説明

モールド金型及び樹脂モールド装置

【課題】複数ポットに装填された樹脂を効率よく加熱し、金型の剛性を低下することなく、メンテナンス作業を効率よく行える樹脂モールド金型を提供する。
【解決手段】下型ベース21に設けられたヒータ21aは、平面視でセンターインサート27のポット列の間に配置されており、下型ベース21のヒータ位置の上部に設けられたサポートピラー23から等間隔で配置されたポット24を含む下型チェイス22a,22bに熱伝導される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド金型及びこれを用いた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトランスファー成形による樹脂モールド装置に用いられるモールド金型は、下型チェイスに組み付けられたセンターインサートの中央部にポットが1列に配置されており、その両側に組み付けられたキャビティ凹部が形成されたキャビティインサートに対して各ポットから金型ランナゲートを通じて溶融した樹脂が圧送りされるようになっていた。
【0003】
例えばインバータ等のような車載用の大型のパッケージは、樹脂モールドするパッケージ体積が大きく、1個のポットに複数個の樹脂タブレットを装填して成形する必要がある。
しかしながら、樹脂量が増えると溶融時間が長くなり生産性向上が困難であったり、樹脂タブレットの均一な溶融が困難になり、十分に溶融する前にキャビティへ充填されると、フィラー(シリカなど)を含有しているため、金型が摩耗したりボイドが発生したりして成形品質が低下するおそれがある。
【0004】
そこで、複数ポットの樹脂をキャビティに充填することで樹脂量の増加を図り、ポットの大きさを小さくすることでキャビティの個数を増やして生産性の向上を図ったモールド金型が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−90371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数ポットから同一のキャビティに樹脂を充填する場合、ポットの周囲にヒータを設けることができず、特に平面視して直列配置や千鳥配置などの場合には、ポット内の樹脂を効率良く加熱することができない。また、ポットを設けた部分は他のクランプ力が低下するため、金型の平行度(剛性)が低下して樹脂漏れしやすくなる。更には、一つの金型に複数ポットと複数キャビティを可能な限り増やすとすれば、金型面積や重量が増大し、金型交換などのメンテナンス作業の際の取り扱いが困難になる。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、複数ポットに装填された樹脂を効率よく加熱し、金型の剛性を低下することなく、メンテナンス作業を効率よく行える樹脂モールド金型及びこれを備えて成形品質を向上させた樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
上型ベースと、前記上型ベースに支持された上型チェイスと、下型ベースと、前記下型ベースに支持された下型チェイスを備えたモールド金型であって、前記下型チェイスには、複数のポットから同一のキャビティ凹部に接続する金型ランナゲートが形成されたポット列が複数列形成されたセンターインサートと、前記キャビティ凹部が形成されたキャビティインサートとが、前記センターインサートの両側に金型ランナゲートが接続するように組み付けられており、前記下型ベースに設けられたヒータは、平面視でセンターインサートのポット列の間に配置されており、下型ベースのヒータ位置の上部に設けられたサポートピラーから等間隔で配置されたポットを含む下型チェイスに熱伝導されることを特徴とする。
上記構成によれば、複数のポットから共通の金型ランナゲートを通じて同一のキャビティ凹部に樹脂を充填できるので、小径の樹脂タブレットをポット内で溶融させて短時間で充填することができ、生産性を向上させることができるうえに、金型面の摩耗も軽減できる。
また、センターインサートに複数のポットが形成されていても下型ベースのヒータ上部に設けられたサポートピラーを通じて等間隔で配置されたポットに効率よく熱伝導してポット内の樹脂を短時間で効率よく溶融させることができる。また、サポートピラーは下型ベースにセンターインサートを支持するので剛性を維持して樹脂漏れが発生することもない。
【0009】
前記下型ベースに支持された下型チェイスは手前側と奥側とで分離されて組み付けられていることを特徴とする。
これによれば、下型チェイスが手前側と奥側に分離可能に組み付けられているので、メンテナンス作業を行いやすくなる。
