ラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置
【課題】熱膨張による感光体の被走査面に対する発光素子の結像位置の移動が少なく、カラーレジスト誤差の少ない、画質の劣化が低減したラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ヘッド基板400およびレンズ基板431が膨張すると、ヘッド基板400およびレンズ基板431が一ヶ所で固定されているため、固定位置を中心に膨張する。ここで、レンズ基板431の線膨張係数αLがヘッド基板400の線膨張係数αEよりも小さいので、発光素子411のレンズLに対する位置がずれる。この位置のずれに対し、レンズLは倒立光学系なので、発光素子411の結像位置IはレンズLの膨張による移動方向とは逆方向であり、元の結像位置I0からの結像位置Iのずれを小さくできる。したがって、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【解決手段】ヘッド基板400およびレンズ基板431が膨張すると、ヘッド基板400およびレンズ基板431が一ヶ所で固定されているため、固定位置を中心に膨張する。ここで、レンズ基板431の線膨張係数αLがヘッド基板400の線膨張係数αEよりも小さいので、発光素子411のレンズLに対する位置がずれる。この位置のずれに対し、レンズLは倒立光学系なので、発光素子411の結像位置IはレンズLの膨張による移動方向とは逆方向であり、元の結像位置I0からの結像位置Iのずれを小さくできる。したがって、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体の被走査面などの面に対して光を走査するラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体である感光体の被走査面に対して光を走査して潜像を形成するラインヘッドは、画像形成装置である電子写真式プリンタの光源として使用されている。
【0003】
ラインヘッドとしての光プリンタヘッドは、発光素子としての発光ダイオード素子(Light Emitting Diode)が載置された基板としてのベースプレートとレンズを支持するレンズ基板としてのレンズプレートとを備えている。レンズプレートには、発光ダイオード素子に対応してレンズが設けられ、レンズアレイが構成されている。ここで、ベースプレートとレンズプレートの線膨張係数が異なると、熱が印加されたとき、発光ダイオード素子と対応するレンズとの間に位置ずれを生じ、感光体の被走査面に鮮明で正確な潜像を形成するのが難しい。そこで、ベースプレートとレンズプレートの線膨張係数を実質的に同一としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−270468号公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッド基板とレンズ基板の線膨張係数を同一としても、熱が印加されたとき、レンズに対する発光素子の位置は変動しないものの、感光体の被走査面に対する発光素子の結像位置は熱膨張分だけ移動してしまう。また、このようなラインヘッドを露光部としてタンデム方式のカラー画像形成装置に適用した場合、結像位置の移動は、カラーレジスト誤差となって、画質を劣化させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を結像する倒立光学系の結像レンズが形成されるともに、前記第1基板よりも線膨張係数が小さい第2基板と、を有することを特徴とするラインヘッド。
【0008】
この適用例によれば、ラインヘッドに熱が加わり、第1基板および第2基板が膨張すると、第1基板および第2基板が膨張するが、第2基板の線膨張係数が第1基板の線膨張係数よりも小さいので、発光素子の結像レンズに対する位置がずれる。また、発光素子の結像位置も結像レンズの膨張により変位するが、本発明では結像レンズは倒立光学系であるため、発光素子の結像位置は結像レンズの膨張による移動方向とは逆方向となり、元の結像位置からの熱膨張後の結像位置のずれが小さくなる。したがって、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0009】
[適用例2]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板と該第2基板とを固定し、温度に応じて前記結像レンズの光軸方向と直交する第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板および第2基板は固定されているため、固定されている位置を中心にそれぞれ膨張する。このように固定位置を設けることで膨張の態様が固定化されて熱膨張による結像位置の移動を良好に制御することができる。
【0010】
[適用例3]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の一端部と該第2基板の前記第1方向の一端部が固定され、前記第1方向の他端部を温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板の第1方向の一端部と第2基板の第1方向の一端部が固定されているため、他端部での熱膨張による第1基板と第2基板とのずれが大きくなるが、第2基板の線膨張係数が第1基板の線膨張係数よりも小さいため、より効果的に、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0011】
[適用例4]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の中央部と該第2基板の前記第1方向の中央部とが固定され、該第1基板の前記第1方向の両端部と該第2基板の前記第1方向の両端部とが温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、前記第1方向における中央部が固定されているため、両端部での熱膨張による第1基板と第2基板とのずれ自体を小さくすることができ、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0012】
[適用例5]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板と前記第2基板とを収容するケースを備え、前記第1基板と前記第2基板は前記ケースに固定され、前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部が前記第1方向に移動自在に前記ケースに支持されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板と第2基板とがケースによって位置決めされているので、ラインヘッドに対する、第1基板および第2基板の位置ずれが少なく、より熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0013】
[適用例6]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部は弾性部材によって前記ケースに支持されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、端部が弾性部材によって支持されているので、第1基板と第2基板の熱膨張が妨げられることによる第1基板と第2基板の歪みが減少し、より結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0014】
[適用例7]
上記ラインヘッドであって、前記第2基板の線膨張係数αLと前記第1基板の線膨張係数αEとの関係が次式の関係を有する
αL+m(αE−αL)=0
(mは、前記結像レンズの光学倍率)
ことを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第2基板の線膨張係数αLと第1基板の線膨張係数αEとの関係が上記の式を満たすことにより、結像レンズの移動距離と、結像位置の結像レンズに対する移動距離が一致し、熱膨張後の結像位置のずれがなくなり、より結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0015】
[適用例8]
上記ラインヘッドであって、複数の前記発光素子で構成される発光素子グループが前記第1基板に形成され、前記結像レンズは前記発光素子グループを構成する前記複数の発光素子から発光される光を結像することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、複数の発光素子から射出される光が1つの結像レンズにより前記所定面上に結像される。したがって、少ない位置ずれ量で高密度な像を簡素な構成で形成することができる。
【0016】
[適用例9]
上記ラインヘッドであって、前記発光素子グループが複数前記第1基板に配置されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、各発光素子グループについて、当該発光素子グループとそれに対応する結像レンズで結像されるため、少ない位置ずれ量でさらに高密度な像を形成することができる。
【0017】
[適用例10]
上記ラインヘッドであって、前記発光素子グループは前記第1基板に2次元配置されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、2次元配置構造を採用することで像の密度をさらに高めることができる。
【0018】
[適用例11]
潜像が形成される潜像担持体と、発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する倒立光学系の結像レンズを有するとともに前記第1基板よりも線膨張係数の小さい第2基板とを有し、前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。この適用例によれば、前述の効果を有する画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置1を模式的にかつ部分的に示す図である。画像形成装置1は、トナー粒子を液体キャリアに分散させた液体現像剤を用いて画像を形成する装置である。なお、回転する部材については、回転方向を実線矢印で示した。
【0020】
図1において、画像形成装置1は、中間転写媒体である無端状の中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10を張架する駆動ローラ11および従動ローラ12と、2次転写装置14と、中間転写ベルトクリーニング装置15と、1次転写ユニットとを備えている。中間転写ベルト10の駆動ローラ11側には2次転写装置14が設けられ、また中間転写ベルト10の従動ローラ12側には中間転写ベルトクリーニング装置15が設けられている。1次転写ユニットとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のそれぞれの色に対応した、1次転写ユニット50Y、1次転写ユニット50M、1次転写ユニット50Cおよび1次転写ユニット50Kが設けられている。以下、各色に対応する装置、部材等についても、装置、部材等の符号にそれぞれ各色を表すY,M,C,Kを付して表記する。
【0021】
なお、図示しないが、画像形成装置1は2次転写を行う従来の一般的な画像形成装置と同様に、2次転写装置14より転写材の搬送方向上流側に、例えば紙等の転写材を収納する転写材収納装置と、この転写材収納装置からの転写材を2次転写装置14へ搬送供給するローラ対とを備えている。図1において、転写材の搬送方向は、破線矢印で示した。また、この画像形成装置1は、2次転写装置14より転写材の搬送方向下流側に定着装置および排紙トレイを備えている。
【0022】
図1において、中間転写ベルト10は、互いに離間して配設された一対の駆動ローラ11および従動ローラ12に張架されて、反時計回りに回転可能に設けられている。この中間転写ベルト10は、紙等の転写材への2次転写の転写効率を向上させるうえで弾性中間転写ベルトにすることが好ましい。また、画像形成装置1では、各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kは、中間転写ベルト10の回転方向上流側から色Y,M,C,Kの順に配設されているが、色Y,M,C,Kの配置順は任意に設定することができる。なお、中間転写媒体として中間転写ベルト10を用いる代わりに中間転写ドラムを用いてもよい。
【0023】
2次転写装置14は、2次転写ローラ43を備えている。この2次転写ローラ43は、駆動ローラ11に掛けられた中間転写ベルト10に紙等の転写材を当接させて、中間転写ベルト10上で各色のトナー像を重ね合わせてなるカラーのトナー像(カラー画像)を転写材に転写するものである。その場合、駆動ローラ11は2次転写時のバックアップローラとしても機能する。また、2次転写装置14は、2次転写ローラクリーナ46と2次転写ローラクリーナ回収液貯留容器47とを備えている。2次転写ローラクリーナ46は、ゴム等の弾性体からなる。そして、この2次転写ローラクリーナ46は2次転写ローラ43に当接されて2次転写後に2次転写ローラ43の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去する。また、2次転写ローラクリーナ回収液貯留容器47は、2次転写ローラクリーナ46によって2次転写ローラ43から掻き落とされた液体現像剤を回収して貯留する。
【0024】
中間転写ベルトクリーニング装置15は、中間転写ベルトクリーナ44と中間転写ベルトクリーナ回収液貯留容器45とを備えている。中間転写ベルトクリーナ44は中間転写ベルト10に当接されて2次転写後に中間転写ベルト10の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去するものである。その場合、従動ローラ12は中間転写ベルトクリーニング時のバックアップローラとしても機能する。この中間転写ベルトクリーナ44はゴム等の弾性体からなっている。また、中間転写ベルトクリーナ回収液貯留容器45は、中間転写ベルトクリーナ44が中間転写ベルト10から掻き落とした液体現像剤を回収して貯留するものである。
【0025】
各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kは、それぞれに対応した現像装置5Y,5M,5C,5Kと、1次転写装置7Y,7M,7C,7Kと、直列に配置された潜像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kとを備えている。また、各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kより中間転写ベルト10の回転方向下流側の各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kの近傍には、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズ装置13Y,13M,13C,13Kが配設されている。
【0026】
各感光体2Y,2M,2C,2Kは、図1に示す例ではいずれも、感光体ドラムから構成されている。そして、これらの感光体2Y,2M,2C,2Kは、いずれも作動時に図1に実線矢印で示すように時計回りに回転する。なお、各感光体2Y,2M,2C,2Kは、無端ベルト状に構成してもよい。各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kは、それぞれ、中間転写ベルト10を各感光体2Y,2M,2C,2Kに当接させる1次転写用のバックアップローラ37Y,37M,37C,37Kを備えている。
【0027】
以下に、各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kについて、1次転写ユニット50Yを例に詳しく説明する。1次転写ユニット50M,50C,50Kの構成要素は、色M,C,Kにかかるものが異なるだけで構造および配置は、1次転写ユニット50Yと同様である。
【0028】
図2に、1次転写ユニット50Yの概略拡大図を示した。感光体2Yの周囲には、回転方向上流側から順に、帯電部材3Y、露光手段としてのラインヘッド4Y、現像装置5Y、感光体スクイーズ装置6Y、1次転写装置7Y、および除電装置8Yが配設されている。
【0029】
帯電部材3Yは、例えば帯電ローラからなる。帯電部材3Yには、図示しない電源装置から液体現像剤の帯電極性と同極性のバイアスが印加される。そして、帯電部材3Yは、感光体2Yを帯電するようになっている。ラインヘッド4Yは、例えば有機EL素子、LEDを用いた露光光学系等から光を感光体2Yの表面200に照射することによって、帯電された感光体2Y上に静電潜像を形成する。光の照射方向は、ラインヘッド4Yから引き出された実線矢印で示した。ラインヘッド4Yは、感光体2Yから離間配置されている。
【0030】
なお、露光光学系の走査方向については、図2の紙面に対して垂直な方向を主走査方向XXとし、主走査方向XXに直交し、光が照射される感光体2Yの表面200の接線方向を副走査方向YYとした。
【0031】
