説明

モータ

【課題】簡素な回路構造でありながら、低電圧でも安定して駆動させることができるPAM制御方式のモータを提供する。
【解決手段】複数の電流入出配線7を通じてコイル6に駆動電流を供給する駆動装置4を備え、駆動電圧Vmが変化するPAM制御方式のモータ1である。駆動装置4は、電流入出配線7を切り替える上流側パワー素子21及び下流側パワー素子22やこれらに制御電圧Vgを印加する制御回路31、制御回路31と上流側パワー素子21との間に設けられて駆動電圧Vmを分圧して制御電圧Vgを形成する制御電圧形成回路41を有している。上流側パワー素子21にPチャネルMOSFETが用いられ、制御電圧形成回路41には、制御電圧Vgが所定値以下に低下した場合に、制御電圧Vgを高く変化させる低電圧補助回路50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御方式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータでは、回転速度を可変制御するために、印加される駆動電圧が大小に変化する。従って、駆動電圧の高い高電圧領域から駆動電圧の低い低電圧領域まで広い範囲で安定して回転駆動できる性能が求められる。
【0003】
モータを回転駆動する際には、コイルに所定パターンの電流を供給する必要があるが、その制御は、一般に、パワー素子(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をオンオフ制御することによって行われる場合が多い。
【0004】
MOSFETには、NチャネルMOSFETとPチャネルMOSFETとがある。NチャネルMOSFETの場合、ゲート電極に正極側の電位を印加することで、ソース電極とドレイン電極との間に電流が流れるようになり(オン状態)、PチャネルMOSFETの場合、ゲート電極に負極側の電位を印加することでオン状態になる。閾値電圧付近ではソース電極とドレイン電極との間を流れる電流量はゲート電極に印加される電位の大きさの影響を受ける。
【0005】
NチャネルMOSFETをパワー素子に用いたモータ駆動回路が開示されている(特許文献1)。
【0006】
このモータ駆動回路には、駆動電圧を昇圧させるチャージポンプ回路が設けられていて、このチャージポンプ回路で昇圧した昇圧電圧は、レギュレート回路で定電圧化したレギュレート電圧に変換される。そして、この変換したレギュレート電圧がパワー素子のゲートに出力されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−259340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来より、駆動電圧を一定の分圧比で低下させ、その低下した電圧を利用してパワー素子に制御電圧を出力することが行われている。しかし、この場合、駆動電圧を低下させていくと、その駆動電圧の低下に応じてパワー素子に出力される制御電圧も低下するため、駆動電圧を大きく低下させると、パワー素子のオンオフ動作が不安定になり、回転数やトルクの低下など、本来のモータ性能が得られなくなるという問題がある。
【0009】
図1に、パワー素子100の駆動回路の概略を示す。同図は、パワー素子100にPチャネルMOSFETを用いた場合を表している。このパワー素子100の場合、N型半導体101の上に離れて2つのP型領域(ソース電極102とドレイン電極103)が形成され、これら102,103の間のチャネル領域には酸化膜104を介してゲート電極105が積層されている。
【0010】
パワー素子100は、コイルに電流を供給する電流供給線106の途中に接続されていて、電源側(高電位側)がソース電極102に接続され、コイル側(低電位側)がドレイン電極103に接続されている。電流供給線106には駆動電圧Vmが印加されている。
【0011】
パワー素子100に制御電圧を印加する分圧回路110は、直列に接続された第1抵抗111と第2抵抗112とを有し、この分圧回路110にも駆動電圧Vmが印加されている。そして、ゲート電極105の電位が第1抵抗111と第2抵抗112との間の電位と同電位になるように電気的に接続されている。
【0012】