【0010】
前記下型ベースには、前記キャビティインサートに形成された金型ランナゲートの両側を含むキャビティ凹部の周囲及び中央部にサポートピラーが設けられていることを特徴とする。
これにより、金型ランナからキャビティ凹部の周囲に至る金型面がサポートピラーによって支持されているので、キャビティ凹部の面積が広がっても十分なクランプ圧が作用するため樹脂漏れが生ずることはなくなる。
【0011】
前記奥側の下型チェイスと手前側の下型チェイスとは凹凸嵌合により下型ベースに組み付けられていることを特徴とする。
これによれば、金型メンテナンスにより手前側の下型チェイスと奥側の下型チェイスを下型ベースより外した後に再度組み付け順が入れ替わるといずれかの凸部により手前側と奥側の下型チェイス間若しくはエンドブロックとの間に隙間が発生して組み付けることができなくなるため、誤った組み付けを防ぐことができる。
【0012】
また、樹脂モールド装置においては、上述したいずれかのモールド金型を備えたプレス部を備えたことを特徴とする。
これによれば、比較的パッケージ部の大型の製品を効率よくしかも成形品質を維持したまま樹脂モールドすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記モールド金型及び樹脂モールド装置を用いれば、複数ポットに装填された樹脂を効率よく加熱し、金型の剛性を低下することなく、メンテナンス作業を効率よく行える樹脂モールド金型及びこれを備えて成形品質を向上させた樹脂モールド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】樹脂モールド装置の全体構成例を示す平面レイアウト図である。
【図2】下型の平面図、正面図、左側面図である。
【図3】奥側下型チェイスの平面透視図及び左側面図、手前側下型チェイスの平面図及び左側面図である。
【図4】上型、下型及びマルチプランジャユニットの側面図である。
【図5】上型の平面図、正面図、左側面図である。
【図6】リリースフィルムを用いた下型及び上型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るモールド金型及びこれを用いた樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、上型及び下型にキャビティ凹部が形成され下型側にポットが形成されるモールド金型を用いたトランスファー成形装置を用いて説明する。また、トランスファー成形装置では、下型を可動型とし上型を固定型として説明する。
【0016】
(樹脂モールド装置の全体構成)
図1は、本発明に係る樹脂モールド装置の一実施形態の各部の平面配置を示す。本実施形態の樹脂モールド装置は、被成形品を供給する被成形品供給部A、被成形品を樹脂モールドするプレス部B、樹脂モールド後の成形品を収納する成形品収納部C及び被成形品を搬送するローダー及び成形品を搬送するアンローダーを備えた搬送機構Dを備える。被成形品供給部A、プレス部B、成形品収納部Cはユニット化されており、被成形品供給部Aと成形品収納部Cとの間に設けられるプレス部Bは、単数であっても複数であってもよく、適宜増減することができるようになっている。また、プレスBにはプリヒート部Eが設けられている。また、被成形品は、一例としてインバータ等のような車載用の大型パッケージを想定している。以下各部の構成について具体的に説明する。
【0017】
(被成形品供給部A)
被成形品供給部Aは、被成形品1をスリット内に収納した供給マガジン2と、供給マガジン2から2個ずつを1組で切り出された被成形品1を送りだす送り出し部2aと、送り出し部2aより被成形品1を一回のモールド分だけ一旦ストックするバッファ部3と、バッファ部3にストックされた被成形品1を整列する整列部4を備えている。バッファ部3から整列部4に移載された被成形品1はプレヒートされていても良い。
【0018】
また、被成形品供給部Aには、樹脂供給部Fが設けられている。具体的には、樹脂タブレットを保管するホッパー5と、ホッパー5から供給された樹脂タブレットを整列して送り出すパーツフィーダー6が一対設けられている。パーツフィーダー6は、例えば振動源の振動方向が逆向きに配置され、トレイ内で樹脂タブレットが循環するタイプのものが併設されている。各パーツフィーダー6より整列して送り出された樹脂タブレットはピッチ変換されて回転テーブル7に移載され、回転テーブル7からポットピッチに合わせてタブレット保持穴が形成されたホルダー8に装填されて受け渡し位置へ移動して後述するローダーに受け渡される。
【0019】
(プレス部B)
