説明

ユーザ体感品質推定装置、方法、およびプログラム

【課題】バースト的なパケット損失を含む映像通信でも、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質値を高い精度で推定する。
【解決手段】品質解析部12により、送受信品質情報に基づいて、メディア用パケットのうちから無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を示すバースト判定条件に基づき検査した無効パケットの発生状況に基づいて無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定し、ユーザ体感品質推定部14により、品質解析部12で判定された通信状態に応じて選択した品質推定モデル15から、品質解析部12で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質推定値16を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質推定技術に関し、特にリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パケット通信技術の飛躍的な発展に伴い、パケット網が音声や映像等のメディア(コンテンツ)を1対1あるいは多地点間で通信するリアルタイム系アプリケーションで利用されつつある。パケット網のインサービス品質管理では、このようなアプリケーションに対する品質管理も必要とされている。特にリアルタイム系アプリケーションでは、実際にアプリケーションを利用するユーザレベルでの主観的あるいは客観的な品質などのユーザ体感品質を用いた品質管理が重要視されており、ネットワーク品質からユーザ体感品質を推定する技術も提案されている(例えば、非特許文献1等参照)。
【0003】
従来、発明者らは、リアルタイム系アプリケーションの主観品質を推定する技術として、例えばパケットが連続して損失するようなバースト的なパケット損失が伝送路および端末上で発生する環境を考慮した品質監視技術を提案した(例えば、特許文献1等参照)。
この技術では、パケットがバースト的に損失するバースト損失によるアプリケーションに対するユーザ体感品質評価値の低下量を推定し、この低下量に基づきネットワーク品質管理目標値を算出している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−244609号公報
【非特許文献1】A. Clark, "Modeling the effects of burst packet loss and recency on subjective voice quality", IP Telephony Workshop 2001, Apr. 2001
【非特許文献2】http://www.digitalfountain.com/technology/index.cfm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ストリーミングなどの映像配信サービスにおいて、パケットの損失体制を強化させる技術として、FEC機能(前方誤り訂正:Forward Error Correction/非特許文献2等参照)を用いたサービスが多く提供されている。このFEC機能を用いた場合、パケット損失が発生した際に修復を行うための情報を含むパケットが、アプリケーションパケットと並行して送信されるため、ランダムに1パケットが損失した際には、この技術により修復される可能性が高い。
【0006】
図14は、FEC機能の効果を示す説明図であり、横軸がパケット損失率、縦軸が映像劣化検知回数である。特性61は、損失パケット数が1であり連続して複数のパケットが損失しないランダム損失の場合を示しており、パケット損失率が低い場合にはFEC機能により損失がある程度修復され、映像劣化はあまり検知されていないことがわかる。一方、特性62は、損失パケット数が1〜6で変動するバースト損失の場合を示しており、パケット損失が低い場合でもFEC機能により損失が修復されない場合があり、ある程度映像劣化が検知されていることがわかる。
このように、FEC機能が適用された映像通信サービスでは、パケット損失がバースト的に発生した場合に初めて映像品質が低下する可能性が高い。
【0007】
一方、アプリケーションパケットが損失しても映像劣化として知覚されない場合もある。例えば、映像を符号化して得られた各種種別のフレームをアプリケーションパケットで転送する場合、アプリケーションパケットによっては人間が知覚できないような情報を転送するものもある。
したがって、このようなランダムなパケット損失に対する損失耐性が高く、バースト的なパケット損失により初めて映像品質の低下が見られるような品質劣化特性を持つ映像通信について、バースト的なパケット損失を考慮して高い精度でユーザ体感品質を推定する場合、FEC機能の効果が得られずに発生した映像劣化を、例えば人間が知覚できないような映像劣化などの他の映像劣化と区別する必要がある。
【0008】
しかしながら、前述した従来技術では、このようなランダムなパケット損失に対する損失耐性が高く、バースト的なパケット損失により初めて映像品質の低下が見られるような品質劣化特性を持つ映像通信については考慮されておらず、バースト的なパケット損失を含む映像通信についてはユーザ体感品質を精度よく推定できないという問題点があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、バースト的なパケット損失を含む映像通信でも、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質値を高い精度で推定することができるユーザ体感品質推定装置、方法、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるユーザ体感品質推定装置は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得部と、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて、メディア用パケットのうち受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析部と、品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部とを備えている。
【0011】
この際、バースト判定条件として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、品質解析部で、バースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を連続して設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしてもよい。
【0012】
あるいは、バースト判定条件として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、品質解析部で、任意の無効パケットの発生時点からバースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしてもよい。
【0013】
あるいは、バースト判定条件として、無効パケット検出時間の終了判定に用いる無効パケット間隔数を規定するパケット密度判定量と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、品質解析部で、任意の無効パケットの発生時点から次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となった時点までを無効パケット検出時間とし、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしてもよい。
【0014】
また、品質解析部で、受信品質情報に基づいてメディア用パケットに対応するフレームのフレーム種別を判定し、フレーム種別に基づいてメディア用パケットのうち通信状態の判定対象となる判定対象パケットを選択し、通信状態を判定する際、無効パケットのうち判定対象パケットに選択された無効パケットから通信状態を判定するようにしてもよい。
【0015】
また、無効パケット判定部で、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0016】
