説明

ユーザ誘導システム、移動通信端末、及びユーザ誘導方法

【課題】 通信利用時の移動通信端末のユーザを適切な行動に誘導すること
【解決手段】 このユーザ誘導システム1は、移動通信端末2の通信履歴情報を受信する通信履歴受信部101と、基地局3からリソース状態情報を受信するとともに基地局における通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成部102と、通信履歴情報及び通信トラフィック情報に基づいて、移動通信端末2のユーザへの推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出部103と、複数の推奨行動に関する不満度に基づいてユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出部104と、推奨行動を移動通信端末に2送信する情報送信部105と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信利用時のユーザの行動を誘導するユーザ誘導システム、移動通信端末、及びユーザ誘導方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいては、ユーザ端末の位置が絶えず変化するため、条件によっては局所的に通信要求が集中する場合がある。このような場合には、移動通信システムにおける無線リソース等の通信リソースの不足により、通信要求が受け付けられないケースが増大する。このようなケースに対処するため、動的に変化する通信システムの状態を基地局から収集して、通信時に指定するパラメータを好適な値に設定する通信端末が知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−521990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の通信端末では、通信ネットワークの能力、料金表等の様々な通信システムの状態情報が同報通信で受信されるため、ユーザにとって有益な情報提供が行われていない。また、ユーザの採りうる行動は様々であるため、このような状態情報から通信パラメータを変更するだけでは、通信リソースの有効利用、及びユーザにとって適した行動への誘導が困難である。
【0004】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、通信利用時のユーザを適切な行動に誘導することが可能なユーザ誘導システム、移動通信端末、及びユーザ誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のユーザ誘導システムは、通信ネットワークにおける移動通信端末の通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信手段と、通信ネットワーク内の基地局から基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、リソース状態情報及び通信履歴情報を用いて基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成手段と、通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及びトラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、移動通信端末のユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出手段と、不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、複数の推奨行動の中からユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出手段と、推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動を移動通信端末に送信する情報送信手段と備える。
【0006】
或いは、本発明の移動通信端末は、通信ネットワークにおける通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信手段と、通信ネットワーク内の基地局から基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、リソース状態情報及び通信履歴情報を用いて基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成手段と、通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及びトラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、ユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出手段と、不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、複数の推奨行動の中からユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出手段と、推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動を出力する出力手段と備える。