分圧回路110が通電していない時にはゲート電極105に電位は出力されないため、チャネル領域は導通しないが(オフ状態)、同図に示すように分圧回路110が通電することでゲート電極105に負極側の電位が出力され、電圧降下によって生じる制御電圧がゲート電極105に印加される(ゲート電圧Vg)。そうなると、チャネル領域が導通してソース電極102からドレイン電極103に電流が流れるようになる(オン状態)。
【0013】
ところが、駆動電圧Vmを低下させていくと、図2に示すように、それに伴ってゲート電圧Vgも低下する。パワー素子100には、安定して機能するゲート電圧Vgの下限値VgLがあり、それを下回ると、ゲート電圧Vgが印加されてもオン状態にならなくなるなど、オンオフ動作が不安定になる。また、オン状態になってもチャネル部の電気抵抗が大きいために適正な電流量が得られず、回転数やトルクの低下など、本来のモータ性能が得られなくなってしまう。
【0014】
この点、特許文献1のモータ駆動回路では、チャージポンプ回路で駆動電圧を昇圧させているので、駆動電圧が低下してもゲート電圧の過度な低下を防ぐことができる。しかし、回路構造が複雑なため、部材コストや信頼性の面で不利がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、簡素な回路構造でありながら、低電圧でも安定して駆動させることができるPAM制御方式のモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のモータは、回転自在に支持されたロータと、複数のコイルと、これらコイルに接続される3つ以上の電流入出経路とを有するモータ本体と、前記電流入出経路の少なくともいずれか2つを通じて前記コイルに駆動電流を供給し、前記ロータを回転駆動する駆動装置とを備え、駆動電圧が変化するPAM制御方式のモータである。
【0017】
前記駆動装置は、並列に配置される複数の切替経路を含み、前記モータ本体に前記駆動電流を供給する電流供給経路と、前記切替経路の高電位側にそれぞれ接続される上流側パワー素子及び前記切替経路の低電位側にそれぞれ配置される下流側パワー素子を含み、前記電流入出経路を切り替える複数のパワー素子と、前記上流側パワー素子及び前記下流側パワー素子のそれぞれをオンオフ制御するために、所定のタイミングで制御信号を出力する制御装置と、前記制御装置と前記上流側パワー素子との間に設けられ、前記上流側パワー素子の制御電圧を前記駆動電圧から形成する制御電圧形成装置とを有している。
【0018】
前記制御電圧形成装置は、前記駆動電圧が印加され、高電位側から順に直列に接続される第1抵抗及び第2抵抗を有する分圧経路と、前記第1抵抗と前記第2抵抗との間の電位を前記上流側パワー素子に出力する第1の電位出力経路と、を有する分圧回路を含んでいる。
【0019】
そして、前記上流側パワー素子にPチャネルMOSFETが用いられ、前記制御電圧形成装置に、前記制御電圧が所定値以下に低下した場合に、当該制御電圧を高く変化させる低電圧補助回路が設けられている。
【0020】
このような構成のモータによれば、上流側パワー素子にPチャネルMOSFETが用いられているので、そのゲート電極に負極側の電位を出力することで上流側パワー素子をオン状態にすることができる。駆動電圧が低下した場合、それに伴って制御電圧も低下するが、それよりも更に低い電位をゲート電極に出力することで、制御電圧を高く変化させることができる。
【0021】
そして、制御電圧形成装置には、制御電圧が所定値以下に低下した場合に、その制御電圧を高く変化させる低電圧補助回路が設けられているので、低下した駆動電圧の下でも制御電圧を高めることができる。従って、複雑な回路構造を設けなくても低電圧で安定して上流側パワー素子を駆動させることができ、モータ性能を安定して発揮させることができる。
【0022】
例えば、前記低電圧補助回路が、第1分圧比と、当該第1分圧比よりも前記制御電圧が高くなる低電圧用の第2分圧比と、に切り替え可能な分圧比可変回路を有するように構成できる。
【0023】
そうすれば、既存の回路に少しの回路を追加するだけで低電圧補助回路を形成することができる。
【0024】
