説明

モータ

【課題】ブラシホルダを容易に、且つ安定して保持することができるモータを提供する。
【解決手段】ブラシホルダ30は、モータハウジング13内部で当接部13hと当接した状態で、閉塞部材としてのギヤハウジング40との間に設けられた弾性部材としての押圧部Saにより当接部13h側に押圧される。このため、ガタつきなくブラシホルダ30を保持することができる。また、組み付けの際には、ブラシホルダ30を当接部13hに当接するようにモータハウジング13に収容した後、そのハウジング13に押圧部Sa及びギヤハウジング40を組み付けるだけでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付直流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシ付直流モータは、例えば特許文献1にて示されるように、直流モータにて構成されるモータ部と、そのモータ部にて生じた回転を減速して出力する例えば減速部とが一体に組み付けられて構成されている。このようなモータでは、モータ部のモータハウジング及び減速部のギヤハウジング(閉塞部材)はそれらの各開口端部が互いに対向するように配置されるとともに、それら各開口端部で給電ブラシを保持するブラシホルダを挟持した状態でネジ等により一体に組み付けられている。これにより、ブラシホルダは安定して保持されるとともに、両ハウジングの開口は該ホルダによってそれぞれ塞がれるようになっている。また、例えば特許文献1のモータのように、ブラシホルダと両ハウジングの各開口端部との間にシール部材等を介在させて両ハウジングの開口をそれぞれ密閉し、ハウジング内への浸水を防止しているものもある。
【特許文献1】特開2002−119010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなモータでは、両ハウジングの開口を塞ぐようにブラシホルダを双方のハウジングに対してそれぞれ組み付ける必要があり、その組み付け作業が煩雑なものとなっていた。特に、両ハウジングの開口をシール部材等によってそれぞれ密閉する場合、ブラシホルダにおけるモータハウジング側及びギヤハウジング側の双方にシール部材を設ける必要があるため、その問題は顕著なものとなる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ブラシホルダを容易に、且つ安定して保持することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、整流子を有した電機子と該整流子に摺接する給電ブラシを保持するブラシホルダとを収容する有底筒状のハウジングに、その開口部を塞ぐように閉塞部材が組み付けられてなるブラシ付直流モータであって、前記ブラシホルダは、前記ハウジングの内部に設けられた当接部と該ブラシホルダの反開口部側で前記開口部の開口方向において当接した状態で、前記ハウジングの内側面よりも径方向内側で前記閉塞部材との間に設けられた弾性部材により前記当接部側に押圧されて保持されたことをその要旨とする。
【0006】
この発明では、ブラシホルダはハウジング内部で当接部と当接した状態で閉塞部材との間に設けられた弾性部材により当接部側に押圧されるため、ガタつきなくブラシホルダを保持することができる。また、モータの組み付けの際には、ブラシホルダを当接部に当接するようにハウジング開口部から収容した後、そのハウジングに弾性部材及び閉塞部材を組み付けるだけでよい。即ち、ブラシホルダの組み付けはハウジングへの組み付け及びハウジングへの閉塞部材の組み付けで済むため、ブラシホルダを容易に且つ安定して保持することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記当接部は、前記ハウジングの内側面から突出するように一体形成されたことをその要旨とする。
この発明では、当接部がハウジング内側面に一体形成されるため、容易に当接部を設けることが可能であるとともに、その形成位置を正確なものにすることができ、これによりブラシホルダの正確な位置決めが可能である。また、モータの部品点数を抑えることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記当接部は、前記電機子と対向するように前記ハウジングの内部に設けられたマグネットの端部であることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、当接部は電機子と対向するようにハウジングの内部に設けられたマグネットの端部であるため、当接部として別部材を設ける必要や、当接部をハウジングの内側面に一体形成する必要がなくなる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ブラシホルダは、前記開口方向外側に突出する突