以下に、本実施形態におけるラインヘッド4Yを図に基づいて詳しく説明する。図3は、本実施形態にかかるラインヘッド4Y付近の主走査方向XXの概略断面図である。また、図4は図3のラインヘッドの両端部を拡大した図である。ラインヘッド4Yは、図3に示すように、本発明の「第1基板」としてのヘッド基板400とケース420とレンズアレイ430とを備えている。レンズアレイ430は後述するように本発明の「第2基板」に相当するレンズ基板にレンズを形成したものであり、レンズアレイ430の長手方向である主走査方向XXの一端430E1は固定用接着剤440E1により直接ケース420に固定的に接続されて固定部が構成されているのに対し、他端430E2は弾性部材440E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して他端430E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてレンズアレイ430が伸長するが、主走査方向(本発明の「第1方向」に相当)XXの一端430E1が固定されているため、他端430E2が熱膨張して弾性部材440E2の弾性力に抗しながら主走査方向(第1方向)XXに伸長する。
【0032】
また、ヘッド基板400についても、上記レンズアレイ430と同様に構成されている。すなわち、ヘッド基板400の主走査方向XXの一端400E1は固定用接着剤441E1により直接ケース420に固定的に接続されて固定部が構成されているのに対し、他端400E2は弾性部材441E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して他端400E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400が伸長するが、主走査方向(第1方向)XXの一端400E1が固定されているため、他端400E2が熱膨張して弾性部材440E2の弾性力に抗しながら主走査方向(第1方向)XXに伸長する。ここで、弾性部材については弾性を有する接着剤で構成してもよい。また、それ以外の弾性材料を用いてもよい。
【0033】
なお、ヘッド基板400とレンズアレイ430とは、一ヶ所で固定されていればよく、主走査方向XXの一端430E1に限らず、長手方向両端の中間点であってもよい。この実施形態については後で説明する。また、この実施形態では、ヘッド基板400の一端400E1およびレンズアレイ430の一端430E1をそれぞれ接着剤440E1、441E1で固定しているが、同一の接着剤により一体的にケース420に固定してもよい。また、ケース420を介して固定されていなくてもよく、例えば、ヘッド基板400とレンズアレイ430とが一ヶ所で固定された状態で、ケース420に収められていてもよい。
【0034】
ラインヘッド4Yは、主走査方向XXに配列された複数の発光素子グループ410を備えている。これらの発光素子グループ410から、図2に示したように、帯電部材3Yにより帯電された感光体2Yの被走査面である表面200に対して光が照射され、表面200に静電潜像が形成される。
【0035】
図5に、ヘッド基板400、レンズアレイ430および感光体2Y付近の拡大図を示した。図6に、レンズアレイ430の部分断面図を示した。図5において、発光素子グループ410は、ヘッド基板400のレンズアレイ430と対向する面の反対面に、主走査方向XXに1次元に配置されている。発光素子グループ410は複数の発光素子411を備えており、発光素子411としては、有機ELが用いられ、ヘッド基板400にはガラス基板が用いられている。また、図5において、レンズアレイ430は、レンズ基板431および発光素子グループ410に対応する一対の2つのレンズ432,433とを備えている。なお、図3におけるレンズアレイ430の固定は、レンズ基板431を固定することによって行われている。
【0036】
図6において、レンズ対を構成する2枚のレンズ432,433は、相互に図中一点鎖線で示した光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、図5に示した複数の発光素子グループ410に一対一で対向して配置されている。図5において、各発光素子411から射出された光は、破線および二点鎖線で示すようにレンズ432,433によって感光体2Y上に結像する。ここで、本実施形態の光学系は、倒立光学系であり、発光素子411から射出された光は、光軸OAに対して反転した位置に結像する。なお、この明細書では、一対一の対をなすレンズ432,433と、かかるレンズ対によって挟まれたレンズ基板431とから成る光学系は結像レンズを構成し、「レンズL」と称することとする。レンズLは、発光素子グループ410の配置に対応して、主走査方向XXに互いに所定間隔だけ離れて1次元的に配置されている。
【0037】
レンズ基板431には、ガラス基板が用いられ、レンズ432,433は、レンズ基板431表面に樹脂で形成されている。レンズ432,433は、紫外硬化樹脂の液滴をレンズ基板431に配置し、紫外線を照射することによって形成できる。また、レンズ基板431上の液滴に型を押し付け、レンズ432,433の形状を型の形状としたうえで、紫外線を照射してもよい。本実施形態では、ヘッド基板400およびレンズ基板431にガラス基板が用いられるが、ヘッド基板400の線膨張係数αEよりレンズ基板431の線膨張係数αLが小さい。
【0038】
図7に、ヘッド基板400の線膨張係数とレンズ基板431の線膨張係数が実質的に同一の場合の部分断面図を、図8および図9に線膨張係数が異なる場合の部分断面図を示した。ここで、熱が印加された熱膨張後のヘッド基板400とレンズLの位置を破線で示した。また、熱膨張前の発光素子411の表面200における結像位置をI0、熱膨張後の発光素子411の表面200における結像位置をIで表した。
【0039】
ヘッド基板400およびレンズ基板431の固定された一端から、対象とする発光素子411およびレンズLまでの距離をd(図4参照)とすると、加熱によって温度が1℃上昇するにつき、レンズLの移動距離はd×αL、発光素子411の移動距離はd×αEとなる。以下、1℃当りの移動距離について説明する。
【0040】
一方、熱膨張後において、レンズLの光軸OAに対する発光素子411のずれは、レンズLの移動距離d×αLと発光素子411の移動距離d×αEとの差d×(αE−αL)であるので、発光素子411の表面200でのレンズLの光軸OAに対する結像位置は、m×d×(αE−αL)となる。ここで、mはレンズLの光学倍率で、倒立光学系の場合は負である。したがって、実際の結像位置Iの移動距離は、レンズLの移動距離d×αLにm×d(αE−αL)を加えたd×αL+m×d(αE−αL)となる。
【0041】
ヘッド基板400とレンズ基板431の線膨張係数が同じ場合は、図7において、同じ移動距離W=d×αL(αE)だけヘッド基板400およびレンズLが移動し、光軸OAに対する発光素子411の位置はかわらず、熱膨張後の結像位置Iも移動距離Wだけ移動する。
【0042】
ヘッド基板400の線膨張係数よりレンズ基板431の線膨張係数が小さい場合は、図8において、ヘッド基板400の移動距離W=d×αEに対して、レンズLは移動距離W1=d×αLだけ移動する。ここで、W1<Wである。結像位置Iは、レンズLの移動距離W1に対し、倒立光学系であるので、レンズLの移動方向とは反対方向に結像し、移動距離W2=d×αL+m×d×(αE−αL)だけ移動する。ここで、mは負の値で、(αE−αL)は正の値なので、W2<W1<Wである。したがって、結像位置Iは、ヘッド基板400とレンズ基板431の線膨張係数が同じ場合と比較して、元の結像位置I0に近い。
【0043】
ヘッド基板400の線膨張係数とレンズ基板431の線膨張係数とが次式の関係にある場合は、図9において、レンズLの移動距離W3と同じ距離で、レンズLの移動方向とは逆方向に発光素子411は結像するので、結像位置Iは元の結像位置I0と重なる。
αL+m(αE−αL)=0
【0044】
以下に、ヘッド基板400線膨張係数αEおよびレンズ基板431の線膨張係数αLについて、具体的に実施例および変形例として示す。
【0045】
(実施例1)
ヘッド基板400にソーダガラス(αE:9×10−6/℃)を用い、レンズ基板431にパイレックス(登録商標)(αL:3.25×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−0.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、0.375×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数αLをヘッド基板400の線膨張係数αEである9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、1/10以下になった。その他のレンズ基板の組み合わせとして、Duran(登録商標)(αL:3.3×10−6/℃)、OA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用いることができる。
【0046】
(実施例2)
ヘッド基板400にOA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用い、レンズ基板431に石英ガラス(αL:0.4×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−1.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、−0.62×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数をヘッド基板400の線膨張係数9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、小さくなった。
【0047】
(実施例3)
ヘッド基板400にOA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用い、レンズ基板431にホウケイ酸ガラス(αL:2.2×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−1.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、−0.2×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数をヘッド基板400の線膨張係数9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、1/10以下になった。
【0048】
(変形例1)
発光素子は、LEDであってもよく、ヘッド基板400としてガラスエポキシ基板(αL:1.5×10−5を用いることができる。LEDの場合、ヘッド基板400のレンズ基板431側にLEDを設ける。レンズ基板431にソーダガラス(αL:9.00×10−6/℃)を用い、光学倍率は−1.5とした。このとき、単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、0となり、結像位置Iの移動を完全に無くすことができる。
【0049】
次に、図2に戻って現像装置5Yについて説明する。現像装置5Yは、感光体2Yに形成された静電潜像を液体現像剤21Yによって現像する。図2において、現像装置5Yは、それぞれ、現像剤供給部16Yと、現像ローラ17Yと、コンパクションローラ18Yと、現像ローラクリーナ19Yと、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yとから構成されている。
【0050】
現像剤供給部16Yは、それぞれ、トナー粒子および不揮発性の液体キャリアからなる液体現像剤21Yを収納する現像剤容器22Yと、現像剤汲み上げローラ23Yと、アニロクスローラ24Yと、現像剤規制ブレード25Yとからなっている。
【0051】
現像剤容器22Y内に収納される液体現像剤21Yにおいて、トナーとしては、トナーに使用される公知の熱可塑性樹脂中へ同じく公知の顔料等の着色剤を分散させた例えば平均粒径1μmの粒子を用いることができる。また、低粘性低濃度の液体現像剤を得るには、液体キャリアとして、例えば、有機溶媒、フェニルメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサンおよびポリジメチルシクロシロキサン等の引火点210℃以上のシリコーンオイル、鉱物油等の絶縁性液体キャリアを用いることができる。そして、液体現像剤21Yはトナー粒子を分散剤とともに液体キャリアへ添加し、トナー固形分濃度を約20%としたものである。
【0052】
現像剤汲み上げローラ23Yは、それぞれ、現像剤容器22Y内の液体現像剤21Yを汲み上げてアニロクスローラ24Yに供給するローラである。現像剤汲み上げローラ23Yは、図2において矢印で示す時計回りに回転する。また、アニロクスローラ24Yは、円筒状の部材で表面に微細かつ一様に螺旋状の溝を形成したローラである。溝の寸法は、例えば、溝ピッチが約130μm、溝深さが約30μmに設定される。もちろん、溝の寸法はこれらの値に限定されることはない。アニロクスローラ24Yは、現像ローラ17Yと同じ回転方向で図2において矢印で示す反時計回りに回転する。なお、アニロクスローラ24Yは、いずれも現像ローラ17Yと連れ回りで時計回りに回転するようにすることもできる。すなわち、アニロクスローラ24Yの回転方向は、限定されず任意である。
【0053】
現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの表面に当接して設けられている。これらの現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの表面に当接する、ウレタンゴム等からなるゴム部と、このゴム部を支持する金属等の板とから構成されている。そして、現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの溝部以外の表面に付着する液体現像剤21Yをゴム部で掻き落として除去する。したがって、アニロクスローラ24Yは、それらの溝部内に付着する液体現像剤21Yのみを各現像ローラ17Yに供給するようになっている。
【0054】
現像ローラ17Yは、例えば鉄等金属シャフトの外周部に、導電性ウレタンゴム等の導電性樹脂層や導電性ゴム層からなる所定幅の円筒状の導電性弾性体を備えたものである。これらの現像ローラ17Yは感光体2Yに当接され、かつ図2において矢印で示すように反時計回りに回転する。
【0055】
コンパクションローラ18Yは、それらの外周面が対応する現像ローラ17Yの外周面
に当接されて配置されている。このとき、コンパクションローラ18Yと現像ローラ17Yとは互いに所定量の食い込みになっている。
【0056】
そして、コンパクションローラ18Yは、図2において矢印で示すように時計回りに回転するようにされている。そして、コンパクションローラ18Yはそれぞれ電圧を印加されて、対応する現像ローラ17Yを帯電するようになっている。その場合、コンパクションローラ18Yへの印加電圧は、それぞれ直流電圧(DC)に設定されている。コンパクションローラ18Yへの印加電圧は、それぞれ直流電圧(DC)に交流電圧(AC)が重畳された電圧に設定することもできる。
【0057】
これらのコンパクションローラ18Yによる現像ローラ17Yの帯電で、コンパクションローラ18Yは、それぞれ、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yに対して接触転圧を行う。
【0058】
コンパクションローラ18Yによる接触転圧で、それぞれ、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yが現像ローラ17Yに押し付けられる。
【0059】
コンパクションローラ18Yには、それぞれ、コンパクションローラクリーナブレード26Yと、コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Yとが設けられている。これらのコンパクションローラクリーナブレード26Yは、それぞれ対応するコンパクションローラ18Yの表面に当接する例えばゴム等で構成され、コンパクションローラ18Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するためのものである。さらに、コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Yは、コンパクションローラクリーナブレード26Yによってコンパクションローラ18Yから掻き落とされた液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器から構成されている。
【0060】
また、現像ローラクリーナ19Yは、現像ローラ17Yの表面に当接する例えばゴム等で構成され、現像ローラ17Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するためのものである。さらに、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yは、それぞれ、現像ローラクリーナ19Yによって現像ローラ17Yから掻き落とされた液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器から構成されている。
【0061】
さらに、画像形成装置1は、それぞれ液体現像剤21Yを現像剤容器22Yに補給する現像剤補給装置28Yを備えている。これらの現像剤補給装置28Yは、それぞれ、トナータンク29Yと、キャリアタンク30Yと、撹拌装置31Yとからなっている。
