説明

モールドシートの製造方法及びモールドシート

【課題】連続的に生産できるモールドシートの製造方法を提供する。
【解決手段】基材が巻き取られた供給ロール及びエンボスロールを準備する(S1)。供給ロールから基材を巻きだし、基材をエンボスロールに搬送する。そして、基材とエンボスロールとの間に、シリコーン組成物からなる未硬化層を形成し、未硬化層を基材とエンボスロールとにより挟む(S2)。エンボスロールを加熱しながら回転し、未硬化層の表面に複数のエンボスパターンを転写しながら未硬化層を熱硬化する(S3)。熱硬化された未硬化層が形成された基材を、エンボスロールから剥がした後、未硬化層をさらに熱硬化してシリコーン層を形成する(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドシートの製造方法及びモールドシートに関し、さらに詳しくは、複数のエンボスパターンを有するモールドシートの製造方法及びモールドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
微細パターンの転写技術として、ソフトリソグラフィが提案されている。ソフトリソグラフィでは、表面にエンボスパターンを有する樹脂モールド(スタンプともいう)を用いてパターン転写を行う。より具体的には、樹脂モールドのエンボスパターンにインクを塗布する。インクが塗布されたエンボスパターンを基板に接触させてパターン転写を行う。
【0003】
特開2009−292150号公報(特許文献1)は、有機モールドの製造方法が開示される。具体的には、平板状のマスタモールドのパターン面上に樹脂組成物がコーティングされる。次に、活性エネルギ線を樹脂組成物に照射して樹脂組成物を硬化し、有機モールドを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―292150号公報
【特許文献2】特開2009−51085号公報
【特許文献3】特開2009−205876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される有機モールドの製造方法は、平板状のマスタモールドを用いたバッチ処理であり、連続的にモールドを製造できない。
【0006】
本発明の目的は、連続的に生産できるモールドシートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明によるモールドシートの製造方法は、準備する工程と、挟む工程と、熱硬化する工程と、形成する工程とを備える。準備する工程では、可撓性を有する基材と、エンボスロールとを準備する。挟む工程では、基材とエンボスロールとの間に、シリコーン組成物からなる未硬化層を形成し、未硬化層を基材とエンボスロールとにより挟む。熱硬化する工程は、エンボスロールを加熱しながら回転し、未硬化層の表面に複数のエンボスパターンを転写しながら未硬化層を熱硬化する。形成する工程は、熱硬化された未硬化層が形成された基材を、エンボスロールから剥がした後、熱処理により未硬化層をさらに熱硬化してシリコーン層を形成する。
【0008】
本発明によるモールドシートの製造方法では、エンボスロールを用いてモールドシートを製造する。そのため、連続的にモールドシートを製造できる。さらに、本発明によるモールドシートの製造方法では、未硬化層に対して2段階以上の熱処理を行う。より具体的には、未硬化層がエンボスロールと基材とに挟まれているとき、未硬化層は熱硬化する。そして、エンボスロールから離れた後、未硬化層は熱処理によりさらに熱硬化する。以上の工程により、モールドシートのエンボスパターンの寸法精度が向上する。
【0009】
本発明によるモールドシートは、基材と、シリコーン層とを備える。基材は、可撓性及び耐熱性を有する。シリコーン層は、基材上に形成される。シリコーン層は、付加反応型であり、複数のエンボスパターンが形成された主面を有する。
【0010】
本発明によれば、エンボスパターンを有する層は、付加反応型のシリコーン層である。付加反応型のシリコーン層の硬化するときの収縮率は、紫外線硬化型樹脂が硬化するときの収縮率よりも小さい。したがって、紫外線硬化樹脂と比較して、高い寸法精度のエンボスパターンが得られやすい。
【0011】
さらに、基材は可撓性及び耐熱性を有する。そのため、上述の製造方法で製造される場合、基材は熱に耐えることができ、さらにロールの表面に沿って湾曲することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態によるモールドシートの断面図である。
【図2】図1に示すモールドシートの製造装置である。
【図3】図2中のエンボスロールの斜視図である。
【図4】図1に示すモールドシートの製造方法を示すフロー図である。
【図5】図3に示した熱硬化工程におけるエンボスロールの表面温度と熱硬化工程に要する時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[モールドシートの構成]