出部を有し、その突出部が前記弾性部材により押圧されたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、弾性部材はブラシホルダの突出部を押圧するため、弾性部材を小さく構成することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ブラシホルダは、その中央部を中心とする少なくとも対称位置で前記弾性部材により押圧されたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、ブラシホルダはその中央部を中心とする少なくとも対称位置で弾性部材により押圧されるため、ブラシホルダを安定して保持することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ハウジングと前記閉塞部材との間には、弾性変形して該ハウジング及び閉塞部材とそれぞれ密着するシール部材が介在されたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、ハウジングと閉塞部材との間には、弾性変形して該ハウジング及び閉塞部材とそれぞれ密着するシール部材が介在されるため、ハウジング内への浸水を抑制することができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のモータにおいて、前記シール部材には、前記弾性部材が一体成形されたことをその要旨とする。
この発明では、弾性部材がシール部材に一体成形されるため、モータの部品点数を抑えることが可能となる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記閉塞部材は、前記電機子の回転を減速するための減速機構を収容するギヤハウジングであることをその要旨とする。
【0016】
この発明では、ブラシホルダを容易に、且つ安定して保持することができる構成を減速機構付のモータに適用することができる。
【発明の効果】
【0017】
従って、上記記載の発明によれば、ブラシホルダを容易に、且つ安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータ10は、自動車のウインドガラスを自動開閉するパワーウインド装置の駆動源として用いられるものである。このモータ10は、直流モータにて構成されるモータ部11と、該モータ部11にて生じた回転を減速して出力する減速部12とが一体に組み付けられて構成されている。
【0019】
図2に示すように、モータ部11を構成するモータハウジング13は、樹脂材料にて有底円筒状に形成されるとともに、該ハウジング13の上底部13aには下方に延びる支持筒部13bが形成されている。支持筒部13bには筒状のヨーク14が外嵌固定されている。ヨーク14は、その外側面にマグネット15が固定されるとともに、内側にラジアル軸受16が設けられている。このラジアル軸受16と支持筒部13bの内側に収容されたボール17とにより電機子20の回転軸21の基端部は回転可能に支持されている。尚、回転軸21はその軸線がモータハウジング13の開口方向(図2における上下方向)に沿うように設けられている。
【0020】
回転軸21の中央部には、モータハウジング13の上底部13aに向かって開口する有底円筒状の支持部材22が一体回転可能に固定されている。その支持部材22の内周面には、巻線23が巻装された電機子コア24が前記マグネット15と対向するように固着されている。
【0021】
回転軸21の中央部における支持部材22よりも先端側には、円盤状をなす整流子25が固着されている。整流子25は、回転軸21の先端側の軸直交平面よりなる摺接面25a上に周方向に複数個のセグメント(図示略)が配設されて構成されている。各セグメントには、支持部材22の底部に設けられる複数個の貫通孔(図示略)を介して導出された巻線23の端末24aが接続されている。
【0022】
モータハウジング13の上底部13a外縁から延びる外側壁13cは、支持部材22を覆うように一旦下方に延びるとともに、拡径するテーパ部13dを経て更に下方に延びている。外側壁13cの下端に位置する開口部13eには、軸線を挟んだ対向位置のそれぞれに取付部13fが径方向外側に向けて延出形成されている。また、モータハウジング13は、樹脂製であることからその外側面に複数の補強リブ13gが所定位置に立設され、これによりモータハウジング13の剛性を高くして、駆動時のモータ部11から生じる振動及び騒音を抑制している。
【0023】
外側壁13cの内周面におけるテーパ部13dと対応する位置には、径方向内側に張り出した段差形状をなす当接部13hが該内周面の全周に亘って一体形成されている。当接部13hは、テーパ部13dの内周面から一旦下方に延びるとともに、その下面には回転軸21の軸線と直交する当接面13iが形成されている。
