説明

モータ

【課題】外部から衝撃が加わっても、ロータをモータ軸線方向の一方側に付勢する付勢部材がモータ本体から外れにくいモータを提供すること。
【解決手段】モータ1において、モータ本体1aの筒状胴部10に開口部10cを設けておく一方、ロータをモータ軸線L方向の一方側に付勢する付勢部材9には、筒状胴部10の外周面10aに沿ってモータ軸線L方向の一方側L1に向けて延在する係合板部94を設け、係合板部94の先端側を開口部10cに係合させて、付勢部材9をモータ本体1aに取り付ける。係合板部94は、側板部941の先端部で径方向内側に屈曲して開口部10cに係合するフック部942と、筒状胴部10の内側でフック部942の先端部からモータ軸線L方向の他方側L2に屈曲した爪部943とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関するものである。さらに詳しくは、ロータをモータ軸線方向に付勢する付勢部材のモータ本体に対する固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、FDD、ODDなどに用いられるステッピングモータ等は、回転軸の外周に永久磁石を備えたロータ、およびロータの外周側に配置されたステータを備えたモータ本体と、ロータをモータ軸線方向の一方側に付勢する付勢部材とを有している(特許文献1参照)。
【0003】
かかる付勢部材をモータ本体に固定するにあたって、特許文献1に記載のモータでは、図13に示すように、モータ本体の筒状胴部10に開口部10cを設けておく一方、付勢部材9には、筒状胴部10の外周面10aに沿ってモータ軸線L方向の一方側L1に向けて延在する係合板部94を設け、係合板部94の先端部940を内側に屈曲させて先端部940を開口部10cにモータ軸線L方向で係合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図13に示す構成の場合、ロータにモータ軸線L方向の他方側L2に向かう衝撃が加わった際、係合板部94がモータ軸線L方向の他方側L2に引っ張られ、その結果、係合板部94の先端部940が、矢印F1で示すように開くように変形して係合板部94と開口部10cとの係合が外れてしまう。このため、図13に示す構成では、モータの耐衝撃性能が低いという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、外部から衝撃が加わっても、ロータをモータ軸線方向の一方側に付勢する付勢部材がモータ本体から外れにくいモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、回転軸を備えたロータ、および該ロータの外周側に配置されたステータを備えたモータ本体と、前記ロータをモータ軸線方向の一方側に付勢する付勢部材と、を有するモータにおいて、前記モータ本体の外周面を構成する筒状胴部には、径方向外側に向けて開口する開口部が形成され、前記付勢部材は、前記ロータを付勢する板バネ部をもって前記筒状胴部に対してモータ軸線方向の他方側に位置する端板部と、前記端板部から前記筒状胴部の外周面に沿ってモータ軸線方向の一方側に向けて延在した係合板部と、を備え、前記係合板部は、前記端板部から前記筒状胴部の外周面に沿ってモータ軸線方向の一方側に延在する側板部と、該側板部の先端部で径方向内側に屈曲して前記開口部において前記モータ軸線方向の他方側に位置する壁面に係合するフック部と、前記筒状胴部の内側で当該フック部の先端部からモータ軸線方向の他方側に屈曲した爪部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、モータ本体の筒状胴部に開口部を設けておく一方、付勢部材には、筒状胴部の外周面に沿ってモータ軸線方向の一方側に向けて延在する係合板部を設け、係合板部の先端側を開口部に係合させて、付勢部材をモータ本体に取り付けている。ここで、係合板部は、側板部の先端部で径方向内側に屈曲して開口部においてモータ軸線方向の他方側に位置する壁面に係合するフック部と、筒状胴部の内側でフック部の先端部からモータ軸線方向の他方側に屈曲した爪部とを備えている。このため、付勢部材の係合板部は、フック部が筒状胴部に対してモータ軸線方向で係合し、爪部が筒状胴部に対して径方向で係合する。従って、外部から加わった衝撃によって係合板部が変形しても、爪部が筒状胴部の内周面に引っ掛かるので、開口部に対する係合板部の係合が外れにくい。
【0009】
本発明において、前記開口部および前記係合板部は各々、周方向で離間する複数個所に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、開口部および係合板部のみで、モータ本体に付勢部材を固定することができる。
【0010】
本発明において、前記爪部は、前記筒状胴部の内周面に沿って周方向で湾曲していることが好ましい。この場合、前記爪部は、前記筒状胴部の内周面と同心円状に湾曲していることが好ましい。かかる構成によれば、筒状胴部の内側にコイルが位置する場合でも、コイルと爪部との間に十分な隙間を確保することができるので、コイルと爪部とが接触することを確実に防止することができる。
【0011】