具体的には、前記分圧比可変回路は、前記分圧回路に加え、前記分圧経路における前記第1抵抗よりも高電位側の部分に直列に接続される第3抵抗と、前記分圧経路における前記第3抵抗及び前記第1抵抗が設けられた部分と並列に接続され、高電位側から順に直列に接続される第4抵抗及びスイッチ素子を有する副分圧経路と、を有し、前記スイッチ素子にNチャネルMOSFETが用いられ、前記分圧経路と前記副分圧経路との間に、前記第3抵抗と前記第1抵抗との間の電位を前記スイッチ素子に出力する第2の電位出力経路が設けられているようにすればよい。
【0025】
また、前記低電圧補助回路は、前記制御電圧が所定値以下に低下したか否かを比較する比較回路と、前記制御電圧が所定値以下に低下した場合に、前記比較回路からの指示に基づいて最小電位を前記上流側パワー素子に出力する最小電位出力回路と、を有するように構成することもできる。
【0026】
この場合にも、制御電圧が所定値以下に低下した場合、更に低い最小電位をゲート電極に出力することができるので、よりいっそう制御電圧を高く変化させることができる。
【0027】
例えば、前記比較回路は、比較結果に応じて電位出力端子から所定の電位を出力する比較器を有し、前記最小電位出力回路は、一端が前記分圧経路における前記第2抵抗よりも低電位側に接続され、他端が前記上流側パワー素子に接続される最小電位出力経路と、前記最小電位出力経路の途中に設けられるスイッチ素子と、を有し、前記スイッチ素子にNチャネルMOSFETが用いられ、前記比較回路と前記最小電位出力経路との間に、前記電位出力端子の電位を前記スイッチ素子に出力する第3の電位出力経路が設けられているようにすればよい。
【0028】
更には、上述した分圧比可変回路や比較回路、最小電位出力回路を組み合わせることもできる。
【0029】
そうすれば、制御電圧をよりきめ細かく制御できるので、低電圧領域でもよりいっそう安定して上流側パワー素子を駆動させることができ、モータ性能を安定して発揮させることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、低電圧領域でも安定して駆動させることができるPAM制御方式のモータを簡素な回路構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】パワー素子の駆動回路の一例を示す概略図である。
【図2】駆動電圧Vmと制御電圧Vgとの関係を示すグラフである。
【図3】第1実施形態のモータを示す概略図である。
【図4】駆動装置の回路構成を表した概略図である。
【図5】制御電圧形成回路を表した概略図である。
【図6】(a)、(b)は、制御電圧形成回路の動作を説明するための図である。
【図7】駆動電圧と制御電圧との関係を表した概略図である。
【図8】第2実施形態のモータにおける駆動装置の回路構成を表した概略図である。
【図9】最小電位出力回路の回路構成を表した概略図である。
【図10】比較回路の回路構成を表した概略図である。
【図11】変形例のモータにおける駆動装置の回路構成を表した概略図である。
【図12】変形例のモータにおける低電圧補助回路の要部を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0033】
<第1実施形態>
図3に、本発明を適用した本実施形態のモータ1の概略を示す。このモータ1は、例えば、送風機のファンなどに用いられる、PAM制御方式の3相ブラシレスDCモータである。モータ1には、ロータ2やモータ本体3、駆動装置4等が備えられている。
【0034】
ロータ2は、モータケース5にシャフトを介して回転自在に支持されており、このロータ2を回転駆動するモータ本体3は、モータケース5に収容されている。モータ本体3の構造は、従来のモータと同様である。例えば、インナーロータ型であれば、ロータ2は、外周に複数の磁石を有する円柱状に形成されている。そして、そのロータ2の外側に僅かな隙間を隔てて、複数のコイル6(図4参照)を有する円環状のステータが配置されている。
【0035】
コイル6は、例えばU,V,Wの3相のコイル6u,6v,6wからなり、これらコイル6u,6v,6wは、モータの仕様に応じてY結線やデルタ結線により結線されている。ちなみに本実施形態では、Y結線されている。モータ本体3には、電流入出配線7(電流入出経路)が設けられていて、これを通じて駆動装置4からこれらコイル6u,6v,6wに所定の順序で駆動電流が供給される。
