説明

ライニング装置及び既設管のライニング方法

【課題】 熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなるライニング材に対し、十分な強度発現等を期待することのできるライニング装置及びライニング方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態としてのライニング装置2は、屈撓性を有し、拡張性及び耐熱性を兼ね備えた拡径チューブ21と、拡径チューブ21の両端部の保持部材23A、23Bとを備える。保持部材23Aには、拡径チューブ21内に流体を供給する供給口231が設けられて流体のエア供給管3が接続される。保持部材23Bには、拡径チューブ21内の流体圧力を制御する圧力制御器235と、拡径チューブ21内の流体を排出する排出口233とが設けられる。拡径チューブ21内の流体は、圧力制御器235を経由して排出可能とされ、保持部材23Aから保持部材23B方向への流体の流れを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性複合材料からなるライニング材のライニング装置及びこれを用いる既設管のライニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管等の地中埋設管を開削せずに更生する方法としては、未硬化のFRP筒状体を管路内に挿入する方法や、熱可塑性樹脂製の管状のライニング材を既設管内に挿入し、既設管の内周面に一体化させることによりライニングする方法などがあり、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、既設管の内径よりも小径であって、形状記憶温度において管状に形状回復するライニング材を既設管内に挿入し、ライニング材を加熱して形状回復させた後、内側から加圧して拡径させ、既設管の内周面に密着させてライニングする更生方法がある。
【0004】
また、近年では、特許文献2や特許文献3に開示されているように、繊維強化複合材料からなるライニング材を既設管内に挿入し、そのライニング材を加熱するとともに加圧し、既設管に密着させてライニングする方法も提案されている。
【0005】
この種のライニング材は、加熱される前段階では、熱可塑性樹脂材料からなる熱可塑性フィラメントと、ガラス繊維からなる強化繊維フィラメントとの複合材料により円筒型に形成されている。かかるライニング材を使用した既設管のライニング方法では、既設管内に前記ライニング材を挿入した後、加熱手段によってライニング材を加熱することで、前記熱可塑性フィラメントを溶融させる構成とされている。これにより、溶融した熱可塑性樹脂材料の中に強化繊維フィラメントが分散されることになる。その後、ライニング材の内周側に圧力を加えて拡径させるとともに熱可塑性樹脂材料を冷却し固化させることで、強化繊維フィラメントで補強された強固な複合ライニング材が成形され、この複合ライニング材によって既設管が更生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−230412号公報
【特許文献2】特許第4076188号公報
【特許文献3】特表2004−508989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献2や特許文献3に開示されているような、繊維強化複合材料からなるライニング材を使用するライニング方法においては、次に述べるような課題があり、実用化を図るには更なる改良の余地があった。
【0008】
先ず、前記従来のライニング方法は、ピグと呼ばれるライニング装置を使用したピグライニング工法であり、このピグは、ライニング材の内周側を既設管の管軸方向に移動しつつ加熱し、次いでライニング材を拡径する作用をなす。ピグは、牽引される前方部分、加熱手段並びに支持手段を含む中央部分、及び固定手段を含む後方部分を備えている。ライニング作業に際しては、ピグの前方部分が地上のウィンチにより牽引されることにより、ピグの各部分がライニング材の内周面に沿って進行する。しかしながら、かかるピグは加熱手段を備えた中央部分に相当の重量を有することから、その牽引荷重が極めて大きく、ライニング材の内周面に対する挿通抵抗は非常に大きい。そのため、加熱により溶融したライニング材は、ピグと接触していることにより変形しやすく、偏肉や皺を生じたり、繊維配向を乱したりするという不都合があった。溶融したライニング材に偏肉、皺、繊維配向の乱れ等が生じると、その部分でライニング材の強度が不均一となる上、水密性も低下するおそれがあった。
【0009】
また、かかるピグは、前方部分及び中央部分に機械的剛性を有するので、その大きさによって、対応する既設管の管径が限られてしまうという問題点があり、例えば湾曲部や屈曲部を有する曲がり管路ではピグが干渉して挿通せず、多様な形状の管路に対する適用性に乏しいという問題点もあった。
【0010】
