モータ用ブレーキ装置
【課題】 磁性流体を用いたモータ用ブレーキ装置に於いて、内部圧力調整機構を設けることにより、上記の課題を解決することができるモータ用ブレーキ装置を提供すること。
解決すべき課題、必要に応じて技術分野を記載する。
【解決手段】 モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材22で形成した密閉空間3の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体4の体積変動に応じて、前記密閉空間3内の内部圧力を調整可能に構成したことにある。
解決すべき課題、必要に応じて技術分野を記載する。
【解決手段】 モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材22で形成した密閉空間3の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体4の体積変動に応じて、前記密閉空間3内の内部圧力を調整可能に構成したことにある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性流体を用いたモータ用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の磁性流体として磁気粘性流体、いわゆるMR流体(Magneto Rheological Fluid)を用いたモータ用ブレーキとしては、例えば、特開2002−340059号公報(特許文献1)がある。
磁気粘性流体(以下、MR流体と略称する。)は、普通は流動性の液体ですが、磁場を与えると降伏応力をもつ半固体になるという機能性流体である。磁場の強さに応じて降伏応力が変化する。MR流体は強磁性金属微粒子を、媒体となる流体中に高濃度で分散させたスラリーで、外部磁場により磁化された粒子同士が強く引き付けあうことで高粘土になる。
この性質を用いた機器としてダンパ、ショックアブソーバ、ブレーキ、クラッチなどがある。ダンパは大型車両の座席のサスペンション、ショックアブソーバは乗用車の一次サスペンション、ブレーキはフォークリフトなど電気車両の電動ステアなどに量産化されている。
【特許文献1】特開2002−340059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のMR流体を用いたモーター用ブレーキにあっては、ブレーキにMR流体を封入する際、オイルシールで密閉したチャンバー内にMR流体を100%充填していた。モーター及びブレーキ部の温度上昇によりMR流体が熱膨張を起こし、その結果オイルシールリップ部が内部圧力に耐え切れずMR流体及び基油漏れが発生するという課題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、磁性流体を用いたモータ用ブレーキ装置に於いて、内部圧力調整機構を設けることにより、上記の課題を解決することができるモータ用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したことにある。
また、本発明は、前記磁性流体にMR流体を用いたことにある。
さらに、本発明は、前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ダンパーブロックで構成し、該ダンパーブロックを前記磁性流体の体積変動に応じて前記密閉空間の容積を調整するように摺動可能に構成したことにある。
またさらに、本発明は、前記ダンパーブロックに、前記磁性流体の体積変動に応じて前記ダンパーブロックを付勢する弾撥手段を設けたことにある。
また、本発明は、前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ベローズで構成し、前記磁性流体の体積変動に応じてベローズを伸縮可能に構成したことにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1による本発明の効果としては、ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したので、磁性流体の圧力を一定に保つことができ、磁性流体の流出を防ぐことができる。
請求項2による本発明の効果としては、MR流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したので、MR流体の圧力を一定に保つことができ、MR流体の流出を防ぐことができる。
請求項3による本発明の効果としては、発熱によって磁性流体が熱膨張しても、膨張した分ダンパーブロックが軸方向に移動して磁性流体の密閉空間の容積を増加させるので、磁性流体の圧力を一定に保つことができ、磁性流体の流出を防ぐことができる。
請求項4による本発明の効果としては、ダンパーブロックを弾撥手段の付勢力によって、密閉空間の内部圧力を調整することができる。