【0024】
モータハウジング13内において、前記整流子25はテーパ部13dと対応する位置に配置されるとともに、モータハウジング13(外側壁13c)の開口部13eには図3(a)(b)に示すようなブラシホルダ30が嵌着されている。尚、図3(a)はブラシホルダ30の上面側を、図3(b)はブラシホルダ30の下面側をそれぞれ図示したものである。また、図2のブラシホルダ30は、図3(a)におけるA−A断面を図示している。ブラシホルダ30はその全体がモータハウジング13内に収容されるように配置されている。
【0025】
ブラシホルダ30は、開口部13eの開口形状に則した若干内側に小さい扁平円形状をなし(図3(a)(b)参照)、その円弧状の左右方向両縁部には上方に延びる延出部30aがそれぞれ形成されている。各延出部30aの上端は、前記外側壁13cの当接部13h(当接面13i)にそれぞれ当接し、これによりブラシホルダ30の軸線方向への位置決めがなされている。また、ブラシホルダ30の左右方向両端部には、下方に若干突出する突出部30bが該ブラシホルダ30の中央部を中心とする対称位置にそれぞれ形成されている。各突出部30bはそれぞれ、モータハウジング13の開口部13eから開口方向外側に僅かに突出するとともに、ブラシホルダ30の側面30cから径方向外側にも若干突出してモータハウジング13の開口部13eと接している。尚、ブラシホルダ30の側面30cには径方向外側に若干突出する圧入用突起30dが所定位置に複数形成されている(図3参照)。
【0026】
図1及び図2に示すように、モータハウジング13の取付部13fは、前記減速部12を構成する閉塞部材としてのギヤハウジング40の上端に設けられた組付部40aに当接している。モータハウジング13は、各取付部13fを介在したネジ26のギヤハウジング40への螺着にて該ギヤハウジング40に対し固定される。
【0027】
モータハウジング13とギヤハウジング40とは、それらの各開口部13e,40bが互いに対向するように組み付けられている。ギヤハウジング40の開口部40bはモータハウジング13の開口部13eよりも開口面積が小さく形成されており、ギヤハウジング40の組付部40aはモータハウジング13の開口部13eよりも径方向内側に延出されている。尚、組付部40aに上側(モータ部11側)に突出形成された位置決め突起40cがブラシホルダ30の下面に形成された位置決め孔30eに嵌合されることでギヤハウジング40の位置決めがなされている。
【0028】
組付部40aには、モータ部11側に開口する取付溝40dがモータハウジング13の開口部13eの周縁に沿って環状に形成されるとともに、その取付溝40dには図3(b)に示すようなシール部材Sが設けられている。シール部材Sはエラストマ等の弾性材料よりなるとともに、取付溝40dに則した形状をなしている。シール部材Sは、取付溝40dとモータハウジング13の取付部13fとの間で弾性変形してそれらとそれぞれ密着し、これにより両ハウジング13,40内への浸水が抑制されている。
【0029】
シール部材Sにおけるブラシホルダ30の突出部30bと対応する位置、即ちシール部材S両端部にはそれぞれ、径方向内側に突出する押圧部Saが該シール部材Sに一体形成されている。押圧部Saは、ブラシホルダ30の突出部30b先端と接して弾性変形し、そのブラシホルダ30に対して上側(当接部13h側)への押圧力を付与している。つまり、押圧部Saはブラシホルダ30の延出部30a上端が当接部13hに当接した状態で、ブラシホルダ30を下側(ギヤハウジング40側)から押圧し保持している。尚、押圧部Saの形成位置がシール部材Sの両端部であるため、ブラシホルダ30は押圧部Saにより安定して押圧されている。
【0030】
このようなモータ10では、モータハウジング13の開口部13eからブラシホルダ30を当接部13hに当接するまで圧入(この場合、軽圧入)した後に、そのモータハウジング13とシール部材S(押圧部Sa)を取り付けたギヤハウジング40とをネジ26により固定する。この組み付けにより、ブラシホルダ30の突出部30bと押圧部Saとが接触し、ブラシホルダ30はガタつきなく安定して保持される。また、ブラシホルダ30はモータハウジング13(外側壁13c)の内側面よりも径方向内側で押圧部Saと接しており、該ブラシホルダ30の固定はモータハウジング13の内部で完結している。即ち、上記のようなブラシホルダ30の保持構造によれば、ブラシホルダ30を径方向において大型化させる必要がなく、モータ10の小型化を図ることができる。
【0031】
ブラシホルダ30の中央部には回転軸21の先端部をラジアル方向にて支持する軸受31が装着されるとともに、その中央部から径方向外側にオフセットした位置の同心円上に一対の給電ブラシ32が所定間隔を有して保持されている。各給電ブラシ32は、回転軸21の軸線方向に沿ってスライド移動可能に保持されるとともに該ブラシ32の後端面にスプリング33の付勢力が付与され(図2参照)、該ブラシの先端部が整流子25の摺接面25aに押圧接触されている。