これに対し、特許文献2に開示されているように、膨張可能なバッグをライニング材に挿入してライニングする方法も提案されている。この方法では、一定量の高温ガスでバッグを膨張させ、膨張したバッグによってライニング材を加熱するとともに既設管の内周面に圧縮するものとされている。しかし、この場合、ライニング材の熱可塑性樹脂材料を加熱するための高温ガスが一定量であるため、溶融のための熱量も一定量である。通常、ガスの熱容量は固体や液体に比べ小さいことから、バッグ内の高温ガスで熱可塑性樹脂材料を加熱するとき、その高温ガスの温度低下が大きくなってしまうと考えられる。このため、ライニング材の溶融のための十分な温度が得られず、熱可塑性樹脂材料の溶融が不均一となったり、溶融を迅速に行えなくなったりする。その結果、ライニング材全体を加熱するのに比較的長い時間を要することになり、施工時間の長期化に繋がってしまうという問題点が発生する。
【0011】
本発明は、かかる問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、従来のピグライニング工法に代えて、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなるライニング材を短時間で均一に溶融することを可能にし、多様な管路に対して適用でき、十分な強度及び高い水密性を有するライニングを可能とするライニング装置、およびこれを用いる既設管のライニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなる筒状のライニング材を既設管の内周面にライニングして該既設管を更生するライニング装置を前提としている。このライニング装置に対し、前記ライニング材の内周に沿って配置され、拡張性及び耐熱性を有する拡径チューブと、前記拡径チューブの両端部をそれぞれ閉止及び保持する保持部材とを備えさせ、一方の保持部材には、前記拡径チューブ内に流体を供給する供給路を設けるとともに流体の供給ラインを接続し、他方の保持部材には、前記拡径チューブ内の流体圧力を制御する圧力制御器と、前記拡径チューブ内の流体を排出する排出路とを設けて、前記圧力制御器を経由して流体を排出可能としている。そして、前記拡径チューブ内に、前記一方の保持部材から他方の保持部材方向への流体の流れを形成するとともに正圧を発生させるように構成している。
【0013】
この特定事項により、ライニング材の内側に配置した拡径チューブに加熱流体を供給することで、熱可塑性樹脂をマトリックスとするライニング材を内周側から加熱して溶融させるとともに拡径させて既設管の内周面に沿う形状に賦形することができる。このとき、前記拡径チューブを既設管の管軸方向に移動させるという作業が全く必要ないので、溶融したライニング材に偏肉や皺を生じさせたり、繊維配向を乱したりするという不具合を防止することができる。また、前記拡径チューブは既設管の管路形状に沿って屈撓させて配置することができるので、多様な管路形状に適用することができる。さらに、拡径チューブに供給される流体は、一方の保持部材の供給口から他方の保持部材の排出口へと流通して拡径チューブ内に流体の流れを形成するとともに、圧力制御器でその流体圧力が制御されているので、熱容量の小さい流体を用いても、一定の加熱作用と加圧作用とを保持し、良好な溶融及び賦形のための環境を形成することができる。したがって、ライニング材を均一に溶融し及び賦形して、強度や水密性を十分に発揮させることが可能となる。
【0014】
前記ライニング装置において、さらに、前記流体を前記拡径チューブの内面に沿わせて導く流路形成手段を具備することが好ましい。
【0015】
このような構成により、前記拡径チューブ内に供給された流体は、該拡径チューブの内面に沿って流体の流れを形成するので、該拡径チューブを介して前記ライニング材を効率よく加熱又は冷却することができる。
【0016】
前記流路形成手段として、前記供給路は、少なくとも終端が前記拡径チューブの内面寄りに開口する流路とされることが好ましい。
【0017】
これにより、流体が前記供給路から前記拡径チューブの内面に沿うように放出され、該拡径チューブの内面に沿って一方の保持部材から他方の保持部材へと向かう一定方向の流れを形成するものとなる。
【0018】
また、前記流路形成手段として、前記拡径チューブ内の軸心部の流通を妨げる嵩部材を該拡径チューブの軸心部に沿って設けてもよい。
【0019】
これにより、前記拡径チューブに供給された流体は前記嵩部材に妨げられて該拡径チューブの軸心部を避けて流れることとなる。その結果、流体が前記拡径チューブの内面に沿って一方の保持部材から他方の保持部材へと向かう一定方向の流れを形成することとなる。
【0020】
また、前記ライニング装置において、前記一方の保持部材と他方の保持部材とは、前記拡径チューブ内を挿通する連結線により接続され、該連結線に発熱体を備えることが好ましい。
【0021】
このような構成により、前記拡径チューブを径方向に十分に拡張させることができるとともに、軸方向には必要以上に伸長するのを制限することができる。さらに前記連結線に備えた発熱体によって、拡径チューブ内の流体を補助的に加熱することが可能となる。
【0022】
また、上述した各解決手段に係るライニング装置を用いて既設管の内周面をライニング材で被覆し、該既設管を更生する既設管のライニング方法も本発明の技術的思想の範疇である。すなわち、前記ライニング材は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなる筒状体であり、このライニング材を既設管内に挿入して補修対象箇所に配置する挿入工程と、前記ライニング装置の拡径チューブを、前記ライニング材の内周側に配置する配置工程と、前記拡径チューブ内に加熱流体を供給し、前記ライニング装置を既設管の管軸方向に移動させることなくライニング材を加熱するとともに加圧し、前記ライニング材を拡径して既設管の内周面に固定する拡径工程と、前記拡径チューブ内に冷却流体を供給して前記ライニング材を固化する冷却工程と、前記拡径チューブの冷却流体を排出して該拡径チューブを縮径させ、前記ライニング材から離間させる脱離工程とを含む構成としている。