【0007】
或いは、本発明のユーザ誘導方法は、通信履歴受信手段が、通信ネットワークにおける通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信ステップと、トラフィック情報生成手段が、通信ネットワーク内の基地局から基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、リソース状態情報及び通信履歴情報を用いて基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成ステップと、不満度算出手段が、通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及びトラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、ユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出ステップと、推奨行動抽出手段が、不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、複数の推奨行動の中からユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出ステップとを備える。
【0008】
このようなユーザ誘導システム、移動通信端末、及びユーザ誘導方法によれば、移動通信端末の通信履歴と基地局のリソースの使用状態とを受信し、これらの情報からその基地局における通信トラフィックに関する情報を生成し、通信履歴、基地局のリソースの使用状態、及び基地局の通信トラフィックに基づいて、ユーザに推奨する複数の行動毎の不満度を算出する。算出した不満度に基づいてユーザに適した推奨行動を複数の行動の中から抽出してユーザに通知するので、各基地局におけるトラフィック状態、ユーザにおける通信状態を加味して、複数の候補からユーザに適した推奨行動を選び出すことができる。
【0009】
また、不満度算出手段は、通信履歴情報及び通信トラフィック情報に基づいて予め設定された関数を用いて不満度を算出し、通信履歴情報に基づいて、情報送信手段によって移動通信端末に推奨行動が送信された後のユーザの行動を特定する行動特定手段と、行動特定手段によって特定された行動が推奨行動と異なる場合に、関数を再設定する関数再設定手段とを更に備えることが好ましい。かかる構成とすれば、ユーザに通知した推奨行動に対するユーザの実際の行動を把握して不満度を算出することで、ユーザに対してより適した推奨行動を提示することができる。
【0010】
また、上述した移動通信端末においては、推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動に応じて、通信ネットワークに対する接続を制限する通信制御手段を更に備えることも好ましい。この場合、端末側において推奨行動に即した通信制御を行うことで、通信リソースのより効率的な利用を促進することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信利用時のユーザを適切な行動に誘導するユーザ誘導システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面とともに本発明によるユーザ誘導システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明によるユーザ誘導システムの好適な一実施形態を示す概略構成図である。同図に示すユーザ誘導システム1は、移動通信端末のユーザに通信利用時に推奨する行動に関する情報を送出するサーバシステム(又は、サーバシステムの集合体)であり、通信ネットワーク5及び基地局3を含む複数の基地局を介して移動通信端末2と情報の送受信が可能なように構成されている。
【0014】
ユーザ誘導システム1は、機能的な構成要素として、通信履歴受信部(通信履歴受信手段)101と、トラフィック情報生成部(トラフィック情報生成手段)102と、不満度算出部(不満度算出手段)103と、推奨行動抽出部(推奨行動抽出手段)104と、情報送信部(情報送信手段)105と、行動特定部(行動特定手段)106と、関数再設定部(関数再設定手段)107と、通信履歴格納部108と、不満度関数格納部109と、推奨行動格納部110とを備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0015】