また、無効パケット判定部で、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明にかかるユーザ体感品質推定方法は、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて、メディア用パケットのうち受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを備えている。
【0018】
また、本発明にかかるプログラムは、パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、品質情報取得部により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、品質解析部により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて、メディア用パケットのうち受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析ステップと、ユーザ体感品質推定部により、品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、品質解析部により、無効パケットの影響で正常に再生できない無効フレームが判定されて、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度が算出されるとともに、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かが判定され、ユーザ体感品質推定部により、品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値が導出され、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力される。
【0020】
これにより、FEC機能の効果が得られずに発生した映像劣化を、例えば人間が知覚できないような映像劣化などの他の映像劣化と正確に区別することができ、ランダムなパケット損失に対する損失耐性が高く、バースト的なパケット損失により初めて映像品質の低下が見られるような品質劣化特性を持つ映像通信についても、それぞれに適応した品質推定モデルを用いて精度よくユーザ体感品質を推定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
ユーザ体感品質推定装置1は、通信機能を有する情報処理装置からなり、アプリケーション端末2さらにはパケット網5と接続されて、アプリケーション端末2で実行されるリアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質を推定する。
このユーザ体感品質推定装置1には、主な機能部として、品質情報取得部11、品質解析部12、ユーザ体感品質推定部14、推定結果通知部17、および品質情報通知部18が設けられている。
【0023】
本実施の形態は、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて、メディア用パケットのうち受信側アプリケーション端末2で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件13に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定し、ユーザ体感品質推定部14により、品質解析部12で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル15から、品質解析部12で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値16として出力するようにしたものである。
【0024】
次に、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について詳細に説明する。
ユーザ体感品質推定装置1の各機能部は、専用の回路部や演算処理部、さらには記憶部から構成されている。特に、演算処理部(コンピュータ)は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、周辺回路内のメモリや記憶部に格納されているプログラムを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させて各機能部を実現する。記憶部は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、各機能部での処理に用いる各種処理情報を記憶する。
【0025】
品質情報取得部11は、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報をアプリケーション端末2のパケット受信部21から取得する機能とを有している。
【0026】
品質解析部12は、無効パケットの影響で正常に再生できない無効フレームに基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度(中間パラメータ)を算出する機能と、無効パケットの発生状況を検査した検査結果に基づいて無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する機能とを有している。
品質解析部12を構成する主な機能手段としては、無効パケット判定手段12A、品質推定尺度算出手段12B、および通信状態判定手段12Cがある。
【0027】
無効パケット判定手段12Aは、品質情報取得部11で取得された送信品質情報と受信品質情報とに基づいてメディア用パケットのうち正常に受信できなかったパケットを無効パケットとして判定する機能を有している。
【0028】
無効パケットとは、送信側のリアルタイム系アプリケーションから送信された、メディア(コンテンツ)のデータを含むメディア用パケットのうち、受信側のリアルタイム系アプリケーションで正常に受信できず、メディアとして再生できないパケットのことである。具体的には、送信側アプリケーション端末と受信側アプリケーション端末とをパケット網5を介して結ぶ伝送路上で損失したパケット、受信側アプリケーションの持つ揺らぎ吸収バッファで到着間隔が調整できなかった遅着パケット、さらにはメディア用パケットの到着順序が規定されているリアルタイム系アプリケーションでメディア用パケットの到着順序が逆転したパケットなどが対象となる。
【0029】
品質推定尺度算出手段12Bは、無効パケット判定手段12Aによる無効パケットの判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出する機能を有している。
品質推定尺度については、いくつかの算出方法が考えられる。例えば、無効パケットの影響により正常に再生できなかった無効フレームを判定し、品質推定期間における全フレームに対する無効フレームの割合を示す無効フレーム率を品質推定尺度として算出してもよい。あるいは、無効パケット数と無効フレーム率との関係を示す無効フレーム変換モデルを予め用意しておき、無効パケット判定手段12Aでの判定結果から得られた単位計測時間当たりの無効パケット数に対応する無効フレーム率を品質推定尺度として無効フレーム変換モデルから導出してもよい。
【0030】
通信状態判定手段12Cは、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を示すバースト判定条件13に基づいて、無効パケットの発生状況を検査する機能と、この検査結果に基づいて無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する機能とを有している。
バースト判定条件13は、無効パケットの発生状況に対する検査方法に応じた内容が予め記憶部に設定される。
【0031】
無効パケットの発生状況については、いくつかの検査方法が考えられる。本実施の形態では、バースト時間の期間長で連続して設けられた無効パケット検出時間ごとに、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数とを比較し、この比較結果に基づいて通信状態を判定する場合を例として説明する。この場合、バースト判定条件としては、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用いる。
【0032】
ユーザ体感品質推定部14は、品質解析部12で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル15から、品質解析部12で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質の品質推定値16として出力する機能を有している。