【0023】
このような既設管のライニング方法により、前記拡径工程では、拡径チューブ内で加熱流体が広範囲に亘って流通して、ライニング材を加熱するのに十分な熱供給を行うことが可能となって加熱の不均一化が解消される。そのため、比較的短時間で、熱可塑性樹脂材料の全体を溶融させて拡径することが可能になる。また、溶融したライニング材に対し、内側の拡径チューブを管軸方向に移動させるという操作が必要ないので、ライニング材を均一な肉厚を保持したまま拡径させることが可能であり、全体に亘って高い強度と水密性を備えさせることができる。さらに、拡径工程の後、拡径チューブ内に冷却流体を送り込むことでそのままライニング材を固化することができ、老朽化した既設管を効率よく短時間でライニングすることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなるライニング材に対し、ライニング材の内周側に配置した拡径チューブ内の流体の流れによりライニング材を均一に加熱し拡径することから、比較的短時間で高い強度と水密性を安定的に発現させてライニング施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係るライニング装置を用いたライニング方法を示す説明図である。
【図2】前記ライニング装置を用いた曲がり管路に対するライニング方法を示す説明図である。
【図3】図1におけるX−X断面図である。
【図4】図3の次工程を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係るライニング装置を示し、拡径チューブの内部構造とともに模式的に示す側面図である。
【図6】実施形態2に係るライニング装置及びライニング方法を示す断面図である。
【図7】実施形態2に係るライニング装置の保持部材を示し、図7(a)は斜視図、図7(b)は側面図である。
【図8】実施形態2に係るライニング装置の保持部材の他の例を示し、図8(a)は斜視図、図8(b)は側面図である。
【図9】実施形態3に係るライニング装置を示し、拡径チューブの内部構造とともに模式的に示す側面図である。
【図10】実施形態3に係るライニング装置とライニング材とを既設管に配置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るライニング装置及びこのライニング装置を用いる既設管のライニング方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1は、実施形態に係るライニング装置を用いて既設管の内周面をライニングする際の一工程を模式的に示す説明図であり、図2は曲がり管路に対するライニングの一工程を模式的に示す説明図である。また、図3は既設管にライニング材及びライニング装置を配置した状態を示す断面図であり、図4はライニング材の拡径工程を示す断面図である。
【0028】
以下では、先ず、既設管10の内周面をライニングするライニング材1の概要について説明し、その後、ライニング装置2と、このライニング装置2を用いる既設管10のライニング方法について説明する。
【0029】
(ライニング材)
本発明の一実施形態に係るライニング装置2及び既設管10のライニング方法に適用されるライニング材1は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなり、可撓性を有して略円筒形状に形成されている。
【0030】
一例としてのライニング材1は、一方向に引き揃えられた多数本の強化繊維フィラメントと、母材樹脂となる熱可塑性樹脂フィルムとを用い、これらを加熱及び加圧して半含浸状態に一体化したセミプレグ基材のシート材を用いて形成することができる。つまり、このシート材は、溶融した熱可塑性樹脂フィルムを強化繊維フィラメントに半含浸させ、一体化したものである。シート材であることから、一定形状に切断し接合することが容易であり、シート材の端部同士を重ね合わせ、接合して略円筒形状に形成される。
【0031】
かかるライニング材1は、熱可塑性樹脂材料を強化繊維フィラメント間に含浸させるという、既設管10のライニング層を形成するプロセスの一部を、ライニング施工前の段階、つまりセミプレグ基材の成形過程で予め行ったものである。したがって、ライニング施工現場での加熱及び加圧に要する時間を短縮化することができ、ライニング材1の加熱温度を過剰に高く設定する必要がなくなり、十分な強度を安定的に発現させることが可能となる。その結果、均質なライニング層を既設管10に対して迅速かつ経済的に形成することができる。
【0032】
また、ライニング材1は、熱可塑性樹脂フィラメントと強化繊維フィラメントからなる熱可塑性複合材料のファブリックにより形成することもできる。つまり、このライニング材1は、熱可塑性樹脂フィラメントを母材樹脂として繊維形態で強化繊維フィラメント束内に配置させた繊維束によって、編物、織物(織布)、組物、又は不織布等の形態で構成し、縫合等により略円筒形状に形成したものである。