【0032】
各給電ブラシ32は、後端側が直方体状、先端側の接触部32aが台形柱状の2段形状とされている。即ち、給電ブラシ32と接触する各セグメントは、隣り合うセグメントの間隔が径方向において等間隔となるように扇形状をなしていることから、その扇形状に対応して給電ブラシ32先端の接触部32aが断面台形状とされるとともに、残りの部分は直方体状としてブラシホルダ30にて支持し易い形状とされている。給電ブラシ32は、減速部12のギヤハウジング40に装着されるコネクタ部34と電気的に接続され、そのコネクタ部34を介して外部から供給される駆動電源を整流子25を介して電機子20に供給する。電機子20は、整流子25を介した給電に基づいて回転する。
【0033】
図1に示すように、減速部12のギヤハウジング40は、減速機構を構成するウォーム軸41、ウォームホイール42及びクラッチ43を収容可能な所定形状に形成されている。ギヤハウジング40には、ウォーム軸41がクラッチ43を介してモータ部11の回転軸21と同軸上に配置され、該クラッチ43にて両軸41,21が駆動連結されている。ウォーム軸41の中央部には、ウォーム41aが形成されており、該ウォーム41aの両端部がギヤハウジング40に設けられる一対の軸受44,45にて回転可能にラジアル方向にて支持されている。ウォーム軸41の先端部には、該軸41のスラスト荷重を受けるボール46が配設されている。
【0034】
ウォームホイール42は、ギヤハウジング40内に回転可能に支持されており、該ホイール42の中心部にて出力軸47と一体回転するように連結されている。ウォームホイール42はウォーム軸41に設けられたウォーム41aと噛合され、前記モータ部11の駆動によるウォーム軸41側からの回転力がウォームホイール42にて減速されて出力軸47から出力され、該出力軸47の駆動に基づいてウインドガラスが開閉するようになっている。
【0035】
また、ウォーム軸41及び回転軸21間に設けられたクラッチ43は、モータ部11の駆動に基づく回転軸21の回転をウォーム軸41に伝達する一方、出力軸47側から入力されるウォーム軸41の回転を阻止するよう構成されている。これにより負荷側からの出力軸47の空転が阻止され、ウインドガラスの自重による不意な落下の防止や外部から手動の開作動を防止(盗難防止)等がなされている。
【0036】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)ブラシホルダ30は、モータハウジング13内部で当接部13hと当接した状態で、閉塞部材としてのギヤハウジング40との間に設けられた弾性部材としての押圧部Saにより当接部13h側に押圧される。このため、ガタつきなくブラシホルダ30を保持することができる。また、モータ10の組み付けの際には、ブラシホルダ30を当接部13hに当接するようにモータハウジング13に収容した後、そのハウジング13に押圧部Sa及びギヤハウジング40を組み付けるだけでよい。即ち、ブラシホルダ30の組み付けはモータハウジング13への収容と、両ハウジング13同士の組み付けとで完了するため、ブラシホルダ30を容易に且つ安定して保持することができる。
【0037】
(2)ブラシホルダ30はモータハウジング13(外側壁13c)の内側面よりも径方向内側で押圧部Saと接しており、該ブラシホルダ30の固定はモータハウジング13の内部で完結している。そのため、ブラシホルダ30を径方向において大型化させる必要がなく、モータ10の小型化を図ることができる。
【0038】
(3)押圧部Saはブラシホルダ30において突出部30bを押圧するため、押圧部Saを小さく構成することができる。
(4)ブラシホルダ30はその中央部を中心とする対称位置で押圧部Saにより押圧されるため、ブラシホルダ30を安定して保持することができる。
【0039】
(5)モータハウジング13とギヤハウジング40との間には、弾性変形して両ハウジング13,40とそれぞれ密着するシール部材Sが介在されるため、その両ハウジング13,40内への浸水を抑制することができる。
【0040】
(6)押圧部Saはシール部材Sに一体成形されるため、モータ10の部品点数を抑えることが可能となる。
(7)ギヤハウジング40はシール部材S(押圧部Sa)を取り付けるための取付溝40dをブラシホルダ30に対応する位置に備える。このため、ギヤハウジング40の取付溝40dに押圧部Saを取り付けた後、そのギヤハウジング40をモータハウジング13に組み付けるだけでブラシホルダ30を保持することができ、その組み付けがより容易となる。
【0041】