プレス部Bは、被成形品1をクランプして樹脂モールドするモールド金型9が装着されたプレス装置10が設けられている。プレス装置10は、下型を型開閉方向に押動するプレス機構、モールド金型のポット内で溶融した樹脂をポットからキャビティに充填するトランスファー機構を備える。プレス装置10におけるプレス機構(金型開閉機構)及びトランスファー機構は、公知の樹脂モールド装置に用いられているプレス部の機構と同様である。モールド金型9は後述するように上型ベース及び下型ベースと、上型ベースにサポートピラーを介して支持された上型チェイスと下型ベースにサポートピラーを介して支持された下型チェイスを備えたチェイスユニットが手前側と奥側とで分離されて設けられている。
【0020】
プレス装置10にはモールド金型9の金型クランプ面を覆う長尺状のリリースフィルムをリール間で繰り出し及び巻き取りを繰り返すフィルム供給機構11が設けられていても良い。この場合、リリースフィルムは金型クランプ面にインサートブロック間の隙間を利用した公知の吸引機構により吸着保持される。
【0021】
リリースフィルムとしては、モールド金型9の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。リリースフィルムは、例えば長尺状のフィルム材が用いられ、ロール状に巻き取られた繰出しリールから引き出されて上型クランプ面を通過して巻取りリールへ巻き取られるように設けられる。尚、リリースフィルムとして、金型クランプ面を覆う程度の大きさの短冊状に切断されたものを用いる構成を採用してもよい。
【0022】
(プリヒート部E)
整列部4に載置された被成形品1はローダー12によって保持されてプレス部Bへ搬送される。プレス部Bにおいて被成形品1はモールド金型9へ直接搬入されずに手前側に設けられたプレヒート部Eに受け渡される。プレヒート部Bにはヒータを内蔵した上下ヒート部が設けられている。下ヒート部がローダー12より被成形品1を受け渡されると、該下ヒート部の上方を開閉する上ヒート部を閉じて被成形品1を上下で挟みこんでプレヒートするようになっている。ローダー12は被成形品1をプレヒートしている間に被成形品供給部Aへ戻ってホルダー8より樹脂タブレットを受け取って再度プレヒート部Eへ移動する。そして、上ヒート部を開放して170°程度にプレヒートされた被成形品1をローダー12が受け取って樹脂タブレットとともに型開きしたモールド金型9へ搬入される。このとき、モールド金型9も予め成形温度に昇温されている。
【0023】
(成形品収納部C)
成形品収納部Cは、アンローダー13によって樹脂モールド後の成形品14を移載する取り出し部15、取り出された成形品14からゲート等の不要樹脂を除去するゲートブレイク部16、不要樹脂が除去された製品17を載置するバッファ部18、バッファ部18より製品17を整列して載置する整列部19、整列部19より送り出された製品17は図示しないハンドにチャックされて収納マガジン20へ収納される。
【0024】
(搬送機構D)
搬送機構Dは被成形品供給部Aから被成形品1と樹脂タブレットを受け取ってプリヒート部Eを経由してプレス部Cへ搬送するローダー12と、プレス部Bから成形品を取り出し部15へ搬送するアンローダー13を備えている。ローダー12及びアンローダー13は、直列に配置された被成形品供給部A、プレス部B、成形品収納部C間に連結されたガイドレール44を共用して装置奥側を移動し、プレス部Bに対して各々進退移動可能に設けられている。ローダー12は、被成形品供給部Aから被成形品1を受け取ってプリヒート部Eへ受け渡し、樹脂タブレットを受け取ってからプリヒート部Eでプリヒートされた被成形品1を受け取って、これらをプレス部Bの型開きしたモールド金型9へ搬入する動作を繰り返す。また、アンローダー13は、樹脂モールド後に離型した成形品14をモールド金型9より受け取って、成形品収納部Cの取り出し部15へ移載する動作を繰り返す。
【0025】
したがって、樹脂モールド装置を構成するユニットを変えてもガイドレール21を連結することで搬送機構Dを変更することなく装置構成を変更することができる。たとえば、図1に示す例は、プレス装置10を3台設置した例であるが、プレス部Bや他のユニットを連結した樹脂モールド装置を構成することも可能である。
【0026】
(モールド金型の具体的な構成例)
ここで、プレス装置10に備えたモールド金型9の具体的な構成例について、図2乃至図6を参照して説明する。