【0033】
上記のようなライニング材1は、いずれも、熱可塑性樹脂と強化繊維との材料の組合せや構造等により、ライニング材1を多様な形態で形成することができる。ライニング材1に適用する熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、又はポリアミド(PA)等が挙げられる。また、強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維等からなるものが挙げられる。強化繊維の形態は、細いフィラメントを集束させたストランドを引き揃えたロービング、フィラメントを切断したチョップドストランド等、連続繊維であっても短繊維であってもよい。
【0034】
上記ライニング材1において、例えば熱可塑性樹脂フィラメントの構成材料としてポリプロピレン(融点は160〜170℃程度)を採用した場合には、既設管10のライニング過程での加熱温度は180℃に設定することが好ましい。また、熱可塑性樹脂フィラメントの構成材料として高密度または低密度ポリエチレン(融点は140℃)を採用した場合には、既設管10のライニング過程での加熱温度は150℃に設定することが好ましい。
【0035】
また、ライニング材1は、前記セミプレグ基材や、ファブリック等の繊維強化複合材料そのものの厚みで形成するだけでなく、複数枚を重ね合わせたり種類を異ならせた複数層の層構造を具備させたりして、所定の厚みを有するように形成されてもよい。また、ライニング材1は、外周側に水密性の高い材料からなる被覆層を付加した構成であってもよく、上記の構成に限定されるものではない。
【0036】
(ライニング装置)
図5は、実施形態1に係るライニング装置2を、拡径チューブ21の内部構造とともに示した側面図である。
【0037】
ライニング装置2は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなる前記ライニング材1を、既設管10の内周面にライニングして既設管10を更生するものである。
【0038】
例示の形態では、ライニング装置2は、拡径チューブ21とその両端部の保持部材23A,23Bとを備えて構成されている。なお、図5において、拡径チューブ21は一部断面により示し、内部構造を透視的に表している。
【0039】
拡径チューブ21は、屈撓性を有する材料からなる筒状体であり、ライニング材1の内周に沿わせて配置することが可能とされている。
【0040】
また、拡径チューブ21は、熱可塑性樹脂材料の成形温度に耐えうる耐熱性と、ライニング材1に圧接されてライニング材1を加圧するための拡張性とを兼ね備えている。加えて、拡径チューブ21は、その拡張後に、固化したライニング材1から容易に離脱しうる材料であることが好ましい。例えば、拡径チューブ21には、シリコンゴム、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の材料からなる筒状体を適用することが好ましい。中でも、拡張性に富み、良好な耐熱性を有するシリコンゴムが特に好ましい。
【0041】
拡径チューブ21は、既設管10に挿入される前の状態では、既設管10及びライニング材1の内径よりも小径の筒状体とされている。また、拡径チューブ21の外径は、拡張時にライニング材1を内側から既設管10の内周面に押圧し得る大きさで確保されている。
【0042】
拡径チューブ21の両端部には保持部材23A,23Bが設けられている。保持部材23A,23Bは、拡径チューブ21の両端部をそれぞれ保持して、内蔵されたシール材等により拡径チューブ21内を略気密状態に維持する。保持部材23A,23Bは、既設管10の内部に挿入可能な外径を有し、外周面が球面、円錐面、又は円錐台面などの曲面体で形成されている。また、保持部材23A,23Bは、耐熱性及び耐衝撃性を有する合成樹脂材料又は金属材料等により形成されている。
【0043】
一方の保持部材23Aには、拡径チューブ21内に流体を供給する供給路が設けられており、供給路の供給口231には流体のエア供給管3が接続されている。
【0044】
他方の保持部材23Bには、拡径チューブ21内の流体圧力を制御する圧力制御器235と、拡径チューブ21内の流体を排出する排出路とが設けられている。排出路の排出口233は拡径チューブ21の外部に開放されている。
【0045】
圧力制御器235は、流量制御装置等に用いられる周知の小型制御器を適用することができ、例えば、流体の流量調整及び封止機能を有する弁と、流体圧力の設定作用をなすスプリング及びダイヤフラム等を備えていることが好ましい。拡径チューブ21内が所定圧力に満たないと、保持部材23Bの圧力制御器235は、拡径チューブ21内に流体が充填されていないとして弁を閉止して排出口233を塞ぎ、排出路を封止状態とする。そして、拡径チューブ21内に流体が充填されて所定圧力となると、圧力制御器235がそれを検知して弁を開放し、拡径チューブ21内の流体を排出口233から外部へと排出する。これにより、拡径チューブ21内は、所定圧力に維持されつつ、保持部材23Aから保持部材23Bの方向への流体の流れが形成される。
【0046】