【0033】
推定結果通知部17は、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対し、制御パケットを用いて、当該装置で得られた品質推定値16さらにはこのユーザ体感品質値の算出に用いた送受信品質情報などの品質要因情報を含む推定結果情報を、定期的あるいは必要に応じて通知する機能を有している。
品質情報通知部18は、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信側アプリケーション端末へ通知する機能を有している。
【0034】
[通信状態判定処理]
次に、図2および図3を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置で用いられる通信状態判定処理について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。図3は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定動作を示す説明図である。
【0035】
本実施の形態では、品質解析部12の通信状態判定手段12Cで実行される通信状態判定処理として、バースト判定条件が、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組からなり、任意の通信状態判定期間内にバースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を連続して設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定する場合を例として説明する。
【0036】
この際、通信状態判定処理は、送受信アプリケーション端末2,2B間でやり取りされたメディア用パケットにより送信された映像に対して複数の無効パケット検出時間を連続して設け、バースト判定条件13に基づいてこれら無効パケット検出時間ごとに無効パケットの発生状況を検査する。
【0037】
ここでは、送信側アプリケーション端末2で各フレームに符号化された映像が各メディア用パケットに格納されて送信され、パケット網5を介して受信側アプリケーション端末2で受信されて再生される場合を例として説明する。
また、送信品質情報および受信品質情報は、通信状態判定処理を開始する前に、品質情報取得部11により、RTCP XR(RTP Control Protocol)などの制御用パケットにより、アプリケーション端末2,2Bから取得されているものとし、品質解析部12により、品質情報取得部11で取得した送信品質情報および受信品質情報に基づいて受信側アプリケーション端末2で正常に受信できなかった無効パケットが判定されているものとする。
【0038】
図2の通信状態判定処理において、通信状態判定手段12Cは、まず、記憶部からバースト判定条件13を取得する(ステップ100)。
バースト判定条件13は、無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を規定する情報からなる。本実施の形態では、図3に示すように、無効パケット検出時間の期間長を規定する、例えば10ms程度の値からなるバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数に基づき通信状態を判定する、例えばパケット数=3程度の値からなるバースト判定パケット数との組が、バースト判定条件13として用いられている。
【0039】
次に、通信状態判定手段12Cは、無効パケット検出時間内で検出された無効パケット数の計数値を初期化し(ステップ101)、新たな無効パケット検出時間の計時を開始する(ステップ102)。
続いて、通信状態判定手段12Cは、受信品質情報および無効パケット判定結果に基づいて、送信されたメディア用パケットのうち無効パケット検出時間内に受信側アプリケーション端末2で正常受信したパケットおよび正常受信できなかった無効パケットを処理パケットとして時刻順に1つずつ選択する(ステップ103)。なお、一度選択された処理パケットが再度選択されることはない。
【0040】
そして、選択した処理パケットが無効パケットであった場合にのみ(ステップ103:YES)、無効パケット数を計数し(ステップ104)、無効パケット検出時間がバースト時間分経過するまでステップ103,104を繰り返し実行する(ステップ105:NO)。
【0041】
一方、ステップ105において、無効パケット検出時間がバースト時間分経過した場合(ステップ105:YES)、無効パケット数とバースト判定パケット数とを比較する(ステップ106)。
ここで、無効パケット数がバースト判定パケット数に達していない場合には(ステップ106:NO)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれておらず、無効パケットがランダムに発生するランダム状態にあると判定し(ステップ107)、ステップ101に戻って次の無効パケット検出時間に対する通信状態判定処理を繰り返し実行する。
【0042】
また、ステップ106において、無効パケット数がバースト判定パケット数以上の場合には(ステップ106:YES)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれており、バースト状態にあると判定し(ステップ107)、一連の通信状態判定処理を終了する。
【0043】
図3の例では、最初の無効パケット検出時間内では2つの無効パケットが検出されたものの、この無効パケット数「2」はバースト判定パケット数「3」よりも小さいため、当該映像通信はランダム状態にあると判定される。一方、次の無効パケット検出時間内では4つの無効パケットが検出され、この無効パケット数「4」はバースト判定パケット数「3」以上であるため、当該映像通信はバースト状態にあると判定される。
【0044】
このように、本実施の形態では、バースト判定条件13として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、通信状態判定手段12Cにより、バースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を連続して設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしたので、パケット数を計数比較するという簡素な処理で、映像通信が無効パケットのバースト的な集中発生が含む通信状態か否かを容易かつ正確に判定できる。また、映像通信に対する平均的な通信状態判定結果を得ることができる。
【0045】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4および図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の動作について説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置でのユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。図5は、ユーザ体感品質の推定に用いる品質推定モデル例である。
【0046】
ここでは、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明する。この際、対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)から、対向アプリケーション端末のパケット送信部で得られた送信品質情報がアプリケーション端末2へ制御用パケットにより通知される場合を例として説明する。
【0047】
[ユーザ体感品質推定処理]
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11は、対向アプリケーション端末側からRTCP XR(RTP Control Protocol)などの制御用パケットで送信された送信品質情報が、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信されたものを取得する(ステップ110)。また、アプリケーション端末2のパケット受信部21で対向アプリケーション端末からのメディア用パケットから得られた受信品質情報を取得する(ステップ111)。
【0048】
ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11で取得した送信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各送信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号、映像フレーム種別、映像フレーム番号、送信パケット数、および送信フレーム数がある。また受信品質情報に含まれている主な品質情報としては、各受信メディア用パケットに関する、送信順序を示すシーケンス番号および直前メディア用パケットとの到着時刻差を示す遅延揺らぎ時間がある。
【0049】
次に、品質解析部12は、品質推定尺度算出手段12Bにより、無効パケット判定手段12Aによる無効パケットの判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出する。例えば、無効パケットの影響により正常に再生できなかった無効フレームを判定し、品質推定期間における全フレームに対する無効フレームの割合を示す無効フレーム率を品質推定尺度として算出する場合、映像の符号化に用いたフレーム構成と無効パケットに基づいて、無効パケットの影響により受信側アプリケーション端末2により正常再生されないフレームを無効フレームと判定し(ステップ113)、任意の品質推定対象期間に送信された全フレーム数に対する無効フレーム数の割合から無効フレーム率を算出し、品質推定尺度として出力する(ステップ114)。
【0050】
また、品質解析部12は、通信状態判定手段12Cにより、前述した図2の通信状態判定処理を実行することにより、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を示すバースト判定条件13に基づいて、無効パケットの発生状況を検査し、この検査結果に基づいて無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する(ステップ115)。
【0051】
この後、ユーザ体感品質推定部14は、予め用意して記憶部(図示せず)に格納しておいた品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、品質解析部12により判定された通信状態に対応する品質推定モデル15を選択し(ステップ116)、その品質推定モデル15から、品質解析部12で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し(ステップ117)、リアルタイム系アプリケーションのユーザ体感品質の品質推定値16として記憶部へ出力する。
【0052】
品質推定モデルの作成は、品質推定尺度と実際にオピニオン評価を行って得られた主観評価値であるMOS値(Mean Opinion Score 平均オピニオン評点)からなるユーザ体感品質との関係を回帰曲線またはテーブルによって表すことでモデル化しておく。この際、映像通信の通信状態について、それぞれ個別に品質推定モデルを作成しておく。ここでは、図5に示すように、無効パケットがランダムに発生する通信状態すなわちランダム状態用の品質推定モデル16Aと、無効パケットの集中発生を含む通信状態すなわちバースト状態用の品質推定モデル16Bとが作成されている。
【0053】
実際にユーザ体感品質推定部14で用いる品質推定モデル15としては、図5の回帰曲線を用いてもよく、これをテーブル化した推定モデルを用いてもよい。
具体的には、図5において、例えば入力パラメータの入力最小単位である最小刻(具体的には、無効フレーム率の入力最小単位)を0.01とした場合、0.01刻で、出力された値を平均することで表を作成する。つまり、最小刻の範囲内に入っているMOS値を平均することで、0から最小刻ごとに無効フレーム率とMOSの関係をテーブルを作成する。ただし、評価サンプル数が少ない場合、最小刻の中でデータがないものが存在する。その際には、前後にデータが存在するものを利用して補完を行う。この補完は、線形であっても、回帰を用いても構わない。このような現象が極力少なくなるように、モデル作成時には、多数のデータサンプルを取得することが望ましい。
【0054】
この後、推定結果通知部17は、ユーザ体感品質推定部14で推定された品質推定値16を記憶部から読み込んで、RTCP XRなどの制御用パケットに格納し、パケット網5を介して対向アプリケーション端末に接続されているユーザ体感品質推定装置(図示せず)や品質管理サーバ(図示せず)に対して送信し(ステップ118)、一連のユーザ体感品質推定処理を終了する。
この際、一定間隔ごとに品質推定値16の平均値やばらつきを示す分散などを求める統計処理した結果を推定結果通知部17で通知してもよい。
【0055】
このように、本実施の形態では、品質情報取得部11により、送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、受信側アプリケーション端末で受信したメディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得し、品質解析部12により、送信品質情報と受信品質情報とに基づいて、メディア用パケットのうち受信側アプリケーション端末2で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件13に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定し、ユーザ体感品質推定部14により、品質解析部12で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデル15から、品質解析部12で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、アプリケーションのユーザ体感品質の推定値16として出力している。
【0056】
これにより、FEC機能の効果が得られずに発生した映像劣化を、例えば人間が知覚できないような映像劣化などの他の映像劣化と正確に区別することができ、ランダムなパケット損失に対する損失耐性が高く、バースト的なパケット損失により初めて映像品質の低下が見られるような品質劣化特性を持つ映像通信についても、それぞれに適応した品質推定モデルを用いて精度よくユーザ体感品質を推定することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、バースト判定条件13として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、通信状態判定手段12Cにより、バースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を連続して設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしたので、パケット数を計数比較するという簡素な処理で、映像通信が無効パケットのバースト的な集中発生が含む通信状態か否かを容易かつ正確に判定できる。また、映像通信に対する平均的な通信状態判定結果を得ることができる。
【0058】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。図7は、本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定動作を示す説明図である。
【0059】
第1の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置1の通信状態判定処理として、通信状態判定期間内に連続して無効パケット検出時間を設けた場合を例として説明した。本実施の形態では、通信状態判定期間内に任意の無効パケットを先頭として無効パケット検出時間を設けた場合を例として説明する。なお、本実施の形態は、品質解析部12の通信状態判定手段12Cによる通信状態判定処理が変更されるだけで、ユーザ体感品質推定装置1の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施の形態では、バースト判定条件として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用いる。
通信状態判定手段12Cは、任意の無効パケットの発生時点から、例えば3分間程度のバースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて当該無効パケット検出時間における通信状態を判定する。
【0061】
[第2の実施の形態の動作]
図6の通信状態判定処理において、通信状態判定手段12Cは、まず、記憶部から任意のバースト判定条件13を取得する(ステップ120)。バースト判定条件13は、無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を規定する情報からなる。本実施の形態では、図7に示すように、無効パケット検出時間の期間長を規定する、例えば10ms程度の値からなるバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数に基づき通信状態を判定する、例えばパケット数3程度の値からなるバースト判定パケット数との組が、バースト判定条件13として用いられている。