請求項5による本発明の効果としては、ベローズの伸縮によって、密閉空間内の内部圧力を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はMR流体を用いたモータ用ブレーキ装置を示す断面図である。
【0008】
図1において、1はモータで、このモータ1の一端部には、モータ用ブレーキ装置2が一体に組み付けられている。このモータ1の軸方向の一端部には、モータケース11内に内蔵された回転軸としてのモータシャフト12の一端部12aが延長されてモータケース11の外側に導出されている。モータ1の軸方向の他端部には、図示しないモータシャフト12の他端部がモータケース11の外側に出力軸として導出されている。
【0009】
前記モータシャフト12の一端部12aの先端部12a1には、円板状のブレーキディスク13が遠心方向に延びるように装着されている。
一方、モータ用ブレーキ装置2は、ブレーキケース21の内部に、ヨーク部材22と、励磁用コイル23と、ダンパーブロック24とを内蔵している。
【0010】
前記ヨーク部材22は、ブレーキディスク13の一方端面側に設けられた第1のヨーク部材221と、ブレーキディスク13の他方端面側に設けられた第2のヨーク部材222と、ブレーキディスク13の周縁側に設けられた第3のヨーク部材223とで構成されている。
第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222と、第3のヨーク部材223は、ブレーキディスク13との間に一定の間隙を設けて、ブレーキディスク13の周囲に密閉空間3を形成している。
【0011】
前記第1のヨーク部材221は、モータシャフト12の先端部12a1に同心状の円筒部221aが設けられており、この円筒部221aの内側に、円筒部221aの軸方向に沿って摺動可能な前記ダンパーブロック24が内蔵されている。このダンパーブロック24は、有底円筒状に形成されており、前記円筒部221aの内部を軸方向に摺動することで、前記密閉空間3の容積を可変可能に構成している。前記円筒部221aの内部には、前記密閉空間3の一部を形成するとともに、前記ダンパーブロック24の先端を係止する壁部224が設けられている。該壁部224には、前記ダンパーブロック24の摺動方向に段部224aが設けられており、この段部224aに前記ダンパーブロック24の先端が係止されてモータシャフト12の先端部12a1の端面との間に一定の間隙を保持するように形成されている。前記円筒部221aの内部壁面には、周面に凹部221bが設けられ、前記ダンパーブロック24の外周面とのシールを保つロッドシール専用パッキン25が前記凹部221bに配設されている。
【0012】
前記第2のヨーク部材222は、モータシャフト12の先端部12a1にモータシャフト12と同心状の円筒部222aが設けられており、この円筒部222aの内面側に、オイルシール26が設けられて前記密閉空間3と外部とのシールを保持している。
前記第3のヨーク部材223は、円筒状に形成され、前記第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222との外周面に跨るようにして配設されており、前記第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222の外周面に形成された凹部221c、222c内にそれぞれオイルシール27が設けられて、前記第3のヨーク部材223とのシールを行っている。
【0013】
前記励磁用コイル23は、前記第3のヨーク部材223の外周面とブレーキケース21の内周面との間に配設され、2本のリード線23aを介して図示しない電源に接続されて前記密閉空間3に磁場を形成するものである。
【0014】
前記密閉空間3内には、磁性流体として、MR流体(磁気粘性流体)4が充填されており、このMR流体は、磁場を付与することによって、高粘度に変わり、固体のように変化し、ブレーキディスク13に制動力を付与するものである。
【0015】
前記ヨーク部材22は、第2のヨーク部材222をモータケース11に螺子5を介して固定し、ブレーキケース21を、螺子6を介して第2のヨーク部材222に固定することで、ブレーキケース21内のボス部21aによって、前記第1のヨーク部材221を第2のヨーク部材222に押圧して前記第1のヨーク部材221と第2のヨーク部材222を圧接させている。
【0016】
前記ブレーキケース21の蓋部21bには、孔部21cが設けられ、該孔部21cを介して励磁コイル23の2本のリード線23aが外部に引き出されている。
第1のヨーク部材221には、前記密閉空間3内にMR流体(磁気粘性流体)4を充填するための注入口7が設けられている。
【0017】
次に上記第1の実施の形態の動作を説明する。
励磁コイル23が励磁されると、励磁コイル23から発生した磁束がヨーク部材22を通り、MR流体4、ブレーキディスク13、MR流体4、ヨーク部材22と通って磁路を形成する。その結果、MR流体4の粘度が増加した結果発生する摩擦力によってブレーキディスク13が制動され、ブレーキが作動する。
【0018】