本実施の形態によるモールドシートは、たとえば、ソフトリソグラフィに用いられる。図1は、モールドシート1の断面図である。図1を参照して、モールドシート1は、シート状又はフィルム状である。モールドシート1は、基材10と、シリコーン層11とを備える。モールドシート1はさらに、接着層12とを備える。
【0015】
基材10は、可撓性及び耐熱性を有する樹脂からなる。好ましくは、基材10のIEC(International Electrotechnical Commission)216に基づく温度指数(Thermal Index:TI)は、120℃を超える。ここでいう温度指数は、2万時間その温度下に置かれたとき、引張強度が半減する温度である。基材10の樹脂はたとえば、ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリイミド(PI),ポリエーテルイミド(PEI),ポリエーテルサルフォン(PES),ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリカーボネート(PC),ポリアミドイミド(PAI),PEEK(ポリエーテルケトン)及びシクロオレフィン樹脂(COP)などである。
【0016】
シリコーン層11は、接着層12を介して基材10上に形成される。シリコーン層11は、表面111を有する。表面111には、エンボスパターンが形成される。エンボスパターンは、複数の凸部111Aを有する。凸部111Aの高さL1は、10nm〜500μmである。高さL1は以下の方法により求められる。任意の20個の凸部111Aの高さを測定し、測定された20個の凸部111Aの高さの平均を、エンボスパターンの高さL1と定義する。
【0017】
シリコーン層11は、付加反応型である。つまり、シリコーン層11は、シリコーン組成物が熱により硬化して形成される。付加反応型のシリコーン組成物は周知の組成物である。付加反応型のシリコーン組成物はたとえば、アルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンと、ヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン(ポリオルガノハイドロジェンシロキサン)と白金触媒とを含有する。ポリオルガノシロキサンはたとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0018】
シリコーン層11は、有機高分子との親和性が低いため、優れた離型性を有する。そのため、シリコーン層11は、モールドとしての使用に適する。シリコーン層11はさらに、耐熱性や自己粘着性、柔軟性に優れる。
【0019】
接着層12は、基材10とシリコーン層11との間に配置される。接着層12の下面は基材10と接触し、上面はシリコーン層11と接触する。接着層12は、シリコーン層11の基材10に対する接着性を向上する。
【0020】
接着層12はたとえば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、加水分解基と有機官能基とを有し、基材10シリコーン層11とを強固に結合する。接着層12の厚さL2は、1nm〜1000nmであり、好ましくは50〜500nmである。
【0021】
以上の構成を有するモールドシート1は、種々の分野に利用可能である。たとえば、モールドシート1は、ソフトリソグラフィに利用される。上述のとおり、シリコーン層11は優れた離型性を有する。シリコーン層11のエンボスパターンにインクを塗布し、エンボスパターンを基板に接触すれば、接触した部分のインクはシリコーン層11から容易に離れ、基板に転写される。したがって、モールドシート1は、ソフトリソグラフィでの利用に適する。
【0022】
モールドシート1はさらに、マイクロレンズアレイやプリズムシート、レンチキュラレンズシートといった種々の光学シートを製造するための型としても利用可能である。
【0023】
図1に示すモールドシート1は、接着層12を備える。しかしながら、本実施の形態によるモールドシート1は接着層12を備えなくてもよい。
【0024】
[モールドシートの製造方法]
図2は、本実施の形態によるモールドシート1の製造方法に用いられる製造装置100の構成図である。図2を参照して、モールドシート1は、製造装置100を用いたロールツーロール法により製造される。製造装置100は、供給ロール101と、エンボスロール102と、塗布装置103と、巻き取りロール105とを備える。
【0025】
供給ロール101には、基材10が巻かれている。塗布装置103は、供給ロール101とエンボスロール102との間に配置される。塗布装置103は、未硬化のシリコーン組成物を基材10とエンボスロール102との間に塗布して、基材10とエンボスロール102との間に未硬化層を形成する。未硬化層が熱硬化するとシリコーン層11になる。
