばね用凹部20′が円周方向に適宜の等間隔で設けられている。これらのばね用凹部20′のそれぞれには、上記制動ばね14′が収容されている。さらに、フィールドコア12′における外側円筒部12B′の円筒軸方向他方側の面には、装着用ねじ31(図3参照)が貫通する貫通孔32が設けられている。
【0030】
アーマチュア13′の半径方向外周側には、カラー33(図3参照。詳細は後述)が嵌合される切欠き溝34が設けられている。このアーマチュア13′は、上記励磁コイル19′が通電されていない状態では、フィールドコア12′の磁極面に間隔Gを介して対向している。
【0031】
ブレーキディスク15′は、アーマチュア13′及びフィールドコア12′の内部を貫通する円筒状のボス部15Cと、ボス部15Cの円筒軸方向他方側の端部に設けられたフランジ部15Dとを有している。フランジ部15Dにおける外周側縁部の円筒軸方向一方側の面(図4中左側。すなわち、アーマチュア13′に対向する側の面)には、環状の摩擦板26′が取り付けられている。ボス部15Cは、円筒軸方向一方側の端部がフィールドコア12′の円筒軸方向一方側に突出する長さに形成されている。ボス部15Cにおける円筒軸方向一方側の端部の外周面には、ディスク固定ねじ27′(図3参照)用の貫通したねじ孔28′が設けられている。また、ボス部15Cのフランジ部15Dとは反対側となる端部、すなわちボス部15Cの円筒軸方向一方側の端部には、上記固定部材30が設けられている。
【0032】
固定部材30は、円筒軸方向他方側の側面をフィールドコア12′の円筒軸方向一方側の面に当接した状態でボス部15Cに固定されることによって、アーマチュア13′とフィールドコア12′との間隔Gを調整しつつ、フィールドコア12′、アーマチュア13′、及びブレーキディスク15′を一体的に組み上げるための部材である。この固定部材30には、固定ねじ35が螺合された貫通したねじ孔36が円筒軸方向と略垂直な方向(すなわち、半径方向)に設けられると共に、上記ディスク固定ねじ27′の挿入部である切欠き溝37が半径方向に設けられている。このように構成された固定部材30は、円筒軸方向他方側の側面をフィールドコア12′の円筒軸方向一方側の面に当接した状態で、固定ねじ35がねじ孔36に螺合してボス部15Cに締結することによって、ボス部15Cに固定されている。これにより、フィールドコア12′、アーマチュア13′、及びブレーキディスク15′が一体的に組み上げられている。
【0033】
以上のように構成されたモータ用ブレーキ200′は、モータ100′に組み付けられる前は、上記のように固定部材30によって、フィールドコア12′、アーマチュア13′、及びブレーキディスク15′が一体的に組み上げられている。
【0034】
そして、モータ100′に組み付けられる際は、固定部材30により一体的に組み上げられた状態で、上記反負荷側ブラケット7の反負荷側の面に、アーマチュア13′の上記切欠き溝34に設置されたカラー33を介してフィールドコア12′の外側円筒部12B′が固定される。カラー33は、フィールドコア12′と反負荷側ブラケット7との間にアーマチュア13′及びブレーキディスク15′の配置スペースを確保すると共に、アーマチュア13′とフィールドコア12′との間の上記間隔Gを調整するための部材であり、アーマチュア13′の回転防止の役割も果たすものである。具体的には、図3に示すように、ブレーキディスク15′のフランジ部15D側よりボス部15Cの内部に上記回転軸1が挿通されて、上記装着用ねじ31がフィールドコア12′の円筒軸方向一方側より貫通孔32及びカラー33の内部を貫通して反負荷側ブラケット7に締結することによって、固定部材30により一体的に組み上げられた状態で、反負荷側ブラケット7の反負荷側の面にカラー33を介してフィールドコア12′の外側円筒部12B′が固定される。その後、上記ディスク固定ねじ27′がボス部15Cに設けられた上記ねじ孔28′に螺合して回転軸1に締結することによってブレーキディスク15′が回転軸1に固定される。これにより、固定部材30によりフィールドコア12′、アーマチュア13′、及びブレーキディスク15′が一体的に組み上げられた状態のモータ用ブレーキ200′がモータ100′に組み付けられる。このようにモータ用ブレーキ200′が組み付けられた場合、上記フィールドコア12′の円筒軸方向が回転軸1の軸方向と一致し、上記円筒軸方向一方側が反負荷側と一致し、上記円筒軸方向他方側が負荷側と一致する。