このとき、モータ1やブレーキ装置2は、作動すると発熱し、MR流体4を熱膨張させる。
発熱によってMR流体4が熱膨張して体積が増加しても、膨張した分ダンパーブロック24が軸方向、すなわち図示矢視方向に移動してMR流体4の密閉空間3の容積を増加させるので、MR流体4の圧力を一定に保つことができ、MR流体4の流出を防ぐことができる。
【0019】
そして、モータ1やブレーキ装置2を作動していないときには、MR流体4には磁場が働かないので、MR流体4は流動性を増し、熱膨張して増加していた体積が収縮し、大気圧の作用で、ダンパーブロック24が軸方向に元の位置に戻り、密閉空間3の容積を縮小させる。
【0020】
つぎに、図2は、本発明の第2の実施の形態で、図1と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
【0021】
この場合、ダンパーブロック24の内側に、ダンパーブロック24を軸方向に付勢するばね等の弾撥手段8を設けたものである。この弾撥手段8をダンパーブロック24に当接させている。このためMR流体4の密閉度が増す。また、バネ定数を適宜選択することによってMR流体4の内部圧力を任意の値に保つことができる。
これによって、モータ1やブレーキ装置2の作動を止めた場合には、MR流体4は流動性を増し、熱膨張して増加していた体積が収縮する。このとき、弾撥手段8の作用によって、ダンパーブロック24を元の位置に復帰させ、容易に、密閉空間3の容積を縮小させることができる。
【0022】
また、図3は、本発明の第3の実施の形態で、図1と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
【0023】
この場合、弾撥手段8の代わりにベローズ(蛇腹管)9を設けて、ベローズ9とダンパーブロック24とでMR流体4を密閉するように構成されている。こうして、ダンパーブロック24をベローズ9の復元力で元の位置に復帰させるようにしたものである。
この場合、第1のヨーク部材221の円筒部221aの部分をベローズ9に置き換えたものである。
ダンパーブロック24の外周面にフランジ部24aを設け、このフランジ部24aと、第1のヨーク部材221の内径側との間をベローズ9で連結したものである。
【0024】
そして、ベローズ9が軸方向に伸縮することで、発熱によってMR流体4が熱膨張して体積が増加しても、膨張した分ダンパーブロック24が軸方向、すなわち図示矢視方向に移動してMR流体4の密閉空間3の容積を増加させるので、MR流体4の圧力を一定に保つことができ、MR流体4の流出を防ぐことができる。
本実施の形態では、ベローズ9の伸縮強度の設定に応じてMR流体4の内部圧力を任意の値に保つこともできる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、磁性流体として、MR流体4を用いたが、磁性流体としては、MR流体4に限らず他の磁気粘性流体を用いることもできるなど、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第1の実施の形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第2の実施の形態を示す部分断面図である。
【図3】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第3の実施の形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 モータ
2 モータ用ブレーキ装置
3 密閉空間
4 MR流体(磁気粘性流体)
8 弾撥手段
9 ベローズ
11 モータケース
12 モータシャフト
12a1 モータシャフトの先端部
13 ブレーキディスク
21 ブレーキケース
22 ヨーク部材
221 第1のヨーク部材
222 第2のヨーク部材
223 第3のヨーク部材
23 励磁用コイル
24 ダンパーブロック
25 ロッドシール専用パッキン
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性流体を用いたモータ用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の磁性流体として磁気粘性流体、いわゆるMR流体(Magneto Rheological Fluid)を用いたモータ用ブレーキとしては、例えば、特開2002−340059号公報(特許文献1)がある。
磁気粘性流体(以下、MR流体と略称する。)は、普通は流動性の液体ですが、磁場を与えると降伏応力をもつ半固体になるという機能性流体である。磁場の強さに応じて降伏応力が変化する。MR流体は強磁性金属微粒子を、媒体となる流体中に高濃度で分散させたスラリーで、外部磁場により磁化された粒子同士が強く引き付けあうことで高粘土になる。
この性質を用いた機器としてダンパ、ショックアブソーバ、ブレーキ、クラッチなどがある。ダンパは大型車両の座席のサスペンション、ショックアブソーバは乗用車の一次サスペンション、ブレーキはフォークリフトなど電気車両の電動ステアなどに量産化されている。
