説明

モータ駆動装置

【課題】本発明は、コネクタの小型化を図り、実装面積を小さくすることにより、装置自体の小型化を図ることができるサーボモータ制御装置を提供する。
【解決手段】相嵌合する一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線11と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置において、配線基板に装着されている一方の基板側コネクタと、複数の端子収容室を有するハウジングと、端子収容室に収容されモータ接続用電線11に接続する端子と、モータ接続用電線11と端子との接続に使用する接続用部材を複数有し、基板側コネクタに接続する他方の電線側コネクタ13と、を備え、電線側コネクタ13の端子収容室が上下方向で2段に配設され、接続用部材が上下方向に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置に対して、海外安全規格であるUL(Under Writers Laboratories Inc)のリスティング認証を得るためには、モータ駆動装置の動力線接続に使用されるコネクタにはフィールドワイヤリングが求められている。フィールドワイヤリングは、特別な工具を用いないでケーブルを装置に接続できることが条件となっている。しかし、通常のコネクタ接続では、個々のコネクタに収容されているコンタクトの少なくとも一方に専用工具を用いてケーブルを圧着した後にコネクタ接続が行われ、両コネクタに収容されている雄・雌端子が電気的に相互接続する。このため、”専用工具”を用いるコネクタは、フィールドワイヤリングの条件を満たさないものとなっている。
【0003】
フィールドワイヤリングに対応したコネクタの一例として、心線の外側に配置された絶縁性を有する被覆部が皮剥ぎされた電線51の先端をコネクタ50の電線挿入口に挿入し、ドライバー等の一般的な工具(専用工具ではなく、容易に入手できる工具)を用い、ネジまたはバネの力により端子に電線51を抑えつけて接続する方式のものが図8に示されている。
【0004】
また、同じくフィールドワイヤリングに対応したコネクタの他の一例として、特許文献1で開示されているものが知られている。特許文献1の段落番号[0020]〜[0022]には、「電気導体9は上側からコネクタへ差込まれる。コネクタの接続空間7内には、接触ピン3及び電気導体9が横に並んで設けられ、その軸線方向長さが重なっている。突出部5により、接触ピン3が電気導体9に直接接触しているので、接触ピンと電気導体との間に直接の通電が行われる。電気導体9は、図1のハウジングが示すように、板ばね11のばね力(締付け力)により、左方の接触ピン3へ向かって移動可能である。移動は、構造的に許される移動範囲10内で行われる。それにより、電気導体9がそのつど使用される接触ピンに常に確実に当接するのが保証される。コネクタに組込まれる板ばねは、1片のばね鋼板からU字状に製造され、板ばねは締付け脚11と板ばね止め脚12とを持っている。板ばねは、その頭部弧13及び止め脚12により、絶縁物ハウジング内に位置を固定されて保持されている」と記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−294467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8で示されているコネクタ50や、特許文献1で開示されているコネクタのように、ピン配列(端子配列)が一段(一列)で横方向に並んでいるコネクタ50を介して、電線をモータ駆動装置に接続する場合、コネクタ50のピン配列が一段で横一列であるために、ピン数が増えるに従いコネクタ50を装着する基板の取り付け面積が大きくなるという問題があり、装置を小型化する上で好ましくなかった。また、図9に示すように、コネクタ50が横一列に配置される場合には、隣接するコネクタ50が干渉する心配もあった。
【0007】
また、電線をコンタクトに接触させるために、ドライバーなどを挿入するための作業部(操作部)53がハウジング52の上面にある場合は、互いに嵌合するコネクタ50同士の係止を行うラッチ54をハウジング52の側面に設ける必要があり、横一列に配置されるコネクタ50の実装スペースを更に大きくするという問題があった。
【0008】
本発明は、コネクタの小型化を図り、実装面積を小さくすることにより、装置自体の小型化を図ることができるサーボモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置において、前記配線基板に装着されている一方の基板側コネクタと、複数の端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室に収容され前記モータ接続用電線に接続する端子と、前記モータ接続用電線と前記端子との接続に使用する接続用部材を複数有し、前記基板側コネクタに接続する他方の電線側コネクタと、を備え、該電線側コネクタの前記端子収容室が上下方向で2段に配設され、前記接続用部材が前記上下方向に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、複数のモータを駆動するモータ駆動装置であって、個々の前記モータに対して隣接して配置される一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置において、前記配線基板に装着されている一方の基板側コネクタと、複数の端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室に収容され前記モータ接続用電線に接続する端子と、前記モータ接続用電線と前記端子との接続に使用する接続用部材を複数有し、前記基板側コネクタに接続する他方の電線側コネクタと、を備え、該電線側コネクタの前記端子収容室が上下方向で2段に配設され、前記接続用部材が前記上下方向に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のモータ駆動装置において、前記接続用部材がねじ又はばねであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のモータ駆動装置において、前記基板側コネクタと前記電線側コネクタとを相互に係止するラッチ機構を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のモータ駆動装置において、前記基板側コネクタの前記上下方向の壁部に係止部が設けられ、前記電線側コネクタの前記上下方向の壁部に前記係止部に係合する被係止部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明によれば、電線側コネクタの端子収容室が上下方向で2段に配設され、各一対の接続用部材が上下方向で互いに対向するように配置されているから、電線側コネクタ及び基板側コネクタの幅方向の寸法を小さくすることができる。