本発明において、前記爪部は、前記フック部の先端部において周方向の一部分に形成されていることが好ましい。
【0012】
この場合、例えば、前記爪部は、前記フック部の先端部において周方向の両端部の各々に形成されていることが好ましい。このように構成すれば、爪部に対して捩じれ力が加わっても開口部に対する係合板部が外れにくい。
【0013】
また、前記フック部の先端部において周方向の中央位置のみに形成されている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、筒状胴部の内側にコイルが位置する場合でも、コイルと爪部との間に十分な隙間を確保することができる。
【0014】
本発明において、前記側板部の側端縁には切り欠きが形成されていることが好ましい。係合板部に爪部を設けると、リワーク時に係合板部を開口部から外すのに手間がかかる。しかるに側板部の側端縁に切り欠きを設けておけば、リワーク時、係合板部の切り欠きに治具を引っ掛けて係合板部を強制的に外側に撓ませることができ、係合板部と開口部との係合を解除することができる。
【0015】
本発明において、前記筒状胴部は、前記ステータに用いたステータコアと一体に形成されている構成を採用することができる。かかる構成によれば、モータ本体の外周面をステータコアと一体に形成された筒状胴部により構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、付勢部材の係合板部は、側板部の先端部で径方向内側に屈曲して開口部においてモータ軸線方向の他方側に位置する壁面に係合するフック部と、筒状胴部の内側でフック部の先端部からモータ軸線方向の他方側に屈曲した爪部とを備えているため、外部から加わった衝撃によって係合板部が変形しても、爪部が筒状胴部の内周面に係合するので、開口部に対する係合板部が外れにくい。それ故、モータの耐衝撃性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係るモータ(ステッピングモータ)の全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るモータにおけるモータ本体と付勢部材との固定構造を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るモータの基端側を分解して示す説明図である。
【図4】図1に示すモータの要部を分解して模式的に示す分解斜視図である。
【図5】図1に示すモータの外ステータコアの説明図である。
【図6】図1に示すモータの軸受保持部材の説明図である。
【図7】図1に示すモータの付勢部材の説明図である。
【図8】図7に示す付勢部材の係合板部の先端側の構成等を示す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るモータの付勢部材の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るモータの付勢部材の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係るモータの付勢部材の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係るモータの付勢部材の説明図である。
【図13】従来のモータにおけるモータ本体と付勢部材との固定構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明を適用したモータの一例を説明する。なお、以下の説明では、各種のモータのうち、ステッピングモータに本発明を適用した場合を例示する。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るステッピングモータの全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は、ステッピングモータの半断面図および底面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るステッピングモータにおけるモータ本体と付勢部材との固定構造を示す説明図であり、図2(a)、(b)は、図1(a)に示す方向と直交する方向からステッピングモータをみたときの半断面図、およびモータ本体と付勢部材との固定部分を拡大して示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態1に係るステッピングモータの基端側を分解して示す説明図である。
【0020】
図1(a)、(b)、図2(a)および図3において、本形態のモータ1(ステッピングモータ)は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、FDD、ODDなどに用いられる小型のステッピングモータであり、ロータ5およびステータ40を備えたモータ本体1aからはモータ軸線L方向の一方側L1(出力側)にロータ5の回転軸51が突出している。
【0021】