【0026】
エンボスロール102は、供給ロール101と巻き取りロール105との間に配置される。図3は、エンボスロール102の斜視図である。図3を参照して、エンボスロール102の表面には、モールドシート1のエンボスパターンに対応したエンボスパターン102Aが形成される。モールドシート1を製造するとき、エンボスロール102の表面は100℃以上に加熱される。エンボスロール102は、未硬化層にエンボスパターンを転写し、かつ、未硬化層を熱硬化する(第1熱硬化工程)。
【0027】
製造装置100はさらに、熱キュア装置104を備える。熱キュア装置104は、エンボスロール102と巻き取りロール105との間に配置される。熱キュア装置104は、エンボスロール102から離れた未硬化層を熱処理し、未硬化層をさらに熱硬化する(第2熱硬化工程)。以上の工程により、モールドシート1が製造される。巻き取りロール105は、製造されたモールドシート1を巻き取る。
【0028】
上述のとおり、本実施の形態によるモールドシート1の製造方法では、エンボスロール102を用いたロールツーロール法により、モールドシート1が連続的に製造される。そのため、モールドシート1の生産性を向上できる。
【0029】
さらに、基材10上に形成された未硬化層は、エンボスロール102で熱硬化した後、熱キュア装置104でさらに熱硬化する。このように、未硬化層を2段階で熱硬化することにより、モールドシート1の生産性がさらに向上する。さらに、シリコーン層11のエンボスパターンの寸法精度を向上できる。
【0030】
図2に示す製造装置100を用いたモールドシート1の製造方法を詳述する。図4は、モールドシート1の製造方法のフロー図である。図4を参照して、初めに、供給ロール101及びエンボスロール102を準備する(S1)。上述のとおり、供給ロール101には、基材10が巻かれている。供給ロール101に巻かれた基材10上には接着層12が形成されていてもよい。基材10上に接着層12を形成する方法は以下のとおりである。供給ロール101に巻き取られる前の基材10上に、ダイコータ等の塗布装置により、塗布液を塗布し、接着層12を形成する。接着層12が形成された後、基材10は供給ロール101に巻き取られる。
【0031】
基材10は、供給ロール101及び巻き取りロール105に巻き取り可能な程度の可撓性を少なくとも有する。そのため、基材10は供給ロール101に巻き取り可能である。
【0032】
準備された供給ロール101及びエンボスロール102を製造装置100内に配置する。そして、供給ロール10から基材10を送り出す。図2に示すとおり、供給ロール101とエンボスロール102との間には、複数の搬送ロール200が配置される。供給ロール101から送り出された基材10は、複数の搬送ロール200を介して、エンボスロール102方向に搬送される。エンボスロール102の手前には、ニップロール250が配置される。基材10は、エンボスロール102とニップロール250との間を通る。
【0033】
塗布装置103は、ニップロール250とエンボスロール102との間に配置された基材10の表面と、エンボスロール102の表面との間に、未硬化のシリコーン組成物103Aを塗布する(S2)。塗布されたシリコーン組成物103Aは、基材10とエンボスロール102との間に挟まれ、一定の厚さを有する未硬化層を形成する。
【0034】
エンボスロール102は、矢印ARW1の方向に回転する。基材10上に形成された未硬化層は、基材10とエンボスロール102とに挟まれながら、エンボスロール102の回転に伴って、巻き取りロール103が配置された方向に搬送される。このとき、エンボスロール102のエンボスパターン102Aにより、未硬化層の表面には、エンボスパターンが転写される。
【0035】
上述のとおり、エンボスロール102は、加熱されながら回転する。そのため、エンボスロール102は、未硬化層にエンボスパターンを転写し、かつ、未硬化層を熱硬化する(S3:第1熱硬化工程)。
【0036】
上述のとおり、エンボスロール102の表面温度は100℃以上である。図5に、エンボスロール102の表面温度と、シリコーン組成物が熱硬化してシリコーン層11を形成するまでに必要な時間とを示す。付加反応型のシリコーン組成物は、紫外線硬化型のシリコーン組成物と比較して、硬化が完了するまでの時間が長い。図5を参照して、たとえば、エンボスロール102の表面温度が100℃以上である場合、シリコーン組成物が硬化してシリコーン層11を形成するのに必要な時間は5分以上である。エンボスロール102の表面温度が120℃以上である場合、熱硬化に必要な時間は、1分以上である。エンボスロール102の表面温度が150℃以上である場合、熱硬化に必要な時間は15秒以上である。
【0037】