下型9Aの構成について説明する。図2(A)(B)(C)は下型の平面図、正面図、左側面図である。下型ベース21には下型ヒータ21aが水平方向に複数個所に設けられている。この下型ベース21には下型チェイス22a,22bが手前側と奥側とで分離可能に組み付けられている。下型チェイス22a,22bは、図3に示すように当該下型チェイス22a,22bに立設された下型サポートピラー23によって下型ベース21に支持されている。下型チェイス22a,22bには、複数列(2列)のポット24と複数(2個で一対)のポット24から同一の下型キャビティ凹部25に接続する共通の下型ランナゲート26が形成されたセンターインサート27と、下型キャビティ凹部25が形成された下型キャビティインサート28がセンターインサート27の両側にポット24側の金型ランナゲート26と接続するように組み付けられている。
【0027】
下型ベース21に設けられた下型ヒータ21aは、図3の平面視でセンターインサート27のポット列の間に配置されており、下型ベース21の下型ヒータ21a位置の上部(直上)に設けられたサポートピラー23から等間隔で配置されたポット24を含むセンターインサート27に熱伝導される(図3では奥側の下型チェイス22bのみのヒータ配置を例示したが手前側の下型チェイス22aも同様である)。また、下型ヒータ21aは、下型キャビティインサート28の下型キャビティ凹部25の両側にも配置されており、サポートピラー23を通じて下型キャビティ凹部25の周辺部を効率よく加熱するようになっている。
【0028】
これによれば、センターインサート27に複数のポット24が形成されていても下型ベース21の下型ヒータ21aの上部(直上)に設けられたサポートピラー23を通じて等間隔で配置された一対のポット24に効率よく熱伝導してポット24内の樹脂タブレットを短時間で効率よく溶融させることができる。また、等間隔に配置されたサポートピラー23を通じてセンターインサート27を均一に加熱でき、成形品質のばらつきを低減させることができる。また、下型ベース21のキャビティインサート側の下型ヒータ21aのみならずポット24の列の間に配置された下型ヒータ21aからも熱が加えられるので、各ポット24を均一に加熱することが可能となっている。また、サポートピラー23は下型ベース21にセンターインサート27を支持するので剛性を維持して樹脂漏れが発生することもない。
【0029】
また、図3において、下型ベース21には、下型キャビティインサート28に形成された下型ランナゲート26の両側を含む下型キャビティ凹部25の周囲及び中央部にサポートピラー23によって支持されている。
これにより、下型ランナゲート26から下型キャビティ凹部25の周囲に至る下型面がサポートピラー23によって支持されているので、下型キャビティ凹部25の面積が広がっても十分なクランプ圧が作用するため樹脂漏れが生ずることはなくなる。
【0030】
奥側の下型チェイス22bと手前側の下型チェイス22aとは下型チェイス22aに形成された凸部22cと下型チェイス22bの対向面に形成された凹部22dとの凹凸嵌合により下型ベース21に位置決められて組み付けられている。手前側の下型チェイス22aはエンドブロック29により抜け止めされて組み付けられる。下型チェイス22a,22bは両側を下型サイドブロック32により位置決めされている。
【0031】
これによれば、金型メンテナンスにより手前側の下型チェイス22aと奥側の下型チェイス22bを下型ベース21より外した後に再度組み付け順を入れ替わると凸部22cにより下型チェイス間若しくはエンドブロック29との間に隙間が発生して組み付けることができなくなるため、誤った組み付けを防ぐことができる。
【0032】
図2(B)において下型ベース21の下方には、下型チェイス22a,22bに対して1個のマルチプランジャユニット30が設けられている。マルチプランジャユニット30には、図4に示すようにポット24の配置に応じてプランジャ31が立設されている。本実施例では2つのセンターインサート27に設けられたポット24の数(12箇所)の合計で24本のプランジャ31が設けられている。各プランジャ31は、均等圧ユニット(コイルばね、油圧など)により、等圧で各ポット24内に挿入支持される。マルチプランジャユニット30は、図示しない金型開閉機構に連動して昇降する可動プラテン(図示せず)に組み付けられて昇降可能に支持されている。尚、マルチプランジャユニット30は、下型チェイス22a,22bと同様に分割可能に構成してもよい。例えば、本実施例のように下型チェイス22a,22bを分割したときには、6本のプランジャ31が2列設けられたマルチプランジャユニット30を2個備える構成とすることができる。この場合、1個ずつが軽量となるためメンテナンス性がよく、一方のマルチプランジャユニット30のみを動作させて生産することもできる。
【0033】