【0062】
トナータンク29Yには、それぞれ高濃度液体トナー32Yが収納されている。また、キャリアタンク30Yには、液体キャリア(キャリアオイル)33Yが収納されている。さらに、撹拌装置31Yには、トナータンク29Yからの所定量の高濃度液体トナー32Yとキャリアタンク30Yからの所定量の液体キャリア33Yとが供給されるようになっている。
【0063】
そして、撹拌装置31Yは、供給された高濃度液体トナー32Yおよび液体キャリア33Yをそれぞれ混合撹拌して現像装置5Yで使用する液体現像剤21Yを作製する。その場合、液体現像剤21Y全体の粘度は100mPas〜1000mPasであり、また液体キャリア(キャリアオイル)33Y単体の粘度は10mPas〜200mPasであることが好ましい。粘度の測定方法は、例えば粘弾性測定装置ARES(TAインストルメント・ジャパン製)を用いて測定する。撹拌装置31Yで作製された液体現像剤21Yは、それぞれ現像剤容器22Yに供給されるようになっている。
【0064】
感光体スクイーズ装置6Yは、スクイーズローラ34Yと、スクイーズローラクリーナ35Yと、スクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yとから構成されている。スクイーズローラ34Yは、それぞれ、感光体2Yと現像ローラ17Yとの当接部(ニップ部)より感光体2Yの回転方向下流側に設置されている。そして、スクイーズローラ34Yは、感光体2Yと逆方向(図2において反時計回り)に回転されて、感光体2Y上の液体現像剤21Yを除去するようになっている。
【0065】
コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Y、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yおよびスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yに溜まった液体現像剤21Yは、撹拌装置31Yに戻り再利用される。
【0066】
スクイーズローラ34Yとしては、いずれも、金属製芯金の表面に導電性ウレタンゴム等の弾性部材とフッ素樹脂製表層を配した弾性ローラが好適である。また、スクイーズローラクリーナ35Yは、いずれもゴム等の弾性体からなり、それぞれ対応するスクイーズローラ34Yの面に当接され、これらのスクイーズローラ34Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するものである。さらに、スクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yは、それぞれ対応するスクイーズローラクリーナ35Yが掻き落とした液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器である。
【0067】
バックアップローラ37Yは、トナー粒子の帯電極性と逆極性の例えば約−200Vが印加されて、感光体2Y上の液体現像剤21Yで形成された像を中間転写ベルト10に1次転写する。また、除電装置8Yは、1次転写後に感光体2Yに残留する電荷を除去するものである。
【0068】
中間転写ベルトスクイーズ装置13Yは、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズローラ40Yと、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yと、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器42Yとからなっている。中間転写ベルトスクイーズローラ40Yは、中間転写ベルト10上の液体現像剤21Yを回収するものである。また、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yは、それぞれ中間転写ベルトスクイーズローラ40Yのローラ上の回収した液体現像剤21Yを掻き取るものである。これらの中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yは、スクイーズローラクリーナ35Yと同様にゴム等の弾性体からなっている。さらに、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器42Yは、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yで掻き取った液体現像剤21Yを回収貯留するものである。
【0069】
画像形成動作が開始されると、感光体2Yが帯電部材3Yによって一様に帯電される。次いで、感光体2Yに、ラインヘッド4Yによって静電潜像が形成される。
【0070】
次に、現像装置5Yにおいて、イエロー(Y)の液体現像剤21Yが現像剤汲み上げローラ23Yによってアニロクスローラ24Yに汲み上げられる。アニロクスローラ24Yに付着した液体現像剤21Yは、現像剤規制ブレード25Yによってアニロクスローラ24Yの溝内に適正量付着される。このアニロクスローラ24Yの溝内の液体現像剤21Yは現像ローラ17Yに供給される。
【0071】
このとき、アニロクスローラ24Yの溝内の液体現像剤21Yの一部がアニロクスローラ24Yの左右両端の方に移動する。さらに、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yのイエロー(Y)のトナー粒子は、コンパクションローラ18Yによる接触コンパクションでその現像ローラ17Yに押し付けられる。現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yはコンパクションされた状態で、現像ローラ17Yの回転によって感光体2Yの方へ搬送される。
【0072】
コンパクションローラ18Yによる接触コンパクションが終了してコンパクションローラ18Yに残留する液体現像剤21Yは、コンパクションローラクリーナブレード26Yによってコンパクションローラ18Yから除去される。
【0073】
イエロー(Y)の感光体2Yに形成された静電潜像が現像装置5Yにおいてイエロー(Y)の液体現像剤21Yで現像され、感光体2Yにイエロー(Y)の液体現像剤21Yによって像が形成される。現像が終了して現像ローラ17Yに残留する液体現像剤21Yは、現像ローラクリーナ19Yによって現像ローラ17Yから除去される。感光体2Y上のイエロー(Y)の液体現像剤21Yによって形成される像は、スクイーズローラ34Yにより感光体2Y上の液体現像剤21Yが回収されてイエロー(Y)のトナー像とされる。さらに、このイエロー(Y)のトナー像は1次転写装置7Yで中間転写ベルト10に転写される。中間転写ベルト10上のイエロー(Y)のトナー像は、中間転写ベルトスクイーズローラ40Yにより中間転写ベルト10上の液体現像剤21Yが回収されながら、図1に示したマゼンタ(M)の1次転写装置7Mの方へ搬送される。
【0074】
図1において、次いで、マゼンタ(M)の感光体2Mに形成された静電潜像が現像装置5Mにおいて、イエロー(Y)の場合と同様にして搬送されてきたマゼンタ(M)の液体現像剤で現像され、感光体2Mにマゼンタ(M)の液体現像剤によって像が形成される。このとき、コンパクションローラ18Mによる接触コンパクションの終了後コンパクションローラ18Mに残留するキャリアは、コンパクションローラクリーナブレード26Mによってコンパクションローラ18Mから除去される。また、現像が終了して現像ローラ17Mに残留する液体現像剤は、現像ローラクリーナ19Mによって現像ローラ17Mから除去される。
【0075】
感光体2M上のマゼンタ(M)の液体現像剤で形成された像は、スクイーズローラ34Mにより感光体2M上の液体現像剤が回収されてマゼンタ(M)のトナー像とされ、このマゼンタ(M)のトナー像は1次転写装置7Mで中間転写ベルト10にイエロー(Y)のトナー像と色重ねされて転写される。同様にして、色重ねされたイエロー(Y)とマゼンタ(M)のトナー像は、中間転写ベルトスクイーズローラ40Mにより中間転写ベルト10上の液体現像剤が回収されながらシアン(C)の1次転写装置7Cの方へ搬送される。以下、同様にして、シアン(C)のトナー像およびブラック(K)のトナー像が中間転写ベルト10に順次色重ねされて転写され、中間転写ベルト10にフルカラーのトナー像が形成される。
【0076】
次いで、2次転写装置14により、中間転写ベルト10上のカラーのトナー像が紙等の転写材の転写面に2次転写される。転写材上に転写されたカラーのトナー像は、従来と同様に図示しない定着器によって定着され、フルカラーの定着像が形成された転写材は排紙トレイに搬送されて、カラー画像形成動作が終了する。
【0077】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)ラインヘッド4Yに熱が加わり、ヘッド基板400およびレンズ基板431が膨張すると、ヘッド基板400およびレンズ基板431が一端400E1,430E1で固定されているため、固定されている一端400E1,430E1を中心に膨張する。この実施形態では、レンズ基板431の線膨張係数αLがヘッド基板400の線膨張係数αEよりも小さいので、発光素子411のレンズLに対する位置がずれる。この位置のずれに対し、レンズLは倒立光学系なので、発光素子411の結像位置IはレンズLの膨張による移動方向とは逆方向であり、元の結像位置I0からの熱膨張後の結像位置Iのずれを小さくできる。したがって、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0078】
(2)ヘッド基板400およびレンズ基板431がその長手方向である主走査方向XXの一端400E1,430E1で固定されているので、他端400E2,430E2での熱膨張によるヘッド基板400とレンズ基板431とのずれが大きく、より効果的に、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0079】
(3)ヘッド基板400とレンズ基板431とがケース420によって固定、支持されているので、ラインヘッド4Yに対する、ヘッド基板400およびレンズ基板431の位置ずれを少なくでき、より熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。また、主走査方向XXの一端が接着剤440,441によって支持されているので、ヘッド基板400とレンズ基板431の熱膨張が妨げられることによる、ヘッド基板400とレンズ基板431の歪みが減少し、より結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0080】
(4)レンズ基板431の線膨張係数αLとヘッド基板400の線膨張係数αEとの関係が上記の式を満たすことにより、レンズLの移動距離と、結像位置IのレンズLに対する移動距離が一致し、熱膨張後の結像位置Iのずれをなくすことができ、より結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0081】
(第2実施形態)
図10は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。また、図11は、ラインヘッド4Yの副走査方向YYの断面図である。第1実施形態と同じ機能の部材には同じ符号を付した。図10において、ラインヘッド4Yは、主走査方向XXおよび副走査方向YYに配列された発光素子グループ410を備えている。発光素子グループ410は、複数の発光素子411を備えている。これらの発光素子411から、図2に示したように、帯電部材3Yにより帯電された感光体2Yの被走査面である表面200に対して光が照射され、表面200に静電潜像が形成される。
【0082】
図10において、本実施形態のラインヘッド4Yは、主走査方向XXを長手方向とするケース420を備えるとともに、かかるケース420の両端には、位置決めピン421とねじ挿入孔422が設けられている。かかる位置決めピン421を、図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことで、ラインヘッド4Yが、図2に示した感光体2Yに対して位置決めされている。感光体カバーは、感光体2Yを覆うとともに感光体2Yに対して位置決めされている。また、ねじ挿入孔422を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド4Yが感光体2Yに対して位置決め固定されている。
【0083】
図10および図11において、ケース420は、感光体2Yの表面200に対向する位置で、レンズ基板(本発明の「第2基板」に相当)431に結像レンズが配列されたレンズアレイ430を保持するとともに、その内部に、レンズアレイ430に近い順番で、遮光部材450および本発明の「第1基板」としてのヘッド基板400を備えている。ヘッド基板400は透明なガラス基板である。
【0084】
レンズアレイ430は、レンズ基板431とレンズ432とレンズ433とを備えている。レンズ432とレンズ433とは対をなしてレンズLを構成しており、2次元に配置された発光素子グループ410に対応して、レンズ基板431に2次元に配置されている。
【0085】
ヘッド基板400のうら面402(ヘッド基板400が有する2つの面のうち遮光部材450に対向するおもて面401とは逆側の面)には、複数の発光素子グループ410が設けられている。複数の発光素子グループ410は、ヘッド基板400のうら面402に、図10に示すように、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に、並べて配置されている。ここで、発光素子グループ410は、図10中の円で囲んだ部分に示すように、複数の発光素子411を2次元的に配列することによって構成されている。
【0086】
本実施形態では、発光素子として有機ELを用いる。つまり、本実施形態では、ヘッド基板400のうら面402に有機ELを発光素子411として配置している。そして、複数の発光素子411のそれぞれから感光体2Yの方向に射出される光は、ヘッド基板400を介して遮光部材450へ向かう。発光素子はLEDであってもよい。この場合、基板はガラス基板でなくてもよく、LEDは、おもて面401に設けることができる。
【0087】
図10および図11において、遮光部材450は、複数の発光素子グループ410に対して一対一で対応する複数の導光孔4410を備えている。
【0088】
図10および図11において、発光素子グループ410に属する発光素子411から射出された光は、該発光素子グループ410に一対一で対応する導光孔4410によって、レンズアレイ430に導かれる。そして、導光孔4410を通過した光は、二点鎖線で示すように、レンズアレイ430により、感光体2Yの表面200にスポットとして結像されることとなる。
【0089】
図11に示すように、固定器具460によって、裏蓋470はヘッド基板400を介してケース420に押圧されている。つまり、固定器具460は、裏蓋470をケース420側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋470を押圧することで、ケース420の内部を光密に(つまり、ケース420内部から光が漏れないように、および、ケース420の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具460は、図10に示すケース420の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ410は、封止部材480により覆われている。
【0090】
図12は、複数の発光素子グループ410の配置を示す図である。
【0091】
本実施形態では、主走査方向XXに4個の発光素子411を所定間隔ごとに並べて構成される発光素子行L411を、副走査方向YYに2行並べて、1つの発光素子グループ410を構成している。つまり、同図の二点鎖線の円形で示される1つのレンズの外径の位置に対応して8個の発光素子411が、発光素子グループ410を構成している。そして、複数の発光素子グループ410は次のように配置されている。
【0092】
主走査方向XXに発光素子グループ410を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ行L410(グループ行)が副走査方向YYに3行並ぶように、発光素子グループ410は2次元的に配置されている。また、各発光素子グループ行L410間の発光素子グループ410は、互いに異なる主走査方向位置に配置されている。さらに、主走査方向位置が隣り合う発光素子グループ(例えば、発光素子グループ410C1と発光素子グループ410B1)の副走査方向位置が互いに異なるように、複数の発光素子グループ410は配置されている。なお、主走査方向位置および副走査方向位置とはそれぞれ注目する位置の主走査方向成分および副走査方向成分を意味する。
【0093】
図13は、ラインヘッド4Yによるスポット形成動作を示す図である。スポットの集まりによって静電潜像が形成される。以下に、図12、図13を用いて本実施形態におけるラインヘッドによるスポット形成動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体2Yの表面200を副走査方向YYに搬送しながら、複数の発光素子411を所定のタイミングで発光させることで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0094】