【0035】
そして、固定部材30がブレーキディスク15′から取り外されることによって、モータ用ブレーキ200′はモータ100′の上記ブレーキ部4′とされる。すなわち、ブレーキ部4′は、モータ100′に組み付けられたモータ用ブレーキ200′のブレーキディスク15′から固定部材30が取り外されたものである。
【0036】
以上のような比較例では、次のような不具合が生じる場合がある。すなわち、比較例では、固定部材30を用いてブレーキ部4′を一体的に組み上げている。この固定部材30は、上述したように、ブレーキディスク15′のボス部15Cに設けられたねじ孔28′に螺合されるディスク固定ねじ27′の挿通部である切欠き溝37が半径方向に設けられており、複雑な形状を有している。また、固定部材30は、アーマチュア13′とフィールドコア12′との間の微小な間隔Gを調整するので、精度が要求される。このように、固定部材30は複雑な形状の精密部品であり、一般に高価であるため、固定部材30を用いる場合には、構成が複雑となりコストが増大するという課題がある。さらに、固定部材30を用いる場合、半径方向から固定ねじ35を締め付けるため、ブレーキディスク15′が傾くおそれがあり、アーマチュア13′とフィールドコア12′との間隔Gの調整に手間を要することが考えられる。
【0037】
これに対し本実施形態では、ブレーキディスク15及びアーマチュア13の対応する位置に、ブレーキディスク15側より挿入されてフィールドコア12に締結する固定ねじ16用の貫通孔29,25が設けられている。これにより、固定ねじ16を用いてアーマチュア13、フィールドコア12、及びブレーキディスク15を一体的に組み上げることができる。また、固定ねじ16の頭部16Aとねじ部16Bとの間の長さLによって、アーマチュア13とフィールドコア12との間隔Gを調整することが可能である。したがって、上述した固定部材30が不要となるので、構成を簡素化し、低コスト化できる。また、固定ねじ16を円筒軸方向に締め付けることで上記間隔Gを調整することができるので、ブレーキディスク15の傾きを抑制でき、アーマチュア13とフィールドコア12との間隔Gを容易に調整することができる。
【0038】
また、本実施形態では特に、ブレーキディスク15及びアーマチュア13には、円周方向に等間隔に配置された3つの貫通孔29,25が設けられている。これにより、円周方向に等間隔に配置された3箇所で固定ねじ16による締め付けを行うことができるので、ブレーキディスク15及びアーマチュア13の傾きを防止し、アーマチュア13とフィールドコア12との間隔Gを安定して調整できる。
【0039】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。すなわち、上記比較例においては、アーマチュア13′及びブレーキディスク15′(詳細には、ブレーキディスク15′のフランジ部15D)をフィールドコア12′に対し反負荷側ブラケット7と同じ側に配置するため、フィールドコア12′と反負荷側ブラケット7との間にカラー33が設けられている。この場合、カラー33はブレーキディスク15′の半径方向外周側に設置されるため、カラー33の設置スペースによってブレーキディスク15′の大きさが制約を受け、ブレーキディスク15′の大径化が困難となる。
【0040】
これに対し本実施形態においては、アーマチュア13及びブレーキディスク15をフィールドコア12に対し反負荷側ブラケット7とは反対となる側に配置している。この場合、カラー33が不要となるため、ブレーキディスク15(詳細には、ブレーキディスク15の芯部15A)がカラー33の設置スペースによって制約を受けなくなり、ブレーキディスク15を大径化することができる。その結果、ブレーキトルクは制動半径に比例することから、モータ100の体格は同じままでブレーキトルクを増大することができる。またブレーキトルクを増大できる結果、同程度のブレーキトルクを確保しつつ、制動ばね14をばね力の弱いものに変更したり、励磁コイル19の巻数を減らしてフィールドコア12を軸方向に短縮することが可能となり、ブレーキ部4の小型化が可能となる。さらに、カラー33が不要となるため、部品点数の削減によってさらに構成が簡素となり、低コスト化できる効果もある。
