説明

ユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置

【課題】ユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置を提供する。
【解決手段】保守作業を行うにあたり、画面切換情報記憶した外部記憶媒体9を装着する。数値制御装置100は、工作機械120の非常停止信号121、または、安全状態信号122の信号入力11を確認し、非常停止信号121、あるいは、安全状態信号122の入力が無い状態で強制ボタンの押下の何れか1つによって、数値制御装置100は非常停止状態にされ(符号8参照)、工作機械120からの安全状態信号122の入力が有れば、数値制御装置100は非常停止状態にされず、ユーザインタフェース表示に用いられる画面テーブルが通常作業用画面テーブル6から保守作業用画面テーブル7に切り換わり(図5の切換12)、表示装置13に表示されるユーザインタフェース表示が、通常作業用インタフェース表示14から保守作業用ユーザインタフェース表示15に切り換わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特に、ユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置には、各画面の表示と非表示を設定する項目(パラメータ)やユーザが作成したカスタム画面を表示する機能など、様々なカスタマイズ方法が行われている。ユーザは、通常作業では使用しない画面(例えば、機械構成を設定する画面、機械の誤差補正量を設定する画面、モータのゲインやトルクを調整する画面、ユーザの操作履歴を表示する画面など)を非表示にしたり、カスタム画面に置き換えたりすることで、工作機械の設定情報の秘匿や操作性の向上を実現している。
一方、保守作業時には、通常は非表示にされている画面や画面内の表示項目を使用する場合があり、保守作業者は使用する非表示状態の画面や画面内の表示項目をその都度呼び出して表示させる必要がある。その表示させるための方法はカスタマイズされた内容によって異なるため、作業に必要な画面や画面内の表示項目を表示したり、作業終了時に元の画面の状態に戻すのに手間がかかっていた。
【0003】
表示する画面を一括して変更する手段として、設定情報が記録された外部記憶媒体を装置の電源オン時に読み込ませる方法がある(特許文献1参照)。図11は外部記憶媒体から電源オン操作時に設定情報を読み込む特許文献1に開示される従来技術を説明する図である。外部記憶媒体60を制御装置(図示せず)に装着62し、制御装置の電源オン時に設定情報が前記装置に読み込まれる。制御装置は通常作業用の設定63の状態から保守作業用の設定66に変更64される。表示装置69は、通常作業用の設定63に対応する画面表示から、保守作業用の設定66に対応する画面表示に切り換わる。この方法では、設定を変更できるタイミングが装置の電源オン時に限定されており、かつ、表示装置69に表示される画面を元の画面の状態に戻すには、そのための設定情報を記録した他の外部記憶媒体61を前記装置に装着62し設定情報を読み取らせる必要がある。これによって、保守作業用の設定66から通常作業用の設定63に変更65され、表示装置69は通常作業用の設定63に対応する画面表示に切り換わる。なお、符号67,68は、制御装置から表示装置69に送られる表示用データを表す。
【0004】
また、ある作業者が制御装置を利用中に、一時的に他の作業者による割り込み操作を可能とする方法がある(特許文献2参照)。図12は一時的な割り込み操作を管理する特許文献2に開示される従来技術を説明する図である。外部記憶媒体70を装置(図示せず)に装着71し、制御装置は通常作業の設定73の状態から保守作業用の設定74に変更75される。また、外部記憶媒体70が制御装置から取外72されると、制御装置は保守作業用の設定74から通常作業用の設定73に戻る。この方法によれば、他の作業者が操作を行う期間だけ一時的に操作環境を変更することができる。表示装置79には、外部記憶媒体70が制御装置に装着71されると、保守作業用の設定74に対応した画像が表示され、外部記憶媒体70が制御装置から取外72されると、保守作業用の設定74から通常作業用の設定73に変更76される。なお、符号77,78は、制御装置から表示装置79に送られる表示用データを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−254761号公報
【特許文献2】特開2008−271499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術で説明した特許文献1に開示された技術と特許文献2に開示された技術とを用いて、保守作業の開始時に装着された外部記憶媒体から情報を読み込んで必要な画面を表示し、保守作業の終了時にその外部記憶媒体を取り去ることで、元の画面の状態に戻すことができる。