【0062】
次に、通信状態判定手段12Cは、無効パケット検出時間内で検出された無効パケット数の計数値を初期化する(ステップ121)。
続いて、通信状態判定手段12Cは、受信品質情報および無効パケット判定結果に基づいて、送信されたメディア用パケットのうち無効パケット検出時間内に受信側アプリケーション端末2で正常受信したパケットおよび正常受信できなかった無効パケットを処理パケットとして時刻順に1つずつ選択する。なお、一度選択された処理パケットが再度選択されることはない。
【0063】
そして、選択した処理パケットが無効パケットであった場合にのみ(ステップ122:YES)、無効パケット数を計数する(ステップ123)。この際、無効パケット数が「1」の場合にのみ(ステップ124:YES)、新たな無効パケット検出時間の計時を開始する(ステップ125)。
通信状態判定手段12Cは、このようにして、無効パケット検出時間がバースト時間分経過するまでステップ122〜125を繰り返し実行する(ステップ126:NO)。
【0064】
一方、ステップ126において、無効パケット検出時間がバースト時間分経過した場合(ステップ126:YES)、無効パケット数とバースト判定パケット数とを比較する(ステップ127)。
ここで、無効パケット数がバースト判定パケット数に達していない場合には(ステップ127:NO)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれておらず、無効パケットがランダムに発生するランダム状態にあると判定し(ステップ128)、ステップ121に戻って次の無効パケット検出時間に対する通信状態判定処理を繰り返し実行する。
【0065】
また、ステップ127において、無効パケット数がバースト判定パケット数以上の場合には(ステップ127:YES)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれており、バースト状態にあると判定し(ステップ129)、一連の通信状態判定処理を終了する。
【0066】
図7の例では、最初の無効パケット検出時間内では2つの無効パケットが検出されたものの、この無効パケット数「2」はバースト判定パケット数「T=3」よりも小さいため、当該映像通信はランダム状態にあると判定される。一方、次の無効パケット検出時間内では4つの無効パケットが検出され、この無効パケット数「4」はバースト判定パケット数「T=3」以上であるため、当該映像通信はバースト状態にあると判定される。
【0067】
このように、本実施の形態では、バースト判定条件13として、無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、通信状態判定手段12Cにより、任意の無効パケットの発生時点からバースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて通信状態を判定するようにしたので、パケット数を計数比較するという簡素な処理で通信状態を判定できる。
【0068】
また、固定長の無効パケット検出時間が、必ず無効パケットを先頭として設けられるため、無効パケット検出時間を連続無効パケットの発生する区間に効率よく設定することができ、高い精度で通信状態判定を行うことができる。
【0069】
[第3の実施の形態]
次に、図8および図9を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。図9は、本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定動作を示す説明図である。
【0070】
第1の実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置1の通信状態判定処理として、通信状態判定期間内に連続して無効パケット検出時間を設けた場合を例として説明した。本実施の形態では、通信状態判定期間内に、任意の無効パケットの発生時点から次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となった時点までを無効パケット検出時間として設けた場合を例として説明する。なお、本実施の形態は、品質解析部12の通信状態判定手段12Cによる通信状態判定処理が変更されるだけで、ユーザ体感品質推定装置1の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施の形態では、バースト判定条件として、無効パケット検出時間の終了判定に用いる無効パケット間隔数を規定するパケット密度判定量と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用いる。
通信状態判定手段12Cは、任意の無効パケットの発生時点から次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となった時点までの期間長を持つ無効パケット検出時間を設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて当該無効パケット検出時間における通信状態を判定する。
【0072】
[第3の実施の形態の動作]
図8の通信状態判定処理において、通信状態判定手段12Cは、まず、記憶部から任意のバースト判定条件13を取得する(ステップ140)。バースト判定条件13は、無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を規定する情報からなる。本実施の形態では、図9に示すように、無効パケット検出時間の終了判定に用いる無効パケット間隔数を規定するパケット密度判定量と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数に基づき通信状態を判定する、例えばパケット数3程度の値からなるバースト判定パケット数との組が、バースト判定条件13として用いられている。
【0073】
次に、通信状態判定手段12Cは、無効パケット検出時間内で検出された無効パケット数の計数値を初期化する(ステップ141)。
続いて、通信状態判定手段12Cは、送受信品質情報および無効パケット判定結果に基づいて、送信されたメディア用パケットのうち無効パケット検出時間内に受信側アプリケーション端末2で正常受信したパケットおよび正常受信できなかった無効パケットを処理パケットとして時刻順に1つずつ選択する。なお、一度選択された処理パケットが再度選択されることはない。
【0074】
そして、選択した処理パケットが無効パケットであった場合にのみ(ステップ142:YES)、無効パケット数を計数する(ステップ143)。この際、無効パケット数が「1」の場合にのみ(ステップ144:YES)、新たな無効パケット検出時間の計時を開始して(ステップ145)、無効パケット間隔数を初期化する(ステップ146)。
【0075】
また、ステップ142において、選択した処理パケットが無効パケットではない場合(ステップ142:NO)、ステップ144において無効パケット数が「1」ではない場合(ステップ144:NO)、無効パケット間隔数を1つ増やす(ステップ147)。
通信状態判定手段12Cは、このようにして、無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となるまでステップ142〜147を繰り返し実行する(ステップ148:NO)。
【0076】
一方、ステップ148において、無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となった場合(ステップ148:YES)、無効パケット数とバースト判定パケット数とを比較する(ステップ149)。
ここで、無効パケット数がバースト判定パケット数に達していない場合には(ステップ119:NO)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれておらず、無効パケットがランダムに発生するランダム状態にあると判定し(ステップ150)、ステップ141に戻って次の無効パケット検出時間に対する通信状態判定処理を繰り返し実行する。
【0077】
また、ステップ149において、無効パケット数がバースト判定パケット数以上の場合には(ステップ149:YES)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれており、バースト状態にあると判定し(ステップ151)、一連の通信状態判定処理を終了する。