かかるモータ1において、ステータ40では、コイル25が巻回された環状の第1のボビン2Aと第2のボビン2Bとがモータ軸線L方向に重ねて配置されている。第1のボビン2Aおよび第2のボビン2Bの内周面では、内ステータコア3A、3Bおよび外ステータコア4A、4Bの複数の極歯31、41が周方向に並んだ構成となっている。このようにして、ロータ配置穴30を備えた環状のステータ40が構成されており、このロータ配置穴30の内側には、ロータ5の基端側が同軸状に配置されている。ロータ5は、回転軸51の基端側の周りに永久磁石52を備えており、この永久磁石52は、ロータ配置穴30の内側において、ステータの極歯31、41と所定の間隔を介して対向している。
【0022】
本形態では、外ステータコア4A、4Bのうち、外ステータコア4Bに一体に形成された円筒状の筒状胴部10によって、モータ本体1aの外周面が構成され、かかる筒状胴部10の内部に、コイル25および内ステータコア3A、3Bが配置されている。かかる構成の外ステータコア4Bは、モータ軸線L方向の他方側L2(反出力側)が開放端になったカップ形状を有しており、外ステータコア4Aは、外ステータコア4Bの開放端(筒状胴部10の開放端)を塞ぐように配置されている。また、外ステータコア4Bにおいてモータ軸線L方向の一方側L1に位置する先端面にはコの字型のプレート6が固着されており、このプレート6の先端側屈曲部分に保持されているスラスト軸受61によって、ロータ5の回転軸51が支持されている。また、回転軸51は、モータ軸線L方向の他方側L2(反出力側)に配置された軸受7によっても支持されている。軸受7は、鋼球71と、この鋼球71を回転可能に保持する樹脂製の本体胴部72とを備えている。ここで、ステータ40に対して他方側L2には、ステータ40と少なくとも一部が重なるように樹脂板状の軸受保持部材8が配置されており、軸受7は、軸受保持部材8の貫通穴80においてモータ軸線L方向で移動可能な状態にある。
【0023】
また、軸受保持部材8よりさらに一方端側には、金属薄板からなる付勢部材9が軸受保持部材8と少なくとも一部が重なるように配置され、この付勢部材9において切り起こされた板バネ部90によって、貫通穴80内の軸受7が回転軸51に向けて付勢されている。その結果、ロータ5は、付勢部材9によって、モータ軸線L方向において一方側L1に向けて付勢されているので、回転軸51にガタツキが発生しない。ここで、板バネ部90は、軸受7の本体胴部72の中心からずれた位置に当接している。かかる付勢部材9は、後述する係合機構によって筒状胴部10に保持され、軸受7が貫通穴80内に挿入された状態の軸受保持部材8をモータ本体1aとの間に挟持している。
【0024】
なお、第1のボビン2Aおよび第2のボビン2Bの半径方向外側には端子部20A、20Bが構成されており、端子部20A、20Bは、筒状胴部10の外周面10aに形成された穴101から突出している構造となっている。これらの端子部20A、20Bの端子ピン21A、21Bに巻線の端末が処理されるようになっている。
【0025】
(軸受保持部材8の構成)
図4は、図1に示すモータ1の要部を分解して模式的に示す分解斜視図である。図5は、図1に示すモータ1の外ステータコア4Aの説明図であり、図5(a)、(b)、(c)は、外ステータコア4Aの平面図、縦断面図、および極歯41の説明図である。図6は、図1に示すモータ1の軸受保持部材8の説明図であり、図6(a)、(b)、(c)は、軸受保持部材8の平面図、一部を断面で示す正面図、および側面図である。
【0026】
本形態では、軸受保持部材8および付勢部材9をモータ本体1aに対してこの順に固定するにあたって、以下の構造が採用されている。まず、図4および図5(a)〜(c)に示すように、外ステータコア4Aは、筒状胴部10の一方端側に位置する略円環状の底板部分42と、この底板部分42の内周縁で起立する5本の極歯41とを備えている。これらの極歯41は等角度間隔で形成されており、極歯41の内周面41aは、図5(a)からわかるように、モータ軸線L方向を中心とする同心円上に位置する円弧形状になっている。底板部分42の内周縁における各極歯41の間には、切り欠き43が各々形成されており、切り欠き43に向けては、図3に示す内ステータコア3Aの極歯31が延びている。このようにして、内ステータコア3Aの極歯31および外ステータコア4Aの極歯41は、周方向で交互に並んでいる。ここで、底板部分42には、軸受保持部材8の位置決め用の2つの穴45(第1の嵌合穴)が形成され、これらの穴45は、モータ軸線L方向を中心にロータ配置穴30を挟んで対称の位置に形成されている。
【0027】
次に、図4および図6(a)〜(c)に示すように、軸受保持部材8は樹脂成形品であり、その平面形状は、概ね長方形の4つの角を円弧状に切り欠いた形状を備えている。軸受保持部材8の中心には、軸受7が挿入される円形の貫通穴80が形成されている。軸受保持部材8において、外ステータコア4Aの底板部分42と対向する面側には、貫通穴80の開口縁を囲むように突き出た環状突起81が形成されている。ここで、環状突起81は、外ステータコア4Aの極歯41の内周面41aに対する内接円の直径よりも外径が僅かに小さな寸法に設定され、その突出寸法は、極歯41の寸法よりも十分に短く設定されている。従って、モータ1を組み立てた際、環状突起81が外ステータコア4Aの極歯41の内側に嵌合することにより、軸受保持部材8は、外ステータコア4A(筒状胴部10)に対して半径方向に位置決めされる。この状態において、環状突起81の突出寸法は極歯41の寸法よりも十分に短いので、環状突起81とロータ5とが当接することはない。