しかし、工作機械や産業用機械を制御する数値制御装置に特許文献1や特許文献2に開示される技術を適用した場合、数値制御装置の画面構成や操作体系を安易に変更すると、ユーザの意図しない誤操作を惹起する可能性がある。例えば、画面構成を変更することで、参照する座標系を誤って軸を移動させたり、目的と異なる種類のデータを操作して設定異常が生じる可能性がある。また、操作体系を変更することで、値の入力方法で、直接入力と加算入力とを取り違えて選択する可能性がある。これらの誤操作を防止するには、工作機械や産業用機械が保守作業を安全に行える状態であることを予め確認し、作業の安全性を確保しておく必要がある。なお、直接入力とは入力手段を用いて入力した値をそのまま数値制御装置に格納する入力方法であり、加算入力とは入力手段を用いて入力した値を既に入力済みの値に加算して数値制御装置に格納する入力方法である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、工作機械や産業用機械あるいは数値制御装置の保守作業の安全性を確保しつつ、保守作業の開始時に簡単な操作でユーザインタフェースを切換え、作業の終了時に簡単に元の状態に戻すことが可能なユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、表示装置に表示される表示項目および該表示項目に対して操作者が操作を行ったときの画面の動作を定義した定義情報に基づいて構成されるユーザインタフェースを有し、前記定義情報を切り換えることによって前記ユーザインタフェースを切り換えることが可能な数値制御装置において、少なくとも工作機械で加工を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である通常作業用定義情報と、保守操作を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である保守作業用定義情報とを記憶した定義情報記憶部と、前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたかどうかを判定する操作判定部と、前記操作判定部によって前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたと判定されたとき、前記工作機械が保守作業を行える安全な状態であるかどうかを判定する安全判定部と、前記安全判定部により安全な状態であると判定された場合、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換え、安全な状態ではないと判定された場合、前記工作機械を非常停止状態にすると共に、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換える情報切換部と、を備えたことを特徴とするユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、表示装置に表示される表示項目および該表示項目に対して操作者が操作を行ったときの画面の動作を定義した定義情報に基づいて構成されるユーザインタフェースを有し、前記定義情報を切り換えることによって前記ユーザインタフェースを切り換えることが可能な数値制御装置において、少なくとも工作機械で加工を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である通常作業用定義情報と、保守操作を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である保守作業用定義情報とを記憶した定義情報記憶部と、前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたかどうかを判定する操作判定部と、前記操作判定部によって前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたと判定されたとき、前記工作機械が保守作業を行える安全な状態であるかどうかを判定する安全判定部と、前記安全判定部により安全な状態であると判定された場合、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換え、安全な状態ではないと判定された場合、前記安全判定部によって安全であると判定されることを待って、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換える情報切換部と、を備えたことを特徴とするユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記安全判定部は、非常停止信号または工作機械が保守作業を行える状態であることを示す特定の入力信号の少なくとも一方の信号の入力を以って安全な状態であると判定することを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