このため、コネクタが小型化され、実装面積が小さくなり、装置自体の小型化を図ることができる。
【0015】
また、ねじの締付力又はばねの弾性力を利用して電線と端子との接続を行うことができるから、コネクタ接続の作業性を高めることができると共に、メンテナンス性を高めることができる。
【0016】
また、基板側コネクタと電線側コネクタとを相互に係止するラッチ機構を備えているから、接続している一対のコネクタが不用意に外れることが防止され、電気的接続の信頼性が向上する。
【0017】
また、基板側コネクタの上下方向の壁部に係止部が設けられ、電線側コネクタの上下方向の壁部に係止部に係合する被係止部が設けられているから、コネクタの幅方向の寸法をより狭めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。本発明に係るモータ駆動装置は、コントローラ(図示しない)と、多関節型の産業用ロボットや多軸の工作機械などのサーボモータとの間に配置され、コントローラの指令を受けて複数のサーボモータを制御する接続装置である。
【0019】
図1には、本発明に係るモータ駆動装置の一実施形態の回路図が示されている。図示するとおり、モータ駆動装置1は、リアクトル8を経由して3相交流電源2から供給された交流を直流に変換する1つのコンバータ回路(コンバータ部)3と、このコンバータ回路3の出力端子O1及びO2に並列接続し、直流を所望の周波数の交流に変換する複数のインバータ回路4、4’、…、4”と、を備えている。複数のインバータ回路4、4’、…、4”からインバータ部7が構成されている。
【0020】
インバータ回路4、4’、…、4”の一方の入力端子I1、I1’、…I1”は、コンバータ回路3の出力端子O1に各々接続され、他方の入力端子I2、I2’、…I2”は、コンバータ回路3の出力端子O2に各々接続している。これにより、コンバータ回路3により各々直流電力を供給される各インバータ回路4、4’、…、4”は、(例えば、PWM制御回路などである)インバータ制御部6により制御され、この直流電力を所望の周波数及び電圧の3相交流電力にそれぞれ変換し、各サーボモータ5、5’、…、5”にそれぞれ供給している。各サーボモータ5、5’、…、5”の駆動軸(図示せず)は、これらサーボモータ5、5’、…、5”の駆動対象である可動機構(図示せず)に接続されて、ロボットのアームを動かしたり、工作機械のテーブルを動かしたりする。
【0021】
図2には、モータ駆動装置1のインバータ部7の概略構成図が示されている。インバータ部7は、本体9と、この本体9の側面に設けられた放熱器10と、を備えている。インバータ部7の前壁20には、複数本のモータ接続用電線11と配線基板(図示せず)の導体部とを電気的に接続する各一対のコネクタ12,13が3組並んで配置されている。各一対のコネクタ12,13は、配線基板に直付けされている基板側コネクタ12と、モータ接続用電線11に接続している電線側コネクタ13とから構成されている。基板側コネクタ12は、インバータ部7の筐体内に設けられており、ピン状の端子(図示せず)が配線基板の導体部と電気的に接続している。
【0022】
図3には、電線側コネクタ13の斜視図が示されている。電線側コネクタ13は、複数の端子収容室15を有するハウジング14と、端子収容室15に収容されて個々のモータ接続用電線11に接続する端子26(図6,7参照)と、モータ接続用電線11と端子26との接続に使用する接続用部材17,18を有している。接続用部材には、図6及び図7で示すねじ17やばね18が使用されている。
【0023】
ハウジング14は、絶縁性を有する樹脂材料から射出成形されたものであり、端子収容室15に連通する電線挿入口16を有する前壁20と、上・下壁21,22及び左・右壁23,24からなる周壁と、基板側コネクタ12に対向する後壁25と、を含んでいる。電線挿入口16が4つ設けられ、上下2段に配設されている点が、従来例のコネクタ50と相違している点である。上壁21及び下壁22には、接続用部材17,18を操作するための操作部27が各端子収容室15に対応して設けられている。図5に示すように、操作部27に孔設された孔28に、ドライバーなどの操作用工具29を挿入することにより、接続用部材17,18が操作され、モータ接続用電線11と端子26とが接続するようになっている。
【0024】
また、ハウジング14の後壁25には、基板側コネクタ12の開口部19に嵌入する雄型のコネクタ嵌合部31(図4参照)が設けられている。コネクタ嵌合部31の上面32及び下面33には、基板側コネクタ12の開口部19の内面に設けられた孔(被係止部)35に係合する一対の係止爪(係止部)36がそれぞれ突設されている(図3,4参照)。孔35と係止爪36とから、相互に嵌合する一対のコネクタ12,13のラッチ機構が構成され、一対のコネクタ12,13が不用意に外れることが防止されている。
【0025】