また、保持部材23Bは、外面に牽引ワイヤ91が連結される。この保持部材23Bと保持部材23Aとは、拡径チューブ21内を挿通する連結線25により接続されている。連結線25には耐熱性を有する金属ワイヤ等を用いることができる。これにより、牽引ワイヤ91が引張されるとき、その引張力が保持部材23Bから連結線25を介して保持部材23Aに作用し、拡径チューブ21をスムーズに管路へ引き込むことが可能となっている。また、連結線25を備えることにより、拡径チューブ21が管軸方向へ必要以上に膨張するのを防止する。
【0047】
例示の形態では、連結線25に線状発熱体26が備えられている。この線状発熱体26には、例えばリボンヒータや線状の電気ヒータ等を用いることができる。線状発熱体26は、連結線25に対して螺旋状に巻き付けられて取り付けられている。そのため、線状発熱体26は、曲がり管路においても柔軟に追従変形することが可能であり、拡径チューブ21の屈撓性を阻害せず、多様な形状の管路に対応することができる。
【0048】
(ライニング方法)
次に、上記ライニング装置2を用いた既設管10のライニング方法について説明する。
【0049】
ライニング作業に先立ち、既設管10に下水等の流下水がある場合には、堰き止め部材101により流下水を堰き止め、いったん管路から除去しておく。さらに、既設管10内の管内調査を行って既設管10内に存在する堆積物や木片等の異物を除去し、高圧水洗浄等を行ってから以下のライニング作業に入る。
【0050】
図1に示す形態では、マンホールM2の地上側に牽引ワイヤ91を巻き取るウィンチ9を設置している。牽引ワイヤ91は、マンホールM2から既設管10内に挿通されており、ライニング材1の挿入やライニング装置2の配置に用いることができる。
【0051】
ライニング材1は、上述の如く可撓性を有して略円筒形状に形成されており、柔軟性が高いことから、施工現場へは偏平状に折り畳まれて搬入することができる。そして、既設管10の補修対象箇所へライニング材1を挿入する(挿入工程)。
【0052】
次いで、ライニング装置2をマンホールM1の底部に引き下ろし、ライニング材1の内周側に配置する(配置工程)。ライニング装置2の保持部材23Bには牽引ワイヤ91を連結してウィンチ9によりマンホールM2方向に牽引する。このとき、図3に示すように、ライニング装置2の拡径チューブ21は、未だ拡張していない状態であり、ライニング材1の内側に容易に挿入可能とされている。これにより、ライニング装置2の拡径チューブ21をライニング材1の内側に配置することができる。
【0053】
ライニング装置2の一方の保持部材23Aの供給口231には、エア供給管3を接続する。図1に示すように、マンホールM1の地上側には、加熱ガスを生成するための加熱ガス生成機6と、空気を圧縮して加圧空気を生成するための空気圧縮機7とを設置している。エア供給管3には、加熱ガス生成機6で生成された加熱ガスと、空気圧縮機7で生成された加圧空気とを混合して供給する。また、加熱ガス及び加圧空気のエア供給管3への供給過程で、図示しない調整バルブを設け、各流量を制御しつつ混合ガスを供給するようにしてもよい。
【0054】
また、マンホールM1の地上側には、発電機8を設置し電気ケーブル4を接続している。ライニング装置2の保持部材23Aには電気ケーブル4を接続して、線状発熱体26への電気供給を可能としている。
【0055】
次いで、エア供給管3から拡径チューブ21内に加熱ガスと加圧空気との混合ガスを供給する。混合ガスを拡径チューブ21内に供給すると、図4に示すように、拡径チューブ21は拡張する(拡径工程)。
【0056】
かかる拡径工程では、ライニング材1に含まれる熱可塑性樹脂材料の融点以上の温度の混合ガスを供給する。ライニング材1は、拡張した拡径チューブ21に接触し、拡径チューブ21内の混合ガスにより加熱される。これにより、ライニング材1の熱可塑性樹脂材料が溶融する。
【0057】
ライニング材1はまた、溶融することで軟化し、拡径チューブ21による加圧作用で拡径する。これにより、ライニング材1が既設管10の内面に密着する。拡径チューブ21の拡張状態を維持することにより、ライニング材1と既設管10との密着状態もそのまま維持され、広範囲で均一な圧力を付与して均一に賦形することができる。
【0058】
ライニング材1を賦形するのに要する圧力は、既設管の強度やライニング材1を構成する熱可塑性樹脂材料によって適宜設定される。また、拡径チューブ21内の混合ガスの圧力を保持部材23Bの圧力制御器235により制御することができる。ライニング装置2においては、拡径チューブ21に対し、一定温度で一定圧力の混合ガスを一定時間供給することとなる。
【0059】
拡径チューブ21内が設定圧力に満たない間は、保持部材23Bの排出路(排出口233)を封止状態とし、エア供給管3からの混合ガスを充填する。そして、拡径チューブ21内が設定圧力以上に到達すると、排出口233を開放し、拡径チューブ21内から圧力制御器235を経由して混合ガスの排出を開始する。これにより、拡径チューブ21内の正圧状態を保ったまま、拡径チューブ21内に保持部材23Aから保持部材23Bの方向へ、一定温度の混合ガスの流れを形成することができる。
【0060】
また、拡径チューブ21内へは、連続的に加熱ガスと加圧空気との混合ガスを供給しているので、ライニング材1の加熱により熱交換がなされても、混合ガスの温度低下が抑制される。したがって、ライニング材1の全体に亘って迅速で均一な溶融が可能となる。
【0061】