請求項4に係る発明は、前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作は、前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換える情報を記憶した外部記憶媒体を外部インタフェースに装着するか、予め決められたキー操作、もしくは、予め決められたタッチパネルの操作、パスワードの入力のいずれか1つ、または、その組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記情報切換部によって前記ユーザインタフェースが前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換わっている時に、前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換える情報を記憶した外部記憶媒体を外部インタフェースから取り外すか、予め決められたキー操作、もしくは、予め決められたタッチパネルの操作、パスワードの入力の何れか1つ、または、その組み合わせによって、前記定義情報を前記通常作業用定義情報に切り換えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
請求項6に係る発明は、前記情報切換部によって前記ユーザインタフェースが前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換わっている時に、前記安全判定部から安全な状態が確保されていないとの判定を受けて、前記工作機械を非常停止状態にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、工作機械や産業用機械あるいは数値制御装置の保守作業の安全性を確保しつつ、保守作業の開始時に簡単な操作でユーザインタフェースを切換え、作業の終了時に簡単に元の状態に戻すことが可能なユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実現するための数値制御装置の概略構成図である。
【図2】標準仕様の画面データと画面表示例を説明する図である。
【図3】カスタマイズ画面データと画面表示例を説明する図である。
【図4】画面テーブルの作成を説明する図である。
【図5】実施形態1を説明する図である。
【図6】実施形態1の確認用画面を説明する図である。
【図7】実施形態4を説明する図である。
【図8】実施形態5の選択画面を説明する図である。
【図9−1】数値制御装置が実行する処理を説明するフロチャートである(その1)。
【図9−2】数値制御装置が実行する処理を説明するフロチャートである(その2)。
【図10−1】工作機械からの安全状態信号あるいは非常停止信号の入力をまってユーザインタフェース画面の切り換えを行う処理を説明するフロチャートである(その1)。
【図10−2】工作機械からの安全状態信号あるいは非常停止信号の入力をまってユーザインタフェース画面の切り換えを行う処理を説明するフロチャートである(その2)。
【図11】外部記憶媒体から電源オン操作時に設定情報を読み込む従来技術を説明する図である。
【図12】一時的な割り込み操作を管理する従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明を実現するための数値制御装置の概略構成図である。数値制御装置100は、プロセッサ101を中心に構成されている。プロセッサ101にはバス109を介して、不揮発性メモリ102、ROM103、外部インタフェース104、信号インタフェース105、MDIコントローラ106、表示コントローラ107、タッチパネルコントローラ108が接続されている。不揮発性メモリ102は、電源切断後も保持するべきパラメータ、加工プログラム及び本発明に関連する画面データなどが記憶されている。プロセッサ101はROM103に格納されたシステムプログラムに従って数値制御装置全体を制御する。
【0015】
外部インタフェース104は外部記憶媒体110から該外部記憶媒体110に記憶された画面切換情報を読み出す際に用いられるインタフェースである。信号インタフェース105は工作機械120から送られてくる非常停止信号121や安全状態信号122を受け取る際に用いられるインタフェースである。MDIコントローラ106は、MDIユニット140に備わったキーボード(図示せず)を用いて入力された加工プログラムや各種指令などを受け取る際に用いられるコントローラである。表示コントローラ107は各種画面を表示装置130に表示するのに用いられるコントローラである。タッチパネルコントローラ108はタッチパネル131を介して入力される各種コマンドあるいは各種データを受け取る際に用いられるコントローラである。なお、MDIユニット140は表示装置130やタッチパネル131とともに一つのユニットとして構成される。
【0016】
数値制御装置100は、図示していないが、プロセッサ101がバス109を介して、RAM、工作機械120の各軸のサーボモータを制御する軸制御回路、プログラマブルマシンコントローラに接続している。RAMは、一時的な計算データ、表示データ、入力信号等が格納される。
【0017】