【0028】
また、軸受保持部材8において、外ステータコア4Aと対向する面側には、貫通穴80を挟む両側位置に、外ステータコア4Aの側に突き出た2つの凸部83が形成されている。従って、モータ1を組み立てた際、軸受保持部材8の2つの凸部83が、外ステータコア4Aの2つの位置決め用の穴45に各々、嵌合することにより、ステータ40に対する軸受保持部材8の角度位置が規定される。
【0029】
(付勢部材9の構成、および付勢部材9とモータ本体1aとの固定構造)
図7は、図1に示すモータ1の付勢部材9の説明図であり、図7(a)、(b)、(c)、(d)は、付勢部材9の平面図、一部を断面で示す正面図、側面図、および付勢部材9の底面図である。図8は、図7に示す付勢部材9の係合板部94の先端側の構成等を示す説明図であり、図8(a)、(b)、(c)、(d)は、係合板部94の先端側をモータ軸線L方向の他方側からみた斜視図、係合板部94の断面図、係合板部94の先端側を図8(b)の矢印L3の方向からみたときの説明図、および係合板部94の爪部943が筒状胴部10の内周面10bと係合している様子を示す説明図である。
【0030】
図2、図4および図7(a)〜(d)に示すように、付勢部材9は、厚さが0.1〜0.3mm程度の薄い金属板からなる。付勢部材9は、平面形状が長方形の4つの角を円弧状に切り欠いた端板部91を備えており、かかる端板部91は、軸受保持部材8と略同一の外形形状を有している。端板部91の中央部分では、軸受保持部材8が位置する側に向けて板バネ部90が直線的に切り起こされている。板バネ部90の先端部分は、軸受保持部材8の貫通穴80の中心からずれた位置まで延びており、軸受7の本体胴部72の中心からずれた位置に当接している。なお、板バネ部90の形状は、適宜変更が可能であり、本形態では、板バネ部90を途中位置で折り曲げて、その付勢力や付勢方向が調整されている。
【0031】
かかる付勢部材9において、端板部91は、長辺部分の縁に沿って軸受保持部材8の側に僅かに折り曲げられた補強板部98を備えており、かかる補強板部98によって、端板部91が反らないように強度が高められている。また、付勢部材9において、端板部91には、板バネ部90を挟む両側にモータ軸線L方向の他方側L2に突出したリブ91a、91bが形成されており、かかるリブ91a、91bによっても、端板部91が反らないように強度が高められている。
【0032】
また、付勢部材9において対向する2つの短辺部分の各々には、筒状胴部10(外ステータコア4B)の外周面10aに沿って延びる一対の係合板部94が形成されている。これに対して、モータ本体1aの円筒状の筒状胴部10には、相対向する2か所に周方向に辺方向を向ける矩形穴からなる開口部10cが形成されており、かかる2つの開口部10cの各々に対して、付勢部材9の2つの係合板部94が1対1の関係で係合することにより、付勢部材9は、モータ本体1aに固定されている。
【0033】
かかる固定構造を採用するにあたって、2つの係合板部94は各々、端板部91から筒状胴部10の外周面10aに沿ってモータ軸線L方向の一方側L1に延在する側板部941と、側板部941の先端部で径方向内側に屈曲して開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに係合するフック部942とを備えている。かかる付勢部材9がモータ本体1aに固定される前の状態で、側板部941は、端板部91から内側に約2°程度傾いた状態で延在し、フック部942は、端板部91に平行となるように側板部941の先端部で屈曲している。本形態において、側板部941のモータ軸線L方向における寸法は2〜4mm程度であり、フック部942の径方向における寸法は0.4〜1mm程度である。
【0034】
また、2つの係合板部94は各々、筒状胴部10の内側10dでフック部942の先端部からモータ軸線L方向の他方側L2に約90°の角度で屈曲した爪部943を備えており、爪部943と側板部941との径方向における間隔は、筒状胴部10の厚さ寸法と略同一である。また、爪部943は、周方向においてフック部942と同一の寸法をもって連接しており、爪部943のモータ軸線L方向の寸法は、例えば、0.3〜0.7mmである。
【0035】
ここで、側板部941およびフック部942は平板状である。これに対して、爪部943は、図7(a)および図8に示すように、筒状胴部10の内周面10bに沿って周方向で湾曲した円弧形状を有している。従って、フック部942の内周端も、爪部943と同様、筒状胴部10の内周面10bに沿って周方向で湾曲した円弧形状を有している。本形態において、爪部943の両面のうち、筒状胴部10の内周面10bに重なる凸曲面943aは、筒状胴部10の内周面10bと略同一の曲率半径をもって湾曲する円弧面になっており、凸曲面943aの曲率半径は、例えば、6〜8mmである。
【0036】