【0036】
そうすることで、順次励磁される各コイル6u,6v,6wと永久磁石との作用でトルクが発生し、ロータ2が回転する。その回転速度を変えるために、PAM制御方式により、駆動電圧Vmが大小に変化される。
【0037】
駆動装置4は、例えば、IC等で構成された回路基板であり、モータケース5の内部に組み込まれている。駆動装置4は、電源等の供給を受けるために、外部の装置8に接続されていている。モータ本体3の近傍には、ロータ2の位置(回転角度)を検出するホール素子等の位置センサ9が配置されている。位置センサ9によって検出されるロータ2の位置データは駆動装置4へ出力される。
【0038】
図4に、駆動装置4の回路構成を表した概略図を示す。同図に示すように、駆動装置4には、電流供給配線11(電流供給経路)やパワー素子21,22、制御回路31(制御装置)、制御電圧形成回路41(制御電圧形成装置)が備えられている。そして、制御電圧形成回路41には、分圧回路47や低電圧補助回路50が備えられており、低電圧補助回路50には分圧比可変回路51が設けられている。
【0039】
電流供給配線11は、一端が駆動電源側に接続される高電位側配線12と、高電位側配線12の他端から分岐して並列に配置される3つの切替配線13a,13b,13c(切替経路)と、これら切替配線13a,13b,13cの低電位側に一端が接続される低電位側配線14とを有している。低電位側配線14の他端は、下部抵抗15を介して接地されており、モータ1の駆動時には、電流供給配線11に駆動電圧Vmが印加されるように構成されている。
【0040】
パワー素子21,22は、オンオフ制御可能なスイッチ素子であり、3つの切替配線13a,13b,13cのそれぞれに2つずつ直列に接続されている。これらパワー素子21,22には、高電位側に配置されるパワー素子21(上流側パワー素子21a,21b,21c)と、低電位側に配置されるパワー素子22(下流側パワー素子22a,22b,22c)とが含まれていて、上流側パワー素子21にはPチャネルMOSFETが用いられ、下流側パワー素子22にはNチャネルMOSFETが用いられている。
【0041】
電流入出配線7は3つの電流入出配線7a,7b,7cで構成されており、各切替配線13a,13b,13cにおける上流側パワー素子21と下流側パワー素子22との間の部分に、これら電流入出配線7a,7b,7cがそれぞれ接続されている。そして、上流側パワー素子21a,21b,21cのいずれか1つがオン制御され、かつ、下流側パワー素子22a,22b,22cのいずれか1つがオン制御されることで駆動電圧Vmが印加された1つの閉回路が形成される。
【0042】
すなわち、3つの電流入出配線7a,7b,7cのうち2つの電流入出配線7,7を通じ、所定の順序で所定のコイル6に所定の流れの駆動電流が供給される。例えば、上流側パワー素子21aがオンされ、下流側パワー素子22cがオンされた時には、切替配線13a、電流入出配線7a、コイル6w、コイル6v、電流入出配線7c、切替配線13cの順に駆動電流が流れる。
【0043】
制御回路31は、これらパワー素子21,22をオンオフ制御するために、所定のタイミングで通電信号(制御信号)を出力する。制御回路31には、位置検出入力部32やタイミング制御部33、通電信号形成部34、上アーム駆動回路部35、下アーム駆動回路部36等が備えられている。なお、制御回路31の駆動には、駆動電圧Vmよりも低い回路用電圧Vccが用いられている。
【0044】
位置検出入力部32は、位置センサ9が出力する位置データを入力し、その位置データを位置信号に変換してタイミング制御部33に出力する。タイミング制御部33は、その位置信号と、予め記憶されたタイミングチャートとに基づき、各パワー素子21,22をオンオフするオンオフ信号を生成し、そのオンオフ信号を通電信号形成部34に出力する。通電信号形成部34は、オンオフ信号に基づき、所定のタイミングで各パワー素子21,22をオンオフ動作させるための通電信号(具体的には回路用電圧Vccに基づく電位)を生成し、上アーム駆動回路部35及び下アーム駆動回路部36のそれぞれと協働してその通電信号を電流供給配線11側に出力する。