図2は、標準仕様の画面データと画面表示例を説明する図である。図1を参照しつつ説明する。数値制御装置100の不揮発性メモリ102には、標準仕様の画面データ2が格納されている。標準仕様の画面データ2は、複数の標準仕様の画面のデータから構成されている。図2に示す標準仕様の画面データ2は、標準画面1用データ(21)、標準画面2用データ(22)、標準画面3用データ(23)、標準画面4用データ(24)およびキー定義(25)を含んでいる。各標準仕様の画面データ21,22,23,24には各画面の表示項目が登録されている。標準画面用データとして、種類,座標,および、要素または属性、が一つの関連性のあるデータ群として記憶される。「種類」には、ラベル,数値表示,数値入力,ボタンがある。「座標」は、「種類」として記述された内容の画面上での表示位置あるいは入力位置を特定するための座標データである。「要素/属性」は、「種類」の内容が記述される。例えば、「種類」がラベルの場合には、画面に表示される文字あるいは文字列、数値入力の場合には、入力されたデータの名称が記述される。また、キー定義(25)にキー操作時の動作が登録されている。ここで、「キー操作時の動作が登録されている」を換言すれば、ファンクションキーを押下した時にどの標準画面が選択されるかが設定されていることを意味する。図2では、ファンクションキーF1を押下すると標準画面1表示が選択され、ファンクションキーF2では標準画面2表示が選択され、ファンクションキーF3では標準画面3表示が選択され、ファンクションキーF4では標準画面4が選択されるように、キー操作時の動作が登録されている。
【0018】
本発明の実施形態では、ユーザが、標準画面毎に表示の可否を設定するパラメータを用い、通常作業で使用しない標準画面を選択して非表示に設定できる。同様に、標準画面内の表示項目の可否を設定するパラメータを用い、通常作業で使用しない表示項目を選択して非表示に設定できる。なお、この点については図4を用いて後述する。また、図3に示されるように、パソコンなどの外部処理装置を使って、標準仕様の画面データ2を編集することにより、各標準画面の表示項目を編集することができる。あるいは、標準画面用データ以外の他の画面用データを追加することも可能である。図3は、カスタマイズ画面データと画面表示例を説明する図である。パソコンなどの外部処理装置を用いて、標準仕様の画面データ2を編集し作成された画面用データ(以下、「カスタマイズ画面データ」という)は、標準仕様の画面データ2とは異なる別のファイルであるカスタマイズ画面データ3として、外部インタフェース104を経由して数値制御装置100の不揮発性メモリ102に格納される。
【0019】
次に、図4を用いて、画面テーブルの作成を説明する。
数値制御装置100では、不揮発性メモリ102に格納された画面データとパラメータ設定項目5を基にして、通常作業で使用するユーザインタフェース要素を定義した定義情報(通常作業用画面テーブル6)が作成される。このとき、カスタマイズ画面データ3があればそれを使用し、無ければ標準仕様の画面データ2が使用される。図4ではカスタマイズ画面データ3を用いて通常作業用画面テーブル6が作成されている。また、標準仕様の画面データ2を基にして、保守作業で使用可能なユーザインタフェース要素を定義した定義情報(保守作業用画面テーブル7)が作成される。ここで、ユーザインタフェース要素を補足して説明すると、数値制御装置100の表示装置130に表示可能な画面とキー操作の動作のそれぞれがユーザインタフェースの要素を意味する。
数値制御装置100は、画面テーブルに登録されたユーザインタフェースが構成される。つまり、数値制御装置100では、通常作業時には、通常作業用画面テーブル6を用いてユーザインタフェースが構成され、保守作業時には、保守作業用画面テーブル7を用いてユーザインタフェースが構成される。
【0020】
図5は、本発明の実施形態1を説明する図である。数値制御装置100の保守作業を行う作業者は、数値制御装置100の保守作業を行うにあたり、ユーザインタフェースを保守作業用に切り換える情報(画面切換情報)として、特定の文字列“MAINTENANCE”を記した特定名称のファイル“SCRNCHNG.DAT”を記憶したUSBメモリなどの外部記憶媒体9を、数値制御装置100の外部インタフェース104に装着する。なお、ファイル名称は一例であって、この名称に限定されない。
【0021】
以下、本発明に係るユーザインタフェース表示の処理を、処理<1>,処理<2>,処理<3>に分説して説明する。
処理<1>
数値制御装置100は、外部記憶媒体9の装着を検出して、外部記憶媒体9内のファイル“SCRNCHNG.DAT”に文字列“MAINTENANCE”があることを確認し、画面切換情報を取得したと判定する(図5の情報取得10)。
【0022】
処理<2>
数値制御装置100は、工作機械120の非常停止信号121、または、工作機械120が数値制御装置100の保守作業を行える状態であることを示す特定の信号(安全状態信号122)の信号入力11を確認する。ここで、工作機械120が数値制御装置100の保守作業を行える状態とは、例えば、自動運転を停止した状態や自動運転を実行できない状態など、非常停止状態ではないが数値制御装置100の保守作業の安全性が確保された工作機械毎に固有の状態であることを指している。