【0041】
また、本実施形態では特に、アーマチュア13及びブレーキディスク15がフィールドコア12に対しモータ電磁部3とは反対となる側に配置されている。このような配置とすることにより、フィールドコア12を反負荷側ブラケット7に固定することが可能となる。これにより、本実施形態に係るモータ100のように、フレーム2と、その両端に設けられた負荷側ブラケット5及び反負荷側ブラケット7とを備え、回転軸1が負荷側ブラケット5に設けられた負荷側軸受6と反負荷側ブラケット7に設けられた反負荷側軸受8とで回転自在に支持された、一般的な構成のモータに適用することが可能となり、汎用性を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態では特に、ブレーキ部4がフィールドコア12に立設されたピン17を有している。これにより、ブレーキ部4が作動してアーマチュア12がブレーキディスク15に摩擦係合した際に、ピン17がアーマチュア12の貫通孔24に嵌合してアーマチュア13の回転を防止できる。また、ピン17はアーマチュア13に貫通して設けた貫通孔24と嵌合する構成となっているので、アーマチュア13の軸方向の移動を阻害することはない。したがって、ブレーキ部4を確実に機能させることができ、信頼性を向上できる。
【0043】
なお、実施の形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0044】
(1)ブレーキディスクをフィールドコアに対しモータ電磁部と同じ側に配置する場合
上記実施形態においては、アーマチュア13及びブレーキディスク15をフィールドコア12に対しモータ電磁部3とは反対となる側に配置する構成としたが、これに限られない。すなわち、アーマチュア13及びブレーキディスク15をフィールドコア12に対しモータ電磁部3と同じ側に配置する構成としてもよい。
【0045】
図5に示すように、本変形例に係るモータ100Aにおいては、ブレーキ部4Aは、モータ電磁部3の反負荷側(図1中左側)、この例では、モータ電磁部3の反負荷側、かつ、反負荷側ブラケット7Aの負荷側(図1中右側)に配置されている。このブレーキ部4Aは、モータ100Aに組み付けられた前述のモータ用ブレーキ200(図2参照)のねじ孔21及び貫通孔25,29から前述の固定ねじ16(図2参照)が取り外されたものである。
【0046】
すなわち、本変形例においては、モータ用ブレーキ200がモータ100Aに組み付けられる際は、反負荷側ブラケット7Aがフレーム2Aの反負荷側に組み付けられる前に、固定ねじ16により一体的に組み上げられた状態で、反負荷側ブラケット7Aの負荷側の面にフィールドコア12の底板部12Cが固定される。すなわち、本変形例においては、反負荷側ブラケット7Aが、特許請求の範囲に記載のブレーキ取付部材に相当する。具体的には、図5に示すように、取付ねじ22Aが反負荷側ブラケット7Aの反負荷側の面側より当該反負荷側ブラケット7Aを貫通して当該反負荷側ブラケット7Aの負荷側の面側に対向配置されたフィールドコア12の底板部12Cに設けられた前述のねじ孔23に螺合して締結することによって、固定ねじ16により一体的に組み上げられた状態で、反負荷側ブラケット7Aの負荷側の面にフィールドコア12の底板部12Cが固定される。
【0047】
その後、ブレーキディスク15側よりブレーキディスク15の前述の貫通孔15a、アーマチュア13の前述の貫通孔13a、フィールドコア12の内部、及び反負荷側ブラケット7Aの内部に回転軸1が挿通されて、反負荷側ブラケット7Aがフレーム2Aの反負荷側に取り付けられると共に、前述のディスク固定ねじ27がブレーキディスク15の突出部15Bに設けられた前述のねじ孔28に螺合して回転軸1に締結することによってブレーキディスク15が回転軸1に固定される。これにより、反負荷側ブラケット7A、及び、固定ねじ16によりフィールドコア12、アーマチュア13、及びブレーキディスク15が一体的に組み上げられた状態のモータ用ブレーキ200がモータ100Aに組み付けられる。このようにモータ用ブレーキ200が組み付けられた場合、前述のフィールドコア12の円筒軸方向が回転軸1の軸方向と一致し、前述の円筒軸方向一方側が反負荷側と一致し、前述の円筒軸方向他方側が負荷側と一致する。