また、図2(A)において、下型ベース21の奥側のコーナー部には金型面を切り欠いて凹部21bと凸部21cが形成されている。この下型ベース21の凹部21bと凸部21cは後述する上型ベースの対向するコーナー部に設けられた凸部と凹部に各々凹凸嵌合してモールド金型9がクランプした際のX−Y方向の位置出しが行われる。尚、凹部21bと凸部21cを金型の幅方向の中央に設けてもよい。
【0034】
また、各下型チェイス22a,22bの四辺及び下型チェイス全体の四辺に相当する辺縁部には下型ロックブロック22e(中央が凹部)が各々形成されている。この下型ロックブロック22eは、後述する上型チェイスに対向して設けられた上型ロックブロックと凹凸嵌合してモールド金型9がクランプした際のX−Y方向の位置出しが行われる。
【0035】
次に上型9Bの構成について説明する。図5(A)(B)(C)は上型の平面図、正面図、左側面図である。上型ベース33には上型ヒータ33aが水平方向に複数箇所に設けられている。この上型ベース33には上型チェイス34a,34bが手前側と奥側とで凹凸嵌合により分離可能に組み付けられている。上型チェイス34a,34bは、上型チェイス34a,34bに立設された図示しない上型サポートピラーに上型ベース33によって支持されている。上型チェイス34a,34bには、下型のポット24に対向した上型カル36と、上型カル36から同一の上型キャビティ凹部37に接続する共通の上型ランナゲート38が形成された上型センターインサート(カルインサート)39と、上型キャビティ凹部37が形成された上型キャビティインサート40が上型カルインサート39の両側に上型カル36に接続する上型ランナゲート38と接続するように組み付けられている。
【0036】
上型ベース33に設けられた上型ヒータ33aは、複数箇所で均等に配置され、上型ヒータ33aの発熱は図示しない上型サポートピラーを介して上型カルインサート39及び上型キャビティインサート40へ熱伝導される。一例として図5(A)(B)に示すように、上型ヒータ33aは上型カルインサート39の上型カル36の直下並びに上型キャビティインサート40の上型キャビティ凹部37の直下に対応する位置に各々配置されており、対向する下型9Aのポット24の周辺や上型キャビティ凹部37の周辺を効率よく加熱するようになっている。
【0037】
奥側の上型チェイス34bと手前側の上型チェイス34aとは凹凸嵌合により上型ベース33に位置決められて組み付けられている。手前側の上型チェイス34aは上型エンドブロック41により抜け止めされて組み付けられる。また、上型チェイス34a,34bは両側を上型サイドブロック42により位置決めされている。
【0038】
また、図5(A)において、上型ベース33の奥側のコーナー部には金型面を切り欠いて凸部33bと凹部33cが形成されている。この凸部33bは下型ベース21の凹部21bと、凹部33cは下型ベース21の凸部21cと各々凹凸嵌合してモールド金型9がクランプした際のX−Y方向の位置出しが行われる。
【0039】
また、図5(B)(C)に示すように、各上型チェイス34a,34bの四辺及び上型チェイスブロック全体の四辺に相当する辺縁部には、上型ロックブロック34e(凸部)が各々形成されている。この上型ロックブロック34eは、下型チェイス22a,22bに対向して設けられた下型ロックブロック22eと凹凸嵌合してモールド金型9がクランプした際のX−Y方向の位置出しが行われる。
【0040】
上記構成によれば、モールド金型9は、複数のポット24から共通の金型ランナゲート26,38を通じて同一の下型キャビティ凹部25,37に樹脂を充填できるので、小径の樹脂タブレットをポット24内で溶融させて短時間で充填することができ、生産性を向上させることができるうえに、金型面の摩耗も軽減できる。
また、上型チェイス34a,34b及び下型チェイス22a,22bが手前側と奥側に分離可能に組み付けられているので、メンテナンス作業を行いやすくなる。
【0041】
図6(A)(B)は、下型及び上型のリリースフィルム43を使用する場合の平面図である。長尺状のリリースフィルム43を手前側より奥側に搬送されるため、下型チェイス22a,22bには下型ロックブロック22e(中央が凹部)がフィルム搬送方向両側のみの対向辺に各々形成されている(図6(A)参照)。また、上型チェイス34a,34bには上型ロックブロック34eが、(凸部)がフィルム搬送両側のみの対向辺に各々形成されている(図6(B)参照)。
これにより、リリースフィルム43を金型クランプ面より浮き上がったり破れたりすることなく吸着保持させることができる。
【0042】