なお、既設管10の管径が比較的大きい場合や、補修対象箇所の長さが長い場合には、補助加熱手段として線状発熱体26を用いることが好ましい。これにより、拡径チューブ21内の混合ガスの温度低下を抑制することができ、より一層確実に、ライニング材1に対する均一な加熱と加圧と行うことができる。
【0062】
上記の正圧状態を一定時間保持した後、ライニング材1を冷却して固化させる(冷却工程)。すなわち、エア供給管3に対し、加熱ガスの供給を停止し、加圧空気のみを供給する。拡径チューブ21内は、加圧空気の供給に伴って、正圧状態を保持したまま前記混合ガスが排出され、温度低下を生じる。これにより、ライニング材1が既設管10の内周面に密着した状態で冷却されて固化し、その形状が保持される。
【0063】
ライニング材1が固化した後、拡径チューブ21内の加圧空気を排出する。これにより、拡径チューブ21内の圧力が低下し、拡径チューブ21が縮小するとともにライニング材1から離間する(離脱工程)。そして、縮小した拡径チューブ21をライニング材1の内周側から引き抜き、ライニング装置2を撤去する。これにより、既設管10の内周面をライニング材1の複合材料により被覆することができ、ライニング作業が完了する。
【0064】
かかるライニング方法は、図1に示す直管状の既設管10に対してだけでなく、図2に示す曲がり管路に対してもライニング装置2を適用して、上記と同様の工程によりライニング材1でライニングすることができる。このとき、ライニング装置2は、拡径チューブ21が屈撓性を有するので、管路の湾曲部や屈曲部においても干渉することなく容易に挿入することができる。その上、拡径チューブ21は供給される加圧空気等によって十分に拡張して、管路の湾曲部や屈曲部にも沿う形状に変形しうるので、ライニング材1に密着して全体を均一に加熱及び加圧することができる。
【0065】
(ライニング装置の他の実施形態)
次に、前述したライニング装置2の他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図6は、実施形態2に係るライニング装置2を模式的に示す断面図である。
【0066】
前記実施形態1に係るライニング装置では、拡径チューブ21内に連結線25を設け、この連結線25に線状発熱体26を配設していた。以下の実施形態では、かかる構成に代えて、ライニング装置2の一方の保持部材23Aに流路形成手段を備えた構成としている。その他、ライニング装置2の拡径チューブ21、他方の保持部材23B、エア供給管3等の各構成は前記実施形態1のものと同様であるため、図6にあっては実施形態1と同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。なお、図6において、保持部材23A,23Bは、断面を示すハッチングを省略して示している。
【0067】
実施形態2に係るライニング装置2は、流体を前記拡径チューブ21の内面に沿わせて導くための流路形成手段を具備している。すなわち、前記流路形成手段として、その終端を拡径チューブ21の内面寄りに開口した流体の供給路28が、一方の保持部材23Aに設けられている。
【0068】
図6に示すように、拡径チューブ21の一端の保持部材23Aには、供給路28が複数本に別れて設けられている。供給路28は、保持部材23Aの一端面237から、拡径チューブ21内に臨む他端面238にかけて延びる流路として形成されている。例示の形態では、供給路28の始端は、エア供給管3に接続されている。一方、供給路28の終端は、保持部材23Aの他端面238の外周部に沿って開口して形成されている。
【0069】
より具体的には、図7(a)及び図7(b)に示すように、供給路28は保持部材23Aの内部で複数本に分岐して設けられている。すなわち、供給路28の始端部は、軸心部に円筒状に設けられており、これが複数本の流路281に分岐されている。各流路281は終端部が保持部材23Aの他端面238の外周部に均等に開口するように配設されている。これにより、供給路28を流通する流体は、一端面237から他端面238に向けて放射状に分配して放出される。
【0070】
供給路28は、図8(a)及び図8(b)に示す形態とされてもよい。この場合、供給路28は、保持部材23Aに円錐台形状のスリット状に形成されている。供給路28は、始端部側では、保持部材23Aの一端面237から軸心部にかけて円筒状に形成されている。また、供給路28は、中間部から円錐状に延び、終端部に近づくほど径が大きくなる円錐台形のスリット状の流路282を備えている。流路282の終端は、保持部材23Aの他端面238に、外周部に沿って円形に開口されている。保持部材23Aの他端面238には、流路282の開口を部分的に塞いで接続するブリッジ283が備えられている。
【0071】
このような供給路28を備えることにより、前記拡径工程において、エア供給管3から拡径チューブ21内に加熱ガスと加圧空気との混合ガスを供給する際に、混合ガスは、拡径チューブ21の内周面に向けて均等に放出される。拡径チューブ21内では、内周面に沿って保持部材23B方向への混合ガスの流れが形成される。その結果、拡径チューブ21の内周面は均等に加熱されるとともに加圧され、拡張する。
【0072】