通信履歴受信部101は、通信ネットワーク5における移動通信端末2を含む複数の移動通信端末の通信の履歴情報である通信履歴情報を、基地局3から受信するとともに、その通信履歴情報を通信履歴格納部108に格納する。ここで、基地局3では、複数の移動通信端末が基地局3を経由して通信した際の履歴を保持する機能を有している。より詳細には、複数の移動通信端末が基地局3に向けて通信ネットワーク5に対する接続要求を送信する際に、基地局3からユーザ誘導システム1に向けて通信履歴情報が送信される。また、複数の移動通信端末と通信ネットワーク5との間の接続が切断される際にも、基地局3からユーザ誘導システム1に向けて通信履歴情報が更新された状態で送信される。通信履歴受信部101は、同様にして、基地局3以外の通信ネットワーク5内の基地局からも通信履歴情報を受信する。
【0016】
図2には、このようにして、通信履歴格納部108に格納されたデータ構成の一例を示す。同図に示すように、通信履歴格納部108においては、移動通信端末2を特定するユーザID“0000001”と、移動通信端末2が接続要求を送出した時刻である発信時刻“200501171402”と、その発信時刻において接続が確立されたか否かを示す発信時状態“OK”と、発信時刻における移動通信端末2の場所を示す発信時場所“エリア002”と、移動通信端末2における通信が終了された時刻を示す終話時刻“200501171406”と、その終話時刻において接続が正常に切断されたか否かを示す終話時状態“NG”と、終話時刻における移動通信端末2の場所を示す終話時場所“エリア001”と、移動通信端末2における通信手段を示す通信手段“電話”と、移動通信端末2の接続要求時にユーザ誘導システム1から送信された推奨行動の情報内容“無し”とが関連づけて格納されている。なお、通信履歴情報に含まれる「ユーザ誘導システム1から送信された推奨行動の情報内容」は、基地局3が、ユーザ誘導システム1と移動通信端末2との間で送受信される情報をモニターすることにより、通信履歴情報として保持してもよいし、通信履歴受信部101が、情報送信部105から送信される推奨行動の情報をモニターして、通信履歴格納部108における該当する通信履歴情報に追加して格納してもよい。
【0017】
トラフィック情報生成部102は、基地局3を含む複数の基地局からシステムリソース、通信リソース等の基地局3のリソース(資源)の使用状態を示すリソース状態情報を定期的又は随時に受信する。このリソース状態情報としては、例えば、基地局3における移動通信端末との通信に利用する無線チャンネルの使用率や基地局3におけるCPU(Central Processing Unit)の使用率といった情報が挙げられる。また、トラフィック情報生成部102は、通信履歴格納部108から通信履歴情報を読み出すとともに、その通信履歴情報及びリソース状態情報を参照しながら、基地局3における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成する。
【0018】
例えば、トラフィック情報生成部102は、通信履歴情報から「発信時刻」が現在時刻から所定時間帯内であって「発信時場所」が基地局の在圏エリアである情報を抽出して基地局3における「発呼数」をカウントしたり、抽出された通信履歴情報における「発信時状態」を集計することにより「呼損の発生回数BP1」を求めたり、抽出された通信履歴情報における「推奨行動の情報内容」の有無を集計することにより「推奨行動の送信回数I」を求めたり、通信履歴情報から「終話時刻」が現在時刻から所定時間帯内であって「終話時場所」が基地局の在圏エリアである情報を抽出し、その通信履歴における「終話時状態」を集計することにより「強制終了の発生回数DP1」を求めたりすることができる。
【0019】
さらに、トラフィック情報生成部102は、基地局3のリソース情報から現在の基地局3における「呼損確率BP2」及び「強制終了確率DP2」を予測することも行う。より具体的には、基地局3における無線チャンネルの使用率やCPU使用率、基地局3の無線チャンネル数等のパラメータを用いて「呼損確率BP2」及び「強制終了確率DP2」を算出する。トラフィック情報生成部102は、複数の基地局に関して生成した通信トラフィック情報、及び通信履歴格納部108から読み出した通信履歴情報を不満度算出部103に出力する。
【0020】
不満度算出部103は、トラフィック情報生成部102から受け取った通信トラフィック情報及び通信履歴情報に基づいて、移動通信端末2のユーザに推奨する行動に関する不満度を算出する。この移動通信端末2のユーザに推奨する行動を示す推奨行動情報は、推奨行動抽出部104から引き渡され(詳細は、後述する。)、その推奨行動情報に関して算出された不満度は推奨行動抽出部104に返される。
【0021】
すなわち、不満度算出部103は、不満度関数格納部109を参照することにより、不満度を算出するための不満度関数を特定する。ここで、不満度算出部103が特定する不満度関数は、下記式(1)で与えられる。
a×BP2+b×DP2+c×I+d×M+e×W+f×C …(1)