また、上述したモールド金型9を用いた樹脂モールド装置を用いれば、比較的パッケージ部の大型の製品を効率よくしかも成形品質を維持したまま樹脂モールドすることができる。
【0043】
以上説明したように、上記モールド金型9及び樹脂モールド装置を用いれば、複数ポット24に装填された樹脂を効率よく加熱し、金型の剛性を低下することなく、メンテナンス作業を効率よく行えるモールド金型9及びこれを備えた樹脂モールド装置を提供することができる。
【0044】
尚、上述した樹脂モールド装置は、搬送機構Dを共用した被成形品供給部A、プレス部B、成形品収納部Cを組み換え可能なモジュールタイプの樹脂モールド装置について例示したが、これらが一体に組み付けられた公知の樹脂モールド装置に適用することも可能である。
【0045】
また、上述の実施形態では、下型チェイス22a,22b及び上型チェイス34a,34bを手前側と奥側分割した構成例について例示したが、これらを分割せずに下型9A及び上型9Bにそれぞれ1個ずつのチェイスを設ける構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
A 被成形品供給部 B プレス部 C 成形品収納部 D 搬送機構 E プリヒート部 F 樹脂供給部 1 被成形品 2 供給マガジン 2a 送り出し部 3 バッファ部 4 整列部 5 ホッパー 6 パーツフィーダー 7 回転テーブル 8 ホルダー 9 モールド金型 9A 下型 9B 上型10 プレス装置 11 フィルム供給機構 12 ローダー 13 アンローダー 14 成形品 15 取り出し部 16 ゲートブレイク部 17 製品 18 バッファ部 19 送り出し部 20 収納マガジン 21 下型ベース 21a 下型ヒータ 21b 凹部 21c 凸部 22a,22b 下型チェイス 23 下型サポートピラー 24 ポット 25 下型キャビティ凹部 26 下型ランナゲート 27 センターインサート 28 下型キャビティインサート 29 下型エンドブロック 30 マルチプランジャユニット 31 プランジャ 32 下型サイドブロック 22e 下型ロックブロック 33 上型ベース 33a 上型ヒータ 34a,34b 上型チェイス 34e 上型ロックブロック35 上型サポートピラー 36 上型カル 37 上型キャビティ凹部 38 上型ランナゲート 39 上型カルインサート 40 上型キャビティインサート 41 上型エンドブロック 42 上型サイドブロック 43 リリースフィルム 44 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型ベースと、
前記上型ベースに支持された上型チェイスと、
下型ベースと、
前記下型ベースに支持された下型チェイスを備えたモールド金型であって、
前記下型チェイスには、複数のポットから同一のキャビティ凹部に接続する金型ランナゲートが形成されたポット列が複数列形成されたセンターインサートと、前記キャビティ凹部が形成されたキャビティインサートとが、前記センターインサートの両側に金型ランナゲートが接続するように組み付けられており、前記下型ベースに設けられたヒータは、平面視でセンターインサートのポット列の間に配置されており、下型ベースのヒータ位置の上部に設けられたサポートピラーから等間隔で配置されたポットを含む下型チェイスに熱伝導されることを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記下型ベースに支持された下型チェイスは手前側と奥側とで分離されて組み付けられている請求項1記載のモールド金型。
【請求項3】
前記下型ベースには、前記キャビティインサートに形成された金型ランナの両側を含むキャビティ凹部の周囲及び中央部にサポートピラーが設けられている請求項1又は2記載のモールド金型。
【請求項4】
前記奥側の下型チェイスと手前側の下型チェイスとは凹凸嵌合により下型ベースに組み付けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のモールド金型。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかのモールド金型を備えたプレス部を備えたことを特徴とする樹脂モールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131142(P2012−131142A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285780(P2010−285780)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】