【特許文献1】特開2002−340059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のMR流体を用いたモーター用ブレーキにあっては、ブレーキにMR流体を封入する際、オイルシールで密閉したチャンバー内にMR流体を100%充填していた。モーター及びブレーキ部の温度上昇によりMR流体が熱膨張を起こし、その結果オイルシールリップ部が内部圧力に耐え切れずMR流体及び基油漏れが発生するという課題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、磁性流体を用いたモータ用ブレーキ装置に於いて、内部圧力調整機構を設けることにより、上記の課題を解決することができるモータ用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したことにある。
また、本発明は、前記磁性流体にMR流体を用いたことにある。
さらに、本発明は、前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ダンパーブロックで構成し、該ダンパーブロックを前記磁性流体の体積変動に応じて前記密閉空間の容積を調整するように摺動可能に構成したことにある。
またさらに、本発明は、前記ダンパーブロックに、前記磁性流体の体積変動に応じて前記ダンパーブロックを付勢する弾撥手段を設けたことにある。
また、本発明は、前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ベローズで構成し、前記磁性流体の体積変動に応じてベローズを伸縮可能に構成したことにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1による本発明の効果としては、ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したので、磁性流体の圧力を一定に保つことができ、磁性流体の流出を防ぐことができる。
請求項2による本発明の効果としては、MR流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したので、MR流体の圧力を一定に保つことができ、MR流体の流出を防ぐことができる。
請求項3による本発明の効果としては、発熱によって磁性流体が熱膨張しても、膨張した分ダンパーブロックが軸方向に移動して磁性流体の密閉空間の容積を増加させるので、磁性流体の圧力を一定に保つことができ、磁性流体の流出を防ぐことができる。
請求項4による本発明の効果としては、ダンパーブロックを弾撥手段の付勢力によって、密閉空間の内部圧力を調整することができる。
請求項5による本発明の効果としては、ベローズの伸縮によって、密閉空間内の内部圧力を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1はMR流体を用いたモータ用ブレーキ装置を示す断面図である。
【0008】
図1において、1はモータで、このモータ1の一端部には、モータ用ブレーキ装置2が一体に組み付けられている。このモータ1の軸方向の一端部には、モータケース11内に内蔵された回転軸としてのモータシャフト12の一端部12aが延長されてモータケース11の外側に導出されている。モータ1の軸方向の他端部には、図示しないモータシャフト12の他端部がモータケース11の外側に出力軸として導出されている。
【0009】
前記モータシャフト12の一端部12aの先端部12a1には、円板状のブレーキディスク13が遠心方向に延びるように装着されている。
一方、モータ用ブレーキ装置2は、ブレーキケース21の内部に、ヨーク部材22と、励磁用コイル23と、ダンパーブロック24とを内蔵している。
【0010】
前記ヨーク部材22は、ブレーキディスク13の一方端面側に設けられた第1のヨーク部材221と、ブレーキディスク13の他方端面側に設けられた第2のヨーク部材222と、ブレーキディスク13の周縁側に設けられた第3のヨーク部材223とで構成されている。
第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222と、第3のヨーク部材223は、ブレーキディスク13との間に一定の間隙を設けて、ブレーキディスク13の周囲に密閉空間3を形成している。
【0011】
前記第1のヨーク部材221は、モータシャフト12の先端部12a1に同心状の円筒部221aが設けられており、この円筒部221aの内側に、円筒部221aの軸方向に沿って摺動可能な前記ダンパーブロック24が内蔵されている。このダンパーブロック24は、有底円筒状に形成されており、前記円筒部221aの内部を軸方向に摺動することで、前記密閉空間3の容積を可変可能に構成している。前記円筒部221aの内部には、前記密閉空間3の一部を形成するとともに、前記ダンパーブロック24の先端を係止する壁部224が設けられている。該壁部224には、前記ダンパーブロック24の摺動方向に段部224aが設けられており、この段部224aに前記ダンパーブロック24の先端が係止されてモータシャフト12の先端部12a1の端面との間に一定の間隙を保持するように形成されている。前記円筒部221aの内部壁面には、周面に凹部221bが設けられ、前記ダンパーブロック24の外周面とのシールを保つロッドシール専用パッキン25が前記凹部221bに配設されている。