式(1)中、BP2は、呼損確率、DP2は、強制終了確率、Iは、推奨行動の送信回数、Mは、誘導により移動する距離、Wは、誘導により待機する時間、Cは、誘導により通信手段を変更する回数を示す。ここで、過去の通信履歴から不満度を算出する場合は、上記式(1)中の呼損確率BP2及び強制終了確率DP2の代わりに呼損の発生回数BP1及び強制終了の発生回数DP1を用いてもよい。このような不満度関数においては、呼損、強制終了等のユーザに対して不満を生じさせる事象に関するパラメータを用いて、ユーザの不満度を各事象の発生回数、発生確率、量に比例する値の和で表している。不満度算出部103は、不満度関数格納部109から上記式(1)における係数a〜fを読み出すとともに、この係数に基づいて不満度関数を特定した後、不満度関数を利用して推奨行動に対するユーザの不満度を算出する。図3は、不満度関数格納部109に格納されたデータの構成の一例を示す。同図に示すように、移動通信端末2のユーザが属するユーザグループ“0001”と、各係数a〜fとが関連づけて格納されており、不満度算出部103は、ユーザグループ“0001”を検索キーとして用いて不満度関数格納部109を参照することにより、係数a“100”、係数b“100”、係数c“10”、係数d“1”、係数e“1”、及び係数f“10”を読み出す。
【0022】
そこで、不満度算出部103は、推奨行動情報に関する不満度を、トラフィック情報に含まれる呼損確率BP2及び強制終了確率DP2と、通信履歴情報及び推奨行動情報から導き出されるパラメータI,M,W,Cとを上記式(1)に代入することにより不満度を算出する。
【0023】
詳細には、不満度算出部103は、推奨行動情報が「X周辺への移動」の場合には、移動先の在圏エリアに対応する基地局の呼損確率BP2及び強制終了確率DP2と、最新の通信履歴における「発信時場所」又は基地局3から取得される最新の移動通信端末2の発信時場所と推奨行動とから計算される「誘導により移動する距離M」及び「誘導により待機する時間W」と、通信履歴における「推奨行動の情報内容」の有無から特定される「推奨行動の送信回数I」とを用いて不満度を算出する。例えば、不満度算出部103は、推奨行動「△駅周辺への移動」の場合、「誘導により移動する距離M」を、最新の通信履歴(図2参照)に含まれる発信時場所“エリア002”と“△駅周辺”との距離から求め、「誘導により待機する時間W」をその距離に対応する移動時間から求める。また、推奨行動情報が「X時間の待機」の場合には、「誘導により待機する時間W」として推奨行動に対応する待機時間を用いる。また、推奨行動が「Xへの通信手段の変更」の場合は、推奨行動に対応する「誘導により通信手段を変更する回数C」を用いる。
【0024】
推奨行動抽出部104は、推奨行動格納部110から複数の推奨行動情報の候補を読み出すとともに、推奨行動情報の候補に関して算出された不満度に基づいて、推奨行動情報の候補の中から移動通信端末2のユーザに通知する推奨行動情報を抽出する。具体的には、推奨行動抽出部104は、推奨行動格納部110から複数の推奨行動情報の候補を読み出して、それぞれの推奨行動情報の候補を不満度算出部103に出力した後、これに対して不満度算出部103によって算出された不満度を受け取る。図4は、推奨行動格納部110に格納されたデータの構成の一例を示す。同図に示すように、推奨行動格納部110においては、推奨行動情報“X周辺への移動”と、推奨行動情報におけるパラメータXの候補“○駅;△駅;□タワー;…”とが対応付けられている。推奨行動抽出部104は、推奨行動格納部110から全ての推奨行動情報及びパラメータXを読み出して、各パラメータXで置換した推奨行動情報(例えば、“○駅周辺への移動”)を不満度算出部103に出力し、不満度算出部103から各推奨行動情報に関して算出された不満度を受け取る。そして、推奨行動抽出部104は、推奨行動情報の候補の中から、不満度が所定の閾値以下のもの、不満度の値が小さい順に所定数の推奨行動情報、又は不満度が最小の推奨行動情報を抽出して情報送信部105に出力する。
【0025】
また、推奨行動抽出部104は、推奨行動格納部110から推奨行動情報の候補を選出する際には、推奨行動格納部110に格納されている全ての推奨行動情報の中から不満度がより小さいと予測されるものを予め選出してもよい。この選出の判断方法としては、移動通信端末2の通信履歴(図2参照)に含まれる「発信時場所」又は「終話時場所」に基づいて、推奨行動情報“X周辺への移動”に対応するパラメータXの中からユーザの位置から所定範囲内のものを選出したり、ユーザが在圏している基地局の無線チャンネル使用率が低下する時間を通信履歴から予測して、推奨行動情報“X時間の待機”に対応するパラメータXを選出したり、通信履歴に含まれる「通信手段」、周辺の基地局の無線チャンネル使用率、及び通信トラフィック情報BP2,DP2から推奨行動情報“Xへの通信手段変更”を選出したりすることが行われる。
【0026】
情報送信部105は、推奨行動抽出部104によって抽出された推奨行動情報を移動通信端末2に送信する。情報送信部105は、移動通信端末2に送信した推奨行動情報を行動特定部106に出力する。
【0027】
行動特定部106は、情報送信部105によって推奨行動が送信された後の移動通信端末2のユーザの行動を特定する。より詳細には、行動特定部106は、情報送信部105から推奨行動情報が出力されると、通信履歴格納部108に格納された移動通信端末2に関する通信履歴を参照することによって、ユーザ誘導システム1の誘導に対するユーザの行動を特定する。例えば、最新のユーザID“0000001”を含む通信履歴情報からユーザの移動先、待機時間、及び通信手段を特定する。行動特定部106は、特定したユーザの行動に関する情報を関数再設定部107に出力する。