このように構成した付勢部材9をモータ本体1aに固定するには、まず、付勢部材9の2つの係合板部94のうちの一方の係合板部94の先端部を、筒状胴部10の2つの開口部10cのうちの一方の開口部10cに引っ掛け、端板部91をモータ本体1aのモータ軸線L方向の他方側L2の端面(外ステータコア4A)との間に軸受保持部材8および軸受7を挟んだ状態にして、他方の係合板部94を筒状胴部10の外周面10aに押し付ける。その結果、係合板部94のフック部942が開口部10cに入り込み、フック部942は、開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに弾性をもって当接する。このため、係合板部94は筒状胴部10にモータ軸線L方向で係合する。その際、図2(b)および図8(d)に示すように、係合板部94の爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに弾性をもって係合し、係合板部94は筒状胴部10に径方向でも係合する。この状態で、爪部943と筒状胴部10とは同心状態となる。それ故、爪部943は、コイル25の外周面とも同心状態となり、爪部943の凹曲面943bとコイル25の外周面との間には一定の隙間Gが形成される。
【0037】
このようにして係合板部94をモータ本体1aの筒状胴部10と係合させると、軸受保持部材8および付勢部材9は、モータ本体1aに保持された状態となり、付勢部材9の板バネ部90は、軸受7を介してロータ5をモータ軸線L方向の一方側L1に付勢する。それ故、回転軸51にはガタツキが発生しない。
【0038】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態のモータ1では、モータ本体1aの筒状胴部10に開口部10cを設けておく一方、付勢部材9には、筒状胴部10の外周面10aに沿ってモータ軸線L方向の一方側L1に向けて延在する係合板部94を設け、係合板部94の先端側を開口部10cに係合させて、付勢部材9をモータ本体1aに取り付ける。ここで、係合板部94は、側板部941の先端部で径方向内側に屈曲して開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに係合するフック部942と、筒状胴部10の内側でフック部942の先端部からモータ軸線L方向の他方側L2に屈曲した爪部943とを備えている。このため、付勢部材9の係合板部94は、フック部942が筒状胴部10に対してモータ軸線L方向で係合し、爪部943が筒状胴部10に対して径方向で係合する。従って、外部から加わった衝撃によって係合板部94が外側に変形しても、爪部943が筒状胴部10の内周面10bに係合するので、開口部10cと係合板部94との係合が外れにくい。例えば、ロータ5にモータ軸線L方向の他方側L2への衝撃が加わると、付勢部材9の端板部91がモータ軸線L方向の他方側L2に引っ張られ、その結果、フック部942が、外側に開くように変形することになるが、このような場合でも、爪部943が筒状胴部10の内周面10bに係合しているので、開口部10cと係合板部94との係合が外れにくい。特に、本形態では、爪部943の凸曲面943aは、周方向の全体にわたって筒状胴部10の内周面10bに係合しているので、開口部10cと係合板部94との係合が外れにくい。それ故、モータの耐衝撃性能を500G程度まで向上することができる。
【0039】
また、爪部943は、周方向においてフック部942と同一の寸法をもってフック部942に連接しており、周方向の寸法が大である。このため、係合板部94に捩じれ力が加わっても、爪部943と筒状胴部10との係合が外れにくい。
【0040】
さらに、爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに沿って周方向で湾曲した円弧形状を有しており、筒状胴部10に係合した際、図8(d)に示すように、筒状胴部10の内周面10bおよびコイル25の外周面と同心状態となる。それ故、爪部943の凹曲面943bとコイル25の外周面との間には一定の隙間Gが形成されるので、爪部943とコイル25とが接触することがない。
【0041】
[実施の形態2]
図9は、本発明の実施の形態2に係るモータ1の付勢部材9の説明図であり、図9(a)、(b)、(c)、(d)は、係合板部94の先端側をモータ軸線L方向の他方側からみた斜視図、係合板部94の断面図、係合板部94の先端側を図9(b)の矢印L3の方向からみたときの説明図、および係合板部94の爪部943が筒状胴部10の内周面10bと係合している様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0042】
実施の形態1において、付勢部材9の爪部943は、周方向においてフック部942と同一の寸法をもってフック部942に連接したが、本形態では、図9に示すように、爪部943は、フック部942の先端部において周方向の一部分に形成されている。より具体的には、爪部943は、フック部942の先端部において周方向の両端部の各々に形成された2つの凸部943tからなる。
【0043】