図4(a)〜(c)には、相嵌合する一対のコネクタ12,13がラッチ機構により係止される状態が示されている。先ず、図4(a)に示すように、基板側コネクタ12の雌型の開口部19に対して、電線側コネクタ13の雄型のコネクタ嵌合部31を対向した状態に配置する。続いて、図4(b)に示すように、雌型の開口部19の開口端から雄型のコネクタ嵌合部31を浅く挿入する。雌型の開口部19の奥側へ雄型のコネクタ嵌合部31を深く挿入して、一対のコネクタ12,13を嵌合する。図4(c)には、一対のコネクタ12,13の嵌合した状態が示されている。一対のコネクタ12,13が嵌合すると、開口部19の内面に設けられた孔35に一対の係止爪36が係合し、一対のコネクタ12,13が外れないように係止される。
【0026】
端子26は、導電性を有する基板を、プレスにて所定の形状に打ち抜き、必要に応じて折り曲げ形成されたものであり、接続用工具29により操作される接続用部材17,18の締結力又は弾性力により電線11の心線部11aに接続するようになっている。
【0027】
図6及び図7には、接続用部材としてのねじ17及びばね18が操作用工具29を用いて操作される様子が示されている。図6には、接続用部材としてのねじ17が操作用工具29で操作される様子が示され、図7には、接続用部材としてのばね18が操作用工具29で操作される様子が示されている。図6(a)では、ねじ17が緩んでいる状態で心線11aがハウジング14の電線挿入口16から端子収容室15に挿入された状態の断面図が示されている。端子収容室15で待ち受けている端子26は、ねじ17と一体的に動くようになっている。図6(b)では、操作用工具29でねじ17が締められて心線11aと端子26とが接触している状態を示している。ねじ17が締められると心線11aが端子26で潰された状態となり、所定の接触圧力で端子26と心線11aとが接触する。
【0028】
図7(a)では、ばね18が圧縮された状態で心線11aがハウジング14の電線挿入口16から端子収容室15に挿入された状態の断面図が示されている。図7(b)では、圧縮されていたばね18の弾性復元力により端子26が押し戻され、心線11aと端子26とが接触している状態を示している。ばね18の弾性復元力により端子26が押し戻されると、心線11aが端子26で潰された状態となり、所定の接触圧力で端子26と心線11aとが接触する。
【0029】
以上のように本発明によれば、電線側コネクタ13の端子収容室15が上下方向で2段に配設されているから、電線側コネクタ13及び基板側コネクタ12の幅方向の寸法を小さくすることができ、これにより、コネクタ13を小型化することができる。このため、コネクタ13の実装面積が小さくなり、装置自体の小型化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1には、本発明に係るモータ駆動装置の一実施形態の回路図である。
【図2】モータ駆動装置のインバータ部の概略構成図である。
【図3】電線側コネクタの斜視図である。
【図4】相嵌合する一対のコネクタがラッチ機構により係止される状態を説明する説明図である。
【図5】接続用部材を操作して、モータ接続用電線と端子とを接続する様子を説明する説明図である。
【図6】接続用部材としてのねじを操作用工具で操作する様子を説明する説明図である。
【図7】接続用部材としてのばねを操作用工具で操作する様子を説明する説明図である。
【図8】従来のコネクタの一例を示す斜視図である。
【図9】図8のコネクタが並んでいる状態の図である。
【符号の説明】
【0032】
1 モータ駆動装置
4 インバータ回路
5 モータ
7 インバータ部
11 電線
13 電線側コネクタ
15 端子収容室
17 ねじ(接続用部材)
18 ばね(接続用部材)
31 コネクタ嵌合部
35 孔(被係止部)
36 係止爪(係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置において、
前記配線基板に装着されている一方の基板側コネクタと、
複数の端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室に収容され前記モータ接続用電線に接続する端子と、前記モータ接続用電線と前記端子との接続に使用する接続用部材を複数有し、前記基板側コネクタに接続する他方の電線側コネクタと、を備え、
該電線側コネクタの前記端子収容室が上下方向で2段に配設され、前記接続用部材が前記上下方向に配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
複数のモータを駆動するモータ駆動装置であって、個々の前記モータに対して隣接して配置される一対のコネクタを介して複数本のモータ接続用電線と配線基板の導体部とを電気的に接続するモータ駆動装置において、
前記配線基板に装着されている一方の基板側コネクタと、
複数の端子収容室を有するハウジングと、前記端子収容室に収容され前記モータ接続用電線に接続する端子と、前記モータ接続用電線と前記端子との接続に使用する接続用部材を複数有し、前記基板側コネクタに接続する他方の電線側コネクタと、を備え、
該電線側コネクタの前記端子収容室が上下方向で2段に配設され、前記接続用部材が前記上下方向に配置されていることを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
前記接続用部材がねじ又はばねであることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記基板側コネクタと前記電線側コネクタとを相互に係止するラッチ機構を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記基板側コネクタの前記上下方向の壁部に係止部が設けられ、前記電線側コネクタの前記上下方向の壁部に前記係止部に係合する被係止部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のモータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−187835(P2009−187835A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27901(P2008−27901)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】