【0012】
前記第2のヨーク部材222は、モータシャフト12の先端部12a1にモータシャフト12と同心状の円筒部222aが設けられており、この円筒部222aの内面側に、オイルシール26が設けられて前記密閉空間3と外部とのシールを保持している。
前記第3のヨーク部材223は、円筒状に形成され、前記第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222との外周面に跨るようにして配設されており、前記第1のヨーク部材221と、第2のヨーク部材222の外周面に形成された凹部221c、222c内にそれぞれオイルシール27が設けられて、前記第3のヨーク部材223とのシールを行っている。
【0013】
前記励磁用コイル23は、前記第3のヨーク部材223の外周面とブレーキケース21の内周面との間に配設され、2本のリード線23aを介して図示しない電源に接続されて前記密閉空間3に磁場を形成するものである。
【0014】
前記密閉空間3内には、磁性流体として、MR流体(磁気粘性流体)4が充填されており、このMR流体は、磁場を付与することによって、高粘度に変わり、固体のように変化し、ブレーキディスク13に制動力を付与するものである。
【0015】
前記ヨーク部材22は、第2のヨーク部材222をモータケース11に螺子5を介して固定し、ブレーキケース21を、螺子6を介して第2のヨーク部材222に固定することで、ブレーキケース21内のボス部21aによって、前記第1のヨーク部材221を第2のヨーク部材222に押圧して前記第1のヨーク部材221と第2のヨーク部材222を圧接させている。
【0016】
前記ブレーキケース21の蓋部21bには、孔部21cが設けられ、該孔部21cを介して励磁コイル23の2本のリード線23aが外部に引き出されている。
第1のヨーク部材221には、前記密閉空間3内にMR流体(磁気粘性流体)4を充填するための注入口7が設けられている。
【0017】
次に上記第1の実施の形態の動作を説明する。
励磁コイル23が励磁されると、励磁コイル23から発生した磁束がヨーク部材22を通り、MR流体4、ブレーキディスク13、MR流体4、ヨーク部材22と通って磁路を形成する。その結果、MR流体4の粘度が増加した結果発生する摩擦力によってブレーキディスク13が制動され、ブレーキが作動する。
【0018】
このとき、モータ1やブレーキ装置2は、作動すると発熱し、MR流体4を熱膨張させる。
発熱によってMR流体4が熱膨張して体積が増加しても、膨張した分ダンパーブロック24が軸方向、すなわち図示矢視方向に移動してMR流体4の密閉空間3の容積を増加させるので、MR流体4の圧力を一定に保つことができ、MR流体4の流出を防ぐことができる。
【0019】
そして、モータ1やブレーキ装置2を作動していないときには、MR流体4には磁場が働かないので、MR流体4は流動性を増し、熱膨張して増加していた体積が収縮し、大気圧の作用で、ダンパーブロック24が軸方向に元の位置に戻り、密閉空間3の容積を縮小させる。
【0020】
つぎに、図2は、本発明の第2の実施の形態で、図1と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
【0021】
この場合、ダンパーブロック24の内側に、ダンパーブロック24を軸方向に付勢するばね等の弾撥手段8を設けたものである。この弾撥手段8をダンパーブロック24に当接させている。このためMR流体4の密閉度が増す。また、バネ定数を適宜選択することによってMR流体4の内部圧力を任意の値に保つことができる。
これによって、モータ1やブレーキ装置2の作動を止めた場合には、MR流体4は流動性を増し、熱膨張して増加していた体積が収縮する。このとき、弾撥手段8の作用によって、ダンパーブロック24を元の位置に復帰させ、容易に、密閉空間3の容積を縮小させることができる。
【0022】
また、図3は、本発明の第3の実施の形態で、図1と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
【0023】
この場合、弾撥手段8の代わりにベローズ(蛇腹管)9を設けて、ベローズ9とダンパーブロック24とでMR流体4を密閉するように構成されている。こうして、ダンパーブロック24をベローズ9の復元力で元の位置に復帰させるようにしたものである。
この場合、第1のヨーク部材221の円筒部221aの部分をベローズ9に置き換えたものである。