図12において、本実施形態のラインヘッド4Yでは、副走査方向位置Y1〜Y6の各位置に対応して、副走査方向YYに発光素子行L411が6列配置されている。副走査方向YYの同一の位置にある発光素子行L411は、略同一のタイミングで発光させるとともに、副走査方向YYの異なる位置にある発光素子行L411は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、副走査方向位置Y1〜Y6の順番で、発光素子行L411を発光させる。そして、感光体2Yの表面200を副走査方向YYに搬送しながら、上述の順番で発光素子行L411を発光させることで、表面200の主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0095】
かかる動作を、図12、図13用いて説明する。最初に、副走査方向YYに最上流の発光素子グループ410A1,410A2,410A3,…に属する副走査方向位置Y1の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、上述の反転拡大特性を有する「結像レンズ」であるレンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0096】
なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号410C1,410B1,410A1,410C2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ410により形成されるスポットであることを示す。
【0097】
次に、発光素子グループ410A1,410A2,410A3,…に属する副走査方向位置Y2の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13において、「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。ここで、感光体2Yの表面200の搬送方向が副走査方向YYであるのに対して、副走査方向YYの下流側の発光素子行L411から順番に(つまり、副走査方向位置Y1,Y2の順番に)発光させたのは、レンズLが反転特性を有することに対応するためである。
【0098】
次に、副走査方向YYの上流側から2番目の発光素子グループ410B1,410B2,410B3,…に属する副走査方向位置Y3の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0099】
次に、発光素子グループ410B1,410B2,410B3,…に属する副走査方向位置Y4の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0100】
次に、副走査方向YY最下流の発光素子グループ410C1,410C2,410C3,…に属する副走査方向位置Y5の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「5回目」のハッチン
グパターンの位置にスポットが形成される。
【0101】
そして最後に、発光素子グループ410C1,410C2,410C3,…に属する副走査方向位置Y6の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0102】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(5)発光素子グループ410およびレンズLが2次元に配置されているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0103】
(第3実施形態)
図14に、本実施形態にかかるヘッド基板400、レンズアレイ430および感光体2Y付近の拡大図を示した。レンズアレイ430以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同一の部品、部材には、同じ符号を付した。本実施形態は、発光素子グループ410は1次元に配置されている。
【0104】
図14において、レンズアレイ430は、2つのレンズ基板434,435を備えている。ヘッド基板400とレンズアレイ430との間、2つのレンズ基板434,435の間には、遮光部材451と452とが配置されている。図15に、レンズ基板434,435の断面図を示した。レンズ基板434,435の片面には、樹脂によってレンズ436が形成されている。
【0105】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え以下の効果がある。
(6)2つのレンズ基板434,435を備えているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0106】
(第4実施形態)
図16に、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。また、図17は、ラインヘッド4Yの副走査方向YYの断面図である。第2実施形態と同じ機能の部材には同じ符号を付した。本実施形態は、発光素子グループおよび第3実施形態のレンズ基板に形成されたレンズが2次元に配置されたものである。
【0107】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え以下の効果がある。
(7)2つのレンズ基板434,435を備え、発光素子グループ410およびレンズLが2次元に配置されているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0108】
(第5実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。この第5実施形態が第1実施形態と大きく相違する点はケース420へのヘッド基板400およびレンズアレイ430の固定位置である。すなわち、第5実施形態では、主走査方向(第1方向)XXにおけるケース420の中央下部に支持部材442が固定されている。この支持部材442はケース420から感光体2Yに向けて延設されており、支持部材442によりヘッド基板400の中央部およびレンズアレイ430の中央部が固定的に支持されている。
【0109】
一方、主走査方向XXにおけるレンズアレイ430の両端430E1、430E2はそれぞれ弾性部材440E1、440E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてレンズアレイ430が伸長するが、主走査方向XXの中央部が固定されているため、両端430E1、430E2が熱膨張してそれぞれ弾性部材440E1、440E2の弾性力に抗しながら主走査方向XXに伸長する。
【0110】
また、ヘッド基板400についても、上記レンズアレイ430と同様に構成されている。すなわち、主走査方向(第1方向)XXにおけるヘッド基板400の両端400E1、400E2がそれぞれ弾性部材441E1、441E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して両端400E1、400E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400が伸長するが、主走査方向XXの中央部が固定されているため、両端400E1、400E2が熱膨張してそれぞれ弾性部材441E1、441E2の弾性力に抗しながら主走査方向XXに伸長する。なお、その他の構成については第1実施形態と同様である。
【0111】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え次の効果がある。すなわち、主走査方向XXにおけるヘッド基板400およびレンズアレイ430の中央部を固定部としたことにより、固定部から最も離れた発光素子411までの距離は第1実施形態の約半分となる。したがって、熱膨張による結像位置の移動量も第1実施形態の約半分となる。
【0112】
(第6実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。この第6実施形態では、全色についてラインヘッド4Y、4M、4C、4Kは装置本体に対して固定的に設けられたヘッド固定部材49に取り付けられている。なお、同図では2つのラインヘッド4Y、4Mが図示されており、以下同図を参照しながら本発明の第6実施形態について説明する。
【0113】
この第6実施形態では、2本のヘッド固定部材49L、49Rが副走査方向YYに所定間隔だけ離間して平行に配置されるとともに、これら2本のヘッド固定部材49L、49Rを橋渡すようにラインヘッド4Y、4Mが配置されている。各ラインヘッド4Y、4Mのケース420の両端部には、位置決めピン421とねじ挿入孔(図9参照)が設けられている。かかる位置決めピン421をヘッド固定部材49L、49Rに穿設された位置決め孔491L、491Rに嵌め込むことで、ラインヘッド4Y、4Mがそれぞれ感光体2Y、2Mに対して位置決めされ、固定ネジ492によりヘッド固定部材49L、49Rに対してラインヘッド4Y、4Mが取り付けられている。なお、この実施形態では、一方側(図19の左手側)のヘッド固定部材49Lに穿設された位置決め孔491Lについては位置決めピン421が挿入されることでラインヘッド4Y、4Mを主走査方向XXにも副走査方向YYにも位置決めするように構成される。
【0114】
これに対し、他方側(図19の右手側)のヘッド固定部材49Rに穿設された位置決め孔491Rについては主走査方向XXに延びる長孔形状に仕上げられており、位置決めピン421が挿入されることでラインヘッド4Y、4Mを副走査方向YYに位置決めするものの、主走査方向XXについてはラインヘッド4Y、4Mの他端が移動自在となっている。また、ヘッド固定部材49Rでは、固定ネジ492を挿通するための貫通孔493Rも長孔となっている。このようにラインヘッド4Y、4Mの一端をヘッド固定部材49Lに固定する一方、他端をヘッド固定部材49Rに対して副走査方向YYへの移動を規制しつつ主走査方向XXに移動自在に支持している。
【0115】
このようにヘッド固定部材49Lに各ラインヘッド4Y、4Mを位置決め固定し、ラインヘッド4Y、4Mの周辺温度が高くなり、それに応じてケース420が熱膨張した際には、各ラインヘッド4Y、4Mを主走査方向XXに伸長させるように構成されている。
【0116】
こうしてヘッド固定部材49L、49Rに取り付けられたラインヘッド4Y、4Mは上述の実施形態と同様に構成されている。つまり、ヘッド基板400およびレンズアレイ430は、主走査方向(第1方向)XXの一端(同図の左手端)が固定されて固定部が形成されるとともに、他端(同図の右手端)が弾性部材を介してケース420に支持されて主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Y、4Mの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400およびレンズアレイ430が熱膨張するが、固定部を基準として他端側に熱膨張して主走査方向(第1方向)XXに伸長する。
【0117】
このように、第6実施形態では、ケース420、ヘッド基板400およびレンズアレイ430のいずれも主走査方向(第1方向)XXの一端側を固定部として他端側に伸長可能に構成している。したがって、熱膨張による結像位置の移動方向はいずれの色成分においても同一となっている。しかも、上述した作用効果を有するラインヘッド4Y、4Mを用いている。したがって、色成分間で生じる結像位置のずれ、つまりカラーレジスト誤差を効果的に抑えることができ、高品質のカラー画像を形成することができる。
【0118】
(その他)
なお、上記した実施形態、実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0119】
第2および第3実施形態では、主走査方向XXに発光素子グループ410を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子行L411(グループ行)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ410は2次元的に配置されている。しかし、複数の発光素子グループ410の配置の態様は、これに限られるものではなく適宜変更が可能である。
【0120】
また、上記実施形態では、ラインヘッドを用いて、図13に示すような主走査方向XXに直線状に複数個のスポットを並べて形成している。しかしながら、かかるスポット形成動作は、ラインヘッドの動作の一例を示すものであり、該ラインヘッドが実行可能な動作はこれに限られるものではない。つまり、形成されるスポットは、主走査方向XXに並んで直線状に形成される必要は無く、例えば、主走査方向XXに所定の角度を有するように並べて形成してもよいし、ジグザグ状あるいは波状に形成してもよい。
【0121】
また、上記各実施形態および変形例では、カラー画像形成装置に適用されているが、適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても適用することができる。
【0122】
さらに、トナー粒子を不揮発性液体キャリアに分散させた液体トナーだけでなく、乾式のトナーを用いた画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1実施形態にかかる画像形成装置を模式的にかつ部分的に示す図。
【図2】1次転写ユニットの概略拡大図。
【図3】ラインヘッド付近の主走査方向XXの概略断面図。
【図4】図3のラインヘッドの両端部を拡大した図。
【図5】ヘッド基板、レンズアレイおよび感光体付近の拡大図。
【図6】レンズアレイの部分断面図。
【図7】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が同じ場合の部分断面図。
【図8】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が異なる場合の部分断面図。
【図9】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が異なる場合の部分断面図。
【図10】第2実施形態にかかるラインヘッドの概略斜視図。
【図11】ラインヘッドの副走査方向YYの断面図。
【図12】複数の発光素子グループの配置を示す図。
【図13】ラインヘッドによるスポット形成動作を示す図。
【図14】第3実施形態にかかるヘッド基板、レンズアレイおよび感光体付近の拡大図。
【図15】レンズ基板の断面図。
【図16】第4実施形態にかかるラインヘッドの概略斜視図。
【図17】ラインヘッドの副走査方向YYの断面図。
【図18】第5実施形態にかかるラインヘッドを示す図。
【図19】第6実施形態にかかるラインヘッドを示す図。
【符号の説明】
【0124】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…潜像担持体としての感光体、4Y…露光手段としてのラインヘッド、200…被走査面としての表面、400…第1基板としてのヘッド基板、400E1…固定部を構成する一端、410…発光素子グループ、411…発光素子、420…ケース、430E1…固定部を構成する一端、431…第2基板としてのレンズ基板、440E1,440E2,441E1,441E2…弾性部材、L…結像レンズとしてのレンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像担持体の被走査面などの面に対して光を走査するラインヘッドおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体である感光体の被走査面に対して光を走査して潜像を形成するラインヘッドは、画像形成装置である電子写真式プリンタの光源として使用されている。
【0003】
ラインヘッドとしての光プリンタヘッドは、発光素子としての発光ダイオード素子(Light Emitting Diode)が載置された基板としてのベースプレートとレンズを支持するレンズ基板としてのレンズプレートとを備えている。レンズプレートには、発光ダイオード素子に対応してレンズが設けられ、レンズアレイが構成されている。ここで、ベースプレートとレンズプレートの線膨張係数が異なると、熱が印加されたとき、発光ダイオード素子と対応するレンズとの間に位置ずれを生じ、感光体の被走査面に鮮明で正確な潜像を形成するのが難しい。そこで、ベースプレートとレンズプレートの線膨張係数を実質的に同一としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−270468号公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッド基板とレンズ基板の線膨張係数を同一としても、熱が印加されたとき、レンズに対する発光素子の位置は変動しないものの、感光体の被走査面に対する発光素子の結像位置は熱膨張分だけ移動してしまう。また、このようなラインヘッドを露光部としてタンデム方式のカラー画像形成装置に適用した場合、結像位置の移動は、カラーレジスト誤差となって、画質を劣化させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を結像する倒立光学系の結像レンズが形成されるともに、前記第1基板よりも線膨張係数が小さい第2基板と、を有することを特徴とするラインヘッド。