したがって、エンボスロール102の好ましい表面温度は120℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。
【0038】
第1熱硬化工程(S3)では、基材10は、未硬化層を介してエンボスロール102から熱を受ける。したがって、基材10には高い耐熱性が求められる。そのため、基材10は耐熱性を有する。好ましくは、上述のとおり、基材10に含有される樹脂のIEC(International Electrotechnical Commission)216に基づく温度指数(Thermal Index:TI)は、120℃を超える。
第1熱硬化工程では、エンボスロール102の表面に接触している未硬化層の表面から
徐々に熱硬化する。上述のとおり、未硬化層が熱硬化してシリコーン層11になるまでには時間がかかる。エンボスロール102に未硬化層が接触している間にシリコーン層11を完成させる場合、製造時間がかかり、生産性が低下する。
そこで、本実施の形態では、未硬化層の硬化が完了する前に、未硬化層が形成された基材10をエンボスロール102から剥がす。以降、硬化が完了していない未硬化層が形成された基材10を「中間シート」という。中間シート上の未硬化層の少なくとも表面部分は、硬化している。そのため、未硬化層は形状を保つことができる。
【0039】
製造装置100は、搬送ロール200により中間シートを搬送し、熱キュア装置104に装入する。熱キュア装置104は、中間シートを熱処理する。具体的には、中間シートを100℃〜180℃で加熱する。これにより、未硬化層はさらに熱硬化する(S4:第2熱硬化工程)。中間シートの未硬化層は、熱キュア装置104内で熱硬化してシリコーン層11になる。
【0040】
以上のとおり、エンボスロール102の後工程に熱キュア装置104での第2熱硬化工程を設けることにより、基材10上に形成された未硬化層は段階的に熱硬化する。本実施の形態では、エンボスロール102に未硬化層が接触している間にシリコーン層11を完成する必要がない。そのため、第1熱硬化工程(S3)で生産性が低下するのを抑制できる。
【0041】
エンボスロール102の手前に熱キュア装置を設け、エンボスロール102に接触する前の未硬化層をある程度熱硬化する方法も考えられる。しかしながら、この方法を採用した場合、表面が硬化した未硬化層がエンボスロール102の表面と接触する。そのため、未硬化層がエンボスロール102のエンボスパターン102A内に充填されにくくなり、パターン転写の精度が落ちる。その結果、シリコーン層11のエンボスパターンの寸法精度が低下する。さらに、未硬化層のうち、エンボスロール102のエンボスパターン102A内に充填された部分の気泡は抜けにくいため、シリコーン層11内に気泡が残りやすくなる。また、エンボスロール102に接触している間に未硬化層がシリコーン層11になりモールドシート1が完成するため、モールドシート1がエンボスロール102から剥がれにくい。
【0042】
これに対して、本実施の形態では、未硬化層がエンボスロール102に接触する前に熱キュア装置104による熱硬化を行わず、未硬化層がエンボスロール102を離れた後に熱キュア装置104による熱硬化を行う。この場合、エンボスロール102に接触した未硬化層は熱硬化していないため、未硬化層を構成するシリコーン組成物がエンボスロール102のエンボスパターン102A内に充填しやすい。さらに、シリコーン組成物内の気泡も抜けやすい。そのため、パターン転写の精度が向上し、シリコーン層11のエンボスパターンの寸法精度が向上する。
【0043】
さらに、エンボスロール102から剥がされるとき、未硬化層は完全には硬化していない。そのため、未硬化層を含む中間シートは、エンボスロール102から容易に剥がれやすい。
【0044】
熱キュア装置104内で、未硬化層が熱硬化してシリコーン層11になり、モールドシート1が完成する。製造されたモールドシート1は熱キュア装置104を出て、巻き取りロール105に巻き取られる(S5)。巻き取られたモールドシート1は、ステップS4により熱硬化されているので、エンボスパターンが崩れることを防ぐことができる。
【0045】
以上のとおり、モールドシート1は、製造装置100を用いてロールツーロール法により連続的に製造可能である。そのため、生産性が向上する。さらに、エンボスロール102と、後工程の熱キュア装置104とにより、未硬化層を段階的に熱硬化してシリコーン層11を完成する。そのため、エンボスロール102での転写精度が向上し、高い寸法精度のエンボスパターンが得られる。さらに、エンボスロール102でモールドシート1を完成せず、エンボスロール102では中間シートを製造する。中間シートの未硬化層は熱硬化が完了していないため、中間シートをエンボスロール102から容易に剥がすことができ、エンボスパターンに欠陥が生じるのを抑制できる。
【0046】