【0078】
図9の例では、最初の無効パケット検出時間内では、次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がパケット密度判定量「X=5」となって無効パケット検出時間が終了した時点までに、1つの無効パケットしか検出されず、この無効パケット数「1」はバースト判定パケット数「T=3」よりも小さいため、当該映像通信はランダム状態にあると判定される。一方、次の無効パケット検出時間内では、次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がそれぞれ「1」,「1」,「0」と続き、最後の無効パケット間隔数がパケット密度判定量「X=5」となって無効パケット検出時間が終了する。この際、合わせて4つの無効パケットが検出され、この無効パケット数「4」はバースト判定パケット数「T=3」以上であるため、当該映像通信はバースト状態にあると判定される。
【0079】
このように、本実施の形態では、バースト判定条件13として、無効パケット検出時間の終了判定に用いる無効パケット間隔数を規定するパケット密度判定量と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組を用い、通信状態判定手段12Cにより、任意の無効パケットの発生時点から次の無効パケットまでの無効パケット間隔数がパケット密度判定量以上となった時点までを無効パケット検出時間とし、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数とバースト判定パケット数との比較結果に基づいて当該無効パケット検出時間における通信状態を判定するようにしたので、パケット数を計数比較するという簡素な処理で通信状態を判定できる。
【0080】
また、無効パケット検出時間の終了時点を無効パケット間隔数で判定するようにしたので、無効パケットの発生状況に応じた可変長の無効パケット検出時間を設定することができる。これにより、固定長の無効パケット検出時間を用いる場合と比較して、映像劣化として知覚される可能性が高い連続無効パケットを、1つのまとまりとして通信状態の判定を行うことができ、極めて高い精度で通信状態判定を行うことができる。
【0081】
[第4の実施の形態]
次に、図10および図11を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図10は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。図11は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での判定対象パケット選択動作を示す説明図である。
【0082】
第1の実施の形態では、受信側アプリケーション端末2で正常受信されたメディア用パケットおよび無効パケットのすべてを処理パケットとして通信状態判定処理を行う場合を例として説明した。本実施の形態では、受信側アプリケーション端末2で正常受信されたパケットおよび無効パケットのうち、それぞれのメディア用パケットに対応するフレーム種別に応じて通信状態判定処理すべきパケットを判定対象パケットとして選択する場合について説明する。
【0083】
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置1には、新たな機能部として、品質解析部12に判定対象パケット選択手段12Dが追加されている。なお、本実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置1における他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0084】
判定対象パケット選択手段12Dは、受信品質情報に基づいてメディア用パケットに対応するフレームのフレーム種別を判定する機能と、フレーム種別に基づいてメディア用パケットのうち通信状態の判定対象となる判定対象パケットを選択する機能とを有している。各パケットに対応するフレーム種別については、例えば記送信品質情報に含まれる当該パケットのヘッダ情報から、対象フレームのフレーム種別を取得することができる。
【0085】
一般に、映像を各種フレームに符号化する場合、当該フレームに含まれる符号化データの内容に応じて、それぞれのフレームの劣化による映像品質に対する影響は異なる。例えば、標準規格MPEG−2(ISO/IEC 13818)のGOP(Group Of Pictures)構成において、当該フレームに対応する画像のすべての画像データを含むIフレームや、このIフレームなどの過去の画像から片方向フレーム間予測符号化により生成されるPフレームでは、劣化による映像品質に対する影響は大きい。一方、I,Pフレームなどの過去や未来の画像から両方向フレーム間予測符号化により生成されるBフレームでは、劣化による映像品質に対する影響は比較的小さい。
【0086】
本実施の形態は、このようなフレーム種別で異なる映像品質への影響に着目し、図11に示すように、メディア用パケットに対応するフレームのフレーム種別を判定し、例えばIフレームやPフレームなど、劣化による映像品質に対する影響が大きいフレーム種別のメディア用パケットのみを、通信状態判定処理の判定対象パケットとして選択するようにしたものである。
これにより、人間に映像劣化として知覚されうる無効パケットのみを通信状態判定処理とすることができ、高い精度で通信状態判定を行うことができる。
【0087】
[第4の実施の形態の動作]
次に、図12を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の動作について説明する。図12は、本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートであり、前述した図6と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
ここでは、第2の実施の形態で説明した通信状態判定処理に、本実施の形態を適用した場合を例として説明するが、他の実施の形態にも同様にして適用できる。
【0088】
図12の通信状態判定処理において、通信状態判定手段12Cは、まず、記憶部から任意のバースト判定条件13を取得する(ステップ120)。バースト判定条件13は、無効パケット検出時間内における無効パケットの発生状況を規定する情報からなる。本実施の形態では、図8に示すように、無効パケット検出時間の期間長を規定する、例えば10ms程度の値からなるバースト時間と、無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数に基づき通信状態を判定する、例えばパケット数3程度の値からなるバースト判定パケット数との組が、バースト判定条件13として用いられている。
【0089】
次に、通信状態判定手段12Cは、無効パケット検出時間内で検出された無効パケット数の計数値を初期化する(ステップ121)。
続いて、通信状態判定手段12Cは、受信品質情報および無効パケット判定結果に基づいて、送信されたメディア用パケットのうち無効パケット検出時間内に受信側アプリケーション端末2で正常受信したパケットおよび正常受信できなかった無効パケットを処理パケットとして時刻順に1つずつ選択する。なお、一度選択された処理パケットが再度選択されることはない。
【0090】
そして、選択した処理パケットが無効パケットであった場合には(ステップ122:YES)、判定対象パケット選択手段12Dでの選択結果に基づいて、当該無効パケットが判定対象パケットか否か検査し、判定対象パケットでない場合は(ステップ130:NO)、ステップ121へ戻って次の無効パケット検出時間に対する通信状態判定処理を繰り返し実行する。
【0091】
また、当該無効パケットが判定対象パケットである場合は(ステップ130:YES)、無効パケット数を計数する(ステップ123)。この際、無効パケット数が「1」の場合にのみ(ステップ124:YES)、新たな無効パケット検出時間の計時を開始する(ステップ125)。
通信状態判定手段12Cは、このようにして、無効パケット検出時間がバースト時間分経過するまでステップ122〜125を繰り返し実行する(ステップ126:NO)。
【0092】
一方、ステップ126において、無効パケット検出時間がバースト時間分経過した場合(ステップ126:YES)、無効パケット数とバースト判定パケット数とを比較する(ステップ127)。