ライニング装置2の保持部材23Aに、このような流路形成手段を設けることで、ライニング材1を溶融するための十分な温度上昇を確保することができ、熱可塑性樹脂材料の溶融を均一に行い、迅速に溶融することが可能となる。また、ライニング材1の全体を加熱するのに長い時間を要することがなくなるため、短時間で施工することが可能となる。同様に、ライニング材1の冷却工程においても、効率よく拡径チューブ21内の温度を低下させ、短時間でライニング材1を冷却及び固化させることができる。
【0073】
また、前記流路形成手段の他の例として、拡径チューブ21の軸心部に沿って嵩部材29を設ける構成であってもよい。図9は、実施形態3に係るライニング装置2を示す説明図である。
【0074】
このライニング装置2において、嵩部材29は、拡径チューブ21の一方の保持部材23Aから他方の保持部材23Bにかけて軸心部に配設されている。この嵩部材29は、断面形状が略円形の柱状体とされている。嵩部材29は、保持部材23A,23Bに対し隙間無く配設されても、また、連結部材291を介して保持部材23A,23Bに対し隙間を設けて配設されてもよい。なお、保持部材23Aには軸心部に供給路28が設けられている。
【0075】
嵩部材の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄等の金属系材料、又は合成ゴム材等が好ましい。より好ましくは、嵩部材29の表面においては蓄熱性を有して拡径チューブ21内の温度上昇を妨げず、かつ嵩部材29の内部においては断熱性を有して拡径チューブ21内の流体の熱交換効率を低下させない材質とすることである。そのため、嵩部材29は、断面中空状に形成されることよりも、中実にて形成されることが望ましい。嵩部材29を中実にて形成する場合、空気よりも高い熱伝導率を有するアルミニウムや銅等により内部を充填することが好ましい。
【0076】
ライニング装置2に嵩部材29を設けることによって、拡径チューブ21の容積を30%〜90%の範囲で低減させることが好ましい。これにより、拡径チューブ21内で流体が流通しうる範囲を格段に低減させることができる。また、嵩部材29が拡径チューブ21内の軸心部での流体の流通を妨げるので、流体の流れは拡径チューブ21の内周面に沿って発生することになる。
【0077】
したがって、前記拡径工程において、エア供給管3から拡径チューブ21内に加熱ガスと加圧空気との混合ガスを供給する際、混合ガスは、嵩部材29の外周面と拡径チューブ21の内周面との間を流れる。これにより、拡径チューブ21内では、その内周面に沿って、保持部材23B方向への混合ガスの流れが形成され、拡径チューブ21の内周面が均等に加熱及び加圧されることとなる。
【0078】
上記のように、拡径チューブ21内に前記流路形成手段としての嵩部材29を設けた場合にも、ライニング材1を溶融するための十分な温度上昇を確保することができ、熱可塑性樹脂材料の溶融を均一に行い、迅速に溶融することが可能となる。また、ライニング材1の全体を加熱又は冷却するのに長い時間を要することがなくなり、施工時間の短縮化を図ることができる。
【0079】
なお、かかる流路形成手段は、図5で示した連結線25及び線状発熱体26と併用することも可能である。すなわち、例えば、実施形態2に係るライニング装置2において、さらに拡径チューブ21の軸心部に連結線25及び線状発熱体26を設けた構成としてもよい。この場合、拡径チューブ21内の混合ガスの温度低下を抑制しつつ、拡径チューブ21の内周面に沿って混合ガスの流れを形成することができ、より一層確実に、ライニング材1に対する均一な加熱と加圧と行うことが可能となる。
【0080】
(実施例)
次に、前記流路形成手段として嵩部材29を備えたライニング装置2を用いた場合の実施例を説明する。図10は、ライニング装置2とライニング材1とを既設管10に配置した状態を示す断面図である。
【0081】
ライニング材1には、熱可塑性樹脂材料としてポリプロピレン(融点は160〜170℃程度)を用い、強化繊維としてガラス繊維を用いた繊維強化複合材料からなる、厚さ2.5mmのものを用いた。また、既設管10の内径が100mmであるのに対し、ライニング材1は初期状態の内径が80mmのものを用いた。
【0082】
ライニング装置2の拡径チューブ21内には、軸心部に嵩部材29を設けた。嵩部材29は、材質がアルミ材からなる中実円柱体であり、外径が55mmのものとした。
【0083】
拡径チューブ21内には、エア供給管3から、加熱ガスと加圧空気との混合ガスである高温ガスを供給した。高温ガスの温度は、350℃とした。拡径工程における拡径チューブ21内の流体圧力及び加圧圧力は、50kPaとして設定した。
【0084】
これにより、ライニング材1の拡径工程において、拡径チューブ21内の正圧状態を保ったまま、拡径チューブ21内に保持部材23Aから保持部材23Bの方向へ、350℃の高温ガスの流れを形成して、既設管10のライニングを行った。
【0085】
また、拡径工程におけるライニング材1の溶融に要する時間を計測した。ライニング材1の溶融状態の測定点は、図10に示す保持部材23A寄りのA点と、保持部材23B寄りのB点との2箇所とし、さらに、嵩部材29を設けない場合と、嵩部材29を設けた場合とで溶融に要する時間を比較した。
【0086】
その結果、測定点Aでは、ライニング材1の溶融時間として、嵩部材29を設けない場合に約20分を要したのに対し、嵩部材29を設けた場合では約11分で足り、溶融時間が格段に短縮化された。
【0087】