【0008】
この適用例によれば、ラインヘッドに熱が加わり、第1基板および第2基板が膨張すると、第1基板および第2基板が膨張するが、第2基板の線膨張係数が第1基板の線膨張係数よりも小さいので、発光素子の結像レンズに対する位置がずれる。また、発光素子の結像位置も結像レンズの膨張により変位するが、本発明では結像レンズは倒立光学系であるため、発光素子の結像位置は結像レンズの膨張による移動方向とは逆方向となり、元の結像位置からの熱膨張後の結像位置のずれが小さくなる。したがって、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0009】
[適用例2]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板と該第2基板とを固定し、温度に応じて前記結像レンズの光軸方向と直交する第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板および第2基板は固定されているため、固定されている位置を中心にそれぞれ膨張する。このように固定位置を設けることで膨張の態様が固定化されて熱膨張による結像位置の移動を良好に制御することができる。
【0010】
[適用例3]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の一端部と該第2基板の前記第1方向の一端部が固定され、前記第1方向の他端部を温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板の第1方向の一端部と第2基板の第1方向の一端部が固定されているため、他端部での熱膨張による第1基板と第2基板とのずれが大きくなるが、第2基板の線膨張係数が第1基板の線膨張係数よりも小さいため、より効果的に、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0011】
[適用例4]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の中央部と該第2基板の前記第1方向の中央部とが固定され、該第1基板の前記第1方向の両端部と該第2基板の前記第1方向の両端部とが温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、前記第1方向における中央部が固定されているため、両端部での熱膨張による第1基板と第2基板とのずれ自体を小さくすることができ、熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0012】
[適用例5]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板と前記第2基板とを収容するケースを備え、前記第1基板と前記第2基板は前記ケースに固定され、前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部が前記第1方向に移動自在に前記ケースに支持されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第1基板と第2基板とがケースによって位置決めされているので、ラインヘッドに対する、第1基板および第2基板の位置ずれが少なく、より熱膨張による結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0013】
[適用例6]
上記ラインヘッドであって、前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部は弾性部材によって前記ケースに支持されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、端部が弾性部材によって支持されているので、第1基板と第2基板の熱膨張が妨げられることによる第1基板と第2基板の歪みが減少し、より結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0014】
[適用例7]
上記ラインヘッドであって、前記第2基板の線膨張係数αLと前記第1基板の線膨張係数αEとの関係が次式の関係を有する
αL+m(αE−αL)=0
(mは、前記結像レンズの光学倍率)
ことを特徴とするラインヘッド。この適用例では、第2基板の線膨張係数αLと第1基板の線膨張係数αEとの関係が上記の式を満たすことにより、結像レンズの移動距離と、結像位置の結像レンズに対する移動距離が一致し、熱膨張後の結像位置のずれがなくなり、より結像位置の移動が少ないラインヘッドが得られる。
【0015】
[適用例8]
上記ラインヘッドであって、複数の前記発光素子で構成される発光素子グループが前記第1基板に形成され、前記結像レンズは前記発光素子グループを構成する前記複数の発光素子から発光される光を結像することを特徴とするラインヘッド。この適用例では、複数の発光素子から射出される光が1つの結像レンズにより前記所定面上に結像される。したがって、少ない位置ずれ量で高密度な像を簡素な構成で形成することができる。
【0016】
[適用例9]
上記ラインヘッドであって、前記発光素子グループが複数前記第1基板に配置されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、各発光素子グループについて、当該発光素子グループとそれに対応する結像レンズで結像されるため、少ない位置ずれ量でさらに高密度な像を形成することができる。
【0017】
[適用例10]
上記ラインヘッドであって、前記発光素子グループは前記第1基板に2次元配置されることを特徴とするラインヘッド。この適用例では、2次元配置構造を採用することで像の密度をさらに高めることができる。
【0018】
[適用例11]
潜像が形成される潜像担持体と、発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する倒立光学系の結像レンズを有するとともに前記第1基板よりも線膨張係数の小さい第2基板とを有し、前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。この適用例によれば、前述の効果を有する画像形成装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置1を模式的にかつ部分的に示す図である。画像形成装置1は、トナー粒子を液体キャリアに分散させた液体現像剤を用いて画像を形成する装置である。なお、回転する部材については、回転方向を実線矢印で示した。
【0020】
図1において、画像形成装置1は、中間転写媒体である無端状の中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10を張架する駆動ローラ11および従動ローラ12と、2次転写装置14と、中間転写ベルトクリーニング装置15と、1次転写ユニットとを備えている。中間転写ベルト10の駆動ローラ11側には2次転写装置14が設けられ、また中間転写ベルト10の従動ローラ12側には中間転写ベルトクリーニング装置15が設けられている。1次転写ユニットとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)のそれぞれの色に対応した、1次転写ユニット50Y、1次転写ユニット50M、1次転写ユニット50Cおよび1次転写ユニット50Kが設けられている。以下、各色に対応する装置、部材等についても、装置、部材等の符号にそれぞれ各色を表すY,M,C,Kを付して表記する。
【0021】
なお、図示しないが、画像形成装置1は2次転写を行う従来の一般的な画像形成装置と同様に、2次転写装置14より転写材の搬送方向上流側に、例えば紙等の転写材を収納する転写材収納装置と、この転写材収納装置からの転写材を2次転写装置14へ搬送供給するローラ対とを備えている。図1において、転写材の搬送方向は、破線矢印で示した。また、この画像形成装置1は、2次転写装置14より転写材の搬送方向下流側に定着装置および排紙トレイを備えている。
【0022】
図1において、中間転写ベルト10は、互いに離間して配設された一対の駆動ローラ11および従動ローラ12に張架されて、反時計回りに回転可能に設けられている。この中間転写ベルト10は、紙等の転写材への2次転写の転写効率を向上させるうえで弾性中間転写ベルトにすることが好ましい。また、画像形成装置1では、各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kは、中間転写ベルト10の回転方向上流側から色Y,M,C,Kの順に配設されているが、色Y,M,C,Kの配置順は任意に設定することができる。なお、中間転写媒体として中間転写ベルト10を用いる代わりに中間転写ドラムを用いてもよい。
【0023】
2次転写装置14は、2次転写ローラ43を備えている。この2次転写ローラ43は、駆動ローラ11に掛けられた中間転写ベルト10に紙等の転写材を当接させて、中間転写ベルト10上で各色のトナー像を重ね合わせてなるカラーのトナー像(カラー画像)を転写材に転写するものである。その場合、駆動ローラ11は2次転写時のバックアップローラとしても機能する。また、2次転写装置14は、2次転写ローラクリーナ46と2次転写ローラクリーナ回収液貯留容器47とを備えている。2次転写ローラクリーナ46は、ゴム等の弾性体からなる。そして、この2次転写ローラクリーナ46は2次転写ローラ43に当接されて2次転写後に2次転写ローラ43の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去する。また、2次転写ローラクリーナ回収液貯留容器47は、2次転写ローラクリーナ46によって2次転写ローラ43から掻き落とされた液体現像剤を回収して貯留する。
【0024】
中間転写ベルトクリーニング装置15は、中間転写ベルトクリーナ44と中間転写ベルトクリーナ回収液貯留容器45とを備えている。中間転写ベルトクリーナ44は中間転写ベルト10に当接されて2次転写後に中間転写ベルト10の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去するものである。その場合、従動ローラ12は中間転写ベルトクリーニング時のバックアップローラとしても機能する。この中間転写ベルトクリーナ44はゴム等の弾性体からなっている。また、中間転写ベルトクリーナ回収液貯留容器45は、中間転写ベルトクリーナ44が中間転写ベルト10から掻き落とした液体現像剤を回収して貯留するものである。
【0025】
各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kは、それぞれに対応した現像装置5Y,5M,5C,5Kと、1次転写装置7Y,7M,7C,7Kと、直列に配置された潜像担持体である感光体2Y,2M,2C,2Kとを備えている。また、各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kより中間転写ベルト10の回転方向下流側の各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kの近傍には、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズ装置13Y,13M,13C,13Kが配設されている。
【0026】
各感光体2Y,2M,2C,2Kは、図1に示す例ではいずれも、感光体ドラムから構成されている。そして、これらの感光体2Y,2M,2C,2Kは、いずれも作動時に図1に実線矢印で示すように時計回りに回転する。なお、各感光体2Y,2M,2C,2Kは、無端ベルト状に構成してもよい。各1次転写装置7Y,7M,7C,7Kは、それぞれ、中間転写ベルト10を各感光体2Y,2M,2C,2Kに当接させる1次転写用のバックアップローラ37Y,37M,37C,37Kを備えている。
【0027】
以下に、各1次転写ユニット50Y,50M,50C,50Kについて、1次転写ユニット50Yを例に詳しく説明する。1次転写ユニット50M,50C,50Kの構成要素は、色M,C,Kにかかるものが異なるだけで構造および配置は、1次転写ユニット50Yと同様である。
【0028】
図2に、1次転写ユニット50Yの概略拡大図を示した。感光体2Yの周囲には、回転方向上流側から順に、帯電部材3Y、露光手段としてのラインヘッド4Y、現像装置5Y、感光体スクイーズ装置6Y、1次転写装置7Y、および除電装置8Yが配設されている。
【0029】
帯電部材3Yは、例えば帯電ローラからなる。帯電部材3Yには、図示しない電源装置から液体現像剤の帯電極性と同極性のバイアスが印加される。そして、帯電部材3Yは、感光体2Yを帯電するようになっている。ラインヘッド4Yは、例えば有機EL素子、LEDを用いた露光光学系等から光を感光体2Yの表面200に照射することによって、帯電された感光体2Y上に静電潜像を形成する。光の照射方向は、ラインヘッド4Yから引き出された実線矢印で示した。ラインヘッド4Yは、感光体2Yから離間配置されている。
【0030】
なお、露光光学系の走査方向については、図2の紙面に対して垂直な方向を主走査方向XXとし、主走査方向XXに直交し、光が照射される感光体2Yの表面200の接線方向を副走査方向YYとした。
【0031】
以下に、本実施形態におけるラインヘッド4Yを図に基づいて詳しく説明する。図3は、本実施形態にかかるラインヘッド4Y付近の主走査方向XXの概略断面図である。また、図4は図3のラインヘッドの両端部を拡大した図である。ラインヘッド4Yは、図3に示すように、本発明の「第1基板」としてのヘッド基板400とケース420とレンズアレイ430とを備えている。レンズアレイ430は後述するように本発明の「第2基板」に相当するレンズ基板にレンズを形成したものであり、レンズアレイ430の長手方向である主走査方向XXの一端430E1は固定用接着剤440E1により直接ケース420に固定的に接続されて固定部が構成されているのに対し、他端430E2は弾性部材440E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して他端430E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてレンズアレイ430が伸長するが、主走査方向(本発明の「第1方向」に相当)XXの一端430E1が固定されているため、他端430E2が熱膨張して弾性部材440E2の弾性力に抗しながら主走査方向(第1方向)XXに伸長する。
【0032】
また、ヘッド基板400についても、上記レンズアレイ430と同様に構成されている。すなわち、ヘッド基板400の主走査方向XXの一端400E1は固定用接着剤441E1により直接ケース420に固定的に接続されて固定部が構成されているのに対し、他端400E2は弾性部材441E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して他端400E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400が伸長するが、主走査方向(第1方向)XXの一端400E1が固定されているため、他端400E2が熱膨張して弾性部材440E2の弾性力に抗しながら主走査方向(第1方向)XXに伸長する。ここで、弾性部材については弾性を有する接着剤で構成してもよい。また、それ以外の弾性材料を用いてもよい。
【0033】
なお、ヘッド基板400とレンズアレイ430とは、一ヶ所で固定されていればよく、主走査方向XXの一端430E1に限らず、長手方向両端の中間点であってもよい。この実施形態については後で説明する。また、この実施形態では、ヘッド基板400の一端400E1およびレンズアレイ430の一端430E1をそれぞれ接着剤440E1、441E1で固定しているが、同一の接着剤により一体的にケース420に固定してもよい。また、ケース420を介して固定されていなくてもよく、例えば、ヘッド基板400とレンズアレイ430とが一ヶ所で固定された状態で、ケース420に収められていてもよい。
【0034】
ラインヘッド4Yは、主走査方向XXに配列された複数の発光素子グループ410を備えている。これらの発光素子グループ410から、図2に示したように、帯電部材3Yにより帯電された感光体2Yの被走査面である表面200に対して光が照射され、表面200に静電潜像が形成される。
【0035】
図5に、ヘッド基板400、レンズアレイ430および感光体2Y付近の拡大図を示した。図6に、レンズアレイ430の部分断面図を示した。図5において、発光素子グループ410は、ヘッド基板400のレンズアレイ430と対向する面の反対面に、主走査方向XXに1次元に配置されている。発光素子グループ410は複数の発光素子411を備えており、発光素子411としては、有機ELが用いられ、ヘッド基板400にはガラス基板が用いられている。また、図5において、レンズアレイ430は、レンズ基板431および発光素子グループ410に対応する一対の2つのレンズ432,433とを備えている。なお、図3におけるレンズアレイ430の固定は、レンズ基板431を固定することによって行われている。
【0036】