ここで、無効パケット数がバースト判定パケット数に達していない場合には(ステップ127:NO)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれておらず、無効パケットがランダムに発生するランダム状態にあると判定し(ステップ128)、ステップ121に戻って次の無効パケット検出時間に対する通信状態判定処理を繰り返し実行する。
【0093】
また、ステップ127において、無効パケット数がバースト判定パケット数以上の場合には(ステップ127:YES)、当該映像通信には、無効パケットのバースト的な集中発生が含まれており、バースト状態にあると判定し(ステップ129)、一連の通信状態判定処理を終了する。
【0094】
このように、本実施の形態は、判定対象パケット選択手段12Dにより、受信品質情報に基づいてメディア用パケットに対応するフレームのフレーム種別を判定し、フレーム種別に基づいてメディア用パケットのうち通信状態の判定対象となる判定対象パケットを選択し、通信状態判定手段12Cにより、無効パケットのうち判定対象パケットに選択された無効パケットから通信状態を判定するようにしたので、人間に映像劣化として知覚されうる無効パケットのみを通信状態判定処理とすることができ、高い精度で通信状態判定を行うことができる。
【0095】
[第5の実施の形態]
次に、図13を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置について説明する。図13は、本発明の第5の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【0096】
本実施の形態では、前述した第1の実施の形態の無効パケット判定手段12Aにおける無効パケット判定処理の具体例について説明する。
無効パケット判定手段12Aは、まず、送信品質情報から未判定の送信メディア用パケットを任意に選択し(ステップ160)、そのシーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されているか受信品質情報で確認する(ステップ161)。ここで、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されていない場合には(ステップ161:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路で損失した損失パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ165)。
【0097】
一方、シーケンス番号と同じメディア用パケットが受信されている場合には(ステップ161:YES)、当該送信メディア用パケットの遅延揺らぎ時間を受信品質情報で確認し、リアルタイム系アプリケーションが持つ許容遅延時間と比較する(ステップ162)。ここで、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間を上回っている場合には(ステップ162:NO)、当該メディア用パケットが途中の伝送路や端末内で遅延して到着した遅着パケットであると判断できることから、無効パケットであると判定する(ステップ165)。
【0098】
一方、遅延揺らぎ時間が許容遅延時間以下である場合には(ステップ162:YES)、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合にのみ(ステップ163:YES)、かつ当該メディア用パケットの到着順とシーケンス番号とが一致するか受信品質情報により確認する。ここで、この一致が確認できず到着順序が逆転しているパケットである場合には(ステップ164:YES)、無効パケットであると判定する(ステップ165)。
【0099】
なお、到着順序が逆転していない場合(ステップ164:NO)や、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なさない場合(ステップ163:NO)、当該パケットは無効パケットではないと判定する(ステップ166)。
このようにして、選択した送信メディア用パケットに対して無効パケット判定を行った後、無効パケット未判定の送信パケットが残っている場合には(ステップ167:YES)、前述したステップ160へ戻って残りの受信メディア用パケットに対する無効パケット判定を繰り返し行う。一方、すべての送信メディア用パケットに対して無効パケット判定が終了した場合(ステップ167:NO)、一連の無効パケット判定処理を終了する。
【0100】
このように、本実施の形態では、無効パケット判定手段12Aにより、送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および受信品質情報の各メディア用パケットの到着時刻から得た直前メディア用パケットとの到着時刻差がアプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、途中の伝送路だけではなく遅着により損失したパケットについても無効パケットと判定することができ、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットを正確に判定できる。
【0101】
また、無効パケット判定手段12Aにより、受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを無効パケットと判定するようにしたので、当該リアルタイム系アプリケーションが到着順序逆転パケットを損失と見なす場合、受信側のリアルタイム系アプリケーションでメディアとして再生できないパケットをさらに正確に判定できる。
【0102】
[各実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態では、アプリケーション端末2が受信側であり、送信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)から送信されパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定する場合を例として説明したがこれに限定されるものではない。すなわち、アプリケーション端末2が送信側であり、受信側となる対向アプリケーション端末(図示せず)でパケット網5を介して受信した映像メディアのメディア用パケットに関するユーザ体感品質値を推定することもできる。
【0103】
この場合には、ユーザ体感品質推定装置1の品質情報取得部11により、アプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた品質情報を前述した送信品質情報として用いるとともに、アプリケーション端末2のパケット受信部21で受信した対向アプリケーション端末からの品質情報を前述した受信品質情報として用いればよい。
この際、対向アプリケーション端末でも同様のユーザ体感品質を推定する場合には、前述した品質情報通知部18でアプリケーション端末2のパケット送信部22で得られた送信品質情報を送信する代わりに、パケット受信部21で得られた受信メディア用パケットに関する受信品質情報を対向アプリケーション端末へ送信すればよい。
【0104】
なお、これら送受信品質情報は、直接、送信側と受信側との間でやり取りしてもよいが、これら品質情報を管理する品質管理サーバを介してやり取りするようにしてもよい。また、ユーザ体感品質推定装置1で、品質情報を直接受信するようにしてもよい。
【0105】
また、以上の各実施の形態では、ユーザ体感品質推定装置1をアプリケーション端末2とは別個の装置で実現した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、リアルタイム系アプリケーションと並行してアプリケーション端末2で実行される品質推定アプリケーションにより実現してもよい。これにより、アプリケーション端末2のハードウェア資源を共用して実現でき、極めて容易にユーザ体感品質を管理できる。
【0106】
また、以上の各実施の形態では、通信状態判定処理において、バースト状態と判定された場合には通信状態判定処理を終了し、当該映像通信の通信状態がバースト状態にあると確定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば同一映像通信に対するユーザ体感品質の推定処理を、品質推定期間ごとに繰り返し実行する場合には、その品質推定期間を通信状態判定期間と見なし、これら通信状態判定期間ごとに各実施の形態の通信状態判定処理を実行すればよく、品質推定期間ごとに当該映像通信の通信状態を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。