【0048】
そして、固定ねじ16が上記ねじ孔21及び貫通孔25,29から取り外されることによって、モータ用ブレーキ200はモータ100Aの上記ブレーキ部4Aとされる。なお、固定ねじ16が取り外されても、フィールドコア12及びブレーキディスク15が固定されているので、上記間隔Gは保持される。ブレーキ部4Aにおいては、アーマチュア13及びブレーキディスク15は、フィールドコア12に対し反負荷側ブラケット7Aとは反対となる側であるモータ電磁部3と同じ側、言い換えればフィールドコア12に対し負荷側に配置されている。
【0049】
そして、このブレーキ部4Aは、前述の無励磁状態では、アーマチュア13が前述の制動ばね14のばね力により負荷側へ押圧されることにより、当該アーマチュア13は前述の摩擦板26を介してブレーキディスク15に摩擦係合する。このとき、フィールドコア12の内側円筒部12Aに立設された前述のピン17がアーマチュア13の前述の貫通孔24に嵌合することにより、アーマチュア13は回転しないようになっている。この結果、ブレーキディスク15は制動されて、回転軸1の回転が制動される。一方、前述の励磁状態では、前述の励磁コイル19がアーマチュア13に対し反負荷側への磁気吸引力を与えることにより、アーマチュア13は制動ばね14のばね力に抗しつつ反負荷側へ移動する。この結果、ブレーキディスク15は上記制動から開放されて、回転軸1が回転可能となる。
【0050】
本変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例においては、アーマチュア13及びブレーキディスク15がフィールドコア12に対しモータ電磁部3と同じ側に配置されている。このような配置とした場合、アーマチュア13が制動ばね14に押圧されることにより負荷側(モータ電磁部3側)へ移動してブレーキディスク15に接触する際の衝撃が、回転軸1に対し負荷側(モータ電磁部3側)に向けて作用する。この方向の衝撃は、前述したように反負荷側軸受8よりもサイズが大きく剛性が比較的高い負荷側軸受6によって支持されることになるため、強度的に余裕のある構造とすることができる。
【0051】
(2)その他
以上では、アーマチュア13及びブレーキディスク15をフィールドコア12に対し反負荷側ブラケット7等とは反対となる側に配置する構成の場合に、ブレーキディスク15及びアーマチュア13の対応する位置に固定ねじ16用の貫通孔29,25を設ける場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、アーマチュア及びブレーキディスクをフィールドコアに対し反負荷側ブラケットと同じ側に配置する構成(例えば上記比較例のような構成)の場合に、ブレーキディスク及びアーマチュアの対応する位置に、ブレーキディスク側より貫通してフィールドコアに締結する固定ねじ用の第1貫通孔を設けてもよい。この場合、フィールドコアと反負荷側ブラケットとの間にアーマチュア及びブレーキディスクの配置スペースを確保するためにカラーが必要ではあるが、固定ねじを用いてアーマチュア、フィールドコア、及びブレーキディスクを一体的に組み上げることができ、固定ねじの頭部とねじ部の(フィールドコアへの締結部)との間の長さによって、アーマチュアとフィールドコアとの間隔を調整することができる。したがって、前述した固定部材30が不要となるので、構成を簡素化し、低コスト化できる。
【0052】
また、以上では、ブレーキディスク15及びアーマチュア13に3つの貫通孔29,25を設ける構成としたが、これに限られず、ブレーキディスク15及びアーマチュア13に4つ以上の貫通孔29,25を設ける構成としてもよい。さらに、以上では、ブレーキディスク15及びアーマチュア13に3つの貫通孔29,25を円周方向に等間隔に設ける構成としたが、3つの貫通孔29,25の間隔は等間隔でなくてもよい(4つ以上の貫通孔29,25を設けた場合も同様)。