【0045】
下アーム駆動回路部36からは、通電信号が所定の下流側パワー素子22のゲート電極に出力される。それに対し、上アーム駆動回路部35からは、制御回路31と上流側パワー素子21との間に設けられた制御電圧形成回路41に通電信号が出力される。
【0046】
図5に、その制御電圧形成回路41の回路構成を示す。制御電圧形成回路41は、上流側パワー素子21を制御する制御電圧(第1制御電圧Vgともいう)を形成するために設けられている。制御電圧形成回路41は、上流側パワー素子21a,21b,21cごとに設けられていて、同図はその1つの構成を表している。制御電圧形成回路41の上流側には駆動電源が接続されていて、制御電圧形成回路41には駆動電圧Vmが印加される。制御電圧形成回路41では、その駆動電圧Vmを所定の分圧比で分圧することによって第1制御電圧Vgが形成される。
【0047】
特に、この制御電圧形成回路41には、駆動電圧Vmの低下に伴って第1制御電圧Vgが所定値以下に低下した場合に、第1制御電圧Vgを高く変化させる低電圧補助回路50が設けられている。本実施形態では、その低電圧補助回路50として、通常電圧用の第1分圧比と、これよりも第1制御電圧Vgが高くなる低電圧用の第2分圧比とに切り替え可能な分圧比可変回路51が設けられている。
【0048】
まず、制御電圧形成回路41には、高電位側から順に直列に接続される第1抵抗43と第2抵抗44とを有する分圧配線45(分圧経路)と、上流側パワー素子21に第1制御電圧Vgを印加するために、これら第1抵抗43と第2抵抗44との間の電位を上流側パワー素子21に出力する電位出力配線46(第1の電位出力経路)とを有する分圧回路47が設けられている。
【0049】
第2抵抗44よりも低電位側の部分は、スイッチ素子(第1スイッチ素子48ともいう)を介して接地されている。第1スイッチ素子48はNチャネルMOSFETであり、これのゲート電極は制御配線49を介して上アーム駆動回路部35と接続されており、そこから出力される通電信号によって第1スイッチ素子48はオンオフ制御される。
【0050】
分圧比可変回路51は、分圧回路47に加え、第3抵抗52や第4抵抗53、スイッチ素子(第2スイッチ素子54ともいう)などで構成されている。第3抵抗52は、分圧配線45における第1抵抗43よりも高電位側の部分に直列に接続されている。この第3抵抗52と第1抵抗43とが設けられた部分(分圧抵抗部ともいう)と並列に、副分圧配線55(副分圧経路)が接続されていて、そこに高電位側から順に第4抵抗53と第2スイッチ素子54とが直列に接続されている。
【0051】
本実施形態の第2スイッチ素子54もまたNチャネルMOSFETである。第2スイッチ素子54に制御電圧(第2制御電圧ともいう)を印加するために、分圧配線45における第3抵抗52と第1抵抗43との間の部分と第2スイッチ素子54のゲート電極とが電位出力配線56(第2の電位出力経路)で接続されていて、第3抵抗52と第1抵抗43との間の電位が第2スイッチ素子54のゲート電極に出力される。そうして、第2スイッチ素子54に第2制御電圧が印加されると、第2スイッチ素子54はオンになり、副分圧配線55は通電状態になる。
【0052】
第3抵抗52や第1抵抗43等の抵抗値は、第2スイッチ素子54や上流側パワー素子21のゲート電極の性能に応じて適宜設定される。
【0053】
また、分圧抵抗部や副分圧配線55と並列してツェナーダイオード57(過電圧防止装置)が設けられている。これにより、第2スイッチ素子54や上流側パワー素子21のゲート電極に所定値以上の電圧が印加されないように制限している。
【0054】
図6を参照しながら、このような構成の制御電圧形成回路41の動作について説明する。PAM制御によって通常の駆動電圧Vmの下でモータ1が駆動されている場合には、第2スイッチ素子54が安定したオン状態となるように、第3抵抗52等の抵抗値が設定されているため、副分圧配線55は通電状態になり、通常電圧用の第1分圧比を生じる同図の(a)に示す回路構成となる。
【0055】