(8)モータハウジング13の当接部13hは、外側壁13cと一体成形されているため、容易に当接部13hを設けることが可能であるとともに、その形成位置を正確なものにすることができ、これによりブラシホルダ30の正確な位置決めが可能である。また、当接部13hを別部材として設ける必要がなく、モータ10の部品点数を抑えることができる。
【0042】
尚、本発明の第1実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態では、整流子25の摺接面25aを軸直交平面とし、給電ブラシ32をその摺接面25aに軸方向に接触させる構成としたが、図4に示すように、整流子25の外周面を摺接面25aとし、給電ブラシ32をその摺接面25aに径方向に接触させる構成としてもよい。
【0043】
・上記第1実施形態では、当接部13hはモータハウジング13の内周面全周に亘って設けられたが、これ以外に例えば、ブラシホルダ30の延出部30aに対応する位置に複数設けてもよい。
【0044】
・上記第1実施形態では、当接部13hはモータハウジング13と一体成形されたが、これ以外に例えば、当接部として別部材を設けてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態のモータ50は、前記第1実施形態のモータ10に比べて、モータ部51の構成を中心として変更されている。従って、以下には、モータ部51を中心に説明し、前記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施形態のモータ部51は、前記第1実施形態の樹脂材料よりなるモータハウジング13とは異なり、図5に示すような金属材料よりなる有底筒状のモータハウジング52を有している。モータハウジング52の上底部52aには、巻線53が巻装された電機子コア54を有する回転軸55の基端を軸支する軸受56が設けられるとともに、該ハウジング52の内側面には円筒状のマグネット60が電機子コア54と対向するように固着されている。また、回転軸55の電機子コア54よりも先端側には整流子57が固定されている。
【0046】
モータハウジング52の開口部52bには、回転軸55の先端部を軸支する軸受58、及び整流子57に給電するための給電ブラシ59を保持するブラシホルダ61が嵌着されている。ブラシホルダ61の左右方向両縁部にはモータハウジング52の外側壁52cの形状に沿って上側(上底部52a側)に延びる延出部61aが形成されるとともに、その延出部61aの上端はマグネット60の下面60aに当接している。また、ブラシホルダ61には、前記第1実施形態と同様の構成の突出部61b及び圧入用突起(図示略)が形成されている。
【0047】
モータハウジング52の開口部52bから径方向外側に延出された取付部52dには、前記第1実施形態と同様の構成のシール部材S(押圧部Sa)が取り付けられたギヤハウジング40(減速部12)がネジ62により組み付けられている。そして、本実施形態では、マグネット60の下面60aが前記第1実施形態における当接部13hの当接面13iとなっており、そのマグネット60の下面60aにブラシホルダ61の延出部61a上端が当接した状態で、押圧部Saはブラシホルダ61を下側(ギヤハウジング40側)から押圧し保持している。
【0048】
このようなモータ50では、前記第1実施形態と同様に、ブラシホルダ61を圧入固定したモータ部51に対して、シール部材S(押圧部Sa)を取り付けたギヤハウジング40を組み付けるだけで、ブラシホルダ61の突出部61bと押圧部Saとが接触し、ブラシホルダ61をガタつきなく安定して保持することができる。また、ブラシホルダ61はモータハウジング52の内側面よりも径方向内側で押圧部Saと接している。即ち、該ブラシホルダ61の固定はモータハウジング52の径方向内側で完結している。従って、ブラシホルダ61を径方向において大型化させる必要がなく、モータ10の小型化を図ることができる。
【0049】
本実施形態のモータ50は、前記第1実施形態のモータ10と比べて若干の変更点はあるが、前記第1実施形態で記載した作用効果(1)〜(7)を有している。これに加え、本実施形態では、下記の作用効果(9)を有している。
【0050】
(9)マグネット60が当接部としての役割を兼ねているため、当接部として別部材を設ける必要や、当接部をモータハウジング52の内側面に一体形成する必要がなくなる。
尚、本発明の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、延出部30a,61aはブラシホルダ30,61の両縁部にそれぞれ設けられたが、これ以外に例えば、ブラシホルダ30,61の全周に亘って設けてもよく、また、縁部以外の箇所に設けてもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、シール部材S(押圧部Sa)取り付けるための取付溝40dはギヤハウジング40に形成されたが、これ以外に例えばブラシホルダ30,61の下面に形成してもよく、また、取付溝40dのような弾性部材を取り付けるための取付部を設けない構成でもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、弾性部材としての押圧部Saはシール部材Sと同一部材から一体成形されたが、特にこれに限定されるものではなく、例えばシール部材Sとは別体として設けてもよく、また、弾性部材として圧縮スプリング等を設けてもよい。