図6において、レンズ対を構成する2枚のレンズ432,433は、相互に図中一点鎖線で示した光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、図5に示した複数の発光素子グループ410に一対一で対向して配置されている。図5において、各発光素子411から射出された光は、破線および二点鎖線で示すようにレンズ432,433によって感光体2Y上に結像する。ここで、本実施形態の光学系は、倒立光学系であり、発光素子411から射出された光は、光軸OAに対して反転した位置に結像する。なお、この明細書では、一対一の対をなすレンズ432,433と、かかるレンズ対によって挟まれたレンズ基板431とから成る光学系は結像レンズを構成し、「レンズL」と称することとする。レンズLは、発光素子グループ410の配置に対応して、主走査方向XXに互いに所定間隔だけ離れて1次元的に配置されている。
【0037】
レンズ基板431には、ガラス基板が用いられ、レンズ432,433は、レンズ基板431表面に樹脂で形成されている。レンズ432,433は、紫外硬化樹脂の液滴をレンズ基板431に配置し、紫外線を照射することによって形成できる。また、レンズ基板431上の液滴に型を押し付け、レンズ432,433の形状を型の形状としたうえで、紫外線を照射してもよい。本実施形態では、ヘッド基板400およびレンズ基板431にガラス基板が用いられるが、ヘッド基板400の線膨張係数αEよりレンズ基板431の線膨張係数αLが小さい。
【0038】
図7に、ヘッド基板400の線膨張係数とレンズ基板431の線膨張係数が実質的に同一の場合の部分断面図を、図8および図9に線膨張係数が異なる場合の部分断面図を示した。ここで、熱が印加された熱膨張後のヘッド基板400とレンズLの位置を破線で示した。また、熱膨張前の発光素子411の表面200における結像位置をI0、熱膨張後の発光素子411の表面200における結像位置をIで表した。
【0039】
ヘッド基板400およびレンズ基板431の固定された一端から、対象とする発光素子411およびレンズLまでの距離をd(図4参照)とすると、加熱によって温度が1℃上昇するにつき、レンズLの移動距離はd×αL、発光素子411の移動距離はd×αEとなる。以下、1℃当りの移動距離について説明する。
【0040】
一方、熱膨張後において、レンズLの光軸OAに対する発光素子411のずれは、レンズLの移動距離d×αLと発光素子411の移動距離d×αEとの差d×(αE−αL)であるので、発光素子411の表面200でのレンズLの光軸OAに対する結像位置は、m×d×(αE−αL)となる。ここで、mはレンズLの光学倍率で、倒立光学系の場合は負である。したがって、実際の結像位置Iの移動距離は、レンズLの移動距離d×αLにm×d(αE−αL)を加えたd×αL+m×d(αE−αL)となる。
【0041】
ヘッド基板400とレンズ基板431の線膨張係数が同じ場合は、図7において、同じ移動距離W=d×αL(αE)だけヘッド基板400およびレンズLが移動し、光軸OAに対する発光素子411の位置はかわらず、熱膨張後の結像位置Iも移動距離Wだけ移動する。
【0042】
ヘッド基板400の線膨張係数よりレンズ基板431の線膨張係数が小さい場合は、図8において、ヘッド基板400の移動距離W=d×αEに対して、レンズLは移動距離W1=d×αLだけ移動する。ここで、W1<Wである。結像位置Iは、レンズLの移動距離W1に対し、倒立光学系であるので、レンズLの移動方向とは反対方向に結像し、移動距離W2=d×αL+m×d×(αE−αL)だけ移動する。ここで、mは負の値で、(αE−αL)は正の値なので、W2<W1<Wである。したがって、結像位置Iは、ヘッド基板400とレンズ基板431の線膨張係数が同じ場合と比較して、元の結像位置I0に近い。
【0043】
ヘッド基板400の線膨張係数とレンズ基板431の線膨張係数とが次式の関係にある場合は、図9において、レンズLの移動距離W3と同じ距離で、レンズLの移動方向とは逆方向に発光素子411は結像するので、結像位置Iは元の結像位置I0と重なる。
αL+m(αE−αL)=0
【0044】
以下に、ヘッド基板400線膨張係数αEおよびレンズ基板431の線膨張係数αLについて、具体的に実施例および変形例として示す。
【0045】
(実施例1)
ヘッド基板400にソーダガラス(αE:9×10−6/℃)を用い、レンズ基板431にパイレックス(登録商標)(αL:3.25×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−0.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、0.375×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数αLをヘッド基板400の線膨張係数αEである9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、1/10以下になった。その他のレンズ基板の組み合わせとして、Duran(登録商標)(αL:3.3×10−6/℃)、OA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用いることができる。
【0046】
(実施例2)
ヘッド基板400にOA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用い、レンズ基板431に石英ガラス(αL:0.4×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−1.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、−0.62×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数をヘッド基板400の線膨張係数9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、小さくなった。
【0047】
(実施例3)
ヘッド基板400にOA−10(登録商標)(αL:3.8×10−6/℃)を用い、レンズ基板431にホウケイ酸ガラス(αL:2.2×10−6/℃)を用いた。光学倍率は−1.5とした。単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、−0.2×10−6となり、レンズ基板431の線膨張係数をヘッド基板400の線膨張係数9×10−6/℃と同じにした場合と比較して、1/10以下になった。
【0048】
(変形例1)
発光素子は、LEDであってもよく、ヘッド基板400としてガラスエポキシ基板(αL:1.5×10−5を用いることができる。LEDの場合、ヘッド基板400のレンズ基板431側にLEDを設ける。レンズ基板431にソーダガラス(αL:9.00×10−6/℃)を用い、光学倍率は−1.5とした。このとき、単位長さ当りの結像位置Iの移動距離は、0となり、結像位置Iの移動を完全に無くすことができる。
【0049】
次に、図2に戻って現像装置5Yについて説明する。現像装置5Yは、感光体2Yに形成された静電潜像を液体現像剤21Yによって現像する。図2において、現像装置5Yは、それぞれ、現像剤供給部16Yと、現像ローラ17Yと、コンパクションローラ18Yと、現像ローラクリーナ19Yと、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yとから構成されている。
【0050】
現像剤供給部16Yは、それぞれ、トナー粒子および不揮発性の液体キャリアからなる液体現像剤21Yを収納する現像剤容器22Yと、現像剤汲み上げローラ23Yと、アニロクスローラ24Yと、現像剤規制ブレード25Yとからなっている。
【0051】
現像剤容器22Y内に収納される液体現像剤21Yにおいて、トナーとしては、トナーに使用される公知の熱可塑性樹脂中へ同じく公知の顔料等の着色剤を分散させた例えば平均粒径1μmの粒子を用いることができる。また、低粘性低濃度の液体現像剤を得るには、液体キャリアとして、例えば、有機溶媒、フェニルメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサンおよびポリジメチルシクロシロキサン等の引火点210℃以上のシリコーンオイル、鉱物油等の絶縁性液体キャリアを用いることができる。そして、液体現像剤21Yはトナー粒子を分散剤とともに液体キャリアへ添加し、トナー固形分濃度を約20%としたものである。
【0052】
現像剤汲み上げローラ23Yは、それぞれ、現像剤容器22Y内の液体現像剤21Yを汲み上げてアニロクスローラ24Yに供給するローラである。現像剤汲み上げローラ23Yは、図2において矢印で示す時計回りに回転する。また、アニロクスローラ24Yは、円筒状の部材で表面に微細かつ一様に螺旋状の溝を形成したローラである。溝の寸法は、例えば、溝ピッチが約130μm、溝深さが約30μmに設定される。もちろん、溝の寸法はこれらの値に限定されることはない。アニロクスローラ24Yは、現像ローラ17Yと同じ回転方向で図2において矢印で示す反時計回りに回転する。なお、アニロクスローラ24Yは、いずれも現像ローラ17Yと連れ回りで時計回りに回転するようにすることもできる。すなわち、アニロクスローラ24Yの回転方向は、限定されず任意である。
【0053】
現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの表面に当接して設けられている。これらの現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの表面に当接する、ウレタンゴム等からなるゴム部と、このゴム部を支持する金属等の板とから構成されている。そして、現像剤規制ブレード25Yは、アニロクスローラ24Yの溝部以外の表面に付着する液体現像剤21Yをゴム部で掻き落として除去する。したがって、アニロクスローラ24Yは、それらの溝部内に付着する液体現像剤21Yのみを各現像ローラ17Yに供給するようになっている。
【0054】
現像ローラ17Yは、例えば鉄等金属シャフトの外周部に、導電性ウレタンゴム等の導電性樹脂層や導電性ゴム層からなる所定幅の円筒状の導電性弾性体を備えたものである。これらの現像ローラ17Yは感光体2Yに当接され、かつ図2において矢印で示すように反時計回りに回転する。
【0055】
コンパクションローラ18Yは、それらの外周面が対応する現像ローラ17Yの外周面
に当接されて配置されている。このとき、コンパクションローラ18Yと現像ローラ17Yとは互いに所定量の食い込みになっている。
【0056】
そして、コンパクションローラ18Yは、図2において矢印で示すように時計回りに回転するようにされている。そして、コンパクションローラ18Yはそれぞれ電圧を印加されて、対応する現像ローラ17Yを帯電するようになっている。その場合、コンパクションローラ18Yへの印加電圧は、それぞれ直流電圧(DC)に設定されている。コンパクションローラ18Yへの印加電圧は、それぞれ直流電圧(DC)に交流電圧(AC)が重畳された電圧に設定することもできる。
【0057】
これらのコンパクションローラ18Yによる現像ローラ17Yの帯電で、コンパクションローラ18Yは、それぞれ、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yに対して接触転圧を行う。
【0058】
コンパクションローラ18Yによる接触転圧で、それぞれ、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yが現像ローラ17Yに押し付けられる。
【0059】
コンパクションローラ18Yには、それぞれ、コンパクションローラクリーナブレード26Yと、コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Yとが設けられている。これらのコンパクションローラクリーナブレード26Yは、それぞれ対応するコンパクションローラ18Yの表面に当接する例えばゴム等で構成され、コンパクションローラ18Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するためのものである。さらに、コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Yは、コンパクションローラクリーナブレード26Yによってコンパクションローラ18Yから掻き落とされた液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器から構成されている。
【0060】
また、現像ローラクリーナ19Yは、現像ローラ17Yの表面に当接する例えばゴム等で構成され、現像ローラ17Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するためのものである。さらに、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yは、それぞれ、現像ローラクリーナ19Yによって現像ローラ17Yから掻き落とされた液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器から構成されている。
【0061】
さらに、画像形成装置1は、それぞれ液体現像剤21Yを現像剤容器22Yに補給する現像剤補給装置28Yを備えている。これらの現像剤補給装置28Yは、それぞれ、トナータンク29Yと、キャリアタンク30Yと、撹拌装置31Yとからなっている。
【0062】
トナータンク29Yには、それぞれ高濃度液体トナー32Yが収納されている。また、キャリアタンク30Yには、液体キャリア(キャリアオイル)33Yが収納されている。さらに、撹拌装置31Yには、トナータンク29Yからの所定量の高濃度液体トナー32Yとキャリアタンク30Yからの所定量の液体キャリア33Yとが供給されるようになっている。
【0063】
そして、撹拌装置31Yは、供給された高濃度液体トナー32Yおよび液体キャリア33Yをそれぞれ混合撹拌して現像装置5Yで使用する液体現像剤21Yを作製する。その場合、液体現像剤21Y全体の粘度は100mPas〜1000mPasであり、また液体キャリア(キャリアオイル)33Y単体の粘度は10mPas〜200mPasであることが好ましい。粘度の測定方法は、例えば粘弾性測定装置ARES(TAインストルメント・ジャパン製)を用いて測定する。撹拌装置31Yで作製された液体現像剤21Yは、それぞれ現像剤容器22Yに供給されるようになっている。
【0064】
感光体スクイーズ装置6Yは、スクイーズローラ34Yと、スクイーズローラクリーナ35Yと、スクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yとから構成されている。スクイーズローラ34Yは、それぞれ、感光体2Yと現像ローラ17Yとの当接部(ニップ部)より感光体2Yの回転方向下流側に設置されている。そして、スクイーズローラ34Yは、感光体2Yと逆方向(図2において反時計回り)に回転されて、感光体2Y上の液体現像剤21Yを除去するようになっている。
【0065】
コンパクションローラクリーナ回収液貯留部27Y、現像ローラクリーナ回収液貯留部20Yおよびスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yに溜まった液体現像剤21Yは、撹拌装置31Yに戻り再利用される。
【0066】
スクイーズローラ34Yとしては、いずれも、金属製芯金の表面に導電性ウレタンゴム等の弾性部材とフッ素樹脂製表層を配した弾性ローラが好適である。また、スクイーズローラクリーナ35Yは、いずれもゴム等の弾性体からなり、それぞれ対応するスクイーズローラ34Yの面に当接され、これらのスクイーズローラ34Yに残留する液体現像剤21Yを掻き落として除去するものである。さらに、スクイーズローラクリーナ回収液貯留容器36Yは、それぞれ対応するスクイーズローラクリーナ35Yが掻き落とした液体現像剤21Yを貯留するタンク等の容器である。
【0067】
バックアップローラ37Yは、トナー粒子の帯電極性と逆極性の例えば約−200Vが印加されて、感光体2Y上の液体現像剤21Yで形成された像を中間転写ベルト10に1次転写する。また、除電装置8Yは、1次転写後に感光体2Yに残留する電荷を除去するものである。
【0068】
中間転写ベルトスクイーズ装置13Yは、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズローラ40Yと、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yと、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器42Yとからなっている。中間転写ベルトスクイーズローラ40Yは、中間転写ベルト10上の液体現像剤21Yを回収するものである。また、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yは、それぞれ中間転写ベルトスクイーズローラ40Yのローラ上の回収した液体現像剤21Yを掻き取るものである。これらの中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yは、スクイーズローラクリーナ35Yと同様にゴム等の弾性体からなっている。さらに、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ回収液貯留容器42Yは、中間転写ベルトスクイーズローラクリーナ41Yで掻き取った液体現像剤21Yを回収貯留するものである。
【0069】
画像形成動作が開始されると、感光体2Yが帯電部材3Yによって一様に帯電される。次いで、感光体2Yに、ラインヘッド4Yによって静電潜像が形成される。
【0070】