【図3】図2の通信状態判定動作を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置でのユーザ体感品質推定処理を示すフローチャートである。
【図5】ユーザ体感品質の推定に用いる品質推定モデル例である。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の通信状態判定動作を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の通信状態判定動作を示す説明図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図11】判定対象パケット選択動作を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での通信状態判定処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施の形態にかかるユーザ体感品質推定装置での無効パケット判定処理を示すフローチャートである。
【図14】FEC機能の効果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0108】
1…ユーザ体感品質推定装置、11…品質情報取得部、12…品質解析部、12A…無効パケット判定手段、12B…品質推定尺度算出手段、12C…通信状態判定手段、12D…判定対象パケット選択手段、13…バースト判定条件、14…ユーザ体感品質推定部、15…品質推定モデル、16…品質推定値、17…推定結果通知部、18…品質情報通知部、2…アプリケーション端末、21…パケット受信部、22…パケット送信部、5…パケット網。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置であって、
前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得部と、
前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて、前記メディア用パケットのうち前記受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における前記無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析部と、
前記品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定部と
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記バースト判定条件は、前記無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、前記無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組からなり、
前記品質解析部は、前記バースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を連続して設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数と前記バースト判定パケット数との比較結果に基づいて前記通信状態を判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記バースト判定条件は、前記無効パケット検出時間の期間長を規定するためのバースト時間と、前記無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組からなり、
前記品質解析部は、任意の無効パケットの発生時点から前記バースト時間の期間長を持つ無効パケット検出時間を設け、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数と前記バースト判定パケット数との比較結果に基づいて前記通信状態を判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記バースト判定条件は、前記無効パケット検出時間の終了判定に用いる無効パケット間隔数を規定するパケット密度判定量と、前記無効パケット検出時間内に検出した無効パケット数を判定するためのバースト判定パケット数との組からなり、
前記品質解析部は、任意の無効パケットの発生時点から次の無効パケットまでの無効パケット間隔数が前記パケット密度判定量以上となった時点までを無効パケット検出時間とし、当該無効パケット検出時間内の無効パケットの数と前記バースト判定パケット数との比較結果に基づいて前記通信状態を判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記品質解析部は、前記受信品質情報に基づいて前記メディア用パケットに対応するフレームのフレーム種別を判定し、前記フレーム種別に基づいて前記メディア用パケットのうち通信状態の判定対象となる判定対象パケットを選択し、前記通信状態を判定する際、前記無効パケットのうち前記判定対象パケットに選択された無効パケットから前記通信状態を判定する
ことを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定部は、前記送信品質情報で送信が確認されたメディア用パケットのうち前記受信品質情報で受信が確認されていないメディア用パケット、および前記受信品質情報の各メディア用パケットの到着間隔を示す遅延揺らぎ時間が前記アプリケーションの許容パケット遅延時間を超えるメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項7】
請求項1に記載のユーザ体感品質推定装置において、
前記無効パケット判定部は、前記受信品質情報で受信確認されたメディア用パケットの送信順序と受信順序とが矛盾するメディア用パケットを前記無効パケットと判定することを特徴とするユーザ体感品質推定装置。
【請求項8】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置で用いられるユーザ体感品質推定方法であって、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて、前記メディア用パケットのうち前記受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における前記無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、前記品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を備えることを特徴とするユーザ体感品質推定方法。
【請求項9】
パケット網を介して接続された送信側および受信側アプリケーション端末間で、リアルタイム系のアプリケーションにより映像を符号化して得られた各フレームをメディア用パケットで送受信した際に、前記受信側アプリケーション端末で受信再生した映像についてユーザが実感するユーザ体感品質を推定するユーザ体感品質推定装置のコンピュータに、
品質情報取得部により、前記送信側アプリケーション端末から送信されたメディア用パケットの送信状況を示す送信側品質情報と、前記受信側アプリケーション端末で受信した前記メディア用パケットの受信状況を示す受信品質情報とを取得する品質情報取得ステップと、
品質解析部により、前記送信品質情報と前記受信品質情報とに基づいて、前記メディア用パケットのうち前記受信側アプリケーション端末で正常受信できなかった無効パケットを判定し、この判定結果に基づいてユーザ体感品質の推定に用いる品質推定尺度を算出し、任意の無効パケット検出時間内における前記無効パケットの発生状況を所定のバースト判定条件に基づいて判定することにより無効パケットの集中発生を含む通信状態か否かを判定する品質解析ステップと、
ユーザ体感品質推定部により、前記品質解析部で判定された通信状態に応じて選択した、品質推定尺度とユーザ体感品質値との関係を示す品質推定モデルから、前記品質解析部で算出された品質推定尺度に対応するユーザ体感品質値を導出し、前記アプリケーションのユーザ体感品質の推定値として出力するユーザ体感品質推定ステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−329774(P2007−329774A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160329(P2006−160329)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】