【0028】
関数再設定部107は、行動特定部106から受け取った移動通信端末2のユーザの行動に関する情報と、移動通信端末2に送られた推奨行動情報とが一致しているか否かを判定する。例えば、関数再設定部107は、ユーザの行動に関する情報であるユーザの移動先又は通信手段が、推奨行動情報“X周辺への移動”又は“Xへの通信手段変更”におけるパラメータXに該当するか否か、ユーザの行動に関する情報であるユーザの待機時間と推奨行動情報“X時間の待機”におけるパラメータXとの相違が許容範囲内であるか否かを判定する。関数再設定部107は、判定の結果、ユーザの行動と推奨行動とが一致していない場合に、不満度関数格納部109に格納されている係数a〜fを再設定する。具体的には、関数再設定部107は、推奨行動情報が“X周辺への移動”の場合であって、ユーザの行動と推奨行動とが一致していない場合は、移動へのユーザの不満度が大きいので、誘導により移動する距離M対応する係数dを増加させる。また、関数再設定部107は、推奨行動情報が“X時間の待機”の場合であって、ユーザの待機時間が“X時間”より短い場合は、待機へのユーザの不満度が大きいので、誘導により待機する時間Wに対応する係数eを増加させる。また、関数再設定部107は、推奨行動情報が“X時間の待機”の場合であって、ユーザの待機時間が“X時間”より長い場合は、待機へのユーザの不満度が小さいので、誘導により待機する時間Wに対応する係数eを減少させる。さらに、関数再設定部107は、推奨行動情報が“Xへの通信手段変更”の場合は、通信手段変更へのユーザの不満度が大きいので、誘導により通信手段を変更する回数Cに対応する係数fを増加させる。
【0029】
以下、図5を参照しながらユーザ誘導システム1の動作について説明するとともに、併せてユーザ誘導システム1におけるユーザ誘導方法について詳述する。
【0030】
まず、移動通信端末2から基地局3に対して、通信ネットワーク5に接続するための接続要求が送信される(ステップS01)。次に、基地局3において、接続要求に対応する通信履歴情報が生成されるとともに、生成された通信履歴情報がユーザ誘導システム1に向けて送信される(ステップS02)。これに対して、ユーザ誘導システム1の通信履歴受信部101は、基地局3から受信した通信履歴情報を通信履歴格納部108に格納する(ステップS03)。それと同時に、トラフィック情報生成部102は、基地局3から基地局3におけるリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信する(ステップS04)。
【0031】
その後、ユーザ誘導システム1は、移動通信端末2が在圏している基地局3のリソース使用率が閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えている場合には、ステップS06に処理を移行し、閾値を超えていない場合には、移動通信端末2に対する推奨行動の送信処理を中止する(以上、ステップS05)。次に、トラフィック情報生成部102は、通信履歴情報及びリソース状態情報を利用して基地局3に関する通信トラフィック情報を生成する(ステップS06)。さらに、推奨行動抽出部104は、推奨行動格納部110を参照することにより、複数の推奨行動情報の候補を選出する(ステップS07)。そして、不満度算出部103は、不満度関数格納部109から係数a〜fを読み出すことにより、不満度関数を特定する(ステップS08)。その後、不満度算出部103は、不満度関数を利用することによって、推奨行動情報の候補に関する移動通信端末2のユーザの不満度を算出する(ステップS09)。推奨行動抽出部104は、上記のようにして算出された不満度に基づいて、推奨行動情報の候補の中から移動通信端末2に送信する推奨行動情報を抽出する(ステップS10)。そして、情報送信部105が、抽出された推奨行動を移動通信端末2に送信する(ステップS11)。
【0032】
その後、移動通信端末2から再度接続要求が送られたタイミング、通信が終了されたタイミング、又は推奨行動が送信されたタイミングで、基地局3からユーザ誘導システム1に対して通信履歴情報が更新されて送信される(ステップS12)。また、行動特定部106は、情報送信部105から移動通信端末2に向けて推奨行動情報が送信された直後の移動通信端末のユーザの行動を特定する(ステップS13)。これに対して、関数再設定部107は、行動特定部106によって特定された移動通信端末2のユーザの行動に関する情報と、移動通信端末2に送られた推奨行動情報とが一致していない場合に、不満度関数格納部109に格納された係数a〜fを更新する(ステップS14)。
【0033】