数値制御装置100に何れの信号121,122も入力されていなければ、何れかの信号121,122が入力されるまで図6に示される確認用画面を表示する。図6は、実施形態1の確認用画面を説明する図である。図6(a)の確認用画面16aで強制ボタンが押された場合、数値制御装置100は非常停止状態となる。中止ボタンが押された場合、確認用画面16aを終了して、元の通常作業用ユーザインタフェース表示14に切り換わる。
【0023】
処理<3>
数値制御装置100は、工作機械120からの非常停止信号121の入力、あるいは、工作機械120からの安全状態信号122の入力が無い状態で強制ボタンの押下の何れか1つによって、数値制御装置100は非常停止状態にされ(符号8参照)、工作機械120からの安全状態信号122の入力が有れば、数値制御装置100は非常停止状態にされず、ユーザインタフェース表示に用いられる画面テーブルが通常作業用画面テーブル6から保守作業用画面テーブル7に切り換わり、表示装置13に表示されるユーザインタフェース表示が、通常作業用インタフェース表示14から保守作業用ユーザインタフェース表示15に切り換わる(図5の切換12)。
【0024】
これによって、数値制御装置100が標準仕様として備えている全ての画面(標準画面1,標準画面2,標準画面3,標準画面4)が表示可能となるため、保守作業の効率が向上する。
【0025】
また、図6(b)の確認用画面16bの例に記載されているようにすれば、非常停止信号121または安全状態信号122を数値制御装置100に入力するように、工作機械120を操作し保守作業開始時に工作機械120の状態確認を保守作業者に促すことができることから、意図しない誤操作を防止できる。
さらに、作業開始時に工作機械120が安全な状態でなければ(つまり、数値制御装置100に工作機械120から非常停止信号121も安全状態信号122も入力されない状態の場合)、強制ボタン(図6参照)を押すことによって数値制御装置100を非常停止状態(符号8参照)にすることから、保守作業の安全性を確保することができる。なお、数値制御装置100を非常停止状態とすると、数値制御装置100は工作機械120の各駆動軸,主軸を駆動制御する信号を出力しない状態となる。
【0026】
数値制御装置100は、保守作業用ユーザインタフェース表示15を表示装置13に表示中、常に非常停止信号121および安全状態信号122の入力を監視する。そのため、保守作業者は、保守作業の途中で工作機械120を操作し、工作機械120から安全状態信号122を数値制御装置100に出力させることで、数値制御装置100の非常停止状態(符号8を参照)を解除して保守作業を行なうことができる。なお、この場合、工作機械120から数値制御装置100に非常停止信号121は出力されていない。
【0027】
同様に、数値制御装置100は、保守作業用ユーザインタフェース表示15を表示装置13に表示中に、非常停止信号121および安全状態信号122が数値制御装置100に入力されなくなると、数値制御装置100は非常停止状態(符号8参照)になる。これにより、万が一にも工作機械120から数値制御装置100に安全状態信号122が入力されなくなっても、数値制御装置100が安全な状態(非常停止状態)(符合8参照)を維持することから、作業中の安全性が確保される。
【0028】
また、外部記憶媒体9を数値制御装置100の外部インタフェース104から取り外すことで、数値制御装置100は画面テーブルを保守作業用画面テーブル7から通常作業用画面テーブル6に自動的に切り換えて通常作業用ユーザインタフェース表示14を表示装置13に表示する。これにより、保守作業を効率よく行うための標準仕様の画面から、元の通常作業用ユーザインタフェース表示14に戻ることから、画面の設定変更にかかる時間が短縮され、保守作業の効率が向上する。
【0029】
実施形態1では、画面切換情報が特定名称のファイルに含まれる特定の文字列であることを例として説明したが、他の情報でもよい。例えば、特定名称ファイルの存在のみでもよいし、外部記憶媒体9のファイル管理領域外に設定された数値データ、特殊な形式でフォーマットされた外部記憶媒体9などがある。なお、外部記憶媒体9としてUSBがあるが、他の媒体でもよい。例えば、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、マルチメディアカード(登録商標)などがある。
【0030】
本発明の実施形態2として、実施形態1のユーザインタフェース表示の処理の<1>の他の形態として、予め決められたキー操作や予め決められたタッチパネル操作を行ったり、パスワードを入力すること、すなわち「特定の操作」によって画面切換情報を取得する。ここで、特定の操作とは、例えば、英字の‘M’と数字の‘0’を10秒間押し続けたり、タッチパネル131の右上隅を5秒間押し続けたり、パスワード入力画面で‘CHS5B8’と入力するなど、通常作業では行わない操作を指す。さらには、これらの特定の操作の組み合わせ(例:タッチパネル131の右上隅を5秒間押すとパスワード入力画面が表示されてパスワード‘5B8SCRN’と入力する)もある。保守作業用ユーザインタフェース表示15から元の通常作業用ユーザインタフェース表示14に戻す条件も特定の操作で行う。この特定の操作は、画面切換情報を取得した場合と同じ操作でもよいし、他の操作でもよい。