駆動電圧Vmの低下に伴って第2スイッチ素子54がオフになった場合、副分圧配線55は遮断され、低電圧用の第2分圧比を生じる同図の(b)に示す回路構成となる。
【0056】
この場合、分圧抵抗部及び副分圧配線55の部分は、第1分圧比よりも総抵抗が増加するため、電圧降下量が大きくなり、第1抵抗43と第2抵抗44との間の電位は更に低下する。従って、第2分圧比では、第1分圧比の場合よりも上流側パワー素子21のゲート電極に印加される第1制御電圧Vgは高くなる。
【0057】
そして、再度、通常の駆動電圧Vmに戻れば、第2スイッチ素子54がオンになり、第1分圧比を生じる回路構成に切り替わる。
【0058】
図7に、これらの駆動電圧Vmと第1制御電圧Vgとの関係を示す。同図中、破線が通常電圧用の第1分圧比の場合、実線が低電圧用の第2分圧比の場合を表している。低電圧領域では、第2分圧比が適用されるため、駆動電圧Vmに対する第1制御電圧Vgの値は相対的に高くなる。従って、駆動電圧Vmを大きく低下させても、第1制御電圧Vgを高く保持できるので、上流側パワー素子21のオンオフ動作を安定させることができ、モータ性能も安定して発揮させることができる。
【0059】
<第2実施形態>
本実施形態では、低電圧補助回路50として、分圧比可変回路51に代えて比較回路61等を用い、低電圧領域になった場合に第1制御電圧Vgを最小電位に切り替えるようにした。なお、本実施形態も基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、同様の構成については同じ符号を用いてその説明は省略し、異なる点について詳しく説明する。
【0060】
図8に、本実施形態のモータ1における駆動装置4の回路構成を表した概略図を示す。同図に示すように、この駆動装置4の制御電圧形成回路41には、比較回路61や最小電位出力回路71が設けられている。この制御電圧形成回路41には、駆動電圧Vmだけでなく回路用電圧Vccも印加される。
【0061】
図9に、最小電位出力回路71の回路構成を示す。最小電位出力回路71は、上流側パワー素子21のオン状態が不安定になるおそれのある所定値(閾値ともいう)以下に第1制御電圧Vgが低下した場合に、0V(このモータ1で設定された最小電位)を上流側パワー素子21に出力するために設けられている。
【0062】
具体的には、最小電位出力回路71は、最小電位出力配線72(最小電位出力経路)と、スイッチ素子(第3スイッチ素子73ともいう)とを有している。
【0063】
最小電位出力配線72は、一端が分圧配線45における第2抵抗44よりも低電位側の接地と同電位になる部分に接続され、他端が分圧配線45における第1抵抗43と第2抵抗44との間の部分に接続されている。ちなみに、この部分は上流側パワー素子21のゲート電極に接続されている。第3スイッチ素子73は、この最小電位出力配線72の途中に設けられ、第2抵抗44と並列になっている。第3スイッチ素子73にはNチャネルMOSFETが用いられていて、そのゲート電極に制御電圧(第3制御電圧ともいう)を印加するために、電位出力配線74(第3の電位出力経路)の一端が接続されている。
【0064】
図10に、比較回路61の回路構成を示す。比較回路61は、第1制御電圧Vgが所定値以下に低下したか否かを比較するために設けられている。比較回路61は、第1分圧配線62や第2分圧配線63、コンパレータ64(比較器)で構成されている。
【0065】
第1分圧配線62には、高電位側から順に第5抵抗65と第6抵抗66とが直列に接続されている。また、第2分圧配線63には、高電位側から順に第7抵抗67と第8抵抗68とが直列に接続されている。第1分圧配線62には回路用電圧Vccが印加されている。第2分圧配線63には駆動電圧Vmが印加されている。なお、第5抵抗65等の抵抗値は、上流側パワー素子21のゲート電極やコンパレータ64の性能に応じて適宜設定される。
【0066】
そして、第1分圧配線62における第5抵抗65と第6抵抗66との間の部分がコンパレータ64の高電位側の端子64aに接続され、第2分圧配線63における第7抵抗67と第8抵抗68との間の部分がコンパレータ64の低電位側の端子64bに接続されている。コンパレータ64の出力端子64c(電位出力端子)には電位出力配線74の他端が接続されている。