以上説明したユーザ誘導システム1によれば、移動通信端末2の通信履歴と基地局3を含む複数の基地局のリソースの使用状態とを受信し、これらの情報からその基地局における通信トラフィックに関する情報を生成し、通信履歴、基地局のリソースの使用状態、及び基地局の通信トラフィックに基づいて、ユーザに推奨する複数の行動毎の不満度を算出する。算出した不満度に基づいてユーザに適した推奨行動を複数の行動の中から抽出してユーザに通知するので、各基地局におけるトラフィック状態、ユーザにおける通信状態を加味して、複数の候補からユーザに適した推奨行動を選び出すことができる。これにより、通信輻輳時において接続を要求するユーザを適切な行動に誘導することができると共に、ユーザの不満に伴う不要な接続要求を抑制することができる。その結果、通信資源の効率的な利用を実現することができる。また、誘導に対するユーザの実際の行動に基づいて不満度関数を再設定するので、個々のユーザの実際の通信形態に即した推奨行動を提示することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、ユーザ誘導システム1において実現される機能を、移動通信端末に具備させるようにしてもよい。図6は、本発明の別の実施形態である移動通信端末11を示す概略構成図である。同図に示すように、移動通信端末11は、機能的な構成要素として、通信履歴受信部101、トラフィック情報生成部102、不満度算出部103、推奨行動抽出部104、行動特定部106、関数再設定部107、通信履歴格納部108、不満度関数格納部109、及び推奨行動格納部110の他、通信制御部111、及び出力部112を備えている。以下、ユーザ誘導システム1と異なる構成要素のみについて説明する。
【0035】
出力部112は、推奨行動抽出部104によって抽出された推奨行動情報を移動通信端末11におけるディスプレイ、マイク等の情報出力手段(図示せず)に出力する。
【0036】
通信制御部111は、推奨行動抽出部104によって抽出された推奨行動情報に応じて、移動通信端末11から通信ネットワーク5に対する接続を制限するように、移動通信端末11における通信機能を制御する。具体的には、推奨行動情報が“X周辺への移動”である場合は、通信制御部111は、移動通信端末11に関する通信履歴情報から読み取られる移動通信端末11の位置が、パラメータXと一致するまでの間において移動通信端末11内の接続要求機能を規制する。また、推奨行動情報が“X時間の待機”である場合は、通信制御部111は、パラメータXに対応する時間において移動通信端末11内の接続要求機能を規制する。さらに、推奨行動情報が“Xへの通信手段変更” である場合は、通信制御部111は、パラメータXに対応する通信手段以外の通信手段による接続要求機能を規制する。このようにすることで、移動通信端末側において推奨行動に即した通信制御を行うことで、通信リソースのより効率的な利用を促進することができる。
【0037】
なお、移動通信端末11においては、不満度の算出に必要な情報である通信履歴情報、不満度関数及びその係数、推奨行動情報の候補を予めメモリ等のデータ格納手段に保持することなく通信ネットワーク5側から取得するようにしてもよいし、基地局に関するトラフィック情報を生成するアルゴリズムを通信ネットワーク5側から取得するようにしてもよい。また、通信履歴情報を移動通信端末11内で生成するように動作してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるユーザ誘導システムの好適な一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の通信履歴格納部108のデータ構成の一例を示す図である。
【図3】図1の不満度関数格納部のデータ構成の一例を示す図である。
【図4】図1のユーザ関連度格納部のデータ構成の一例を示す図である。
【図5】図1の推奨行動格納部のデータ構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態である移動通信端末を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0039】
1… ユーザ誘導システム、2,11…移動通信端末、3…基地局、5…通信ネットワーク、101…通信履歴受信部(通信履歴受信手段)、102…トラフィック情報生成部(トラフィック情報生成手段)、103…不満度算出部(不満度算出手段)、104…推奨行動抽出部(推奨行動抽出手段)、105…情報送信部(情報送信手段)、106…行動特定部(行動特定手段)、107…関数再設定部(関数再設定手段)、111…通信制御部(通信制御手段)、112…出力部(出力手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおける移動通信端末の通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信手段と、
前記通信ネットワーク内の基地局から前記基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、前記リソース状態情報及び前記通信履歴情報を用いて前記基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成手段と、