【0031】
本発明の実施形態3として、実施形態1で挙げた外部記憶媒体9の装着と実施形態2で挙げた「特定の操作」を組み合わせることで画面切換情報を取得する。例えば、画面切換情報を記憶した外部記憶媒体9(例えば、USBメモリ)を数値制御装置100の外部インタフェース104へ装着しパスワード入力画面を表示してパスワード‘PASSCHS’と入力したり、タッチパネル131の左上隅を押したまま画面切換情報を記憶した外部記憶媒体9を数値制御装置100の外部インタフェース104へ装着する、などの組み合わせがある。
保守作業用ユーザインタフェース表示15から元の通常作業用ユーザインタフェース表示14に戻す条件については、外部記憶媒体9の取外しまたは特定の操作の何れか一つもしくはその組み合わせで行う。例えば、画面切換情報を記憶した外部記憶媒体9を取外すだけでもよい、あるいは、取外した後にパスワードを入力する操作を組み合わせてもよい。
【0032】
本発明の実施形態4として、実施形態1の他の実施形態である定義情報が3つある場合について図7を用いて説明する。定義情報の作成時において、カスタマイズ画面データ3とパラメータ設定項目5を基にした通常作業で使用可能なユーザインタフェース要素を定義した定義情報(通常作業用画面テーブル6)と、標準仕様の画面データ2とパラメータ項目設定5を基にした保守作業1用の定義情報(保守作業1用画面テーブル17a)と、標準仕様の画面データ2を基にした保守作業2用の定義情報(保守作業2用画面テーブル17b)を作成する。
【0033】
処理<1>において、外部記憶媒体9内のファイル“SCRNCHNG.DAT”に文字列“MAINTENANCE1”があれば画面切換情報1、文字列“MAINTENANCE2”があれば画面切換情報2を取得したと判定する。
処理<3>において、処理<1>で画面切換情報1を取得した場合、画面テーブルを保守作業1用画面テーブル17aに切り換えて保守作業1用ユーザインタフェース表示を表示装置13に表示する。同様に、画面切換情報2を取得した場合、画面テーブルを保守作業2用画面テーブル17bに切り換えて保守作業2用ユーザインタフェース表示を表示装置13に表示する。
【0034】
本発明の実施形態5として、実施形態4の他の形態であるユーザインタフェースを画面で選択する場合について、図8を用いて説明する。処理<1>において、外部記憶媒体9内のファイル“SCRNCHNG.DAT”に文字列“MAINTENANCE”があれば、ユーザインタフェース選択画面を表示する。保守1ボタンが押された場合は画面切換情報1、保守2ボタンが押された場合は画面切換情報2を取得したと判断する。中止ボタンが押された場合、ユーザインタフェース選択画面を終了して、元の通常画面用ユーザインタフェース表示14を表示装置13に表示する。
【0035】
図9−1,図9−2は、数値制御装置が実行する処理を説明するフロチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA01]ユーザインタフェースフラグFGを通常作業用に設定する。
●[ステップSA02]ユーザインタフェースフラグFGは通常作業用であるか否か判断し、通常作業用である場合にはステップSA03へ移行し、通常作業用でない場合にはステップSA08へ移行する。
●[ステップSA03]画面切換情報を持つ外部記憶媒体が装着されているか否か判断し、装着されている(YES)の場合、ステップSA04へ移行し、装着されていない(NO)の場合、ステップSA12に移行する。
●[ステップSA04]工作機械は安全状態または非常停止状態であるか否か判断し、安全状態または非常停止状態(YES)の場合にはステップSA07へ移行し、安全状態でも非常停止状態でもない(NO)場合にはステップSA05へ移行する。
●[ステップSA05]確認用画面押下ボタンの状態は“強制”であるか“中止”であるかを判断し、“強制”の場合にはステップSA06へ移行し、“中止”の場合にはステップSA12へ移行する。
●[ステップSA06]数値制御装置を非常停止状態にする。
●[ステップSA07]ユーザインタフェースフラグFGを保守作業用に設定する。
●[ステップSA08]画面切換情報を持つ外部記憶媒体が装着されているか否かを判断し、装着されている場合(YES)にはステップSA10へ移行し、装着されていない場合(NO)にはステップSA09に移行する。
●[ステップSA09]ユーザインタフェースフラグFGを通常作業用に設定し、ステップSA12に移行する。
●[ステップSA10]工作機械は安全状態か否か判断し、安全状態の場合(YES)にはステップSA12へ移行し、安全状態ではない場合(NO)にはステップSA11に移行する。