次に、現像装置5Yにおいて、イエロー(Y)の液体現像剤21Yが現像剤汲み上げローラ23Yによってアニロクスローラ24Yに汲み上げられる。アニロクスローラ24Yに付着した液体現像剤21Yは、現像剤規制ブレード25Yによってアニロクスローラ24Yの溝内に適正量付着される。このアニロクスローラ24Yの溝内の液体現像剤21Yは現像ローラ17Yに供給される。
【0071】
このとき、アニロクスローラ24Yの溝内の液体現像剤21Yの一部がアニロクスローラ24Yの左右両端の方に移動する。さらに、現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yのイエロー(Y)のトナー粒子は、コンパクションローラ18Yによる接触コンパクションでその現像ローラ17Yに押し付けられる。現像ローラ17Y上の液体現像剤21Yはコンパクションされた状態で、現像ローラ17Yの回転によって感光体2Yの方へ搬送される。
【0072】
コンパクションローラ18Yによる接触コンパクションが終了してコンパクションローラ18Yに残留する液体現像剤21Yは、コンパクションローラクリーナブレード26Yによってコンパクションローラ18Yから除去される。
【0073】
イエロー(Y)の感光体2Yに形成された静電潜像が現像装置5Yにおいてイエロー(Y)の液体現像剤21Yで現像され、感光体2Yにイエロー(Y)の液体現像剤21Yによって像が形成される。現像が終了して現像ローラ17Yに残留する液体現像剤21Yは、現像ローラクリーナ19Yによって現像ローラ17Yから除去される。感光体2Y上のイエロー(Y)の液体現像剤21Yによって形成される像は、スクイーズローラ34Yにより感光体2Y上の液体現像剤21Yが回収されてイエロー(Y)のトナー像とされる。さらに、このイエロー(Y)のトナー像は1次転写装置7Yで中間転写ベルト10に転写される。中間転写ベルト10上のイエロー(Y)のトナー像は、中間転写ベルトスクイーズローラ40Yにより中間転写ベルト10上の液体現像剤21Yが回収されながら、図1に示したマゼンタ(M)の1次転写装置7Mの方へ搬送される。
【0074】
図1において、次いで、マゼンタ(M)の感光体2Mに形成された静電潜像が現像装置5Mにおいて、イエロー(Y)の場合と同様にして搬送されてきたマゼンタ(M)の液体現像剤で現像され、感光体2Mにマゼンタ(M)の液体現像剤によって像が形成される。このとき、コンパクションローラ18Mによる接触コンパクションの終了後コンパクションローラ18Mに残留するキャリアは、コンパクションローラクリーナブレード26Mによってコンパクションローラ18Mから除去される。また、現像が終了して現像ローラ17Mに残留する液体現像剤は、現像ローラクリーナ19Mによって現像ローラ17Mから除去される。
【0075】
感光体2M上のマゼンタ(M)の液体現像剤で形成された像は、スクイーズローラ34Mにより感光体2M上の液体現像剤が回収されてマゼンタ(M)のトナー像とされ、このマゼンタ(M)のトナー像は1次転写装置7Mで中間転写ベルト10にイエロー(Y)のトナー像と色重ねされて転写される。同様にして、色重ねされたイエロー(Y)とマゼンタ(M)のトナー像は、中間転写ベルトスクイーズローラ40Mにより中間転写ベルト10上の液体現像剤が回収されながらシアン(C)の1次転写装置7Cの方へ搬送される。以下、同様にして、シアン(C)のトナー像およびブラック(K)のトナー像が中間転写ベルト10に順次色重ねされて転写され、中間転写ベルト10にフルカラーのトナー像が形成される。
【0076】
次いで、2次転写装置14により、中間転写ベルト10上のカラーのトナー像が紙等の転写材の転写面に2次転写される。転写材上に転写されたカラーのトナー像は、従来と同様に図示しない定着器によって定着され、フルカラーの定着像が形成された転写材は排紙トレイに搬送されて、カラー画像形成動作が終了する。
【0077】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)ラインヘッド4Yに熱が加わり、ヘッド基板400およびレンズ基板431が膨張すると、ヘッド基板400およびレンズ基板431が一端400E1,430E1で固定されているため、固定されている一端400E1,430E1を中心に膨張する。この実施形態では、レンズ基板431の線膨張係数αLがヘッド基板400の線膨張係数αEよりも小さいので、発光素子411のレンズLに対する位置がずれる。この位置のずれに対し、レンズLは倒立光学系なので、発光素子411の結像位置IはレンズLの膨張による移動方向とは逆方向であり、元の結像位置I0からの熱膨張後の結像位置Iのずれを小さくできる。したがって、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0078】
(2)ヘッド基板400およびレンズ基板431がその長手方向である主走査方向XXの一端400E1,430E1で固定されているので、他端400E2,430E2での熱膨張によるヘッド基板400とレンズ基板431とのずれが大きく、より効果的に、熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0079】
(3)ヘッド基板400とレンズ基板431とがケース420によって固定、支持されているので、ラインヘッド4Yに対する、ヘッド基板400およびレンズ基板431の位置ずれを少なくでき、より熱膨張による結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。また、主走査方向XXの一端が接着剤440,441によって支持されているので、ヘッド基板400とレンズ基板431の熱膨張が妨げられることによる、ヘッド基板400とレンズ基板431の歪みが減少し、より結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0080】
(4)レンズ基板431の線膨張係数αLとヘッド基板400の線膨張係数αEとの関係が上記の式を満たすことにより、レンズLの移動距離と、結像位置IのレンズLに対する移動距離が一致し、熱膨張後の結像位置Iのずれをなくすことができ、より結像位置Iの移動が少ないラインヘッド4Yおよび画像形成装置1を得ることができる。
【0081】
(第2実施形態)
図10は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。また、図11は、ラインヘッド4Yの副走査方向YYの断面図である。第1実施形態と同じ機能の部材には同じ符号を付した。図10において、ラインヘッド4Yは、主走査方向XXおよび副走査方向YYに配列された発光素子グループ410を備えている。発光素子グループ410は、複数の発光素子411を備えている。これらの発光素子411から、図2に示したように、帯電部材3Yにより帯電された感光体2Yの被走査面である表面200に対して光が照射され、表面200に静電潜像が形成される。
【0082】
図10において、本実施形態のラインヘッド4Yは、主走査方向XXを長手方向とするケース420を備えるとともに、かかるケース420の両端には、位置決めピン421とねじ挿入孔422が設けられている。かかる位置決めピン421を、図示しない感光体カバーに穿設された位置決め孔に嵌め込むことで、ラインヘッド4Yが、図2に示した感光体2Yに対して位置決めされている。感光体カバーは、感光体2Yを覆うとともに感光体2Yに対して位置決めされている。また、ねじ挿入孔422を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド4Yが感光体2Yに対して位置決め固定されている。
【0083】
図10および図11において、ケース420は、感光体2Yの表面200に対向する位置で、レンズ基板(本発明の「第2基板」に相当)431に結像レンズが配列されたレンズアレイ430を保持するとともに、その内部に、レンズアレイ430に近い順番で、遮光部材450および本発明の「第1基板」としてのヘッド基板400を備えている。ヘッド基板400は透明なガラス基板である。
【0084】
レンズアレイ430は、レンズ基板431とレンズ432とレンズ433とを備えている。レンズ432とレンズ433とは対をなしてレンズLを構成しており、2次元に配置された発光素子グループ410に対応して、レンズ基板431に2次元に配置されている。
【0085】
ヘッド基板400のうら面402(ヘッド基板400が有する2つの面のうち遮光部材450に対向するおもて面401とは逆側の面)には、複数の発光素子グループ410が設けられている。複数の発光素子グループ410は、ヘッド基板400のうら面402に、図10に示すように、主走査方向XXおよび副走査方向YYに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に、並べて配置されている。ここで、発光素子グループ410は、図10中の円で囲んだ部分に示すように、複数の発光素子411を2次元的に配列することによって構成されている。
【0086】
本実施形態では、発光素子として有機ELを用いる。つまり、本実施形態では、ヘッド基板400のうら面402に有機ELを発光素子411として配置している。そして、複数の発光素子411のそれぞれから感光体2Yの方向に射出される光は、ヘッド基板400を介して遮光部材450へ向かう。発光素子はLEDであってもよい。この場合、基板はガラス基板でなくてもよく、LEDは、おもて面401に設けることができる。
【0087】
図10および図11において、遮光部材450は、複数の発光素子グループ410に対して一対一で対応する複数の導光孔4410を備えている。
【0088】
図10および図11において、発光素子グループ410に属する発光素子411から射出された光は、該発光素子グループ410に一対一で対応する導光孔4410によって、レンズアレイ430に導かれる。そして、導光孔4410を通過した光は、二点鎖線で示すように、レンズアレイ430により、感光体2Yの表面200にスポットとして結像されることとなる。
【0089】
図11に示すように、固定器具460によって、裏蓋470はヘッド基板400を介してケース420に押圧されている。つまり、固定器具460は、裏蓋470をケース420側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋470を押圧することで、ケース420の内部を光密に(つまり、ケース420内部から光が漏れないように、および、ケース420の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具460は、図10に示すケース420の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ410は、封止部材480により覆われている。
【0090】
図12は、複数の発光素子グループ410の配置を示す図である。
【0091】
本実施形態では、主走査方向XXに4個の発光素子411を所定間隔ごとに並べて構成される発光素子行L411を、副走査方向YYに2行並べて、1つの発光素子グループ410を構成している。つまり、同図の二点鎖線の円形で示される1つのレンズの外径の位置に対応して8個の発光素子411が、発光素子グループ410を構成している。そして、複数の発光素子グループ410は次のように配置されている。
【0092】
主走査方向XXに発光素子グループ410を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子グループ行L410(グループ行)が副走査方向YYに3行並ぶように、発光素子グループ410は2次元的に配置されている。また、各発光素子グループ行L410間の発光素子グループ410は、互いに異なる主走査方向位置に配置されている。さらに、主走査方向位置が隣り合う発光素子グループ(例えば、発光素子グループ410C1と発光素子グループ410B1)の副走査方向位置が互いに異なるように、複数の発光素子グループ410は配置されている。なお、主走査方向位置および副走査方向位置とはそれぞれ注目する位置の主走査方向成分および副走査方向成分を意味する。
【0093】
図13は、ラインヘッド4Yによるスポット形成動作を示す図である。スポットの集まりによって静電潜像が形成される。以下に、図12、図13を用いて本実施形態におけるラインヘッドによるスポット形成動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体2Yの表面200を副走査方向YYに搬送しながら、複数の発光素子411を所定のタイミングで発光させることで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0094】
図12において、本実施形態のラインヘッド4Yでは、副走査方向位置Y1〜Y6の各位置に対応して、副走査方向YYに発光素子行L411が6列配置されている。副走査方向YYの同一の位置にある発光素子行L411は、略同一のタイミングで発光させるとともに、副走査方向YYの異なる位置にある発光素子行L411は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、副走査方向位置Y1〜Y6の順番で、発光素子行L411を発光させる。そして、感光体2Yの表面200を副走査方向YYに搬送しながら、上述の順番で発光素子行L411を発光させることで、表面200の主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0095】
かかる動作を、図12、図13用いて説明する。最初に、副走査方向YYに最上流の発光素子グループ410A1,410A2,410A3,…に属する副走査方向位置Y1の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、上述の反転拡大特性を有する「結像レンズ」であるレンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0096】
なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号410C1,410B1,410A1,410C2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ410により形成されるスポットであることを示す。
【0097】
次に、発光素子グループ410A1,410A2,410A3,…に属する副走査方向位置Y2の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13において、「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。ここで、感光体2Yの表面200の搬送方向が副走査方向YYであるのに対して、副走査方向YYの下流側の発光素子行L411から順番に(つまり、副走査方向位置Y1,Y2の順番に)発光させたのは、レンズLが反転特性を有することに対応するためである。
【0098】
次に、副走査方向YYの上流側から2番目の発光素子グループ410B1,410B2,410B3,…に属する副走査方向位置Y3の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0099】
次に、発光素子グループ410B1,410B2,410B3,…に属する副走査方向位置Y4の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0100】
次に、副走査方向YY最下流の発光素子グループ410C1,410C2,410C3,…に属する副走査方向位置Y5の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「5回目」のハッチン
グパターンの位置にスポットが形成される。
【0101】
そして最後に、発光素子グループ410C1,410C2,410C3,…に属する副走査方向位置Y6の発光素子行L411の発光素子411を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光は、レンズLにより、反転されつつ拡大されて感光体2Yの表面200に結像される。つまり、図13の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、主走査方向XXに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0102】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(5)発光素子グループ410およびレンズLが2次元に配置されているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0103】
(第3実施形態)
図14に、本実施形態にかかるヘッド基板400、レンズアレイ430および感光体2Y付近の拡大図を示した。レンズアレイ430以外の構成は第1実施形態と同様である。第1実施形態と同一の部品、部材には、同じ符号を付した。本実施形態は、発光素子グループ410は1次元に配置されている。
【0104】
図14において、レンズアレイ430は、2つのレンズ基板434,435を備えている。ヘッド基板400とレンズアレイ430との間、2つのレンズ基板434,435の間には、遮光部材451と452とが配置されている。図15に、レンズ基板434,435の断面図を示した。レンズ基板434,435の片面には、樹脂によってレンズ436が形成されている。