【0067】
コンパレータ64は、高電位側の端子64aの電位と低電位側の端子64bの電位とを比較して、閾値以下に第1制御電圧Vgが低下したか否かを比較する。そして、第1制御電圧Vgが閾値以下に低下した場合には、コンパレータ64は、電位出力配線74を通じて第3スイッチ素子73のゲート電極に、第3制御電圧を印加するHレベルの電位を出力し、第3スイッチ素子73をオンにする。
【0068】
そうすると、最小電位出力配線72は通電状態となるため、上流側パワー素子21のゲート電極に0Vの電位が出力され、第1制御電圧Vgは更にいっそう高くなる。従って、このモータ1でも、駆動電圧Vmが大きく低下した場合に、上流側パワー素子21のオンオフ動作を安定させることができ、モータ性能も安定して発揮させることができる。
【0069】
一方、第1制御電圧Vgが閾値を上回っている場合には、コンパレータ64は、電位出力配線74を通じて第3スイッチ素子73のゲート電極にLレベルの電位(例えば、0V)を出力し、第3スイッチ素子73をオフにする。従って、この場合には、最小電位出力配線72は遮断されるため、上流側パワー素子21は通常の分圧回路47の下で生成される第1制御電圧Vgが印加される。
【0070】
(変形例)
本変形例のモータ1では、第1実施形態のモータ1の分圧比可変回路51と、第2実施形態のモータ1の比較回路61及び最小電位出力回路71とを組み合わせることにより、低電圧補助回路50が構成されている。
【0071】
図11に、本変形例のモータ1における駆動装置4の回路構成を示す。このモータ1における分圧比可変回路51等の各構成は上述した各実施形態と同様であるため、同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0072】
図12に、本変形例の低電圧補助回路50において、比較回路61を除いた部分を示す(比較回路61は第2実施形態と同様)。このモータ1の場合、低電圧領域における第1制御電圧Vgの切替を2段階で行うことができる。
【0073】
例えば、第1基準電圧と第1基準電圧よりも低圧の第2基準電圧とを設定し、第1基準電圧に基づいて分圧比可変回路51を制御し、第2基準電圧に基づいて比較回路61等を制御する。そうすることで、低電圧領域における上流側パワー素子21のオンオフ動作を更にきめ細かく制御することができるので、上流側パワー素子21のオンオフ動作をよりいっそう安定させることができ、モータ1性能もよりいっそう安定して発揮させることができるようになる。
【0074】
なお、本発明のモータは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、モータ1は、アウターロータ型であってもよい。スイッチ素子(第2スイッチ54)は、MOSFETに限らず、その他のトランジスタであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 モータ
2 ロータ
3 モータ本体
4 駆動装置
6 コイル
7 電流入出配線(電流入出経路)
11 電源供給配線(電源供給経路)
13a,13b,13c 切替配線(切替経路)
21,22 パワー素子
21a,21b,21c 上流側パワー素子
22a,22b,22c 下流側パワー素子
31 制御回路(制御装置)
41 制御電圧形成回路(制御電圧形成装置)
43 第1抵抗
44 第2抵抗
45 分圧配線(分圧経路)
46 電位出力配線(第1の電位出力経路)
47 分圧回路
48 スイッチ素子
50 低電圧補助回路
51 分圧比可変回路
52 第3抵抗
53 第4抵抗
54 スイッチ素子
55 副分圧配線(副分圧経路)
56 電位出力配線(第2の電位出力経路)
61 比較回路
62 第1分圧配線
63 第2分圧配線
64 コンパレータ(比較器)
64c 出力端子(電位出力端子)
71 最小電位出力回路
72 最小電位出力配線(最小電位出力経路)
73 スイッチ素子
74 電位出力配線(第3の電位出力経路)
Vm 駆動電圧
Vg 第1制御電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたロータと、