本実施の形態では、付加反応型のシリコーン組成物を利用してシリコーン層11を形成する。紫外線硬化型のシリコーン組成物は、硬化したとき、10%程度収縮する。したがって、高い寸法精度のエンボスパターンが得られにくい。これに対して、付加反応型のシリコーン組成物が熱硬化した場合の収縮率は1%未満である。したがって、本実施の形態では、高い寸法精度のエンボスパターンが得られる。
【0047】
[他の実施の形態]
上述のモールドシート1の製造方法では、モールドシート1を巻き取りロール105に巻き取り(S5)、製造が終了する。しかしながら、中間シートの熱キュア装置104での滞在時間を短くし、中間シートを巻き取りロール105に巻き取った後、巻き取りロール105をさらに加熱して、シリコーン層11を形成してもよい。たとえば、中間シートを巻き取った巻き取りロール105を、オフラインに設置されたバッチ炉に装入する。そして、巻き取りロール105をバッチ炉内で所定時間加熱し、シリコーン層11を形成してもよい。
【実施例】
【0048】
上述の製造装置を用いたロールツーロール法により、モールドシート1を試作した。基材10としてPENフィルム(帝人株式会社製 商品名Q51)を用いた。ダイコータを用いて、PENフィルム上に塗布液を塗布して接着層を形成した。塗布液として、東レダウコーニング株式会社製の商品名「1200OS」を用いた。接着層が形成された後、PENフィルムを供給ロールに巻き取った。
【0049】
続いて、供給ロールからPENフィルムを送り出し、ダイコータを用いて、PENフィルム上に未硬化層を形成した。未硬化層を構成するシリコーン組成物は、PDMSプレポリマーとした。PDMSプレポリマーは、87重量%のシリコーンエラストマ(商品名 Sylgard 184:東レダウコーニング株式会社製)と、8.7重量%の触媒と、ジメチルポリシロキサン(商品名 SH 200 FRUID 20 CS)4.3重量%を含有した。エンボスロールの表面温度は150℃とし、熱キュア装置104の炉温は150℃とした。以上の製造方法により、未硬化層を段階的に熱硬化し、モールドシート1を製造できた。
【符号の説明】
【0050】
1 モールドシート
10 基材
11 シリコーン層
111 表面
111A 凸部
12 接着層
102 エンボスロール
102A エンボスパターン
105 巻き取りロール
L1 凸部の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材と、エンボスロールとを準備する工程と、
前記基材と前記エンボスロールとの間に、シリコーン組成物からなる未硬化層を形成し、前記未硬化層を前記基材と前記エンボスロールとにより挟む工程と、
前記エンボスロールを加熱しながら回転し、前記未硬化層の表面に複数のエンボスパターンを転写しながら前記未硬化層を熱硬化する工程と、
熱硬化された未硬化層が形成された前記基材を、前記エンボスロールから剥がした後、熱処理により前記未硬化層をさらに熱硬化してシリコーン層を形成する工程とを備える、モールドシートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のモールドシートの製造方法であって、
前記基材は、IEC216に基づく温度指数が120℃を超える樹脂からなり、
前記エンボスロールの表面温度は、100℃よりも高い、モールドシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモールドシートの製造方法であってさらに、
前記シリコーン層及び前記基材を備える前記モールドシートを巻取ロールに巻き取る工程を備える、モールドシートの製造方法。
【請求項4】
耐熱性及び可撓性を有する基材と、
前記基材上に形成され、複数のエンボスパターンが形成された表面を有する付加反応型のシリコーン層とを備える、モールドシート。
【請求項5】
請求項4に記載のモールドシートであって、
前記基材は、IEC216に基づく温度指数が120℃を超える樹脂からなる、モールドシート。
【請求項6】
請求項4に記載のモールドシートであって、
前記エンボスパターンの高さは、10nm〜500μmであるモールドシート。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のモールドシートであって、
前記シリコーン層は、加熱されたエンボスロールに、シリコーン組成物からなる未硬化層を接触して熱硬化し、前記エンボスロールから離れた前記未硬化層をさらに熱硬化することにより形成される、モールドシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−235517(P2011−235517A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108159(P2010−108159)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】