このように構成した付勢部材9でも、図9(d)に示すように、係合板部94の先端部を、筒状胴部10の開口部10cに引っ掛けた際、フック部942は、開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに弾性をもって当接し、爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに係合する。このため、係合板部94は、筒状胴部10に対してモータ軸線L方向および径方向において係合する。また、爪部943は、フック部942の先端部の端部に形成された2つの凸部943tからなり、凸部943tは周方向で十分、離間している。このため、係合板部94に捩じれ力が加わっても、爪部943と筒状胴部10との係合が外れにくいという利点がある。
【0044】
[実施の形態3]
図10は、本発明の実施の形態3に係るモータ1の付勢部材9の説明図であり、図10(a)、(b)、(c)、(d)は、係合板部94の先端側をモータ軸線L方向の他方側からみた斜視図、係合板部94の断面図、係合板部94の先端側を図10(b)の矢印L3の方向からみたときの説明図、および係合板部94の爪部943が筒状胴部10の内周面10bと係合している様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0045】
実施の形態2では、フック部942の先端部において周方向の一部分に爪部943が形成されている例として、フック部942の先端部の両端部に爪部943として2つの凸部943tを設けたが、本形態では、フック部942の先端部の周方向の中央に設けた1つの凸部943tによって爪部943が構成されている。
【0046】
このように構成した付勢部材9でも、図10(d)に示すように、係合板部94の先端部を、筒状胴部10の開口部10cに引っ掛けた際、フック部942は、開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに弾性をもって当接し、爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに係合する。このため、係合板部94は、筒状胴部10に対してモータ軸線L方向および径方向において係合する。また、爪部943は、フック部942の先端部の中央に形成された1つの凸部943tからなる。このため、フック部942が筒状胴部10の内周面10bより内側に侵入する寸法が短くても、凸部943t(爪部943)は、筒状胴部10の内周面10bに係合することができる。それ故、爪部943とコイル25の外周面との間には十分な隙間Gが形成されるので、爪部943とコイル25とが接触することがない。
【0047】
[実施の形態4]
図11は、本発明の実施の形態4に係るモータ1の付勢部材9の説明図であり、図11(a)、(b)、(c)、(d)は、係合板部94の先端側をモータ軸線L方向の他方側からみた斜視図、係合板部94の断面図、係合板部94の先端側を図11(b)の矢印L3の方向からみたときの説明図、および係合板部94の爪部943が筒状胴部10の内周面10bと係合している様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0048】
実施の形態1では、付勢部材9の爪部943は、湾曲した形状であったが、本形態では、図11に示すように、爪部943は、平板状のまま、フック部942と同一の寸法をもってフック部942に連接している。
【0049】
このように構成した付勢部材9でも、図11(d)に示すように、係合板部94の先端部を、筒状胴部10の開口部10cに引っ掛けた際、フック部942は、開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに弾性をもって当接し、爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに係合する。このため、係合板部94は、筒状胴部10に対してモータ軸線L方向および径方向において係合する。また、爪部943は、平板状のまま、フック部942と同一の寸法をもってフック部942に連接しているため、周方向の両端部が、筒状胴部10の内周面10bに係合する。このため、係合板部94に捩じれ力が加わっても、爪部943と筒状胴部10との係合が外れにくいという利点がある。また、係合板部94において、側板部941、フック部942および爪部943が全て平板状であるため、係合板部94の加工が容易であるという利点がある。
【0050】
[実施の形態5]
図12は、本発明の実施の形態5に係るモータ1の付勢部材9の説明図であり、図12(a)、(b)、(c)、(d)は、係合板部94の先端側をモータ軸線L方向の他方側からみた斜視図、係合板部94の断面図、係合板部94の先端側を図12(b)の矢印L3の方向からみたときの説明図、および係合板部94の爪部943が筒状胴部10の内周面10bと係合している様子を示す説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0051】
実施の形態1〜4では、付勢部材9において、係合板部94の側板部941は、両方の側端縁が直線的に形成されていたが、本形態では、図12に示すように、側板部941の側端縁941a、941bには切り欠き941cが形成されている。本形態では、切り欠き941cは三角形状に形成されている。