●[ステップSA11]数値制御装置を非常停止状態にし、ステップSA12に移行する。
●[ステップSA12]ユーザインタフェースフラグFGは通常作業用か否か判断し、通常作業用の場合(YES)にはステップSA13に移行し、通常作業用ではない場合(NO)にはステップSA14に移行する。
●[ステップSA13]通常作業用画面テーブルを選択する。
●[ステップSA14]保守作業用画面テーブルを選択する。
●[ステップSA15]ユーザインタフェースを数値制御装置の表示装置に表示し、ステップSA02に戻り処理を継続する。
【0036】
図10−1,図10−2は、工作機械からの安全状態信号あるいは非常停止信号の入力をまってユーザインタフェース画面の切り換えを行う処理を説明するフロチャートである。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB01]ユーザインタフェースフラグFGを通常作業用に設定する。
●[ステップSB02]ユーザインタフェースフラグFGは通常作業用であるか否か判断し、通常作業用である場合にはステップSB03へ移行し、通常作業用でない場合にはステップSB06へ移行する。
●[ステップSB03]画面切換情報を持つ外部記憶媒体が装着されているか否か判断し、装着されている(YES)の場合、ステップSB04へ移行し、装着されていない(NO)の場合、ステップSB10に移行する。
●[ステップSB04]工作機械は安全状態または非常停止状態であるか否か判断し、安全状態または非常停止状態(YES)の場合にはステップSB05へ移行し、安全状態でも非常停止状態でもない(NO)場合には、いずれかの状態になるのを待ってステップSB05へ移行する。
●[ステップSB05]ユーザインタフェースフラグFGを保守作業用に設定する。
●[ステップSB06]画面切換情報を持つ外部記憶媒体が装着されているか否かを判断し、装着されている場合(YES)にはステップSB08へ移行し、装着されていない場合(NO)にはステップSB07に移行する。
●[ステップSB07]ユーザインタフェースフラグFGを通常作業用に設定し、ステップSB10に移行する。
●[ステップSB08]工作機械は安全状態か否か判断し、安全状態の場合(YES)にはステップSB10へ移行し、安全状態ではない場合(NO)にはステップSB09に移行する。
●[ステップSB09]数値制御装置を非常停止状態にし、ステップSB10に移行する。
●[ステップSB10]ユーザインタフェースフラグFGは通常作業用か否か判断し、通常作業用の場合(YES)にはステップSB11に移行し、通常作業用ではない場合(NO)にはステップSB12に移行する。
●[ステップSB11]通常作業用画面テーブルを選択する。
●[ステップSB12]保守作業用画面テーブルを選択する。
●[ステップSB13]ユーザインタフェースを数値制御装置の表示装置に表示し、ステップSB02に戻り処理を継続する。
【符号の説明】
【0037】
2 標準仕様の画面データ
3 カスタマイズ画面データ

5 パラメータ設定項目

6 通常作業用画面テーブル
7 保守作業用画面テーブル
8 非常停止状態にする
9 外部記憶媒体
10 情報取得
11 信号入力
12 切換
13 表示装置
14 通常作業用表示
15 保守作業用表示

16a,16b 確認用画面

21 標準画面1用データ
22 標準画面2用データ
23 標準画面3用データ
24 標準画面4用データ
25 キー定義

26 標準画面2
27 標準画面4

34 カスタム画面用データ
35 キー定義

37 カスタム画面

100 数値制御装置
101 プロセッサ
102 不揮発性メモリ
103 ROM
104 外部インタフェース
105 信号インタフェース
106 MDIコントローラ
107 表示コントローラ
108 タッチパネルコントローラ

110 画面切換情報を格納した外部記憶媒体
111 画面切換情報

120 工作機械
121 非常停止信号
122 安全状態信号
130 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に表示される表示項目および該表示項目に対して操作者が操作を行ったときの画面の動作を定義した定義情報に基づいて構成されるユーザインタフェースを有し、前記定義情報を切り換えることによって前記ユーザインタフェースを切り換えることが可能な数値制御装置において、
少なくとも工作機械で加工を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である通常作業用定義情報と、保守操作を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である保守作業用定義情報とを記憶した定義情報記憶部と、
前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたかどうかを判定する操作判定部と、
前記操作判定部によって前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたと判定されたとき、前記工作機械が保守作業を行える安全な状態であるかどうかを判定する安全判定部と、