前記通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及び前記トラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、前記移動通信端末のユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出手段と、
前記不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、前記複数の推奨行動の中から前記ユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出手段と、
前記推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動を前記移動通信端末に送信する情報送信手段と、
備えることを特徴とするユーザ誘導システム。
【請求項2】
前記不満度算出手段は、前記通信履歴情報及び通信トラフィック情報に基づいて予め設定された関数を用いて前記不満度を算出し、
前記通信履歴情報に基づいて、前記情報送信手段によって前記移動通信端末に推奨行動が送信された後の前記ユーザの行動を特定する行動特定手段と、
前記行動特定手段によって特定された行動が前記推奨行動と異なる場合に、前記関数を再設定する関数再設定手段とを更に備える、
ことを特徴とする請求項1記載のユーザ誘導システム。
【請求項3】
通信ネットワークにおける通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信手段と、
前記通信ネットワーク内の基地局から前記基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、前記リソース状態情報及び前記通信履歴情報を用いて前記基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成手段と、
前記通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及び前記トラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、ユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出手段と、
前記不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、前記複数の推奨行動の中から前記ユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出手段と、
前記推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動を出力する出力手段と、
備えることを特徴とする移動通信端末。
【請求項4】
前記不満度算出手段は、前記通信履歴情報及び通信トラフィック情報に基づいて予め設定された関数を用いて前記不満度を算出し、
前記通信履歴情報に基づいて、前記情報送信手段によって前記移動通信端末に推奨行動が送信された後の前記ユーザの行動を特定する行動特定手段と、
前記行動特定手段によって特定された行動が前記推奨行動と異なる場合に、前記関数を再設定する関数再設定手段とを更に備える、
ことを特徴とする請求項3記載の移動通信端末。
【請求項5】
前記推奨行動抽出手段によって抽出された推奨行動に応じて、前記通信ネットワークに対する接続を制限する通信制御手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の移動通信端末。
【請求項6】
通信履歴受信手段が、通信ネットワークにおける通信の履歴情報である通信履歴情報を受信する通信履歴受信ステップと、
トラフィック情報生成手段が、前記通信ネットワーク内の基地局から前記基地局のリソースの使用状態を示すリソース状態情報を受信するとともに、前記リソース状態情報及び前記通信履歴情報を用いて前記基地局における通信トラフィックに関する通信トラフィック情報を生成するトラフィック情報生成ステップと、
不満度算出手段が、前記通信履歴受信手段によって受信された通信履歴情報、及び前記トラフィック情報生成手段によって生成された通信トラフィック情報に基づいて、ユーザに推奨する行動である推奨行動に関する不満度を算出する不満度算出ステップと、
推奨行動抽出手段が、前記不満度算出手段によって算出された複数の推奨行動に関する不満度に基づいて、前記複数の推奨行動の中から前記ユーザに通知する推奨行動を抽出する推奨行動抽出ステップと、
を備えることを特徴とするユーザ誘導方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−245821(P2006−245821A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56493(P2005−56493)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】