【0052】
このように構成した付勢部材9でも、図12(d)に示すように、係合板部94の先端部を、筒状胴部10の開口部10cに引っ掛けた際、フック部942は、開口部10cにおいてモータ軸線L方向の他方側L2に位置する端部10eに弾性をもって当接し、爪部943は、筒状胴部10の内周面10bに係合する。このため、係合板部94は、筒状胴部10に対してモータ軸線L方向および径方向において係合する。従って、係合板部94が外側に撓んだ場合でも、係合板部94と筒状胴部10との係合が外れにくい。
【0053】
このような構成を採用すると、モータ1のリワーク時、係合板部94を筒状胴部10から外すのに多大な手間がかかるが、本形態では、側板部941の側端縁941a、941bに切り欠き941cが形成されている。このため、リワーク時、係合板部94の切り欠き941cに治具を引っ掛けて係合板部94を強制的に外側に撓ませることができる。それ故、係合板部94と開口部10cとの係合を解除することができる。なお、本形態では、実施の形態4に係るモータ1において、係合板部94に切り欠き941cを形成したが、実施の形態1〜3に係るモータ1において、係合板部94に切り欠き941cを形成してもよい。
【0054】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1〜5では、モータ本体1aの外周面を構成する筒状胴部10が外ステータコア4Bと一体に形成されている場合を説明したが、筒状胴部10が外ステータコア4B等とは別体に形成されている場合に本発明を適用してもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、係合板部94および開口部10cを各々、2個所に設けたが、係合板部94および開口部10cについては、3個所以上、例えば、4個所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 モータ
5 ロータ
7 軸受
8 軸受保持部材
9 付勢部材
10 筒状胴部
25 コイル
40 ステータ
90 板バネ部
91 端板部
94 係合板部
941 側板部
941c 切り欠き
942 フック部
943 爪部
L モータ軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備えたロータ、および該ロータの外周側に配置されたステータを備えたモータ本体と、前記ロータをモータ軸線方向の一方側に付勢する付勢部材と、を有するモータにおいて、
前記モータ本体の外周面を構成する筒状胴部には、径方向外側に向けて開口する開口部が形成され、
前記付勢部材は、前記ロータを付勢する板バネ部をもって前記筒状胴部に対してモータ軸線方向の他方側に位置する端板部と、前記端板部から前記筒状胴部の外周面に沿ってモータ軸線方向の一方側に向けて延在した係合板部と、を備え、
前記係合板部は、前記端板部から前記筒状胴部の外周面に沿ってモータ軸線方向の一方側に延在する側板部と、該側板部の先端部で径方向内側に屈曲して前記開口部において前記モータ軸線方向の他方側に位置する壁面に係合するフック部と、前記筒状胴部の内側で当該フック部の先端部からモータ軸線方向の他方側に屈曲した爪部と、を備えていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記開口部および前記係合板部は各々、周方向で離間する複数個所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記爪部は、前記筒状胴部の内周面に沿って周方向で湾曲していることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記爪部は、前記筒状胴部の内周面と同心円状に湾曲していることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記爪部は、前記フック部の先端部において周方向の一部分に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項6】
前記爪部は、前記フック部の先端部において周方向の中央位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記爪部は、前記フック部の先端部において周方向の両端部の各々に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
【請求項8】
前記側板部の側端縁には切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のモータ。
【請求項9】
前記筒状胴部は、前記ステータに用いたステータコアと一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−228059(P2012−228059A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93186(P2011−93186)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】