【0053】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0054】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 回転軸
2,2A フレーム
3 モータ電磁部
4,4A ブレーキ部
7,7A 反負荷側ブラケット(ブレーキ取付部材)
9 回転子
10 固定子
12 フィールドコア
13 アーマチュア
14 制動ばね
15 ブレーキディスク
16 固定ねじ
17 ピン
19 励磁コイル
24 貫通孔(第2貫通孔)
25 貫通孔(第1貫通孔)
29 貫通孔(第1貫通孔)
100,100A モータ
200 モータ用ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に設けられた回転子及びフレームに設けられた固定子を有するモータ電磁部と、
前記モータ電磁部の反負荷側に配置され、前記回転軸の制動を行うブレーキ部と、を備え、
前記ブレーキ部は、
励磁コイルが収容されたフィールドコアと、
前記フィールドコアに対し前記回転軸の軸方向に移動可能に支持されたアーマチュアと、
前記フィールドコアと前記アーマチュアとの間に介装された制動ばねと、
前記回転軸に固定され、前記制動ばねのばね力により前記アーマチュアが摩擦係合するブレーキディスクと、を有し、
前記ブレーキディスク及び前記アーマチュアの対応する位置に、前記ブレーキディスク側より貫通して前記フィールドコアに締結する固定ねじ用の第1貫通孔が設けられている
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記ブレーキディスク及び前記アーマチュアには、
円周方向に配置された少なくとも3つ以上の前記第1貫通孔が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記フレームの反負荷側に配置され、前記フィールドコアが固定されるブレーキ取付部材をさらに備え、
前記アーマチュア及び前記ブレーキディスクは、
前記フィールドコアに対し前記ブレーキ取付部材とは反対となる側に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記アーマチュア及び前記ブレーキディスクは、
前記フィールドコアに対し前記モータ電磁部とは反対となる側に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記アーマチュア及び前記ブレーキディスクは、
前記フィールドコアに対し前記モータ電磁部と同じ側に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項6】
前記ブレーキ部は、
前記フィールドコアに立設されたピンをさらに有し、
前記アーマチュアは、
前記ピンが嵌合する第2貫通孔を有している
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
回転軸に設けられた回転子及びフレームに設けられた固定子を有するモータ電磁部を備えたモータにおける前記モータ電磁部の反負荷側に配置され、前記回転軸の制動を行うモータ用ブレーキであって、
励磁コイルが収容されたフィールドコアと、
前記フィールドコアに対し前記回転軸の軸方向に移動可能に支持されたアーマチュアと、
前記フィールドコアと前記アーマチュアとの間に介装された制動ばねと、
前記回転軸に固定され、前記制動ばねのばね力により前記アーマチュアが摩擦係合するブレーキディスクと、を有し、
前記ブレーキディスク及び前記アーマチュアの対応する位置に、前記ブレーキディスク側より貫通して前記フィールドコアに締結する固定ねじ用の第1貫通孔が設けられている
ことを特徴とするモータ用ブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−237433(P2012−237433A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108619(P2011−108619)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】