【0054】
・上記各実施形態では、押圧部Sa及びブラシホルダ30,61の突出部30b,61bはそれぞれ2つ設けられたが、これ以外に例えば、1つ、若しくは3つ以上設けてもよい。また、突出部30b,61bは外縁に設けられたが、設ける箇所は特にこれに限定されない。また、突出部30b,61bをブラシホルダ30の外縁に沿って環状に設けてもよい。
【0055】
・上記各実施形態では、ブラシホルダ30,61には押圧部Saに押圧される突出部30b,61bが形成されたが、ブラシホルダ30,61側に突出する突出部を押圧部Saに設けてもよい。また、ブラシホルダ30,61及び押圧部Saのどちらにも突出部を設けない構成としてもよい。
【0056】
・上記各実施形態では、閉塞部材がギヤハウジング40に具体化されたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば単に蓋体でもよい。
・上記各実施形態では、モータ部11,51と減速部12とを一体に組み付けてなる減速機構付きのモータ10,50に適用したが、例えばリンク機構内蔵のモータや、減速部を有していないモータに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態におけるモータの構成図。
【図2】モータ部の断面図。
【図3】(a)はモータ部側、(b)は減速部側から見たブラシホルダの構成図。
【図4】別例におけるモータの断面図。
【図5】第2実施形態におけるモータ部の断面図。
【符号の説明】
【0058】
S…シール部材、Sa…弾性部材としての押圧部、10,50…モータ、11,51…モータ部、12…減速部、13,52…モータハウジング、13e,52b…モータハウジングの開口部、13h…当接部、20…電機子、25…整流子、30,61…ブラシホルダ、30a,61a…延出部、30b,61b…突出部、32…給電ブラシ、40…閉塞部材としてのギヤハウジング、40b…ギヤハウジングの開口部、40c…取付溝、60…当接部としてのマグネット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を有した電機子と該整流子に摺接する給電ブラシを保持するブラシホルダとを収容する有底筒状のハウジングに、その開口部を塞ぐように閉塞部材が組み付けられてなるブラシ付直流モータであって、
前記ブラシホルダは、前記ハウジングの内部に設けられた当接部と該ブラシホルダの反開口部側で前記開口部の開口方向において当接した状態で、前記ハウジングの内側面よりも径方向内側で前記閉塞部材との間に設けられた弾性部材により前記当接部側に押圧されて保持されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記当接部は、前記ハウジングの内側面から突出するように一体形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記当接部は、前記電機子と対向するように前記ハウジングの内部に設けられたマグネットの端部であることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ブラシホルダは、前記開口方向外側に突出する突出部を有し、その突出部が前記弾性部材により押圧されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ブラシホルダは、その中央部を中心とする少なくとも対称位置で前記弾性部材により押圧されたことを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ハウジングと前記閉塞部材との間には、弾性変形して該ハウジング及び閉塞部材とそれぞれ密着するシール部材が介在されたことを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータにおいて、
前記シール部材には、前記弾性部材が一体成形されたことを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記閉塞部材は、前記電機子の回転を減速するための減速機構を収容するギヤハウジングであることを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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