【0105】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え以下の効果がある。
(6)2つのレンズ基板434,435を備えているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0106】
(第4実施形態)
図16に、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。また、図17は、ラインヘッド4Yの副走査方向YYの断面図である。第2実施形態と同じ機能の部材には同じ符号を付した。本実施形態は、発光素子グループおよび第3実施形態のレンズ基板に形成されたレンズが2次元に配置されたものである。
【0107】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え以下の効果がある。
(7)2つのレンズ基板434,435を備え、発光素子グループ410およびレンズLが2次元に配置されているラインヘッド4Yおよび画像形成装置1においても前述の効果を得ることができる。
【0108】
(第5実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。この第5実施形態が第1実施形態と大きく相違する点はケース420へのヘッド基板400およびレンズアレイ430の固定位置である。すなわち、第5実施形態では、主走査方向(第1方向)XXにおけるケース420の中央下部に支持部材442が固定されている。この支持部材442はケース420から感光体2Yに向けて延設されており、支持部材442によりヘッド基板400の中央部およびレンズアレイ430の中央部が固定的に支持されている。
【0109】
一方、主走査方向XXにおけるレンズアレイ430の両端430E1、430E2はそれぞれ弾性部材440E1、440E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてレンズアレイ430が伸長するが、主走査方向XXの中央部が固定されているため、両端430E1、430E2が熱膨張してそれぞれ弾性部材440E1、440E2の弾性力に抗しながら主走査方向XXに伸長する。
【0110】
また、ヘッド基板400についても、上記レンズアレイ430と同様に構成されている。すなわち、主走査方向(第1方向)XXにおけるヘッド基板400の両端400E1、400E2がそれぞれ弾性部材441E1、441E2を介してケース420に支持されており、ケース420に対して両端400E1、400E2は主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Yの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400が伸長するが、主走査方向XXの中央部が固定されているため、両端400E1、400E2が熱膨張してそれぞれ弾性部材441E1、441E2の弾性力に抗しながら主走査方向XXに伸長する。なお、その他の構成については第1実施形態と同様である。
【0111】
このような実施形態によれば、前述の実施形態の効果に加え次の効果がある。すなわち、主走査方向XXにおけるヘッド基板400およびレンズアレイ430の中央部を固定部としたことにより、固定部から最も離れた発光素子411までの距離は第1実施形態の約半分となる。したがって、熱膨張による結像位置の移動量も第1実施形態の約半分となる。
【0112】
(第6実施形態)
図18は、本実施形態にかかるラインヘッド4Yの概略斜視図である。この第6実施形態では、全色についてラインヘッド4Y、4M、4C、4Kは装置本体に対して固定的に設けられたヘッド固定部材49に取り付けられている。なお、同図では2つのラインヘッド4Y、4Mが図示されており、以下同図を参照しながら本発明の第6実施形態について説明する。
【0113】
この第6実施形態では、2本のヘッド固定部材49L、49Rが副走査方向YYに所定間隔だけ離間して平行に配置されるとともに、これら2本のヘッド固定部材49L、49Rを橋渡すようにラインヘッド4Y、4Mが配置されている。各ラインヘッド4Y、4Mのケース420の両端部には、位置決めピン421とねじ挿入孔(図9参照)が設けられている。かかる位置決めピン421をヘッド固定部材49L、49Rに穿設された位置決め孔491L、491Rに嵌め込むことで、ラインヘッド4Y、4Mがそれぞれ感光体2Y、2Mに対して位置決めされ、固定ネジ492によりヘッド固定部材49L、49Rに対してラインヘッド4Y、4Mが取り付けられている。なお、この実施形態では、一方側(図19の左手側)のヘッド固定部材49Lに穿設された位置決め孔491Lについては位置決めピン421が挿入されることでラインヘッド4Y、4Mを主走査方向XXにも副走査方向YYにも位置決めするように構成される。
【0114】
これに対し、他方側(図19の右手側)のヘッド固定部材49Rに穿設された位置決め孔491Rについては主走査方向XXに延びる長孔形状に仕上げられており、位置決めピン421が挿入されることでラインヘッド4Y、4Mを副走査方向YYに位置決めするものの、主走査方向XXについてはラインヘッド4Y、4Mの他端が移動自在となっている。また、ヘッド固定部材49Rでは、固定ネジ492を挿通するための貫通孔493Rも長孔となっている。このようにラインヘッド4Y、4Mの一端をヘッド固定部材49Lに固定する一方、他端をヘッド固定部材49Rに対して副走査方向YYへの移動を規制しつつ主走査方向XXに移動自在に支持している。
【0115】
このようにヘッド固定部材49Lに各ラインヘッド4Y、4Mを位置決め固定し、ラインヘッド4Y、4Mの周辺温度が高くなり、それに応じてケース420が熱膨張した際には、各ラインヘッド4Y、4Mを主走査方向XXに伸長させるように構成されている。
【0116】
こうしてヘッド固定部材49L、49Rに取り付けられたラインヘッド4Y、4Mは上述の実施形態と同様に構成されている。つまり、ヘッド基板400およびレンズアレイ430は、主走査方向(第1方向)XXの一端(同図の左手端)が固定されて固定部が形成されるとともに、他端(同図の右手端)が弾性部材を介してケース420に支持されて主走査方向XXに移動自在となっている。このため、ラインヘッド4Y、4Mの周辺温度が高くなると、それに応じてヘッド基板400およびレンズアレイ430が熱膨張するが、固定部を基準として他端側に熱膨張して主走査方向(第1方向)XXに伸長する。
【0117】
このように、第6実施形態では、ケース420、ヘッド基板400およびレンズアレイ430のいずれも主走査方向(第1方向)XXの一端側を固定部として他端側に伸長可能に構成している。したがって、熱膨張による結像位置の移動方向はいずれの色成分においても同一となっている。しかも、上述した作用効果を有するラインヘッド4Y、4Mを用いている。したがって、色成分間で生じる結像位置のずれ、つまりカラーレジスト誤差を効果的に抑えることができ、高品質のカラー画像を形成することができる。
【0118】
(その他)
なお、上記した実施形態、実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0119】
第2および第3実施形態では、主走査方向XXに発光素子グループ410を所定個数(2個以上)並べて構成される発光素子行L411(グループ行)が副走査方向YYに3列並ぶように、発光素子グループ410は2次元的に配置されている。しかし、複数の発光素子グループ410の配置の態様は、これに限られるものではなく適宜変更が可能である。
【0120】
また、上記実施形態では、ラインヘッドを用いて、図13に示すような主走査方向XXに直線状に複数個のスポットを並べて形成している。しかしながら、かかるスポット形成動作は、ラインヘッドの動作の一例を示すものであり、該ラインヘッドが実行可能な動作はこれに限られるものではない。つまり、形成されるスポットは、主走査方向XXに並んで直線状に形成される必要は無く、例えば、主走査方向XXに所定の角度を有するように並べて形成してもよいし、ジグザグ状あるいは波状に形成してもよい。
【0121】
また、上記各実施形態および変形例では、カラー画像形成装置に適用されているが、適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても適用することができる。
【0122】
さらに、トナー粒子を不揮発性液体キャリアに分散させた液体トナーだけでなく、乾式のトナーを用いた画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1実施形態にかかる画像形成装置を模式的にかつ部分的に示す図。
【図2】1次転写ユニットの概略拡大図。
【図3】ラインヘッド付近の主走査方向XXの概略断面図。
【図4】図3のラインヘッドの両端部を拡大した図。
【図5】ヘッド基板、レンズアレイおよび感光体付近の拡大図。
【図6】レンズアレイの部分断面図。
【図7】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が同じ場合の部分断面図。
【図8】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が異なる場合の部分断面図。
【図9】ヘッド基板およびレンズ基板の線膨張係数が異なる場合の部分断面図。
【図10】第2実施形態にかかるラインヘッドの概略斜視図。
【図11】ラインヘッドの副走査方向YYの断面図。
【図12】複数の発光素子グループの配置を示す図。
【図13】ラインヘッドによるスポット形成動作を示す図。
【図14】第3実施形態にかかるヘッド基板、レンズアレイおよび感光体付近の拡大図。
【図15】レンズ基板の断面図。
【図16】第4実施形態にかかるラインヘッドの概略斜視図。
【図17】ラインヘッドの副走査方向YYの断面図。
【図18】第5実施形態にかかるラインヘッドを示す図。
【図19】第6実施形態にかかるラインヘッドを示す図。
【符号の説明】
【0124】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…潜像担持体としての感光体、4Y…露光手段としてのラインヘッド、200…被走査面としての表面、400…第1基板としてのヘッド基板、400E1…固定部を構成する一端、410…発光素子グループ、411…発光素子、420…ケース、430E1…固定部を構成する一端、431…第2基板としてのレンズ基板、440E1,440E2,441E1,441E2…弾性部材、L…結像レンズとしてのレンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が形成された第1基板と、
前記発光素子からの光を結像する倒立光学系の結像レンズが形成されるともに、前記第1基板よりも線膨張係数が小さい第2基板と、
を有することを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板と該第2基板とを固定し、温度に応じて前記結像レンズの光軸方向と直交する第1方向に伸縮するように配置する請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の一端部と該第2基板の前記第1方向の一端部が固定され、前記第1方向の他端部を温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置する請求項2に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の中央部と該第2基板の前記第1方向の中央部とが固定され、該第1基板の前記第1方向の両端部と該第2基板の前記第1方向の両端部とが温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置する請求項2に記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記第1基板と前記第2基板とを収容するケースを備え、
前記第1基板と前記第2基板は前記ケースに固定され、
前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部が前記第1方向に移動自在に前記ケースに支持される請求項3に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部は弾性部材によって前記ケースに支持される請求項5に記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記第2基板の線膨張係数αLと前記第1基板の線膨張係数αEとの関係が次式の関係を有する
αL+m(αE−αL)=0
(mは、前記結像レンズの光学倍率)
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項8】
複数の前記発光素子で構成される発光素子グループが前記第1基板に形成され、
前記結像レンズは前記発光素子グループを構成する前記複数の発光素子から発光される光を結像する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項9】
前記発光素子グループが複数前記第1基板に配置される請求項8に記載のラインヘッド。
【請求項10】
前記発光素子グループは前記第1基板に2次元配置される請求項9に記載のラインヘッド。
【請求項11】
潜像が形成される潜像担持体と、
発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する倒立光学系の結像レンズを有するとともに前記第1基板よりも線膨張係数の小さい第2基板とを有し、前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、
前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
発光素子が形成された第1基板と、
前記発光素子からの光を結像する倒立光学系の結像レンズが形成されるともに、前記第1基板よりも線膨張係数が小さい第2基板と、
を有することを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板と該第2基板とを固定し、温度に応じて前記結像レンズの光軸方向と直交する第1方向に伸縮するように配置する請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の一端部と該第2基板の前記第1方向の一端部が固定され、前記第1方向の他端部を温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置する請求項2に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記第1基板および前記第2基板は、該第1基板の前記第1方向の中央部と該第2基板の前記第1方向の中央部とが固定され、該第1基板の前記第1方向の両端部と該第2基板の前記第1方向の両端部とが温度に応じて前記第1方向に伸縮するように配置する請求項2に記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記第1基板と前記第2基板とを収容するケースを備え、
前記第1基板と前記第2基板は前記ケースに固定され、
前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部が前記第1方向に移動自在に前記ケースに支持される請求項3に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記第1基板の前記他端部および前記第2基板の前記他端部は弾性部材によって前記ケースに支持される請求項5に記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記第2基板の線膨張係数αLと前記第1基板の線膨張係数αEとの関係が次式の関係を有する
αL+m(αE−αL)=0
(mは、前記結像レンズの光学倍率)
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項8】
複数の前記発光素子で構成される発光素子グループが前記第1基板に形成され、
前記結像レンズは前記発光素子グループを構成する前記複数の発光素子から発光される光を結像する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項9】
前記発光素子グループが複数前記第1基板に配置される請求項8に記載のラインヘッド。
【請求項10】
前記発光素子グループは前記第1基板に2次元配置される請求項9に記載のラインヘッド。
【請求項11】
潜像が形成される潜像担持体と、
発光素子が形成された第1基板と、前記発光素子からの光を前記潜像担持体に結像する倒立光学系の結像レンズを有するとともに前記第1基板よりも線膨張係数の小さい第2基板とを有し、前記潜像担持体に前記潜像を形成する露光部と、
前記潜像担持体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−196350(P2009−196350A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316536(P2008−316536)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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