また、測定点Bでは、嵩部材29を設けない場合にライニング材1の完全な溶融が確認できなかったのに対し、嵩部材29を設けた場合では約43分後にライニング材1の完全な溶融が確認された。
【0088】
以上より、拡径チューブ21内に前記流路形成手段としての嵩部材29を設けた場合には、嵩部材29を設けなかった場合に比して、ライニング材1を迅速かつ確実に溶融することが可能となり、短時間でライニング材1を賦形し得ることが確認された。
【0089】
以上説明したように、ライニング材1は、熱可塑性複合材料からなるライニング材1を用いた構成であるので、ライニング施工過程では、ライニング材1に含まれる熱可塑性樹脂材料と強化繊維とを、ライニング装置2の加熱及び加圧作用により比較的短時間で完全な含浸状態とすることができる。よって、熱可塑性樹脂材料の中に強化繊維を分散させた構成を、ライニング材1の全体に亘って容易に得ることができ、そのための施工時間の短縮化を図ることができる。また、ライニング材1に対する加熱温度を過剰に高める必要がなく、ライニング装置2を管軸方向へ移動させる必要もないので、熱可塑性樹脂材料が流動して偏肉してしまうといったことも回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、熱可塑性複合材料からなるライニング材を用いた既設管の更生に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ライニング材
2 ライニング装置
21 拡径チューブ
23A 保持部材
231 供給口
23B 保持部材
233 排出口
235 圧力制御器
25 連結線
26 線状発熱体
28 供給路
29 嵩部材
3 エア供給管
4 電気ケーブル
6 加熱ガス生成機
7 空気圧縮機
8 発電機
9 ウィンチ
91 牽引ワイヤ
10 既設管
101 堰き止め部材
M1、M2 マンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなる筒状のライニング材を既設管の内周面にライニングして該既設管を更生するライニング装置であって、
前記ライニング材の内周に沿って配置され、拡張性及び耐熱性を有する拡径チューブと、前記拡径チューブの両端部をそれぞれ閉止及び保持する保持部材とを備え、
一方の保持部材には、前記拡径チューブ内に流体を供給する供給路が設けられるとともに流体の供給ラインが接続され、
他方の保持部材には、前記拡径チューブ内の流体圧力を制御する圧力制御器と、前記拡径チューブ内の流体を排出する排出路とが設けられ、前記圧力制御器を経由して流体を排出可能とされて、
前記拡径チューブ内に、前記一方の保持部材から他方の保持部材方向への流体の流れを形成するとともに正圧を発生させることを特徴とするライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のライニング装置において、
前記流体を前記拡径チューブの内面に沿わせて導く流路形成手段を具備することを特徴とするライニング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のライニング装置において、
前記流路形成手段として、前記供給路は、少なくとも終端が前記拡径チューブの内面寄りに開口する流路とされたことを特徴とするライニング装置。
【請求項4】
請求項2に記載のライニング装置において、
前記流路形成手段として、前記拡径チューブ内の軸心部の流通を妨げる嵩部材が該拡径チューブの軸心部に沿って設けられたことを特徴とするライニング装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のライニング装置において、
前記一方の保持部材と他方の保持部材とは、前記拡径チューブ内を挿通する連結線により接続され、該連結線に発熱体が備えられたことを特徴とするライニング装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載のライニング装置を用いて既設管の内周面をライニング材で被覆し、該既設管を更生する既設管のライニング方法であって、
前記ライニング材は、熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化複合材料からなる筒状体であり、このライニング材を既設管内に挿入して補修対象箇所に配置する挿入工程と、
前記ライニング装置の拡径チューブを、前記ライニング材の内周側に配置する配置工程と、
前記拡径チューブ内に加熱流体を供給し、前記ライニング装置を既設管の管軸方向に移動させることなくライニング材を加熱するとともに加圧し、前記ライニング材を拡径して既設管の内周面に固定する拡径工程と、
前記拡径チューブ内に冷却流体を供給して前記ライニング材を固化する冷却工程と、
前記拡径チューブの冷却流体を排出して該拡径チューブを縮径させ、前記ライニング材から離間させる脱離工程とを含むことを特徴とする既設管のライニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−6405(P2013−6405A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245862(P2011−245862)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】