ダンパーブロック24の外周面にフランジ部24aを設け、このフランジ部24aと、第1のヨーク部材221の内径側との間をベローズ9で連結したものである。
【0024】
そして、ベローズ9が軸方向に伸縮することで、発熱によってMR流体4が熱膨張して体積が増加しても、膨張した分ダンパーブロック24が軸方向、すなわち図示矢視方向に移動してMR流体4の密閉空間3の容積を増加させるので、MR流体4の圧力を一定に保つことができ、MR流体4の流出を防ぐことができる。
本実施の形態では、ベローズ9の伸縮強度の設定に応じてMR流体4の内部圧力を任意の値に保つこともできる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、磁性流体として、MR流体4を用いたが、磁性流体としては、MR流体4に限らず他の磁気粘性流体を用いることもできるなど、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第1の実施の形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第2の実施の形態を示す部分断面図である。
【図3】本発明によるモータ用ブレーキ装置の第3の実施の形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 モータ
2 モータ用ブレーキ装置
3 密閉空間
4 MR流体(磁気粘性流体)
8 弾撥手段
9 ベローズ
11 モータケース
12 モータシャフト
12a1 モータシャフトの先端部
13 ブレーキディスク
21 ブレーキケース
22 ヨーク部材
221 第1のヨーク部材
222 第2のヨーク部材
223 第3のヨーク部材
23 励磁用コイル
24 ダンパーブロック
25 ロッドシール専用パッキン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したことを特徴とするモータ用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記磁性流体にMR流体を用いたことを特徴とする請求項1に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ダンパーブロックで構成し、該ダンパーブロックを前記磁性流体の体積変動に応じて前記密閉空間の容積を調整するように摺動可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ダンパーブロックに、前記磁性流体の体積変動に応じて前記ダンパーブロックを付勢する弾撥手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ベローズで構成し、前記磁性流体の体積変動に応じてベローズを伸縮可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項1】
モータのモータシャフトにブレーキディスクを装着し、ヨーク部材で形成した密閉空間内に前記ブレーキディスクを配置し、前記密閉空間内に磁性流体を充填し、該磁性流体に磁場を与えることによって前記磁性流体を磁化して前記ブレーキディスクに制動力を付与するモータ用ブレーキ装置において、前記ヨーク部材で形成した密閉空間の容積を可変可能に構成し、前記磁性流体の体積変動に応じて、前記密閉空間内の内部圧力を調整可能に構成したことを特徴とするモータ用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記磁性流体にMR流体を用いたことを特徴とする請求項1に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ダンパーブロックで構成し、該ダンパーブロックを前記磁性流体の体積変動に応じて前記密閉空間の容積を調整するように摺動可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ダンパーブロックに、前記磁性流体の体積変動に応じて前記ダンパーブロックを付勢する弾撥手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のモータ用ブレーキ装置。
【請求項5】
前記密閉空間を形成した前記ヨーク部材の壁面の一部を、ベローズで構成し、前記磁性流体の体積変動に応じてベローズを伸縮可能に構成したことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ用ブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−281098(P2008−281098A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125414(P2007−125414)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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