複数のコイルと、これらコイルに接続される3つ以上の電流入出経路とを有するモータ本体と、
前記電流入出経路の少なくともいずれか2つを通じて前記コイルに駆動電流を供給し、前記ロータを回転駆動する駆動装置と、
を備え、
駆動電圧が変化するPAM制御方式のモータであって、
前記駆動装置は、
並列に配置される複数の切替経路を含み、前記モータ本体に前記駆動電流を供給する電流供給経路と、
前記切替経路の高電位側にそれぞれ接続される上流側パワー素子及び前記切替経路の低電位側にそれぞれ配置される下流側パワー素子を含み、前記電流入出経路を切り替える複数のパワー素子と、
前記上流側パワー素子及び前記下流側パワー素子のそれぞれをオンオフ制御するために、所定のタイミングで制御信号を出力する制御装置と、
前記制御装置と前記上流側パワー素子との間に設けられ、前記上流側パワー素子の制御電圧を前記駆動電圧から形成する制御電圧形成装置と、
を有し、
前記制御電圧形成装置は、
前記駆動電圧が印加され、高電位側から順に直列に接続される第1抵抗及び第2抵抗を有する分圧経路と、
前記第1抵抗と前記第2抵抗との間の電位を前記上流側パワー素子に出力する第1の電位出力経路と、
を有する分圧回路を含み、
前記上流側パワー素子にPチャネルMOSFETが用いられ、
前記制御電圧形成装置に、前記制御電圧が所定値以下に低下した場合に、当該制御電圧を高く変化させる低電圧補助回路が設けられているモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記低電圧補助回路が、
第1分圧比と、当該第1分圧比よりも前記制御電圧が高くなる低電圧用の第2分圧比と、に切り替え可能な分圧比可変回路を有しているモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記分圧比可変回路は、前記分圧回路に加え、
前記分圧経路における前記第1抵抗よりも高電位側の部分に直列に接続される第3抵抗と、
前記分圧経路における前記第3抵抗及び前記第1抵抗が設けられた部分と並列に接続され、高電位側から順に直列に接続される第4抵抗及びスイッチ素子を有する副分圧経路と、
を有し、
前記スイッチ素子にNチャネルMOSFETが用いられ、
前記分圧経路と前記副分圧経路との間に、前記第3抵抗と前記第1抵抗との間の電位を前記スイッチ素子に出力する第2の電位出力経路が設けられているモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記低電圧補助回路は、
前記制御電圧が所定値以下に低下したか否かを比較する比較回路と、
前記制御電圧が所定値以下に低下した場合に、前記比較回路からの指示に基づいて最小電位を前記上流側パワー素子に出力する最小電位出力回路と、
を有しているモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のモータにおいて、
前記比較回路は、比較結果に応じて電位出力端子から所定の電位を出力する比較器を有し、
前記最小電位出力回路は、
一端が前記分圧経路における前記第2抵抗よりも低電位側に接続され、他端が前記上流側パワー素子に接続される最小電位出力経路と、
前記最小電位出力経路の途中に設けられるスイッチ素子と、
を有し、
前記スイッチ素子にNチャネルMOSFETが用いられ、
前記比較回路と前記最小電位出力経路との間に、前記電位出力端子の電位を前記スイッチ素子に出力する第3の電位出力経路が設けられているモータ。
【請求項6】
請求項2に記載のモータにおいて、
更に、請求項4に記載の前記比較回路及び前記最小電位出力回路を有しているモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−70540(P2012−70540A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213391(P2010−213391)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(398061810)日本電産テクノモータホールディングス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】