前記安全判定部により安全な状態であると判定された場合、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換え、安全な状態ではないと判定された場合、前記工作機械を非常停止状態にすると共に、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換える情報切換部と、
を備えたことを特徴とするユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。
【請求項2】
表示装置に表示される表示項目および該表示項目に対して操作者が操作を行ったときの画面の動作を定義した定義情報に基づいて構成されるユーザインタフェースを有し、前記定義情報を切り換えることによって前記ユーザインタフェースを切り換えることが可能な数値制御装置において、
少なくとも工作機械で加工を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である通常作業用定義情報と、保守操作を行うために使用するユーザインタフェースの定義情報である保守作業用定義情報とを記憶した定義情報記憶部と、
前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたかどうかを判定する操作判定部と、
前記操作判定部によって前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作が行われたと判定されたとき、前記工作機械が保守作業を行える安全な状態であるかどうかを判定する安全判定部と、
前記安全判定部により安全な状態であると判定された場合、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換え、安全な状態ではないと判定された場合、前記安全判定部によって安全であると判定されることを待って、前記定義情報を保守作業用定義情報に切り換える情報切換部と、
を備えたことを特徴とするユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。
【請求項3】
前記安全判定部は、非常停止信号または工作機械が保守作業を行える状態であることを示す特定の入力信号の少なくとも一方の信号の入力を以って安全な状態であると判定することを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。
【請求項4】
前記ユーザインタフェースを前記通常作業用ユーザインタフェースから前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換えるための操作は、前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換える情報を記憶した外部記憶媒体を外部インタフェースに装着するか、予め決められたキー操作、もしくは、予め決められたタッチパネルの操作、パスワードの入力のいずれか1つ、または、その組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。
【請求項5】
前記情報切換部によって前記ユーザインタフェースが前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換わっている時に、前記ユーザインタフェースを前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換える情報を記憶した外部記憶媒体を外部インタフェースから取り外すか、予め決められたキー操作、もしくは、予め決められたタッチパネルの操作、パスワードの入力の何れか1つ、または、その組み合わせによって、前記定義情報を前記通常作業用定義情報に切り換えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。
【請求項6】
前記情報切換部によって前記ユーザインタフェースが前記保守作業用ユーザインタフェースに切り換わっている時に、前記安全判定部から安全な状態が確保されていないとの判定を受けて、前記工作機械を非常停止状態にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のユーザインタフェースが変更可能な数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−16016(P2013−16016A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148277(P2011−148277)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【特許番号】特許第5113931号(P5113931)
【特許公報発行日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】